講演録

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講演録 2016

   

会合・イベント等で、著名人が講演した内容を採録するページです。

 
☆★目次★☆
 
 
 
 

漬物研究同志会 東京家政大宮尾教授が講演

漬物研究同志会 東京家政大宮尾教授が講演
 
宮尾教授
宮尾教授
 
講演を聴講する参加者
講演を聴講する参加者
   
漬物製造業でのHACCP語る
 漬物研究同志会(近清剛会長:株式会社三奥屋社長)は2016(平成28)年11月14日、東京都板橋区にある東京家政大学にて研修会を開催した。同大学の宮尾茂雄教授が、「HACCP義務化への対応」のタイトルで講演。漬物製造における重要管理点(CCP)や危害要因といった内容に加え「漬物業界においては、全国漬物検査協会がHACCPの認定機関になっていただければ」といった提案など、業界に特化した貴重な講演となった。
 HACCPに関しては、今年に入り厚生労働省主催の検討会が重ねられ、10月には「中間取りまとめ」を発表。①コーデックスのガイドラインに基づくHACCPの7原則を要件とする基準(基準A)、②小規模事業者や一定の業種についてコーデックスHACCPの7原則の弾力的な運用を可能とするHACCPの考え方に基づく衛生管理の基準(基準B)の2つの基準が提唱されている。
 漬物業界からも、今年8月の検討会に全日本漬物協同組合連合会の大羽恭史副会長と藤川研四郎専務理事が出席。衛生管理レベル向上の必要性に理解を示しながらも制度化について弾力的な対応を求めた(本紙2016年8月29日号掲載)。こうした事業者団体の声を反映した形で仕組み作りが進められている。
■HACCPによる衛生管理
 HACCPとは危害要因を予測(危害分析)した上で危害の防止につながる重要な工程(重要管理点)を連続的・継続的に監視(モニタリング)し、記録することにより、製品の安全性を確保する衛生管理手法。危害要因を予測しておくことが最も大切な作業となる。対象とするのは健康上の危害であるため、製品品質の確保に関しては対象としない。
 HACCPプランの設定に関しては、1993年に定められたコーデックス(国際食品規格委員会)によるガイドラインが現在国際標準となっている。プラン設定のための7原則12手順が示されており、製品説明書や製造フロー図の作成など危害分析の準備(手順1~5)、危害分析の実施・重要管理点の設定(手順6~7)、管理基準の設定やモニタリング方法の設定など重要管理点のフォロー(手順8~12)がある。従来の衛生管理と異なる部分としては、科学的根拠に基づき衛生管理が行われること。過去のデータによる裏づけがあるため具体的で明確な管理となる。
■HACCP制度化の必要性
 HACCP制度化が必要な理由として、下げ止まり傾向にある食中毒件数が挙げられる。近年は年間約2000件、患者数約2万人で推移しているが、食品媒介感染症の被害実態としては、届出があった食中毒統計の100~1000倍とも言われている。また高齢者ではO‐157などの発症リスクが高まるため、高齢人口の増加により食中毒リスクや異物混入による危害リスクは高まっている。加えて2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据え、日本の食品衛生管理の水準を国際的に見て遜色のないものにする必要性がある。
 しかし食品製造におけるHACCPによる衛生管理の普及は進んでおらず、農林水産省の調査(従業者数5人以上の企業が対象)では、平成26年度時点の導入状況は、大手層(食品販売額100億円以上)で88%の割合なのに対し、販売額1億円未満の企業も含めた全体の統計では29%となっている。厚生労働省の調査(従業員数4人以下も含む)では、2014年時点でHACCPを導入・一部導入・導入検討をしている割合は、乳製品製造業で50%以上と高いものの、漬物製造業では10%程度に留まっている。
■基準Bに基づく制度化の考え方(案)
 10月に発表された「中間取りまとめ」では、従業員数が一定以下等の小規模事業者、または提供する食品の種類が多く、かつ変更頻度が高い業種や、一般的衛生管理による対応で管理が可能な業種等一定の業種を対象とし、基準Aよりも弾力的な運用が可能とされている(基準B)。具体的には、コーデックスのガイドラインで示されたHACCPの考え方に基づく衛生管理計画を作成する。基準Aの7原則のうち、①危害要因分析、②モニタリング頻度の設定、③記録作成・保管について弾力的な基準を設けた上で実行することが検討されている。
 実際の衛生管理計画としては、①製品説明書と製造フロー図の作成により、製品の性質や工程上重要な部分を明らかにし、②危害要因の分析・重要管理点の設定を行う。その後、③管理基準・モニタリング方法の設定、改善措置の設定、記録・文書の保管を行うことになる。
■漬物製造におけるHACCP導入
 漬物製造における主な危害要因としては、生物的危害(病原性大腸菌、腸炎ビブリオなど)、化学的危害(植物の自然毒、残留農薬など)、物理的危害(ガラス、金属など)がある。中でも最も重要な危害要因は、食中毒菌(微生物、特に大腸菌O‐157)、異物(危害性異物:ガラス、金属、硬質プラスチック類)である。これを踏まえると、漬物製造で重要管理点となる主な工程は、①醤油漬など加熱殺菌加工品では加熱殺菌工程(温度、時間)、②浅漬など非加熱殺菌加工品では原料野菜受入(汚染目視)、洗浄殺菌(次亜塩素酸濃度、処理時間)となると考えられる。
 また、厚生労働省の「食品製造におけるHACCP入門のための手引書(漬物編)」には、具体的な製品特性・管理基準などについても言及がある。きゅうり醤油漬を例にとると、製品特性ではpH4.2~4.6、塩分4.0~4.5%、重要管理点と管理基準としては、加熱殺菌が90度10分、金属検出がFe:2.0、Sus:4.8mmとされている。しかし、手引書はあくまでも事例であって、管理基準となる加熱殺菌では、82度、20分など、実際の製品に合わせて設定することになる。
■一般的衛生管理プログラム(PP)について
 基準Bで実施する場合でも、一般的衛生管理プログラムを実行することが大切である。これにより、HACCPによる衛生管理がより効果的になり、危害要因を食品から確実に減少/除去することが可能になる。PPとHACCPの区別としては、原料に付着した菌など食品中の危害要因を対象とするのがHACCP、床や作業者に付着した菌など作業環境の危害要因を対象とするのがPPとなる。
 PPでは、標準作業手順(SSOP)を文書化し、それに基づいて、①安全な原料を確保する、②食品を危害要因となる汚染から守る(施設や器具などの洗浄・殺菌、食品取扱者の衛生・手洗い教育)、③低温管理による食中毒菌の増殖を防止、④装置のメンテナンスを実行する。
【2016(平成28)年11月21日号第4868号8、9面】
 
 

全漬検 「営業マン、若手技術者のための講演会」

全漬検 「営業マン、若手技術者のための講演会」
 
西村会長
西村会長
 
参加者は熱心に聞き入った
参加者は熱心に聞き入った
   
全国から76人が参加
 一般社団法人全国漬物検査協会(西村信作会長)は11月30日、東京都江東区の深川江戸資料館小劇場で「第7回営業マン、若手技術者のための講演会」を開催した。同講演会は漬物業界の人材育成を目的とし、漬物の知識や魅力を知り、今後の営業マンや若手技術者に求められる職能、知見を学ぶために実施。全国から76人が参加した。
 今回は講師に株式会社商業環境計画研究所社長の横山和夫氏、前JFCインターナショナル社長の榎本博行氏、東海漬物株式会社会長の大羽恭史氏、東京家政大学教授の宮尾茂雄氏を招へい。参加者は熱心に耳を傾け、知見を広めた。
【本文は一部割愛、詳細は2016(平成28)年12月5日第4870号3面で】
   
ソフト抜きハードは意味なし 横山和夫氏
 横山和夫氏は店舗プロデューサーとして食品スーパーマーケット(SM)を中心に店舗を活性化するためのデザイン・設計を手がける人物。小売業の業態改革・開発のための研究も行い、小売業界の人材育成、トップセミナーの研修講師や海外流通業の視察コーディネートも行っている。「小売業・今商いの原点に戻る変化の時代・戦略の見直し―日本の食品業界の近未来を考える、アメリカにおける企業の盛衰―」を演題に講演。
 
和食の将来性は非常に有望 榎本博行氏
 榎本博行氏はキッコーマン株式会社に入社後、海外販売戦略の先頭に立ち、アメリカの食事に醤油が使用される門戸を開いた。JFCインターナショナル社長時代に物流網の整備を行い、世界的な日本食普及の土台づくりに貢献した。
 講演は「海外における和食の未来」がテーマ。まず、榎本氏は「世界における和食の将来性は非常に有望である。外国の方から見て、大変に美味しい、健康に良いという利点を持つ」と述べ、JFCの事業概要、企業理念、歴史、商品調達、取扱商品、グローバル・ネットワーク、流通網などを説明した。
 
可能性を切り開くために 大羽恭史氏
 大羽恭史氏は東海漬物株式会社の会長を務める一方、愛知県漬物協会会長、愛知県漬物事業協同組合理事長、中部漬物協会会長、全日本漬物協同組合連合会副会長と要職に就き、業界の発展に貢献。全国漬物検査協会でも副会長を務めている。演題には「漬物業界の明日を考えましょう」を掲げた。
 大羽氏は「今、私たちにとって『明日』というのは明るい日であり、夢であり、希望になっているでしょうか」と呼びかけ、講演を開始した。
 
伝統と健康性を全面に 宮尾茂雄氏
 宮尾茂雄氏は東京家政大学教授として栄養管理士・栄養士育成のための講義、実習指導を行い、漬物関係で多くの著書を持つ。演題には「漬物の魅力と健康力について」を設定した。
 最初に漬物生産量の減少にについて言及。理由は米離れにあるとし、減塩志向も影響があると指摘。漬物の魅力と健康力を消費者に伝えるために▽漬物は伝統食品▽和食には漬物▽和食は健康優等生――といったポイントを挙げた。宮尾氏は漬物の歴史を古墳・飛鳥時代、奈良時代にまでさかのぼって説明し、現在の漬物の多くが江戸時代には完成したと述べた。その後、近代化・工業化し、発展してきたと分析した。
 

日本食育学会 伏木 亨氏 講演(電子版限定)

日本食育学会 伏木 亨氏 講演(電子版限定)
 
「幼い頃から、ダシのうま味を味わうことは重要です」
 一般社団法人日本食育学会(中村靖彦会長)は2016(平成28)年11月13日、明治大学駿河台キャンパス・リバティホールでシンポジウムを開催。龍谷大学の伏木亨教授を招き、演題に「幼い頃から、ダシのうま味を味わうことは重要です」を掲げ、記念講演を開いた。講演の要旨は以下の通り。
◇     ◇
 ダシのことを中心にお話ししたい。ダシの美味しさとはうま味が中心となって、幅広い色々な味わいに底辺となって利いている。一体、日本料理と和食はどう違うのか。日本料理は一言で言ってしまえば、高級料亭が出している料理。和食はもともと郷土料理で、色々な影響を受け、幅を広げてきた。麺類や寿司も入ってきたし、海外から来たものも日本の中にしっかり取り込んで、非常に幅広く発展してきた。ご飯があって、ダシの利いた吸い物、香の物、ご飯に合うような多彩な副食、そういう形式がある。
 うま味を大事にして、うま味のレベルが高くなるように調理しているということは日本も海外も変わらない。日本のダシは短時間で出して、余計な味を出さない。それが実は素材を生かすための大事なポイント。それは日本の美意識とも関係している。日本の食は素材を大変、大事にしている。自然を極めて身近に感じながら、季節感、季節の移り変わりを大事にする。
 日本人は肥満する前に糖尿病になってしまう。私は糖質と脂質では、制限すべきは脂質の方ではないかと考えている。日本食は塩が多すぎるという意見が昔からあった。日本食は塩味のないご飯が多いので、カリウムが多く、どうしてもナトリウムを要求する。今はダシの味をしっかり利かせれば、塩分はかなり少なくて良いという意見もある。また、全体として食事をとらえた方が良く、例えば、漬物は塩分があるから駄目だという意見と、1日2回、漬物を食べている人の方が延命効果があるという意見もある。これは漬物に延命効果があるわけではなく、漬物をたくさん食べている人は日本型の食事をしている、それが良かったということ。食はいろいろな相互関係の中に成り立っていて、一つだけ取り出しても全体像が見えなくなってしまう。
 我慢をしないで、しかも自然に健康な食に到達することは、ダシの力でなんとかなるのではと考えている。油、砂糖、ダシというのは特別な食材。特に油と砂糖は好きになったら止められない。油と砂糖はアメリカの代表的な美味しさ。それに対して、日本人・アジア人はダシの美味しさを文化的に持っている。ダシという3つ目の選択肢があったら、それだけで脂と砂糖に対する負荷が少なくなる。
 食志向は遺伝しない。教えるしか伝える道はない、経験させるしかない。うま味とダシは先天的に美味しいと感じることが分かっているが、匂いは完全に後天的。幼稚園・保育園を中心としたところから、小学校低学年・中学年ぐらいの時期に、ダシの香りを刷り込めば、大人になっても違和感がない。日本の子供たちは子供の頃に「和」の食を経験して、一時はジャンクな食事に走るが、40歳、50歳、60歳になってカロリーがいらなくなったら、戻る場所がある。子供の食育というのは大人になって戻る場所を教えているのではないか。食育教育というものがあるとしたら、匂い教育。ダシの匂いになれる、これが一番大事。
 大学生にダシを飲ませると、歓声が起きる。その時、日本人は本物の美味しいダシの味を知らないと思った。料亭で出しているのが本物のダシと考えれば、あのダシの味は経験しないと分からない。これを経験すれば、普通のダシも分かるし、敏感になる。ハードルを高くすると文化は消えてしまう。本物の味を年に1回でも2回でも、味わえれば、普段は顆粒ダシでも良い。
 お盆と正月の2回ぐらいは、昆布をちょっとたくさん使って、鰹も2倍ぐらい使えば、美味しいダシが出るので、そういうダシを取った方が良いのではないか。それが子供の食育教育にも直結する。
【本文記事は2016(平成28)年11月21日第4868号8面に掲載。講演録は電子版限定】
 
 

山形漬協 小泉武夫氏 講演(電子版限定)

山形漬協 小泉武夫氏 講演(電子版限定)
 
「和食を食べて健康に生きる」
 山形県漬物協同組合(近清剛理事長)は2016(平成28)年10月5日、山形市内の山形県文翔館議場ホールで、講師に東京農業大学名誉教授(農学博士)の小泉武夫氏を招き、公開講座を開いた。共催は全日本漬物協同組合連合会(近清剛会長)。講演の内容は以下の通り。
◇    ◇
 和食がユネスコの無形文化遺産になりましたが、私は登録の委員をやっておりました。日本では洋食化が進み、朝ごはんで洋食の食事は51%で、和食は49%となっています。それで保護しなければいかんということで、保護遺産になったわけです。われわれは次の世代のために、和食を守らなければなりません。
 和食には大きな柱が5つ、あります。1つ目は洗練された食生活で、その原料は水。日本の水は世界で一番良い水なのです。2つ目は心で味わう世界。春夏秋冬と季節が明確に分かれるのも日本だけです。春夏秋冬で心が作られ、それに合わせて「旬」の食べ物が作られます。日本人には食べ物に対する畏敬の念もあります。水と塩だけは生命がないが、それ以外の全ての食べ物は生き物です。「いただきます」には畏敬の念が込められています。3つ目は「美味しさ」です。人間には5つの味を感じる「五味」があると言われてきましたが、日本ではそれに「うまみ」を加えて、今では「六味」となっております。4つ目は世界で一番、発酵食品が多いことです。漬物は日本が世界一多いです。日本ではたくあん漬だけでも、いぶりがっこ、つぼ漬、べったら漬、べん漬など67種類あります。漬物、味噌、豆腐、塩辛など、日本は発酵食品が多いのです。和食の基本定義は一汁三菜。ご飯と味噌汁、3つのおかず。もう一つは「香の物」(漬物)。漬物は和食を成立させる大切なものです。
 そして、5つ目は健康を作る食事ということ。和食は根茎、葉、青果、山菜・茸、豆(大豆)、海藻、穀類(米・麦・蕎麦)の7つの食材で成立しています。全部、植物です。
 都道府県別の平均寿命を見ると、山形県(男性)がベストテンに入っています。かつて、トップだった沖縄県は男性で30位、女性で3位となっています。沖縄は医食同源・薬食同源でやってきていたのが、アメリカの食文化が入ってきて、肉の摂取が増えました。沖縄県で平均寿命が下がったのは、大腸がん、直腸がん、潰瘍性大腸炎などが増えたからです。
 日本の国家予算に占める医療費は30兆円を超しました。みんな、和食の底力を忘れています。日本人は先程の7つの食材を摂り、栄養を摂るために腸が長くなっています。肉を食べてもいいが、食べ方があります。今、われわれは民族の遺伝子に逆らっています。早く和食に戻さないと、漬物を食べないといけない、そういう時代になっています。
 肉タンパク質は体の中に入ると、肉アミノ酸になります。腸の中に悪性菌がたまり、がんが発生しやすくなります。そこで食物繊維が重要になります。和食の7つの食材はみんな食物繊維でできています。悪性菌は繊維につかまって体の外に出ます。
 繊維が腸に行き、腸内で免疫細胞が獲得できる、これが今の医学です。体の中の免疫の85%は腸で作られます。腸を大切にするのが長生きの秘訣です。免疫力を強くするには、繊維を、特に野菜を、漬物をたくさん摂ることと、乳酸菌製剤を摂ることです。また、広島大学名誉教授の渡邊敦光先生は被爆したマウスに味噌を混ぜたエサを投与する実験を行い、味噌の力、発酵食品の免疫力を示されました。
 最後に、すごく免疫力を高めてくれるのは、どうやら山形県の漬物らしい。どうか、皆さん、漬物を食べて、和食を食べて元気になりましょう。
【本文記事は2016(平成28)年10月24日第4865号2面に掲載。講演録は電子版限定】
 
 

東北漬協総会 大羽全漬連副会長 講演

東北漬協総会 大羽全漬連副会長 講演
 
「漬物の明日を考えよう」 発酵漬物の定義作りから
 東北漬協通常総会[2016(平成28)年6月21日]議案審議後は、東海漬物株式会社代表取締役会長で、全漬連副会長でもある大羽恭史氏の講演が行われた。演題は「漬物業界の明日を考えましょう」で、業界の先駆を担ってきた大羽氏の講話に注目が集まった。
 大羽氏は、「明日」という言葉についてまずは触れ「今という時代は、希望や夢が失われているが、いつの時代も明日という言葉には、夢や希望という意味合いが感じられなければならない」とし、時代認識を相関させながら漬物業界の現代史を振り返っていった。
 大羽氏は漬物出荷金額と世帯当たりの漬物消費金額を示し、双方が最近の約10年間を見ても同じ割合で減少していることを指摘。その原因は、原料原産地表示や東日本大震災、さらにはO‐157食中毒事件にあるとしがちだが、2012年には下げ止まりが見られることから、漬物消費量自体が単に衰退してきた現実があることを報告した。
 そして大羽氏は「それではこうした厳しい現実がなぜ起きているのか?」ということをあらためて考えてみたいとし、時代との相関関係をさらに丁寧に掘り下げていった。
 そこで、示されたデータは我が国の人口減少と人口構造の変化で、2000年をピークにして、2060年には人口1億人を切るというもの。
 これに対し企業経営計画は、将来人口が伸長し続けるという仮定でプランが練られてきた。しかし、それは最早、幻想に過ぎないという理解が必要だとした。
 人口構造については65歳以上の全体における割合がどんどん増える一方で、15歳~65歳という生産人口割合は減り続けていることを大羽氏は示した。
 以上のような経済全体におけるマイナス要因を整理し、将来を考えることが漬物業界の明日につながるという見解を大羽氏は報告した。
 
ドラッガーと漬物業界
 日本経済が拡大する妄想を捨て、正確に未来を見据える。そうしたことが、漬物業界の可能性を探っていく中で必要だという認識を大羽氏は述べた。そして、大羽氏は、経済政策実務者の考えをヒントに方針を考えたことを話した。
 その経済実務者とは、岸博之慶應義塾大学大学院教授で岸氏の言葉から、生産性向上とはイノベーション(技術イノベーションとビジネスイノベーション)であるとし、大羽氏はビジネスイノベーションに注目する中、それは創意工夫であり、創意工夫の種は現場にあるとした。そして、現場力が強ければ、ビジネスイノベーションが成し遂げられるという岸氏の提言を漬物業界にも取り入れたいとした。
 また、大羽氏はピーター・ドラッガーの教えにある企業の目的は、顧客の創造であり顧客創造のためには他社よりも優れた価値を提供し、顧客を満足させるしかないことを紹介。その後は、企業の基本機能はイノベーションとマーケティングしかないとするドラッガーの提言を、漬物業界に関連づけて説明する試みを大羽氏は展開していった。
 
漬物の壁を打ち破れ
 漬物業は、生産しても近場で消費するのが当然で、全国流通させるという意識さえそもそも存在しなかった。これを全国流通させるために導入されたのが、熱処理という加工技術であった。英語でいうパッショライゼーションが、当時の技術革新であったことを大羽氏は取り上げた。
 現在はHACCP導入のための手引書にある通り、浅漬けも加熱殺菌工程を加えることが推奨されており、漬物と惣菜の壁は薄くなりつつある。製造工程に熱を加えることで、新しい漬物を開発するチャンスは拡がっている。つまりは、ドラッガーの言うビジネスイノベーションに注目し、漬物業界も新しい商品開発がこれからも必要になってくると大羽氏は考えを示した。
 また、新商品開発と言う点では、今年4月に行われた漬物グランプリで農林水産大臣賞を受賞した「カマンベールWASABI」は、わさび漬の概念を壊すことによって、新たな消費機会を創造したとした。それに対し、消費者も高い評価を下したことについても大羽氏は触れ、その開発力を絶賛した。
 
地域特産にこだわる
 また、大羽氏は洋食、和食と言う枠組みを取り払い、食における健康を考えることが重要であることを話した。これは、政府・農水省が最近示した2015年版「米国人のための食生活指針」に注目する中からヒントを得たとし、アメリカにも健康的なライフスタイルを持っている人がいることを紹介。それは、生活全体の中にスポーツを取り入れ、カロリー消費をしながら食生活を楽しむというものであった。また、そうしたライフスタイルにおいて普及している食生活が地中海食と菜食主義であるという。菜食主義というのは、がん罹患率が低くなることが統計的に示されたことにより普及した。日本人になじみが薄い地中海食もまた、毎日食べる食材にチーズ・ヨーグルト、オリーブオイル、果物・野菜・豆類・木の実・穀類があり、菜食主義に近い傾向を持っている。これらは有機野菜摂取を嗜好する考え方に結び付き、さらには「どこの誰が作ったのか」ということにまで意識が向いているとした。
 以上のような傾向は、和食を含む世界の食文化無形文化遺産にも注目することを好み、グローバル化が進めば進むほどローカルに魅かれていくという人の特性にも関連性があるという。結果、ローカルな物を売り物にしていくチャンスが広がってきており、その国の伝統的な食に触れたい、つまりは地域特産にこだわるという欲求に繋がっていくとした。
 
漬物と健康に大きなチャンス
 グローバルに物事を捉えるとローカルに再び注目が集まるということから、漬物について考えると「漬物の健康力の訴求」をPRしていくことが大事であることに大羽氏は言及した。ビタミン、ミネラル、機能性、食物繊維、植物性乳酸菌ということが漬物の健康力として上げられる。講演では、これら一つ一つの特性を振り返り、漬物と健康に大きなチャンスがあることを以下の5つにまとめた。①全漬連が取り組む漬物の健康力訴求テーマを、「発酵漬物」とする。②学識経験者の力を借り、わたしたちも勉強し、漬物業界で「発酵漬物」の定義を作る。③組合員各社は伝統的な製法を活かし、「発酵漬物」を開発・販売する。④地域特産漬物を「発酵漬物」の視点でまとめ、漬物マップを作る。⑤学識経験者の力を借り、マスコミに漬物の健康力をPRしていく。大羽氏は、以上のことは平成27年度全漬連組織委員会からの提言から引用したもので、これらの重要性を看過せず漬物の魅力を語っていくには、組合員各社の企業力を高める必要があることを確認し、営業マンを含め「漬物製造管理士・技能評価試験」にチャレンジしていくべきだと結んだ。
 
質疑応答
 質疑応答では、漬物と塩分との関りが主に取り上げられた。塩分にまつわる問題が漬物の需要を下げていることが長く指摘されていることについて、どう捉えるべきか、ということが話題となった。
 これに対し、大羽氏は漬物の塩分は低減化されてきた長い取り組みを持っている、ゆえに「その点に固執せず、他のもっと良い点を語っていくべき」との見解を示した。たとえば、沢庵の現在の塩分濃度は3%弱で、昔は14%という時代もあった。それらを説明するだけで、なぜか漬物は不健康であるという神話が未だにまとわりついている。だからこそ、他のもっと良い点を強調していくべきだとした。
 一方、近氏は「塩と健康」に関する書籍、出版物は身近になってきていることを指摘。その様な資料の共通点は、塩は適塩で摂取する事により健康性を増進させるというもので、京都漬協45周年記念シンポで取り上げられたように、龍谷大をはじめ学会でも塩の健康性に対するエビデンスが提出されてきていることを再度紹介した。ゆえに全漬連は適塩に対する提言をまとめ、行政にも呼び掛けていく方向性を検討中であるとした。
 こうした議論が交わされる中、大羽氏は、難しい問題であるとした上で、漬物の他のもっと良い点を強調していくことで需要喚起に結びつけたいと話した。つまりは、講話でも触れたように漬物の健康性をPRしていく意義を強調した。そうした意味では、全漬連のこれまでの取り組みを継続させることが漬物業界の未来を切り開いていくことに繋がるとした。(中村裕貴)
【2016(平成28)年6月27日第4851号2面】
 
 
   
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