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インタビュー2025

10月21日号 おせち特集インタビュー

全国調理食品工業協同組合 副理事長 佐々 重雄氏

原料状況厳しさ増す 生産性向上と効率化に力
 全国調理食品工業協同組合(岩田功理事長)の佐々重雄副理事長(株式会社佐々商店代表取締役社長)にインタビュー。おせち商戦や今後の見通しなどについて聞いた。佐々副理事長は原材料費や最低賃金の上昇など厳しい環境が続く中、引き続き生産性の向上や効率化に取り組んでいく必要性を語った。(藤井大碁)
ー今年のおせち商戦の見通し。
 「おせち商戦のスタートが年々早まっており、これまでのように年末30日や31日におせち商材が飛ぶように売れるという光景が見られなくなってきている。おせち商戦のスタートが早まることにより、おせち商材が店頭に並ぶ期間は長くなっているものの、食べる量は変わらないため、売上の伸びは限られる。今年もその流れに変化はないだろう」
ー原料状況が厳しさを増している。
 「特に厳しい状況となっているのが、丹波篠山産の黒豆。猛暑の影響により、収量が大きく減少し、確保が難しくなっている。丹波篠山産の黒豆は、ブランド品として知られているため、売場への影響は大きい。昆布巻きに使用する昆布についても、北海道で一昨年並みに採れてはいるが、需要がそれ以上に高まっており価格が上昇している。栗は国産、中国産ともに収量減や人件費高騰、為替の影響などにより仕入れ価格が毎年上昇している。韓国産についても老木化の影響で収量が減少しているため価格が高騰している。田作りに関しても、慢性的な不漁が続いており引き続き確保が難しい状況となっている」
ー最低賃金上昇の影響。
 「埼玉県においても11月1日より最低賃金が時間額1141円となり、これまでより63円引き上げられる。当社においても可能な範囲で機械化を進めているが、おせち商材は手詰めが基本であり、機械化には限界がある。最低賃金の上昇により、物流や包材など各方面から値上げ要請も来ており、製造コストはさらに上昇する。原価計算をしっかりと行い、価格改定を進めていく必要があるが、全てのコスト上昇分を価格転嫁することは難しい。値ごろ感を維持しながら販売していけるよう引き続き生産性の向上や効率化に取り組んでいくことが求められる」
ー惣菜や佃煮など通常品の動き。
 「惣菜製品については、『筍と蕗の土佐煮』や『あさり生姜』などの和惣菜が好調で、ひじき煮についても人気が高まっている。一方で、国産原料使用の要望が根強いこともあり原料の調達が年々難しくなっている。佃煮製品では『ちりめんくるみ』など小魚系のアイテムの人気が高いが、近年、小魚の水揚げが少なくやはり原料確保に苦労している」
ー今後について。
 「惣菜はバリエーションが多く、原料手当てが難しいが、少子高齢化や核家族化が進む中で引き合いが強く、原料確保がしっかりとできさえすれば今後も伸びが期待できるものと考えている。佃煮は米価格の高騰などにより苦戦が続いているが、おにぎり人気の高まりなどの追い風もあるので今後の巻き返しに期待したい。当社では10月より新期を迎えた。まずはおせち商戦で良いスタートを切ることで、良い流れを作っていきたい」
【2025(令和7)年10月21日第5210号3面】  

佐々商店

10月21日号 おせち特集インタビュー

菊池食品工業株式会社 代表取締役社長 菊池光晃氏

栗きんとんの需要高まり 特大サイズ発売し値ごろ感訴求
 煮豆、佃煮、惣菜の大手として知られる菊池食品工業株式会社(東京都板橋区大山)の代表取締役社長兼COOの菊池光晃氏にインタビュー。今年のおせち商戦や今後の見通しについて聞いた。同社では節約志向が高まる中、栗きんとんの大容量品を発売する他、セット物のラインナップを拡充。値ごろ感を訴求することで、消費者ニーズに対応していく。
(藤井大碁)
 ‐おせち商戦の見通し。
 「節約志向が昨年以上に高まっており、今年は数字が読みにくい。だが近年の流れを鑑みると、おせち料理に引き続き底堅い需要があるのは確かであり、大幅に増えることもなければ減ることもないと見ている。様々なコストが上昇する中で、より美味しいものを付加価値を付けて販売するなど、商品価値を今まで以上に高めて、単価を上げる工夫をしていかなければならない。個人的には、おせちは神社のおみくじと同じように縁起物なので、価格に左右されず買う人は買うし、買わない人は買わないと考えている。より美味しい物を一年に一度のお正月の大切な食卓で食べてもらえるよう最善の提案を行っていく」
 ‐栗きんとんは昨年も過去最高売上を記録した。
 「わかさぎいかだ焼やえび鬼がら焼などの串物が年々減少するなどおせち商材が集約する流れの中でも、栗きんとんへの需要は強い。昨年も値上げを実施したものの、数量は底堅く推移し、過去最高売上を達成した。今年は昨年売れ行きの良かった大容量品よりさらに容量を増やした430gの特大サイズを新発売する。大人数でたっぷり楽しめるため、お得感が強い。またおせち関連のセット物商品も拡充し、一度に多品種が食べられる値ごろ感を訴求していく」
 ‐重詰め商品を昨年新発売した。
 「昨年は初年度としては売れ行きが良く、今年も昨年以上の数が販売できるよう商品ラインナップを増やすなどして取り組んでいる。冷凍技術の進化により、冷凍おせちのレベルが格段に上がっている。味付けも薄味で食べやすく、高品質のお重を消費者に届けることが可能になっている。重詰め市場は飽和状態にあるものの、本当に美味しいものを提供できればそれに見合ったシェアが獲得できると考えており、引き続き力を注いでいく」
 ‐今年の原料状況について。
 「昨年、国内産丹波黒豆は猛暑と干ばつの影響で凶作となり確保が難しい状況だ。昆布巻きも昆布の漁獲量や巻き手が年々減少しており不足感が強い。栗についても国内外の原料が高温障害などにより減産となっている。おせち料理の原料は全体的に引き続き厳しい状況が続いている」
 ‐通常品の動き。
 「佃煮製品も他のカテゴリーと同様に値上げの影響があり、数量は若干減少している。だがご飯のおかずやお弁当、おにぎりの具材としてしっかりとした需要があることも確かだ。ようやく暑さが落ち着き新米も出始めているので、これからの需要の高まりに期待したい」
 ‐今後の見通し。
 「10月から最低賃金が上昇する影響は大きい。自社の賃金アップだけでなく、物流や資材などあらゆる方面から賃金上昇に伴う値上げ要請がきており、製造コストがもう一段上昇することが確実になっている。こうした状況の中、これまで通りのことをやっていても利益を確保することは難しい。どういった商材で利益を出すかを考え、それ以外のアイテムを絞り込み、機械化を図っていくことが求められる。これからは、メーカーが特定の分野でスペシャリストとなり、これだけは品質や価格で絶対に負けないという商品を展開していくことが必要ではないだろうか」
【2025(令和7)年10月21日第5210号4面】

菊池食品工業

https://www.kikuchi-shokuhin.co.jp/

10月21日号 おせち特集インタビュー

丸千千代田水産株式会社 卸営業部加工品課 課長代理 横山 拓氏

佃煮セットを新発売 美味しさアピールし売上増へ
 丸千千代田水産株式会社(石橋秀子社長、東京都江東区豊洲)卸営業部加工品課課長代理の横山拓氏に今年のおせち商戦の見通しや主要アイテムの動向などについて聞いた。横山氏は、原料状況が厳しさを増す中、その時々の状況を見定めて、最良の商品提案を行うことで売上増につなげていきたいと話した。(藤井大碁)
ーおせち商戦の見通し。
 「今年は例年以上に原料状況が厳しく、おせち関連商品の値上がり幅が大きいため数量は減少すると予想される。しかし1品あたりの単価は上昇するので、売上は前年並から微増で推移すると想定している」
ー原料状況について。
 「価格が高いだけではなく、量の確保が難しくなっている。丹波黒豆、田作り、昆布巻きなどのアイテムで原料が不足している。仕入先様とお客様とこまめにやりとりしながら納品していく」
新発売する佃煮セット
ー新たな取組。
 「丹波黒豆の国産原料が不足する中で、滋賀県産の黒豆『近江の黒豆』を使用した煮豆を新発売する。来年以降も国産丹波黒豆の不作が続くことを想定し、提案に力を入れていく。昆布巻きでは、1本物の昆布巻きが原料不足や価格改定で厳しい状況となる中、鮭と鰊の2種類が同時に楽しめる少量サイズのセット商品を発売する。また、セット物では新たに『海老あられ』『くるみ小女子』『わかさぎ』『切いか』を詰め合わせた佃煮セットを発売する。わかさぎ、鬼がら、あさり、はまぐりといった串物の値上げ幅が大きいため、普段一般的に食べられている佃煮を詰め合せることにより、消費者がより手に取りやすい形へ工夫していく」
ーおせち主要4品の動向。
 「栗きんとんは、輸入の栗について価格が上昇しており、国産の栗も小さいサイズの確保が難しくなっている。商品としては、国産の栗を使用した栗きんとんが近年伸びている。黒豆は前述の通り国産の丹波黒豆が不足しており、当社では近江黒豆の煮豆を提案する。田作りに関しても、慢性的に原料が不足しており、カタクチイワシではない小魚を使用した田作りを発売する佃煮メーカーも出てきている。昆布巻きについても、北海道産昆布は昨年不漁で、今年も価格が高止まりしている」
ー課題について。
 「原料確保が最重要課題となっているが、節約志向が強まる中、全体的に価格が上昇してきているため、おせち離れにつながらないか懸念している。当社としては、価格ではなく、美味しさをアピールしていくことで、売上増につなげていきたい。商品の魅力を分かりやすく伝えるため、売場でPOPを掲示することにも力を入れていく」
ー通常品の動き。
 「鮮魚売場に提案する業務用製品が好調に推移している。今年特に売れているのが『いわし生姜煮』『子持ちししゃも』など魚介系の佃煮製品。不漁が続く中、仕入れが漁模様に左右されない魚惣菜として鮮魚バイヤーから重宝されている。店舗にストックしておき、その日の漁模様により佃煮を展開することで売場のバランスをとることができる。小魚の佃煮も売れているが、魚屋らしい魚介佃煮もここにきて好調だ」
ーメーカーとの協業で新商品も開発している。
 「最近発売したのが、いわし甘露煮を油で揚げた新商品『つくだ煮フライ』。惣菜売場で魚フライが売れているという情報があり、佃煮をフライにするという発想に至った。豊洲年末展示会でもたくさんの来場者にご試食いただいたが評判が良く、来年から本格的に販売していく予定だ」
【2025(令和7)年10月21日第5210号3面】  

丸千千代田水産
https://www.marusen.co.jp/

10月21日号 おせち特集インタビュー

三河佃煮工業協同組合 理事長 小林利生氏

セット商品のニーズ堅調 
佃煮は「付加価値向上」が課題
 三河佃煮工業協同組合の理事長を務める小林利生氏(株式会社小林つくだ煮社長)に、おせち商戦や原料状況についてインタビューした。小林理事長は、おせちの需要はピークをすでに迎え、重詰めにおいてはオードブル化や、小サイズを求める消費者の動きに拍車が掛かっていると話す。佃煮メーカーとしては、少量で多品種揃えるセットものの堅調なニーズに応えつつ、年末商戦の需要を獲得していく流れが出来ていくだろうと語る。 
(大阪支社・高澤尚揮)
◇   ◇
ーおせち商戦の動向。
 「昨年と比較し、おせちの全体的な市場規模は小さくなると見ており、その傾向は今後も続いていくのではないか。昨年は前年と比較し、重詰めおせちが全国的に10%程度値上がりし、消費者による節約志向で、販売数量は同程度落ちたという話を聞く。オードブル化や小サイズを求める消費者の動きに拍車が掛かっている。単品おせちについては、特に人気の高い栗きんとんや国産黒豆煮などを除けば、価格改定をしても、利益が確保できる商材は絞られてくるだろう。今後は単品おせちも選ばれにくくなり、厳しい局面だと捉えている。数品目を少量ずつ楽しめるセットものに関しては、堅調なニーズがあると感じているので、ニーズに応えていきたい」
ー原料状況。
 「様々な原料の入手が非常に厳しい状況となっている。田作原料のカタクチイワシは、加工業者数の減少傾向で小羽の入手が全国的に難しい。入手できても価格が高騰しているので、今年は昨年に続き田作製品の価格を5~10%値上げしているメーカーが多い。次に原料難で深刻なのは、昆布巻きだ。北海道産昆布の漁獲量は年々減っておりかつ昆布巻きは巻き手の高齢化や引退が進んでいるのが現状。製品価格は5%~15%はこちらも上がっている。田作、昆布巻きは特に原料難で、その他、今年はカリフォルニア産のくるみにおいて、アメリカのインフレや円安の影響で価格が上がった」
ー佃煮や佃煮おせちの需要は。
「一年を通してみると、佃煮には堅い需要がある。ただ、嗜好性が強いため物価高騰の中で値上げを実施すると販売数量が落ちる。各メーカーは製造アイテムの集約化を図っているところ。佃煮を『ちょっとした贅沢品』と、消費者へ付加価値を感じてもらえる存在にしていくことが業界としての課題だと思う。年末は家にいる時間が多くなりやすく、お酒を飲む機会もできやすい。おつまみ需要を狙っていくのもその一つで、佃煮以外の水産加工品、さらには珍味の業界に目を向ければ、製品作りの面で学べることが多く一考の余地がある」
ー組合では、子ども食堂でつくだ煮弁当の企画がある。
 「ここ数年、青年部組織の豊橋佃志会と連携し、会員企業のつくだ煮を子ども食堂へ寄贈している。子ども食堂の方々は、つくだ煮をアレンジしてくださり、一昨年は節分にあわせていわし甘露煮弁当、昨年はあさり佃煮の押し寿司弁当、今年1月はつくだ煮おにぎり弁当を子どもたちへ提供することができ、喜んでもらえた。来月11月16日には、大葉ちりめん、梅とさんまの炊き込みご飯の2種類を贈呈し、『つくだ煮味ごはん弁当』を手作りしていただく予定だ。組合では、つくだ煮の食べ方の可能性を引き続き追及していきたい」
【2025(令和7)年10月21日第5210号7面】

秋田県八郎潟特集インタビュー

佐藤食品株式会社 代表取締役社長 佐藤賢一氏

佐藤社長
本社焼失経てカフェ開店
佃煮とコーヒー楽しむ食習慣を
 佐藤食品株式会社(秋田県潟上市)の佐藤賢一社長にインタビュー。同社では昨年3月、本社社屋がもらい火による火災により焼失。その後、昨年12月より新店舗に移転し営業を行っている。今年6月にはカフェ「Sugar」をオープン。佃煮文化を若い世代に発信している。佐藤社長は佃煮をコーヒーとともに楽しんでもらう新たな食習慣を根付かせていきたいと抱負を語る。
(藤井大碁)
‐火災により本社が焼失した。
 「2024年3月13日深夜1時頃に隣家より出火し、当社社屋に燃え移った。自宅からすぐに駆け付けたが消火することはできず、パソコンやサーバー、書類など特に大切なものを持ち出すのが精一杯だった。火災により店舗、事務所、パックセンターが焼失した。工場は無事で、被災後も製造を続けられたのは不幸中の幸いだった」
‐被災後の対応。
 「明け方に鎮火し、社内の連絡ツールより社員宛てに、“火事で社屋が被災したが通常出勤してもらって大丈夫です”という連絡を入れた。社外向けにはSNSで被災したことを発信し、電話やFAXがつながらない中、事実関係を正確に伝え、早期復旧に向けて取り組んでいくことを宣言した。早朝、駆け付けてくれた社員が焼け落ちた社屋を前に、涙するのを見て、自分が落ち込んでいる暇はなく、冷静になり頑張らなくてはならないと吹っ切れた。たくさんの方からご支援やお見舞いのメッセージをいただいたことも大きな励みになり、心より御礼を申し上げたい」
‐復旧までの道筋。
 「被災した当日の朝礼で、商品出荷を再開する復旧までのタイムスケジュールを社内共有した。販売先のスーパーの棚を切らすわけにはいかないため、出荷再開時期を一週間以内に設定。当日午後には一部製品の製造を開始した。工場が無事であったため製造は再開できたが、パックセンターの焼失によりラベル機やラベルデータが失われ、出荷ができないという課題に直面した。3日後に臨時の手貼りラベル機が導入され、ようやく出荷準備を再開。手貼りによる作業は大変な時間と労力を要したが、その後、3月22日に自動ラベル機が導入され、ようやく従来の出荷工程に復帰することができた。被災してしばらくは、イレギュラーな案件が多く、瞬発的な判断を連続して求められることに苦労した。出荷ミスを防ぐ仕組みなど今まで作ってきたマニュアルが非常時には使用できないことも大きな負担だった」
‐新店舗への移転。
 「地元の銀行の支店が移転するという話を聞いて、その店舗を買い取り、新店舗として使用できないか交渉を始めた。社員に今後のスケジュールやビジョンを説明。交渉は順調に進み、11月に改装工事をスタートし、12月2日に店舗併設の新本社を開設することができた。新本社にはオープンキッチンのようなパックセンターも併設されており、佃煮を買いに来たお客様は、リアルタイムでパッキングされる佃煮を眺めながら購入していただくことができるようになった」
‐今年6月28日に本社併設のカフェ「Sugar」をオープンした。
 「もともと佃煮専門店に来店してもらうための敷居を下げたいと考えており、カフェ構想は移転する前から持っていた。パンケーキなどのカフェメニューを提供していることもあり、おかげ様でオープン後、若い客層のお客様にも多く来店していただいており、来店客の2~3割がカフェで飲食した後に、佃煮を購入してくれている。秋田ではお茶請けとして佃煮を食べる食文化があったが、急須でお茶を入れて飲む習慣が失われつつあり、佃煮をコーヒー請けとして楽しんでもらう新たな食習慣を根付かせていきたい」
【2025(令和7)年10月21日第5210号8面】

佐藤食品

秋田県八郎潟特集インタビュー

有限会社佐藤徳太郎商店 代表取締役 佐藤進幸氏

佐藤社長
開発力とブランド力強化
DX化により業務改善進める
 有限会社佐藤徳太郎商店(秋田県潟上市)の佐藤進幸社長に販売動向や原料状況などについてインタビュー。佐藤社長は人口減少が課題となる中、八郎湖のポテンシャルを生かすことで、地元中小企業が業容を拡大し、人口減少を食い止めていきたいと話した。
(藤井大碁)
  ◇      ◇
‐販売動向について。
 「売上は前年並みで推移している。ここ何年か伸長を続けてきたが、昨今の節約志向の高まりや米高騰の影響により動きはやや鈍っている」
‐今期の漁模様。
 「ワカサギの漁獲は昨年より若干少ないが順調に獲れている。シラウオについても今年は漁獲量が少ない。高齢化などにより漁師が減少しており、自社で8年前より船舶免許を取得し、現役漁師から私ともう一人の社員がノウハウを継承しているが、独自の技法を頭に入れる必要があり、漁業の難しさを感じている。八郎湖ではワカサギが今は獲れているが、いつ獲れなくなるかは分からない。100年先も続けられる漁業を目指し、資源保護にも力を入れていかなければならない」
‐原料不足が続いている。
 「社内の仕事を細分化して職人技が必要な専門職と誰にでもできる一般職に分けてきたが、若手社員の成長が著しく、どちらもできる社員が増えてきた。それに伴い、原料がたとえ無くても、今ある原料で美味しい商品を作る技術が培われている。社員が自信を持って全国のお客様に食べてもらいたいと思う商品を開発できるよう、開発力とブランド力の強化を進めていく」
自社でワカサギ漁にも取り組む
‐北海道の小女子の状況。
 「当社は北海道寿都町に工場がある。昨年の小女子の水揚げはゼロだったが、今年は漁スタートから初日8トン、2日目10トンの水揚げがあった。資源保護のため、3日目からは休漁となったものの、変化の兆しはある。現在は工場の修繕工事を進めており、来年以降の水揚げに期待し、設備を整えている」
‐力を入れている取組。
 「この1年間はDX化に取り組んだ。DX関連会社をグループ化し、社内システムを構築した。各社員が1日にこなす仕事量やそれにかかる時間を見える化することにより、業務効率化が進んでいる。また新たに営業社員が2名入社し、秋田県の人口が減少する中、県外への販売へ力を入れている」
‐現状の課題。
 「人口減少が想定より早く進んでおり、若い世代の採用が難しくなっている。若い世代に働きたいと思ってもらえる業務内容の構築だけでなく、新社屋建設の計画も立てており、理想の職場づくりを通して採用に結び付けていきたい」
‐今後について。
 「北海道寿都町では明治時代まで人口がゼロであったが、中小企業が水産加工場を作ったことで、人口が増加していった。それを考えると、多少の人口減少で成長を諦めてしまった自分を情けなく思った。まだまだ八郎湖も秋田もポテンシャルはいくらでもある。それを生かして地元中小企業の経営者が業容を拡大することで、人口減少を食い止めるべく取り組んでいきたい」
【2025(令和7)年10月21日第5210号8面】

佐藤徳太郎商店
https://www.tokutaro.jp/

<キムチ浅漬インタビュー> 西海食品株式会社 常務取締役 高見 祐貴氏

付加価値のある商品を開発
業務用や麺類好調で増収
 今年1月に西海食品株式会社(高見健二社長、東京都板橋区)の常務取締役に就任した高見祐貴氏にインタビュー。同氏は百貨店に8年間勤めた後、2022年4月に同社に入社し、営業を中心とした業務に取り組んでいる。期待の若手として活躍の場を広げる同氏に今後の販売戦略や業績などについて話を聞いた。
(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐経歴について。
 「大学を卒業して百貨店の株式会社松屋に就職し、8年間衣料品や食料品を担当させていただいた。ちょうど30歳の時に父である高見伸一会長から戻ってくるよう要請があり、2022年4月に西海食品に入社した。最初は工場の現場からスタートし、今年1月に常務取締役に就任して主に営業業務を統括している」
 ‐浅漬の売れ行きは。
 「既存得意先の浅漬の売上は昨年と同水準だが、新規の得意先もあり当社の売上はプラスとなっている。ただ懸念としては首都圏の小売店様はロス率を気にしており、賞味期限が短い浅漬の棚割りが見直されるようになってきているため、売場が縮小傾向にある。その代わりに賞味期限が長い古漬けやキムチを増やす動きもある。売場のトレンドとしては浅漬の売場が縮小してキムチや古漬が増える流れとなっている。その中において、弊社としては安全で美味しい商品を製造し続け、商品価値を消費者の皆様に認めてもらい、食卓にお届けすることが責務だと考えている」
 ‐製造面の課題は。
 「原料をはじめ、調味資材、人件費などあらゆるコストが上がっている。人口減少、少子高齢化の中で人材を確保することが難しくなってきている。工場については省人化を図りながら、作業手順を見直すなど作業効率を高めていく努力を続ける。工場においては機械化を進めているが、機械を入れても運用することは簡単ではない。漬物の加工については手作業の方が早い部分があるので、バランスを考える必要がある」
 ‐販売戦略について。
 「製造コストの上昇に対応するためには値上げが必要不可欠だが、それだけでは尻すぼみになる。やはり、付加価値のある新商品開発をしていくことが重要だ。当社はキムチにおいては後発になるが、『麹キムチ白菜』は独自性のある商品としてご評価いただいており、今後もSKUを増やしていきたいと考えている。来年は価格訴求ではなく、食べて美味しいと感じていただける付加価値のある商品の開発をより強化していく。また、簡便性のニーズが高まっていることから袋物が苦戦しており、カップに力を入れていく。都心部と地方ではニーズが異なり、世帯人数が少ない都心部は、切ったり中身を移し替えるなどの手間が嫌われる傾向にある。漬物全般に言えることだと思うが、今後はカップの需要が増えていくと見ている」
 ‐12月の決算の見通し。
 「昨年の同時期と比べると増収で増益傾向。プラスの要因は集客力のある得意先の売上が2倍に増えている他、業務用の浅漬の引き合いが増えていることなどが挙げられる。当社の売上構成比は自社製造が4割で仕入れが6割。今後は自社製造の売上比率を増やしていきたいと考えている」
 ‐全漬連青年部会全国大会東京大会について。
 「全国大会に大会運営の一員として初めて参加させていただいた。大会自体が初参加ということもあり、緊張もあったが、全国の皆様と直接交流できる貴重な機会となった。今回はスポーツバーというカジュアルな会場での開催となり、終始和やかな雰囲気の中で進行できたことが印象的だった。一部運営にも関わらせていただいたが、皆様のご協力のおかげで大きなトラブルもなく、無事に終えることができた。ビンゴ大会など懇親企画も工夫が凝らされており、笑顔と会話が自然に生まれる場であったと感じている。初参加ながら、多くの刺激と学びを得ることができ、今後の業務や現場づくりに活かしていきたいと感じた。このような機会をいただいて感謝している」
【2025(令和7)年10月11日第5209号3面】

西海食品株式会社

https://www.saikai.co.jp/

<新社長に聞く> 株式会社河島本家 代表取締役社長 河島大紀氏

「安定供給力」盤石に
紀の川漬は「深化と探索」
 株式会社河島本家(和歌山県和歌山市)は9月、河島大紀常務が新社長に就任した。同社は1931年(昭和6年)の創業以来、「紀の川漬」ブランドを自ら育て上げてきた。河島新社長は、同社の強みは原料確保力とスピーディな対応力にあると分析。今後は営業面の「深化と探索」や、ボトムアップ型の組織づくりに取り組むと語った。
◇    ◇
 ー経歴を。
 「愛媛大学大学院農学研究科資源学専攻を修了後(農学修士)、養命酒製造株式会社に入社し、品質管理やマーケティングで8年間勤務した。その後、家業である河島本家に入社し、まずは製造現場から会社の業務全般を経験した」
 ーギャップもあったのでは。
 「前職は分業体制が機能していたが、従業員約100名の当社では営業が製造を手伝うこともあるなど、複数の役割を担うことになるという働き方の違いをまず感じた。しかしこれは、会社の全体像を常に意識しながら働き、スピード感を持った対応ができるという強みに変換されていた。どっちが優れているということではなく、与えられた状況をどう活かすか次第、というのを早いうちに目の当たりにできた。一方で、製品特性の差があるとはいえ、前職の完璧な検査体制や災害時にも事業を止めないためのBCP(事業継続計画)の緻密さは、当社の規模に合わせて導入・強化していくべき明確な目標となっている」
 ー河島本家の強みは。
 「最大の強みは安定供給力。大根の作柄が全国的に不安定になっている中でも当社は大きな欠品なく商品をお届けできている。契約栽培が99%を占め、作付けの段階から深く連携することで、質の高い原料を安定的に確保できる。原料入庫から出荷まで一貫して低温管理しており、安全で美味しい商品を受注から最速当日中に出荷できる体制も整えている。設備投資にも取り組んでおり、最近では、冷蔵庫の冷却設備を二重化した。万が一の機材トラブルが発生しても、もう一方がバックアップとして稼働する体制ができた」
 ー今後のビジョン。
 「万全な社内体制を基盤に、営業面を強化していく。テーマは『深化と探索』。深化とは、当社の根幹であるブランドの育成。当社は『紀の川漬』の元祖であるが、実際の営業現場ではたくあん・大根漬という括りで提案してきた。これは当社が自ら限界を決め、価値を伝えることを諦めていたようなもの。いま一度『紀の川漬』の歴史や製法、品質へのこだわりを私たち自身が深掘りし、自信を持ってご提案できるブランドへと育て上げることが急務。それと同時に、伝統を守るだけでなく、時代に合わせて進化するための探索も不可欠。具体的には顧客層の若返り。全く新しい分野に飛び込むというよりは、まずは我々の強みである紀の川漬を軸に『半歩だけ踏み出す』商品開発をする。味付けや新規格の工夫、機能性の付加などちょっとした変化でも見え方は変わるはずだ」
 ー経営者としての理想は。
 「社内には、私よりもはるかに長く漬物に携わり、知識と経験を持つ社員がたくさんいる。彼らこそが会社の財産。私の役割は、彼らの知見や技術を最大限に引き出し、組織としての一つの力にまとめることだと考えている。私が先頭に立って全てを牽引するのではなく、会社が目指すべき大きな方向性やビジョンを社員と共有し、それぞれの持ち場で能力を発揮してもらえるボトムアップ型の組織づくりをする。時には部門間の潤滑油となり、風通しの良い組織文化を醸成していくことが、自分に求められる姿だと思う」
(大阪支社・小林悟空)
【2025(令和7)年10月11日第5209号14面】

株式会社河島本家

<キムチ浅漬インタビュー>関口漬物食品株式会社 取締役営業部長 関口 彰氏

バイヤーに刺さる提案を
農水省のロゴ入り商品展開
 関口漬物食品株式会社(関口悟代表取締役、東京都世田谷区)の関口彰取締役営業部長にインタビュー。コスト削減の取組や利益確保の施策などについて話を聞いた。同社では農林水産省が推進している『野菜を食べようプロジェクト』に積極的に参画し、同プロジェクトのロゴを入れた商品を展開するなど、商品に付加価値をつける取組を行っている。今後も同社の強みである季節感やフットワークの良さを活かして「刺さる提案」を心掛けていきたいと語った。
(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐キムチの動向。
 「キムチは『にんにくたっぷり白菜キムチ』が主力で、昨年値上げを実施したのだが、売上は横ばいか微増。市場から評価をいただいていると思っている。今後は新商品開発が課題だ」
 ‐浅漬の動向。
 「これまで取り組んできた季節感と鮮度感を演出することに加え、農林水産省の『野菜を食べようプロジェクト』の活動の一環としてプロジェクトのロゴを入れた商品展開を継続している。ここまでの売上は103~105%。プラスの要因としては需要と供給がマッチした形で、同業者のアイテム集約の影響もある。最近では胡瓜と茄子、キャベツの売上が増えており、新規の取り扱いも増えている」
 ‐コスト削減の取組。
 「生産効率を向上させるため、当社もアイテムの集約を行っている。ただ、一気に進めると提案不足になるので、毎年数%ずつ減らすようにしている。当社は袋製品の割合が高く、全体の7割が袋でカップが3割。簡便性の観点からカップ製品のニーズが高まっているが、カップを増やすと大手メーカーとバッティングして価格競争になる。鮮度感と野菜の味や風味を楽しめるのが当社商品の強みで、効率的に生産できるということでも袋に力を入れている」
 ‐売場が求めているものは。
 「半期というよりも短期の改廃を求めており、当社の季節感を訴求した提案やフットワークの良さが評価されている。商談の時に具体的な落とし込みをしていかないと、マンネリ化して売場も魅力のないものとなってしまう。仕入れ商品も含めてバイヤーに刺さる提案を心がけていきたいと思っている」
 ‐利益確保の施策は。
 「これまでは年間を通しての胡瓜の供給に左右されていたが、近年は販売期間の短縮などの対策を行うことで粗利の改善がみられている。今後は既存の商品に付加価値をつけて販売できるか、ということが重要。そういった商品を開発するためにもアイテムの集約を進めていく必要がある」
 ‐農水省のプロジェクトに参画している。
 「5月から農水省の『野菜を食べようプロジェクト』のロゴを入れた商品を展開している。ロゴを入れるメリットは商談の時にセールストークとして活用することができ、健康を訴求している小売店の共感を得ることもできる。ある意味で農水省のお墨付きをいただいた商品ということで、競合他社からも引き合いがあるなど、付加価値になっている」
 ‐全漬連青年部会全国大会東京大会を終えて。
 「参加された方も含めて、皆さまのご協力があり、とても盛り上がった全国大会になったと思っている。また籠島部長を中心とした大会運営に携わることができ感謝している。これまでの全国大会とは開催方法を大きく変えたのだが、より多くの方々と親睦を深めることができた。この経験を活かして、今後も青年部を中心として、業界を盛り上げていくために尽力していきたい」
【2025(令和7)年10月11日第5209号13面】

関口漬物食品

https://www.sekiguchi-01.co.jp/

<キムチ浅漬インタビュー>株式会社ピックルスホールディングス 代表取締役社長 影山 直司氏

簡便性が高い浅漬展開
流通再編の行方を注視
 株式会社ピックルスホールディングス(埼玉県所沢市)代表取締役社長の影山直司氏にキムチと浅漬の売れ行き、2026年2月期第2四半期(中間期)の決算などについて話を聞いた。利益重視の施策で値上げやアイテムの集約、労務費の削減を行ったことで、前年中間期比では営業利益が40・5%増、経常利益が38・5%増と大幅に上昇。再編が進む流通の動向を注視しながら、今後も売上より収益性を重視していく方針を示した。
(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐キムチと浅漬の売れ行きは。
 「キムチは5月に値上げをしたことで、数量は前年に届いていないが、金額は前年並みとなっている。冬場は白菜のシーズンとなるため原料状況を見ながら12月、1月、2月と販促計画を検討していきたい。浅漬は厳しい状況が続いており、節約志向が高まっている中で箸休めの一品ということでは伸びない。だが、惣菜売場で売っている漬物は変わらず需要がある。漬物は売場として伸び悩んでいると認識しており、工夫が必要。当社では簡便性を高めた『液切りいらず』シリーズを展開している。このシリーズは浅漬の液を切る手間を省いた商品で、秋にも新商品を展開する」
 ‐浅漬の課題は。
 「よく賞味期限の短さが指摘されているが、惣菜は漬物より賞味期限が短くても売れている。その他の要因では、液を切る作業など食べるまでに手間がかかるという負のイメージを持たれている、と考えている。それを払拭するアイテムとして『液切りいらず』シリーズを提案している。価格帯もこれまでの198円から200円台に上昇しているが、内容量を減らして買い求めやすい価格帯の商品ラインナップがあっても良いと思っている」
 ‐キムチは売場が広がっているが、競争も激しい。
 「大量に生産して販売しているメーカーや低価格のPB商品に注力しているメーカーなど、戦略は各社それぞれだが、当社としては他社と味の差別化を行い、価格競争にならないようにしたいと考えている。例えば、当社の叙々苑キムチは指名買いをしていただいている商品だが、値段が安いから今日はこれにしよう、ということではなく、それぞれの商品が味の部分で選ばれるように確立していきたい。ただ、PBを置きたいという売場もあると思うので、付加価値のある商品と両方のニーズに対応することが重要だ」
 ‐2026年2月期第2四半期(中間期)決算で利益が大幅に上昇した。
 「当社は利益を確保できないと株式市場から評価をされないので、売上よりも収益性を重視している。様々なコストが上昇する中、人件費は毎年5%ずつ上がっていく。商品を毎年同じ価格で販売しても利益が減っていくため、上期は規格変更など利益重視の取組を行った。ただ高く売る、ということではなく、安売りするということでもない。生の胡瓜が1本80円~90円するのに、胡瓜2本入りの漬物を198円で販売することはできなくなっている。期首計画においては、当社は、たとえ減収でも、増益となることを目指していたのだが、コンビニエンスストアの売上が好調だったので増収となった。また、各工場のキムチの生産を昨年12月から稼働している茨城工場に移すことで、各工場の夜勤を減らした。夜勤の時給は昼間の1・25倍のため、それが減少したことで人件費を削減できた。春以降、原料価格が落ち着いてきた他、グループ内で共配を行うなど物流効率を高めたことなどが寄与した」
 ‐再編が進む流通の影響。
 「これまでの付き合いや内容が変わってくる部分もある。得意先の店舗数が減れば、その分の売上も減るため何かでそれをカバーしなければならない。これからの流通の再編の行方に注視しながら、それぞれの業態やニーズに合わせてきめ細かく提案していく必要がある。現在は生産効率を高めるためにアイテムの集約を進めている。これまでは小売店専用の商品を作ってきたが、細かく対応することが難しくなってきているため、NB商品に近い形で販売していただかざるを得ないと思っている。ただ、ある程度の規模感があればアイテムを増やす可能性もある」
 ‐今後はどのような形でスケールメリットを活かしていくか。
 「野菜を多く購入すると安くなる、ということはない。規模が大きくなると原料仕入れの部分ではデメリットもある。当社グループは全国に工場があって、それぞれの地域で原料を調達して商品を製造し、そのエリアで販売している。関西や西日本の子会社はそれぞれ会社が別れており、大きなメーカーが大規模な生産を行っている、というよりも小さなメーカーがたくさんあって、それぞれのエリアで事業を行っている、というイメージ。小回りが利くことで多様化するニーズに対応することも強みだと考えている」
【2025(令和7)年10月11日第5209号14面】

ピックルスホールディングス

<新社長に聞く>株式会社ヤマヨ 代表取締役社長 林晋太郎氏

高いレベルで「基本」実践
毎日食べられる彩りをちょっと
 株式会社ヤマヨ(滋賀県彦根市)は9月をもって、取締役の林晋太郎氏が代表取締役社長に就任した。林新社長は、同社の強みは基本的な事柄を高いレベルで実践している点にあると分析。『大切な人に、毎日食べられる彩りをちょっと』を新たな企業理念に据え、オーソドックスで長く愛される商品を守り抜く思いを語った。
(大阪支社・小林悟空)
 ー経歴を。
 「1986年生まれの39歳。富山大学卒業後は製薬会社でMRとして勤務し、2016年に家業のヤマヨに入社した。製造から営業、事務仕事まで一通り経験した。我々にとって最重要課題の一つである、原料調達のための産地との信頼関係構築はまだまだ。会長の助けを借りながらやっていきたい」
 ー前職との違いを感じることも多かったのでは。
 「上場企業だったので何百人という同僚がいて、仕事は縦割りだった。ヤマヨでは仕事が全て目に見える範囲にあるので、会社一つを回すにはこんなに多くの知識が必要なのかと驚いた。その一方で、取引先とその先にいるお客様の希望を叶えていくという根底は一緒、ということも強く実感できた」
 ー入社から9年間、ヤマヨの変化は。
 「社内的なことで言えば、働き方改革と設備投資が進んだ。工場の機械化や衛生システムの導入は、働く人の身体的負担解消になり、衛生的な環境づくりにも繋がるので積極的に推進している。営業面では利益率改善に取り組んできた。その原動力となったのがアイテム削減による効率化。無駄がなくなるので利益が出て、アイテム数が少ないので機械化に踏み切りやすくなって、というように設備投資とも繋がっている。アイテム数削減できたのは外部環境の変化もある。地方浅漬メーカーの多くが少量多品種の方向に進む中で、当社に白菜浅漬等の注文が集中するようになり、スケールメリットが生まれてますます得意分野になり…というサイクルが生まれている」
 ーヤマヨの強み。
 「前述のように、漬物メーカーとしては大量生産が可能なこと。原料手配に強みがあり他が欠品しているときにも確保できていること。工場がきれいでいつでも見学してもらえる状態であること。関西圏を代表する総合スーパーとのお取引という実績が、品質や供給の安定性という信頼につながっていること。このような基本的なことを高いレベルで継続している会社だと自負している」
 ー漬物市場全体について。
 「伸びはせずとも、なくなりもしないと見ている。個人的には悲観する必要はないと思っている。今の若者が漬物を食べない点についても、歳をとれば色の好みが変わるのは自然なこと。日本の人口は減るが、高齢者人口は今後20年くらい増える見通しもあるので、焦らずその間にまた次の対策を考えていければ良いのでは。変わり種の商品で若者ウケを狙うのも一手だが、シニア層に愛されるオーソドックスな商品を守るのも大切な仕事だ。また、季節感を演出できるのは漬物の重要な要素だと考えている。気候が変動している中で、それに合わせて新しい『旬』を作るのは我々の役割だと考えている」
 ー目標を。
 「社長就任にあたって企業理念を『大切な人に、毎日食べられる彩りをちょっと』とした。実現のためには安全で美味しく、健康的なものを作り続ける必要がある。従業員の皆と楽しく働いて、お客様には喜んでもらいながら、ずっと続く会社になることが究極目標だ」
【2025(令和7)年10月1日第5208号3面】

ヤマヨ 

<新会長に聞く>(公社)愛知県漬物協会青年会 会長 岩瀬浩司氏

「物語」生む活動を
味噌・漬物・カフェの視点から
 今年5月の総会で、公益社団法人愛知県漬物協会青年会の新会長に株式会社丸加醸造場の岩瀬浩司社長が就任した。同社は豆味噌や味噌漬の伝統を守りながら、発酵カフェ『Haccosido』の経営や、ECサイト運営など新たな取組を進める。味噌、漬物、そしてカフェ運営という3つの視点を持つ岩瀬新会長は、商品の魅力を伝える「物語」の重要性を説き、それを生み出す「経験」と「交流」の機会を青年会で創出し、業界の未来を切り拓きたいと語る。(小林悟空)
◇   ◇
 
丸加醸造場について。
 「弊社の始まりは社名の通り味噌製造。昭和に、豊田市は、トヨタ自動車に全国から多くの人が働きに来るようになった。その方々が地元に帰省する際の手土産として、豆味噌を使った味噌漬を作り始めたのがきっかけ。中でも『山牛蒡の味噌漬け』は、寿司店や料亭といった業務用の取引先からも大きな支持をいただくようになり、いつしか金額的には味噌を上回るほどの売上の柱に成長してくれた」
 ーHaccosidoについて。
 「きっかけはコロナ禍。前述の通り主柱になっていた業務用の売上がほぼゼロになったことから、直接お客様と顔を合わせて自ら稼ぐ力の必要性を感じて2022年に、旧味噌蔵を改装してオープンした」
 ー反響は。
 「おかげさまで好評。意外に思われるかもしれないが、カフェでお出しするお味噌汁の出汁は、あえて市販の顆粒出汁を使っている。それをお客様に伝えると味噌の味の違いを理解してもらえる。ここは単に食事を提供する場所ではなく、味噌の魅力や奥深さを五感で体験してもらうための発信拠点という感覚で。愛知独特の豆味噌を発信するため、県が主導する『あいち発酵食めぐり』にも参加している」
 ーECサイトの戦略は。
 「カフェと同じで『どうすればお客様に価値が伝わるか』『どうすれば購入のハードルが下がるか』を考えている。その一つが肉や魚といった主菜をセットにして、一食で使い切れる商品開発。例えば、オリジナルの味噌スープと豚肉、野菜がセットになった『味噌鍋セット』や、具材と味噌だれを炊いたご飯に混ぜるだけの『混ぜご飯の素』。これなら送料無料にできる5000円以上という価格に乗せやすく購入ハードルが下がるし、それ自体が私たちからの味噌の新しい使い方提案になっている。これまでは『美味しい味噌です、あとはご家庭でどうぞ』と、お客様任せだった部分があったが、これからは、作り手側がもっと主体的に使い方を提案し、食卓のシーンまで描いてあげることが重要だと考えている。また、WEB広告も出してみると、これも驚くほど反応が良い。今まで私たちの発信が圧倒的に足りていなかったことの証明だと感じている」
 ー青年会長としては経験を大切にすると表明した。
 「今の時代は、味噌や漬物は、かつてのように食卓にないと困る必需品ではなく代替品がいくらでもある。その中で、あえて私たちの商品を選んでもらうためには何が必要か。美味しさは当然のこととして、そのもう一歩先にある『物語』が問われる。その商品がどんな土地で、どんな人が、どんな想いで作っているのかを知ってもらうこと。それで『なんか好き』と感じてもらうことがブランドの正体だと思う。そしてその『物語』は、AIが自動生成してくれるようなものでは決してない。作り手自身の経験や、人と人との交わりの中からしか生まれない非常に人間的なもの。青年会では、メンバーがそうした物語の種を見つけられるような機会を積極的に作っていきたい。例えば、原料を育ててくれている生産者の方々との交流会を開いたり、先進的な取り組みをしている他業種の工場を見学したり。リアルな体験を通じて、自分たちの仕事の価値を再発見し、それを自分の言葉で語れる経験を積みたい。我々の世代が、伝統を受け継ぐだけでなく、新しい物語を紡ぎ、漬物業界の未来を漬けていく。そんな気概を持って、仲間たちと共に活動していきたい」
【2025(令和7)年10月1日第5208号4面】

丸加醸造場

<酢漬特集・トップに聞く>株式会社みやまえ 代表取締役社長 宮前有一郎氏

生姜漬の価値伝える使命
「米以外」に提案で用途は無限
 株式会社みやまえ(宮前有一郎社長、奈良県生駒郡平群町)は生姜製品の総合メーカー。宮前社長は、米を始めとした物価高騰の影響を受け、漬物がコストカット対象となっている厳しい事実を認めつつも、本物の生姜漬の味と価値を伝え市場を守ることはトップメーカーの使命と話す。また「米以外」への提案を強化することで、生姜漬の用途は無限に広がりつつある、と未来を見据えている。
(大阪支社・小林悟空)
◇    ◇
 ー10月決算の予測は。
 「残念ながら減収を予測している。昨年は原料生姜の十分な量を確保できたため、久しぶりに値上げを行わずに済んだ年であり営業にも力が入っていた。しかし実際は、我々の主な顧客である中食・外食業界が、米を筆頭にあらゆるコストの上昇という厳しい環境に直面した。その影響が及んだ形。我々の生姜漬は、品質を評価されて取引を継続いただいたケースが多く微減程度で済んだ。しかし、周辺の仕入れ品については、より安価な商品に切り替えられたり、メニューから外されたりすることが多く減収となった」
 ー生姜漬市場の見通し。
 「既存の市場、特に米飯に添えるという用途は、今後縮小を免れないという強い危機感を持っている。一度メニューから外されれば、再び採用いただくのは難しくなる。大根を使ったガリ風の漬物が登場するなど、他の添え物もライバルとして浮上している。また正直なところ、市場には我々の品質基準では到底認められないような廉価品も存在する。そういった製品を食べた方が『生姜漬は美味しくない』という印象を持たれてしまうことを危惧している。本物の生姜漬の味と価値をしっかりと伝えて市場を守ることは、トップメーカーとして使命だと捉えている」
 ー市場創造に取り組む。
 「米以外の分野への提案に活路を見出している。具体的には、水産や畜産の練り製品、ベーカリー、菓子、麺類といった業界で、素材として提案している。特に紅生姜は様々な食品のアクセントとして受け入れられる大きな可能性を秘めている。先例として梅干しは、漬物から独立した一つのジャンルとして確立されている。紅生姜もそうなる兆しがある。営業担当者も従来のルート営業に加え、新規開拓に割く時間が増えた。今は物価変動に翻弄されているが、生姜漬の未来は明るいと思っている」
 ー市場創造の苦労は。
 「従来のように生姜漬をそのまま食べていただくのとは全く異なる技術が必要となる。例えば、練り製品に混ぜ込む際には水分量や塩分量の調整、色落ちを防ぐ加工など、製品に合わせた個別の調整が不可欠。こうした対応は、海外の大量生産メーカーには真似のできない部分であり、当社の技術力、営業力という強みが発揮できる領域」
 ー最後に、原料状況は。
 「昨年に続いて主力調達先のタイ、そして中国の福建省や雲南省ともに、質・量ともに良好。特に雲南省では、新たに生姜栽培を始めてくれる生産者が増えており、原料に関してはしばらく安心できる状況。新規提案を進める上では追い風が吹いている」
【2025(令和7)年9月11日第5207号9面】

理事長に聞く

栃木県漬物工業協同組合 理事長 遠藤栄一氏

価格競争から品質競争へ
常食量表示で漬物の価値高める
 栃木県漬物工業協同組合の遠藤栄一理事長(遠藤食品株式会社社長)にインタビュー。全日本漬物協同組合連合会理事、全国漬物検査協会常務理事、日本漬物産業同友会会長と業界団体の要職に就き、次世代のリーダーとして活躍する遠藤理事長は、漬物の栄養成分表示を従来の100gから常食量表示にすることで価値が高まると指摘。業界に向けて常食量表示の導入や検討を求めた。また、人手確保の課題についても成功事例を紹介し、新しい取組への挑戦を促した。
(千葉友寛)
◇    ◇
 酢漬の売れ行きは。
 「栃木県は酢漬生産量が日本一で、夏は酢漬が売れるシーズンなので各社活発な動きになっていると思う。酢漬の全体的な売れ行きは微増傾向だと見ている。インバウンドで寿司の需要も増えているし、小売店では冷やし中華や焼きそばなど麺の消費が増えていることで紅生姜が好調となっている。紅生姜はお菓子のフレーバーとして使用されたり、惣菜売場でも天ぷらとして販売されるなど、用途が広がっている。米の不足や価格上昇は漬物に影響が出ているが、紅生姜は米以外の付け合わせという特異な存在で、それが逆に追い風になっている」
 ー海外生姜の生育状況。
 「海外の生姜産地はタイ、中国南部、山東省の3カ所で形成されており、今年は各産地とも作付面積が増えていて、生育状況も順調。生鮮生姜の高値安定が続いているので加工用が集めにくい環境ではあるものの、昨年よりは集めやすくなっており、価格も安定すると見ている。ただ、為替が以前よりは多少円高になってきているといっても、現在は140円台後半で推移しており、昔と比べると円安傾向でいつまた150円台になってもおかしくない状況だ。生姜も随時値上げを行っているが、まだまだ適正価格までには至っていない。近年は価格で攻めてくる中国メーカーの存在が脅威となっているが、事業を継続していくために品質や安心安全の部分を訴求しながら適正価格を追求し、取引先にも理解を求めていく」
 ー末端では価格競争が行われている。
 「考え方を根本的に変える必要がある。原料の仕入れ価格と製品の販売価格のバランスを取らなければ会社は成り立たない。価格の競争ではなく、品質や価値を高める競争をしていくことが重要だ。メーカーごとの商品についても価値を高めていく必要があるが、漬物自体の価値を高める手段の一つとして、栄養成分表示を従来の100gから1食分に変更することを提案している。弊社ではガリの栄養成分表示を10gにしており、食塩相当量も従来の10分の1で表示している。栄養成分表示を常食量にすることで、漬物の塩分は高くないという情報を消費者にも分かりやすく発信することができる。消費者には『漬物は高塩』というイメージが根強く浸透していると思うが、業界全体で取り組めば漬物のイメージアップにつながり、消費拡大に結び付くと確信している。業界各社に導入や検討を求めていきたい」
 ー業界は人手不足が課題になっている。
 「当社では昨年から現在までに20人を募集していたのだが、その間に約200名の応募があった。一番の要因となったのは昨年9月から『TikTok』を導入したこと。スタートから1年間の再生回数は約60万回で、多くの方に視聴していただき企業のイメージアップにつながった。業界各位の企業におかれても、このような取組を行うことで社内の活性化などにつなげていただきたいと思っている」
【2025(令和7)年9月11日第5207号8面】

栃木県漬物工業協同組合 https://tochitsuke.com/ 

新理事長に聞く

丸イ食品株式会社 代表取締役 大曽根史典氏

大曽根社長
オンリーワンで生き残る
売りたいと言われる商品作り
 丸イ食品株式会社(神奈川県小田原市)の大曽根史典社長にインタビュー。漬物原料の状況や各企業に求められている案件について話を聞いた。原料の確保や消費の低迷など、業界を取り巻く環境は課題が山積しているが、今年5月に神奈川県漬物工業協同組合の理事長に就任した大曽根氏は、オンリーワンを目指す必要があると指摘。商品力やブランド力を高め、適正価格で販売していくことが重要だと強調した。
(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐昨今の原料状況。
 「昨年や今年の夏はこれまで経験したことがない気候となっており、臨機応変に対応できるか、できないか。将来を見据えて何か手を打っていかないと売るものがない、という事態になりかねない。原料事情についてはかなり前から準備していく必要がある。国産では大根、梅、高菜、かぶ、生姜が厳しいと聞いている。今夏は雨が少なく記録的な猛暑となっていることが漬物原料の不作に影響している。今後の重点課題は、原料確保、販売チャネル変更、新商品開発の3つ。当社の販売別の売上構成比は量販店が7割で、その他が3割。これを少しずつ変えていく方針で、量販店についても水産など漬物以外の売場での売上を増やしていきたいと考えている。売上構成比も含めて、会社としてあらゆることを想定して準備していくことが重要だと思っている」
 ‐各企業に求められていることは。
 「商品力やブランド力を高めていくことが重要だ。普通の紅生姜やガリを販売していても競合が多く、価格競争になる。大手メーカーは体力もあるし、売場も持っているので売上を維持できるが、中小メーカーはオンリーワンを目指さないと生き残れない。他社が作れない商品を持っているか、ということが今後より重要となってくる。弊社では手間をかけて商品を作っているので量を作ることができないことが課題だが、おかげ様で美味しいと言っていただけるお客様が増えてきた。お客様の方からこの商品を売りたい、と言っていたければ適正な価格で販売することができる」
 ‐項目別の売上構成比と現在好調な商品は。
 「項目別の売上構成比は生姜が4割、楽京が2割、梅が1割、その他が3割。弊社で好調な動きとなっているのは紅生姜で、冷やし中華や焼きそばなど、価格が上昇している米以外の付け合わせになるため、好調な麺と連動して既存店だけでも伸びているのだが、新規分も合わせて伸長している。各店からご評価いただいている国産製品は、年間で見ても前年比(5月決算)110%で推移した。今夏は記録的な猛暑となっているため、良い流れが続いている。国産の生姜は契約栽培の原料を使用しているため、筋が入らないタイミングで収穫するようにするなど細心の注意を払っている。そのような細かいこだわりの積み重ねがご支持につながっていると思っている」
 ‐今年5月に神奈川県漬物工業協同組合の理事長に就任した。
 「5期10年にわたって理事長を務められた秋本大典様よりバトンを受け継いだ。大変身が引き締まる思いだが、組合員の方をはじめ業界各位の方々のご理解をご協力をいただきながら、組合事業を進めていきたいと思っている。ただ、神奈川県も会員数が減少しており、情報交換の場を設けるなど最低限の活動しかやれなかった。今後は継続性も踏まえ、単県で行う活動は少なくなると思う。ただ、関東漬物協議会への参加など、範囲を広げた活動には参画し、それを組合員にフィードバックしていく形にしていきたいと考えている」
【2025(令和7)年9月11日第5207号10面】

9月11日号 理事長に聞く

栃木県干瓢商業協同組合 理事長 毛塚 安彦氏

毛塚理事長
問屋が原料生産に踏み込む
農家と分業化進めて安定供給 
栃木県干瓢商業協同組合の毛塚安彦理事長(株式会社ヤマケ社長)にインタビュー。ユウガオの実を原料とする干瓢は栃木県が全国生産量の98%以上を占め、同県を代表する特産物として知られているが、他の農産物と同様に離農や生産農家の高齢化などの影響で生産量は微減傾向が続いており、原料の確保が大きな課題となっている。同組合の加盟企業の一部では問屋が生産及び一次加工を行い、原料確保に注力。国内供給量の約2割に当たり、高付加価値となる国産原料の製品は需要に対して供給が追い付いていない状況で、毛塚理事長に原料の生産状況や取組などについて話を聞いた。(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐国産干瓢の原料状況。
 「生産量は微減傾向。新規営農者が増えない限り増えることはない。昨年は豊作型だったが、今年は猛暑と雨不足の影響で平年作までの作柄にはならなかった。ここ10年の干瓢の価格は高値安定で、価格面で生産を止める人は皆無。年齢や健康面が止める理由となっている。一般的には前の日に収穫したユウガオの実を夜中の2時~3時から剥いて干す作業を行うのだが、気温が上がる6月下旬から8月中旬まで続くため、重労働になる。生産農家の高齢化や後継者不足は大きな課題で、現在仕入れている農家だけを相手にしても同じ量を確保することができなくなる」
 ‐今後の見通し。
 「これまでのように相場で購入することができなくなっており、自分たちで使う原料は自分たちで作って確保していかないとやっていけなくなる。規模が小さい企業は自分たちで自社分の原料を生産することが可能で、やる気があるかないか。現在、組合には23社が加盟しているが、半分くらいの企業の社長は自分の代で止める、と言っている」
 ‐農業法人を立ち上げた。
 「弊社では2019年から干瓢を栽培して皮剥きや干す作業を行う農業法人mf(みずのえファーム)を立ち上げた。自社で全量をまかなうことはできないが、農家と両輪で原料確保の取組を推進し、毎年作付面積が増えている。農家への支援については資材の供給の他、新規営農者への補助や栽培指導など支援制度の構築を行政に要望している。弊社も含めて原料生産に踏み込んでいる問屋も数社ある中で、ユウガオの実の生産、皮剥きや干す作業などの分業化を進め、農家と協力しながら安定した生産ができる環境を作ることが重要だ」
 ‐需要の変化は。
 「国産はほぼ栃木県産になるのだが、国産は人気が高くて需要に対して供給が追い付いていない。原料価格はここ数年でかなり上昇しているが、おでんの餅巾着、ロールキャベツ、昆布巻など、食材を巻いて食べられるものは干瓢しかないので、底堅い需要がある。国産は国内供給量の2割で、中国産が8割。国産と中国産は売り先がすみ分けされており、市販用はほぼ国産で、業務用は中国産。ここ数年は国産原料が足りないので、中国産が市販用に代用されるケースもあるが、品質の差が明確にあり、品質が安定している国産は家庭用として使用されている他、高級寿司店でも使われている」
 ‐消費振興について。
 「干瓢は大阪・関西万博において、食の未来をより良くするため世界に共有したい日本発の食のリスト『EARTHFOODS25』に入っている。食物繊維、カルシウム、カリウム、リン、鉄分が豊富で、健康面でも貢献することができる。ただ、国産については供給面に問題があるので、現在は消費振興よりも生産振興に注力している」
【2025(令和7)年9月11日第5207号10面】

栃木県干瓢商業協同組合 https://www.kanpyo.jp/

9月11日号 トップに聞く

三里浜特産農業協同組合 代表理事組合長  村上伝左エ門氏

管理圃場拡大目指す
三年子花らっきょの価値向上へ
 福井県坂井市の三里浜特産農業協同組合(村上伝左エ門代表理事組合長)は、三年子花らっきょの栽培、酢漬の加工・販売で知られる。名物である三年子花らっきょは、砂地の立地を活かし、明治時代から栽培が続く歴史を持つが、近年は農家の高齢化で収量の減少が課題であった。2022年に組合長へ就任した村上氏は、就任後、管理圃場の拡大により、作付面積の維持や反収量増加を目指すことを掲げ、徐々に効果が現れてきている。組合長就任4年目を迎えた村上組合長に話を聞いた。
(大阪支社・高澤尚揮)
◇    ◇
 ー名産の三年子花らっきょとは。
 「三年子花らっきょとは、福井県三里浜の砂丘地帯で育てられる高級ブランドらっきょうのことを指す。作付けから収穫までに2回冬を越し、足掛け3年もかけて育てられる、全国唯一のらっきょう。他地域のらっきょうより、分球が進んで粒は小ぶりになり、繊維が細かくてシャキシャキ食感が特徴であり、『白い宝石』と呼ぶ声もある」
 ー三年子花らっきょの収量の推移は。
 「2021年産は200tほど穫れたが、生産組織が栽培を止めたこともあり、2022年産の収量は前年より大幅に少ない120tで着地し、2023年は145t、2024年は155t、今年2025年産は180tと推移している。今年は、当初予想の収量は200tを見込んでいたので、20t少ない結果だ。生育時、昨夏の猛暑で、高温障害を起こし、玉太りが十分にできなかった。冬は概ね暖冬、さらには急な寒波到来と、花らっきょの生育に芳しくない環境が続いたことも要因と見られるだろう」
 ー三年子花らっきょの収量拡大への取組は。
 「昨年産、今年産と少しずつ収量は回復傾向にある。その理由として、組合の管理圃場を増やし、作付面積を拡大できたことが挙げられる。肥培管理、作業の機械化は個人農家ではハードルが高いものの、組合の持つ資金やノウハウを活用すれば、策を講じることが可能であり、引き続き拡大していく。理想を言えば、作付け、収穫を当農協が全面的に行い、生産者には肥培管理と生育に専念してもらえる体制を築きたい。初めと終わりの負担を極力軽減できれば、新たな生産の担い手が出てくることも期待しやすい」
 ー酢漬製品の県外販売が昨秋から再開した。
 「三年子花らっきょは生産に時間を掛けることで、酢漬製品の価格は現在、日本で一番高いといっても過言ではないだろう。だが、物価高騰や高齢生産者のモチベーションの維持を考慮すると、さらなる酢漬製品の価格改定は不可避と捉えている。引き続き、お取引先様、お客様のご理解を賜りたい。原料不足で、2023年7月から1年にわたり酢漬製品の県外販売を原則中止せざるを得なくなり、関係各位にはご迷惑をお掛けした。生協を始めとして、酢漬製品の取り扱いを待っていてくださったお取引先様に感謝している。昨年産の収量回復で、24年9月から県外販売を随時再開しており、皆様に良い製品を引き続きお届けしていきたい」
 ー花らっきょの付加価値向上は。
 「従来通り、手間暇掛けて育てていることをアピールするとともに、食べ方提案にも力を入れて購買に繋げたい。シャキッとした食感を活かし、酢漬製品はカレーのお供の他、ポテトサラダやタルタルソースに刻んで入れたり、天ぷらにしたりしても相性が良い。他には、レモンの輪切り入りの『すっきりらっきょ』といった製品もあり、若い方にも訴求する余地がある。今年7月には、甘酢漬製品のパッケージを刷新した。高級感のあるゴールド色を取り入れ、品質の高い製品であることをユーザーへ伝える狙いがあり、新たなユーザー獲得に努めたい」
【2025(令和7)年9月11日第5207号11面】

三里浜特産農業協同組合 https://sanrihamatokusan.com/

8月1日号 霞ヶ浦北浦特集

霞ヶ浦北浦水産加工業協同組合 組合長 小沼和幸氏

佃煮・煮干しの食文化継承
霞ヶ浦と八郎潟に歴史的つながり
 今年も7月21日にワカサギ・シラウオ漁が解禁となった。近年不漁が続くワカサギに代わり霞ヶ浦北浦の水産資源として期待を集めるのがシラウオ。昨年のシラウオ漁は好漁となり、今年も昨年以上の水揚げに期待がかかる。今年3月には「霞ヶ浦北浦の魚介類食文化~佃煮・煮干し・釜揚げ~」が文化庁「100年フード」に認定された。小沼和幸代表理事組合長は、「100年フードへの登録が次世代に食文化を継承していく上で重要な意味を持つ」と話した
(※インタビューは7月23日に実施)(藤井大碁) 
         ◇
ー今年の漁模様。
 「ワカサギは近年の不漁の状況は変わらず、ほとんど獲れない状況となっている。温暖化により水温が上昇し、ワカサギが生きられない環境になっていることが不漁の要因とされており、今後も気候が変わらない限りは、漁獲量の急な回復を期待することは難しい。そうした状況の中、漁師もワカサギではなく、シラウオ主体の操業となっており、どれだけシラウオが獲れるかが漁の焦点となっている。今年は7月21日の解禁後、初日はシラウオが昨年より水揚げされ好調なスタートを切ったものの、二日目の水揚げは昨年より少なかった。まだ解禁から間もないため今後の予測を立てるのは難しいが、シラウオに関しては昨年と同様の好漁となることを期待したい」
ーシラウオのブランド化。
 「ワカサギが獲れない中、霞ヶ浦の貴重な水産資源であるシラウオにいかに付加価値を付けて販売していくかが、重要なテーマとなっている。霞ヶ浦漁業協同組合では昨年新たなブランド“霞ヶ浦 暁のしらうお”を発表し、シラウオのPRに力を注いでいる。我々加工業者にとっても、こうした流れは追い風となっており、今後もシラウオに付加価値を付けて販売できるよう力を入れていく」
ー3月に霞ヶ浦北浦の食文化が文化庁の「100年フード」に認定された。
 「たくさんの関係者の方のご尽力により我々加工業者が製造する佃煮や煮干しの食文化が認定されたことに心より御礼を申し上げたい。『100年フード』に登録されたことは、霞ヶ浦の食文化を守り、次世代に継承していく上で非常に重要な意味を持つと考えている。今後は、のぼり旗やシールなどを組合で制作し、PRしていくことを検討している」
ー「秋田の佃煮」も同時期に100年フードに認定された。
 「霞ヶ浦と秋田・八郎潟の漁業には歴史的なつながりがある。国民的歌手である坂本九氏の祖父にあたる坂本金吉氏が、明治期に霞ヶ浦の帆引き網漁の技術を八郎潟に伝え、普及したとされる。今回両地域の佃煮文化が同じタイミングで100年フードに認定されたことは驚きであり、八郎潟との大きなご縁を感じている」
ー今年も11月に茨城県水産製品品評会が開催される。
 「茨城県水産製品品評会も組合にとって大切な事業だ。品評会に出品することが、組合員の製品の品質向上につながっており、品評会の意義は大きい。近年は漁模様を反映して、シラウオなどワカサギ以外の出品が多くなっている。その中から、昨年は鯉製品が同品評会で初めて農林水産大臣賞を受賞した。今年も各事業者が工夫を凝らした出品を行うことを期待している」
ー今後について。
 「霞ヶ浦北浦の水産加工業は、不漁や後継者不足など、様々な課題を抱えている。現在獲れているシラウオを有効活用し、付加価値を付けて販売していくことが求められている。100年フードへの認定を機に、地域の食文化として、佃煮・煮干しの認知度を高め、次世代へつないでいきたい」
【2025(令和7)年8月1日第5203号8面】

小沼水産

株式会社出羽屋 代表取締役社長 戸田弘美氏

 株式会社出羽屋(茨城県かすみがうら市)では、昨年7月に戸田弘美社長が就任。従業員の意見を積極的に取り入れるボトムアップ型の経営体制へと舵を切り、今年4月には直営店の商品パッケージを全面リニューアルするなど、様々な取組を展開している。戸田社長は、原料高や原料不足が続く厳しい状況だからこそ、新たなビジネスモデルの構築が必要と語る。
(藤井大碁)
‐社長就任から1年が経過した。
 「原料不足や原料高騰、また人口減少などにより、大量に安い原料を仕入れて大量に生産、販売するというこれまでのビジネスモデルが通用しなくなった。まさに“誰も経験したことのない時代”が訪れている。しかし、これまで続けてきたやり方をすぐに大きく変えることは難しいのが現実で、社内ミーティングを重ねながら、新たなビジネスチャンスを模索している」
‐社内ミーティングを頻繁に開催している。 
 「やりがいを持って楽しく働ける職場をつくるため、社員が意見を出し合うミーティングの場を重要視している。先日は焼肉を食べながら腹を割って話し合う“焼肉ミーティング”を開催した。普段一緒に仕事をしないメンバー同士でグループを作り、やりたいこと、作りたいものをテーマに様々な意見を出し合った。実際に、このミーティングから生まれたいくつかの新商品アイデアは、現在試作を進めている。以前はミーティングを無駄と感じる社員もいたが、今では社員からミーティング開催の声が上がるなど社内意識が大きく変化している」
‐付加価値を付けた商品販売。
 「原料や製造コストが高騰する中、付加価値を付けた商品販売がテーマとなっている。社員の中に、高くても良いものをつくっていきたいという意見があることは心強く、彼らから佃煮はこういうものという枠を外したアイデアが出ることが面白い。菓子店など地元異業種企業とのコラボレーションも視野に入れ、新しい価値を提供していきたい」
‐職場環境の改善にも力を入れている。
 「近年、夏場の気温上昇が続く中、熱中症対策を重視している。これまで7月から9月に製造していた長時間炊き込む製品は、春シーズンに前倒しで製造を行うことで、従業員の負担軽減を図っている」
‐直営店の改革も進めている。
 「これまでは店舗ごとにバラバラだった接客や包装の仕方を見直し、店長会議を重ねて標準化を進めてきた。今後は、各店舗に個性を出し、その店舗でしか買えない商品やサービスを提供するなど、顧客満足度向上に向けた取組を強化していく。また今年4月から直営店で取り扱う商品のパッケージデザインをリニューアルした。現在、既存パッケージと入れ替えを進めている。量目を減らすことで単価を安く設定したり、まとめ買いを促す仕組みを作るなど、試行錯誤を重ねて取り組んでいる」
‐今後について。
 「社内でPDCAサイクルを回すことを習慣づける1年にしたい。結果の良し悪しに関わらず、事実を直視し、次に向けた改善策が立てられるようにしていきたい。また“右手で今のことをやりながら、左手で新しいビジネスモデルを模索する”という考え方も必要だ。社員ミーティングから新しいビジネスモデルを生み出し、社員全員が楽しく働くことができる全員参加型の企業になることを目指している」
【2025(令和7)年8月1日第5203号9面】

出羽屋

7月11日号 新潟特集

新潟県漬物工業協同組合 副理事長 藤塚徹也氏

漬物と菓子の塩分比較に疑問
組合でフリーズドライ漬物開発
 新潟県漬物工業協同組合(佐久間大輔理事長)の藤塚徹也副理事長(藤塚食品株式会社専務取締役)にインタビュー。「漬物は塩分が高い」というイメージが浸透している事例の他、組合で研究、開発を行っているフリーズドライ漬物の取組について話を聞いた。
(千葉友寛)
◇   ◇
 ‐地元紙に漬物の塩分に関する記事が掲載された。
 「3月に掲載された記事は、沢庵2切れの塩分はポテトチップス1袋と同じなので気を付けてください、と医師が主張する内容だった。確かにポテトチップスの塩分量は1袋当たり(60g)0・6gで、一般的な塩押し沢庵2切れ(20g)と同程度となるが、副菜とお菓子という異なるカテゴリーで比較するのはおかしい、と佐久間理事長とともに地元紙と新潟県庁に対し、漬物業界は減塩化を進めて発酵といった健康的な要素をPRするようになってきているところで、どのような基準で塩分が高いと主張しているのか、と申し入れを行った」
 ‐漬物は塩分が高い、と思っている人が多い。
 「野菜を原料とする漬物には食物繊維の他、カリウムやビタミンなど野菜由来の栄養素が多く含まれている。嗜好品の位置づけとなるお菓子とは土俵が異なり、なぜ比較対象となったのか疑問が残る。『漬物は塩分が高い』というイメージは、一般の人だけではなく、医師や栄養士も固定概念になっている。これを払拭するためには東京家政大学大学院客員教授で全国漬物検査協会会長の宮尾茂雄氏が提唱する栄養成分表示を100gから常食量に変えていくなど、業界を挙げて取り組んでいく必要がある」
 ‐地元紙の対応は。
 「医師個人の見解、ということで今後の紙面については内容に注意するという回答だった。訂正記事も掲載しないということだったが、漬物のイメージアップを図ることを目的に漬物の特集を8月に組んでくれる、ということになった。主な内容は新潟県の漬物組合マップや各企業紹介で、毎週土曜日の地域コーナーで1ページを使って掲載していただける。これで少しはイメージの改善につながることを期待している」
 ‐組合でフリーズドライ漬物の研究、開発を行っている。
 「2年前に県の方から、新潟には瓶詰や缶詰を製造する会社がなく、県内で余ったものを保存する方法としてフリーズドライの取組を進めるということで、漬物組合でもやってみないか、と声をかけていただいたことがきっかけ。組合加盟企業から色々な漬物を提供していただいてテストしたが、フリーズドライは味や風味が凝縮するので、素材によって向き不向きがあった。最終的に奈良漬、沢庵、にんにく漬の3種類の開発を進め、昨年3月に開催されたにいがた酒の陣で組合ブースを出店した際にフリーズドライ漬物のテスト販売を行った。我々の予想以上に評判が良かったこともあり、今年3月の酒の陣で本格的な販売を行ったところ、フリーズドライ漬物は2日間で計850個も売れた。単価は500円なので売上にも貢献した」
 ‐味や品質面の評価は。
 「今年はリピーターの方もいて、お酒のおつまみに最高、口の中に入れた後に時間差で広がる風味と触感が面白い、珍しい漬物、などの感想をいただいた。我々の予想を超える反響を呼んだことで、フリーズドライ漬物の生産量を増やせるように取り組んでいる。現在は酒の陣などの限られた場所と期間での販売となっているが、お土産や輸出、災害対策用商品などの販路も視野に入れて展開してきたいと考えている。フリーズドライ漬物は賞味期限が長く、重量や容量の面からも持ち運びが便利なので、個人的には宇宙食としても利用していただきたいと思っている。売場についても従来の売場以外で販売することができ、大きな可能性を秘めている」
【2025(令和7)年7月11日第5201号4面】

7月11日号 滋賀特集 理事長に聞く

滋賀県漬物協同組合 理事長 金井長光氏

次世代の若手育成が責務
「漬物に携わる者」地位向上へ
 滋賀県漬物協同組合では5月22日、4期理事長を務めた林洋一氏(ヤマヨ社長)が任期満了で退任し、新たに金井長光氏(丸長食品社長)が新理事長に就任した。金井新理事長は、「次世代を担う若手の育成」「近江漬物に携わる者の地位向上」が自身の重要な責務と話す。また、自社では高校生との漬物の開発、パンと漬物のコラボ商品販売と、挑戦を続けており、組合活動でもチャレンジしたいと抱負を語る。
(大阪支社・高澤尚揮)
◇  ◇
 ー5月、新理事長に就任した。
 「今回の理事長就任にあたり、まず頭に浮かんだのは、『次世代の若手の育成』と『近江漬物に携わる者の地位向上』に取り組まなければならないということだ。副理事長には、上西宗太氏、高木茂治氏と40代の若手を起用した。高木氏、上西氏ともに青年部を兼務しており、これからは青年部員らしい活発さとともに、より責任感を持って組合へ参画してほしいと期待している。近江漬物に携わる者の地位向上では、伝統的な近江漬物を継承する人々が、漬物産業に従事することを今以上に誇りに思ってもらいたい。例えば県から表彰してもらえるような働きかけもその一つと考えている」
 ー滋賀漬協の今後の事業は。
 「総会のほか、研修会、毎年3月のびわ湖マラソンでのランナーへの日野菜漬配布と近江漬物の販売会を中心に実施していく。昨年の研修会は、イシダ社の滋賀事業所へ賛助会員と訪問し、計量器の工場視察を行った。今年は県外での工場視察を計画している。両副理事長や青年部員が主体となり、視察案を組み、経験を積んでもらう。びわ湖マラソンでは、ランナーの塩分補給を目的に、一昨年から日野菜漬を2年連続で提供している。スポーツ時の塩分補給に漬物をお供にしてほしいという願いを込めている」
 ー貴社の昨今の取組は。
 「社会貢献活動としては、大津商業高等学校の生徒が、今秋の第12回商業高校フードグランプリに出品するため、商品の試作で協力している。受賞に関わらず、完成した漬物は当社で販売する予定だ。レシピを入念に作ることにこだわりすぎず、自分たちで漬けてみることの大切さを学生たちに伝えている。新商品では、滋賀の老舗パンメーカー・株式会社西洋軒とのコラボ商品「薫るたくあんパン」の販売や、その中身を商品化した『漬マヨ(たくあん)』を4月から発売して好評だ」
 ー組合も企業もチャレンジが大切だ。
 「当社ではキムチの製造は行っていなかったが、関東の韓国キムチメーカーから数年前に依頼を受け、ポッサムキムチの一部工程で製造を担っている。ポッサムキムチとは、白菜でアワビやホタテ、牡蠣など高級食材を包んだもので、韓国では『キムチの王様』と呼ばれている。新しい仕事を受けると、刺激があり様々なアイデアも湧き上がってくる。組合も伝統を守ることだけに留まらず、若手や賛助会員の方々を含め様々な意見を吸収して、前向きな活動を行っていきたい」
【2025(令和7)年7月11日第5201号10面】

7月11日号宮崎特集 社長に聞く 

株式会社上沖産業 代表取締役社長  上沖和己氏

 県産にこだわり地位確立 
「農業とともに成長」貫く
 株式会社上沖産業(上沖和己社長、宮崎県三股町)はらっきょうや生姜、ごぼう、大根、金柑製品など宮崎県産原料にこだわるアッパー商材メーカーとして、確固たる地位を築いている。しかし、同社が市販品製造を始めたのは24年前と意外にも歴史は短い。上沖社長は躍進を遂げた原動力となったのは「農産物加工を通して地域に貢献し、地元農業と成長を目指す」という企業理念であったと話す。
(大阪支社・小林悟空)
◇   ◇
ー市販品製造に参入した背景を。
 「当社は地元の農作物を漬物にする一次加工業者として父が創業、1988年に法人化した。特にらっきょうは都城が全国トップクラスの産地だった。しかし1990年代に安価な中国産らっきょうの輸入が増加したことで、国産らっきょうの需要が激減した。農業自体を止める人もたくさんいた。このままではダメだ、と初めて商品開発をしたのが24年前、私が28歳のときだった」
ー宮崎産原料にこだわる。
 「地域貢献、地元農業とともに成長することを企業理念として掲げている。だから例えば、地元産が不作になっても外国産で代替、という発想にはならない。どうすれば、不作の中でも地域全体に利益が出せるかを考え、付加価値のある商品開発に取り組んできた。その姿勢を貫いたことが、『国産らっきょうといえば上沖産業』というブランドに繋がり、地産他消のスタイルが確立できたのだと思う」
ー原料確保について。
 「ほぼ100%が契約栽培。世間的には各種原料が不足している状況だが、当社は主力のらっきょうや生姜を十分に確保できている。大切なのは生産者にとって利益のある取引をすること。春の金柑から始まり、らっきょう、ごぼう、生姜、生大根、干し大根と年間通して入荷しており、当社が地域の農業を守っている、という自負を持って取り組んでいる」
ー商品開発の取組について。
 「漬物は野菜を丸ごと食べられて、発酵や独特の食感を与えられる調理方法として唯一無二のものであり、その価値はもっと評価されるべきだと思う。ただ当社にとっては、地域貢献が最上位であり、漬物はそのための手段の一つ。技術や設備の問題もあるため、近隣企業と協力しながら漬物以外にも挑戦したい」
ー業績は。
 「右肩上がりに成長できている。昨年度も増収増益だった。今期は野菜や米の高騰など物価高の影響で売上は鈍っているのだが、先述の通り原料を確保できている。販売拡大のチャンスはある。2025年度は新五カ年計画のスタート年。さらなるステップアップを目指したい」
【2025(令和7)年7月11日第5201号13面】

7月1日号 わさび関連特集インタビュー

全日本漬物協同組合連合会副会長 静岡県漬物商工業協同組合理事長 望月啓行氏

創業150年迎え未来へ
”田丸屋ブランド”国内外に広める
 全日本漬物協同組合連合会副会長、静岡県漬物商工業協同組合理事長を務める田丸屋本店の望月啓行社長にインタビューした。田丸屋本店は今年創業より150年を迎え、6月にはわさびチューブの最高峰商品「葵ノ頂 静岡本わさび」を発売するなど、わさびの価値を発信するために様々な取組を行っている。望月社長は、「わさびの楽しみ方を知ってもらうことで、田丸屋ブランドを国内外にさらに広めていきたい」と語った。
ーわさび関連商品の販売動向。
 「土産物販路においては、インバウンド向けが好調だ。わさびは特徴的な日本の食材として、外国人からの認知度が高く、需要が伸びている。特にわさびチューブ製品やふりかけ製品などが売れている。築地場外市場内の店舗など外国人観光客の多いエリアでも弊社商品を取り扱っていただく機会が増えており、販路も拡大している」
ー小売店向けの需要。
 「わさび漬は値上げにより、数量が若干減少している。最近の米価格高騰もご飯のお供であるわさび漬の動きに少なからず影響を及ぼしているものと考えている。一方で、売上が伸びているわさび製品もあり、新商品開発を積極的に進めることで、新たなニーズを掘り起こしていきたい」
ー6月に開催された秋本食品「全国漬物・惣菜展示見本市」の「おにぎりグランプリ」で「田丸屋のわさびめし」が3位に輝いた。
 「〝わさびめし〟も大変ご好評いただいている商品だ。著名人のオススメとして取り上げられたり、ネットで話題になるなど、発売からしばらく経過した後に、売上が伸長してきている。静岡県内のコンビニで、ツナマヨネーズと合わせて、おにぎり具材として採用された実績もあり、まだまだ提案の仕方によって売れていく商品であると考えている」
ー「葵ノ頂 静岡本わさび」を6月に新発売した。
 「弊社わさびチューブ最高峰商品として開発した。わさびチューブ市場は、100円台の低価格ライン、200円台の高価格ラインに分かれているが、現在は付加価値の高い高価格ラインの商品に注目が集まっている。その中で、弊社として150年の歴史と技術を生かした最高峰の商品を作って、お客様に味わっていただきたいという思いで開発に着手した。わさびチューブのわさび配合量は一般的に5~30%程とされている中で、同商品は50%という高い配合量を実現している。他社製品を含めてもトップクラスのわさびチューブ商品であると自負している」
ーわさびの原料状況。
 「わさびは根と茎が別々に流通しているが、どちらも不足気味で高値が続いている。奥静岡のわさび産地では、3年前の台風被害により収量が減少していたが、徐々に復旧が進み、来年から少しずつ収量が回復するという話もある。長期的には、海外からの引き合いの強さもあり、価格は高止まりが続くものと見ている。原料状況が厳しさを増す中で、さらなる値上げの必要があるが、市場動向を注視して慎重に対応していきたい」
ー全漬連事業について。
 「テーマをしっかりと設定して、一社ではできないことを業界全体で取り組んでいくことが大切だと考えている。先日も自民党漬物振興議員連盟の総会に出席させていただいたが、塩分の問題など業界の課題についての要望など議連を通してしっかりと伝えていくことは重要なことだ。今後も漬物業界の発展のため努力していきたい」
ー今後について。
 「人口減少が進む中で、働き方が変わりつつある。カリスマ経営者によるトップダウンの昭和的な働き方から、従業員が企業理念に共感しながらアウトプットするという働き方に変わりつつあり、この流れに対応していかなければならない。もちろんリーダーシップは必要であるが、労働者と雇用者の関係が変化する変わり目の時期に差し掛かっている。食品産業は自動車産業などとは異なり、一品あたり数百円という単価の商品を、常連のお客様へ頻度高く継続して販売していくことが求められる。一度食品事故が起きてしまえば、それでダメになってしまう可能性もある。どのような形で社内のモチベーションやエンゲージメントを高め、小さな努力を積み重ねて、ウェルビーイングを達成していくかが今後の課題となっている」
ー創業より150年を迎えた。
 「たくさんの関係者の皆様のおかげにより、ここまでやって来られたことに心より感謝を申し上げたい。先人たちが築いてくれた〝ブランドと信頼〟が我々にとって一番の価値だ。そのブランドを保ちながら将来的にいかに高めていくことができるかが重要になる。日本のマーケットが縮んでいく中で、海外に向けてどのようにわさびの価値を発信し、ニーズを掴んでいけるかもこれからの課題だ。様々な商品を通して、わさびの楽しみ方を知ってもらうことで、田丸屋ブランドを国内外の方にさらに認知していただけるよう取り組んでいく」
【2025(令和7)年7月1日第5200号8面】

7月1日号 わさび関連特集クローズアップ

カメヤ食品株式会社 営業第三課 東日本担当 亀谷亮平氏

「世界一のわさび屋」目指す
海外経験生かし魅力PR
 カメヤ食品株式会社(静岡県駿東郡清水町)では、コーポレートメッセージとして〝水とつくる〟を掲げ、富士山の清く豊かな伏流水を使用し、わさび製品を中心とした食品製造を行っている。
 同社において首都圏及び海外営業を担当するのが営業第三課東日本担当の亀谷亮平氏。同社の地元である静岡県三島市で生まれ育ち、高校卒業後に渡米。米オレゴン州の大学では社会学を専攻し、4年間勉強に明け暮れた。
 アメリカで身に付けた語学力を生かし、帰国後は京都の食品機械メーカーに就職。6年間海外営業を経験した後、3年前に父である亀谷栄治氏が専務取締役を務めるカメヤ食品へ入社した。
 入社後は、わさび製品の製造を担当、工場のオペレーションを把握するとともに、自社製品のこだわりについて基礎から学んだ。
 昨年、営業部に配属され、現在は首都圏エリアや海外エリアの営業を担当している。「海外に売り込む商材は前職とは異なるが、外国人からのわさびの反応に手応えを感じている。小さい頃から土日も働く父の背中を見て育ってきた。国内外のたくさんの方に、昔から本当に美味しいと思っているカメヤの製品を販売できることが嬉しい。日本特有のスパイスであるわさびの魅力を世界中の方に知ってもらえるよう努力していきたい」と話す。
 海外では、わさびの人気が年々高まっている。寿司を始めとした日本食に合わせるだけでなく、わさびマヨネーズなどオリジナル調味料を作り、現地の料理に合わせるなど様々な楽しみ方が広がっている。
 インバウンド向けにも土産物として「わさびふりかけ」や「わさびチューブ」などが人気を集めている。「海外で出回っているわさびは、本わさびではなく西洋わさびが多い。展示会などで自分たちが本わさびを提案すると、初めて本わさびを見た、と興奮して喜んでもらえる」。
 国内市場においても一品でも定番商品を増やせるよう取り組んでいる。「伊豆産わさび」「箱根西麓野菜」「三島の清らかな水」といったキーワードとともに食材の良さを前面に出し、味やストーリー性で違いを感じてもらえるよう自社製品の魅力を伝えている。
 将来のビジョンとして掲げるのが〝地域一の漬物屋&世界一のわさび屋〟というコーポレートメッセージだ。同社では毎月21日の「漬物の日」に合わせて、創業の地である清水町の本店において感謝祭を実施。限定商品の販売や特売、抽選会などを行っており、地元客を中心に人気が広がっている。
 また、わさびに関しては、人口減少などにより国内市場がシュリンクしていく中、世界に目を向け、輸出を拡大していく。
 「国内外の取組を通して、『地域一の漬物屋』『世界一のわさび屋』になることを本気で目指している。本物のわさびの価値を伝えるため今後もチャレンジを続けていく」。
【2025(令和7)年7月1日第5200号8面】

6月21日号 資材機器版

カカシ食研株式会社 専務取締役 川上健介氏

漬物向け技術を惣菜へ 
米が固くならない製剤に脚光
 カカシ食研株式会社(川上剛史社長、兵庫県三田市)は、来年創業より30周年を迎える。同社では〝農産加工用品質改良剤日本一〟を目標として掲げ、業容を拡大。近年は漬物向けに育んできた技術を惣菜向けに応用することで、売上を伸ばしている。専務取締役の川上健介氏に現状の商品展開や今後のビジョンについて聞いた。
(藤井大碁)
 ー漬物用製剤の他、近年は惣菜用製剤に力を入れている。
 「野菜を軸にした農産加工という幅広いフィールドで我々がお役に立てることは何かを模索し続けた結果、惣菜への道が拓かれた。惣菜売場は揚物類、肉類、煮物類など茶色い食べ物が多く、緑黄色野菜の鮮やかな色合いが映える売場だ。我々が長年にわたり漬物用製剤で育んできた野菜の変色を防止する〝変色防止剤〟を始めとした技術力により業界発展に貢献できると考えている」
 ー惣菜向けにどのような製剤を提案しているのか。
 「前述した変色防止剤では、変色してしまうため今まで商品化できなかった〝茄子の揚げびたし〟などの変色を防止する製剤『デリカナスト』を多方面でご活用いただいている。また里芋や肉じゃがなどの煮崩れを防止する『レトフレプラス』も人気だ。現在は冷凍食品用製剤の開発も進めている」
 ー米不足の中、米の品質や歩留まりを高める「粒立ちキーパー」に注目が集まっている。
 「特殊な酵素を使用し、澱粉を酵素でカットすることによりお米が冷めても固くならない製剤だ。もともと新幹線で駅弁を食べている時に、お米が固いと感じ、お米の柔らかさを保つことができれば駅弁をもっと美味しく食べられる、と思いついたのが開発のきっかけとなった。現在の米価格上昇により、ブレンド米に切り替えなければならない場合、同製剤を使用することで、従来の米と同様の食感を維持できる。歩留まりも10~20%アップするため、弁当やおにぎり、寿司などの米飯加工業者や産業給食業者など様々なところからお問い合わせをいただいている。銀座の高級寿司店でも採用されており、同製剤を加えてシャリを握ると握った時の感覚が想像以上に良く、柔らかく握っても崩れないとお墨付きをいただいた。寿司やいなり寿司を冷蔵庫で保管すると、シャリが固くなるが、それを防ぐこともできるため、米を美味しく、無駄なく食べられる現在の食卓に相応しいタイムリーな製剤となっている」
 ー今後に向けて。
 「来年創業から30周年を迎える。これまで漬物業界の皆様にお世話になり、漬物用製剤の開発により、野菜の奥深さについて学ばせていただいた。日本の病院では、1日に350gの野菜が患者さんに確実に提供されており、野菜は我々の生活において絶対に必要な食べ物だ。その野菜を見た目でも美味しく、味でも美味しく食べていただくため、農産加工用品質改良剤日本一を目指す。我々の技術力により漬物業界、惣菜業界を始めとした農産加工品業界の発展に貢献できるよう努力を続けていく」
【2025(令和7)年6月21日第5199号7面】

カカシ食研

6月11日号 山陰特集

有限会社土江本店 代表取締役社長 関谷忠之氏

青しまね瓜の育成を見守る関谷社長
自社栽培野菜の生産拡大
津田かぶパウダー本格実用化へ
 有限会社土江本店(島根県松江市)の関谷忠之社長にインタビュー。同社は、中国・四国地方有数のメーカー・ベンダーで、2月に創業77周年を迎えた。漬物原料である野菜の自社栽培量を年々拡大させ、夏の青しまね瓜漬、冬の津田かぶ漬は同社を代表する商品にまで育った。現在は、津田かぶの葉を再利用するため、パウダーの実用化にチャレンジしている。(高澤尚揮)
◇    ◇
 ー津田かぶや青しまね瓜の自社栽培量が年々拡大している。
 「津田かぶは約30年前、私が社長へ就任する時に栽培を開始し、約300坪にまで拡大し、現在は土作りから栽培管理まですべて自社で行っている。毎年、津田かぶは栽培する際、土が硬すぎても柔らかすぎても、勾玉状には育たないので、非常に細かい工夫が必要だ。今は農家の高齢化が深刻で、30年前から現在の状況を見越し、自社栽培に踏み切って良かったと思う。夏の青しまね瓜は、数年前に自社栽培を開始した。津田かぶ、青しまね瓜ともに毎年、畑を購入し、生産量アップに取り組んでいる。漬物業界において、6次産業化は今や定番化したものの、全国でも先駆けて実践したことを誇りに思っている」
 ー漬物以外に干物「奉書干し」の製造も。
 「当社の看板商品の1つ『奉書干し』は、県内の浜田漁港で獲れた鮮魚を干物にしたもの。干物は魚を縦に吊るすと旨味が流れ、横に干すと魚の余分な水分が腐って味が変わってしまう課題があった。そこで、奉書紙で余分な水分を吸い取り、乾燥、発酵熟成させる工程を発案し商標を取得した。発酵熟成は、日本で唯一対応可能な急速冷凍庫を開発し、日々使用している」
 ー今年で77周年を迎える。
 「SDGsの理念に強く共感しており、その理念に沿って自社はどう実践できるか考えてきた。メーカーが最初にできるのは、フードロスを減らすことだ。従来捨てられてきた津田かぶや柿の葉、魚の骨を水蒸気乾燥してパウダー化することにより、ぬか床に入れたりお菓子に入れたりして再利用できる。今は、のどぐろや梅貝、アジなどのパウダー化にも成功している」
 ーパウダーの展開は
 「現在、地元の和菓子屋さんと、津田かぶの葉のパウダーをおはぎに混ぜる試作を行っており、2026年には販売を進めていきたい。津田かぶの葉は、鮮やかなグリーンで、見た目が美しい。続々と、各地域の名産とコラボレーションしていきたいと考えている。様々な展開を思い描いている」
 ー社長は島根愛がとても強い。
 「山陰浜田浜っ粉協議会会長を務め、浜田市の応援団、県の遣島使としても活動している。無報酬だが、島根の食や文化など魅力を全国の方々に伝えられることにやりがいを感じている」
【2025(令和7)年6月11日第5198号9面】

土江本店

泊綜合食品株式会社 代表取締役社長 岸田いずみ氏

50周年記念で新商品発売
漬物の魅力を伝えるのがパーパス
 泊綜合食品株式会社(鳥取市安長)では、昨年4月に岸田いずみ取締役が新社長に就任してから一年が経過した。昨年12月25日に創業50周年を迎え、岸田社長に今後の抱負や事業方針を聞いた。漬物の魅力を伝えることがパーパスと話し、漬物の製造・卸売を主軸としつつも、他品目の取り扱い拡大やオンライン販売の強化にも努めていく。また、今秋には50周年のコラボ商品が発売される。
(大阪支社・高澤尚揮)
◇    ◇
 ー新社長へ就任してから二年目に。
 「祖父、父に次いで三代目の社長に就任し、当社の存在意義を再認識するため、次のパーパスを策定した。『地元鳥取の豊かな自然と食材、そして日本の伝統食である漬物を中心に、世界中に、美味しくて健康的な食を楽しむ喜びと笑顔を広げていきます』。漬物離れと言われる時代にその魅力を『伝える』ことの重要性は増している。以前から地元小学校で年数回、漬物教室を開催し、原料野菜の話から発酵についてまでお話してきた。現在は、オンラインストアのコラム投稿、SNS発信、メディア出演を一層増やし、漬物について『伝える』機会を創出している」
 ー会社の近況は。
 「社長就任後、社員の17時退勤、有給奨励、紙やFAXの削減等を進めている。社員が働きやすく、常に業務を改善していける会社となるよう努めている、売上においては、当社は11月決算で、昨年度は就任から半年ほどで増収微増益で着地した。観光の土産需要の回復もあるが、経費削減や業務効率化に取り組んだことが功を奏したと思う。メーカーとしては、いかめしといった和惣菜の製造販売、あんこ等のお菓子製品の製造販売の出荷量を伸ばせている。卸売としては、漬物以外に佃煮やこんにゃく、豆腐、冷凍食品などの新規取引先とのご縁が生まれたのもある」
 ーオンライン販売にも注力している。
 「まだ売上の1割ほどだが、順調に伸びており、今後もネットでの売上は上昇傾向だと見ている。ウェブサイトを昨春リニューアルし好評だ。漬物の歴史や種類、取引先メーカーの会社紹介といったコラムを充実させ、今まで漬物をあまり食べなかった層にも情報発信をしていきたいと考えている。ウェブサイトを見て、当社や鳥取産らっきょうに関心を持ち、新しく取材してくださったメディアが多数ある」
 ー昨年12月で50周年を迎えた。
 「周年事業として、新商品の開発を進めている。今秋には発売を予定している。鳥取県は、ポケモン、名探偵コナン、ゲゲゲの鬼太郎、競泳がテーマのFree!など、アニメとのタイアップで観光需要を増やしたり、県外へアピールしたりしている。当社でも、ポケモンのキャラクターをパッケージに起用したらっきょう漬を販売しており、そのようなコラボ商品を引き続き投入していく方向でいる」
 ー今年の鳥取産らっきょうの作柄は。
 「今冬は大寒波が到来し、その後も低温が続き生育が遅れた。農家さんによってばらつきがあるが、どこも概ね一週間ほど収穫が遅れ小玉、平年の1~2割の不作という声もある。昨年が平年の6割作ほどであったので、加工用のヒネ在庫は県内ではひっ迫傾向にある。今年、来年以降も原料に余裕はないと見ており、楽観視はできない」
【2025(令和7)年6月11日第5198号9面】

泊綜合食品

株式会社みやまえ 代表取締役社長 宮前有一郎氏

 生姜のサイクル維持を
メニュー採用伸び率は23%
 株式会社みやまえ(宮前有一郎社長、奈良県生駒郡平群町)は生姜製品の総合メーカーとして全国でトップクラスのシェアを持つ。原料高騰による値上げが浸透した一方で、ガリの有料化や代替品も登場していることに対し、宮前社長は栽培を含めた生姜のサイクル全体の維持へ危機感を示す。さらなる品質向上と、漬物を使ったレシピ提案強化の必要性を語った。(大阪支社・小林悟空)
◇    ◇
 ー今年の生姜原料の見通し。
 「3年連続で生姜が高騰していたこともあり、山東省、中国南部、タイのいずれも作付けが増えている。しかし、天候は現在までは順調だが、ラニーニャ現象が発生の可能性濃厚と気象庁が発表しており安心できない。価格面でも円安などのコスト増に加えて、農家としては高騰が続いている青果用で収穫したいという意向や、投機筋の動きもあるため、今後の動きに注視しなければならない」
 ー昨年は値上げを実施した。
 「数年連続の値上げとなったがお客様にはご理解いただき、数量を落とすことなく推移している。競合他社も同様で、むしろ各社の価格差が縮まってきているとも言えるので、当社の品質を改めてアピールするチャンスでもある。しかし中にはガリの有料化や、大根を使った代替品の出現といった判断も出てきている。
 仮に単価を上げられたとしても、数量が大きく減れば栽培量も減らすことになり、長年かけて築いてきた生姜のサイクルが崩れることになる。生姜漬は必須だ、と思ってもらえるような品質と価格の両立を守っていかなければならない」
 ー貴社製品の品質について。
 「当社は辛みがマイルドで柔らかいタイ産・中国南部産を主力にしている。買付時期も他メーカーより早く設定しており、繊維質が少ない。成長して硬くスジ張った原料を使った製品との差を食べ比べてみてほしい。味以外にも、安定供給やサポート体制でも評価いただいている。最近では、本物志向の強い欧米からの注文も増えている」
 ーレシピ提案にも力を入れている。
 「添え物としての利用だけでなく、料理素材としてならば和洋問わずすべての食品がターゲットになる。惣菜市場自体が成長産業であり、努力が成果に出る分野。過去3年間のメニュー採用伸び率は23%だ。当社の強みはカット幅や添加物の種類、包装形態など多様な規格を揃えていること。調理オペレーションの削減に繋がる提案もできるため、価格以上の価値を感じて頂けている」
 ー生姜漬以外の商品について。
 「取り扱い品目を広げることでお客様にとっては仕入先の一本化に繋げられる。協力工場もあるので、生姜以外、漬物以外でもご要望に応えられる体制を整えている。この度発売したドリップが出ず盛り付けやすい大根おろしのように、工夫次第で新たな需要が生まれる商品もまだまだあるはずだ」
【2024(令和6)年6月11日第5165号5面】

みやまえ

6月1日号 資材機器特集 トップに聞く

株式会社エコリオ 代表取締役 浦野 由紀夫氏

 株式会社エコリオ(東京都千代田区)が取り組む揚げカスを活用した資源循環システムへ注目が集まっている。同社が開発した揚げカス搾り機“エコリオ”は、揚げカスを搾り油と搾りカスに圧縮分離する機器。搾り油は再利用することができ、揚げカスは、リサイクルプラントである「エコリオステーション」において、“ゴミ”から“資源”へと生まれ変わる。政府が2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2030年に国内のジェット燃料使用量の10%を持続可能な航空燃料(SAF)に置き換える目標を設定する中、SAFを生成できる貴重な原料として“揚げカス”にスポットライトが当たっている。同社では、こうした状況の中、機器をいかに導入するかではなく、いかに揚げカスを集めるかに目標を変え、5月よりエコリオの無料レンタルサービスをスタートした。代表取締役の浦野由紀夫氏に現在の状況や今後の見通しについて聞いた。(藤井大碁)
  ◇      ◇
―カーボンニュートラル実現に向けた動き。
 「2030年の国内目標達成のためにSAFが全く足りていないのが現状だ。一年間に航空機で約160万トンのSAF、船舶ではさらに多くの持続可能燃料が必要になると試算されているが、現在、国内の廃油から精製されるSAFは年間わずか12万トンに過ぎない。早急に揚げカスを含めた資源回収システムを構築していく必要がある」
―エコリオの無料レンタルサービスをスタートした。
 「導入にあたって、イニシャルコストがかかることがハードルになっていた。実質無料でエコリオを導入できるサービスを始めることで、少しでも多くの揚げカスを回収していきたい」
―導入側のメリット。
 「搾りカスは弊社が無償で回収し、搾り油は再利用できるため、油の購入費や揚げカスの産廃費など経費の大幅な削減につながる。導入後、半年から一年ぐらい使用して成果を見てもらい、出てきた搾りカス、油の再利用、産廃費削減などによる費用対価の約30%をお支払いいただく仕組みとなっている。エコリオ導入により生み出される対価からお支払いいただくため、導入側が損をすることはない。コスト削減だけでなく環境対策への貢献により企業イメージ向上にもつながる」
―店舗効率化や広告掲出の機能も利用できるようになる。
 「エコリオにIoTターミナルを付けることで、どの店舗が一日にどのくらいの油を削減し、どれだけの揚げカスを排出したかをDXで見える化することが可能になった。国が温室効果ガスの排出削減量などを認証する『Jークレジット』に対応するための仕組みだが、それにより店舗内に通信網が出来上がり、空調機センサーを通して、フィルターの汚れ具合を検知しエネルギーロス削減につなげるなど、AIのアドバイスを受けながら、最適な店舗運営ができるようになる。またユーザーがポイントを貯められる弊社オリジナルの“ポイ活アプリ”を開発した。エコリオ導入店舗はアプリを通して無料でエリアごとにターゲットを絞った広告を掲出することが可能になる。QRコードを店舗に掲出し、アプリへ誘導。来店客は個人情報を入力せずにクイズやアンケートに答えることでポイントを獲得することができる。集めたポイントは弊社ECサイト上で取り扱う商品の購入に利用できるようになる予定だ」
―自治体との連携。
 「様々な地域で自治体、小売店、食品メーカーなどが連携し、資源循環のためのコンソーシアムを構築する動きが出てきている。各地の小売店や食品工場に設置されたエコリオで揚げカスを回収し、近隣に建設されたエコリオステーションにおいて、回収した揚げカスは再生可能エネルギーに生まれ変わる。そのエネルギーを利用して、養殖場などを運営することで地域に雇用を生み、そこで養殖された魚介類を使用した特産品が生産されるというストーリーを描いている。その特産品は弊社ECサイト上において、前述したポイントと交換できる仕組みを作る。それによりSDGsや環境保全への貢献により、資源循環の流れの中で生まれた産品と交換できるというサイクルができる。こうした自治体の動きは、一つ成功事例が出ることで、一気に進んでいくことが予想される」
―10年後のビジョン。
 「揚げカスが排出されるデータに加え、再生エネルギーとして使用されるデータが蓄積されれば、そこに確かな価値が見い出され、ゴミが資産として認識される。現在弊社では、バイオコークス燃料の研究を学術機関と共に進めており、揚げカス以外にも様々なゴミを資産に変えられるよう取り組んでいる。将来的には投資家を始め、一般の方も参加する形で、ゴミを資産に変える資源循環の大きな枠組みが出来上がるだろう。現在は、そのベースとなる仕組みを作ることが我々の役割だ。国内で仕組みが出来上がれば、それをパッケージ化して海外へ持って行くこともできる。カーボンニュートラル実現に向け、ゴミを資源として無駄なくエネルギーに変えられる世の中の到来が近づいている」
【2025(令和7)年6月1日第5197号5面】

エコリオ

5月21日号キムチ浅漬特集

有限会社八王子屋 代表取締役社長 廣田隆俊氏

菌制御「プロバイオ製法」
美味しさと賞味期限延長を両立

‐発酵の研究を重視している。
 「漬物を構成する要素は①野菜、②食塩、③水分、④菌(乳酸菌)の4つ。このうち菌の働きを理解しコントロールできれば、漬物の美味しさと安全性は飛躍的に改善するという確信を持ち編み出した製法を『プロバイオ製法』と名付けた。改良を重ね、現在はバージョン3と呼べる段階にある」

‐プロバイオ製法の詳細。
 「特徴の一つが炭酸次亜水やオゾン水を用いて野菜を洗浄すること。これは特殊な装置を用いることで洗浄水そのものの菌数を下げられる。こうして徹底的な殺菌洗浄をし、雑菌が極小した所へ、塩分・酸・低温に強い2種類の植物性乳酸菌を投入する。こうして乳酸菌が圧倒的に優勢な状態を作ることで、美味しく、賞味期限の長い漬物が作れる」

‐乳酸菌について。
 「『乳酸美人』という、2種混合の植物性乳酸菌を採用している。食塩(塩化ナトリウム)を分解する性質を持ち、塩カドのないマイルドな味になり、雑菌の繁殖を抑えるので賞味期限延長にも役立つ、漬物にはうってつけの乳酸菌だ。また、乳酸菌というと酸っぱくなりすぎたり袋の膨張の原因になると思われているが、実は大抵は、混入している酢酸菌や酪酸菌の仕業。菌を正しくコントロールできていればそのような不都合は起こらなくなる」

‐賞味期限延長の状況。
 「賞味期限7日だった商品が、プロバイオ製法により12日に延長できたように成果を挙げている。賞味期限が長いと、変色せず美味しそうに見える期間が長い、ということでもあるので、ロスが削減される。企業にとってはコスト削減となり、自然環境に対しては負荷軽減に貢献できるということだ」

‐排水設備にも菌を活用している。
 「グリストラップに、寒天で固めた乳酸美人、枯草菌、放線菌を活用している。これらの有用菌が、汚泥に含まれる雑菌の繁殖を防止してくれるので悪臭が出るようなことは全く起きておらず、衛生的な工場を保てている」

‐業界内での技術提供も視野に入れている。
 「漬物業界は中小企業が大半。同業である当社で成果のあった手法をパッケージ提供すれば、安心して導入できる。漬物産業全体のレベルアップに貢献していきたい」
【2025(令和7)年5月21日第5196号5面】

株式会社天政松下代表取締役社長 松下雄哉氏
株式会社とうがらしのやまだ代表取締役社長 山田良太氏

松下社長(右)と山田社長
鶴橋キムチ1億円達成
経営人材誕生でレベル向上
 株式会社天政松下(松下雄哉社長)は多角化戦略の一貫として、2021年5月に鶴橋キムチ専門メーカーの株式会社とうがらしのやまだ(山田良太社長、大阪市生野区)を設立した。松下社長と山田社長に、会社設立の背景や経営状況、今後の展望を聞いた。
(聞き手=大阪支社 小林悟空、以下敬称略)
 小林 山田社長のプロフィールを教えて下さい。
 山田 大阪市生野区の唐辛子問屋の長男として生まれて、小さい頃から両親の働く姿を見てきました。高校卒業後の22年前、18歳で天政に入社し製造部に配属になりました。ありがたいことに入社当初から当時の工場長に商品開発に携わらせてもらい数えきれない数の商品開発をしてきました。キムチと浅漬の開発は自分なりのノウハウをもっているつもりです。2018年に工場長に就任したのですが、ちょうどそのタイミングで父が体調を崩しました。しばらく悩んだ末に、2年後、最終的には退社し家業に入る決断をしました。
 松下 私も社長へ就任したばかりの頃で、年も近かったので2人でよく家業を継ぐことの悩みを相談し合っていました。工場長の山田という人材が離れるのは痛手でしたが、当社で学んだことを活かし経営者として活躍してくれるなら嬉しい気持ちもありました。ただ関わりを途絶えさせたくなかったので、退社後も連絡を取り合って経営の相談や、天政の開発にも協力してもらったりしていました。そのうちにコロナ禍が起きてキムチがすごく注目されてきた頃に、これはまた山田と一緒に仕事ができるチャンスだと思い鶴橋キムチメーカーの会社設立を提案しました。
 山田 ぜひやりたいと即答しました。やろうと決まってからはスピーディーで、事務所の物件探しから会社登記するまで1ヶ月くらいでしたよね。
 松下 ワクワクする仕事は早いよね。自分自身で一から会社を作るのは初めての経験だったので、良い経験になりました。その後に株式会社ゼロべー(SNS運用代行)、株式会社Tate(POS分析、DXサポート)を設立するのにも役立ちました。とうがらしのやまだは今の多角化戦略のハシリですね。
 小林 設立から4年間の実績はどうですか。
 山田 3期目までは思うような結果が出ませんでした。味には自信があったので(製法詳細は別掲)悔しい思いもしましたが、毎年ラインナップを総入れ替えしながら試行錯誤していました。昨年夏に全国大手スーパーで採用いただいたのをきっかけに、次々お声がかかるようになって第4期は一気に売上1億円、経常利益もようやく安定して出るようになりました。
 松下 ある程度軌道に乗ってきたので、これまでは私が代取会長、山田は取締役社長だったのですが、5期目からは山田に代表取締役に就任してもらいました。
 小林 代表就任しての心境を。
 山田 この肩書は責任感が段違いですね。「責任を取る」という言葉の重みを日々感じています。気を引き締めて安全安心の心を守っていきます。
 松下 天政松下グループに若手経営者が増えたことで全体の人材のレベルアップにも繋がっています。多角化戦略もやり始めた当初より社員も興味をもって活動してくれています。チャレンジすることの重要性や経営に関わることの面白さや難しさを感じながら社員みんなで成長していけたらな、と思います。
【2025(令和7)年5月21日第5196号6面】

とうがらしの山田 https://tsuruhashi-yamada.co.jp/

関口漬物食品株式会社 取締役営業部長 関口 彰氏

アイテム集約で生産効率向上 農水省のプロジェクトに呼応
 関口漬物食品株式会社(関口悟代表取締役、東京都世田谷区)の関口彰取締役営業部長にインタビュー。製品の売れ行きや各種原料の動向、値上げなどの動きについて話を聞いた。今後の取組については、季節感のある素材を活かしながら付加価値のある商品を作る、というベースは変えずにアイテムの選択と集中を推進していく方針を示した。
(千葉友寛)
◇   ◇ 
 ー製品の売れ行きと業績について。
 「昨年の夏から猛暑の影響で野菜の価格が上がり、秋から春先までの原料手当てに苦労した。値上げと一部出荷調整を行いつつ、何とか春を迎えることができた。4月から原料が以前よりは落ち着いてきた。当社は9月決算なので残りの4、5カ月で売上と利益を確保することに注力する。良くも悪くも値上げの影響があり、一部商品で引き合いが増えているものもある。工場のキャパがあるので精査する必要があるが、小売店がメーカーを選ぶというよりもメーカーが売り先を選ぶ時代になってきている。他の業界ではすでにそのようなことが起こっていて、漬物業界もそのような方向に進んでいくと感じている。その反面、漬物メーカーが減少している現状に危機感を抱いている」
 ー昨年からの原料状況について。
 「白菜の原料確保も大変だったが、それ以上に胡瓜とキャベツで苦労した。当社では以前、白菜と胡瓜以外に何を売り込んでいくか、ということを考えてキャベツに着目し、嬬恋キャベツを使用した商品を中心に夏以降に売り込んでいた。しかし、昨年は相場が上がって契約では足りないので市場での購入を余儀なくされた。胡瓜も秋以降の生育が悪く、価格も2~3倍に高騰した。そのため、出荷調整や休売をせざるを得ない状況となった。ただ、前期の売上は値上げ効果や新規取引等で前年比103~104%とまずまずの数字となった。季節に限らず、浅漬は健全化を図る体質にしていかなければならないと改めて実感した。今後、得意先とのより具体的な数字の落とし込みや原料状況をより適切に見極めていくことが重要だ」
 ー今後の方針は。
 「売りたい時に売れる商品や差別化できる商品が必要だ。アイテム数が増えると効率が下がるので選択と集中を全社でやっていく。毎年3~5品のアイテムを減らしているが、それでもまだ約50アイテムの商品を作っている。アイテム数を減らさないと量を作ることもできないので、アイテムの集約を進めて生産効率を向上させる。大容量の商品はユニット単価の優位性が支持されている。しかし、少数世帯向きのニーズにも応える必要もあり、そのような声や同様のニーズを持つ得意先にも迅速な対応をしていきたいと考えている」
 ー今後の取組について。
 「原料価格は年々上がっている。契約農家も適正な価格、よりよい原料を供給していただける体制にしていかなければならない。我々としては適宜、価格の見直しを行い、かつ売上を落とさず、漬物離れも起こさないようにしなければならない。当社は昨年の秋冬に続き春夏も値上げを実施した。値上げ後は数量が1割程落ちる商品があるものの、値上げ効果で売上は維持できている。ただ、工場の稼働率が下がることもあり、数量の減少が続くことは決して良いこととは言えない。当社の商品はフレーバーや調味液で工夫するというよりは、野菜の鮮度感を大事にして、生姜などの副材で、素材本来の味をより引き立たせている。同じように見えてひと手間、ふた手間かけているので、それが付加価値としてお客様に支持されている部分だと思っている。また、農水省が推進している『野菜を食べよう』プロジェクトに参加し、新商品のパッケージに同プロジェクトのロゴを入れている。国民の健康につながる取組に共感していただける得意先もあり、季節感のある素材を活かしながら付加価値のある商品を作る、というベースは変えずに農水省のプロジェクトに呼応するなど、できることから少しずつ変えていきたいと考えている」
【2025(令和7)年5月21日第5196号7面】

関口漬物食品

株式会社ピックルスホールディングス 代表取締役社長 影山直司氏

生産性を高めて増益計画 売上500億円目指す
 株式会社ピックルスホールディングス(埼玉県所沢市)代表取締役社長の影山直司氏に2025年2月期の決算などについて話を聞いた。今期はアイテムの集約や値上げを実施しながら生産性を高めることなどにより増益を計画。白菜キムチ専用工場として昨年12月から稼働している茨城工場によって各工場に余力が生まれ、目標とする売上500億円のベースができたことを明かした。(千葉友寛)
◇   ◇
 ー2025年2月期決算の総括を。
 「上期はまずまずだったが、下期が厳しかった。特に12月から2月は野菜高騰で売れば売るほど赤字になるような状況だった。2月26日は『ご飯がススムキムチの日』なので積極的な販売を行いたかったのだが、販促することはできなかった。キムチは出荷にブレーキをかけたが、白菜やキャベツなどの主力となる商品も販促をすることができなかった。減収となった要因は、需要が減ったというよりは販売を抑えたことが大きい。キムチは供給不足となっていたこともあり、販促しなくても注文は通常以上にあった。昨年は夏以降、胡瓜の店頭価格が高騰し、1本88~98円で販売されていた時期もあった。その後、キャベツや白菜などの葉物野菜の価格も上昇した。想定以上の野菜高となってしまったことが響いた。野菜は契約率を高めているが、不作の時は契約分も想定通り仕入することはできない。足りない分は市場で購入するしかないのだが、調達の仕方にも改善すべき点があったと感じている」
 ーキムチと浅漬の売れ行きについて。
 「両方を合わせると前年割れしているのだが、キムチだけ見るとプラスになっている。浅漬については冬場に白菜製品を拡販する予定だったのだが、数量をコントロールしたことが響いた」
 ー値上げについて。
 「胡瓜については冬場に値上げを行った。その他の商品も適宜価格改定の交渉を行っているが、野菜価格がここまで上がると値上げせざるを得ない。遅かったと感じているが、想定以上の野菜高が続いていたため、消費者は漬物の価格が値ごろに見えた部分もあると思う。キムチは昨年9月から価格改定の案内をさせていただいているが、一律の値上げではなく、問屋流通を中心とした値上げのため店頭価格にあまり変化はない。5月からの値上げについては、価格改定と量目変更、両方を行っている。主力のキムチは200gから180gに内容量調整を行う。製造コストや物流費、人件費が上がり続ける他、野菜も昨年だけ高いというわけではない。大手牛丼チェーンが1年に3、4回値上げを実施しているが、我々もその都度値上げしていかないと事業として成り立たない。改善努力を行ってきたが、株式市場に上場していることもあって、例え黒字でも利益成長をしていかないと厳しく評価される。今期は商品効率を意識して売上よりも利益の確保を優先していく形になる」
 ー利益確保の取組について。
 「箸休めの位置付けの漬物では価格を上げていくことが難しい。昨年、当社で評判が良かったのはエビも入っている中華あんかけ風の惣菜の商品で、おかずになる商品。今後はそのような商品の提案が必要になると思っている。白菜が高くて販売を抑えていたこともあるが、昨年の夏頃から評判が良かったのが食卓の一品として成立する商品。これらの商品は従来の漬物よりも付加価値が高く、単価も高い。液切りが不要な浅漬やおかずになる惣菜系の商品に力を入れてシリーズ化していきたいと考えている」
 ー収益性の向上について。
 「当社は得意先ごとに細かい商品を提案しており、商品数が2000アイテムほどあった。多品種小ロット生産で不採算の商品を中心にアイテムを集約し、工場の生産性を高める。また、惣菜商品において、これまでは得意先のチェーンごとに、中身の規格は同じなのにラベルの種類を切り替えていたのだが、これに時間がかかっていた。ラベルを統一してNB商品として販売できれば効率性が上がるので、そのような提案を行っていく。基幹工場である所沢工場では1年間で約10%のアイテム数を削減することができ、労務費も数%改善できた。これをさらに10%削減できるよう取り組んでいる。商品の価格改定を実施しながら生産性も高めていく。来期の連結決算予想では、売上高は現在の水準を維持し、営業利益は商品規格の見直しや生産性の改善などにより増益を計画している」
 ー昨年12月から稼働した茨城工場について。
 「白菜キムチ専用ラインがあり、1時間に最大1万パック程度製造する能力がある。現在は1日およそ8万パックを作っていて、稼働率は順調に上がっている。AIカメラの選別機など、導入設備を使いこなせるようになってきている。ただ、一連の工程を連動させた製造ラインとしており、これまで導入していなかった技術を採用しているので、想定していなかった問題もあるが、しっかりとメンテナンスを行いながら対応している。この工場は1週間で2日休みにしているので、まだ余力がある。関東にある工場のキムチ製造を茨城工場に移管できる分、これまで作ることができなかった商品を作ることができる他、一部工場で行っていた夜勤の分をカバーすることもできる。既存の工場は製造キャパシティがいっぱいだったので、現在の430億円の売上から伸ばす要素がなかったが、茨城工場の稼働によって各工場に余力が生まれ、目標とする売上500億円のベースを生み出すことができた。集中生産とコストダウンを両輪で行いながら全体の生産キャパシティを上げていく形で売上500億円を目指す」
 ー新商品・新領域への挑戦について。
 「既存の部分では商品をブラッシュアップして売上拡大、西日本エリアの販売拡大を目指す。新規については埼玉県飯能市の『OH!!!~発酵、健康、食の魔法 !!!~』では、発酵をテーマにした事業で多店舗展開やインバウンド需要の開拓も視野に入れている。さつまいも事業については様々な加工方法に取り組んでいく他、冷凍食品や健康志向に対応した商品も展開していく」
【2025(令和7)年5月21日第5196号10面】

ピックルスホールディングス

5月11日号新社長インタビュー

有限会社あっさり漬食品工業 代表取締役社長 嵯峨根健人氏

全国区の漬物メーカーへ
革新的な商品開発に力注ぐ
 有限会社あっさり漬食品工業(京都府舞鶴市)では2月20日、取締役生産物流部長の嵯峨根健人氏が代表取締役社長に就任した。嵯峨根隆文社長は同日、代表取締役会長に就いた。嵯峨根新社長は、三代目として徹底した品質管理と革新的な商品開発、ニーズに合った販売促進に取り組み、「全国区のメーカー」を目指すと抱負を語った。
(大阪支社・高澤尚揮)
◇   ◇
 ー2月に社長へ就任された。
 「2011年に当社へ入社し来年には15年目を迎える。商品開発、製造、衛生管理、営業、マネジメントと一通りの業務をこなす中で、今年40歳の節目の年であり、父で前社長の隆文よりたすきを受け継ぎ三代目の新社長となった。気が引き締まる思いだ。昨秋から就任準備を進める際、会社の歴史を改めて調べ直し、多くの気づきがあり挑戦したいことを構想した。就任を機に、当社ウェブサイトの会社概要欄を刷新し、創業時からの写真もアップしているので、ぜひ見ていただきたい」
 ー挑戦していきたいことは。
 「就任時、『全国区のメーカー』にしたいという新しい目標を掲げた。今まで以上に徹底した品質管理、革新的な商品開発、ニーズに合った販売促進に取り組んでいく。当社は量販店向けの商品が強みで、主力商品『しぼり大根』はフレッシュな甘さにかなりの自信があり、販路開拓を強化していく。人気大食いYouTuberのななおさんが“世界一好きな絞り大根”と紹介してくださり、ななおさんファンの方が様々な店舗へ推薦され、導入が決まったこともある」
 ー商品開発については。
 「20歳から4年間、ワーキングホリデーでオーストラリア、ニュージーランドで料理の修行をした(和食、イタリアン、インド料理、韓国料理など)。現地の高級和食店にて、『漬物屋の息子なら漬物を作ってみて』という依頼があり、ゆず白菜やゆず大根を手作りして提供したところ、日本の漬物を食べたことがないお客様からも喜んでもらったことが強く印象に残っている。伝統食としての漬物の魅力を伝えながらも、調理や国際経験といった自分の経験を活かしたい。固定観念にとらわれすぎない、海外の方や若い人に向けた漬物や、時代をとらえた惣菜漬物の開発にも邁進したいと考えている」
ー貴社の歴史は。
 「祖業は八百屋で、昭和32年6月、創業者の嵯峨根篤二が立ち上げた。篤二は家族を支えるため『自分にできることは何か』を考えぬき、舞鶴市吉原地区で空き家を分けてもらい、八百屋を始めた。その中で、売れ残った野菜を捨てるのはもったいないと思い、漬物づくりに取り組み、八百屋と漬物屋の二本柱で事業を成長させた。特に『白菜の浅漬』は、高度経済成長期という時代が重なったこともあり、ヒットした。その後は、漬物屋一本に絞り、今に至る」
 ー漬物屋としての転換点は。
 「篤二が漬物屋一本に絞ろうという昭和35年~40年の当時は、一般的にどこの漬物も無地のナイロン袋をゴムで留める簡易な包装が一般的だったが、篤二はソーセージ等のほかの食品から着想し、袋を筒状にして両端を金属で留める方法を思いついた。食品の安全性を高めること、パッケージのデザイン性向上、包装作業の効率向上に成功し、社名が知られるようになった。続く二代目で前社長の隆文は、食品衛生管理の強化で5S委員会を発足させ、HACCPにいち早く取り組んだほか、新規取引先の拡大に貢献した」
 ー最後に。
 「私は入社してから、前述の『しぼり大根』開発に向け五年掛けて試行錯誤して完成させたこと、とろろと出汁のぶっかけ漬物である『一汁三菜のすすめ』で第5回T‐1グランプリ2015法人の部グランプリ(農林水産大臣賞)受賞で自信を得た。現在、漬物業界は原料不足、物価高騰という課題に直面し大変なことも多いが、皆様の力をお借りしながら、難局を乗り切っていきたい」
【2025(令和7)年5月11日第5195号2面】

あっさり漬食品工業

4月21日号 調理食品特集インタビュー

菊池食品工業株式会社 代表取締役社長 菊池 光晃氏

常識に囚われない改革を
過去の成功体験に未来はない
 全調食東日本ブロック会の菊池光晃会長(菊池食品工業社長兼COO)に、昨年のおせち商戦や通常品の動向などについてインタビュー。菊池会長は引き続き様々な経費が高騰する中、常温配送への回帰などこれまでの常識に囚われない改革が必要になっていると語った。(藤井大碁)
-昨年のおせち商戦。
 「昨年は大型連休や値上げの影響で、数量ベースでは一昨年を下回ったものの、値上げにより単価がアップしたため金額ベースでは前年比微増となった。昨年から新たに始めたお重も金額的にはまだ僅かだが売上に貢献した。カテゴリー別では、栗きんとんが好調で、数量についても12月は前年を上回った。栗きんとんは様々なニーズへ対応するため、少量から大容量まで規格を増やしたが、大容量で値ごろ感のある商品の動きが最も良く、コスパを重視する現在の消費動向を反映する結果となった。また、主要な佃煮おせちを詰め合わせたセット物が伸長した一方で、わかさぎやえびなどの串物は数量を落とした。必要なもの以外は購入しないという消費傾向が強く見られ、さらにおせち商材の集約が進んだ」
-今年のおせちの見通し。 
 「丹波篠山産の黒豆が8割~9割減と大凶作となっており、例年同様の供給が難しい状況だ。弊社では代替として、北海道産の大粒黒豆を使用する予定だが、供給できる数量が限られており、価格が上昇する可能性がある。また、田作りや昆布巻、栗きんとんなどその他の佃煮おせちの原料も不漁や不作、人手不足などにより価格が高止まりしている。厳しい環境は続くが、安定供給ができるよう努めていく」
-通常品の動き。
 「消費者の節約志向が高まる中、値上げやお米の高騰などの影響により購入数量が減少している。だが昨今のおにぎりブームが追い風となり、コンビニ向けなど業務用おにぎり具材の需要は増えつつある。こうしたニーズにしっかりと対応することで売上を伸ばしていきたい」
-コストアップが続く。
 「引き続き様々な経費が高騰する中、できる限りの効率化を進めていくが、これまでの常識に囚われない改革も必要になっている。一例を挙げるとすれば、常温物流への回帰だ。佃煮の配送はもともと常温物流であったが、鮮度感や品質を求める時代背景などにより、保存料を使用しない商品が増加し、チルド物流に変わってきたという経緯がある。だが、これだけ物流コストが上昇している中では、保存料を使用し、常温物流に変更するという判断も選択肢として検討する必要がある。コスト削減だけでなく、配送頻度が減ることで、環境面にも貢献できる。時代が大きく変わる中、これまでの慣習を当たり前と思わず、時代に合わせた形を模索していくことが必要になっている」
-DXも推進している。
 「社内システムを刷新し、経費精算を各社員がスマホでできるようにした。製造面においても、おせちシーズンにはスキマバイトのサービスを活用するなど、新しい仕組みを積極的に取り入れることで効率化を図っている」
-組合事業について。
 「東日本ブロック会では10月に米国カリフォルニアのクルミ産地において視察研修会を実施する予定。クルミについて学びながら、米国の今を肌で感じられる機会になると思っている。一社ではなかなか訪れることができない場所であるので、一社でも多くの組合員の参加をお待ちしている」
-最後に。
 「めまぐるしく時代が変わりゆく中、過去の成功体験の延長上に、未来はない。調理食品業界を夢が持てる業界にしていくために、新しい価値を生み出していかなければならない。インバウンド向けに、見せ方を工夫して、佃煮や煮豆の文化を発信するなど、新しい取組により伝統食の価値を提案していきたい」
【2025(令和7)年4月21日第5193号2面】

菊池食品工業

有限会社水上食品 代表取締役社長 櫻井靖子氏

安心安全と人材育成を
90年で培った確かな技術の伝承

 有限会社水上食品(愛知県北名古屋市)では1月18日に櫻井靖子氏が新社長に就任し、水上眞二社長からバトンを受け継いだ。「安心安全な食品づくりと人材育成」、社内コミュニケーションの活発化、取引先との強固な信頼関係の構築、新商品開発の推進など、多くの抱負を語る櫻井新社長にインタビューした。(大阪支社・高澤尚揮)
ー1月、社長に就任された。
 「水上眞二前社長は叔父にあたり、20年以上社長を務め、70歳を超えてから、次の世代にバトンを渡さねばとよく口にしていた。眞二氏は、社長業から仕入れ、商品開発、営業、設備投資と、すべての分野できめ細やかに目配りする人で、その後継者となりプレッシャーを感じている。私は、2006年に入社してからは、直営店の販売や営業を主に担当し、2021年に取締役に就任した。私の取締役就任からは、厳しくも思いやりを持ってアドバイスしてもらい、引き継ぎ作業をともに進めてきた」
ー取引先と強固な信頼関係を構築したい。
 「眞二氏は、とにかくお酒が強く、人と飲みに行くのが好きで、また豆の買い付けでは世界中の産地を視察するために飛び回るほど、アクティブでタフな人。取引先を始め、調理食品業界においても当社が数多く人脈を得たのは、眞二氏の人柄によるものが大きい。取引先、業界各位など信頼関係を維持、さらにはより強固にできるよう、精進し努めていきたい。当社にはありがたいことに、製造、営業、総務において、優秀で若い人材が働いてくれていて心強い。中でも、豆の買い付けは為替変動等の知識が必須で、経験が必要な大変骨の折れる仕事だが、若手社員を育成するために経験を積ましていきたい」
ー挑戦していきたいことは。
 「社長就任時に『安心安全な食品づくりと人材育成』を掲げ、確かな技術の伝承を目指して従業員一人一人がやりがいを持って働ける職場にしていくことを宣言した。社内でのオープンなコミュニケーションが、業務改善、商品開発などあらゆることの基本になると見ている。社長、社員という垣根を作らずに、おいしい煮豆や佃煮をお客様へ提供できるよう、全社一丸となって汗をかき、アイデアを出し合い、協力して前を向いて進んでいきたい。人材育成では、研修セミナーの受講の機会も、今以上に設けたいところだ」
ー新商品の開発が進む。
 「SDGsの精神に立った商品を開発したいと思っていたところ、煮豆の製造工程で砕けたものを瓶詰にした商品を販売する案が出て、『クラッシュビーンズ』が誕生した。4月中にはお披露目できそうだ。本来、豆は規格外であれば、廃棄されることが多いが、味には問題がないため、非常にもったいないと考えていた。砕けた豆は、さらにペースト状に加工しており、クラッカーの上に載せ、チーズをトッピングして食べるのもおすすめ。シリーズ化を計画している」
ー最後に。
 「20代の頃、恩師から『愛情は塩にもまさる調味料』という言葉を授かり、座右の銘のように大切にしている。90年を超える当社が磨き続けてきた製造技術、味をより一層向上できるよう真摯に努力していく。特に煮豆商品には揺るぎない自信があるので、『煮豆のことなら、水上食品に聞いてみようと』と思い浮かび、何でも相談してもらえる企業でありたい」
【2025(令和7)年4月21日第5193号4面】

水上食品

全調食東海北陸ブロック会 会長 平松賢介氏

つくだ煮の輸出に期待増す
原料は新規開拓へチャレンジ
 4月15日に全調食東海北陸ブロック会の総会にて、平松賢介会長(平松食品社長)が再任となり、今後の事業計画や、今年開催の大阪・関西万博への想い、つくだ煮における商品開発の重要性、販路拡大の可能性についてインタビューした。平松会長は、つくだ煮の海外輸出の可能性を信じながら、原料の新規開拓にも積極的に取り組んでいる。
 (大阪支社・高澤尚揮)
ー今期の東海北陸ブロック会の活動は。
 「ブロック会長再任となり、引き続き、会員のみなさんからの意見を取り入れながら、研修会や情報交換会を実施していく。毎年の総会には講演会を実施し、今回は経済通で名高い、前参議院議員の大塚耕平氏をお招きした。日本の活力を時系列に沿って解説いただき、イノベーションの必要性と考え方を教わった。また5月に全調食の70周年総会が名古屋で開催されるため、地元でもあるので多くの参加を呼びかけた。毎秋恒例の研修会は、今年は静岡県方面で行い、各社の取組や年末の動向についての情報交換や意見交換を行う予定だ」
ー2025年の注目イベントは。
 「4月13日に開幕した大阪・関西万博には期待している。万博は未来の可能性を教えてくれるイベントだと思う。愛知県で行われた2005年の愛・地球博では、会場内で三河佃煮工業協同組合として二週間ブース出店したことを思い出す。つくだ煮を販売し、海外の方が興味を持って口にしてくれたことがうれしく、つくだ煮の海外輸出に期待が膨らみ、翌年の2006年から当社では輸出を本格的に開始した」
ー自社では新商品の発売が相次ぐ。
 「3月に発売した『姫にしん生姜煮』の販売には特に力を入れている。原料には、北欧の海で獲れるヨーロピアンスプラットを使用し、このヨーロピアンスプラットを日本の伝統食である甘露煮に仕上げていることから、『着物をまとったヨーロピアン』というキャッチコピーを作り、各所に提案している。この製品は、EU向け輸出も可能にする仕様で、実現できれば、つくだ煮のヨーロッパ初上陸となる。『鉄分とれまぐろ』は、鉄分豊富なまぐろの血合いを使用し、臭み消しに生姜を利かせて仕上げた。『浅炊き梅いわし』は、関西風のあっさり味が支持され、生協で評価が高い」
ーつくだ煮の販路開拓は。
「つくだ煮の原材料事情や取り巻く経済環境は厳しく、価格を改定せざるを得ない状況。価格上昇は3年ほど続いていて、消費者は慣れてはいるものの、安易な改定には理解を示さない。しっかりした価値訴求が不可欠で、消費者の共感を得る必要がある。販売先として海外はポテンシャルが大きい。ただ、そこには食文化の壁が大きく立ちはだかる。当社も長年取組を継続しているが、爆発的な伸びはまだない。しかし、着実に増加していることと、食文化の狭間の中で変化が起き、つくだ煮の新たな化学反応を期待しているところだ」
【2025(令和7)年4月21日第5193号5面】

平松食品

新理事長に聞く

栃木県漬物工業協同組合 理事長 遠藤栄一氏

漬物の常食量表示を推進
次世代が働きたいと思う業界に 
 3月11日に開催された栃木県漬物工業協同組合の総会で新理事長に就任した遠藤栄一氏(遠藤食品株式会社社長)にインタビュー。6期12年理事長を務めた秋本薫前理事長からバトンを受け継いだ遠藤新理事長は、全日本漬物協同組合連合会(中園雅治会長)理事で、業界活性化委員会の委員長を務めて次世代の声を汲み取っている他、HACCP手引書作成検討委員会の委員長として小規模事業者向けHACCP手引書作成などに尽力。2022年5月からは日本漬物産業同友会会長も務めており、業界に多大な貢献を果たしている。「次の世代が働きたいと思う業界にすること」という目標に向けて一歩ずつ着実に進んでいく決意を示した。
(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐秋本薫前理事長からバトンを受け取った。
 「6期12年という長期間にわたって組合をけん引していただいた秋本前理事長には大変感謝している。2年前に開催させていただいた青年部会全国大会栃木大会では、青年部員が少なかったということもあるが、かなり踏み込んで協力していただいた。私よりも適任の方がいると思うが、全国大会が終わったら理事長を務めてほしい、と言われていたので引き受けさせていただいた。大変身の引き締まる思いだが、理事の人数が少ないこともあり、秋本前理事長には副理事長として残っていただく形になるので私としては心強い。組合の活動についてはこれまでの流れを大事にして当面は踏襲する形でやっていきたいと考えている。何かのタイミングで違う事業を行う可能性もあるが、私の役割は次の世代につなぐことだと思っているので、良い伝統を引き継ぎながら、時代に合わせたことも視野に入れていきたい」
 ‐栃木県の漬物出荷金額は全国トップクラス。
 「栃木県の漬物出荷金額は毎年5位以内に入るなど漬物の生産が盛んに行われている。浅漬やキムチなどを製造する会社、酢漬メーカーも多く漬物王国とも呼ばれている。組合には61年の歴史があり、歴代理事長は関東漬物協議会や全漬連でも活躍されており、私も全国における栃木のポジションを見失わないようにしたいと思っている」
 ‐小規模事業者向けHACCP手引書作成に尽力された。
 「全漬連の大羽恭史前副会長のご指示の下、検討を重ねてHACCPの7原則をそのまま実施することが困難な小規模漬物製造事業者を対象とした、弾力的な運用を可能とするHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書を2018年3月に完成させた。ポイントは事業者の規模に関係なく、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理が実施できるようにしたこと。初期に公表された業種別手引書は9団体で、全漬連はそのうちの一つ。実用性が高い内容で早期に完成したことは厚労省及び他業界から高く評価され、弊社に手引書の作り方について参考にしたいと訪ねてくる団体もあった。私としては業界に貢献することができて嬉しく思っている」
 ‐漬物の常食量表示を推進している。
 「消費者の中では、漬物は塩分が高い、というイメージが根強く持たれている。実際には漬物1食当りの塩分はあまり多くないのだが、このイメージを払拭することは簡単なことではない。だが、栄養成分表示を現在主流となっている100gから1食分の量、つまり常食量にすることで、食塩相当量も下げて表示することができるため、漬物の塩分はそんなに高くはない、ということが伝えられる可能性があると考えている。客観的に考えてみても、漬物を1回食べる量として100gは多過ぎる。100g食べないのに100gの栄養成分を表示するよりも、1回分食べる量の栄養成分を表示した方が消費者にとっても分かりやすい。他の食品を見ても、1食分の栄養成分を表示するケースが増えていて、漬物業界でも常食量表示への変更に向けて準備を進めている企業が増えていると聞いている。常食量表示は義務付けされたものではなく、各社の判断になるが、『漬物は高塩』というイメージを払拭するためには大きな力が必要になるので、ご理解とご協力を賜りたいと思っている」
 ‐業界の未来像。
 「野菜を原料とする漬物は世界に誇る日本の伝統的な食文化の一つ。優れた健康機能性をもっとPRしていくことが重要。漬物の魅力はたくさんあるが、これまで業界としてそれを発信してこなかった。いまはSNSを活用して世界に情報を発信することができるし、有効な手段を検討していきたい。私の目標は、次の世代が働きたいと思う業界にすること。栃木県をはじめ、全国の皆さんとともにより良い道を模索しながら進んでいきたいと考えているので、引き続きご指導、ご鞭撻をお願いしたい」
【2025(令和7)年4月11日第5192号2面】

2月21日号 大会会長に聞く

東京都漬物事業協同組合青年部会 部長 籠島正雄氏

10月3日豊洲で「東京大会」
”交流と懇親の場”テーマに開催
 全日本漬物協同組合連合会青年部会全国大会東京大会が10月3日、東京都江東区豊洲のバーベキュー場にて開催される。全国大会は今回の東京大会から開催目的を一新。〝交流と懇親の場〟というテーマの下、運営側、参加者側双方の負担を減らし、持続可能な大会にできるよう現在準備が進められている。東京大会会長を務める東京都漬物事業協同組合青年部会の籠島正雄部長(株式会社新進代表取締役社長)に東京大会や漬物業界の未来などについてインタビュー。籠島部長は人口減少や食文化の多様化が進む中、食育活動に取り組んでいく重要性を強調した。(藤井大碁)
‐全漬連青年部会全国大会東京大会が10月3日に開催される。
 「全国大会は今後、東京と大阪の輪番制に移行し開催されることになる予定だが、今回の東京大会で将来に向け、永続的に続けられる仕組みづくりをしっかりと行うことが重要だ。そのためには、今回から事務局を務める全漬連の作業負担を減らすことに加え、会費など参加者の負担も極力抑えることで、運営側が無理なく開催することができ、参加者側にもまた来たいと思ってもらえる持続可能な大会開催を目指していきたい」
‐青年部会全国大会の目的について。
 「これは大変重要なポイントとなるのだが、今回から青年部会全国大会は”交流と懇親の場”というテーマで開催される。参加者と有益な情報交換ができ、業界の横のつながりがしっかりつくれるような大会にしていきたい。持続可能な運営スタイル確立のため、来賓招待や記念講演は廃止し、案内や出欠確認書類なども全て電子化する。その上で、青年部らしい遊び心のある演出を行い、楽しんでもらえる内容にしていきたい。今年10月の東京大会は豊洲のバーベキュー場で開催し、参加者がリラックスして交流できる会にできるよう準備を進めている。また、”交流と懇親”という意味では、横のつながりだけでなく、縦のつながりにあたる親会との交流も推進していく。親会からの参加希望があれば積極的に参加をしていただき、横の交流も縦の交流もできる大会形態にしていきたい」。
‐漬物業界では食塩相当量の常食量表示がテーマとなっている。
 「提唱された宮尾茂雄先生のお考えに賛同し、弊社でもできることから取り組んでいきたいと考えている。各漬物メーカーが個別に常食量表示を設定すれば、同じ漬物カテゴリーでも異なるグラム数の表示になる可能性があり、消費者が混乱することも考えられる。主要カテゴリーの漬物に関しては、常食量表示を何グラムに設定するか、業界全体で取り決めを行っていくことが理想的ではないか。現在、栄養成分表示の表示方法変更についても検討が進められているので、それも踏まえて今後の対応を検討していきたい」
‐漬物業界の未来像について。
 「人口減少や食文化の多様化などにより昨今、漬物を喫食する機会が減少してしまっていることに危機感を抱いている。それと同時に食育活動の重要性を強く感じている。今までは、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に食卓を囲んでいたので自然と漬物が出てくる機会が多かったが、核家族化が進み漬物を好む高齢者の方たちと若い親世代の住まいが別になった時に、やはり漬物が食卓に並ばなくなり、その食卓でご飯を食べていた子どもたちが、大人になった時に漬物を食べる機会が減ってしまっている。そこの部分を変えていかなければいけないという想いが強く、食育が漬物業界の未来を左右する重要な活動になると考えている」
‐食育活動として、新進では家庭科用副教材を制作し、小学校に配布している。 
 「やまう様にお声がけし、小学校5・6年生向けの家庭科用副教材を共同制作し、2022年から群馬県や東京都をはじめとする関東地方の小学校へ毎年1万部以上を配布している。希望があれば副教材と共に福神漬も配布し、実際に食べて学んでもらえる機会をつくっている。同時に実施しているアンケートの回収率も非常に高く、福神漬を家に持ち帰る子どもたちが、〝今日はカレーを作ってもらおう〟と話していたエピソードを聞くと、やはり食べてもらうことや知ってもらうことの大切さに気付かされる。漬物業界には私と同世代の若手経営者の方も増えてきている。食育活動は、私たちの世代が未来の漬物業界のために責任を持ってやるべきこととして、全漬連の次世代委員会の中でも提唱させていただいている」
‐漬物を食べてもらうために大切なことや必要なことは。
 「近年、カレーには福神漬という認識を持っていただくために、全国各地のカレーフェアで福神漬を配布する取組を行っている。やはり食べてもらうためには想起してもらうことが大切ではないか。現在社内で企画しているのは、本社がありカレーの街として知られる神田のカレー屋さんに、福神漬のポスターを貼っていただくプロジェクト。とても美味しいカレー屋さんに福神漬のポスターが貼ってあれば、やっぱりカレーの付け合わせは福神漬だ、と想起してもらえるきっかけになる。ポスター掲出を機に、“普段は何気なく食べている福神漬だけど、そう言われてみれば福神漬って美味しいよね〟と思ってもらえるようプロジェクトを推進していく」
‐外国人に漬物を食べてもらうために。
 「インバウンドが拡大する中、ホテルの朝食バイキングは外国人に漬物を食べてもらうために大変貴重な場所であると考えている。日本で食べた漬物が美味しければ、帰国した後も自国で漬物を食べてもらえる可能性がある。日本の漬物文化を海外に発信する上で、ホテルの朝食バイキングの漬物コーナーの充実は重要なテーマだ。1社ではなく業界全体で、全国のホテルの漬物コーナーを活性化できるような取組ができないか模索していきたい」
【2025(令和7)年2月21日第5187号3面】

1月11日号 トップに聞く

兵漬兵庫食品株式会社 代表取締役社長 堺智洋氏

漬物原料不足が深刻
企画提案力で商品開発も
 1947年創業で、漬物や佃煮、味噌の卸売等を担う兵漬兵庫食品株式会社(堺智洋社長、兵庫県神戸市)の堺社長は2024年は原料不足の年であり、企画力で乗り切ったと話した。(高澤尚揮)
 ー漬物原料について。
 「漬物原料の不作が深刻な年だった。年始の暖冬等の影響で梅は全国的に1~3割作と歴史的な凶作となった。夏は猛暑によりきゅうりやなすの不作で価格高騰。また残暑の影響もあり、今冬も昨年に続き、かぶや白菜、大根の生育が遅れている。また通年で浅漬が売れていなかった」
 
佃煮・味噌の原料事情や売れ行き。
 「佃煮は、昆布の不漁が過去最低を更新。国産さんまは、一昨年の歴史的不漁から比較すると去年の水揚げ量は60%増ほどで、やや回復した。味噌は、大豆の価格高騰で連続的な値上げにより、販売が不振。さらに、有力企業のみそ事業の大幅縮小で市場規模自体が落ち込んでいる」
 ー新しい取り組みは。
 「強みである企画力・提案力を活かし、消費者の求める商品の開発や販促を積極的に推し進めており、今年はより加速させたい。昨年はキムチメーカーとコラボし、8月には神戸市産のきゅうりや白菜を使用したキムチを開発した。現在、阪神間や北陸地域で販売している。そのほか、当社は原料野菜の調達ネットワークも有しているので、要望があれば、既存取引先を中心に提供し役に立ちたい。原料供給事業としていずれは事業の新たな柱にしたいところ」
【2025(令和7)年1月11日第5184号9面】

兵漬兵庫食品株式会社

1月1日号 副社長に聞く

東海漬物 取締役副社長 大羽儀周氏

新たなプロダクトアウトを
多様化する社会に適応 
 昨年9月に取締役副社長に就任した東海漬物株式会社(永井英朗社長、愛知県豊橋市)の大羽儀周氏にインタビュー。副社長就任の抱負と増収増益となった第83期(2023年9月~2024年8月)を振り返り、第84期の見通しなどについて話を聞いた。会社としては多様化する社会に適応した会社を作るとの考えを明かした。(千葉友寛)
   ◇    ◇
 ー第83期決算を振り返って。
 「当初の計画では物流費と光熱費が上がると想定して予算を組んでいたのだが、光熱費等については国の援助もあって予算以下の金額となった。売上は過去最高の245億円となった。利益もわずかではあるがプラスとなり増収増益となった。売上をけん引したのはキムチと沢庵。キムチは厳しい状況の中でも前年割れしなかったことが大きい。沢庵は当社が良かったというよりも他社が原料面で苦戦していた影響だと考えているが、カップのスライスタイプは伸びている。あと、本漬製品では『かつやの割干大根漬』が大きく伸長している」
 ー全体を通して苦戦が続く浅漬の動きは。
 「浅漬は会社として方向転換を行っている。売上は減少するが、大容量の商品を絞り込み、プチタイプに注力している。浅漬は加工度が低く、レッドオーシャンに近いカテゴリーという認識の下、『新たなプロダクトアウト』をキーワードにブルーオーシャンを探していこう、ということで昨年から惣菜感覚の新しい浅漬『野菜そうざい』シリーズを発売した。このシリーズは漬物を添え物ではなく、おかずとして食べられる商品として既存の顧客層より若い世代をターゲットに展開している。新しい市場の商品ということで苦戦しているが、何もしなければ市場がシュリンクしていくだけなので仕掛けていくことが必要だと考えている」
 ー猛暑や干ばつ、局地的な集中豪雨など、天候要因の影響が大きくなっている原料面について。
 「どの野菜も波はあるが、価格はわずかであるが上がり続けている。離農も進んでおり、これから加速していくことを考えると価格の上昇が加速度的に早まっていくと予想している。もちろん、近年は天候の影響を受けている。我々としては産地を分散し、契約農家とコミュニケーションを図りながらより強い信頼関係を構築していきたいと考えている。大根の仕入れ価格については毎年買い上げ価格を上げている。また、昨年9月に宮崎県の胡瓜農業法人『synergy farm(以下「シナジーファーム」』を完全子会社化し、農作物の知識を得るために活用している」
 ー9月からスタートした第84期期首の動きは。
 「11月で第1四半期が終わったばかりだが、原料状況はかなり悪く、上期を通して苦戦すると見ている。白菜の品質が想定以上に悪いことも響いており、売上を100とした場合、仕入れは120といったところだ。長野産が早く終わって茨城産に切り替わったのだが、大きくならずに小さいまま早く穫るか穫らないかという選択を迫られている」
 ー浅漬とキムチの売れ行きは。
 「浅漬は前期と変わらず良くない。『野菜そうざい』シリーズはバイヤーからも高い評価を受けているが、数字は伸びていない。商品の特徴を消費者に伝えきれていないということが課題だ。プロモーションを行って配荷率を上げ、マネキンを活用して粘り強く提案していきたいと思っている。キムチの第1四半期の数字は振るわない。『こくうま』ブランドのカクテキは最初の動きが良く、その後は落ちてしまったのだが、また戻ってきた。まだまだ満足できる数字ではないが、当社は『こくうま』と『キューちゃん』の2大ブランドを中心に、今後もブランドを活かした戦略を考えている」
 ー節約志向が高まっている。
 「物価が上昇する中、所得が増えていないので、生活必需品は購入するが副菜・添物は絞られてしまう。漬物は差別化を図ることが難しく、価格競争も激しい。いまの市場をどのように維持していくか考えて行動していくことが重要だ。値上げについても昨年6月にキューちゃんの値上げを行い、こくうまキムチも2年前に量目調整を行った。製造コストが上がり続ける中、引き続き検討していかなければならない」
 ー改めて副社長就任の抱負を。
 「各世代で育ってきた環境が異なり、永井社長と私でも四半世紀の差があるので、どうしても世代間ギャップが発生する。会社は時代に合わせた経営スタイルに変えていかないと取り残されてしまう。基幹システムの更新や世代交代は重要なポイントで、CX(カルチャートランスフォーメーション)の推進も必要となってくる。働き方の多様化を進め、社会に求められる制度や体制を作っていくことが重要だ。もちろん、売上や利益を上げていくことも大事だが、私の役割としてはITやデジタル技術を活用しながら生産性を高め、多様化する社会に適応した会社を作ることだと思っている。人口が減れば市場のシュリンクは避けられないと思う。業界の再編も考えられるが、根本にあるのは漬物は体に良い食品であり、食を豊かにするもの。業界を良い方向に転換させていくことはできると思っている。新しい取組については、全く別のものだと会社の強みを活かせないので、強みを活かせるものであれば漬物にこだわらなくても良いと思っている。まだアクションを起こしているわけではないが、将来的には輸出なども視野に入れた新規事業を展開していきたいと思っている」
【大羽儀周氏(おおば・よしちか)】
 1982年3月17日生まれ。東京理科大学理工学部卒業後、筑波大学大学院でMBA(ファイナンス)を専攻。卒業後は住友信託銀行に入社。2011年に東海漬物に入社。
【2025(令和7)年1月1日第5183号3面】

東海漬物 
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