1月11日号 トップに聞く
兵漬兵庫食品株式会社 代表取締役社長 堺智洋氏
漬物原料不足が深刻
企画提案力で商品開発も
1947年創業で、漬物や佃煮、味噌の卸売等を担う兵漬兵庫食品株式会社(堺智洋社長、兵庫県神戸市)の堺社長は2024年は原料不足の年であり、企画力で乗り切ったと話した。(高澤尚揮)
ー漬物原料について。
「漬物原料の不作が深刻な年だった。年始の暖冬等の影響で梅は全国的に1~3割作と歴史的な凶作となった。夏は猛暑によりきゅうりやなすの不作で価格高騰。また残暑の影響もあり、今冬も昨年に続き、かぶや白菜、大根の生育が遅れている。また通年で浅漬が売れていなかった」
ー佃煮・味噌の原料事情や売れ行き。
「佃煮は、昆布の不漁が過去最低を更新。国産さんまは、一昨年の歴史的不漁から比較すると去年の水揚げ量は60%増ほどで、やや回復した。味噌は、大豆の価格高騰で連続的な値上げにより、販売が不振。さらに、有力企業のみそ事業の大幅縮小で市場規模自体が落ち込んでいる」
ー新しい取り組みは。
「強みである企画力・提案力を活かし、消費者の求める商品の開発や販促を積極的に推し進めており、今年はより加速させたい。昨年はキムチメーカーとコラボし、8月には神戸市産のきゅうりや白菜を使用したキムチを開発した。現在、阪神間や北陸地域で販売している。そのほか、当社は原料野菜の調達ネットワークも有しているので、要望があれば、既存取引先を中心に提供し役に立ちたい。原料供給事業としていずれは事業の新たな柱にしたいところ」
1947年創業で、漬物や佃煮、味噌の卸売等を担う兵漬兵庫食品株式会社(堺智洋社長、兵庫県神戸市)の堺社長は2024年は原料不足の年であり、企画力で乗り切ったと話した。(高澤尚揮)
ー漬物原料について。
「漬物原料の不作が深刻な年だった。年始の暖冬等の影響で梅は全国的に1~3割作と歴史的な凶作となった。夏は猛暑によりきゅうりやなすの不作で価格高騰。また残暑の影響もあり、今冬も昨年に続き、かぶや白菜、大根の生育が遅れている。また通年で浅漬が売れていなかった」
ー佃煮・味噌の原料事情や売れ行き。
「佃煮は、昆布の不漁が過去最低を更新。国産さんまは、一昨年の歴史的不漁から比較すると去年の水揚げ量は60%増ほどで、やや回復した。味噌は、大豆の価格高騰で連続的な値上げにより、販売が不振。さらに、有力企業のみそ事業の大幅縮小で市場規模自体が落ち込んでいる」
ー新しい取り組みは。
「強みである企画力・提案力を活かし、消費者の求める商品の開発や販促を積極的に推し進めており、今年はより加速させたい。昨年はキムチメーカーとコラボし、8月には神戸市産のきゅうりや白菜を使用したキムチを開発した。現在、阪神間や北陸地域で販売している。そのほか、当社は原料野菜の調達ネットワークも有しているので、要望があれば、既存取引先を中心に提供し役に立ちたい。原料供給事業としていずれは事業の新たな柱にしたいところ」
【2025(令和7)年1月11日第5184号9面】
兵漬兵庫食品株式会社
兵漬兵庫食品株式会社
1月1日号 副社長に聞く
東海漬物 取締役副社長 大羽儀周氏
新たなプロダクトアウトを
多様化する社会に適応
昨年9月に取締役副社長に就任した東海漬物株式会社(永井英朗社長、愛知県豊橋市)の大羽儀周氏にインタビュー。副社長就任の抱負と増収増益となった第83期(2023年9月~2024年8月)を振り返り、第84期の見通しなどについて話を聞いた。会社としては多様化する社会に適応した会社を作るとの考えを明かした。(千葉友寛)
◇ ◇
ー第83期決算を振り返って。
「当初の計画では物流費と光熱費が上がると想定して予算を組んでいたのだが、光熱費等については国の援助もあって予算以下の金額となった。売上は過去最高の245億円となった。利益もわずかではあるがプラスとなり増収増益となった。売上をけん引したのはキムチと沢庵。キムチは厳しい状況の中でも前年割れしなかったことが大きい。沢庵は当社が良かったというよりも他社が原料面で苦戦していた影響だと考えているが、カップのスライスタイプは伸びている。あと、本漬製品では『かつやの割干大根漬』が大きく伸長している」
ー全体を通して苦戦が続く浅漬の動きは。
「浅漬は会社として方向転換を行っている。売上は減少するが、大容量の商品を絞り込み、プチタイプに注力している。浅漬は加工度が低く、レッドオーシャンに近いカテゴリーという認識の下、『新たなプロダクトアウト』をキーワードにブルーオーシャンを探していこう、ということで昨年から惣菜感覚の新しい浅漬『野菜そうざい』シリーズを発売した。このシリーズは漬物を添え物ではなく、おかずとして食べられる商品として既存の顧客層より若い世代をターゲットに展開している。新しい市場の商品ということで苦戦しているが、何もしなければ市場がシュリンクしていくだけなので仕掛けていくことが必要だと考えている」
ー猛暑や干ばつ、局地的な集中豪雨など、天候要因の影響が大きくなっている原料面について。
「どの野菜も波はあるが、価格はわずかであるが上がり続けている。離農も進んでおり、これから加速していくことを考えると価格の上昇が加速度的に早まっていくと予想している。もちろん、近年は天候の影響を受けている。我々としては産地を分散し、契約農家とコミュニケーションを図りながらより強い信頼関係を構築していきたいと考えている。大根の仕入れ価格については毎年買い上げ価格を上げている。また、昨年9月に宮崎県の胡瓜農業法人『synergy farm(以下「シナジーファーム」』を完全子会社化し、農作物の知識を得るために活用している」
ー9月からスタートした第84期期首の動きは。
「11月で第1四半期が終わったばかりだが、原料状況はかなり悪く、上期を通して苦戦すると見ている。白菜の品質が想定以上に悪いことも響いており、売上を100とした場合、仕入れは120といったところだ。長野産が早く終わって茨城産に切り替わったのだが、大きくならずに小さいまま早く穫るか穫らないかという選択を迫られている」
ー浅漬とキムチの売れ行きは。
「浅漬は前期と変わらず良くない。『野菜そうざい』シリーズはバイヤーからも高い評価を受けているが、数字は伸びていない。商品の特徴を消費者に伝えきれていないということが課題だ。プロモーションを行って配荷率を上げ、マネキンを活用して粘り強く提案していきたいと思っている。キムチの第1四半期の数字は振るわない。『こくうま』ブランドのカクテキは最初の動きが良く、その後は落ちてしまったのだが、また戻ってきた。まだまだ満足できる数字ではないが、当社は『こくうま』と『キューちゃん』の2大ブランドを中心に、今後もブランドを活かした戦略を考えている」
ー節約志向が高まっている。
「物価が上昇する中、所得が増えていないので、生活必需品は購入するが副菜・添物は絞られてしまう。漬物は差別化を図ることが難しく、価格競争も激しい。いまの市場をどのように維持していくか考えて行動していくことが重要だ。値上げについても昨年6月にキューちゃんの値上げを行い、こくうまキムチも2年前に量目調整を行った。製造コストが上がり続ける中、引き続き検討していかなければならない」
ー改めて副社長就任の抱負を。
「各世代で育ってきた環境が異なり、永井社長と私でも四半世紀の差があるので、どうしても世代間ギャップが発生する。会社は時代に合わせた経営スタイルに変えていかないと取り残されてしまう。基幹システムの更新や世代交代は重要なポイントで、CX(カルチャートランスフォーメーション)の推進も必要となってくる。働き方の多様化を進め、社会に求められる制度や体制を作っていくことが重要だ。もちろん、売上や利益を上げていくことも大事だが、私の役割としてはITやデジタル技術を活用しながら生産性を高め、多様化する社会に適応した会社を作ることだと思っている。人口が減れば市場のシュリンクは避けられないと思う。業界の再編も考えられるが、根本にあるのは漬物は体に良い食品であり、食を豊かにするもの。業界を良い方向に転換させていくことはできると思っている。新しい取組については、全く別のものだと会社の強みを活かせないので、強みを活かせるものであれば漬物にこだわらなくても良いと思っている。まだアクションを起こしているわけではないが、将来的には輸出なども視野に入れた新規事業を展開していきたいと思っている」
【大羽儀周氏(おおば・よしちか)】
1982年3月17日生まれ。東京理科大学理工学部卒業後、筑波大学大学院でMBA(ファイナンス)を専攻。卒業後は住友信託銀行に入社。2011年に東海漬物に入社。
【2025(令和7)年1月1日第5183号3面】
◇ ◇
ー第83期決算を振り返って。
「当初の計画では物流費と光熱費が上がると想定して予算を組んでいたのだが、光熱費等については国の援助もあって予算以下の金額となった。売上は過去最高の245億円となった。利益もわずかではあるがプラスとなり増収増益となった。売上をけん引したのはキムチと沢庵。キムチは厳しい状況の中でも前年割れしなかったことが大きい。沢庵は当社が良かったというよりも他社が原料面で苦戦していた影響だと考えているが、カップのスライスタイプは伸びている。あと、本漬製品では『かつやの割干大根漬』が大きく伸長している」
ー全体を通して苦戦が続く浅漬の動きは。
「浅漬は会社として方向転換を行っている。売上は減少するが、大容量の商品を絞り込み、プチタイプに注力している。浅漬は加工度が低く、レッドオーシャンに近いカテゴリーという認識の下、『新たなプロダクトアウト』をキーワードにブルーオーシャンを探していこう、ということで昨年から惣菜感覚の新しい浅漬『野菜そうざい』シリーズを発売した。このシリーズは漬物を添え物ではなく、おかずとして食べられる商品として既存の顧客層より若い世代をターゲットに展開している。新しい市場の商品ということで苦戦しているが、何もしなければ市場がシュリンクしていくだけなので仕掛けていくことが必要だと考えている」
ー猛暑や干ばつ、局地的な集中豪雨など、天候要因の影響が大きくなっている原料面について。
「どの野菜も波はあるが、価格はわずかであるが上がり続けている。離農も進んでおり、これから加速していくことを考えると価格の上昇が加速度的に早まっていくと予想している。もちろん、近年は天候の影響を受けている。我々としては産地を分散し、契約農家とコミュニケーションを図りながらより強い信頼関係を構築していきたいと考えている。大根の仕入れ価格については毎年買い上げ価格を上げている。また、昨年9月に宮崎県の胡瓜農業法人『synergy farm(以下「シナジーファーム」』を完全子会社化し、農作物の知識を得るために活用している」
ー9月からスタートした第84期期首の動きは。
「11月で第1四半期が終わったばかりだが、原料状況はかなり悪く、上期を通して苦戦すると見ている。白菜の品質が想定以上に悪いことも響いており、売上を100とした場合、仕入れは120といったところだ。長野産が早く終わって茨城産に切り替わったのだが、大きくならずに小さいまま早く穫るか穫らないかという選択を迫られている」
ー浅漬とキムチの売れ行きは。
「浅漬は前期と変わらず良くない。『野菜そうざい』シリーズはバイヤーからも高い評価を受けているが、数字は伸びていない。商品の特徴を消費者に伝えきれていないということが課題だ。プロモーションを行って配荷率を上げ、マネキンを活用して粘り強く提案していきたいと思っている。キムチの第1四半期の数字は振るわない。『こくうま』ブランドのカクテキは最初の動きが良く、その後は落ちてしまったのだが、また戻ってきた。まだまだ満足できる数字ではないが、当社は『こくうま』と『キューちゃん』の2大ブランドを中心に、今後もブランドを活かした戦略を考えている」
ー節約志向が高まっている。
「物価が上昇する中、所得が増えていないので、生活必需品は購入するが副菜・添物は絞られてしまう。漬物は差別化を図ることが難しく、価格競争も激しい。いまの市場をどのように維持していくか考えて行動していくことが重要だ。値上げについても昨年6月にキューちゃんの値上げを行い、こくうまキムチも2年前に量目調整を行った。製造コストが上がり続ける中、引き続き検討していかなければならない」
ー改めて副社長就任の抱負を。
「各世代で育ってきた環境が異なり、永井社長と私でも四半世紀の差があるので、どうしても世代間ギャップが発生する。会社は時代に合わせた経営スタイルに変えていかないと取り残されてしまう。基幹システムの更新や世代交代は重要なポイントで、CX(カルチャートランスフォーメーション)の推進も必要となってくる。働き方の多様化を進め、社会に求められる制度や体制を作っていくことが重要だ。もちろん、売上や利益を上げていくことも大事だが、私の役割としてはITやデジタル技術を活用しながら生産性を高め、多様化する社会に適応した会社を作ることだと思っている。人口が減れば市場のシュリンクは避けられないと思う。業界の再編も考えられるが、根本にあるのは漬物は体に良い食品であり、食を豊かにするもの。業界を良い方向に転換させていくことはできると思っている。新しい取組については、全く別のものだと会社の強みを活かせないので、強みを活かせるものであれば漬物にこだわらなくても良いと思っている。まだアクションを起こしているわけではないが、将来的には輸出なども視野に入れた新規事業を展開していきたいと思っている」
【大羽儀周氏(おおば・よしちか)】
1982年3月17日生まれ。東京理科大学理工学部卒業後、筑波大学大学院でMBA(ファイナンス)を専攻。卒業後は住友信託銀行に入社。2011年に東海漬物に入社。
【2025(令和7)年1月1日第5183号3面】
東海漬物