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コラム/視点2025

<視点>米の良さ伝えるおむすび 

困難を乗り越え再興する年に
 正月ー2025年を迎え、生活様式が多様化した今もなお、この時ばかりは多くの人々が里帰りをし、家族でおせちやお雑煮を食べ、神社へ初詣をする。身も心も“故郷〟へと帰る時間だ。
 一年のうち、最も日本らしさが色濃く残るこの季節に、改めて和食の未来を考えたい。
 和食の根幹をなす米の消費は減り続けている。家計における支出金額はパンに逆転されて久しい。だが、米食がもはや日本人に受け入れられなくなったのか、といえば、もちろんそんなことはない。
 おむすび(おにぎり)専門店は増え続けている。「食べログ」を運営するカカクコムによれば、同サイトに登録されたおにぎり店の数は5年前から倍増している。どの店も、具材には漬物や佃煮を取り揃える。パックご飯の生産量も10年間で1・5倍に伸びている。
 炊飯の手間を抑え、新たな食シーンを創出できれば、米を食べる頻度は高まる、という希望を見せてくれる事例だ。
 現在放送中のNHKの連続テレビ小説『おむすび』は、阪神・淡路大震災の発生後、炊き出しで配られたおむすびが人々の心を潤したという実話から出発し、「食がつなぐ人の縁」を描き出す。人の手のぬくもりがこもったおむすびは、このテーマを象徴する存在としてメディア上で注目される機会が増えている。
 グローバル化が進む昨今、観光で日本に訪れる外国人、あるいは仕事や学業のため日本で暮らし始める外国人へ、米の良さを伝えるという点でもおむすびは重要な役割を背負うだろう。
 和食が世界から評価されるようになれば、その恩恵は輸出が増えることに留まらない。本物の和食を体験しようと、日本を訪れる人が増える。その期待に応えようと、和食のレベルはさらに高まる。日本で料理やものづくりを修行することの価値が高まり、世界中へ本物の和食が広まる。
 今年は大阪・関西万博が4月13日から半年間にわたって開催される。世界中の注目が日本に集まる好機だ。
 昨年を振り返れば、米が不足し「令和の米騒動」と呼ばれる事態に陥った。米価は現在に至っても高止まりしている。漬物や佃煮の業界においても、過去最低レベルの収量となった昆布や梅をはじめ、あらゆる原料の不足に悩まされた一年だった。
 しかし、今年の干支である乙巳は、成長する植物のような力強い生命力と、脱皮する蛇のように不屈の再生力を持つ年になると言われる。米食文化が再興し、和食業界全体が活性化していく年になることを祈念している。
【2025(令和7)年1月1日第5183号15面】
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