8月11日号 朝食ビジネスに商機
近年、朝食ビジネスに注目が集まっている。健康志向の高まりやコロナ禍を機に、夜型から朝型へライフスタイルをシフトする人々が増加。夏場の異常な暑さもこの流れを後押ししている。
これまで朝食は家で食べるものというイメージが強かったが、こうした流れの中、外食の成長市場として朝食に注目が集まる。様々なジャンルの外食店が朝食市場へ参入しているが、その特徴は朝食ならではのお得感。飲み物代だけでトーストやゆで卵などが付く名古屋発祥の〝モーニング〟を彷彿とさせるお得なメニューが目を引く。
食品総合卸の日本アクセスでは朝食市場を盛り上げるべく昨年「朝食向上委員会(仮)」を発足した。
日本人の12・2%が朝食を食べておらず、その欠食分は年間でおよそ約1・7兆円とされる。同社では、統一ロゴを使用した販促物の提供や売場提案等を通して、朝食の喫食シーンを想起させ、欠食率の改善を目指している。
日本人の朝食の定番と言えば、ご飯、味噌汁、焼魚に漬物や佃煮。朝食ビジネスの拡大が、伝統食業界にも追い風となることを期待したい。(藤井大碁)
【2025(令和7)年8月11日第5204号12面】
これまで朝食は家で食べるものというイメージが強かったが、こうした流れの中、外食の成長市場として朝食に注目が集まる。様々なジャンルの外食店が朝食市場へ参入しているが、その特徴は朝食ならではのお得感。飲み物代だけでトーストやゆで卵などが付く名古屋発祥の〝モーニング〟を彷彿とさせるお得なメニューが目を引く。
食品総合卸の日本アクセスでは朝食市場を盛り上げるべく昨年「朝食向上委員会(仮)」を発足した。
日本人の12・2%が朝食を食べておらず、その欠食分は年間でおよそ約1・7兆円とされる。同社では、統一ロゴを使用した販促物の提供や売場提案等を通して、朝食の喫食シーンを想起させ、欠食率の改善を目指している。
日本人の朝食の定番と言えば、ご飯、味噌汁、焼魚に漬物や佃煮。朝食ビジネスの拡大が、伝統食業界にも追い風となることを期待したい。(藤井大碁)
【2025(令和7)年8月11日第5204号12面】
8月1日号 環境の変化に向き合う
子ども時代の夏休みの一日といえば、朝は陽が昇る頃に近くの神社に集まってラジオ体操。帰ると「涼しいうちに宿題やっときなさい」という母親からの指示で、午前中は勉強だ。
昼ご飯を食べたら、開放されている学校のプールでひと泳ぎ。夕方には山へカブトムシやクワガタを捕まえに行く。夏の食べ物といえばそうめん、スイカ、庭の畑で育てていたキュウリやトマトをもいでかじる。夏は暑かったが、命の危険を感じることはなかった。
今年は全国で記録的な暑さが続いているが、気象庁データで東京都の8月の平均気温を比べてみると、私が生まれた1960年が26・4度、1990年が28・6度、2020年が29・1度と、60年間で3度近くも高くなっていることがわかる。
一方、地球温暖化は農作物に影響を与えてはいるが、デメリットばかりではない。東北が栽培の北限とされていたサツマイモを北海道で栽培し始めた農家もあり、これまでとは違う作物に取り組むきっかけが生まれたのも事実だ。
環境の変化にどう向き合っていくか。社会人としても、一個人としても求められる時代になっている。
(菰田隆行)
昼ご飯を食べたら、開放されている学校のプールでひと泳ぎ。夕方には山へカブトムシやクワガタを捕まえに行く。夏の食べ物といえばそうめん、スイカ、庭の畑で育てていたキュウリやトマトをもいでかじる。夏は暑かったが、命の危険を感じることはなかった。
今年は全国で記録的な暑さが続いているが、気象庁データで東京都の8月の平均気温を比べてみると、私が生まれた1960年が26・4度、1990年が28・6度、2020年が29・1度と、60年間で3度近くも高くなっていることがわかる。
一方、地球温暖化は農作物に影響を与えてはいるが、デメリットばかりではない。東北が栽培の北限とされていたサツマイモを北海道で栽培し始めた農家もあり、これまでとは違う作物に取り組むきっかけが生まれたのも事実だ。
環境の変化にどう向き合っていくか。社会人としても、一個人としても求められる時代になっている。
(菰田隆行)
【2025(令和7)年8月1日第5203号14面】
7月1日号 夏休みの過ごし方
今年も夏休みが近づいてきた。小学校や中学校の夏休み期間は、1か月と少し。工作、プール、読書、勉強に取り組む学生は多い。その一方で、旅行やテーマパークは経済的負担が掛かり、我慢せざるをえない子どもたちがいる。
そのような中、漬物業界において東海漬物株式会社(永井英朗社長、愛知県豊橋市)は地元豊橋で毎年、「夏休み親子ぬか漬け教室」を開催している。
取材中に保護者の方から、「ワンコインで子供が楽しめ、その体験は自由研究にも活用できる。ありがたい企画」という感謝の言葉を聞いた。
また、佃煮業界では「6月29日は佃煮の日」に際して、全国の関連団体が小学校や子ども食堂に佃煮を配布し、特に子ども食堂においては夏休み期間中の貴重な食料になっている。
ある子ども食堂のスタッフは「家庭で十分な食事を摂れず、普段は学校給食が命をつないでくれてはいるものの、給食がない長期休みに栄養失調になる子がいる。
そのような中、漬物業界において東海漬物株式会社(永井英朗社長、愛知県豊橋市)は地元豊橋で毎年、「夏休み親子ぬか漬け教室」を開催している。
取材中に保護者の方から、「ワンコインで子供が楽しめ、その体験は自由研究にも活用できる。ありがたい企画」という感謝の言葉を聞いた。
また、佃煮業界では「6月29日は佃煮の日」に際して、全国の関連団体が小学校や子ども食堂に佃煮を配布し、特に子ども食堂においては夏休み期間中の貴重な食料になっている。
ある子ども食堂のスタッフは「家庭で十分な食事を摂れず、普段は学校給食が命をつないでくれてはいるものの、給食がない長期休みに栄養失調になる子がいる。
“佃煮の日”に提供して頂いた魚介や貝の佃煮はカルシウムやDHAが多く含まれているので、成長期の子どもたちにぜひ食べてほしい」と話す。
漬物教室や佃煮配布の取組は、夏休みの子供たちの思い出や健康の支えとなっている。
(高澤尚揮)
【2025(令和7年)7月1日第5200号5面】
漬物教室や佃煮配布の取組は、夏休みの子供たちの思い出や健康の支えとなっている。
(高澤尚揮)
【2025(令和7年)7月1日第5200号5面】
6月21日号 さつまいもの可能性
さつまいものブームが続いている。巷間ではスイーツ専門店やおしゃれなカフェが人気で、スーパーでは今や焼き芋機のコーナーが定番となった。
ここ数年のさつまいもブームは、ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富で「罪悪感の少ないスイーツ」として、特に女性の間で受け入れられたのがきっかけだ。また、紅はるかなど甘味の強い品種が開発されたことも後押ししている。
生産量や用途別消費量の推移をみると、昭和30年代の生産数量は700万tを超えていたが、その用途は生食用が約38%、でん粉用が約30%を占め、加工食品用はわずか0・3%だった(農林水産省「いも・でん粉に関する資料」より)。
平成19年には生産量が初めて100万tを割り込んだが、同年の加工食品用の割合は9・2%に上昇。令和5年の生産量(概算)は約71万6000tで、加工食品用は12・9%を占めるまでになっている。
このブームを背景に、2020年から「さつまいも博」が開催されており、今年も8月に初の千葉県開催となる「夏のさつまいも博」が幕張メッセで開催予定。
お酒に合うメニューを提供する「夜のさつまいも博」も企画されるなど、さつまいもの可能性はまだまだ広がりそうだ。
(菰田隆行)
【2025(令和7)年6月21日第5199号6面】
ここ数年のさつまいもブームは、ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富で「罪悪感の少ないスイーツ」として、特に女性の間で受け入れられたのがきっかけだ。また、紅はるかなど甘味の強い品種が開発されたことも後押ししている。
生産量や用途別消費量の推移をみると、昭和30年代の生産数量は700万tを超えていたが、その用途は生食用が約38%、でん粉用が約30%を占め、加工食品用はわずか0・3%だった(農林水産省「いも・でん粉に関する資料」より)。
平成19年には生産量が初めて100万tを割り込んだが、同年の加工食品用の割合は9・2%に上昇。令和5年の生産量(概算)は約71万6000tで、加工食品用は12・9%を占めるまでになっている。
このブームを背景に、2020年から「さつまいも博」が開催されており、今年も8月に初の千葉県開催となる「夏のさつまいも博」が幕張メッセで開催予定。
お酒に合うメニューを提供する「夜のさつまいも博」も企画されるなど、さつまいもの可能性はまだまだ広がりそうだ。
(菰田隆行)
【2025(令和7)年6月21日第5199号6面】
6月11日号 ヴィンテージフード
令和の米騒動により、米の価値が高まっている。今まで当たり前にあった米が食べられないとなれば、無性に米が食べたくなる。麺やパンに一時的にはシフトしても、やはり米が食べたい、それが日本人の遺伝子に組み込まれた性なのだろう。
古米が流通し始めて感じるのは、古い食べ物に対するイメージの変化だ。あるコンビニでは古米のおにぎりを”ヴィンテージ米おにぎり”として販売することを発表している。これまでヴィンテージと言えば、ウイスキーやワインなどの酒類が一般的であったが、古米の流通を機に、古い食品”ヴィンテージフード”の市場が広がる可能性がある。
例えば3年物の古米に、3年物の梅干しを合わせれば、ヴィンテージ米おにぎりとしての価値が上がる。そこには、おにぎりとしての価値だけではなく、その年の空気感や個人の想い出といった情緒的価値が付与されるからだ。
6月6日「梅の日」に大阪万博で漬け込まれた梅干しは、”万博漬け”として、25年の時を経て2050年に食べられるという。その頃の世界がどうなっているか想像することは難しいが、万博漬けを口にした人たちが、25年前の記憶に思いを馳せ、梅干しの美味しさに顔をほころばせる姿は容易に想像がつく。
(藤井大碁)
古米が流通し始めて感じるのは、古い食べ物に対するイメージの変化だ。あるコンビニでは古米のおにぎりを”ヴィンテージ米おにぎり”として販売することを発表している。これまでヴィンテージと言えば、ウイスキーやワインなどの酒類が一般的であったが、古米の流通を機に、古い食品”ヴィンテージフード”の市場が広がる可能性がある。
例えば3年物の古米に、3年物の梅干しを合わせれば、ヴィンテージ米おにぎりとしての価値が上がる。そこには、おにぎりとしての価値だけではなく、その年の空気感や個人の想い出といった情緒的価値が付与されるからだ。
6月6日「梅の日」に大阪万博で漬け込まれた梅干しは、”万博漬け”として、25年の時を経て2050年に食べられるという。その頃の世界がどうなっているか想像することは難しいが、万博漬けを口にした人たちが、25年前の記憶に思いを馳せ、梅干しの美味しさに顔をほころばせる姿は容易に想像がつく。
(藤井大碁)
【2025(令和7年)6月11日第5198号6面】
5月21日号 冷奴との相性
昨年夏に米が店頭から消えた時期から、豆腐をよく食べるようになった。家にある米をもうすぐ食べ尽くしてしまうと危機感を覚えはじめたころ、目を付けたのが豆腐だった。
封を開けて水を切り、佃煮や漬物を乗せて冷奴で食べるのがほとんどだ。温めなどの簡単な調理さえ必要なく、パックのまま食べるので洗い物も増えず、タンパク質が豊富でヘルシー、と良いことずくめの食材だ。加えて品切れになる心配がなく、財布にも優しい。
仕事柄、漬物や佃煮は常にストックがあるのだが、それらと相性が良いのも嬉しい。冷奴を食べ続けていると、一般的にはご飯のお供と呼ばれるものでも、白ご飯よりも冷奴の方が好相性だと感じるものが多くなってきた。しば漬など酸味のある漬物を合わせるのが好みだ。
これから暑くなれば、冷奴の食卓出現頻度は上がる。豆腐の売上は、鍋需要のある冬よりも7月、8月にピークがある。冷奴の相棒というコンセプトに特化した商品開発というのも面白そうだ。
また、冷奴のおかげで料理における温度の大切さを再認識した。例えば昆布佃煮は熱々の白ご飯よりも冷奴の方が好みだ……そう結論づけようとしたとき、冷ましたおにぎりの存在が頭をよぎり、勝負はもつれ込んだ。(小林悟空)
封を開けて水を切り、佃煮や漬物を乗せて冷奴で食べるのがほとんどだ。温めなどの簡単な調理さえ必要なく、パックのまま食べるので洗い物も増えず、タンパク質が豊富でヘルシー、と良いことずくめの食材だ。加えて品切れになる心配がなく、財布にも優しい。
仕事柄、漬物や佃煮は常にストックがあるのだが、それらと相性が良いのも嬉しい。冷奴を食べ続けていると、一般的にはご飯のお供と呼ばれるものでも、白ご飯よりも冷奴の方が好相性だと感じるものが多くなってきた。しば漬など酸味のある漬物を合わせるのが好みだ。
これから暑くなれば、冷奴の食卓出現頻度は上がる。豆腐の売上は、鍋需要のある冬よりも7月、8月にピークがある。冷奴の相棒というコンセプトに特化した商品開発というのも面白そうだ。
また、冷奴のおかげで料理における温度の大切さを再認識した。例えば昆布佃煮は熱々の白ご飯よりも冷奴の方が好みだ……そう結論づけようとしたとき、冷ましたおにぎりの存在が頭をよぎり、勝負はもつれ込んだ。(小林悟空)
【2025(令和7年)5月21日第5196号9面】
<編集後記> 5月1日号 「戦争めし」エピソード募集
コンビニに立ち寄ると、入口付近の単行本の漫画コーナーで「思い出食堂」という、短編を数作収録したグルメ漫画が何度も目に止まり、購入して読んだことがある。
それに作品を寄せる漫画家の一人、魚乃目三太氏が描くキャラクターは心の底から笑い、そして優しさを感じさせ、その画風はひと際印象に残った。そんな魚乃目氏の代表作は「戦争めし」シリーズである。史実をもとに、戦時中の過酷な環境下でも、若者や子どもたちが食を心の支えにして生き抜いたことが伝わってくるストーリーが胸を打つ。
今年は終戦から80年の節目の年。魚乃目氏は現在、各地の戦争めしのエピソードを募集中で、採用された話は秋田書店の「ヤンチャンWeb」に掲載される。栄養不足になりがちな戦時中、漬物や佃煮がどのように人々の支えになったのか、漫画で読んでみたい。
(高澤尚揮)
それに作品を寄せる漫画家の一人、魚乃目三太氏が描くキャラクターは心の底から笑い、そして優しさを感じさせ、その画風はひと際印象に残った。そんな魚乃目氏の代表作は「戦争めし」シリーズである。史実をもとに、戦時中の過酷な環境下でも、若者や子どもたちが食を心の支えにして生き抜いたことが伝わってくるストーリーが胸を打つ。
今年は終戦から80年の節目の年。魚乃目氏は現在、各地の戦争めしのエピソードを募集中で、採用された話は秋田書店の「ヤンチャンWeb」に掲載される。栄養不足になりがちな戦時中、漬物や佃煮がどのように人々の支えになったのか、漫画で読んでみたい。
(高澤尚揮)
【2025(令和7)年5月1日第5194号7面】
<編集後記> 4月21日号 食べる量
大阪・関西万博の食を題材としたパビリオン「EARTH MART」で目を引いた展示の一つが、10年間で食べる量(=いただくいのちの量)の国際比較図だった。
日本を1としたとき、中国は1・92、アメリカは1・78、フランスは1・47と、日本人の少食ぶりが可視化された。一方で日本より少ない国としてはタイ、インド、南アフリカ、エチオピアといった発展途上国が挙げられていた。
他文献にも当たってみると、日本は先進国の中では最も摂取カロリーが少ない国の一つである。肯定的に捉えれば、日本食は低脂質であり、自然にカロリーを抑えた健康的な食生活を送れている人が多い、ということになる。
しかし摂取カロリーが低すぎることも問題である。日本は、正常体重を下回る「痩せ」の割合も高く、特に20代女性は5人に1人が「痩せ」である。これは過度な美容意識が原因だろう。
そして、昨今度々話題になるステルス値上げ、つまり食品の内容量縮小も原因ではないかと考えられる。知らず知らずのうちに食べる量が減らされ、必要量を食べられていない人もいるのではないか。
万博を訪れ、食品産業は人の健康に密接に関わる仕事、という事実の重みを改めて噛み締めた。
(小林悟空)
【2025(令和7)年4月11日第5192号7面】
日本を1としたとき、中国は1・92、アメリカは1・78、フランスは1・47と、日本人の少食ぶりが可視化された。一方で日本より少ない国としてはタイ、インド、南アフリカ、エチオピアといった発展途上国が挙げられていた。
他文献にも当たってみると、日本は先進国の中では最も摂取カロリーが少ない国の一つである。肯定的に捉えれば、日本食は低脂質であり、自然にカロリーを抑えた健康的な食生活を送れている人が多い、ということになる。
しかし摂取カロリーが低すぎることも問題である。日本は、正常体重を下回る「痩せ」の割合も高く、特に20代女性は5人に1人が「痩せ」である。これは過度な美容意識が原因だろう。
そして、昨今度々話題になるステルス値上げ、つまり食品の内容量縮小も原因ではないかと考えられる。知らず知らずのうちに食べる量が減らされ、必要量を食べられていない人もいるのではないか。
万博を訪れ、食品産業は人の健康に密接に関わる仕事、という事実の重みを改めて噛み締めた。
(小林悟空)
【2025(令和7)年4月11日第5192号7面】
<編集後記> 4月11日号 高菜の存在価値
今年の高菜漬の漬込みがピークを迎えている。収穫時期が早い南九州では天候不順により7割作となり、北部九州でもほぼ同様の状況とみられている。
筆者が本紙記者として初めて高菜産地の取材に赴いた20数年前、高速九州道八女インターから南関インター間は道路の両側が高菜畑で、濃い緑色の風景が一面に広がっていたことを今でも鮮明に覚えている。
一汁三菜に欠かせなかった漬物も、食の多様化や、最近では米の高騰でご飯のお供としての価値が薄れてきている。そんな中で高菜漬は、昭和30年代から油炒め製品が開発され、“惣菜”としての新たな存在価値が生まれた。現在でも、和洋中を問わず様々な料理の素材として重宝されており、今後もその分野での広がりが期待される。
課題は、冒頭に書いた原料の確保だ。現在、高菜漬に使用されている「三池高菜」は、柳川地区を治めていた立花家の当主・立花寛治が、筑後地方の農業振興のために私財を投げうって農事試験場を作り、中国の青菜と日本の紫高菜を組み合わせて出来た品種だ。
筆者が本紙記者として初めて高菜産地の取材に赴いた20数年前、高速九州道八女インターから南関インター間は道路の両側が高菜畑で、濃い緑色の風景が一面に広がっていたことを今でも鮮明に覚えている。
一汁三菜に欠かせなかった漬物も、食の多様化や、最近では米の高騰でご飯のお供としての価値が薄れてきている。そんな中で高菜漬は、昭和30年代から油炒め製品が開発され、“惣菜”としての新たな存在価値が生まれた。現在でも、和洋中を問わず様々な料理の素材として重宝されており、今後もその分野での広がりが期待される。
課題は、冒頭に書いた原料の確保だ。現在、高菜漬に使用されている「三池高菜」は、柳川地区を治めていた立花家の当主・立花寛治が、筑後地方の農業振興のために私財を投げうって農事試験場を作り、中国の青菜と日本の紫高菜を組み合わせて出来た品種だ。
(柳川「御花」サイトより https://ohana.co.jp/stories/tachibana-history/ )
今も脈々と受け継がれている立花氏の意思を途切れさせてはいけない。気温が乱高下する天候に強い品種の開発や、栽培方法の研究などが進むことを期待したい。
(菰田隆行)
【2025(令和7)年4月11日第5192号4面】
今も脈々と受け継がれている立花氏の意思を途切れさせてはいけない。気温が乱高下する天候に強い品種の開発や、栽培方法の研究などが進むことを期待したい。
(菰田隆行)
【2025(令和7)年4月11日第5192号4面】
<編集後記> 4月1日号 昔のままという価値
京都のすぐき漬が令和6年度の100年フードに選ばれた。
京都市農協や京都府漬物協同組合はこれを足がかりに、無形民俗文化財登録も目指していく。
塩だけで、天秤押しというテコの原理を利用した手法で300kgの圧力をかけて漬け込み(現代ではプレス機を使うところも多い)、その後加温して40度ほどに保った室で熟成させる独特の製法だ。
味は、塩だけで漬けて乳酸発酵させた香りと酸味がある。そのまま食べても美味しいが、醤油やごまなどをかけると旨味が補強される。シンプルがゆえにアレンジもしやすい。
これを好む人にとって、現代の漬物は「美味しすぎる」のではないかと思わされる。
冬になると、京都市内のスーパーでは姿物のすぐき漬が真空パックで、生鮮品のように100g当たり300円くらいの価格設定で売られている。重量が厳密に設定され、価格を変えるのに多大な苦労がかかるメーカー品とは対照的だ。
約400年前に上賀茂地域で生まれたとされるすぐき漬は、製法も味も、売り方までも昔のままだ。これからもその価値を守り続けてほしい。(小林悟空)
【2025(令和7)年4月1日第5191号6面】
京都市農協や京都府漬物協同組合はこれを足がかりに、無形民俗文化財登録も目指していく。
塩だけで、天秤押しというテコの原理を利用した手法で300kgの圧力をかけて漬け込み(現代ではプレス機を使うところも多い)、その後加温して40度ほどに保った室で熟成させる独特の製法だ。
味は、塩だけで漬けて乳酸発酵させた香りと酸味がある。そのまま食べても美味しいが、醤油やごまなどをかけると旨味が補強される。シンプルがゆえにアレンジもしやすい。
これを好む人にとって、現代の漬物は「美味しすぎる」のではないかと思わされる。
冬になると、京都市内のスーパーでは姿物のすぐき漬が真空パックで、生鮮品のように100g当たり300円くらいの価格設定で売られている。重量が厳密に設定され、価格を変えるのに多大な苦労がかかるメーカー品とは対照的だ。
約400年前に上賀茂地域で生まれたとされるすぐき漬は、製法も味も、売り方までも昔のままだ。これからもその価値を守り続けてほしい。(小林悟空)
【2025(令和7)年4月1日第5191号6面】
<編集後記> 3月21日号 ぬか漬けの価値
ぬか漬けを漬け始めてからもうすぐ1年が経つ。
日本いりぬか工業会の「ぬか漬けの日(5月8日)キャンペーン」を機に漬け始め、それ以降、食卓の一品となっている。
定番の胡瓜、かぶ、大根、人参などを中心に様々な野菜を漬けているが、最近のお気に入りはアボカド。アボカドを半分にカットし、種を取り出し皮が付いたまま漬ける。2日ほど経つとクリーミーな身にぬかの香りが染み込み、さわやかでコク深い味わいに仕上がる。特にハイボールとの相性が良く、晩餐のお供にピッタリな一品だ。
ぬか漬けファンの懐を直撃しているのが昨今の野菜高騰。胡瓜1本60円、アボカド1個200円。近所のスーパーや八百屋をめぐり、お得な漬け材を探すものの、そう簡単には見付からない。だがよく考えてみると、上等な酒の肴が60円や200円で手に入ると思えば、大変安い買い物ではないか。しかも食物繊維やビタミンB1などの栄養素がたっぷり摂取できる。
ぬか漬けを漬け始めてから腸内環境が改善されたのか、以前より身体も軽く感じる。実際に漬けることで、ぬか漬けの価値を実感する一年となった。(藤井大碁)
日本いりぬか工業会の「ぬか漬けの日(5月8日)キャンペーン」を機に漬け始め、それ以降、食卓の一品となっている。
定番の胡瓜、かぶ、大根、人参などを中心に様々な野菜を漬けているが、最近のお気に入りはアボカド。アボカドを半分にカットし、種を取り出し皮が付いたまま漬ける。2日ほど経つとクリーミーな身にぬかの香りが染み込み、さわやかでコク深い味わいに仕上がる。特にハイボールとの相性が良く、晩餐のお供にピッタリな一品だ。
ぬか漬けファンの懐を直撃しているのが昨今の野菜高騰。胡瓜1本60円、アボカド1個200円。近所のスーパーや八百屋をめぐり、お得な漬け材を探すものの、そう簡単には見付からない。だがよく考えてみると、上等な酒の肴が60円や200円で手に入ると思えば、大変安い買い物ではないか。しかも食物繊維やビタミンB1などの栄養素がたっぷり摂取できる。
ぬか漬けを漬け始めてから腸内環境が改善されたのか、以前より身体も軽く感じる。実際に漬けることで、ぬか漬けの価値を実感する一年となった。(藤井大碁)
【2025(令和7)年3月21日第5190号10面】
<編集後記>3月11日号 愛される商品の秘訣
全国調理食品工業協同組合近畿ブロック会(阪田嘉仁会長)が3月1日、滋賀県大津市のボートレースびわこにて、湖魚佃煮のPRを行い取材で訪問した。昼食時に食堂へ入ると、競艇ファンたちが、かつ丼やカツカレーを注文する声が聞こえた。「勝つ」のゲン担ぎで、競艇場では毎日ゲンが担がれる。
ゲン担ぎで私が思い浮かぶのは、大阪のうどん双樹が製造販売する「すべらんうどん」。うどんの中央に穴を空ける特許製法で作られ、その穴に箸を引っかけて食べると、箸からうどんが「すべらん」「落ちない」と受験生に人気の縁起物だ。大阪天満宮を中心に販売し、入試シーズンにはすぐに売り切れる。
販売場所、タイミング、ネーミングが絶妙に重なることが、愛される商品の秘訣だと考えさせられる1日だった。
(高澤尚揮)
【2025(令和7)年3月11日第5189号6面】
<編集後記>3月1日号 走りながら考える
「走りながら考えろ」。ウエルシアホールディングス株式会社代表取締役兼会長執行役員最高経営責任者の池野隆光氏が日頃から社員にかけている言葉だ。
目標や目的があれば、まずそれに向かって走り出す。そして、走ることだけに集中するのではなく、どうすれば目標や目的を達成できるのかを考える。
走りながら物事を考えることは簡単なことではない。歩くスピードならば余裕を持って考えることができるが、他社に追い付かれたり追い越される可能性もある。成功するためには頭をフル回転させながら誰よりも早く走らなければならない、ということだ。
池野氏の言葉を聞いて、ある人のことを思い出した。2006年7月から病に倒れる2007年11月まで、サッカー日本代表監督を務めたオシム氏だ。同氏は「考えながら走るサッカー」を標榜し、現代の日本サッカーの礎を築いた。
成功している人には何かしらの共通点があることが多いが、私が取材を通して関わることができた池野氏とオシム氏には共通の言葉があった。 (千葉友寛)
目標や目的があれば、まずそれに向かって走り出す。そして、走ることだけに集中するのではなく、どうすれば目標や目的を達成できるのかを考える。
走りながら物事を考えることは簡単なことではない。歩くスピードならば余裕を持って考えることができるが、他社に追い付かれたり追い越される可能性もある。成功するためには頭をフル回転させながら誰よりも早く走らなければならない、ということだ。
池野氏の言葉を聞いて、ある人のことを思い出した。2006年7月から病に倒れる2007年11月まで、サッカー日本代表監督を務めたオシム氏だ。同氏は「考えながら走るサッカー」を標榜し、現代の日本サッカーの礎を築いた。
成功している人には何かしらの共通点があることが多いが、私が取材を通して関わることができた池野氏とオシム氏には共通の言葉があった。 (千葉友寛)
【2025(令和7)年3月1日第5188号5面】
<編集後記>2月21日号 食に保守的
SMTSで地域食を眺めながら、子どもの頃のこんな記憶がふとよみがえった。
両親は食に関して保守的な人だが、それは決して珍しいことではないことをその後の人生で学んだ。むしろ、多くの人は食事で失敗したくないからと、入念な事前調査をして、旅行雑誌や口コミで美味しいと太鼓判を押されているものを選ぶ。
日本人だけではない。ホテルの朝食バイキングでは、和食に手を付けずに、食べ慣れているフライドポテトを山盛りにする外国人もよく見かける。
取材をしていると、発売後数カ月経ってから売れ始めた、という話をよく聞く。どんなに美味しい商品でも、最初の一口に挑戦してもらうまでには時間や工夫を要するのだろう。食の探究心が強い食品業界の人々は、世の平均とのギャップに注意が必要だ。
(小林悟空)
両親は食に関して保守的な人だが、それは決して珍しいことではないことをその後の人生で学んだ。むしろ、多くの人は食事で失敗したくないからと、入念な事前調査をして、旅行雑誌や口コミで美味しいと太鼓判を押されているものを選ぶ。
日本人だけではない。ホテルの朝食バイキングでは、和食に手を付けずに、食べ慣れているフライドポテトを山盛りにする外国人もよく見かける。
取材をしていると、発売後数カ月経ってから売れ始めた、という話をよく聞く。どんなに美味しい商品でも、最初の一口に挑戦してもらうまでには時間や工夫を要するのだろう。食の探究心が強い食品業界の人々は、世の平均とのギャップに注意が必要だ。
(小林悟空)
【2025(令和7)年2月11日第5187号6面】
<編集後記>2月11日号 スーパーがインフラに
SMTS(スーパーマーケット・トレードショー)が今回で59回目を迎える。第1回開催の1964年には、スーパーの存在感は今ほどではなかった。都市を除けば、全国的に地域の個人商店で、夕飯の買い出しをするのが主流であった。
歴史を振り返ると、それから90年代まで、スーパーは長らく大量生産、大量消費の象徴であった。だが2000年代以降、今でいうサステナビリティの取組が進み、食品ロス削減、環境に優しい包材使用の推進などに力を入れていく。
そして、商品販売に留まらず、生活講座イベント開催等、情報発信の場にもなっていく。スーパーの役割は多様化し、人々の生活のインフラになっていった理由として、現場の創意工夫は間違いないが、そのきっかけ作りとして、SMTSが最新情報を常に提供してきた貢献は大きい。(高澤尚揮)
【2025(令和7)年2月11日第5186号16面】
<編集後記> 1月21日号 餅の食べ方
一年のうち1月は、お雑煮などで最も「餅」を食べる機会が多い月だ。
その餅も、全国で形や食べ方に大きな差がある。お雑煮に使われる餅の形は東日本と西日本で異なり、その境目は岐阜県の関ケ原辺りになる。(農林水産省月刊誌「aff(あふ)」より)
関ケ原より東の都道県は角餅、西の府県は丸餅が一般的だ。境界線上にある岐阜、石川、福井、三重、和歌山の5県では、角・丸2種類とも使われているところもある。
また、食べ方についての調査では、東日本では「いそべ」、西日本では「砂糖醤油」が多数派を占め、東西で大きな差がみられることがわかった。(ウェザーニュース「好きな焼き餅の食べ方」アンケート調査より)
九州出身の筆者も、餅に海苔を巻くいそべ焼きよりも、甘しょっぱい砂糖醤油での食べ方が子供の頃から食べ慣れた味で、ソウルフードのひとつだ。
最近では餅の食べ方も多様化し、3500万人以上のユーザーを抱える日本最大級のレシピ動画アプリ「デリッシュキッチン」で「餅」と検索すると、200種類以上のメニューが表示されるほど。
この時期はちょうど、お供えしていた餅を鏡開きで食べる頃。ぜひ、様々なメニューを試して美味しく食べてみたい。
(菰田隆行)
【2025(令和7)年1月21日第5185号6面】
<編集後記>1月11日号 おせち百景
今年の正月、十数年ぶりに母の手作りおせちを食べた。おせちといっても、栗きんとん、黒豆、筑前煮、なますといった簡易的なものだが、その味付はやはり身体に馴染むものがあった。なますにマグロの切り身が入っていたり、その由来は分からないが、代々受け継がれてきた伝統の味がある。 父の故郷である富山のかぶら寿司がおせちと共に食卓に並ぶのも正月の恒例で、久しぶりに、その味わいに舌鼓を打った。汁物では、里芋の茎を干した“ずいき”の粕汁が懐かしかった。こちらも調べると富山の郷土料理のようだ。
一方、妻の実家では、病気療養中の義母に代わり、妻と義姉がその味を受け継ぎ振る舞った。栗きんとん、黒豆、田作り、なます、たたきごぼう、煮しめの他、白と黄色のコントラストが美しい市松錦卵が目を引いた。おせちと共に、ビーフシチューが登場するのも妻の実家の正月の恒例だ。 正月の食卓の風景は、その家により様々だ。独自に受け継がれてきたレシピやメニューもあるだろう。だからこそ、面白く奥深い。その味わいをどのように次世代へつないでいくか。つながらず消えてしまう故郷の味があるのは寂しい限りだ。
意外にも、ずいきの粕汁は子どもたちから大好評で、家に持ち帰り、次の日も、その次の日も子どもたちは喜んで食べた。郷土料理伝承の第一歩は、まず食卓に上げ、食べてもらうことだと身をもって実感する正月となった。(藤井大碁)
一方、妻の実家では、病気療養中の義母に代わり、妻と義姉がその味を受け継ぎ振る舞った。栗きんとん、黒豆、田作り、なます、たたきごぼう、煮しめの他、白と黄色のコントラストが美しい市松錦卵が目を引いた。おせちと共に、ビーフシチューが登場するのも妻の実家の正月の恒例だ。 正月の食卓の風景は、その家により様々だ。独自に受け継がれてきたレシピやメニューもあるだろう。だからこそ、面白く奥深い。その味わいをどのように次世代へつないでいくか。つながらず消えてしまう故郷の味があるのは寂しい限りだ。
意外にも、ずいきの粕汁は子どもたちから大好評で、家に持ち帰り、次の日も、その次の日も子どもたちは喜んで食べた。郷土料理伝承の第一歩は、まず食卓に上げ、食べてもらうことだと身をもって実感する正月となった。(藤井大碁)
【2025(令和7)年1月11日第5184号15面】

































