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【講演】味噌汁はガンを抑制  発酵が塩の働き穏やかに
(全国種麹組合理事長 今野宏氏)


この記事は、10月15日に開催された関西味噌生販協議会の研修会で、株式会社秋田今野商店社長で全国種麹組合理事長、農学博士の今野宏氏による講演を食料新聞社が編集したものです。


味噌汁はガンを抑制  発酵が塩の働き穏やかに

(全国種麹組合理事長 今野宏氏)

普段何気なく口にしている味噌汁。実はこの一杯に、私たちの健康と長寿を支える素晴らしい力が秘められていることをご存知だろうか。今回は、麹菌(こうじきん)の専門家である秋田今野商店の今野宏氏による講演から、科学的にも注目される味噌の健康性について紹介する 。

 

食事が持つ「第3の機能」とは? 

食べ物には3つの機能がある 。

 第1の機能:栄養(体を作る)

 第2の機能:美味しさ(五感を楽しませる)

 第3の機能:生理機能の調節(体の調子を整える)

近年、この「第3の機能」が非常に重要視されている 。病気の予防や老化の制御、健康長寿といった働きであり、味噌はこの機能において驚くべき可能性を秘めているのである 。

 

歴史が証明する味噌の力 

味噌の力が注目されたきっかけは、歴史的な出来事にあった 。

  • 長崎の原爆投下後 爆心地からわずか1.4kmの病院で、医師の指導のもと玄米と味噌汁を中心とした食事を徹底していたところ、スタッフや患者から重い放射線障害を発症する人が出なかったという記録がある 。これが、味噌の持つ特別な力が注目される大きなきっかけとなった 。
  • チェルノブイリ原発事故 この事故の後、ヨーロッパでは日本の味噌が輸入され、子どもたちの健康維持のために活用されたという事実もある 。これも長崎での事例が世界で知られていたためである 。

 

科学が解明した味噌と病気予防の関係 

歴史的な逸話だけでなく、近年の研究によって味噌の健康効果は科学的にも裏付けられている 。

  • がんリスクの低下 1982年の国立がんセンターによる大規模な疫学調査で、「味噌汁を毎日飲む習慣がある人は、飲まない人に比べて胃がんリスクが低い」という結果が報告されている 。また、1990年の厚生省(当時)による大規模調査では、味噌汁を1日3杯以上摂取する女性は、1杯未満の層と比較して乳がん発生率が40%低いという有意なデータが得られている。これは、味噌に含まれる成分が、がんの発生を抑制する働きを持つことを示唆している 。
  • 鍵を握る「大豆イソフラボン」の吸収率 なぜ納豆や豆乳ではなく、味噌なのだろうか 。その秘密は麹菌が作り出す「酵素」にある 。大豆に含まれる健康成分イソフラボンは、そのままでは体に吸収されにくい形をしている 。しかし、味噌の発酵過程で麹菌の酵素が働くことで、体に吸収されやすい形に変化する 。このため、味噌は他の大豆製品に比べて、イソフラボンの健康効果を効率よく得ることができるのである 。

 

塩分は心配ないの? 

「味噌は塩分が気になる」という方も多いかもしれない 。しかし、研究では「食塩をそのまま摂る場合と、味噌として摂る場合とでは、体への影響が異なる」ことが分かっている 。味噌に含まれる他の成分が塩分の働きを穏やかにしてくれる可能性があり、単純に「塩分=体に悪い」と決めつけることはできない 。

 

私たちの祖先が長い歴史の中で育んできた日本食 。その中心にある味噌は、美味しさだけでなく、病気に負けない体を作るための「予防医学」そのものと言えるかもしれない 。日々の食卓に、ぜひ愛情のこもった一杯の味噌汁を加えてみてはいかがだろうか 。

ザイン」し直すという新たな視点と、業界全体で文化的価値を発信していくことの重要性を再認識させられた。


今野宏氏 株式会社秋田今野商店代表取締役社長。日本農芸化学会東北支部参与。日本生物工学会北日本支部委員。全国種麹組合理事長。秋田栄養短期大学客員教授。農学博士。

【2025(令和7年)11月11日第5212号2面、電子版掲載にあたり加筆(編集:大阪社 小林悟空)】

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