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第69回長野県漬物品評会 とみき漬物インタビュー

農水大臣賞受賞

有限会社とみき漬物 代表取締役 富井義裕氏

原種の種で野沢菜栽培
「価格」から「価値」へ転換を
 野沢菜発祥の地として知られる長野県の野沢温泉村に本社を構える有限会社とみき漬物(下高井郡野沢温泉村)では、昨年10月に開催された令和7年度長野県園芸特産振興展(主催=長野県・長野県園芸特産振興展推進協議会)の第69回漬物品評会(浅漬物の部)にて「昔ながらのうんまい菜っぱ」が最高賞となる農林水産大臣賞を受賞した。野沢菜のルーツは、1756年に野沢温泉村にある健命寺の住職が京都に遊学した際、大阪市天王寺で栽培されている天王寺蕪の種子を持ち帰ったことに由来し、天王寺蕪の子孫が野沢菜になったとされる。とみき漬物では、健命寺に伝わる原種の種を使用した野沢菜栽培を行っている。野沢菜伝統野菜の会会長も務める同社代表取締役の富井義裕氏にインタビューした。(藤井大碁) 
‐野沢菜漬で農林水産大臣賞を受賞した。
 「昨年は原料の品質が今までにないくらい良かったので、手応えを感じていたが、まさか農林水産大臣賞を受賞できるとは思っていなかった。当社としては20年ぶりの大臣賞受賞となり、大変嬉しい気持ちであるとともに、日頃からお世話になっている皆様方に心より御礼を申し上げたい」
‐昨年の野沢菜栽培が成功した理由。
 「健命寺に伝わる伝統野菜の種を使用した野沢菜栽培は本当に難しく、なかなかうまくいかない。昨年は連作障害を防ぐために新たな圃場に移ったことや、天候や種を撒くタイミングが良かったことにより最高の野沢菜ができたのではないかと分析している。栽培がうまくいった昨年の土壌データをしっかりと計測した上で今後の野沢菜栽培に生かしていきたい」
‐伝統野菜の種を使用した野沢菜栽培を行っている。 
 「連作障害が起きやすく、大きさも均一になりにくいが、昨年のようにうまくいった年は本当に美味しい野沢菜ができる。太い茎からは想像できないくらい柔らかく歯切れも良い。苦味がなく甘みもあり、まさに昔ながらの野沢菜の美味しさが楽しめる」
‐近年、野沢菜原料は不安定な状況が続いている。
 「野沢菜の需要は堅調だが、生産者の減少や異常気象により、原料が不足気味になっている。特におやきや油炒めに使用する惣菜向けの本漬が伸長しており、需要に供給が追い付いていない。本漬は浅漬より手間や時間がかかるだけでなく歩留まりも悪いので、メーカーは商品価格を上げて、生産者から買い取る際の原料価格に反映させていく必要がある。それができなければ、今後も生産者の減少が続くだろう。野沢菜業界全体で、価格から価値へ訴求ポイントを切り替えるべき時期が訪れている」
‐野沢温泉村では野沢菜生産者に補助金を支給している。
 「野沢菜生産振興事業として4年前にスタートした。野沢菜発祥の地として、伝統野菜である野沢菜が無くなってしまっては困るため、伝統野菜の会の会長である私から村に呼びかけて実現した。収穫した野沢菜を業務用向けに出荷するなど指定された各要件を満たすことが条件となるが、栽培実績に応じて1農家あたり1年間最大で30万円が支給される。事業がスタートしてから若い世代の生産者が増え、野沢菜の収穫量は約20%増加している」
‐野沢温泉村には多くの外国人観光客が訪れている。 
 「宿泊施設や飲食店においては、インバウンド向けに投資をして施設などの改修を行った事業者とそれができていない事業者で客入りに大きな差がでている。野沢温泉を訪れる外国人は、日本文化が好きな方が多く、その土地の食材をうまく生かした料理が人気だ。野沢菜油炒めは餃子の具材、野沢菜キムチはケバブやチャーハンの具材、またべっ甲色に発酵した野沢菜漬はタルタルソースの具材として、野沢菜と言われなければ気付かないくらい自然な形で提供され、多くの外国人がその味わいを楽しんでいる。こうした飲食店向けの野沢菜漬の需要が旺盛な一方で、お土産として野沢菜漬を購入する外国人はほとんど存在せず、業務用と市販用で明暗が分かれている」
【2026(令和8)年1月11日第5218号14面】

とみき漬物
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