<資材特集>トップインタビュー
キユーピー醸造株式会社 代表取締役社長 田村則之氏
“食酢の魅力”国内外へ発信
酢酸菌入り『にごり酢』に注目
キユーピー醸造株式会社(東京都調布市)は、キユーピーの創始者・中島董一郎氏のマヨネーズ原料へのこだわりから生まれた、日本で最初に洋風酢の工業的生産を行ったメーカー。現在はキユーピーマヨネーズの原料食酢はもちろん、加工メーカー、寿司、デリカ、外食、農業など幅広い業態に多様な食酢を供給している。今年2月には田村則之氏が代表取締役社長に就任。食酢が持つ魅力の発信にさらに力を注いでいく。(藤井大碁) ◇ ◇
ー社長就任にあたっての抱負。
「当社の原点であるキユーピーマヨネーズの美味しさの追求はもちろん、世界最古の調味料と言われる食酢の価値訴求に力を入れていきたい。現在、食酢へ求められる価値は高まっている。酸味を付与する基礎調味料としてだけでなく、発酵食品としての食酢の魅力を広め、洋風酢・和風酢を含めて食酢の世界観を広げていく。当社は業務用が主体であるので、自分たちだけで発信するのではなく、食酢をご使用いただいている加工メーカー様と協業しながら取り組んでいきたい」
ー昨年発売した「にごり酢」に注目が集まっている。
「通常、食酢は酢酸菌で発酵させて作るが、製品化の過程で濾過され、酢酸菌は取り除かれてしまう。だが、江戸時代に流通していた当時の食酢は濾過されておらず、酢酸菌が入った状態で流通していた。キユーピーグループでの長年の研究の結果、除去している酢酸菌に、免疫機能を維持する機能や、ホコリやハウスダストなどによる鼻の不快感を軽減する機能など、日々の健康をサポートする働きがあることが分かってきた。現在、酢酸菌が入った食酢として『にごり酢』の提案を多くの業界にさせていただいている。にごり酢を原料として使用することで、最終商品に新たな価値を付加することが可能になると思っている」
ー漬物業界、惣菜業界への提案。
「我々の原点はお客様の課題を解決することであり、美味しさの提供だけでなく、日持ち向上やエンハンス効果など食酢を入れることによる機能性の提案を強化していきたい。例えば、漬物は減塩することにより、味のメリハリが減少してしまいがちだが、食酢を添加することにより、薄味でも満足感のある味付けにすることができる。惣菜向けでは、白飯や酢飯の歩留まり向上効果と老化抑制機能を持つ米飯改良剤、酸味を抑えつつ風味を向上させるエンハンス効果のある食酢などを展開しているので是非ご活用いただきたい」
ー温暖化による気候変化の影響。
「現在、地球温暖化による“二季化”が進む中、夏場の猛暑により食欲が減退しがちな時も食酢の酸味があれば食欲増進に繋がる。また品質面においても、食酢のphの低さと酢酸には静菌効果があるため、食品の日持ちに寄与することができる。さらに、近年の異常気象や地政学リスクにより、これまで使用していた原料のグレードを変更せざるを得なくなった場合に、食酢を活用して風味を底上げすることにより、品質を担保していただくことも可能と考えている」
ー漬物研究同志会、日本惣菜協会へメッセージ。
「発酵という限りない可能性を持つ技術を研ぎすまして、発酵食品ならではの美味しさと機能性で、今まで以上の新たな価値を目指していきたい。長年お世話になっている漬物、惣菜業界のプロフェッショナルの方々に認めていただけるような技術力と商品力を、お客様の課題解決のために提案し、市場を活性化することで、業界発展に貢献していきたい」
ー最後に。
「2030ビジョンとして“Vinegar Wonderland”を掲げ、新しい食べ方など食酢の魅力を国内外に発信していく。その中で特に力を入れるのがウェルネス事業とグローバル事業だ。ウェルネス事業では、酢酸菌が入ったにごり酢の活用など発酵食品である食酢を通じて、お客様の健康に貢献していく。また世界的な“SUSHI”ブームはまだまだ広がっていくと考えており、寿司酢を始めとした食酢は海外でも大きなチャンスがある。世界各国のグループ企業とも連動して、グローバルでキユーピーマヨネーズと寿司酢をセットで売上拡大に取り組んでいく。健康のために世界中で、カロリーや塩分、脂質など様々な成分の摂取量が制限される時代になっているが、食酢は1日約15ミリリットルの摂取が目安とされているものの、日本人の平均的な摂取量はまだその水準に届いていない。是非、健康的で美味しい食酢を毎日の食卓で楽しんでいただきたい」
【田村則之(たむら・のりゆき)氏略歴】
1967年生まれ、埼玉県出身。キユーピーの業務用営業部門の前身である三英食品販売からキユーピー業務用営業として37年間にわたり営業畑でキャリアを積んだ後、キユーピーフードサービス販売戦略部を経て、2026年2月よりキユーピー醸造代表取締役に就任
【2026(令和8)年6月11日第5231号6面】
キユーピー醸造
<資材特集>この人に聞く
カカシ食研株式会社 専務取締役 川上 健介氏
カカシ食研株式会社(川上剛史社長、兵庫県三田市)は、今年創業より30周年を迎えた。同社では“農産加工用品質改良剤日本一”を目標として掲げ、業容を拡大。近年は漬物向けに育んできた技術を惣菜向けに応用することで、売上を伸ばしている。専務取締役の川上健介氏に現状の商品展開や今後のビジョンについて聞いた。 (藤井大碁)
◇ ◇
―今年創業より30周年を迎えた。
「30周年を迎えられたのは漬物業界の皆様を始めとした多くの方々のおかげであり、心より感謝を申し上げたい。今後も漬物業界に貢献できるよう商品開発を進めていく。また漬物で培った野菜の品質メカニズムを惣菜にも応用することで、惣菜業界の皆様のお力にもなっていきたい」
―今期、画期的な新商品2品を発売した。
「新商品『エーデライス』は、釜炊きから連続蒸気炊飯まで対応する米飯用品質改良剤。お米は冷えると固くなってしまう特徴があるが、『エーデライス』を加えることで、冷やご飯がふんわり食べられるようになる。お弁当は現在、常温流通が主流だが、近年、夏場の気温上昇により、品質保持が難しくなっている。当製剤を常温弁当やおにぎり、お寿司などに使用していただくことにより冷蔵流通の実現に貢献していきたい」
―常温弁当の彩りを良くする新商品も発売した。
「もう一つの新商品が日持向上剤製剤『JO―ON 25/48』。常温弁当の中には、緑色が退色してしまうため、これまで具材として緑色野菜を入れることが難しかった。この課題を解決するために、当社が開発したのが『JO―ON 25/48』だ。25度48時間にわたり菌数を抑えられるため、お弁当にインゲンやブロッコリーなどの緑色野菜を入れることができる。日持向上剤特有の酸味をださない独自設計となっており、商品の味わいを損ねることもなく、幅広いメニューにご使用いただくことができる」
―漬物用製剤の売れ筋は。
「漬物向けには、日持向上製剤『スーパーキラッと!』がご好評いただいている。通常の日持ち向上剤より価格は倍以上するが、著しい効果があるため年々売上が伸びている。特に浅漬製品への効果が絶大で、夏場の気温上昇が品質保持にとって大きな課題となる中、浅漬製品の膨張や白濁対策として大きな効果を発揮している」
―最後に。
「当社では今年のテーマとして『進化』を掲げ、変化することを恐れずに、生成AIなどの新しい技術を取り入れていく。今後も、農産加工用品質改良剤日本一を目指し、漬物業界、惣菜業界を始めとした農産加工品業界の発展に貢献できるよう努力を続けていく」
【2026(令和8)年6月11日第5231号6面】
カカシ食研
https://kakashi-s.co.jp/
◇ ◇
―今年創業より30周年を迎えた。
「30周年を迎えられたのは漬物業界の皆様を始めとした多くの方々のおかげであり、心より感謝を申し上げたい。今後も漬物業界に貢献できるよう商品開発を進めていく。また漬物で培った野菜の品質メカニズムを惣菜にも応用することで、惣菜業界の皆様のお力にもなっていきたい」
―今期、画期的な新商品2品を発売した。
「新商品『エーデライス』は、釜炊きから連続蒸気炊飯まで対応する米飯用品質改良剤。お米は冷えると固くなってしまう特徴があるが、『エーデライス』を加えることで、冷やご飯がふんわり食べられるようになる。お弁当は現在、常温流通が主流だが、近年、夏場の気温上昇により、品質保持が難しくなっている。当製剤を常温弁当やおにぎり、お寿司などに使用していただくことにより冷蔵流通の実現に貢献していきたい」
―常温弁当の彩りを良くする新商品も発売した。
「もう一つの新商品が日持向上剤製剤『JO―ON 25/48』。常温弁当の中には、緑色が退色してしまうため、これまで具材として緑色野菜を入れることが難しかった。この課題を解決するために、当社が開発したのが『JO―ON 25/48』だ。25度48時間にわたり菌数を抑えられるため、お弁当にインゲンやブロッコリーなどの緑色野菜を入れることができる。日持向上剤特有の酸味をださない独自設計となっており、商品の味わいを損ねることもなく、幅広いメニューにご使用いただくことができる」
―漬物用製剤の売れ筋は。
「漬物向けには、日持向上製剤『スーパーキラッと!』がご好評いただいている。通常の日持ち向上剤より価格は倍以上するが、著しい効果があるため年々売上が伸びている。特に浅漬製品への効果が絶大で、夏場の気温上昇が品質保持にとって大きな課題となる中、浅漬製品の膨張や白濁対策として大きな効果を発揮している」
―最後に。
「当社では今年のテーマとして『進化』を掲げ、変化することを恐れずに、生成AIなどの新しい技術を取り入れていく。今後も、農産加工用品質改良剤日本一を目指し、漬物業界、惣菜業界を始めとした農産加工品業界の発展に貢献できるよう努力を続けていく」
【2026(令和8)年6月11日第5231号6面】
カカシ食研
https://kakashi-s.co.jp/
徳島特集 トップインタビュー
株式会社白鷺屋 代表取締役社長 増田善紀氏
足場固まり攻勢へ
奈良漬は「伸び代しかない」
株式会社白鷺屋(徳島県小松島市)の増田善紀社長にインタビュー。増田氏は、1940年に奈良県の橿原神宮前で創業した大和物産館株式会社総本舗増田屋(奈良県橿原市)の社長。土産物販売を主体としていた同社だったが、2014年より「総本舗増田屋」の屋号で、途絶えかけていた奈良漬製造販売を再開させた。昨年3月に、取引先であった白鷺屋の前社長に後継者が不在であったことからM&Aにより会社を引き継いだ。一年余りが経ち、白鷺屋の奈良漬の販路拡大は可能と、増田社長は断言する。
―1年間を振り返って。
「この1年間は足場固めの期間だった。工場内では機械設備の入れ替えや、老朽化していた箇所の修繕、事務部門でもパソコンや会計ソフトを一新し体制を整えた。これから新しいことへ挑戦していく」
―「白鷺屋」という企業のポテンシャルは。
「奈良漬製造においてこれ以上ない最高の条件が揃っていると改めて確信した。徳島は日本一の生産量を誇る白瓜の産地であり、清浄な水、そして良質な塩がすぐ近くで確保できる。何より、先代から受け継がれた素晴らしい技術を持つ職人も残ってくれたことも大きい」
―営業面は。
「これまでの白鷺屋は、関東向けの業務用が売上の大半を占めていた。営業マンはおらず、永年お付き合いのある得意先様だけで事業を継続してきた会社であり、裏を返せば、伸び代しかない。業務筋、市販向け双方において、営業活動を自ら仕掛ければ、奈良漬の需要はまだまだ生み出せると確信している」
―原料の確保や、商品開発について。
「小松島周辺の自社農園で、原料となる白瓜や胡瓜の自社栽培に着手した。また、近隣の淡路島産玉ねぎを使った奈良漬の試作も進めている。当社ならでは、徳島ならではの付加価値の高い商品を作っていく。当社の奈良漬としてのブランド化はもちろんのこと、将来的には野菜そのものも、地域ブランドとして確立させたいと考えている」
―総本舗増田屋について。
「橿原神宮の近くに店舗を構えているが、メインの売上は奈良県内の土産物店への卸。2014年に奈良漬の製造販売を再開して以来、毎年10~20%ずつ右肩上がりで売上が伸びている。『本物の味』を求めるお客様に見つけていただけた結果だと自負している。奈良漬の需要はやり方次第で伸ばせることは身をもって実感している」
―両社のシナジーは。
「原料調達におけるスケールメリットの活用や、製造ノウハウの共有といった連携は行う。しかし、あくまでも増田屋は奈良の、白鷺屋は徳島の会社として、地域に根ざしたブランドを独立して育て上げたい。それぞれの土地のストーリーを大切にしながら、真摯にモノづくりを続けること。それこそが、地域の伝統を未来へと存続させることに繋がるはずだ」
(大阪支社・小林悟空)
―1年間を振り返って。
「この1年間は足場固めの期間だった。工場内では機械設備の入れ替えや、老朽化していた箇所の修繕、事務部門でもパソコンや会計ソフトを一新し体制を整えた。これから新しいことへ挑戦していく」
―「白鷺屋」という企業のポテンシャルは。
「奈良漬製造においてこれ以上ない最高の条件が揃っていると改めて確信した。徳島は日本一の生産量を誇る白瓜の産地であり、清浄な水、そして良質な塩がすぐ近くで確保できる。何より、先代から受け継がれた素晴らしい技術を持つ職人も残ってくれたことも大きい」
―営業面は。
「これまでの白鷺屋は、関東向けの業務用が売上の大半を占めていた。営業マンはおらず、永年お付き合いのある得意先様だけで事業を継続してきた会社であり、裏を返せば、伸び代しかない。業務筋、市販向け双方において、営業活動を自ら仕掛ければ、奈良漬の需要はまだまだ生み出せると確信している」
―原料の確保や、商品開発について。
「小松島周辺の自社農園で、原料となる白瓜や胡瓜の自社栽培に着手した。また、近隣の淡路島産玉ねぎを使った奈良漬の試作も進めている。当社ならでは、徳島ならではの付加価値の高い商品を作っていく。当社の奈良漬としてのブランド化はもちろんのこと、将来的には野菜そのものも、地域ブランドとして確立させたいと考えている」
―総本舗増田屋について。
「橿原神宮の近くに店舗を構えているが、メインの売上は奈良県内の土産物店への卸。2014年に奈良漬の製造販売を再開して以来、毎年10~20%ずつ右肩上がりで売上が伸びている。『本物の味』を求めるお客様に見つけていただけた結果だと自負している。奈良漬の需要はやり方次第で伸ばせることは身をもって実感している」
―両社のシナジーは。
「原料調達におけるスケールメリットの活用や、製造ノウハウの共有といった連携は行う。しかし、あくまでも増田屋は奈良の、白鷺屋は徳島の会社として、地域に根ざしたブランドを独立して育て上げたい。それぞれの土地のストーリーを大切にしながら、真摯にモノづくりを続けること。それこそが、地域の伝統を未来へと存続させることに繋がるはずだ」
(大阪支社・小林悟空)
【2026(令和8)年6月11日第5231号7面】
大和物産館 総本舗増田屋
<山陰特集>トップに聞く
有限会社土江本店 代表取締役社長 関谷忠之氏
青しまね瓜や津田かぶ生産拡大
きゅうりとなすの栽培スタート
有限会社土江本店(島根県松江市)の関谷忠之社長に近況をインタビュー。
同社は、中国・四国地方有数のメーカー・ベンダーで、2月に創業78周年を迎えた。漬物原料である野菜の自社栽培量を年々拡大させ、夏の青しまね瓜漬、冬の津田かぶ漬は同社を代表する商品にまで育った。昨夏からは、浅漬の原料用にきゅうりとなすの栽培もスタートさせ、農業へより一層力を注ぎ、意欲的に取り組んでいる。(大阪支社・高澤尚揮)
◇ ◇
―津田かぶや青しまね瓜の自社栽培量が年々拡大している。
「津田かぶは約30年前、私が社長へ就任する時に栽培を開始し、一町歩にまで拡大し、現在は土作りから栽培管理まですべて自社で行っている。毎年、津田かぶは栽培する際、土が硬すぎても柔らかすぎても、勾玉状には育たないので、非常に細かい工夫が必要だ。今は農家の高齢化が深刻で、30年前から現在の状況を見越し、自社栽培に踏み切って良かったと思う。ハウス栽培も拡充しているところだ。夏の青しまね瓜は、約10年前に自社栽培を開始した。津田かぶ、青しまね瓜ともに毎年、畑を購入し、生産量アップに取り組んでいる。昨夏から浅漬の原料用に、きゅうりとなすの栽培もスタートさせた。漬物業界において、6次産業化は今や定番化したものの、全国でも先駆けて実践したことを誇りに思っている」
―漬物以外に干物「奉書干し」の製造も。
「当社の看板商品の1つ『奉書干し』は、県内の浜田漁港で獲れた鮮魚を干物にしたもの。干物は魚を縦に吊るすと旨味が流れ、横に干すと魚の余分な水分が腐って味が変わってしまう課題があった。そこで、奉書紙で余分な水分を吸い取り、乾燥、発酵熟成させる工程を発案し商標を取得した。発酵熟成は、日本で唯一対応可能な急速冷凍庫を開発し、日々使用しており、自慢の冷凍庫だ」
―今年で78周年を迎える。
「漬物は原料の自社栽培、奉書干しはのどぐろの販売拡大を、またSDGs関連ではフードロス削減に貢献したい。メーカーが最初にできるのは、フードロスを減らすことだ。従来捨てられてきた津田かぶや柿の葉、魚の骨を水蒸気乾燥してパウダー化することにより、ぬか床に入れたりお菓子に入れたりして再利用できる。今は、のどぐろや梅貝、アジなどのパウダー化にも成功している。旨みの塊だ」
―パウダーの展開は。
「津田かぶの葉は、鮮やかなグリーンで、見た目が美しい。続々と、各地域の名産とコラボレーションしていきたいと考えている。様々な展開を思い描いている」
―島根愛がとても強い。
「山陰浜田浜っ粉協議会会長を務め、浜田市の応援団、県の遣島使としても活動している。無報酬だが、島根の食や文化など魅力を全国の方々に伝えられることにやりがいを感じている」
【2026(令和8)年6月11日第5231号8面】
土江本店
深谷特集インタビュー
深谷地区漬物協会 会長 青木浩氏
深谷地区漬物協会では5月8日に総会を開催、新会長に青木浩氏(株式会社ミナミ代表取締役社長)が就任した。青木新会長は業界を取り巻く環境が大きく変化する中、生産・加工・流通の各企業が補い合い、つながることで新たな価値を生み出していきたいと語った。(藤井大碁)
‐深谷地区漬物協会の新会長に就任した。
「これまで協会を支えてきた歴代会長をはじめ、役員・会員の皆様、関係各位のご尽力に心より敬意と感謝を申し上げたい。当協会はこれまで、地域の漬物業界における情報交換や会員同士のつながりを育む大切な場として役割を果たしてきた。その歴史をしっかりと受け継ぎながら、今の時代に合った形へと進化させることが、これからの使命だと感じている」
‐組合運営において特に大切だと考えていること。
「近年、減少傾向にある会員数について、真剣に向き合わなければならない。次世代の若い人たちが『この協会に入ってよかった』『ここから挑戦できる』と感じられる場にしていくことが必要だ。次の世代へ少しでも良い形でバトンを渡すこと、これは弊社の経営でも常に考えていることであり、協会運営においても同じ思いだ」
‐業界を取り巻く環境が大きく変化している。
「円安の継続や国際情勢によるエネルギー・資材コストの高止まりなど、様々な影響が食品業界にも直接及んでいる。国内では物価高・人手不足・後継者不足が重なり、単独の企業だけで課題を全て解決することが難しい時代に入っている。こうした環境の中で、今後、企業間の差がつくのは次の3つの力だと考えている。①原料・資材調達力:異常気象や国際情勢の影響があっても、原材料・資材を安定して確保できるか。②コスト対応力:物価高・エネルギー高騰の中でも、事業を維持し続けられるか。③人材確保力:深刻な人手不足の中で、多種多様な雇用形態を仕組みとして整えられるか。農業・食品業界全体を見ても、“自社だけで完結する時代”は終わりつつある。生産・加工・流通それぞれを担う企業が補い合い、つながることで新たな価値を生み出していく。そうした企業間連携の重要性は、これからますます高まっていく。だからこそ、懇親会や勉強会などの場も、単なる交流に終わらせず、『今、自社が困っていること』『取り組んでいること』『これからの方向性』を率直に話し合い、お互いにヒントを持ち帰ることができる場にしていきたいと思っている」
‐最後に。
「時代の変化は想像以上に速く、半年前の“当たり前”が通じなくなることも珍しくない。本当に恐れるべきは“変化すること”ではなく、“変化しないこと”ではないかと思っている。歴史・文化・伝統は大切に守りながらも、古い慣習や固定観念を見直す勇気がなければ、新しいものは生まれない。今一度、自社の課題を見つめ直す機会を、この協会の場から生み出せればと考えている。会員の皆様のお力添えをいただきながら、当協会が業界にとって意味のある場であり続けられるよう、誠心誠意努めていきたい」
‐深谷地区漬物協会の新会長に就任した。
「これまで協会を支えてきた歴代会長をはじめ、役員・会員の皆様、関係各位のご尽力に心より敬意と感謝を申し上げたい。当協会はこれまで、地域の漬物業界における情報交換や会員同士のつながりを育む大切な場として役割を果たしてきた。その歴史をしっかりと受け継ぎながら、今の時代に合った形へと進化させることが、これからの使命だと感じている」
‐組合運営において特に大切だと考えていること。
「近年、減少傾向にある会員数について、真剣に向き合わなければならない。次世代の若い人たちが『この協会に入ってよかった』『ここから挑戦できる』と感じられる場にしていくことが必要だ。次の世代へ少しでも良い形でバトンを渡すこと、これは弊社の経営でも常に考えていることであり、協会運営においても同じ思いだ」
‐業界を取り巻く環境が大きく変化している。
「円安の継続や国際情勢によるエネルギー・資材コストの高止まりなど、様々な影響が食品業界にも直接及んでいる。国内では物価高・人手不足・後継者不足が重なり、単独の企業だけで課題を全て解決することが難しい時代に入っている。こうした環境の中で、今後、企業間の差がつくのは次の3つの力だと考えている。①原料・資材調達力:異常気象や国際情勢の影響があっても、原材料・資材を安定して確保できるか。②コスト対応力:物価高・エネルギー高騰の中でも、事業を維持し続けられるか。③人材確保力:深刻な人手不足の中で、多種多様な雇用形態を仕組みとして整えられるか。農業・食品業界全体を見ても、“自社だけで完結する時代”は終わりつつある。生産・加工・流通それぞれを担う企業が補い合い、つながることで新たな価値を生み出していく。そうした企業間連携の重要性は、これからますます高まっていく。だからこそ、懇親会や勉強会などの場も、単なる交流に終わらせず、『今、自社が困っていること』『取り組んでいること』『これからの方向性』を率直に話し合い、お互いにヒントを持ち帰ることができる場にしていきたいと思っている」
‐最後に。
「時代の変化は想像以上に速く、半年前の“当たり前”が通じなくなることも珍しくない。本当に恐れるべきは“変化すること”ではなく、“変化しないこと”ではないかと思っている。歴史・文化・伝統は大切に守りながらも、古い慣習や固定観念を見直す勇気がなければ、新しいものは生まれない。今一度、自社の課題を見つめ直す機会を、この協会の場から生み出せればと考えている。会員の皆様のお力添えをいただきながら、当協会が業界にとって意味のある場であり続けられるよう、誠心誠意努めていきたい」
【2026(令和8)年5月21日第5230号4面】
キムチ浅漬インタビュー
関口漬物食品株式会社 取締役営業部長 関口彰氏
浅漬で手軽に野菜摂取 農水プロジェクト参画が付加価値へ
関口漬物食品株式会社(関口悟代表取締役、東京都世田谷区)の関口彰取締役営業部長にインタビュー。浅漬の売れ行きや同社が参画している農林水産省の『野菜を食べようプロジェクト』の取組などについて話を聞いた。関口部長はプロジェクトへの参画が付加価値となり、販売強化につながっていると語った。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐浅漬の売れ行きは。
「前期(2024年10月~2025年9月)の浅漬の売上は悪いなりにも3~4%増だった。今年は年明けから100%を割っていたが、3月から100%を超えてきているので、夏に向けて販売に力を入れていく」
‐浅漬の現状と今後の展開について。
「浅漬は節約志向の影響を受けていると感じている。賞味期限も1週間程度だと売場に貢献することが難しい。棚替えの度に浅漬のアイテムは集約されているという印象だ。浅漬は手軽に野菜を摂取できる手段だと考えており、そのような情報をもっと発信していく必要がある。また、商品の見える化も必要だと思っている。パッケージには最低限の情報が記載されているが、味や香りを伝えきれているのか。商品特徴を理解していただくためにポップを掲載するなど、作り手側から発信していくことが重要だ。当社の大容量商品は下段で販売されており、売場映えする。浅漬というよりはサラダ的な感覚で食べられている方が多いとイメージしている。キムチは漬物というよりは、キムチとして購入されていると思っている。浅漬も漬物ではなく、サラダや野菜摂取の手段の一つとして提案できれば市場が伸長する可能性がある」
‐『野菜を食べようプロジェクト』について。
「当社は農水省が実施している『野菜を食べようプロジェクト』の野菜サポーターとして、漬物を野菜を食べるための手段の一つとして積極的に提案している。現在、15アイテムに同プロジェクトのロゴマークが入っている。セールスポイントが明確でスポット提案も含めて、まだ商品を導入できていない量販店にも提案しやすい。バイヤーとしても売場展開した時のイメージがしやすい商品で、会社としてはこの商品を売っていこう、ということで販売を強化することができた。市場では浅漬が苦戦しており、これまでと違う打ち出し方が必要。そういった意味では当社はそれができていると思っている。導入が増えており、付加価値になっていると感じている。農林水産省の方からもお声がけをいただくなど、自信にもなっている」
‐仕入れ商品について。
「売上構成比は自社製品が6割で仕入れ商品が4割。自社製品も仕入れ商品も数量を伸ばしていきたいと考えている。今年も紀州梅が凶作の見通しで、沢庵も原料不安があるので、代替えとなる商品を落とし込んでいく。メーカーとの連携を強化し、情報を共有しながら対応していきたいと考えている」
‐今後の方向性は。
「労働人口が減るので人手不足が続く。それを解消すべく工場で機械化できるところは機械化を進める必要があるので、設備投資に力を入れていく。また、昨年ホームページをリニューアルして評価をいただいている。品質の向上、人手不足、社内の見える化など、共通認識を持ちながら、優先順位を付けて一つ一つ対応していく。当社は素材の鮮度感と風味を活かした商品作りを強みとしている。小回りが利いた商品提案も行っており、昨年はそこが評価された。その部分をさらに強化してニーズに合った商品を提供していきたいと考えている」
【2026(令和8)年5月11日第5229号8面】
(千葉友寛)
◇ ◇
‐浅漬の売れ行きは。
「前期(2024年10月~2025年9月)の浅漬の売上は悪いなりにも3~4%増だった。今年は年明けから100%を割っていたが、3月から100%を超えてきているので、夏に向けて販売に力を入れていく」
‐浅漬の現状と今後の展開について。
「浅漬は節約志向の影響を受けていると感じている。賞味期限も1週間程度だと売場に貢献することが難しい。棚替えの度に浅漬のアイテムは集約されているという印象だ。浅漬は手軽に野菜を摂取できる手段だと考えており、そのような情報をもっと発信していく必要がある。また、商品の見える化も必要だと思っている。パッケージには最低限の情報が記載されているが、味や香りを伝えきれているのか。商品特徴を理解していただくためにポップを掲載するなど、作り手側から発信していくことが重要だ。当社の大容量商品は下段で販売されており、売場映えする。浅漬というよりはサラダ的な感覚で食べられている方が多いとイメージしている。キムチは漬物というよりは、キムチとして購入されていると思っている。浅漬も漬物ではなく、サラダや野菜摂取の手段の一つとして提案できれば市場が伸長する可能性がある」
‐『野菜を食べようプロジェクト』について。
「当社は農水省が実施している『野菜を食べようプロジェクト』の野菜サポーターとして、漬物を野菜を食べるための手段の一つとして積極的に提案している。現在、15アイテムに同プロジェクトのロゴマークが入っている。セールスポイントが明確でスポット提案も含めて、まだ商品を導入できていない量販店にも提案しやすい。バイヤーとしても売場展開した時のイメージがしやすい商品で、会社としてはこの商品を売っていこう、ということで販売を強化することができた。市場では浅漬が苦戦しており、これまでと違う打ち出し方が必要。そういった意味では当社はそれができていると思っている。導入が増えており、付加価値になっていると感じている。農林水産省の方からもお声がけをいただくなど、自信にもなっている」
‐仕入れ商品について。
「売上構成比は自社製品が6割で仕入れ商品が4割。自社製品も仕入れ商品も数量を伸ばしていきたいと考えている。今年も紀州梅が凶作の見通しで、沢庵も原料不安があるので、代替えとなる商品を落とし込んでいく。メーカーとの連携を強化し、情報を共有しながら対応していきたいと考えている」
‐今後の方向性は。
「労働人口が減るので人手不足が続く。それを解消すべく工場で機械化できるところは機械化を進める必要があるので、設備投資に力を入れていく。また、昨年ホームページをリニューアルして評価をいただいている。品質の向上、人手不足、社内の見える化など、共通認識を持ちながら、優先順位を付けて一つ一つ対応していく。当社は素材の鮮度感と風味を活かした商品作りを強みとしている。小回りが利いた商品提案も行っており、昨年はそこが評価された。その部分をさらに強化してニーズに合った商品を提供していきたいと考えている」
【2026(令和8)年5月11日第5229号8面】
株式会社天政松下 代表取締役社長 松下雄哉氏
株式会社とうがらしのやまだ 代表取締役社長 山田良太氏
将来見据え味を大転換
グループ牽引する存在へ
グループ牽引する存在へ
株式会社とうがらしのやまだ(山田良太社長、大阪市生野区)は、株式会社天政松下(松下雄哉社長、大阪市淀川区)のグループ会社として、本格キムチの製造販売を展開している。
社長を務めるのは、天政松下の元工場長であり、鶴橋の唐辛子問屋の長男というルーツを持つ、山田良太氏である。今期で6期目を迎え、主要商品の大幅リニューアルに踏み切った狙いと今後の戦略について、松下社長と山田社長に話を聞いた。
(大阪支社・小林悟空)
◇ ◇
‐6期目の業績は。
山田社長「増収が続いている。大手量販店での採用をきっかけに、他のチェーンでも導入が広がった。創業当初から天政松下グループが持つ強力な営業力を最大限に活かせている点は大きい。伸び代はまだまだあると確信している」
社長を務めるのは、天政松下の元工場長であり、鶴橋の唐辛子問屋の長男というルーツを持つ、山田良太氏である。今期で6期目を迎え、主要商品の大幅リニューアルに踏み切った狙いと今後の戦略について、松下社長と山田社長に話を聞いた。
(大阪支社・小林悟空)
◇ ◇
‐6期目の業績は。
山田社長「増収が続いている。大手量販店での採用をきっかけに、他のチェーンでも導入が広がった。創業当初から天政松下グループが持つ強力な営業力を最大限に活かせている点は大きい。伸び代はまだまだあると確信している」
‐好調な中、3月に商品のリニューアルを断行した。
松下社長「これまでの業績拡大は営業努力による部分が大きかったと見ている。得意先のID-POSデータを分析すると、リピート率が伸び悩んでおり、熱狂的なファンは存在するが、非常に『深く狭い』状態。量販店に広く導入を目指している弊社としては、リスクを恐れず、将来の拡大を見据えてスペック変更をして挑戦すべきだと決断した」
松下社長「これまでの業績拡大は営業努力による部分が大きかったと見ている。得意先のID-POSデータを分析すると、リピート率が伸び悩んでおり、熱狂的なファンは存在するが、非常に『深く狭い』状態。量販店に広く導入を目指している弊社としては、リスクを恐れず、将来の拡大を見据えてスペック変更をして挑戦すべきだと決断した」
‐リニューアルの内容は。
山田社長「唐辛子の辛さと濃厚な旨みを活かした本格的なキムチ、という核心部分は守りつつ、フルーツの甘みやカツオ出汁の旨みを加えた。一口食べた瞬間から美味しさを実感できるよう、大幅な転換を行っている。発売から間もないが、得意先からの評価は上々で、消費者からもポジティブな反応が得られている」
山田社長「唐辛子の辛さと濃厚な旨みを活かした本格的なキムチ、という核心部分は守りつつ、フルーツの甘みやカツオ出汁の旨みを加えた。一口食べた瞬間から美味しさを実感できるよう、大幅な転換を行っている。発売から間もないが、得意先からの評価は上々で、消費者からもポジティブな反応が得られている」
‐販売戦略について。
松下社長「キムチは拡大市場だが、最も競争が激しいカテゴリーでもある。特売で動く流動層もいるが、特定の銘柄を求める指名買い層が多い。競合が多いのは甘口・和風商品だが、当社は辛口・本格派商品として指名買いされるポジションを目指す。サイズ展開も80g、200g、350gの3形態を揃えることで、量販店の不足している量目や価格帯にフィットしやすいようにした。多少ユニットは割高でもリピートしてもらえる自信の商品が出来上がった。また、白菜以外にも割干大根キムチやチャンジャなどを組み合わせた売場提案を行い、日本有数のコリアンタウン・鶴橋のイメージを活かした訴求を強めていく」
松下社長「キムチは拡大市場だが、最も競争が激しいカテゴリーでもある。特売で動く流動層もいるが、特定の銘柄を求める指名買い層が多い。競合が多いのは甘口・和風商品だが、当社は辛口・本格派商品として指名買いされるポジションを目指す。サイズ展開も80g、200g、350gの3形態を揃えることで、量販店の不足している量目や価格帯にフィットしやすいようにした。多少ユニットは割高でもリピートしてもらえる自信の商品が出来上がった。また、白菜以外にも割干大根キムチやチャンジャなどを組み合わせた売場提案を行い、日本有数のコリアンタウン・鶴橋のイメージを活かした訴求を強めていく」
‐昨年、代表権のある社長に就任した。
山田社長「社会的責任の重みを痛感している。組織に守られる立場から、自ら『責任を取る』立場へと変わった。その責任を全うするためにも、安全・安心への取り組みにはこれまで以上に万全を期していく考えだ。弊社以外にもグループでこの数年で新しく立ち上げた会社も増え、いい意味の刺激もあり同じグループ内でも負けないよう牽引していきたい」
山田社長「社会的責任の重みを痛感している。組織に守られる立場から、自ら『責任を取る』立場へと変わった。その責任を全うするためにも、安全・安心への取り組みにはこれまで以上に万全を期していく考えだ。弊社以外にもグループでこの数年で新しく立ち上げた会社も増え、いい意味の刺激もあり同じグループ内でも負けないよう牽引していきたい」
‐グループ内の位置づけ。
松下社長「天政グループのメーカー部門を牽引する存在になると期待している。グループ内に若手経営者が増えたことで、組織全体の人材レベルアップにも繋がっている。食品製造以外でも、ホームページ制作・SNS運営の『ゼロべー』、POSデータ分析・RPA開発の『Tate』が順調に顧客を増やしている。挑戦の重要性や経営の面白さ、難しさを肌で感じながら、社員一丸となって成長していきたい」
松下社長「天政グループのメーカー部門を牽引する存在になると期待している。グループ内に若手経営者が増えたことで、組織全体の人材レベルアップにも繋がっている。食品製造以外でも、ホームページ制作・SNS運営の『ゼロべー』、POSデータ分析・RPA開発の『Tate』が順調に顧客を増やしている。挑戦の重要性や経営の面白さ、難しさを肌で感じながら、社員一丸となって成長していきたい」
【2026(令和8)年5月11日第5229号9面】
株式会社ピックルスホールディングス 代表取締役社長 影山直司氏
原料価格安定で減収増益 浅漬は商品構成を見直し
株式会社ピックルスホールディングス(影山直司社長、埼玉県所沢市)に2026年2月期の決算などについて話を聞いた。
2026年2月期は消費者の節約志向やアイテム集約の影響等により、売上高は前期比1・4%減の409億2300円で減収となったが、原料価格の安定や収益性向上施策が貢献して経常利益は同59・7%増の21億4800万円、営業利益は同63・0%増の20億8500万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同44・4%増の13億8400万円で増益となった。
苦戦が続く浅漬については、箸休めの位置付けからおかずやおつまみといった目的買いの対象となる新商品を下期以降に拡販予定で、商品ラインナップの見直しを図ることを明かした。(千葉友寛)
◇ ◇
‐大幅な増益となった2026年2月期決算の総括を。
「結果として減収増益となった。市場全体も同じだと思うが、浅漬の出荷量は前年割れとなった。キムチは比較的に堅調だったが、浅漬は厳しかった。それでもアイテム集約などの収益性向上施策を実施したことで利益を確保することができた。2025年2月期比で見ると利益面は大幅増となっているが、野菜の価格が高くて2025年2月期の第4四半期(12月から2月)は営業損失になるなど、2025年2月期は原料価格が安定していなかった。近年は夏の高温が冬まで影響を及ぼすようになっており、夏が暑くて秋に雨が降らないと野菜が育たず、原料価格も上昇する。今後もそのような天候が続くと予想され、弊社では原料仕入れの方法を工夫している。前期はそれらの結果を出すことができたと思っている」
‐浅漬が苦戦している要因は。
「昨年は米の価格が高かったので米を食べるシーンが減った。食品や生活用品などの価格も高くなっているので買い物かごに入れる点数が減少しており、使えるお金はさほど変わりないため箸休めの位置付けだと購入動機としては弱く厳しい状況が続いている。堅調なキムチや惣菜はおかずや料理の素材など購入動機が明確で、目的買いの対象になっている」
‐浅漬の商品開発について。
「浅漬については商品ラインナップの見直しを図りたいと考えている。少量で簡便性が高く、おかずの位置付けとなる商品の展開を計画している。おかずやおつまみの位置付けになると目的買いの対象となる。皿に移し替える必要がなく、蓋を開けてそのまま食べることができれば便利に利用できる。特殊な製法を採用して比較的日持ちも長く、美味しさも保持する。今期は減益を計画しているが、これらの商品を製造するために大きな設備投資を行う計画としている。浅漬の新商品は今期の後半から発売予定で、積極的に提案していく。イメージとしては日配で食べていただける惣菜風の商品。日配の浅漬売場もまだチャンスがあると思っている」
‐利益面について。
「売上が増えても利益が出ないと上場企業として評価をしていただけないので、前期は減収となっても、増益とする計画だった。アイテムを集約すれば売上は減る。当社は得意先ごとの専用商品が多かったのだが、NB商品の販売を強化して工場の生産性を向上させる取組を進めている。販売価格の見直しでは昨年5月に主力の『ご飯がススムキムチ』の価格改定と内容量変更を同時に行った。また、CVSの販促などで順調に推移した上期の業績に加え、下期も原料価格の安定や収益性向上施策が貢献した」
‐小売業界は再編が続いている。
「店舗数が減少している量販店もあるが、増えているところもある。どのような商品が求められているのか再認識する必要がある。ドラッグストアはチルドの売場を広げているところが増えているし、地方でスーパーがないところにも出店している。離れたスーパーよりも近くのCVSかドラッグストアで買い物をする流れになっている」
‐茨城工場の稼働状況は。
「稼働率は9割以上で目標に近いところまできている。茨城工場は週休2日としているが、稼働から1年が経って黒字になっている。生産量は1日10万パック。当社内の一部の工場では2交代制のところもあるが、茨城工場の稼働によって大宮ファクトリーで夜勤を止めるなど首都圏も日勤の生産体制に転換していく予定。人手を確保することは困難になってきており、夜勤の人件費負担も大きい。東北や中京・北陸エリアの生産分も茨城工場に集約していく」
‐今後の価格改定について。
「今後も人件費や物流費は上昇していくので、価格改定はせざるを得ないと考えている。原料についても生産農家が再生産可能な価格に設定しないと原料が確保できなくなる。また、中東情勢の影響で包材関係の価格も上がっていく。上がった分のコストを全て商品価格に転嫁できるかどうかは分からないが、適正な価格にしないと事業の継続が困難になる。消費者の志向を注意深くとらえながら適正価格を模索していく必要がある」
‐漬物市場の可能性について。
「付加価値や機能性を伝えていくことが重要だ。漬物が食卓にあると食が豊かになり、プラスになるという提案をしていきたい。メーカーは家庭でできない工夫を商品に織り込み、食べると健康につながる、というイメージに繋げていければマーケットは広がる。野菜の食物繊維や乳酸菌の摂取、発酵といった視点から情報を発信し、健康のイメージにつなげていければと思っている。そのためにはエビデンスも必要で、今後はその部分にも取り組んでいきたい。当社は野菜・発酵・健康の総合メーカーをありたい姿として、新たな価値を創造し続けていきたいと考えている」
【2026(令和8)年5月11日第5229号10面】
ピックルスホールディングス
◇ ◇
‐大幅な増益となった2026年2月期決算の総括を。
「結果として減収増益となった。市場全体も同じだと思うが、浅漬の出荷量は前年割れとなった。キムチは比較的に堅調だったが、浅漬は厳しかった。それでもアイテム集約などの収益性向上施策を実施したことで利益を確保することができた。2025年2月期比で見ると利益面は大幅増となっているが、野菜の価格が高くて2025年2月期の第4四半期(12月から2月)は営業損失になるなど、2025年2月期は原料価格が安定していなかった。近年は夏の高温が冬まで影響を及ぼすようになっており、夏が暑くて秋に雨が降らないと野菜が育たず、原料価格も上昇する。今後もそのような天候が続くと予想され、弊社では原料仕入れの方法を工夫している。前期はそれらの結果を出すことができたと思っている」
‐浅漬が苦戦している要因は。
「昨年は米の価格が高かったので米を食べるシーンが減った。食品や生活用品などの価格も高くなっているので買い物かごに入れる点数が減少しており、使えるお金はさほど変わりないため箸休めの位置付けだと購入動機としては弱く厳しい状況が続いている。堅調なキムチや惣菜はおかずや料理の素材など購入動機が明確で、目的買いの対象になっている」
‐浅漬の商品開発について。
「浅漬については商品ラインナップの見直しを図りたいと考えている。少量で簡便性が高く、おかずの位置付けとなる商品の展開を計画している。おかずやおつまみの位置付けになると目的買いの対象となる。皿に移し替える必要がなく、蓋を開けてそのまま食べることができれば便利に利用できる。特殊な製法を採用して比較的日持ちも長く、美味しさも保持する。今期は減益を計画しているが、これらの商品を製造するために大きな設備投資を行う計画としている。浅漬の新商品は今期の後半から発売予定で、積極的に提案していく。イメージとしては日配で食べていただける惣菜風の商品。日配の浅漬売場もまだチャンスがあると思っている」
‐利益面について。
「売上が増えても利益が出ないと上場企業として評価をしていただけないので、前期は減収となっても、増益とする計画だった。アイテムを集約すれば売上は減る。当社は得意先ごとの専用商品が多かったのだが、NB商品の販売を強化して工場の生産性を向上させる取組を進めている。販売価格の見直しでは昨年5月に主力の『ご飯がススムキムチ』の価格改定と内容量変更を同時に行った。また、CVSの販促などで順調に推移した上期の業績に加え、下期も原料価格の安定や収益性向上施策が貢献した」
‐小売業界は再編が続いている。
「店舗数が減少している量販店もあるが、増えているところもある。どのような商品が求められているのか再認識する必要がある。ドラッグストアはチルドの売場を広げているところが増えているし、地方でスーパーがないところにも出店している。離れたスーパーよりも近くのCVSかドラッグストアで買い物をする流れになっている」
‐茨城工場の稼働状況は。
「稼働率は9割以上で目標に近いところまできている。茨城工場は週休2日としているが、稼働から1年が経って黒字になっている。生産量は1日10万パック。当社内の一部の工場では2交代制のところもあるが、茨城工場の稼働によって大宮ファクトリーで夜勤を止めるなど首都圏も日勤の生産体制に転換していく予定。人手を確保することは困難になってきており、夜勤の人件費負担も大きい。東北や中京・北陸エリアの生産分も茨城工場に集約していく」
‐今後の価格改定について。
「今後も人件費や物流費は上昇していくので、価格改定はせざるを得ないと考えている。原料についても生産農家が再生産可能な価格に設定しないと原料が確保できなくなる。また、中東情勢の影響で包材関係の価格も上がっていく。上がった分のコストを全て商品価格に転嫁できるかどうかは分からないが、適正な価格にしないと事業の継続が困難になる。消費者の志向を注意深くとらえながら適正価格を模索していく必要がある」
‐漬物市場の可能性について。
「付加価値や機能性を伝えていくことが重要だ。漬物が食卓にあると食が豊かになり、プラスになるという提案をしていきたい。メーカーは家庭でできない工夫を商品に織り込み、食べると健康につながる、というイメージに繋げていければマーケットは広がる。野菜の食物繊維や乳酸菌の摂取、発酵といった視点から情報を発信し、健康のイメージにつなげていければと思っている。そのためにはエビデンスも必要で、今後はその部分にも取り組んでいきたい。当社は野菜・発酵・健康の総合メーカーをありたい姿として、新たな価値を創造し続けていきたいと考えている」
【2026(令和8)年5月11日第5229号10面】
ピックルスホールディングス
西海食品株式会社 常務取締役 高見祐貴氏
漬物のプロとして商品提案 今はディフェンスを固める
西海食品株式会社(高見健二社長、東京都板橋区)の高見祐貴常務取締役にインタビュー。前期決算や浅漬の売れ行きなどについて話を聞いた。前期は原料価格の安定や価格改定等が寄与して増収となった。今後は漬物専業ベンダーとしての強みを活かしながら、商品力、提案力、企業力を高めて差別化を図った商品や売場を提案していく考えを示した。(千葉友寛)
◇ ◇
‐前期決算について。
「当社は12月決算で漬物は前年比で4%増となった。前年より原料野菜の価格が安定していたのでマイナス幅が少なかったことと、価格改定が寄与した。人件費や包材関係の価格が上がっているので得意先に理解していただき、収益性が向上した。昨年は数量が5~7%減となったが、約10%の値上げを行ったので売上が上昇した。下期は数量が10%程度の減少となり、金額は2、3%の減少となった。人件費の他、中東情勢の影響で包装資材の価格が6月から約30%上がるのだが、安定的に入ってくるわけではない。新商品を作りたくてもそちらの方まで手が回らないということで、既存のものを販売していくしかない状況だ。今年2月に池上彰さんの講演を聞く機会があったのだが、池上さんは今後の世界情勢や経済状況について『トランプさん次第』と言っていたが、まさしくその通りになっていて、極端に言えば今後の見通しはトランプさんにしか分からない状況となっている」
‐浅漬の売れ行きは。
「浅漬の売上は10%以上のマイナスとなっており、低調な動きが続いている。諸物価が上がっている状況で、白菜や胡瓜の価格は安定しており、加工度が低い浅漬は代替が利くことから購入の対象から外れる流れとなっている。スーパーの売場を見ても浅漬の面積は減少しており、販促の機会も減っている。以前から指摘されているロス率が高いことも影響している他、肥料の価格も上がっているので野菜価格も上がることが想定される。マイナス要因が多く、増える要素を見出せない状況が続いている。瓜や水なすなど、希少性を強みとして当社にしかできない商品を供給する。また、後発だが、トップフィルムのキムチを新発売し、生産と販売を強化してキムチ市場のシェアを取っていきたいと考えている」
‐漬物専業ベンダーの強み。
「当社に商品を納入していただいている企業で組織された西誠会のメーカーと連携し、漬物専業ベンダーだからこその販売手法の提案や希少性が高い地方の産品や、旬の商品を案内する。当社は漬物のプロとしてメーカーや商品の良さを引き出しながら、トータルで売り場づくりをすることができる。同じ商品でも提案の仕方で印象が違うため、差別化を図った商品や売場を提案していきたい」
‐今後の値上げについて。
「物価高の他、漬物も値上げが続いているので消費者がついてこれなくなってきている。値上げをすれば売れなくなる状況だが、原材料価格や人件費は上がり続けており、製品価格に転嫁しないと利益を出すことができなくなる。どうすれば良いのか明確な答えはないのだが、漬物の価値を上げて食卓に欠かせないものであるということをPRしなければ需要は減るばかりだ。漬物は日本が世界に誇る伝統的な食品で、健康にも寄与できる存在だということを再認識していただく必要がある。PRや情報発信などの取組は一社だけの力では弱いので、業界としてやっていければと思っている」
‐今後の方向性。
「業界としては塩分の問題など、ネガティブなイメージを払拭し、漬物の価値を高める取組が必要だ。我々においては商品力を高めることが大事。他社と同じような商品だとどちらでも良いということになり、簡単に代替えされてしまう。小売店にはこの商品を売りたい、と思っていただけるような商品を提供しなければならない。また、ベンダーとしても提案力や企業力を高めながら、売場を確保していくことが重要。今はディフェンスを固めてチャンスを伺いたいと思っている」
【2026(令和8)年5月11日第5229号10面】
◇ ◇
‐前期決算について。
「当社は12月決算で漬物は前年比で4%増となった。前年より原料野菜の価格が安定していたのでマイナス幅が少なかったことと、価格改定が寄与した。人件費や包材関係の価格が上がっているので得意先に理解していただき、収益性が向上した。昨年は数量が5~7%減となったが、約10%の値上げを行ったので売上が上昇した。下期は数量が10%程度の減少となり、金額は2、3%の減少となった。人件費の他、中東情勢の影響で包装資材の価格が6月から約30%上がるのだが、安定的に入ってくるわけではない。新商品を作りたくてもそちらの方まで手が回らないということで、既存のものを販売していくしかない状況だ。今年2月に池上彰さんの講演を聞く機会があったのだが、池上さんは今後の世界情勢や経済状況について『トランプさん次第』と言っていたが、まさしくその通りになっていて、極端に言えば今後の見通しはトランプさんにしか分からない状況となっている」
‐浅漬の売れ行きは。
「浅漬の売上は10%以上のマイナスとなっており、低調な動きが続いている。諸物価が上がっている状況で、白菜や胡瓜の価格は安定しており、加工度が低い浅漬は代替が利くことから購入の対象から外れる流れとなっている。スーパーの売場を見ても浅漬の面積は減少しており、販促の機会も減っている。以前から指摘されているロス率が高いことも影響している他、肥料の価格も上がっているので野菜価格も上がることが想定される。マイナス要因が多く、増える要素を見出せない状況が続いている。瓜や水なすなど、希少性を強みとして当社にしかできない商品を供給する。また、後発だが、トップフィルムのキムチを新発売し、生産と販売を強化してキムチ市場のシェアを取っていきたいと考えている」
‐漬物専業ベンダーの強み。
「当社に商品を納入していただいている企業で組織された西誠会のメーカーと連携し、漬物専業ベンダーだからこその販売手法の提案や希少性が高い地方の産品や、旬の商品を案内する。当社は漬物のプロとしてメーカーや商品の良さを引き出しながら、トータルで売り場づくりをすることができる。同じ商品でも提案の仕方で印象が違うため、差別化を図った商品や売場を提案していきたい」
‐今後の値上げについて。
「物価高の他、漬物も値上げが続いているので消費者がついてこれなくなってきている。値上げをすれば売れなくなる状況だが、原材料価格や人件費は上がり続けており、製品価格に転嫁しないと利益を出すことができなくなる。どうすれば良いのか明確な答えはないのだが、漬物の価値を上げて食卓に欠かせないものであるということをPRしなければ需要は減るばかりだ。漬物は日本が世界に誇る伝統的な食品で、健康にも寄与できる存在だということを再認識していただく必要がある。PRや情報発信などの取組は一社だけの力では弱いので、業界としてやっていければと思っている」
‐今後の方向性。
「業界としては塩分の問題など、ネガティブなイメージを払拭し、漬物の価値を高める取組が必要だ。我々においては商品力を高めることが大事。他社と同じような商品だとどちらでも良いということになり、簡単に代替えされてしまう。小売店にはこの商品を売りたい、と思っていただけるような商品を提供しなければならない。また、ベンダーとしても提案力や企業力を高めながら、売場を確保していくことが重要。今はディフェンスを固めてチャンスを伺いたいと思っている」
【2026(令和8)年5月11日第5229号10面】
西海食品
<理事長に聞く>
栃木県漬物工業協同組合 理事長 遠藤栄一氏
トップは捨てる勇気も必要
変化するために多くを学ぶ
栃木県漬物工業協同組合の遠藤栄一理事長(遠藤食品株式会社社長)にインタビュー。業界の現状などについて話を聞いた。円安の影響や包装資材の値上がりが問題となる中、トップとしての考え方や変化の重要性を指摘。漬物以外にも幅広い分野に造詣が深い秋本薫前理事長(現副理事長、株式会社アキモ社長)から多くのことを学びながら、時代の変化に対応していくためのヒントをつかむ活動を行っていくことを改めて強調した。(千葉友寛)
◇ ◇
‐業界の現状は。
「業界を取り巻く環境は厳しさを増している。厳しい状況はどこも同じだと思うが、その中でも輸入原料を扱っているところは円安の影響が大きく、同じものを輸入しても以前の3割高になっている。しかし、販売価格はそこまで上げ切れておらず、各社の収益を圧迫している。それ以外にも緊迫化する中東情勢の影響もあって包装資材や調味料、運賃は上がり続けており、人件費も上昇している。世界との格差は広がる一方で、原料を他国に買い負けるケースも出てきている」
‐変化が求められている。
「厳しい環境の中にあって変わらなくてはならないのがトップだ。トップが時代に合った考え方にならないと会社は取り残される。また、やり方としてはトップの考えを社員に押し付けるのではなく、考えや方向性を理解してもらって共有できるかが重要だ。当社においては給料のベースアップと社員の休日を増やすようにすることが私の仕事だと思っており、それを社員にも伝えている。苦しい中でもやれることはある。会社全体が同じ方向に向かっていかないと大きな力にならない。従来からのやり方や考え方にとらわれがちだが、新しいことに取り組んでいくためには捨てる勇気や覚悟も必要。それを選択するのがトップの役割だ」
‐秋本前理事長が講演の講師を務めている。
「我々にとって秋本薫前理事長(現副理事長)は非常に大きな存在だ。栃木漬協では漬物以外にも造詣が深い秋本副理事長が講演会の講師を務めていただくことが多く、DX化の重要性について勉強させていただいている。3月24日に開催した総会では『為せば成る』の演題で、上杉鷹山の生涯やエピソードなどを解説しながら、現代のビジネスリーダーに必要な率先垂範、謙虚さ、誠実さなどの重要性を教えていただいた。これまで私も過去の成功事例から学べ、と言われてきた。歴史から学ぶことはとても大切なことで、人の話を聞きながら時代の流れに遅れることなく変化していく必要があり、これからは人の格差もますます出てくると思っている」
‐栃木県の魅力は。
「栃木県の漬物出荷金額は全国4位(2023年)で、漬物の生産が盛んに行われている漬物王国。中でも酢漬生産量は日本一を誇っている。また、2018年3月に私が全漬連のHACCP手引書作成検討委員会委員長として、小規模事業者向けHACCP手引書作成に携わらせていただいた。その他、漬物1食当りの塩分はあまり多くないということをPRするために栄養成分表示を現在主流となっている100gから1食分の量、つまり常食量にする取組も全国に先駆けて栃木県からスタートしている。これからも業界に貢献できるように活動していきたい」
‐組合活動について。
「組合事業としては5月に技能実習評価試験、6月に衛生講習会、10月にあしかがフラワーパークで異業種研究会を開催する。人と会わないと何も始まらない。会社に閉じこもっていても知識を得られないし、情報も入ってこない。色々な人と交流することで自分達の立ち位置も分かる。体験できる場も設けながら、多くのことを学べる環境を作っていきたいと考えている。今の時代はこれまでのやり方や常識が通じなくなってきている。ダーウィンの進化論に『変化に対応できない者は生き残れない』とあるが、それは人間も組合も同じだと思う。変化するためには色々なことを学ばなければならない。そのためのヒントやきっかけを得られる活動をしていきたいと考えている」
【2026(令和8)年4月11日第5226号2面】
◇ ◇
‐業界の現状は。
「業界を取り巻く環境は厳しさを増している。厳しい状況はどこも同じだと思うが、その中でも輸入原料を扱っているところは円安の影響が大きく、同じものを輸入しても以前の3割高になっている。しかし、販売価格はそこまで上げ切れておらず、各社の収益を圧迫している。それ以外にも緊迫化する中東情勢の影響もあって包装資材や調味料、運賃は上がり続けており、人件費も上昇している。世界との格差は広がる一方で、原料を他国に買い負けるケースも出てきている」
‐変化が求められている。
「厳しい環境の中にあって変わらなくてはならないのがトップだ。トップが時代に合った考え方にならないと会社は取り残される。また、やり方としてはトップの考えを社員に押し付けるのではなく、考えや方向性を理解してもらって共有できるかが重要だ。当社においては給料のベースアップと社員の休日を増やすようにすることが私の仕事だと思っており、それを社員にも伝えている。苦しい中でもやれることはある。会社全体が同じ方向に向かっていかないと大きな力にならない。従来からのやり方や考え方にとらわれがちだが、新しいことに取り組んでいくためには捨てる勇気や覚悟も必要。それを選択するのがトップの役割だ」
‐秋本前理事長が講演の講師を務めている。
「我々にとって秋本薫前理事長(現副理事長)は非常に大きな存在だ。栃木漬協では漬物以外にも造詣が深い秋本副理事長が講演会の講師を務めていただくことが多く、DX化の重要性について勉強させていただいている。3月24日に開催した総会では『為せば成る』の演題で、上杉鷹山の生涯やエピソードなどを解説しながら、現代のビジネスリーダーに必要な率先垂範、謙虚さ、誠実さなどの重要性を教えていただいた。これまで私も過去の成功事例から学べ、と言われてきた。歴史から学ぶことはとても大切なことで、人の話を聞きながら時代の流れに遅れることなく変化していく必要があり、これからは人の格差もますます出てくると思っている」
‐栃木県の魅力は。
「栃木県の漬物出荷金額は全国4位(2023年)で、漬物の生産が盛んに行われている漬物王国。中でも酢漬生産量は日本一を誇っている。また、2018年3月に私が全漬連のHACCP手引書作成検討委員会委員長として、小規模事業者向けHACCP手引書作成に携わらせていただいた。その他、漬物1食当りの塩分はあまり多くないということをPRするために栄養成分表示を現在主流となっている100gから1食分の量、つまり常食量にする取組も全国に先駆けて栃木県からスタートしている。これからも業界に貢献できるように活動していきたい」
‐組合活動について。
「組合事業としては5月に技能実習評価試験、6月に衛生講習会、10月にあしかがフラワーパークで異業種研究会を開催する。人と会わないと何も始まらない。会社に閉じこもっていても知識を得られないし、情報も入ってこない。色々な人と交流することで自分達の立ち位置も分かる。体験できる場も設けながら、多くのことを学べる環境を作っていきたいと考えている。今の時代はこれまでのやり方や常識が通じなくなってきている。ダーウィンの進化論に『変化に対応できない者は生き残れない』とあるが、それは人間も組合も同じだと思う。変化するためには色々なことを学ばなければならない。そのためのヒントやきっかけを得られる活動をしていきたいと考えている」
【2026(令和8)年4月11日第5226号2面】
”中の人”に聞く
ダイニチ食品株式会社 製造部主任 山本優菜氏
食卓の「当たり前」へ
“愛知応援”が生んだ繋がり
“愛知応援”が生んだ繋がり
ダイニチ食品株式会社(磯貝幸弘社長、愛知県東海市)のインスタグラムが今、愛知の食卓を賑わせている。投稿の主役は、色鮮やかな漬物レシピと、垣根を越えた近隣企業とのコラボレーションだ。その「中の人」を務めるのは、製造部主任であり商品開発を担う山本優菜氏。「愛知応援」を掲げる情熱と、運用の裏側にある想いを聞いた。
(大阪支社・小林悟空)
(大阪支社・小林悟空)
◇ ◇
―― 商品開発について。
「『食卓に漬物があるのが当たり前になること』をテーマにしています。漬物は生活に彩りを添える嗜好品ですが、同時に日々の食に寄り添う存在です。だからこそ、日常使いしづらい価格になってしまえば、そのテーマに反します。現在は新商品の開発と、既存商品の維持・改善という二つの軸で動いていますが、昨今の物価高の影響は大きいです。コストを抑えつつ、いかに味を落とさず、あるいは向上させていくかという作業の比重が高まっているのが現状です」
―― そんな中、「愛知のキムチ」が話題に。
「この商品は“愛知応援キムチ”として、地元の食卓を明確なターゲットに据えて具体化しました。2021年に発売すると、あっという間に『糖絞り生一本』と並ぶ当社の2枚看板の一つになりました。具材には愛知県産素材を使用しているのですが、驚いたのは協力をお願いした各企業が、最初から快く素材を提供してくれたこと。愛知には魅力的な食材が他にもたくさんあり、まだ使い切れていないほど。いつか『愛知シリーズ』の第二弾にも挑戦したいです」
―― インスタグラムはレシピを主体に運用している。
「漬物はすでに味が決まっていてカットも済んでいる究極の時短野菜であり、生野菜から調理するよりも失敗がなく、簡単に一品が完成します。その利便性を伝え、まずは漬物に興味を持ってもらうことが運用の第一目的です」
―― 他企業とのコラボ投稿が増えている。
「『愛知のキムチ』の開発を通じて知った地元の食材を、もっと多くの人に知ってほしいという思いが強くなりました。自社製品だけでなく他社のアイテムも積極的に紹介し、自らを“愛知応援企業”と位置づけて発信を続けました。すると、その姿勢を面白いと感じてくれる企業が増え、向こうからも『一緒にやりませんか』と声がかかるようになりました。商品開発に関する意見交換などの交流も生まれており、インスタグラムは発信以上の価値を生み出しています」
―― 運用して手応えを感じた瞬間は。
「運用を始めたのは2019年。企業アカウントとしては周回遅れだったかもしれませんが、思いは発信しなければ伝わらないと信じて続けてきました。3月末には、ようやくフォロワーも1000人に到達しました。『愛知を盛り上げたい』という熱意が少しずつ共感され、応援されるようになってきたと感じています」
「『食卓に漬物があるのが当たり前になること』をテーマにしています。漬物は生活に彩りを添える嗜好品ですが、同時に日々の食に寄り添う存在です。だからこそ、日常使いしづらい価格になってしまえば、そのテーマに反します。現在は新商品の開発と、既存商品の維持・改善という二つの軸で動いていますが、昨今の物価高の影響は大きいです。コストを抑えつつ、いかに味を落とさず、あるいは向上させていくかという作業の比重が高まっているのが現状です」
―― そんな中、「愛知のキムチ」が話題に。
「この商品は“愛知応援キムチ”として、地元の食卓を明確なターゲットに据えて具体化しました。2021年に発売すると、あっという間に『糖絞り生一本』と並ぶ当社の2枚看板の一つになりました。具材には愛知県産素材を使用しているのですが、驚いたのは協力をお願いした各企業が、最初から快く素材を提供してくれたこと。愛知には魅力的な食材が他にもたくさんあり、まだ使い切れていないほど。いつか『愛知シリーズ』の第二弾にも挑戦したいです」
―― インスタグラムはレシピを主体に運用している。
「漬物はすでに味が決まっていてカットも済んでいる究極の時短野菜であり、生野菜から調理するよりも失敗がなく、簡単に一品が完成します。その利便性を伝え、まずは漬物に興味を持ってもらうことが運用の第一目的です」
―― 他企業とのコラボ投稿が増えている。
「『愛知のキムチ』の開発を通じて知った地元の食材を、もっと多くの人に知ってほしいという思いが強くなりました。自社製品だけでなく他社のアイテムも積極的に紹介し、自らを“愛知応援企業”と位置づけて発信を続けました。すると、その姿勢を面白いと感じてくれる企業が増え、向こうからも『一緒にやりませんか』と声がかかるようになりました。商品開発に関する意見交換などの交流も生まれており、インスタグラムは発信以上の価値を生み出しています」
―― 運用して手応えを感じた瞬間は。
「運用を始めたのは2019年。企業アカウントとしては周回遅れだったかもしれませんが、思いは発信しなければ伝わらないと信じて続けてきました。3月末には、ようやくフォロワーも1000人に到達しました。『愛知を盛り上げたい』という熱意が少しずつ共感され、応援されるようになってきたと感じています」
【2026(令和8)年4月1日第5225号4面】
ダイニチ食品
3月21日号 梅干・梅漬関連商材ラインナップ
中田食品株式会社 代表取締役社長 中田吉昭氏
『梅ぼし田舎漬』発売が転機に 中国産で売場をカバー
中田食品株式会社(和歌山県田辺市)の中田吉昭社長にインタビュー。今年1月29日に食品産業優良企業等表彰において食品産業部門(農商工連携推進タイプ)で農林水産大臣賞を受賞したことや梅干しの売れ行きなどについて話を聞いた。59年前に発売した調味梅干し『梅ぼし田舎漬』が紀南地域の梅産業にとって大きな転機となったことを明かし、同社を支えてくれた農家をはじめ多くの関連企業、得意先、取引先に改めて感謝の意を表した。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐今年1月に発表された第47回食品産業優良企業等表彰において農林水産大臣賞を受賞した。
「当社は紀州の名産品である梅を使って梅干しを作ってきた。長年にわたって梅干し作りを行うことができたのは、農家の方の努力や多くの関連企業、得意先、取引先の皆様の支えがあったから。我々は梅がなければ事業をすることができないし、このような栄誉ある賞を受賞することもできなかった。支えていただいた皆様には心から感謝している」
‐調味梅干しの市場を開拓した。
「59年前に先代が減塩した調味梅干し『梅ぼし田舎漬』を作ったことが大きな転機となった。各社でも調味梅干しを作り始めていたのだが、『梅ぼし田舎漬』が通販で早い段階でヒットし、量販店で販売されるようになった。ここから量販店向けの商品が続々と登場し、通販やギフト以外の販売チャネルを開拓することができた」
‐「梅ぼし田舎漬」を商品化した経緯。
「『梅ぼし田舎漬』は当初、台湾産の原料で北海道の一般向け商品として発売した。その当時、私の母が病気から回復し、快気祝いで紀州産の梅で作った『梅ぼし田舎漬』をお返しで贈ったところ、それが評判になり通販で販売するようになった。それが予想以上に売れて原料が足りなくなってしまった。そこから各社が積極的に紀州梅で調味梅干しを作るようになり、農家も梅が良い価格で売れる、ということで栽培が広がった。来年、発売60周年を迎える『梅ぼし田舎漬』は、紀州における梅の生産量が増えるきっかけとなった商品で、産地の発展に寄与することができたと思っている」
‐今年の梅の開花状況について。
「JAの発表によると、蕾の数は平年の7、8割で昨年よりも少ない。一部地域では開花が早かったため、めしべがない花もあったと聞いている。だが、花が咲き始めたあとから寒波がきたことで開花が遅れ、2月上旬から中旬が満開期となった。この期間は平年と同じタイミングで、今年は開花期間が長く天候も良かった。不安材料もあるが紀州梅は2年不作が続いているので、平年並みの作柄を期待している」
‐梅干しの売れ行きは。
「売上はほぼ前年並みで推移している。紀州梅は2年連続の不作のため、値上げをして出荷にブレーキをかけざるを得ない状況だ。当社は中国梅があるので売場をカバーし、何とか売上を作ることができている。しかし中国梅相場も強含みで更に極端な円安が続き、高コストで厳しい状況から、昨年の秋は価格改定や内容量調整など、様々な形で国産と中国産の値上げを実施した。中国産の原料在庫は問題ないが、紀州産はすでに休売している商品もあるなど、夏の需要期に向けて不安もある」
‐販売面の課題は。
「昨年は7割作と作柄も悪かったのだが、4月に雹が4回も降ったため傷が入ったり、えぐれてしまっているような梅が多かった。量がないので質が落ちても価格は上がる、ということを得意先に説明して理解していただけるよう努力しているのだが、消費者は今までに見たことがないような傷や黒くなっている実を受け入れることができず、クレームになってしまった。現在販売されている紀州産商品はいずれもアッパー気味の価格帯となっており、消費マインドが低下するなか中国産を代替え商品として販売し、良い売れ行きを見せている。ただ、和歌山では中国産を扱っていないメーカーも多く、これから夏の商戦に向けて原料が足りなくなる、といったケースが出てくる可能性もある。新物が出てくれば一息つくことができるし、平年作であれば1年間販売できる量を確保することができる。厳しい状況が続く見通しだが、中国梅を活用しながら何とか乗り切っていきたいと考えている」
【2026(令和8)年3月21日第5224号2面】
(千葉友寛)
◇ ◇
‐今年1月に発表された第47回食品産業優良企業等表彰において農林水産大臣賞を受賞した。
「当社は紀州の名産品である梅を使って梅干しを作ってきた。長年にわたって梅干し作りを行うことができたのは、農家の方の努力や多くの関連企業、得意先、取引先の皆様の支えがあったから。我々は梅がなければ事業をすることができないし、このような栄誉ある賞を受賞することもできなかった。支えていただいた皆様には心から感謝している」
‐調味梅干しの市場を開拓した。
「59年前に先代が減塩した調味梅干し『梅ぼし田舎漬』を作ったことが大きな転機となった。各社でも調味梅干しを作り始めていたのだが、『梅ぼし田舎漬』が通販で早い段階でヒットし、量販店で販売されるようになった。ここから量販店向けの商品が続々と登場し、通販やギフト以外の販売チャネルを開拓することができた」
‐「梅ぼし田舎漬」を商品化した経緯。
「『梅ぼし田舎漬』は当初、台湾産の原料で北海道の一般向け商品として発売した。その当時、私の母が病気から回復し、快気祝いで紀州産の梅で作った『梅ぼし田舎漬』をお返しで贈ったところ、それが評判になり通販で販売するようになった。それが予想以上に売れて原料が足りなくなってしまった。そこから各社が積極的に紀州梅で調味梅干しを作るようになり、農家も梅が良い価格で売れる、ということで栽培が広がった。来年、発売60周年を迎える『梅ぼし田舎漬』は、紀州における梅の生産量が増えるきっかけとなった商品で、産地の発展に寄与することができたと思っている」
‐今年の梅の開花状況について。
「JAの発表によると、蕾の数は平年の7、8割で昨年よりも少ない。一部地域では開花が早かったため、めしべがない花もあったと聞いている。だが、花が咲き始めたあとから寒波がきたことで開花が遅れ、2月上旬から中旬が満開期となった。この期間は平年と同じタイミングで、今年は開花期間が長く天候も良かった。不安材料もあるが紀州梅は2年不作が続いているので、平年並みの作柄を期待している」
‐梅干しの売れ行きは。
「売上はほぼ前年並みで推移している。紀州梅は2年連続の不作のため、値上げをして出荷にブレーキをかけざるを得ない状況だ。当社は中国梅があるので売場をカバーし、何とか売上を作ることができている。しかし中国梅相場も強含みで更に極端な円安が続き、高コストで厳しい状況から、昨年の秋は価格改定や内容量調整など、様々な形で国産と中国産の値上げを実施した。中国産の原料在庫は問題ないが、紀州産はすでに休売している商品もあるなど、夏の需要期に向けて不安もある」
‐販売面の課題は。
「昨年は7割作と作柄も悪かったのだが、4月に雹が4回も降ったため傷が入ったり、えぐれてしまっているような梅が多かった。量がないので質が落ちても価格は上がる、ということを得意先に説明して理解していただけるよう努力しているのだが、消費者は今までに見たことがないような傷や黒くなっている実を受け入れることができず、クレームになってしまった。現在販売されている紀州産商品はいずれもアッパー気味の価格帯となっており、消費マインドが低下するなか中国産を代替え商品として販売し、良い売れ行きを見せている。ただ、和歌山では中国産を扱っていないメーカーも多く、これから夏の商戦に向けて原料が足りなくなる、といったケースが出てくる可能性もある。新物が出てくれば一息つくことができるし、平年作であれば1年間販売できる量を確保することができる。厳しい状況が続く見通しだが、中国梅を活用しながら何とか乗り切っていきたいと考えている」
【2026(令和8)年3月21日第5224号2面】
中田食品
紀州みなべ梅干協同組合 理事長 殿畑雅敏氏
原料不足は大きな不安要素 反収増で生産量維持へ
紀州みなべ梅干協同組合理事長の殿畑雅敏氏(株式会社トノハタ社長)にインタビュー。紀州産梅の原料状況と製品の売れ行きなどについて話を聞いた。産地の課題として生産者の高齢化などが挙げられるが、殿畑理事長は次の世代に産地を継承していくため「生産性の向上は必要不可欠」と指摘。行政に生産性の高い圃場の拡大を要望し、反収を上げる取組を実施することが生産量の維持につながることを強調した。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐紀州産の原料状況と製品の売れ行きは。
「非常に厳しい状況となっている。2連続の不作によって2年続けて値上げが実施されているので、製品の売れ行きは良くない。昨年のエンゲル係数は28・6%で44年ぶりの高水準となっており、消費者の財布の紐は一昨年より硬くなっている。紀州産は2年連続の不作で原料がなく、出荷を抑えての販売を余儀なくされている。当社も含めて中国産を販売しているところは代替え商品として売場を確保することができるが、紀州産しか扱っていない企業は原料がなければ商品を供給することができず、売上も減少することになる。夏場の売れ行きは分からないが、今年の6月に収穫される梅が使えるようになるのは10月以降。原料がないと動くことができず、売上も増やすことができない。春から夏にかけて原料の問題は大きな不安要素となっている」
‐中国産の売れ行きが好調となっている。
「活発に動いているところとそうではないところで差がある。中国の現地パックで価格訴求型の商品が多く出回っている。価格に対する消費者のニーズは高まるばかりで、梅も手頃な価格で購入したいという人が増えている。紀州産は2年連続の値上げで割高感が出てしまっている」
‐製造コストも上昇している。
「毎年値上げされている段ボールは4年前の約1・5倍になっている他、調味料や容器も上がっている。また昨今のイラン問題による原油高騰は、近々の容器や物流コスト上昇となることは避けて通れない。一方26年産の作柄については現時点で3年連続の凶作の見込みで、原料価格について不透明な状況。梅はおととしの秋から値上げが実施されており、数量が減っている。しかし、値上げした分がプラスとなり、金額ベースでは前年を上回っていた。だが、昨年10月に2年連続の値上げを実施したところ、数量がさらに減って売上もマイナスで推移するようになっている」
‐組合での対応策について。
「紀州みなべ梅干協同組合では紀州田辺梅干協同組合と合同で、昨年の紀州梅の作柄は災害であるとの認識の下、県に対して雇用調整助成金の企業負担分の負担のお願い、低金利で新規融資を受け入れられるような環境を整えていただきたい、という旨を国と県に陳情した。しかし、結果としては難しいということで、中小企業庁のセーフティネット保証5号など、現行制度の範囲内で各社にて取り組んでいただくしかない状況となっている」
‐生産者の高齢化が進む産地の課題は。
「行政に生産性の高い圃場の拡大を要望している。次の若い世代に梅の産地や文化を継承していくためには生産性の向上は必要不可欠。紀州も生産者の高齢化が進み、数も減少している。生産量を維持するためには反収を上げる必要がある。平坦地での生産は最も効果的な手段で、傾斜地の同じ面積で比較すると3、4倍の反収になる。つまり、現在の3分の1の営農で同じ生産量になる、ということ。民間でパイロット事業を行うことは難しいので、国や県にリーダーになっていただき、産地保全の観点からも取り組んでいただきたいと思っている。1社の声では大きな力にはならないので、このようなことについて声を上げることは組合の役割でもあると考えている」
【2026(令和8)年3月21日第5224号3面】
紀州みなべ梅干協同組合理事長の殿畑雅敏氏(株式会社トノハタ社長)にインタビュー。紀州産梅の原料状況と製品の売れ行きなどについて話を聞いた。産地の課題として生産者の高齢化などが挙げられるが、殿畑理事長は次の世代に産地を継承していくため「生産性の向上は必要不可欠」と指摘。行政に生産性の高い圃場の拡大を要望し、反収を上げる取組を実施することが生産量の維持につながることを強調した。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐紀州産の原料状況と製品の売れ行きは。
「非常に厳しい状況となっている。2連続の不作によって2年続けて値上げが実施されているので、製品の売れ行きは良くない。昨年のエンゲル係数は28・6%で44年ぶりの高水準となっており、消費者の財布の紐は一昨年より硬くなっている。紀州産は2年連続の不作で原料がなく、出荷を抑えての販売を余儀なくされている。当社も含めて中国産を販売しているところは代替え商品として売場を確保することができるが、紀州産しか扱っていない企業は原料がなければ商品を供給することができず、売上も減少することになる。夏場の売れ行きは分からないが、今年の6月に収穫される梅が使えるようになるのは10月以降。原料がないと動くことができず、売上も増やすことができない。春から夏にかけて原料の問題は大きな不安要素となっている」
‐中国産の売れ行きが好調となっている。
「活発に動いているところとそうではないところで差がある。中国の現地パックで価格訴求型の商品が多く出回っている。価格に対する消費者のニーズは高まるばかりで、梅も手頃な価格で購入したいという人が増えている。紀州産は2年連続の値上げで割高感が出てしまっている」
‐製造コストも上昇している。
「毎年値上げされている段ボールは4年前の約1・5倍になっている他、調味料や容器も上がっている。また昨今のイラン問題による原油高騰は、近々の容器や物流コスト上昇となることは避けて通れない。一方26年産の作柄については現時点で3年連続の凶作の見込みで、原料価格について不透明な状況。梅はおととしの秋から値上げが実施されており、数量が減っている。しかし、値上げした分がプラスとなり、金額ベースでは前年を上回っていた。だが、昨年10月に2年連続の値上げを実施したところ、数量がさらに減って売上もマイナスで推移するようになっている」
‐組合での対応策について。
「紀州みなべ梅干協同組合では紀州田辺梅干協同組合と合同で、昨年の紀州梅の作柄は災害であるとの認識の下、県に対して雇用調整助成金の企業負担分の負担のお願い、低金利で新規融資を受け入れられるような環境を整えていただきたい、という旨を国と県に陳情した。しかし、結果としては難しいということで、中小企業庁のセーフティネット保証5号など、現行制度の範囲内で各社にて取り組んでいただくしかない状況となっている」
‐生産者の高齢化が進む産地の課題は。
「行政に生産性の高い圃場の拡大を要望している。次の若い世代に梅の産地や文化を継承していくためには生産性の向上は必要不可欠。紀州も生産者の高齢化が進み、数も減少している。生産量を維持するためには反収を上げる必要がある。平坦地での生産は最も効果的な手段で、傾斜地の同じ面積で比較すると3、4倍の反収になる。つまり、現在の3分の1の営農で同じ生産量になる、ということ。民間でパイロット事業を行うことは難しいので、国や県にリーダーになっていただき、産地保全の観点からも取り組んでいただきたいと思っている。1社の声では大きな力にはならないので、このようなことについて声を上げることは組合の役割でもあると考えている」
【2026(令和8)年3月21日第5224号3面】
トノハタ
紀州田辺梅干協同組合 理事長 前田雅雄氏
値上げで売れ行き低調 地域連携プロジェクトに参画
紀州田辺梅干協同組合理事長の前田雅雄氏(有限会社紀州うめまさ社長)にインタビュー。今年の花芽や梅干しの販売状況などについて話を聞いた。組合活動ではないが、同社をはじめとする有志の企業で田辺市にある神島高校の地域連携プロジェクト『神島屋』の活動に参画。『神島屋』は地元の特産品である紀州南高梅を活用した実践型の学習プログラムで、若い人が梅に関心を持ってくれるきっかけになることを期待している。(千葉友寛)
◇ ◇
‐今年の花芽は。
「今年の開花期は平年と同じくらいだった。懸念されるのは一部地域で開花が早かったところがあり、そこではめしべが成長していない花もあったようだ。ハチの巣箱も少なかったので、受粉が進んだのか分からない。現時点で今年の作柄を予想するのは難しいが、これまで出ている話としては、今年は豊作までの作柄にはならない、現在の産地在庫は少ない、外級の価格が高すぎる、など。値上げによって売れ行きが悪くなっている分、不安視されていた夏の需要期まで原料がつながる見通しとなっているところが増えているようだ」
‐原料状況は。
「2年連続の凶作なので今年の作柄が平年作だったとしても、各社スタートから購入意欲が強いことが予想され、価格が下がることは予想しにくい。やはり産地在庫としては、2年分は必要だということ。在庫があれば何か手を打つことができるが、在庫がなければ調整を行うこともできない。今年の青梅の価格が高ければ、農家は塩漬しないで生の出荷が多くなる。その方が手間もないので、そちらの割合の方が増えると見ている。今年もメーカーは原料を安定的に確保するということが簡単ではない、ということだ」
‐梅干しの販売について。
「外級の価格が高過ぎて、低級品の製品としては厳しい価格となっている。昨年産の原料は雹害で黒くなったり、しこりみたいなものがあるなど、クレームが多く発生したようだ。当初は『ワケあり商品』として販売されたが、品質が下がって価格が上昇したこともあり、消費者からの支持は得られなかった。そのため、原料が少ないC級原料で対応せざるを得ない状況となり、新物が入ってくるまでタイト感は続くだろう。紀州南高梅のブランドは長年をかけて築いてきたものだが、特に昨年はA級原料が極端に少なく、低級原料を販売せざるを得ない状況となっている。原料不足という問題を抱えながらブランドを守るということは非常に難しいことだ」
‐組合活動について。
「和歌山県漬物組合連合会では毎年『梅干しで元気‼キャンペーン』を実施しており、梅干しを身近なものとして食する習慣を養うとともに、自分の食について関心を持ってもらう契機とするため、行政、教育、漬物業界の連携によって実施している。また、組合活動ではないのだが、有志の企業で田辺市にある神島高校の地域連携プロジェクト『神島屋』の活動に参画している。『神島屋』は地元の特産品である紀州南高梅を活かし、イベント企画に取り組む実践型の学習プログラムで話題になっている。1月24日には大阪・梅田で梅と地域をPRする『梅田で梅フェス』を開催し、『梅やきとり』などを販売した。梅を題材にしてPRしてくれているので非常にありがたく思っているし、若い人が梅に関心を持つきっかけになる可能性もあるので期待している」
【2026(令和8)年3月21日第5224号5面】
紀州田辺梅干協同組合理事長の前田雅雄氏(有限会社紀州うめまさ社長)にインタビュー。今年の花芽や梅干しの販売状況などについて話を聞いた。組合活動ではないが、同社をはじめとする有志の企業で田辺市にある神島高校の地域連携プロジェクト『神島屋』の活動に参画。『神島屋』は地元の特産品である紀州南高梅を活用した実践型の学習プログラムで、若い人が梅に関心を持ってくれるきっかけになることを期待している。(千葉友寛)
◇ ◇
‐今年の花芽は。
「今年の開花期は平年と同じくらいだった。懸念されるのは一部地域で開花が早かったところがあり、そこではめしべが成長していない花もあったようだ。ハチの巣箱も少なかったので、受粉が進んだのか分からない。現時点で今年の作柄を予想するのは難しいが、これまで出ている話としては、今年は豊作までの作柄にはならない、現在の産地在庫は少ない、外級の価格が高すぎる、など。値上げによって売れ行きが悪くなっている分、不安視されていた夏の需要期まで原料がつながる見通しとなっているところが増えているようだ」
‐原料状況は。
「2年連続の凶作なので今年の作柄が平年作だったとしても、各社スタートから購入意欲が強いことが予想され、価格が下がることは予想しにくい。やはり産地在庫としては、2年分は必要だということ。在庫があれば何か手を打つことができるが、在庫がなければ調整を行うこともできない。今年の青梅の価格が高ければ、農家は塩漬しないで生の出荷が多くなる。その方が手間もないので、そちらの割合の方が増えると見ている。今年もメーカーは原料を安定的に確保するということが簡単ではない、ということだ」
‐梅干しの販売について。
「外級の価格が高過ぎて、低級品の製品としては厳しい価格となっている。昨年産の原料は雹害で黒くなったり、しこりみたいなものがあるなど、クレームが多く発生したようだ。当初は『ワケあり商品』として販売されたが、品質が下がって価格が上昇したこともあり、消費者からの支持は得られなかった。そのため、原料が少ないC級原料で対応せざるを得ない状況となり、新物が入ってくるまでタイト感は続くだろう。紀州南高梅のブランドは長年をかけて築いてきたものだが、特に昨年はA級原料が極端に少なく、低級原料を販売せざるを得ない状況となっている。原料不足という問題を抱えながらブランドを守るということは非常に難しいことだ」
‐組合活動について。
「和歌山県漬物組合連合会では毎年『梅干しで元気‼キャンペーン』を実施しており、梅干しを身近なものとして食する習慣を養うとともに、自分の食について関心を持ってもらう契機とするため、行政、教育、漬物業界の連携によって実施している。また、組合活動ではないのだが、有志の企業で田辺市にある神島高校の地域連携プロジェクト『神島屋』の活動に参画している。『神島屋』は地元の特産品である紀州南高梅を活かし、イベント企画に取り組む実践型の学習プログラムで話題になっている。1月24日には大阪・梅田で梅と地域をPRする『梅田で梅フェス』を開催し、『梅やきとり』などを販売した。梅を題材にしてPRしてくれているので非常にありがたく思っているし、若い人が梅に関心を持つきっかけになる可能性もあるので期待している」
【2026(令和8)年3月21日第5224号5面】
紀州田辺梅干協同組合 https://kishu-tanabe-umeboshikumiai.com/
紀州うめまさ http://www.umemasa.co.jp/
<塩特集インタビュー>株式会社天塩 代表取締役社長 鈴木恵氏
“赤穂の塩づくり”400年
イベント開催し歴史的価値アピール
イベント開催し歴史的価値アピール
株式会社天塩(鈴木恵社長、東京都新宿区)は、江戸時代から続くにがりを含ませた塩づくり“差塩製法”を継承した「にがりを含んだ塩」にこだわり、日本の伝統食文化の良さを未来につなげている。
同社は赤穂化成株式会社(兵庫県赤穂市)が製造する「赤穂の天塩」の家庭用塩および業務用塩関連商品の販売専門会社である。
「赤穂の塩づくり」は文化庁より日本遺産に認定され、その歴史的な価値が証明されている。今年2026年は赤穂で塩田が開墾されてから400年のメモリアルイヤーにあたり、“赤穂の塩づくり”の啓蒙活動にさらに力を注いでいる。
同社代表取締役社長の鈴木恵氏に塩の動向や今後の展開について聞いた。(藤井大碁)
◇ ◇
ー塩製品の動き。
「昨年は、梅や野菜価格が一昨年より落ち着いていたこともあり、梅干しなど漬物用の塩の動きが底堅く、上半期は堅調に推移した。一方、下半期は10月に値上げを実施した影響で、動きがやや鈍った。足元では、イラン戦争の影響でガソリン価格が上昇しており、節約志向がさらに高まることが懸念される」
ー昨年も猛暑の影響で塩飴が良く売れた。
「2025年6月より改正労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症対策が義務化されたことにより、企業からの受注が増えた。近年、塩飴や塩タブレットは、猛暑により需要が拡大しており、供給が追い付いていない状況だ。夏場の熱中症対策として、外出時にマイソルトを持参してもらうなど、塩飴や塩タブレット以外のアイテムで塩を摂取してもらえるよう積極的な提案を行っていきたい」
ーその他に売れている商品。
「高知県室戸沖海洋深層水を平釜でじっくり時間をかけて結晶化した『天海(あまみ)の平釜塩』が伸長している。国産、平釜でつくる製法、サラサラで使い勝手が良い、海水のみでつくる味わいの良さなどが支持されている要因として挙げられる。また『天塩の天日にがり』などのにがり製品の動きも良い。にがりには現代人に不足がちなマグネシウムが豊富に含まれている。その健康性や美容への効果がSNSで話題になり、若年層からシニア層まで幅広い層に購入していただいている。近年は米不足により、古米が流通する中、にがりを使うことでごはんがふっくら美味しく炊けるという認知も広がり、にがりの需要を押し上げている」
ー新商品「赤穂の平釜塩」を発売する。
「赤穂の海水のみを使用し、伝統的な平釜製法でつくった大粒のフレーク塩となっている。2026年は赤穂で塩田が開墾されてから400年の節目の年であり、その歴史を受け継ぐメモリアル商品でもある。今後も各地の海水を使用した平釜塩など、塩製品のバリエーションを増やしていきたい」
ー“塩づくり400年”を記念したイベントの開催に力を入れている。
「9月~10月に予定しているメインイベントに向けて、現在はその前座的な位置づけで様々なイベントを開催している。4月には日本橋浜町の町おこしイベントにポップアップストアを出店する予定だ。“塩づくり400年”イベントの目的は塩の付加価値を訴求することだ。赤穂の歴史や当時の製法などを知ってもらうことで、日本遺産に認定されている『赤穂の塩づくり』の歴史的価値をアピールしていく」
ー会長を務める食用塩公正取引協議会の取組について。
「消費者が安心して塩を選べるようにするための重要な目印である『塩公正マーク』の認知度上昇を目指し活動している。会員各社が全国各地のイベントでマークのPRを行っていくことで、草の根的に認知度を高めていく。協議会が2028年に20周年を迎えるにあたり、公式ホームページのリニューアルも検討していく」
ー今後について。
「人口が減少していく中で、塩だけでなく食品全体の需要は何もしなければ年々減少していく。その中で、塩を購入する際に付加価値の高いものを選択してもらえるよう取り組んでいくことが大切だ。今年の“塩づくり400年”は通過点であり、今後も持続的なPRを続けていく。お客様が何を求めているかしっかりと分析し、さらにレベルアップしたイベント開催などにより塩の価値を高めていく」
◇ ◇
ー塩製品の動き。
「昨年は、梅や野菜価格が一昨年より落ち着いていたこともあり、梅干しなど漬物用の塩の動きが底堅く、上半期は堅調に推移した。一方、下半期は10月に値上げを実施した影響で、動きがやや鈍った。足元では、イラン戦争の影響でガソリン価格が上昇しており、節約志向がさらに高まることが懸念される」
ー昨年も猛暑の影響で塩飴が良く売れた。
「2025年6月より改正労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症対策が義務化されたことにより、企業からの受注が増えた。近年、塩飴や塩タブレットは、猛暑により需要が拡大しており、供給が追い付いていない状況だ。夏場の熱中症対策として、外出時にマイソルトを持参してもらうなど、塩飴や塩タブレット以外のアイテムで塩を摂取してもらえるよう積極的な提案を行っていきたい」
ーその他に売れている商品。
「高知県室戸沖海洋深層水を平釜でじっくり時間をかけて結晶化した『天海(あまみ)の平釜塩』が伸長している。国産、平釜でつくる製法、サラサラで使い勝手が良い、海水のみでつくる味わいの良さなどが支持されている要因として挙げられる。また『天塩の天日にがり』などのにがり製品の動きも良い。にがりには現代人に不足がちなマグネシウムが豊富に含まれている。その健康性や美容への効果がSNSで話題になり、若年層からシニア層まで幅広い層に購入していただいている。近年は米不足により、古米が流通する中、にがりを使うことでごはんがふっくら美味しく炊けるという認知も広がり、にがりの需要を押し上げている」
ー新商品「赤穂の平釜塩」を発売する。
「赤穂の海水のみを使用し、伝統的な平釜製法でつくった大粒のフレーク塩となっている。2026年は赤穂で塩田が開墾されてから400年の節目の年であり、その歴史を受け継ぐメモリアル商品でもある。今後も各地の海水を使用した平釜塩など、塩製品のバリエーションを増やしていきたい」
ー“塩づくり400年”を記念したイベントの開催に力を入れている。
「9月~10月に予定しているメインイベントに向けて、現在はその前座的な位置づけで様々なイベントを開催している。4月には日本橋浜町の町おこしイベントにポップアップストアを出店する予定だ。“塩づくり400年”イベントの目的は塩の付加価値を訴求することだ。赤穂の歴史や当時の製法などを知ってもらうことで、日本遺産に認定されている『赤穂の塩づくり』の歴史的価値をアピールしていく」
ー会長を務める食用塩公正取引協議会の取組について。
「消費者が安心して塩を選べるようにするための重要な目印である『塩公正マーク』の認知度上昇を目指し活動している。会員各社が全国各地のイベントでマークのPRを行っていくことで、草の根的に認知度を高めていく。協議会が2028年に20周年を迎えるにあたり、公式ホームページのリニューアルも検討していく」
ー今後について。
「人口が減少していく中で、塩だけでなく食品全体の需要は何もしなければ年々減少していく。その中で、塩を購入する際に付加価値の高いものを選択してもらえるよう取り組んでいくことが大切だ。今年の“塩づくり400年”は通過点であり、今後も持続的なPRを続けていく。お客様が何を求めているかしっかりと分析し、さらにレベルアップしたイベント開催などにより塩の価値を高めていく」
【2026(令和8)年3月21日第5224号7面】
天塩
<旭日小綬章インタビュー>株式会社ソルト関西 代表取締役社長 山本博氏
塩業界の「潤滑油」に
安定供給を守り続ける
安定供給を守り続ける
旭日小綬章を受章した全国塩元売協会会長、塩元売協同組合理事長、全国塩業懇話会会長を務めるソルト関西の山本博社長は、卸としてメーカーと消費者を繋ぐ「潤滑油」を自任し、物流危機や安定供給への課題、塩の価値再構築に向けた決意を語った。
(大阪支社・小林悟空)
◇ ◇
ー受章の感想は。
「私個人というよりも、業界全体で受章したものと捉えている。実は私は業界のために身を捧げてきた、というつもりはない。卸である当社にとって、業界が良くなれば、当社の事業もうまくいくという考えから行動してきた。卸とはメーカーから消費者までの流れを円滑にする潤滑油のようなものに過ぎない。業界の皆様が足並みを揃えて取り組んでくださったからここまで歩んで来れた。心から感謝申し上げたい」
ー全国塩業懇話会の活動。
「現在、塩業界が直面している最大の課題の一つが物流だ。2024年問題による転換点に加え、緊迫する中東情勢による燃料費高騰が追い打ちをかける。塩は重くて安いという、運賃負担力の極めて低い商品である。かつては宅配便でも運べたが、現在は重量制限や効率性の観点から敬遠される時代となった。20キロ、25キロという重量物を人力に頼って運ぶのは限界に来ている。パレット輸送の自動化やロボットの導入など、物流の合理化を主体的に進めていく必要がある」
ーBCP(危機下の事業継続計画)の重要性。
「塩は水や空気と同じように安定供給が当たり前と思われているが、実はそうではない。東日本大震災の際も供給は限界が近かった。先に触れたように地政学リスクも高まっている。安易な輸入依存は危険であり、国内生産基盤の維持とBCPの構築は、急務となっている」
ー塩需要の見通しは。
「人口減少と高齢化により、食用の塩の消費量は減少の一途を辿ることは自明。その中で鍵となるのが付加価値だ。日本の精製塩や特殊製法塩のレベルは極めて高いが、その価値が十分に伝わっていない。特定の食材に合う塩の研究や、安全・安心な国産塩としてのブランディングなど、価格競争ではない価値の創造を業界全体で進める必要がある」
ー最後に。
「塩が安定的に供給されている影に隠された努力や、日本の塩の品質の高さなど、まだまだ伝わっていないのが現状。塩と同じくありふれた存在であるはずの水は、『天然水』などの市販品としても、酒や飲料の素材としてもその価値を訴求している。販売者側の努力の賜物だろう。塩もそのように価値を育て、知ってもらえるよう、努力する必要がある。現役のうちに、少しでも前進させたい」
(大阪支社・小林悟空)
◇ ◇
ー受章の感想は。
「私個人というよりも、業界全体で受章したものと捉えている。実は私は業界のために身を捧げてきた、というつもりはない。卸である当社にとって、業界が良くなれば、当社の事業もうまくいくという考えから行動してきた。卸とはメーカーから消費者までの流れを円滑にする潤滑油のようなものに過ぎない。業界の皆様が足並みを揃えて取り組んでくださったからここまで歩んで来れた。心から感謝申し上げたい」
ー全国塩業懇話会の活動。
「現在、塩業界が直面している最大の課題の一つが物流だ。2024年問題による転換点に加え、緊迫する中東情勢による燃料費高騰が追い打ちをかける。塩は重くて安いという、運賃負担力の極めて低い商品である。かつては宅配便でも運べたが、現在は重量制限や効率性の観点から敬遠される時代となった。20キロ、25キロという重量物を人力に頼って運ぶのは限界に来ている。パレット輸送の自動化やロボットの導入など、物流の合理化を主体的に進めていく必要がある」
ーBCP(危機下の事業継続計画)の重要性。
「塩は水や空気と同じように安定供給が当たり前と思われているが、実はそうではない。東日本大震災の際も供給は限界が近かった。先に触れたように地政学リスクも高まっている。安易な輸入依存は危険であり、国内生産基盤の維持とBCPの構築は、急務となっている」
ー塩需要の見通しは。
「人口減少と高齢化により、食用の塩の消費量は減少の一途を辿ることは自明。その中で鍵となるのが付加価値だ。日本の精製塩や特殊製法塩のレベルは極めて高いが、その価値が十分に伝わっていない。特定の食材に合う塩の研究や、安全・安心な国産塩としてのブランディングなど、価格競争ではない価値の創造を業界全体で進める必要がある」
ー最後に。
「塩が安定的に供給されている影に隠された努力や、日本の塩の品質の高さなど、まだまだ伝わっていないのが現状。塩と同じくありふれた存在であるはずの水は、『天然水』などの市販品としても、酒や飲料の素材としてもその価値を訴求している。販売者側の努力の賜物だろう。塩もそのように価値を育て、知ってもらえるよう、努力する必要がある。現役のうちに、少しでも前進させたい」
【2026(令和8)年4月11日第5226号8面】
<塩特集インタビュー>ナイカイ塩業株式会社 代表取締役社長 野﨑哲太郎氏
縦割り打破で全体最適へ
安全・安心・安定供給守る
ナイカイ塩業株式会社(岡山県倉敷市)は1829年創業、年間18万トンの生産能力を有する国内製塩大手企業である。昨年6月末より社長に就任した野﨑哲太郎氏は、組織の縦割りを打破してグループ間の連携を推進し技術革新を促すとともに、市場縮小を見据えたハイエンドマーケットの確保と安定供給を重視する。また、データに基づいた現実的な環境対策や、文化事業による地域還元に注力し、100年後を見据えた強固な経営体制を構築している。
安全・安心・安定供給守る
ナイカイ塩業株式会社(岡山県倉敷市)は1829年創業、年間18万トンの生産能力を有する国内製塩大手企業である。昨年6月末より社長に就任した野﨑哲太郎氏は、組織の縦割りを打破してグループ間の連携を推進し技術革新を促すとともに、市場縮小を見据えたハイエンドマーケットの確保と安定供給を重視する。また、データに基づいた現実的な環境対策や、文化事業による地域還元に注力し、100年後を見据えた強固な経営体制を構築している。
(大阪支社・小林悟空)
◇ ◇
ー足元の業績と、社長就任からの手応え。
「業績は計画通りに推移しており、今年3月期の着地も昨年度とほぼ同水準を見込んでいる。社長就任から半年以上経つが、私自身の役割は大きく変わらない。2020年に入社して以来、会社をより良くすることをテーマに掲げ、継続的に生産性向上に取り組んでいる。注力しているのは、自分の立場を活かして、現場のメンバーが外部の優良メーカーから学ぶ機会を作ること。塩業だけでなくグループ各社から人を募り、技術の習得と同時にグループ内の横のつながりを強化している」
ー組織づくりについて。
「現場から提案が上がりやすい環境を作りたい。当社の強みは各部門の専門性の高さだが、一方で縦割りになりがちな側面もあった。これを個別最適から全体最適へとシフトさせることが、中小企業が生き残るための鍵となる。その一環として、グループ横断の課長会や部長会を通じた管理職研修、DX推進委員会などをスタートさせた。部門を超えたコミュニケーションが増えたことで、グループ内のノウハウを相互に活用して顧客へ提案を行うといった事例も出始めている」
ー塩事業の展望。
「人口減少に伴いマーケットが縮小するのは確実。その中で我々が果たすべき使命は、安全安心な国産塩の安定供給を守り抜くこと。日本塩協会4社の中では生産規模が小さいからこそ、シェアを追うのではなく、高品質な要求に応えられる、根拠のある『安全・安心』でハイエンドマーケットを押さえていくことが重要だ」
ー昨年の価格改定は他社より遅れての実施となった。
「昨年実施した設備交換や、秋からの物流費改定などの影響を精査した上でアナウンスを行った結果。タイミングがずれたことでお客様にはご不便もおかけしたが、他社に追随して拙速な判断をするよりも、今後も安定的に供給可能な適正価格を模索した」
ーゼロカーボン実現は。
「目先のゼロカーボンという言葉に惑わされず、現実的な知見を積み上げる段階だと捉えている。この数年で30回以上の勉強会を重ね、中国5県の発電所や海外事業者も視察しているのだが、まだ大規模な投資を決断できる状況ではない。例えば、実験室レベルでは電力消費を大幅に削減できる技術が開発されていても、数十年間の実用に耐えるかは未知数だ。本当の意味で環境のためになることを、データに基づき実行していくスタンスを取る」
ー地域貢献や文化事業にも力を入れている。
「当社は塩、化成品、不動産の三本の柱で成り立っている。初代からの教えを守り、塩という安定した収益基盤があるからこそ、攻めの投資や地域貢献が可能だ。野﨑家旧宅の古文書研究や、重要文化財を活用した落語や能の開催は、商売のためではなく、お世話になっている地域の皆様への還元だ。また昨年一月に開催された『瀬戸内産業芸術祭』プレイベントでは現代アートと工場見学をセットにし、日本のものづくりの素晴らしさを発信した。将来的にものづくりに関わる人材が増えることを願っている。こうした活動を通じ、地域と共に100年後も必要とされる企業であり続けたいと考えている」
【2026(令和8)年3月21日第5224号8面】
◇ ◇
ー足元の業績と、社長就任からの手応え。
「業績は計画通りに推移しており、今年3月期の着地も昨年度とほぼ同水準を見込んでいる。社長就任から半年以上経つが、私自身の役割は大きく変わらない。2020年に入社して以来、会社をより良くすることをテーマに掲げ、継続的に生産性向上に取り組んでいる。注力しているのは、自分の立場を活かして、現場のメンバーが外部の優良メーカーから学ぶ機会を作ること。塩業だけでなくグループ各社から人を募り、技術の習得と同時にグループ内の横のつながりを強化している」
ー組織づくりについて。
「現場から提案が上がりやすい環境を作りたい。当社の強みは各部門の専門性の高さだが、一方で縦割りになりがちな側面もあった。これを個別最適から全体最適へとシフトさせることが、中小企業が生き残るための鍵となる。その一環として、グループ横断の課長会や部長会を通じた管理職研修、DX推進委員会などをスタートさせた。部門を超えたコミュニケーションが増えたことで、グループ内のノウハウを相互に活用して顧客へ提案を行うといった事例も出始めている」
ー塩事業の展望。
「人口減少に伴いマーケットが縮小するのは確実。その中で我々が果たすべき使命は、安全安心な国産塩の安定供給を守り抜くこと。日本塩協会4社の中では生産規模が小さいからこそ、シェアを追うのではなく、高品質な要求に応えられる、根拠のある『安全・安心』でハイエンドマーケットを押さえていくことが重要だ」
ー昨年の価格改定は他社より遅れての実施となった。
「昨年実施した設備交換や、秋からの物流費改定などの影響を精査した上でアナウンスを行った結果。タイミングがずれたことでお客様にはご不便もおかけしたが、他社に追随して拙速な判断をするよりも、今後も安定的に供給可能な適正価格を模索した」
ーゼロカーボン実現は。
「目先のゼロカーボンという言葉に惑わされず、現実的な知見を積み上げる段階だと捉えている。この数年で30回以上の勉強会を重ね、中国5県の発電所や海外事業者も視察しているのだが、まだ大規模な投資を決断できる状況ではない。例えば、実験室レベルでは電力消費を大幅に削減できる技術が開発されていても、数十年間の実用に耐えるかは未知数だ。本当の意味で環境のためになることを、データに基づき実行していくスタンスを取る」
ー地域貢献や文化事業にも力を入れている。
「当社は塩、化成品、不動産の三本の柱で成り立っている。初代からの教えを守り、塩という安定した収益基盤があるからこそ、攻めの投資や地域貢献が可能だ。野﨑家旧宅の古文書研究や、重要文化財を活用した落語や能の開催は、商売のためではなく、お世話になっている地域の皆様への還元だ。また昨年一月に開催された『瀬戸内産業芸術祭』プレイベントでは現代アートと工場見学をセットにし、日本のものづくりの素晴らしさを発信した。将来的にものづくりに関わる人材が増えることを願っている。こうした活動を通じ、地域と共に100年後も必要とされる企業であり続けたいと考えている」
【2026(令和8)年3月21日第5224号8面】
ナイカイ塩業
<塩特集インタビュー>ダイヤソルト株式会社 代表取締役社長 熊野直敏氏
適正価格化へ前進
組織改革で長期的成長目指す
ダイヤソルト株式会社(熊野直敏社長、福岡県福岡市)は、2023年に三菱グループからの独立を経て、自律経営へ舵を切った。昨年には価格改定や販社の吸収合併を断行するとともに新製品「陽だまりのダイヤ」を発表した。これにより長期的な成長を実現するとともに、塩の未来を守っていく狙いがあると語る。(大阪支社・小林悟空)
ー直近の業績について。
「今期は増収増益での着地を見込んでいる。直近5年間の推移を振り返ると、生活必需品である塩の特性上、コロナ禍による需要減といった影響はほぼなかった。しかし、ロシア・ウクライナ紛争を契機とした石炭価格の上昇が直撃し、2021年度は赤字計上を余儀なくされ、2022年、23年と連続して価格改定を実施した。その後石炭価格こそ下落傾向にあるものの、工場保全コストや運賃をはじめとする諸コストの増大が続いており、昨年3度目の値上げを実施。結果、売上・利益とも改善した形」
ー日本塩協会の中でも、いち早い価格改定の決断だった。
「あらゆるコスト増を考慮した上で塩の適正価格化を実現することは、日本の塩の未来を守るために不可欠な決断だった。塩は設備を腐食させるため、他の製造業と比較しても設備の劣化が極めて激しい。しかしこれまで当社は、価格競争に走り保守点検費用を切り詰めてきた側面がある。収益を適切に保全費用へと還元できる体制を整えてこそ、社会インフラとしての安定供給の責任を果たせる」
ー三菱グループから独立した経緯と変化は。
「新たに株主となったIAパートナーズ㈱は、大企業の事業部門のカーブアウト支援に長けた企業だ。最大の変化は、経営に長期的な視点が導入されたこと。以前は親会社からの交代制による経営が多く、10年先を見据えたビジョンが欠落しがちだった。現在は、現場を知るスペシャリストであるプロパー社員を、経営視点を持つジェネラリストへと育成することに注力し、自律的な経営体制への転換を急いでいる」
ー昨年は販売会社の菱塩を吸収合併した。
「製造から販売まで一気通貫のシンプルな運営体制が整った。コスト構造の精査が可能となり、利益貢献の低かったアイテムを90種類から20種類へと集約するスクリーニングを断行できた。これにより生じた余剰リソースを、戦略製品の開発や成長分野へ機動的に投入するサイクルが、ようやく回り始めている」
ー新製品「陽だまりのダイヤ」を、業界を変えるイノベーション製品と位置づけている。
「経営基盤が安定し、研究開発にリソースを割く余力が生まれたことで結実した商品だ。天日塩を精製塩レベルの安全性を実現しながら、精製塩より安価に提供できる強みを持つ。既存の精製塩のシェアを一部代替する可能性もあるため当社自身にも痛みを伴うが、それによってエンドユーザーに貢献でき、かつ業界全体の適正価格化が促進される。業界全体のマインドセットを変えるためには避けて通れない道だと考えている」
ー今後の成長戦略について。
「売上・利益ともに1・5倍の成長を目指している。今後は減塩ニーズに合わせた低ナトリウム塩など、健康価値を付加した製品展開を加速させる。単なる数量の確保ではなく、ビジネスモデルの創造こそが重要だ。塩以外の化成品についても、我々が強みを持つ精製塩化カリウムのシェア(約75~90%)を維持しつつ、周辺技術への進出も視野に入れている。塩の自由化から30年、変化を止めていた当社にとって、今こそが最大のチャンスであると確信している」
【2026(令和8)年3月21日第5224号8面】
組織改革で長期的成長目指す
ダイヤソルト株式会社(熊野直敏社長、福岡県福岡市)は、2023年に三菱グループからの独立を経て、自律経営へ舵を切った。昨年には価格改定や販社の吸収合併を断行するとともに新製品「陽だまりのダイヤ」を発表した。これにより長期的な成長を実現するとともに、塩の未来を守っていく狙いがあると語る。(大阪支社・小林悟空)
ー直近の業績について。
「今期は増収増益での着地を見込んでいる。直近5年間の推移を振り返ると、生活必需品である塩の特性上、コロナ禍による需要減といった影響はほぼなかった。しかし、ロシア・ウクライナ紛争を契機とした石炭価格の上昇が直撃し、2021年度は赤字計上を余儀なくされ、2022年、23年と連続して価格改定を実施した。その後石炭価格こそ下落傾向にあるものの、工場保全コストや運賃をはじめとする諸コストの増大が続いており、昨年3度目の値上げを実施。結果、売上・利益とも改善した形」
ー日本塩協会の中でも、いち早い価格改定の決断だった。
「あらゆるコスト増を考慮した上で塩の適正価格化を実現することは、日本の塩の未来を守るために不可欠な決断だった。塩は設備を腐食させるため、他の製造業と比較しても設備の劣化が極めて激しい。しかしこれまで当社は、価格競争に走り保守点検費用を切り詰めてきた側面がある。収益を適切に保全費用へと還元できる体制を整えてこそ、社会インフラとしての安定供給の責任を果たせる」
ー三菱グループから独立した経緯と変化は。
「新たに株主となったIAパートナーズ㈱は、大企業の事業部門のカーブアウト支援に長けた企業だ。最大の変化は、経営に長期的な視点が導入されたこと。以前は親会社からの交代制による経営が多く、10年先を見据えたビジョンが欠落しがちだった。現在は、現場を知るスペシャリストであるプロパー社員を、経営視点を持つジェネラリストへと育成することに注力し、自律的な経営体制への転換を急いでいる」
ー昨年は販売会社の菱塩を吸収合併した。
「製造から販売まで一気通貫のシンプルな運営体制が整った。コスト構造の精査が可能となり、利益貢献の低かったアイテムを90種類から20種類へと集約するスクリーニングを断行できた。これにより生じた余剰リソースを、戦略製品の開発や成長分野へ機動的に投入するサイクルが、ようやく回り始めている」
ー新製品「陽だまりのダイヤ」を、業界を変えるイノベーション製品と位置づけている。
「経営基盤が安定し、研究開発にリソースを割く余力が生まれたことで結実した商品だ。天日塩を精製塩レベルの安全性を実現しながら、精製塩より安価に提供できる強みを持つ。既存の精製塩のシェアを一部代替する可能性もあるため当社自身にも痛みを伴うが、それによってエンドユーザーに貢献でき、かつ業界全体の適正価格化が促進される。業界全体のマインドセットを変えるためには避けて通れない道だと考えている」
ー今後の成長戦略について。
「売上・利益ともに1・5倍の成長を目指している。今後は減塩ニーズに合わせた低ナトリウム塩など、健康価値を付加した製品展開を加速させる。単なる数量の確保ではなく、ビジネスモデルの創造こそが重要だ。塩以外の化成品についても、我々が強みを持つ精製塩化カリウムのシェア(約75~90%)を維持しつつ、周辺技術への進出も視野に入れている。塩の自由化から30年、変化を止めていた当社にとって、今こそが最大のチャンスであると確信している」
【2026(令和8)年3月21日第5224号8面】
ダイヤソルト
<塩特集インタビュー>株式会社青い海 専務取締役 屋嘉比元氏
立釜移行は「第二の創業」
沖縄への貢献がブランド直結
沖縄への貢献がブランド直結
沖縄の地で塩作りを続けて523年。再生加工塩「シママース」や沖縄の海水100%を原料とする「青い海」を展開する株式会社青い海(又吉元榮社長、沖縄県糸満市)が「第二の創業」を迎えている。長年守り続けてきた平釜製塩から、最新鋭の技術を投入した立釜へと製造設備を一新。その狙いと、同社が描く沖縄ブランド戦略について、専務取締役の屋嘉比元氏に話を聞いた。(大阪支社・小林悟空)
◇ ◇
ー直近の業績について。
「2025年度の業績は、売上ベースで前年比1%程度の増となる見込み。重量ベースでは横ばいから微減の傾向だが、原料価格の高騰に伴う価格改定や、高単価な『青い海』が顕著に伸びていることが寄与した。AmazonなどのECモールでの伸びは前年比120%程度。沖縄の海水100%という付加価値と、普段使いしやすい価格帯がライト層に評価され、口コミ評価に繋がっているようだ」
ー今年2月から工場を刷新、平釜から立釜へ変更した。
「第二の創業と位置づけている。背景は大きく3点。一つは環境負荷の低減とコスト削減。新工場では最新のMVR(機械的蒸気再圧縮)装置を導入し、CO2排出量は最低25%~30%の削減を見込んでいる。二つ目に品質の安定と業務用ニーズへの対応。平釜は粒度や粒形のコントロールが難しく、開放式なので異物混入防止にも多大な労力を要した。今回の刷新で、より安定した品質を求める業務用需要にも応えられる体制が整った。最後に、設備の老朽化と労働環境の改善。設備が老朽化しており投資が必要で、平釜では高温下での作業が必要だったため、持続可能な塩づくりという観点から立釜が望ましいという判断となった」
ー味への変化は。
「成分分析、ソルトコーディネーターによる官能検査、味覚センサー分析の検査で従来品と遜色無しとの結果を得た。粒径や粒度の変化はあるものの均一化することにより品質は安定する。複数の加工メーカーからも原料としての使用に問題ないとの回答をいただいている」
ー生産能力について。
「立釜一基で『シママース』と『青い海』を交互に製造するため、同じ稼働日数だと生産量は横ばいだが、稼働日数を増やすことで増産が可能。今後は『青い海』の増産・販促を強化する。これまで広告宣伝はほとんど取り組まなかったが、デジタル広告を中心にブランド認知拡大に取り組む。その実績が量販店や業務用といった販路の目に留まる機会増というシナジーを生むはずだ」
ーブランド育成について。
「沖縄の綺麗な海水から生まれた塩、ということが最大の強みであり、沖縄に貢献していくことが当社のブランド育成にも直結する。そのため、環境保全や地域貢献活動にも本気で取り組んでおり『おきなわSDGsプラチナパートナー』の認証も受けている。また、弊社のロゴマークなどIP(知的財産)を活用したライセンス契約によるグッズやお土産品の展開など、以外の収益源確保にも注力していく。様々な角度から沖縄の塩作り文化を守り、地域社会に貢献していくことが、我々の使命だと考えて邁進していく」
【2026(令和8)年3月21日第5224号9面】
◇ ◇
ー直近の業績について。
「2025年度の業績は、売上ベースで前年比1%程度の増となる見込み。重量ベースでは横ばいから微減の傾向だが、原料価格の高騰に伴う価格改定や、高単価な『青い海』が顕著に伸びていることが寄与した。AmazonなどのECモールでの伸びは前年比120%程度。沖縄の海水100%という付加価値と、普段使いしやすい価格帯がライト層に評価され、口コミ評価に繋がっているようだ」
ー今年2月から工場を刷新、平釜から立釜へ変更した。
「第二の創業と位置づけている。背景は大きく3点。一つは環境負荷の低減とコスト削減。新工場では最新のMVR(機械的蒸気再圧縮)装置を導入し、CO2排出量は最低25%~30%の削減を見込んでいる。二つ目に品質の安定と業務用ニーズへの対応。平釜は粒度や粒形のコントロールが難しく、開放式なので異物混入防止にも多大な労力を要した。今回の刷新で、より安定した品質を求める業務用需要にも応えられる体制が整った。最後に、設備の老朽化と労働環境の改善。設備が老朽化しており投資が必要で、平釜では高温下での作業が必要だったため、持続可能な塩づくりという観点から立釜が望ましいという判断となった」
ー味への変化は。
「成分分析、ソルトコーディネーターによる官能検査、味覚センサー分析の検査で従来品と遜色無しとの結果を得た。粒径や粒度の変化はあるものの均一化することにより品質は安定する。複数の加工メーカーからも原料としての使用に問題ないとの回答をいただいている」
ー生産能力について。
「立釜一基で『シママース』と『青い海』を交互に製造するため、同じ稼働日数だと生産量は横ばいだが、稼働日数を増やすことで増産が可能。今後は『青い海』の増産・販促を強化する。これまで広告宣伝はほとんど取り組まなかったが、デジタル広告を中心にブランド認知拡大に取り組む。その実績が量販店や業務用といった販路の目に留まる機会増というシナジーを生むはずだ」
ーブランド育成について。
「沖縄の綺麗な海水から生まれた塩、ということが最大の強みであり、沖縄に貢献していくことが当社のブランド育成にも直結する。そのため、環境保全や地域貢献活動にも本気で取り組んでおり『おきなわSDGsプラチナパートナー』の認証も受けている。また、弊社のロゴマークなどIP(知的財産)を活用したライセンス契約によるグッズやお土産品の展開など、以外の収益源確保にも注力していく。様々な角度から沖縄の塩作り文化を守り、地域社会に貢献していくことが、我々の使命だと考えて邁進していく」
【2026(令和8)年3月21日第5224号9面】
青い海
<SMTS特別インタビュー>
秋本食品株式会社 代表取締役社長 秋本 善明氏
『発酵』を付加価値に
3温度帯対応で販路拡大へ
3温度帯対応で販路拡大へ
秋本食品株式会社(神奈川県綾瀬市)の秋本善明代表取締役社長にインタビュー。今期ここまでの業績やキムチ、浅漬の売れ行きなどについて話を聞いた。商品の付加価値を高める取り組みについては、『発酵』をコンセプトにした新ブランドを立ち上げ、商品を展開する。今後の戦略については、2年前から進めていた生産計画が一旦終了し、商品を絞り込んで生産性を高め、収益性を向上させていく方針を示した。(千葉友寛)
ー今期の業績は。
「売上は減っている。一つは工場の統合に伴いアイテムを整理したことで自社の売上が減少している。もう一つは協力会社一社との取引が終了したことでカット野菜事業を止めざるを得なくなったことなどが影響している。仕入れ商品の方はほぼ横ばいだが、自社がマイナスの分、若干のマイナスで推移している」
ーキムチの売れ行きは。
「市場を見ると昨年12月、1月と良い動きとなっている。当社もまずまずの動きだが、市場の伸びまでは届いていない。当社商品では『オモニの極旨キムチ』が好調だ。販促も行っているが、市場のトレンドに合っているということだろう。そういった意味では、高付加価値商品の『王道キムチ』は価格的に市場のトレンドから少し外れてしまっているといえる。まだまだ商品価値を伝えきれてない面もあると思う。市場単価は下がっていないが、それほど上がってはいない。各社値上げを実施しているが、目立つような単価の上昇にはつながっていない。賃金アップが物価の上昇に追い付いていない状況が続いており、節約志向は以前にも増して強まっている」
ー浅漬の動きについて。
「市場全体と同様に当社もマイナスで推移している。冬の白菜は安定していたが、大根や胡瓜は年々確保することが難しくなってきている。我々にとっては国産の野菜が旬の季節に入らないと商売ができなくなる。リスクヘッジという意味では海外産原料に頼らざるを得ない状況で、当社も試験的に海外産原料でキムチを作っている」
ー値上げの動きは。
「昨年の秋に約10%の値上げをしたところ、明らかに数字が落ちた。原料価格はもちろんだが、製造コストが下がることはない。コストが上がった分は製品価格に転嫁せざるを得ないわけだが、特に浅漬は昨年あたりから単純な値上げでは売れ行きに影響が出始めている。売場のプライスラインや競合の動きを見て慎重に対応していくしかない。キムチについては工場の統合が終わって自動化を図っている。神奈川県も最低賃金が1200円を超え、5年以内に1500円になる。それらのことに対応するために生産性を高める努力はこれからも続けていくが、これまで工場統合で抱えていた制約がなくなったので、来年度は作って売ることに注力できる」
ー新ブランド商品。
「乳酸発酵は漬物の最後の砦だと思っている。健康のために腸活が大事だということも認知されている。元来、漬物が持っている優位性を活かして広げていきたいと思っている。当社では『発酵の旨味』ブランドを立ち上げ、現在までに白菜、大根、ぬか床を販売している。賞味期限も長めで食べたら美味しい、という評価もいただいている。秋本会会員企業にも協力していただき、『発酵の旨味』ブランドの商品として3月から3品が新発売となる。単価はややアッパー気味になるが、価値を認めていただいて面で広げていきたいと考えている」
ー流通の再編が進んでいる。
「勝ち組を見極めなければならない。いまはディスカウントに勢いがあるが、過去を見てもディスカウントだけで永続できたところはない。これからどういった動きになるか分からないが、当面は厳しくとも食らいついていくしかないだろう。価格については物価高や賃金アップの他、消費税廃止の可能性など、様々な要因があるため流動的な動きになる。我々としては時代の流れにしっかりついていくことと、売場を広げていくことを考える必要がある。当社の商品については関東圏の売場には入っているので、段ボール出荷で問屋流通にのせて広域流通に対応できるように進めている。すでに主力商品は取組を始めている」
ー外食向けの動きは。
「BtoBはカスタマイズを要求されるので決まるまでに時間がかかるのだが、常温で流通できるキムチを中心に広げていきたいと考えている。チルドの販路も種を蒔いているところだ。また、冷凍も試験的に開発しており、3温度帯で対応することで、外食に限らず新しい販路を広げていきたいと考えている」
【2026(令和8)年2月11日第5221号2面】
秋本食品 電子版 バイヤー必見!イチ押しページ
https://www.syokuryou-shinbun.com/pages/896
ー今期の業績は。
「売上は減っている。一つは工場の統合に伴いアイテムを整理したことで自社の売上が減少している。もう一つは協力会社一社との取引が終了したことでカット野菜事業を止めざるを得なくなったことなどが影響している。仕入れ商品の方はほぼ横ばいだが、自社がマイナスの分、若干のマイナスで推移している」
ーキムチの売れ行きは。
「市場を見ると昨年12月、1月と良い動きとなっている。当社もまずまずの動きだが、市場の伸びまでは届いていない。当社商品では『オモニの極旨キムチ』が好調だ。販促も行っているが、市場のトレンドに合っているということだろう。そういった意味では、高付加価値商品の『王道キムチ』は価格的に市場のトレンドから少し外れてしまっているといえる。まだまだ商品価値を伝えきれてない面もあると思う。市場単価は下がっていないが、それほど上がってはいない。各社値上げを実施しているが、目立つような単価の上昇にはつながっていない。賃金アップが物価の上昇に追い付いていない状況が続いており、節約志向は以前にも増して強まっている」
ー浅漬の動きについて。
「市場全体と同様に当社もマイナスで推移している。冬の白菜は安定していたが、大根や胡瓜は年々確保することが難しくなってきている。我々にとっては国産の野菜が旬の季節に入らないと商売ができなくなる。リスクヘッジという意味では海外産原料に頼らざるを得ない状況で、当社も試験的に海外産原料でキムチを作っている」
ー値上げの動きは。
「昨年の秋に約10%の値上げをしたところ、明らかに数字が落ちた。原料価格はもちろんだが、製造コストが下がることはない。コストが上がった分は製品価格に転嫁せざるを得ないわけだが、特に浅漬は昨年あたりから単純な値上げでは売れ行きに影響が出始めている。売場のプライスラインや競合の動きを見て慎重に対応していくしかない。キムチについては工場の統合が終わって自動化を図っている。神奈川県も最低賃金が1200円を超え、5年以内に1500円になる。それらのことに対応するために生産性を高める努力はこれからも続けていくが、これまで工場統合で抱えていた制約がなくなったので、来年度は作って売ることに注力できる」
ー新ブランド商品。
「乳酸発酵は漬物の最後の砦だと思っている。健康のために腸活が大事だということも認知されている。元来、漬物が持っている優位性を活かして広げていきたいと思っている。当社では『発酵の旨味』ブランドを立ち上げ、現在までに白菜、大根、ぬか床を販売している。賞味期限も長めで食べたら美味しい、という評価もいただいている。秋本会会員企業にも協力していただき、『発酵の旨味』ブランドの商品として3月から3品が新発売となる。単価はややアッパー気味になるが、価値を認めていただいて面で広げていきたいと考えている」
ー流通の再編が進んでいる。
「勝ち組を見極めなければならない。いまはディスカウントに勢いがあるが、過去を見てもディスカウントだけで永続できたところはない。これからどういった動きになるか分からないが、当面は厳しくとも食らいついていくしかないだろう。価格については物価高や賃金アップの他、消費税廃止の可能性など、様々な要因があるため流動的な動きになる。我々としては時代の流れにしっかりついていくことと、売場を広げていくことを考える必要がある。当社の商品については関東圏の売場には入っているので、段ボール出荷で問屋流通にのせて広域流通に対応できるように進めている。すでに主力商品は取組を始めている」
ー外食向けの動きは。
「BtoBはカスタマイズを要求されるので決まるまでに時間がかかるのだが、常温で流通できるキムチを中心に広げていきたいと考えている。チルドの販路も種を蒔いているところだ。また、冷凍も試験的に開発しており、3温度帯で対応することで、外食に限らず新しい販路を広げていきたいと考えている」
【2026(令和8)年2月11日第5221号2面】
秋本食品 電子版 バイヤー必見!イチ押しページ
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マルニ株式会社 代表取締役社長 関眞典氏
数十種の「小袋塩」
日惣協賛助会員に加盟
日惣協賛助会員に加盟
「エンリッチ塩」で知られるマルニ株式会社(大阪府八尾市)が、業務用小袋塩の分野で存在感を高めている。同社は近年、0・5g~1gの小袋商品に注力。数十種類に及ぶ高品質なフレーバー塩は、弁当や惣菜の単なる付属品ではなく、商品の付加価値を高めるアイテムとして需要を伸ばしている。昨年には全国スーパーマーケット協会賛助会員にも加盟し、販路拡大に向けた体制を強化した。昨年4月に社長就任し改革を推し進める関氏に、同社の強みと今後の展望を聞いた。
◇ ◇
ー社長就任から約1年。
「指名を受けた当初は、正直なところお断りしたい気持ちもあった。ただ、会社の状況やこれまでの歩みを考えれば、逃げずに責任を果たすべきだと自然に腹が決まった。任された以上は、中途半端ではなく思い切って取り組みたい、そういう気持ちで就任を受け止めている。社長という立場になり初めて会社全体が俯瞰して見えるようになり、改善すべき点が山ほど残っていることに気づいた。ただ、幸いなことに世の中は機械化やAI化が急速に進んでいる。この環境の変化は当社のような中小企業にとって追い風であり、積極的に設備投資を進めていく方針を固めた」
ー改めて貴社の強みは。
「まず主力製品の『エンリッチ塩』の存在。湿りにくくサラサラとして使いやすい品質が評価され、長年にわたり根強い人気を誇る。一昨年に設備投資を行い、生産効率も大幅に改善した。もう一つの強みは、いち早く『小袋塩』に先鞭をつけたことだ。他社に先駆けて取り組んできたことで、アイテム数の豊富さと品質でリードできていると自負している。また、中小企業ならではの小回りの良さを活かし、小ロットからオリジナル製品の開発に対応できる点も、取引先から評価されているポイントだ」
ー設備投資の効果と今後の計画は。
「『エンリッチ塩』への設備投資は成功だったと考える。単なる作業スピードの向上に留まらず、製造ロスの改善や、包材の余白縮小によるプラスチック使用量の削減を実現した。何より、従業員の作業負担軽減に貢献できたことが大きい。今後は、注力している小袋塩のラインや出荷業務においても同様の効率化を図っていく。また、製造現場だけでなくバックオフィスについてもRPAの導入を推進している。これにより、特定の担当者に依存する属人化を改善し、組織としての強さを底上げする」
ー塩の市場環境。
「家庭用の塩は下げ調子だ。家庭で料理をする機会自体が減っており、これは時代の流れとして仕方のないことである。一方で、惣菜・弁当業界(中食市場)は拡大を続けている。我々はそこを狙い、小袋塩に注力する。ただ、昨今の原材料や資材のコスト高騰の中で、弁当の添付塩がコストカットの対象になるリスクも当然ある。そうならないためには、当社の塩を添付することが『価格以上の価値になる』『商品力が上がる』と感じてもらうことが不可欠だ。生産性の向上でコスト競争力を高めつつ、付加価値の提案による売上拡大、この両立を推し進めていきたい」
(大阪支社・小林悟空)
◇ ◇
ー社長就任から約1年。
「指名を受けた当初は、正直なところお断りしたい気持ちもあった。ただ、会社の状況やこれまでの歩みを考えれば、逃げずに責任を果たすべきだと自然に腹が決まった。任された以上は、中途半端ではなく思い切って取り組みたい、そういう気持ちで就任を受け止めている。社長という立場になり初めて会社全体が俯瞰して見えるようになり、改善すべき点が山ほど残っていることに気づいた。ただ、幸いなことに世の中は機械化やAI化が急速に進んでいる。この環境の変化は当社のような中小企業にとって追い風であり、積極的に設備投資を進めていく方針を固めた」
ー改めて貴社の強みは。
「まず主力製品の『エンリッチ塩』の存在。湿りにくくサラサラとして使いやすい品質が評価され、長年にわたり根強い人気を誇る。一昨年に設備投資を行い、生産効率も大幅に改善した。もう一つの強みは、いち早く『小袋塩』に先鞭をつけたことだ。他社に先駆けて取り組んできたことで、アイテム数の豊富さと品質でリードできていると自負している。また、中小企業ならではの小回りの良さを活かし、小ロットからオリジナル製品の開発に対応できる点も、取引先から評価されているポイントだ」
ー設備投資の効果と今後の計画は。
「『エンリッチ塩』への設備投資は成功だったと考える。単なる作業スピードの向上に留まらず、製造ロスの改善や、包材の余白縮小によるプラスチック使用量の削減を実現した。何より、従業員の作業負担軽減に貢献できたことが大きい。今後は、注力している小袋塩のラインや出荷業務においても同様の効率化を図っていく。また、製造現場だけでなくバックオフィスについてもRPAの導入を推進している。これにより、特定の担当者に依存する属人化を改善し、組織としての強さを底上げする」
ー塩の市場環境。
「家庭用の塩は下げ調子だ。家庭で料理をする機会自体が減っており、これは時代の流れとして仕方のないことである。一方で、惣菜・弁当業界(中食市場)は拡大を続けている。我々はそこを狙い、小袋塩に注力する。ただ、昨今の原材料や資材のコスト高騰の中で、弁当の添付塩がコストカットの対象になるリスクも当然ある。そうならないためには、当社の塩を添付することが『価格以上の価値になる』『商品力が上がる』と感じてもらうことが不可欠だ。生産性の向上でコスト競争力を高めつつ、付加価値の提案による売上拡大、この両立を推し進めていきたい」
(大阪支社・小林悟空)
【2026(令和8)年2月11日第5221号15面】
関口漬物食品株式会社 取締役営業部長 関口 彰氏
農水省のプロジェクトに参画
漬物で野菜摂取を推進
漬物で野菜摂取を推進
関口漬物食品株式会社(関口悟代表取締役、東京都世田谷区)の関口彰取締役営業部長にインタビュー。同社が参画している農林水産省の『野菜を食べようプロジェクト』の取組や事例などについて話を聞いた。関口部長はプロジェクトに参画しているメリットについて、漬物を通じて野菜の生産振興や消費者の健康維持への貢献につながると強調。漬物は野菜を食べる手段の一つとして、業界を挙げて漬物の魅力を強く発信していく必要性を訴えた。(千葉友寛)
ー農水省の『野菜を食べようプロジェクト』について。
「浅漬はダウントレンドとなっており、新商品開発も思ったように進まない中、商品を提案するためには何かが必要だと思っていた。そんな時、農水省のプロジェクトを知り、漬物も野菜摂取の観点から提案できると考えてサポーターになった。漬物はもう少しクローズアップされても良いと思っている。当社はこのプロジェクトに参画し、商品にロゴマークを入れた商品を販売しているが、まだまだ認知度が低く、漬物を通して野菜を食べてもらうところまでには至っていない。漬物はPR不足で魅力が消費者に伝わりきれておらず、相変わらず塩分が高いといった負のイメージを持たれているが、1食分の塩分は他の食品と比べても高くない。このことは業界を挙げて強く発信していく必要がある。漬物は野菜を食べる手段の一つとして、日常的に食べてもらえるよう理解を深めていただく時期にきていると思っている」
ープロジェクトに参画するメリットは。
「先ほどプロジェクトの認知度は低いと言ったのだが、あるスーパーではプロジェクトのロゴが入った漬物を集めて売場を作っている。当社の商品も入っているが、行政と関わりのある商品として展開し、売場も少しずつではあるが目立つようになってきている。ロゴが入っていれば消費者の視認性を高めることができ、商談ではバイヤーに農水省のプロジェクトについて説明することで有利に働いた。現在、当社はプロジェクトの参画から1年半が経ち、ロゴが入った商品は10品まで増えてきているが、これから発売する商品の多くはロゴ入りでの展開となる。行政のプロジェクトに参画し、野菜摂取を推進することで野菜の生産振興や消費者の健康維持に貢献することができる。まさに理想的な取組だ」
ー浅漬の動きは。
「売上は市場全体的に数%落ちている。消費者が求める価格と販売価格に差があり、売場も縮小してきている。需要が減っているということは、浅漬本来の魅力が薄れていると危機感を覚える。その他、原料不足などの要因も考えられるが、一番大きいのは賞味期限が短いこと。近年は食品ロスの問題がクローズアップされ、ロス率が高い商品は発注数が減少傾向にあり、売場も縮小してきている。数年前から漬物売場の主役は浅漬からキムチに移っており、キムチに市場を取られている。当社商品の賞味期限は6日~8日。浅漬は鮮度感、風味、食感が重要で、品質を落とさず賞味期限を延長させることについては継続して研究を行っている」
ー値上げの動きは。
「今年の春夏も一部商品で値上げを実施するのだが、売場は理解してくれても消費者が支持するか分からないので、売場と慎重に相談しながら検討している状況だ。節約志向が高まる中、単純な値上げでは限界がある。値上げをする場合は何か一つ価値を付けて、適正価格だと言えるようにする必要がある。売場も新しいことや何かをやりたいと思っていて、新しい価値を追求してそれを具現化していくのが我々の役割だと思っている」
【2026(令和8)年2月11日第5221号18面】
ー農水省の『野菜を食べようプロジェクト』について。
「浅漬はダウントレンドとなっており、新商品開発も思ったように進まない中、商品を提案するためには何かが必要だと思っていた。そんな時、農水省のプロジェクトを知り、漬物も野菜摂取の観点から提案できると考えてサポーターになった。漬物はもう少しクローズアップされても良いと思っている。当社はこのプロジェクトに参画し、商品にロゴマークを入れた商品を販売しているが、まだまだ認知度が低く、漬物を通して野菜を食べてもらうところまでには至っていない。漬物はPR不足で魅力が消費者に伝わりきれておらず、相変わらず塩分が高いといった負のイメージを持たれているが、1食分の塩分は他の食品と比べても高くない。このことは業界を挙げて強く発信していく必要がある。漬物は野菜を食べる手段の一つとして、日常的に食べてもらえるよう理解を深めていただく時期にきていると思っている」
ープロジェクトに参画するメリットは。
「先ほどプロジェクトの認知度は低いと言ったのだが、あるスーパーではプロジェクトのロゴが入った漬物を集めて売場を作っている。当社の商品も入っているが、行政と関わりのある商品として展開し、売場も少しずつではあるが目立つようになってきている。ロゴが入っていれば消費者の視認性を高めることができ、商談ではバイヤーに農水省のプロジェクトについて説明することで有利に働いた。現在、当社はプロジェクトの参画から1年半が経ち、ロゴが入った商品は10品まで増えてきているが、これから発売する商品の多くはロゴ入りでの展開となる。行政のプロジェクトに参画し、野菜摂取を推進することで野菜の生産振興や消費者の健康維持に貢献することができる。まさに理想的な取組だ」
ー浅漬の動きは。
「売上は市場全体的に数%落ちている。消費者が求める価格と販売価格に差があり、売場も縮小してきている。需要が減っているということは、浅漬本来の魅力が薄れていると危機感を覚える。その他、原料不足などの要因も考えられるが、一番大きいのは賞味期限が短いこと。近年は食品ロスの問題がクローズアップされ、ロス率が高い商品は発注数が減少傾向にあり、売場も縮小してきている。数年前から漬物売場の主役は浅漬からキムチに移っており、キムチに市場を取られている。当社商品の賞味期限は6日~8日。浅漬は鮮度感、風味、食感が重要で、品質を落とさず賞味期限を延長させることについては継続して研究を行っている」
ー値上げの動きは。
「今年の春夏も一部商品で値上げを実施するのだが、売場は理解してくれても消費者が支持するか分からないので、売場と慎重に相談しながら検討している状況だ。節約志向が高まる中、単純な値上げでは限界がある。値上げをする場合は何か一つ価値を付けて、適正価格だと言えるようにする必要がある。売場も新しいことや何かをやりたいと思っていて、新しい価値を追求してそれを具現化していくのが我々の役割だと思っている」
【2026(令和8)年2月11日第5221号18面】
関口漬物食品
株式会社山重 代表取締役社長 杉山 博氏
時代の変化に流されない
様々な販売チャネルへ商品供給
様々な販売チャネルへ商品供給
株式会社山重(杉山博社長、東京都葛飾区)は、漬物をはじめ日配のプロとして全国に物流網を持つ一次荷受問屋。取引先は全国44都道府県、仕入れ件数は346社と地方の名産品も数多く取り扱っている。同社は単に商品を物流に乗せるだけではなく、メーカーとともに商品開発して企画・売場提案を行いながら量販店、外食、中食、ベンダーなど様々な販売チャネルに供給。物価高や米価格の高騰が続く中、漬物原料は不作のものが多く、商品の安定供給が課題となっている。時代の変化のスピードが速まる中、杉山社長は「常に消費者のニーズに、そして時代の変化に敏感になること」をテーマに設定し、様々な変化に迅速に対応することが重要だと強調した。(千葉友寛)
ー今期の業績は。
「今期の12月迄の売上・利益ともに微増となっている。上向きとなっている要因は、得意先が好調なことや今のニーズに合った商品を展開できているからだと考えている。現在、最も高いニーズは何と言っても価格。実質賃金のマイナスは約1年続いており、節約志向は高まるばかりで、選別消費の動向は以前にも増して強まっている。特に漬物や日配は米との関連性が強いので、米価格が高騰したことで反比例的に売れ行きは全般的に低調となっている。当社は売上の90%以上が漬物となっているが、けん引しているのはキムチであり、その中で売れている分類はPB商品で、NB商品よりも安くてお得感があるもの。以前は味に差があったが、現在はPB商品の品質も上がっており、消費者の支持を得ている。当社にとって利益率は低いが、量が出ているので売上に大きく貢献している」
ー理想の売場について。
「ただ商品を置くだけでは売れない時代。マネキンを置く店が少なくなっているので、試食提供や商品情報を発信することもできない。特にコロナ後は店頭での試食販売が極端に減少している。人手不足や衛生面の問題もあるが、マネキンを置けなければポップやチラシを作成するなど、お客様の目に入る工夫やアイデアが必要になる。優れた新商品を開発しても、味も含めてお客様に商品の情報や良さが伝わらなければ購入にはつながらない。セルフの日配売場では、手に取る以前に目に入っていないことが多々ある。ある店舗では責任者が漬物好きということで、漬物を地元の素材を使用したもの、定番商品、全国の名産品の3カテゴリーに分けて販売している。名産品などはポップやチラシで商品を紹介しており、売れ行きも好調だ。店や売場によってニーズは異なり、我々にはそれぞれに合った商品を提案することが求められている。また、これからの時代は店舗に来てから商品情報を得るのではなく、SNS等を通じて事前に商品情報を得てから購入するという消費者行動も見逃せず、店舗に行く前に消費者に情報を提供する一手も必要ではないかと考えている。これまでの経験や知識だけではなく、新しい視点も持ちながら売場提案を行っていきたいと思っている」
ー今後の方針は。
「時代の変化は想像以上に早く、1年があっという間に過ぎる。我々はその変化に迅速に対応しなければならない。当社では社員に対して、常に消費者のニーズに、そして時代の変化に敏感になるために、見て見ぬふりをせず時代の変化に流されないようにしよう、と言っている。『103万の壁』や『飲食料品の消費税ゼロ』は最近出てきたワードだが、早期に実現することになりそうだ。原点に戻って足元からしっかりすることも大事だが、『飲食料品の消費税ゼロ』については、こちらから手を打たなければ、必需品にのみ消費が動き、漬物に消費行動が及ぶか否か不透明であるが、このチャンスを成果として受け取るために、変化を恐れずに動き出せばこれまでと違った景色が見られると思っている」
ー業態で好不調の差が出てきている。
「同じ業態はもちろんだが、スーパー、ディスカウント店、ドラッグストア、コンビニエンスストアなど、業態を超えて競争が激しくなってきている。好調なのは節約志向のニーズに対応しているディスカウント店やドラッグストア。特にドラッグストアは方向性が明確で、業界1位と2位が統合して店舗数は5600店となり、国内店舗数で2割を占める巨大連合が誕生した。商品の仕入れや物流などを効率化し、より競争力を高めようとしている他、近年は食品にも力を入れている。ドラッグストアは今後も拡大路線が続くだろう。どのような業態や企業と手を組んで進んでいくのか、取引先の将来性や方向性を見極めていくことも重要だ」
ー価格競争が続いている。
「流通によっては物価高と逆行するように価格競争が激しくなっているところもある。価格や条件を受け入れないと売場に入れないケースもある。働き方改革も進む中、人件費、様々なコスト、物流費は下がる余地がなく、課題は山積みだ。当社としてはメーカーとともに商品開発して企画・売場提案を行いながら量販店、外食、中食、ベンダーなど様々な販売チャネルに供給していくことに注力する。また、メーカーにとって原材料の確保は重要なファクターであり、この確保が商品の安定的な供給につながるが、消費者側からすると、不安定な商品供給に対する不安が、代替商品への移行につながることは否めない。メーカーサイドから原材料の確保情報をいち早く入手し、消費者の不安を取り除くことも重要な役割と考えている。我々はメーカーに商品を供給していただかなければ事業を継続していくことができない。お客様に喜ばれる商品を提案し、双方がウィンウィンの関係を続けることが最大のテーマだと考えている」
ー今期の業績は。
「今期の12月迄の売上・利益ともに微増となっている。上向きとなっている要因は、得意先が好調なことや今のニーズに合った商品を展開できているからだと考えている。現在、最も高いニーズは何と言っても価格。実質賃金のマイナスは約1年続いており、節約志向は高まるばかりで、選別消費の動向は以前にも増して強まっている。特に漬物や日配は米との関連性が強いので、米価格が高騰したことで反比例的に売れ行きは全般的に低調となっている。当社は売上の90%以上が漬物となっているが、けん引しているのはキムチであり、その中で売れている分類はPB商品で、NB商品よりも安くてお得感があるもの。以前は味に差があったが、現在はPB商品の品質も上がっており、消費者の支持を得ている。当社にとって利益率は低いが、量が出ているので売上に大きく貢献している」
ー理想の売場について。
「ただ商品を置くだけでは売れない時代。マネキンを置く店が少なくなっているので、試食提供や商品情報を発信することもできない。特にコロナ後は店頭での試食販売が極端に減少している。人手不足や衛生面の問題もあるが、マネキンを置けなければポップやチラシを作成するなど、お客様の目に入る工夫やアイデアが必要になる。優れた新商品を開発しても、味も含めてお客様に商品の情報や良さが伝わらなければ購入にはつながらない。セルフの日配売場では、手に取る以前に目に入っていないことが多々ある。ある店舗では責任者が漬物好きということで、漬物を地元の素材を使用したもの、定番商品、全国の名産品の3カテゴリーに分けて販売している。名産品などはポップやチラシで商品を紹介しており、売れ行きも好調だ。店や売場によってニーズは異なり、我々にはそれぞれに合った商品を提案することが求められている。また、これからの時代は店舗に来てから商品情報を得るのではなく、SNS等を通じて事前に商品情報を得てから購入するという消費者行動も見逃せず、店舗に行く前に消費者に情報を提供する一手も必要ではないかと考えている。これまでの経験や知識だけではなく、新しい視点も持ちながら売場提案を行っていきたいと思っている」
ー今後の方針は。
「時代の変化は想像以上に早く、1年があっという間に過ぎる。我々はその変化に迅速に対応しなければならない。当社では社員に対して、常に消費者のニーズに、そして時代の変化に敏感になるために、見て見ぬふりをせず時代の変化に流されないようにしよう、と言っている。『103万の壁』や『飲食料品の消費税ゼロ』は最近出てきたワードだが、早期に実現することになりそうだ。原点に戻って足元からしっかりすることも大事だが、『飲食料品の消費税ゼロ』については、こちらから手を打たなければ、必需品にのみ消費が動き、漬物に消費行動が及ぶか否か不透明であるが、このチャンスを成果として受け取るために、変化を恐れずに動き出せばこれまでと違った景色が見られると思っている」
ー業態で好不調の差が出てきている。
「同じ業態はもちろんだが、スーパー、ディスカウント店、ドラッグストア、コンビニエンスストアなど、業態を超えて競争が激しくなってきている。好調なのは節約志向のニーズに対応しているディスカウント店やドラッグストア。特にドラッグストアは方向性が明確で、業界1位と2位が統合して店舗数は5600店となり、国内店舗数で2割を占める巨大連合が誕生した。商品の仕入れや物流などを効率化し、より競争力を高めようとしている他、近年は食品にも力を入れている。ドラッグストアは今後も拡大路線が続くだろう。どのような業態や企業と手を組んで進んでいくのか、取引先の将来性や方向性を見極めていくことも重要だ」
ー価格競争が続いている。
「流通によっては物価高と逆行するように価格競争が激しくなっているところもある。価格や条件を受け入れないと売場に入れないケースもある。働き方改革も進む中、人件費、様々なコスト、物流費は下がる余地がなく、課題は山積みだ。当社としてはメーカーとともに商品開発して企画・売場提案を行いながら量販店、外食、中食、ベンダーなど様々な販売チャネルに供給していくことに注力する。また、メーカーにとって原材料の確保は重要なファクターであり、この確保が商品の安定的な供給につながるが、消費者側からすると、不安定な商品供給に対する不安が、代替商品への移行につながることは否めない。メーカーサイドから原材料の確保情報をいち早く入手し、消費者の不安を取り除くことも重要な役割と考えている。我々はメーカーに商品を供給していただかなければ事業を継続していくことができない。お客様に喜ばれる商品を提案し、双方がウィンウィンの関係を続けることが最大のテーマだと考えている」
【2026(令和8)年2月11日第5221号19面】
電子版 地域セレクション特別会員 山重
<社長に聞く>株式会社大安 代表取締役社長 大角安史氏
まいにちUMAMI野菜
健康性訴求へ漬物を再定義
健康性訴求へ漬物を再定義
株式会社大安(大角安史社長、京都市左京区)は昨年末、「まいにちUMAMI野菜宣言」を発表した。漬物を「UMAMI野菜」と再定義し、健康、日常食、そしてグローバルな視点から、市場に根付く固定観念を塗り替えていく狙いだ。
ー漬物は健康食
まず着手するのが、漬物に対する「健康イメージ」の刷新だ。大角社長は「漬物は塩分が多く、健康に悪いという思い込みは根強い」と指摘する。しかし実際には、保存技術の向上とともに近年の漬物は低塩化が進んでいる。大角社長は「漬物は生野菜よりもカサが減るため、食物繊維などの栄養を丸ごと、かつ効率的に摂取できる。野菜に含まれるカリウムにはナトリウム(塩分)を排出する効果も期待できる」と、その機能性を強調する。
さらに、同社の漬物は塩漬けによる乳酸発酵を経ており、近年注目される「腸活」への貢献度も高い。健康食品としての側面を強く訴求していく構えだ。
ー「ハレの日」から日常の食卓へ
「京漬物=かしこまった食べ物」というイメージについても、変革の必要性を説く。「高級品としての認知はありがたいことだが、同時に食べるハードルを上げてしまっている側面もある」と分析する。
中元・歳暮などの贈答文化や、土産物の「お裾分け」習慣が希薄化する中、同社のビジネスモデルは転換期を迎えている。生き残りをかけるには、日常の食卓への浸透が不可欠となる。「旨みの詰まった野菜くらいの気軽な認識で、まずは試していただきたい」。
これまでの格式を取り払い、現代のライフスタイルに即した「野菜料理」としてのポジション確立を目指す。
ー世界共通語「UMAMI」を武器に
海外発信も見据える。大角社長はこれまでの取組を振り返り、「PicklesやTsukemonoとして販売しても、その魅力を伝えきることはできていない。『UMAMI』という、日本発で世界的に認知された言葉を活用し、ヘルシーで旨みのある野菜加工品としてブランディングを図る」と狙いを語る。世界中から観光客が集まる京都から、その価値を直接伝え、海外展開への足掛かりとする考えだ。
ー「ちいさなだいやす」が鍵
この「UMAMI野菜」浸透の鍵を握る戦略商品と位置付けるのが、カップ入りの「ちいさなだいやす」シリーズである。
個食化・即食化が進む現代のニーズに対応した同商品は、手軽に手に取れるエントリーモデルとして機能する。大角社長は「今後も新商品を拡充する。これまでの漬物の枠組みを超えた商品開発も視野に入れている。国内外へ『UMAMI野菜』の魅力を広げていきたい」と意欲を見せた。
(構成 小林悟空)
ー漬物は健康食
まず着手するのが、漬物に対する「健康イメージ」の刷新だ。大角社長は「漬物は塩分が多く、健康に悪いという思い込みは根強い」と指摘する。しかし実際には、保存技術の向上とともに近年の漬物は低塩化が進んでいる。大角社長は「漬物は生野菜よりもカサが減るため、食物繊維などの栄養を丸ごと、かつ効率的に摂取できる。野菜に含まれるカリウムにはナトリウム(塩分)を排出する効果も期待できる」と、その機能性を強調する。
さらに、同社の漬物は塩漬けによる乳酸発酵を経ており、近年注目される「腸活」への貢献度も高い。健康食品としての側面を強く訴求していく構えだ。
ー「ハレの日」から日常の食卓へ
「京漬物=かしこまった食べ物」というイメージについても、変革の必要性を説く。「高級品としての認知はありがたいことだが、同時に食べるハードルを上げてしまっている側面もある」と分析する。
中元・歳暮などの贈答文化や、土産物の「お裾分け」習慣が希薄化する中、同社のビジネスモデルは転換期を迎えている。生き残りをかけるには、日常の食卓への浸透が不可欠となる。「旨みの詰まった野菜くらいの気軽な認識で、まずは試していただきたい」。
これまでの格式を取り払い、現代のライフスタイルに即した「野菜料理」としてのポジション確立を目指す。
ー世界共通語「UMAMI」を武器に
海外発信も見据える。大角社長はこれまでの取組を振り返り、「PicklesやTsukemonoとして販売しても、その魅力を伝えきることはできていない。『UMAMI』という、日本発で世界的に認知された言葉を活用し、ヘルシーで旨みのある野菜加工品としてブランディングを図る」と狙いを語る。世界中から観光客が集まる京都から、その価値を直接伝え、海外展開への足掛かりとする考えだ。
ー「ちいさなだいやす」が鍵
この「UMAMI野菜」浸透の鍵を握る戦略商品と位置付けるのが、カップ入りの「ちいさなだいやす」シリーズである。
個食化・即食化が進む現代のニーズに対応した同商品は、手軽に手に取れるエントリーモデルとして機能する。大角社長は「今後も新商品を拡充する。これまでの漬物の枠組みを超えた商品開発も視野に入れている。国内外へ『UMAMI野菜』の魅力を広げていきたい」と意欲を見せた。
(構成 小林悟空)
【2026(令和8)年2月1日第5220号3面】
大安 まいにちUMAMI野菜宣言












































