奈良屋本店(増田幸彦代表、奈良県奈良市)は1300年以上の歴史を持つ奈良漬を、科学的知見によりアップデートし、「オール奈良」素材によるブランド価値向上に取り組む。
同社は奈良県内で唯一、奈良漬のJAS(日本農林規格)認証を持つメーカーである。増田代表は食の安全・安心を最優先事項に掲げ、これまで長年にわたり熟練の職人が積み上げてきた経験と勘に頼る世界だった奈良漬の製造工程をデータ化。 天候や環境に左右されず、常に高いレベルで均一な美味しさを消費者に届けられる生産体制を構築してきた。
増田代表は「昔ながらの製法を守るのは、単にそれが伝統だからではない。それがベストと確信できたから」と胸を張る。
原料となる野菜については、地域経済の活性化と安心安全への配慮から「オール奈良」を目標に掲げて調達改革を進めており、現在は全原料の約7割が奈良県産となっている。中でも胡瓜には伝統の「大和三尺胡瓜」を、茄子には「大和丸なす」を採用しほぼ全量を奈良県産で賄う体制を整えた。
また、近年では地元産のズッキーニや菊芋を用いた奈良漬の商品化にも取り組んでおり、新感覚の食感と豊かな風味が楽しめる。
さらに2024年からは、全商品において添加物不使用(無添加化)を完全実現した。増田代表は「製造過程で奈良漬の変化を観察し調整することで、添加物を使用していた頃と変わらない味わいと、優れた保存性を維持できるようになった」と明かすように、同社の奈良漬製造技術は今も深化し続けている。
一方で、すべての工程を昔の姿に戻そうとしているわけではない。例えば現代人の嗜好に合わせて適度に砂糖を加えることで、まろやかな甘みを生み出し、より食べやすい味わいを追求。低温管理を行うことで熟成をコントロールし、美しいべっ甲色の仕上がりを作り出している。
さらに昨年は学術界からも高い関心を集めた。奈良先端科学技術大学院大学の渡辺大輔准教授との共同研究により、奈良漬は製造過程においてアルコール濃度の高い環境下でも生存・増殖できる乳酸菌が増加する「発酵食品」であることを科学的に証明した。
この成果は、奈良漬が持つ機能性や価値向上にとどまらず、今後のさらなる品質向上や新商品開発にも大きく貢献しうる歴史的な足跡として、業界内外から注目を集めている。
【2026(令和8)年7月1日第5233号7面】





























