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塩 インタビュー2018

2018年6月25日号 塩特集

伯方塩業株式会社 代表取締役社長
日本特殊製法塩協会 会長 石丸一三氏
 
塩の関心高める施策を  製法による違いへ理解求める
伯方塩業株式会社(本社=愛媛県松山市)では2018(平成30)年6月22日、武田清隆氏から石丸一三(いしまるかずみ)氏へ代表取締役社長のバトンが受け渡された。看板商品「伯方の塩」は日本の伝統的な製塩技術「流下式枝条架併用塩田」で作られる塩の味を追求したもので、ニガリをはじめ海水中の成分を程よく残し「塩かどのないからさ」で、塩味の中にほんのりとした甘さを感じるのが特徴の塩である。さらに2010年11月には、その「流下式枝条架併用塩田」を大三島工場内に再現して、「されど塩」、「されど塩 藻塩」を商品化。塩市場のレベル向上、伝統技術の保持に大きく寄与している。また、石丸氏は5月30日には日本特殊製法塩協会の会長に就任している。伯方塩業社長と特塩協会長、2つの立場から業界発展を目指す石丸氏に話を聞いた。
(小林悟空)

――新社長就任のご感想を。
「35年程前に入社し、全くの未経験からこうした立場になれたことは驚きであり、身が引き締まる思いだ。地に足をつけ、5年後10年後を見据えた経営をしていきたい。武田前社長は製造部出身であり、製造環境の整備に尽力した。一方私は入社以来営業部で勤めてきたことから、営業面の強化を期待されているのだと理解している」
 
――塩業界の現状。
「塩は必需品であるが季節商材等と比べると目立たない。塩に関心をもつ人も少なかった。創業時の先人が塩は代替品がなく人間が生き続けていくためには必要な基本食料であることを訴え続けた。その後も弊社を含む多くの企業が品質向上を目指し、広報活動に努めてきた結果、塩にこだわりを持つ人が少しずつ増えてきたと感じる。その反面、周知のとおり減塩の風潮が高まっており、減塩食品のレベルが上がっている。少子高齢化で食のボリュームが減少といった問題も逆風になっている。塩は悪者でないと周知することは、業界全体で取り組むべき課題となっている」
 
――35年間の営業職で感じたこと。
「塩は需要が極端に跳ね上がることもないため、他社様とパイの食い合いをする形になるのも事実だ。その中で、販売店様に弊社商品導入のメリットを如何に感じてもらうかを考えてきた。私の場合、『伯方の塩』の味や製法、知名度に自信を持ってコツコツ提案をできたことは恵まれていた」
 
――営業面の強化について。
「主力商材が家庭向けであることから2年に一度消費者アンケートを取っているのだが、結果を見ると『伯方の塩』を知っている割合は9割を超えるのに大して使用率は大きく下回る。このギャップをどう埋めるかが問題だ。塩は試食すれば違いがはっきりするが、言葉だけで違いを説明するのは難しい。まずは一度手にとってもらう必要がある。従来型の店頭での販促は塩に関心を持つ人には有効だが、そうでない人へはリーチしづらい面もあった。そこで最近ではSNSを駆使したキャンペーン実施で関心をもつきっかけ作りをしたり、伝統的製法を蘇らせる運動の中から生まれた弊社のストーリーに共感してもらえるよう大三島工場見学を実施したりと、手を打っている」
「業務用需要はこれまで後手に回っていたが近年は少しずつ伸長している。今後は更に積極的に開拓していくつもりだ。減塩の流れや料理離れによる中食、外食や簡便食の増加は今後も継続すると予想される。新たな市場開拓は必須だと考えている」
 
――業務用シェア向上の方針。
「前述のとおり、減塩ニーズの高まりを受け食用塩消費量は右肩下がりとなっている。しかし特塩協で『適塩』を呼びかけているように、塩は代替が効かず過度な減塩は絶対にしてはいけない。その必須食材をただ漫然と使い続けるのではなく、製法による違いを感じ、関心をもって選択していただけるよう理解を求めたい。私達も、品質改善や安定供給に努めていくとともに、弊社商品を使用することが消費者へのアピールポイントとなりうるよう努力していく」
 
――特殊製法塩協会会長として重視すること。
「対外的には『適塩』の意図を今まで以上に周知していくこと。これは企業単位で達成できるものではなく、業界全体が力を合わせねば実現は不可能だ。当協会の設立目的の一つでもあったことから、この方針はぶらさずにいきたい。また運営では加入社に対し如何にメリットを提供していくか、具体的な形に詰めていきたい。加入社を増やすことが当会の発信力を高めることにも繋がるので、最善の方法を模索中だ」

【石丸一三氏プロフィール】愛媛県伊予市出身、昭和33年8月24日生まれ。大学卒業後、松山市のアパレル企業に就職・退社し、伯方塩業に入社。以来約35年間、営業部に従事し、営業本部長、取締役副社長等を歴任し平成30年6月22日に取締役社長に就任した。
【2018年6月25日第4939号9面】
 
 
 
 
株式会社青い海
代表取締役社長 又吉元榮氏
 
沖縄の歴史とこだわり 適塩も継続的に訴えていく
1960年代に発達したイオン交換膜方式による製塩の普及を受けて沖縄でも本土復帰と共に専売法が敷かれ昔ながらの塩田から塩を作る製造法は禁止された。青い海創業者・知念隆一氏による「青い海と自然塩を守る会」は沖縄の食文化とシママースを守るために発足し紆余曲折を経て政府からは特殊用塩として塩の製造が認められた。そして1997年の自由化以降、シママースは晴れて沖縄の海水の使用が可能となり沖縄ブランドを発信し続けている。青い海の代表取締役社長である又吉元榮氏にあらためて沖縄から見た製塩の歴史を振り返って頂いた。(中村裕貴)
◇    ◇
‐商品開発は御社の歴史そのものでもありますね。
「塩製造は技術発達を遂げた中で多様性を見つめ直し選択権を持つことが出来るようになった。それが塩の自由化であった。特殊用塩の中でも論争が起きて逆に注目を受けたことも懐かしい思い出となっている。弊社はそもそも海水100%で塩製造を行うことを目的にして設立されたが、専売法の下で輸入天日塩を溶解し再結晶させてにがりをブレンドする方法しか取れなかったという経緯がある。専売制がなくなり沖縄の海水を使用した塩製造が晴れて出来るようになった。海水の3・5%が塩分。そのうちの約8割が塩化ナトリウムで残りはカルシウム、マグネシウム、カリウムなどミネラルを含むにがり成分となっている。海水で天日塩を溶解させれば淡水よりもミネラル含有率は当然高くなる。1997年には糸満沖で取水した海水100%で造るシリーズも誕生した」
 
‐製塩上のこだわりについて。
「RO(逆浸透膜)で海水中の塩分濃度を上げ、更に濃縮鍋に移し替えてカルシウムを析出させ上澄みを取っている。その後、別の平釜で煎ごう工程に進み塩を結晶化させる。その繰り返しだ。私共の製塩技術は石川県珠洲市から着想を得ている。珠洲市の角花家は揚げ浜式塩田でかん水を造り薪で炊き上げてカルシウムを析出させていた。意図的に火を止めて一晩寝かせると表面に剥離したカルシウム成分が表面に固まるのでそれを取り出してから塩の結晶化を行う。カルシウム成分を取り出すことで塩のざらつきを無くし食感や使い勝手を良くしている。青い海も調味料としての塩を重視しているので、カルシウム成分を最初に取り出してから製塩している。一方でマグネシウムやカリウムなど微量のミネラルを残すことで加工食品の良さを引き出すことも大切にしている。月当たり50トンのペースで製造しているため価格面でも海水塩としてはお求め安い価格となっている」
 
‐しかし塩業界全体として製造コストは増大している。
「目標値としてはキロ当たり500円を予定していた。けれども昨今の原油価格高騰でそれが達成しにくい状況となってしまった。25年前は原油1リッターあたり25~29円だったが今では70~80円代。燃料コストの増大が大きな負担になっている。現在、結晶化段階は全てガス燃料であるが海水塩『青い海』の濃縮工程では廃油燃料を利用するなど環境対策の取り組みも弊社では行っている」
 
‐特殊製法塩協会のこれからについて。
「石丸新会長を中心に理事会を通じて意見交換をしていくつもりだが、運送面において資材を含めてスケールメリットを生かす形でコスト削減を行えるかどうかを論議していきたい。配荷ルートなどは守秘義務があるわけだが物流会社への発注など在庫管理を含めて効率化のシステム化を作れればと思う。物流拠点は全国に複数あり集約することは大変かもしれないが加盟社がコンプライアンスを維持した上で議論していくことが大事だ。幹部同士でいがみ合っていては何も始まらない」
 
‐適塩を継続的に訴えていくべきだ。
「それは一番重要だ。卵1日1個説を覆すのに100年かかった。しかし今では食事がコレステロール値に与える影響は少なく摂取すべき量は人によって違いがあることが明らかになっている。同じように〝塩=高血圧〟になるということが流布されてしまった。1950年代にアメリカの高血圧学者メーネリーがラット実験で餌にも水にも高塩分な物を与え続け半ば強制的に高血圧にして塩の摂取が高血圧と相関するという論文を発表した。しかし、その後高血圧の研究の権威である青木久三氏が先天的に高血圧であるネズミを発見し、人間についても本能性高血圧症など、高血圧には遺伝だけでなく腎臓障害やホルモン分泌でも高血圧な人がいることをつきとめて高血圧と言われる人の9割が塩の摂取とは関係がないことを論じている。外部環境を含めて人それぞれに合った塩の摂取量がある。健康的な野菜生活を続けるためにはカリウムを排出することが必要で、そのためにはナトリウムを摂取して健康バランスを保たなければならない」
【2018年6月25日第4939号10面】
 
 
 
 
株式会社天塩
代表取締役社長 鈴木 恵氏
 
天塩販売から45周年 梅の豊作で売上げ順調
株式会社天塩(鈴木恵社長、東京都新宿区)は江戸時代から受け継がれてきた赤穂伝統の味を基本に「にがりを含んだ塩」へのこだわりを持つ。同社は「赤穂の塩」の全国総販売元であり家庭塩および関連商品の販売専門会社である。食塩やにがりを含んだ無機ミネラルの総合メーカーである赤穂化成や同社を中心としたAKOグループはあまりにも有名だ。今年2月に新社長に就任した鈴木恵氏に話を聞いた。(中村裕貴)
◇    ◇
‐天塩のこだわりや歴史について。
「製造を赤穂化成が、天塩が販売を担当するということで私も塩製造へのこだわりや歴史を身近に捉え伝えていくことを重視している。日本は海に囲まれており、海水塩主体の歴史を長く持つ。古代の藻塩から始まり、揚浜や入浜へと発展し1660年頃には入浜式製塩方が確立され赤穂は十州塩田の中核となった。赤穂の製塩はそれより前の1626年に池田光政の家臣、岡田弥兵衛により赤穂入浜塩田の開拓が始まっている。『塩を造り・塩を活用する』のが正に和食文化であり奥が深く、こだわりと知恵を合わせ持っている。しかし現代社会では減塩志向が広がっており、そこを受け止めながら頑なに変えない部分を持ちつつ試行錯誤した商品を消費者に提供していきたい。料理一つをとっても簡便化傾向にあるが手作りの良さを体験してもらうという機会の提供についても努力していく。東京と赤穂の双方でキッチンスタジオを設け発信基地として位置付けて天塩の良さを伝えていく」
 
‐「赤穂東浜の塩」も伝統を今に伝える興味深い商品だ。
「赤穂の海水と伝統の平釜製法を用いた赤穂塩である。赤穂東浜は江戸初期から塩作りで発展し、その高い製塩技術は日本全国に伝わった。この地で作られた塩は塩廻船で江戸をはじめ日本各地に流通し、にがりの入った赤穂の「大俵塩」として名を馳せた。赤穂東浜塩業組合では塩作りを行う浜人たちが集い、こだわりの塩を作るため試行錯誤を重ねた。そんな先人達の塩作りに対する情熱に思いを寄せて過去の製法や原料の聞き取りを行い、伝統のにがりを含むまろやかな塩に仕上げた。1971年の塩田整備法により1500年続いた塩田は廃止され赤穂東浜塩業組合は解散した。しかし、にがりを扱っていた化成部門が独立して赤穂化成を設立した。自然塩普及運動を通じてにがりを含んだ粗塩『赤穂の天塩』を開発して天塩が販売したのが1973年である」
 
‐今年は45周年キャンペーンも展開している。
「販促時期にテレビCMだけでなく、商品に付いているシールで応募して頂く賞品プレゼントのキャンペーンも同時に行っている。そういう意味ではメイン商品である1㎏の商品にも力を入れていきたいし包材も高質感のあるラミネート加工に一新し裏面には梅干など漬物の作り方を載せる工夫を施した。売り場では今年は豊作型となっている梅の横に商品を並べて頂く形の販促もしていて『赤穂の天塩1㎏』は好調を維持している。宅配などで既に始めている梅干の作り方をリーフレットとして商品に付ける販促を店舗でも採用し、地上戦ではないが買う人が手にして頂いた時にできるだけ情報を提供していきたい。年末には漬物のリーフレットを付ける形の販促も予定している」
 
‐新社長就任の抱負をお聞かせ願いたい。
「私は大学が工学部土木科で物作りが好きなため橋梁の建設に携わっていた。土木会社は退社し、その後、塩製造の赤穂化成に入社したというのが天塩に来ている大まかな経緯である。赤穂化成では約30年、工場建設や設備の設置に関わってきた。その中でも海洋深層水の工場建設は大きなプロジェクトであった。1985年、旧科学技術庁が海洋深層水の研究と開発のモデル地区に指定したのが高知県室戸岬で、その沖合から取水し商品化したのが海洋深層水である『天海の水』だ。発売されると大フィーバとなり会社の売上げが倍になる程であった。こうして長く技術畑にいたわけだが、〝自分で造ったものを自分で売っていこう〟という精神の下で今に至っている。メーカーである赤穂化成との連携を大切にして、自分自身の経験も営業的施策に活用して商品を販売してきたい」
【2018年6月25日第4939号10面】
 
 
 
 
株式会社ソルト関西
代表取締役社長 山本 博氏
 
需要は家庭用から業務用へ 売上88億円を突破
株式会社ソルト関西(大阪市中央区)は、平成13年に関西域内の卸売会社6社が事業統合して設立された元売企業。近年は塩元売として培った長年の信頼関係をもとに多角的な経営を展開することで売上を伸ばしている。
代表取締役社長の山本博氏は、現在全国塩元売協会会長、塩元売協同組合理事長の要職を務めており、長年にわたって塩の安定供給、業界発展に貢献して来た功績から、昨年藍綬褒章を受章した。製造・物流コスト増による国内塩の値上げ、食用塩の使用量減少など難しい局面が続く業界の動向や、同社業績について聞いた。(門馬悠介)
◇     ◇
‐昨年から今年にかけての食用塩の動向。
「人口減に合わせ全体としては右肩下がりだが、中でも特に農水産業向けの減少幅が大きい。水産物の相次ぐ不漁や昨年秋の野菜の不作など自然を相手にする業界の難しさを改めて感じる。一方で加工食品業界では比較的安定した量を使用いただいている。またこのところ顕著なのは、家庭用から業務用への需要のシフトだ。家庭用が弱含みしている割には、業務用が落ち込んでいない。今年の年明けなど外食産業の数字が落ち込んだと言われていたが、塩の使用量に影響するほどでは無かった。背景には主婦が働きに出ることで、家庭で料理をする機会が減りそれに伴って中食・外食需要が伸びている状況があると考えている。商品個別に見ると業務用は家庭用と比較すれば幅が少ないので、商品が集約化される傾向になって来ている」
 
‐商品の分類別に見て好不調の波はあるか。
「塩は業種によって、使用するタイプが異なる。例えば業務用では、野菜加工は野菜に付着しやすいウェットな塩、添加物関係はブレンドしやすいドライな塩などだ。いずれも安心安全を基本とした上で、作業性によって使い分けられている。また全体の分母が非常に大きいため、ひとつのトレンドが使用量全体に影響することが起き難い。強いて挙げるとすれば、家庭用を中心にして近年藻塩が増加している」
 
‐国内塩値上げについて。
「得意先の各社にご理解をいただき、今年度から約20%の値上げを実施させていただいた。理由として1番大きいのは石炭価格の上昇で、続いて物流費、工場設備を維持するための部材費の上昇がある。国内塩メーカーが強く望まれたことで、非常に骨のある値上げとなった。食品として安心安全というのは大前提であり、高品質な商品を供給し続けていくにはお願いせざるを得ない状況だった。塩は重くて安い、所謂物流費の負担能力が非常に小さい商品であることも理由の一つとなっている」
 
‐輸入塩では。
「輸入商社の発表を待たなくては具体的なことは申し上げられないが、現状、来年1月からの値上げは間違い無い。輸入塩ではまずソーダ工業用の価格が決まり、次に一般用が決まるといる流れだが、今年の秋口には実際の値上げ幅などが判明するだろう。製造コストの上昇は国内外問わず同じ状況なので、止むを得ない部分だと考えている」
 
‐適塩に関する取り組み。
「人間は生体機能として、多少塩を多く摂取しても体外へ排出する機能が備わっている。そのため、個人的には過剰に心配する必要は無いと考えているが、消費者へPRする上では〝一律な減塩では無く生活スタイルに合わせた塩の摂取が必要〟という言い方が適していると思う。炎天下の中、力仕事をすることが多かった時代と現代とを比べれば、体が必要とする塩の量は異なる。頭で考えて減塩するのではなく、舌で美味しく感じられる食事を摂ることが適切な塩分摂取に繋がる。塩は人間の生命維持に欠くべからざるもので、我々業界に携わっている者としては、そうしたものを扱っている誇りを持って臨むことも必要だ」
 
‐全国塩元売協会、塩元売協同組合としての活動。
「塩と暮らしを結ぶ運動(くらしお)には、協会・組合として協力している。業界団体としての我々の強みは、全国各地域に会員組合員企業があることだ。昨年は6企業が塩事業センターと業界団体に協力いただき、それぞれの地域で開催されるイベントに出店した。今年も引き続きこうした活動を続けて行けるよう、各企業に話をしている。当社でも京都府漬物協同組合、滋賀県漬物協同組合にお声掛けいただき、勉強会やイベントに参加させていただいた。それぞれの地域に根ざしながら、塩を使用していただいている業界とタッグを組み、正しい知識を普及出来るよう取り組んで行きたい」
 
‐減塩商品について。
「各社が何度も取り組んできたものの、中々定着が難しいジャンルだというのが正直な印象だ。理論としては正しい商品だが、食べ続けてもらうにはそれ以外の要素も重要だ。品揃えとしては必要なジャンルだと思うので、引き続きアピールして行く必要があると思う」
 
‐御社の業績。
「2017年度(3月末決算)は売上が88億円を超え、2016年度から約6億円の増収で着地した。日本海側を中心とした大雪の影響で道路用の需要が大きく増えたことが大きいが、一般用も少し増加した。ただし物流費の上昇というコスト増要因があり、増収増益こそ達成出来たものの利益率としては厳しい部分があった。グルソーや砂糖といった調味料関係など塩以外の部門は金額が年々増えて来ており、もう少しで20億円に届くところだ。塩を通じた優良取引先が多くいらっしゃるので、今後もお客様のご要望をお聞きして、こうした塩以外の部門を増加させて行きたい。塩の物流を生かし、他の商品を一緒に配送するのが理想だ」
 
‐初めて売上が80億円を突破した昨年以降躍進が続いているが、その背景は。
「我々のような業態は、人を基本とした会社でしか成り立たない。お客様の要望に応じて取り扱い品目を増やして行けるのも、営業社員の人の力に尽きる。社員には視野を広く持って仕事をして欲しいと考えているので、部署を限定せず社員が交流出来る場、コミュニケーションの機会を作れるような企画を実施している。若手社員同士で集まり、新しい仕事をしようとする動きも出て来ており、期待しているところだ」
 
‐今後の取り組みや課題について。
「日本国内の人口が減少していることを考えれば、海外に目を向けるのはひとつの考えだ。いきなり現地と直接のやり取りは難しいだろうが、新たな市場の開拓には社を挙げて取り組むべきだと考えている」
【2018年6月25日第4939号11面】
 
 
 
 
日本食塩製造・日本精塩株式会社
代表取締役社長 貞永 憲作氏
 
日精の天日塩が好評 輸入塩も値上げ基調へ
日本精塩株式会社(貞永憲作社長、神奈川県川崎市)は1969年、特殊製法塩の製造販売を目的として、食卓塩、精製塩メーカーである日本食塩製造株式会社から分離・設立。日本食塩製造の高級塩製造の技術・ノウハウを受けて業務用・家庭用の両面で良質な商品を販売し続けている。かつて日本は塩田で作るかん水を煮詰めて塩を造っていたため高純度塩を造るのは難しかった。そうした中で同社は高純度塩の製法を確立した先駆け的な存在でもある。様々な顔を持つ日本食塩製造グループの社長で全国輸入塩協会の会長でもある貞永憲作氏に話を聞いた。(中村裕貴)
◇     ◇
‐御社の歴史をあらためて教えてほしい。
「日本食塩製造は塩専売時代より食卓塩をはじめとしたセンター塩の製造受託を行う傍ら、天日塩溶解再結晶法という製造方法によって不純物を許さない高純度塩を食品用途のみならず医薬・化粧品用途としても供給してきた。食品市場が成熟していくにつれ、塩にもあらゆる付加価値が求められる時代になり、日本精塩では天日塩洗滌法による天日塩由来成分を保持した製品の供給を開始した。日本食塩製造株式会社と日本精塩株式会社は、同じ輸入塩を使用しながらも、製造コンセプトが違う2つの製法によって製品ラインップを補完し合うことでお客様のあらゆるご要望に応えることができる『塩のエキスパートカンパニー』を目指してきた」
 
‐2つの製法を身近な形で説明してほしい。
「天日塩溶解再結晶法はメキシコから輸入した天日塩を水に溶かして濃い塩水を造り、その後煮詰めて塩の結晶を作る方法である。結晶体は一辺0・3ミリの6面体に揃えられており塩化ナトリウム99・99%の高純度塩である。そのため調合しやすくラーメンスープ、パン、ハム・ソーセージ、バター・チーズなど食品工業で幅広く使用されている。洗滌法はメキシコから輸入した天日塩を濃い塩水で洗い磨きして天日塩の持つ成分を維持した塩を造る方法だ。さらには、にがり成分を適度加えることで味に深みと広がりを持たせた『日精の天日塩』も開発しており漬物業界では水上りをきちんと促し、仕上がりも色鮮やかで歯応えも良くなると好評を得ている」
 
‐原料原産地であるメキシコ・ビスカイノ湾について。
「弊社の輸入天日塩の原産地はメキシコ合衆国のバハ・カルフォルニア半島の太平洋側中央に位置するゲレロネグロ塩田である。塩田面積は世界最大規模の4万haで東京23区並みの広さだ。メキシコ政府と三菱商事との合弁企業であるESSA社が運営している。ゲレロネグロ塩田の前に広がるエル・ビスカイノ湾から内陸に広がる遠浅の内海はラグーンと呼ばれ、海水塩度が高い状態にある。絶滅危惧種に指定されているコク・クジラが出産、子育てのために訪れるためクジラ保護区として世界自然遺産にも登録されている」
 
‐輸入塩の状況について。
「工業用を含めた日本の塩自給率は12%で、それに対し輸入塩は88%のシェア。ゆえに輸入塩がバッファ機能を果たしていると言える。日本に岩塩はなく海水を原料にして結晶化する方法しかないが、塩田ではなく膜法立釜で炊く技術革新を経て大量生産が可能となった。それでもコストパフォーマンスの点から言えば輸入天日塩にかなうはずもなく日本はメキシコとオーストラリアから主に輸入してきたが中国塩も徐々に増えている。しかし中国でも自国での消費量が最近になり急激に高まり世界的に塩の需給がタイトになり価格にも影響を及ぼしかねない状況となってきた。中国の状況だけでなく物流に関しては輸出国のインフレや燃料価格の高騰、さらには国内物流費のコスト増などを受けて弊社も値上げせざるを得ない状況となっている。国内塩4社が値上げを実施しているが輸入塩メーカーの経営環境も厳しいものがある。融雪用に関しては昨年の冬は例年よりも雪が多かったため輸入塩協会傘下である日塩、第一商事、共栄商事、日本海ソルト(本年4月より高助)4社29年度融氷雪用塩払出実績は合計11万6千tと前年の8万1千tに比べ約4割増という結果となった。その年の降雪量が大きく影響しているということが言える」
【2018年6月25日第4939号11面】
 
日本食塩製造 http://www.nihonsyokuen.co.jp/
 
 
 
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