大正7年創業の有限会社北野谷商店(北野谷佳孝社長、栃木県日光市)は、素材を生かす伝統製法によってこだわりのこんにゃく、ところてんを製造販売している。
2年前に創業100周年を迎えた5代目の北野谷社長は、「歴史や伝統を前面に押し出してブランド化することは手っ取り早くできるかもしれないが、新しい発想で商品を作りたかった」という思いを胸に自社製品並びに日光のこんにゃく製品のブランド化を目指して商品開発に着手。試行錯誤を繰り返し、昨年10月10日に新ブランド「KITANOYA 5LAB.」の第1弾商品として北関東3県が舞台となる神話にちなんだ「神々の蒟蒻」を完成、発売をスタートした。
栃木県日光市の戦場ヶ原は、神々の戦いの舞台となったことから名付けられたとされている。大昔、下野国(今の栃木県)の二荒神(男体山)と上野国(今の群馬県)の赤城神(赤城山)が中禅寺湖をめぐる領土争いで、それぞれ大蛇と大ムカデに化けて戦った。勝敗が決まらない中、鹿島明神(茨城県)から助言を受けた二荒神が弓の名手である猿丸の助けを得て勝利する、という神話がある。
北野谷社長は、「会社の強みと弱みを考えた。強みは伝統、知識、日光という立地。弱点は大手との価格競争には勝てないということ。こんにゃくは付加価値を付けることが難しい食品だが、北関東3県の原料を使用した神話にちなんで作った商品を新しいブランド商品として提案していきたい」と強みを生かして商品開発を行った経緯を説明した。
単県の原料を使用するのではなく、神々が棲まう栃木、群馬、茨城の3県の最高級レベルのこんにゃく精粉を使用しているため、従来のこんにゃく製品とは異なる「フワフワ」とした食感が特徴だ。
製法にもこだわり、主流の充填式製法ではなく、伝統的なバタ練り製法を採用。固すぎず柔らかすぎないこんにゃく本来の食感と調理時の味しみの良さを実現した。バタ練り製法は、こんにゃくの主成分であるマンナン繊維を切り過ぎず、不均一な気泡が練り込まれるため、噛んだ時にただ固いだけではない「グニグニ」とした食感になる。また、その気泡により、こんにゃく断面の表面積が広くなるため、調理時の味しみがぐっと良くなる。神々が棲まう北関東×日光の老舗が生んだ〝未知なる食感〟が魅力だ。
また、同じくバタ練り製法で作られた「日光杉並木こんにゃく」と、粉末寒天を一切使わず国産天草のみをブレンドして作った「ところてん」は、日光ブランドに認定されている。
【2020(令和2)年4月13日第5017号6面】