本文へ移動

「梅」インタビュー 2020

3月9日号梅特集

理事長に聞く
紀州田辺梅干協同組合 理事長 中田吉昭氏(中田食品代表取締役社長)
減塩の意識が高まる  農業に踏み込んだ取組みを
紀州田辺梅干協同組合の中田吉昭理事長(中田食品株式会社代表取締役社長)にインタビュー。梅の開花及び原料状況、製品の動き、梅産業を取り巻く環境の変化などについて話を聞いた。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐梅の開花状況は。
「今年は暖冬で例年より早い1月20日から咲き始めた。だが、咲き始めの頃は気温が上がらず、ミツバチは活動していなかった。その後、一気に気温が上昇して平野部、山間部ともに一斉に花が咲いたのだが、休眠期と開花期間は短かった。その期間が短いと養分が足りず、交配しても実にならないものも出てくる。農家の方の話を聞くと今年の作柄はあまり良くない、という声が多くなっている。昨年は開花期間が長く、交配も上手くいって玉付きも良好だった。作柄もまずまずだったが、今年は良くないとの見方が多い」
‐昨夏以降の売れ行きについて。
「昨夏は冷夏となり、梅雨明けも遅かった。また、9月、10月の台風に加え、消費税増税もあったので消費が鈍ってしまった。近年、梅は夏のイメージが強く熱中症対策としての需要が定着していたのが、気候の変化や自然災害は逆風となって売れ行きに大きな影響を及ぼすことになった。全体的に消費マインドが低迷していることもあり、夏以降も良くない状況が続いている。今年は7月に東京オリンピック・パラリンピックが開催されるので梅にとっては大きなチャンスとなるが、今後は天候に左右されない商品を開発していくことも課題だと思っている」
‐減塩タイプが売れている。
「一般的にも塩分控えめという意識が高まっており、時代のニーズが変化してきていると言えると思うし、減塩タイプのニーズは増えている。厚労省の減塩キャンペーンも浸透してきており、高血圧学会の減塩食品リストは一般公開されているので推奨商品としてPRされている。梅干カテゴリーで唯一紹介されている弊社の商品も伸長している。弊社で50年以上製造している『田舎漬』は、当時市場にはなかった減塩タイプの走りとして人気を呼んだ。現在の塩分は11%で、今でも看板商品となっているが、嗜好の変化に対応し、塩分8%の『減塩仕込み』も販売している」
‐今後の方向性は。
「これまでの課題と同じだが、梅産地の保全に尽きる。まず農家の方に梅を生産してもらわないと我々は商品を作ることができない。将来の希望を持って作り続けてもらえるように原料価格の安定化はもちろん、高齢化や労働者不足の減少に対応して農地の管理や収穫の援助など、協力できる仕組みを構築していかなければならない。農業に踏み込んでいく必要があると思うが、我々は農業の素人なのでいかにサポートしていくか、ということが重要。農地を管理することはできなくても、収穫の手伝いや人手を派遣する農業法人を立ち上げるなど、我々が農業に近づいていかないと原料供給に大きな支障が出てくると感じている。紀州ではそういった取組みを行うところがあり、今後も増えるはずだ」
【2020(令和2)年3月9日第5013号3面】
 
紀州田辺梅干協同組合 http://kishu-tanabe-umeboshikumiai.com/
 

 
株式会社食料新聞社
〒111-0053
東京都台東区浅草橋5-9-4 MSビル2F

TEL.03-5835-4919(ショクイク)
FAX.03-5835-4921
・食料新聞の発行
・広報、宣伝サービス
・書籍の出版
TOPへ戻る