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塩 インタビュー2024

3月21日号 塩特集

株式会社天塩 代表取締役社長 鈴木恵氏

塩の価値未来へ繋ぐ
「赤穂の塩作り」400年でPR

 株式会社天塩(鈴木恵社長、東京都新宿区)は、江戸時代から続くにがりを多く含ませた塩づくり”差塩製法”を継承した「にがりを含んだ塩」にこだわり、日本の伝統食文化の良さを未来につなげている。同社は赤穂化成が製造する「赤穂の天塩」の家庭用塩および関連商品の販売専門会社である。「赤穂の塩作り」は文化庁より日本遺産に認定され、その歴史的な価値が証明されている。同社では、昨年7月11日に創業50周年を迎えた。2026年には赤穂で塩田が開墾されてから400年のメモリアルイヤーが控えており、“赤穂の塩作り”の啓蒙活動に力を入れていく。同社代表取締役社長の鈴木恵氏に塩の動向について聞いた。(藤井大碁)
-足元の状況。
 「値上げの影響もあり塩の動きは良くない。物価が上昇する中、消費者の節約志向は高まっており、価格に対してこれまで以上にシビアになっている。塩だけではないが、余計な物は買わないという消費行動が浸透している。6月には梅の漬け込みも控えているので、今後の動きが活発化していくことを期待したい」
-求められる塩製品の変化。
 「世帯人数の減少や共働き世帯の増加など近年の社会環境の変化によって、少量で使い勝手の良い塩のニーズが高まっている。1キロサイズは減少し、300グラムや500グラムなどの少量サイズが増加している。また、塩を容器に移し替えない人も増えていると推測され、使いやすいサラサラタイプの塩が伸長している」
-付加価値の高い商品も支持されている。
 「塩は一世帯あたりの購入数量は減っているが、購入単価は上がっている。前述のように量をたくさん買う人は減少しているが、健康性や美味しさといったこだわりを持って、付加価値の高い塩を選ぶ人は増えていることが分かる。弊社においても、高知県室戸沖海洋深層水を平釜でじっくり時間をかけて結晶化した『天海の平釜塩』は、7年前発売以来、売上が約3倍に伸長している。塩の味わいに高い評価を頂いており、リピーターが増加している。売場も広がりつつあり、まだまだ伸び代
があると考えている」
-物流2024問題への対応。
 「物流各社から値上げの要請がきており、慎重な対応や分析を進めている。弊社では2年前から関東に物流拠点を開設し、全体の物量の約3割について、そこから二次配送する仕組みを作ることで物流効率化を図った。物流コストに関しては今後さらに上昇していく可能性があり、その動向を注視している。その中で、従来とは異なる新しい輸送形態を考えることも必要だ。今までは、何から何までリードタイムを縮める方向でやってきたが、リードタイムを伸ばすことで価格を下げることが可能ではないか。塩は日配品とは違い、翌日配送する必要性はない。トラックが空いている日に運んでもらうことで安く配送できる仕組みを構築していくことなどが求められている」
-最後に。
 「今までと同じことを繰り返しているだけではなく、新しい方法で塩のアピールをしていかなければ状況は変わらない。様々な取組を通して、未来へ塩の価値を繋いでいく。特に大切なのは、“塩は全て同じではなく違いがある”ということを知ってもらうための取組だ。農産物と一緒で、日本全国その土地、その海の特徴を持った塩がある。もう一度、塩作りの原点に戻り、地産地消の塩の価値を訴えていきたい。2026年には赤穂で塩田が開墾されてから400年のメモリアルイヤーが控えている。県や市とも連携し、日本遺産にも認定されている『赤穂の塩作り』の歴史を通して、塩の価値を伝えていく」
【2024(令和6)年3月21日第5157号8面】

天塩
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