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「ザ・特集」リード2024

栃木特集 進化を続け次世代へ

昨年8月に開業した宇都宮ライトレール(写真提供:宇都宮ライトレール株式会社)
訪日宿泊者数が過去最多
栃木県の人気が高まっている。
 観光庁が2月29日に発表した2023年の宿泊旅行統計(速報値)によると、栃木県の訪日宿泊者数は新型コロナウイルス禍前の19年実績を28%上回る45万人となり、過去最多を更新。2019年比で見ると、東京(146%)、高知(136%)に次ぐ全国3位の伸長率となっている。
 栃木は東京から日帰りできる距離のため、外国人宿泊者数は増えない状況が続いていた。だが。外資系高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン日光」の開業で、海外でも日光の認知度が高まったことや自然を満喫できるツアーなど、海外向けの新しいブランド戦略で情報発信してきた取組がインバウンド需要の増加につながったようだ。
 栃木県はガリや紅生姜など、業務用商品や観光土産品を製造するメーカーが多く、アフターコロナで外食産業や観光産業の復調は追い風となっている。特に寿司は外国人からの人気も高く、築地や豊洲、浅草では高額なメニューを提供する店に行列ができるほどの盛況ぶり。寿司の付け合わせとして欠かせないガリの出番も増えている。
 昨年8月には路面電車としては75年ぶり、全国で初めて全線を新設する宇都宮ライトレール(LRT)が開業。宇都宮市と芳賀町を結ぶ路線として運航がスタートした。LRTは騒音や振動が少なく、快適な乗り心地など、人と環境にやさしい乗り物。宇都宮市東部の渋滞緩和にも貢献している。宇都宮市が進めるLRTを軸とした新たなまちづくりは、国内外で注目され、全国の自治体や海外から多くの関係者が視察に訪れている。
 漬物業界では、昨年10月17日に栃木県漬物工業協同組合(秋本薫理事長)の青年部(遠藤栄一部長)がライトキューブ宇都宮で全日本漬物協同組合連合会青年部会第41回全国大会栃木大会を開催。青年部員は2人しかいないが、少人数でも開催できることやペーパーレス、省人化などSDGsの要素も盛り込んだ内容で実施し、これからの全国大会や青年部活動、業界の方向性を示すメッセージを発信した。
 経済産業省の経済構造実態調査によると、2021年の都道府県別漬物出荷金額で栃木県は全国4位。1事業所当りの額は6位と漬物製造業においても確固たる存在感を示している。進化を続ける栃木県の県内企業を特集した。(千葉友寛)
【2024(令和6)年4月11日第5159号1面】

高菜特集 外食復活で消費拡大

高菜の収穫作業(福岡県みやま市瀬高町)
5年ぶり平年作も不足感続く
 九州を代表する特産漬物「高菜漬」の消費が拡大している。本紙3月21日号で掲載した「2023年漬物出荷金額」でも、高菜漬は前年比8・5%と大幅な伸びとなった。これを牽引したのが値上げによる単価上昇、外食・観光土産の回復だった。
 昨年は、5月にコロナウイルスが「5類」へと引き下げられたことで外出自粛ムードが一気に緩和され、外国人旅行客も急激に増加した年となったのが高菜漬にとって追い風だった。
 「外国人旅行客は漬物を買わない」というのが漬物店での定説ではあるが、高菜漬の場合はラーメンや炒飯、パスタ、鍋物などで用途が広い商材であり、食産業全体の活性化が高菜漬にも影響している。
 特に豚骨ラーメン店では必ずといって良いほど高菜漬が添えられるか、卓上で取り放題になっている。ラーメンは日本観光の目的の一つともなっている存在であり、その成長とともに高菜漬も需要が高まっている。
 市販においても、メーカー各社はWebやSNSで積極的にレシピ提案し、その魅力の発信に努めている。包装デザインでアレンジレシピを訴求する製品や、すでに大豆ミートと組み合わせて惣菜風になっている製品も増えてきている。
 消費が拡大する一方で、課題となるのが原料面だ。
 国内では農家の高齢化による高菜原料の減少は数年前から続いており、栽培量のベースが減っている。そこへ天候不順の追い打ちもあり、不作が4年続いていた。九州漬物協会高菜部会の集計によると2023年産の高菜収穫量は1万3936tであり、平年作ラインの2万tを大きく割った。原料在庫は逼迫してきている。
 今シーズンは南九州が3月末に、北部九州でも4月中頃に収穫を終える予定で、5年ぶりに平年並の作柄となったようだ。九州全土にかけて、昨年末から年明けまでは暖冬傾向だったため生育が良く、豊作が期待された。しかしシーズン後半の2月になると降雨が続いたため、最終的には平年並に収まった。
 だが、この作柄では在庫不足を補えるほどではなく、引き続き貴重な国産原料を、大切に売っていく流れとなりそうだ。
 中国産を中心とする海外産原料も、為替や輸送費、現地人件費の上昇など複合的な要因から国産原料に近い水準の単価となっている。
 しかし国産原料だけで需要を満たすことは不可能であり、海外産原料の重要性はむしろ高まっていくと考えられる。
 このように原料確保が課題となっている中で、原料の買取価格引き上げや、漬物メーカー主導での収穫機開発が急がれている。
 そのため各メーカーとも製造コストは上がり続けており、既存製品の価格改定や、利益の取れる付加価値商材の開発にも取り組んでいるところだ。今回の特集では、高菜漬メーカー各社の動向を取材した。
【2024(令和6)年4月11日第5159号1面】

群馬こんにゃく特集 国内外で注目の存在

群馬県が全国一の生産量を誇るこんにゃく芋
健康性と手軽さにニーズ
 こんにゃく芋生産量で全国の90%以上を占める群馬県。県内のこんにゃく関連メーカーでは、伝統的なこんにゃく、しらたきの製造を行うとともに、新たな商品開発に力を入れている。
 こんにゃくの食シーンと言えば、おでんや煮物が一般的だが、新商品の顔ぶれは、プラントベースのハンバーグ、こんにゃく麺、くずきりなど様々で、時代のニーズに沿った商品が開発され、人気を呼んでいる。
 また、こんにゃくやしらたきを作る際の原料となる、こんにゃく粉も著しい進化を遂げている。近年話題を集めているのが、こんにゃくの特性を生かした新しいこんにゃく粉「マジックマンナン」。凝固剤不要で、水や各種溶媒を加えて練るだけで固まり、加熱調理しても溶けないため、こんにゃく以外の様々な食品に活躍の場が広がっている。
 こんにゃくは日本の伝統食品でありながら、海外においてはサステナブルで健康性の高い最先端フードの一つとして受け入れられている。群馬県のこんにゃく加工品輸出額は、この10年間で5倍に拡大。世界的な日本食ブームやヴィーガン・ベジタリアン人口の増加を背景に、さらなる輸出額の伸長が見込まれる。
 国内市場においても、即食性の高い商品開発が進み、手軽さと健康性を兼ね備えた食品としてこんにゃくは注目の存在だ。生産者減少や異常気象により原料確保が困難を極める中、こんにゃくは国産原料で国内需要が100%まかなえる食品でもある。不透明な国際情勢が続く中、食料安全保障の観点からも、こんにゃくへの期待は高まっている。(藤井大碁)
【2024(令和6)年4月1日第5158号1面】

梅特集 降雹で凶作の見通しが広がる

今年は2週間以上も開花が早まった(田辺市、2月2日撮影)
熱中症対策に梅干しをPR
  開花が早い年は不作になる‐。紀州梅産地ではこの言葉が通説となっており、今年はその言葉通りになることが懸念されている。紀州では昨年まで3年連続で良い作柄が続いており、不作となれば令和2年以来、4年ぶりとなる。
 JA紀南の発表によると、昨年12月中旬以降から気温が高かったため、主力の南高は満開期が1月30日、開花終期が2月19日となり、平年と比べて満開期で16日程度早くなった。また、開花期間は31日と長く、授粉樹木でもある小梅との満開期はほぼ同じだった。
 梅加工業者の話を総合すると、暖冬で開花及び満開期が2週間以上早まった年の作柄は良かったことがなく、すでに不作を覚悟した声も上がる中で、その度合いが心配されている。
 その心配に追い打ちをかける出来事が発生。3月20日に梅産地の広範囲で降雹があり、作柄だけでなく秀品率の低下という問題も浮上。被害の全容は不明だが、「穫ってみないと分からない」という淡い期待は打ち砕かれ、梅事業者の思考は不作から凶作に切り替わりつつある。
 紀州の産地在庫については、持ち越し在庫があるため、現時点では全体的にタイト感はない。また、農家や業者がまだ干していない塩漬の梅も相当量あると見られており、今年が不作になったことを想定しても当面は原料不足に陥ることはなさそうだ。
 量販店における昨年の売れ行きについては、2022年比で微増となっている。昨夏は記録的な猛暑だったこと、残暑が長く続いたことで8月と9月は大きく伸長した。
 だが、物価高で節約志向が高まり、スーパーにおける買い上げ点数が減少する中、漬物の中でも単価が高い梅干しは買い控えの対象となり、10月以降は前年を下回るようになった。
 特に12月は全体で10%以上数字を落とし、年明けも低調な動きとなっている。それでも売場に商品が入っている大手メーカーは国産、中国産ともに前年並みか前年以上の数字となっており、メーカー間で格差が生じていることを示している。
 アフターコロナで百貨店や観光土産、外食関係の需要は回復傾向にあるが、通販も含めてコロナ前の水準には戻っていない。同じ梅干しメーカーでも需要の割合の内容によって業績も異なる。
 今年も売れるチャンスが到来する。昨夏は暑い日が続いたが、熱中症対策のアイテムとして梅干しがメディアで大々的に紹介されることはなく、需要に結びつかなかった。気象庁によると、4月から暑くなる予報で早くも熱中症対策が呼びかけられている。また、夏においても全国的に気温が高くなり、猛暑日が増えると予想されている。
 熱中症対策として梅干しを食べることは認知されているが、テレビなどのメディアで推奨されると、その効果は絶大なものとなる。2018年7月3日、TBS系の「林修の今でしょ!講座」で梅干しの健康効果が紹介されると翌日から梅干しの需要が急上昇し、150~200%の状態が1カ月以上続くなど大特需が発生した。
 作柄などの不安要素もあるが、今年は2018年の再現が期待されている。
【2024(令和6)年3月21日第5157号1面】

滋賀県水産物加工品品評会 湖魚で趣向凝らす逸品

最終審査会
若年層に注目される佃煮・鮒寿し
 滋賀県水産加工業協同組合(奥村龍男組合長)が主催する、第39回滋賀県水産物加工品品評会が2月16日、滋賀県草津市の近鉄百貨店草津店で開催された。
 出品された中から、農林水産大臣賞に西友商店の「小鮎若炊き」、水産庁長官賞で奥村佃煮の「鮒寿し×つやこブルー」、滋賀県知事賞に山喜食品の「氷魚葉山椒煮」が選出された他、鮎家の「あゆ柚子味噌煮」が滋賀県水産加工業協同組合組合長賞を受賞した。
 西友商店の「小鮎若炊き」は、湖魚の小鮎を浅炊き風に炊き上げ、山椒で風味豊かに味付けした、春夏のみ販売する人気商品だ。
 奥村佃煮の「鮒寿し×つやこブルー」は、鮒寿しに子持ちであるニゴロブナのメスが重宝される中、オスの活用を考え、オスのお腹にチーズを入れるという発想の転換で生み出された商品である。
 山喜食品の「氷魚葉山椒煮」は、鮎の稚魚である氷魚を爽やかな香りとアクセントのある辛味が特徴の葉山椒で味付けし、葉山椒は地元大津市産にこだわる。
 湖魚の佃煮や鮒寿しは、一般的に伝統性が強く、味やラインナップが変わらないと思われる傾向にあり、また県民でさえ、湖魚を家庭で食べる機会は少しずつなくなってきた。だが、今回受賞された商品のように「季節限定」「発想の転換」「地元産」を打ち出すことで、若い世代に注目されるよう各社、趣向を凝らしている。
【2024(令和6)年3月21日第5157号1面】

塩特集 食と健康を支える塩

コスト増や脱炭素へ対応模索
  塩は「食」の根幹を為している。調味料としてはもちろん、防腐作用や脱水作用など様々な効果を持ち、あらゆる食品作りで代替の利かない役割を持っている。
 熱中症対策アイテムとしての認識が強いが、塩は人体において様々な働きを持つ。細胞を保つ働きや、ナトリウムイオンとなって脳から全身へ、あるいは全身から脳へ信号を伝える働き、塩化物イオンとなって胃酸の素を作る働き、などがある。
 塩は汗とともに流れ出る。水分だけを摂ると、体は塩分濃度を保とうとますます汗や尿を出す(自発的脱水)。塩が不足すれば疲労感や頭痛、吐き気、筋肉の痙攣といった症状に襲われる。急激な場合には重症に至ることもあり得る。
 必需品である塩は、かつて国家による専売制度が取られてきた。自由化が進められた後も各企業はインフラとしての責務を担い続け、現代日本において塩不足となったことが一度もない。
 そんな必需品である塩も、変化の岐路に立たされている。塩の価格決定要素は製塩にかかる燃料費や物流費、そしてそれに関わる設備費や人件費が主となってくるが、その全てが上昇している。このため昨年までに国内製塩、特殊製法塩大手が価格改定に踏み切っている。
 また持続可能性への要請が強まっている中で、業界団体では脱炭素化やカーボンニュートラル化へ向けた技術研究、物流網の再整備・共同輸送の検討を進めている。
 今回の「塩特集」では各社・団体のこだわりの塩や塩関連製品を紹介するとともに、塩業界が抱える課題とその対応方針を取材した。
【2024(令和6)年3月21日第5157号1面】

群馬特集 漬物出荷額全国2位に

「カリカリ梅の日」のポスター
輸出事業展開へ委員会開設
 群馬県は昨年発表された経済産業省「経済構造実態調査」において県別漬物出荷金額(2021年)が前年から順位を一つ上げ、全国2位となった。県内では豊富な農作物を生かした漬物製造が行われている。
 梅の生産量においても群馬県は全国2位。箕郷、榛名といった梅産地では、梅の花が、例年より2週間ほど早い3月初旬に満開となった。近年、雹害などの影響により不作が続いていた群馬梅産地であるが、昨年は2018年以来5年ぶりに豊作型の作柄となった。だが、生産者の減少や収穫期の人手不足により、豊作となっても、需要に供給が追いつかない慢性的な不足傾向が続いている。
 こうした状況下で、県内の梅メーカー5社(村岡食品工業、大利根漬、コマックス、赤城フーズ、梅吉)で組織する「うめのわ」では、〝群馬の梅〟のブランド化や産地活性化を目指して積極的な取組を行う。今年2月には、11月10日(いい音の日)が、「カリカリ梅の日」に制定されたことが発表され、各メディアで報道されるなど注目を浴びた。
 また群馬県漬物工業協同組合(武井均理事長)では、2022年に輸出委員会を開設。輸出関連の補助金を受託し、海外において輸出関連事業を実施することを目指している。2月に開催された組合新年会においても、日本貿易振興機構による講演会が実施されるなど、群馬の漬物を世界へ輸出しよういう機運が高まっている。(藤井大碁)【群馬特集8・9・12面】
【2024(令和6)年3月11日第5156号1面】

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東京特集 インバウンド需要が追い風に

2月1日にオープンした「豊洲 千客万来」
〝東京ブランド〟で差別化
東京がインバウンド需要の追い風を受けて賑わっている。
 東京都は今年1月、令和5年4月から6月までに東京を訪れた旅行者数を発表。日本人旅行者は約1億1511万人(平成31年・令和元年同期比13・9%減)、外国人旅行者が約521万人(同25・3%増)となり、全体としては約1億203万人(同12・7%減)となった。
 同時期の観光消費額については、日本人旅行者は約9676億円(平成31年・令和元年同期比15・%減)、外国人旅行者の消費額が約8783億円(同157・0%増)となり、全体としては約1兆8459億円(同23・8%増)となった。
 いずれも目立っているのが外国人旅行者の数と消費額。消費額においては、コロナが明けて国内外の観光が活況となったことを考慮しても157%増と日本人旅行者に迫る勢いで大幅に増加し、全体の数字を押し上げている。
 2月1日には東京の新名所として注目されている商業施設「豊洲 千客万来」にオープン。同施設は「食べる」、「買う」、「過ごす」、「温泉」をテーマに、築地特有の貴重な財産である賑わいを継承・発展させるとともに、豊洲市場本体施設と連携して豊洲ならではの活気や賑わいを生み出す施設として話題となっており、オープン後は連日、国内外の観光客が訪れている。
 希少な「Made in Tokyo」も注目だ。江戸時代の宝田恵比寿神社例祭にまで起源を遡るべったら漬、江戸の佃島が発祥とされる江戸前佃煮、徳川家康の命により開発されたと伝えられる江戸甘味噌など、継承されてきた伝統と技術を生かし、今日まで広く愛される産品を伝えている。
 東京都では東京都産の原材料を使用している加工食品や東京の伝統的手法など、生産方法に特徴があると認められる食品を審査。東京都地域特産品認証食品(Eマーク認証)に認定する取組も推進している。
 昨年10月19日、20日には、東京の秋の風物詩である「べったら市」が4年ぶりに本格開催され、かつての賑わいを取り戻した。アフターコロナで様々なイベントが復活し、国内外から熱視線を浴びている。
 人と物が動く東京は、伝統と革新が融合し、新しい文化を生み出してきた。変化のスピードが速い中で、その役割は今後ますます重要となり、差別化を図ることができる〝東京ブランド〟は、付加価値として大きな期待が寄せられている。【特集4・5・8面】
【2024(令和6)年3月1日第5155号1面】

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飯田特集 日本一の焼肉の町

長野県飯田市の天龍峡
 飯田・下伊那地域を中心とした南信州エリアは天龍峡や下栗の里といった美しい景勝地と共に、野菜や果物など食材の宝庫としても知られる。
 その新鮮な野菜を使用した漬物業も盛んで、南信州エリアの漬物メーカーでは、信州を代表する漬物である野沢菜漬や下伊那郡松川町原産の「竜峡小梅」を使った小梅漬など様々な漬物を製造している。
 また飯田市は、人口1万人あたりの焼肉店舗数が全国の市の中で最も多い”日本一の焼肉の町”としても知られる。
 この地域資源を生かそうと2015年から開催されているのが、焼肉を食べながら音楽を楽しむイベント「焼來肉ロックフェス」。今年も7月20日と21日に飯田市の野底山森林公園で開催される予定で、県内外から大勢の来場者が見込まれている。(藤井大碁)【飯田特集8・9面】
【2024(令和6)年2月11日第5153号1面】

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静岡特集 ”食材の王国”山海の幸

日本一の標高を誇る霊峰富士
 静岡県は日本一の標高を誇る霊峰富士や日本一深い駿河湾など多様な風土に育まれた”食材の王国”だ。
 伊豆、三島、静岡のわさび、焼津のまぐろやかつお、浜松のうなぎなど、東西に長い県内には各所に個性豊かな山海の幸が存在する。 
 昨年は大河ドラマ「どうする家康」の舞台として、県内に大勢の観光客が訪れた。浜松城の来訪者数は2023年8月に前年比2倍以上に増加するなど、大河特需により、県内の観光産業は大きな恩恵を受けた。 
 静岡の伝統食メーカーでは、わさびや麹、魚介類など県内の特産品を使用した新商品開発が活発化している。
わさびに海外料理のテイストを取り入れた調味料や箱根西麓三島野菜を使用したドレッシングなどその顔ぶれは様々。   
 静岡の魅力的な食を紹介する。(藤井大碁)【静岡特集13面、14面】
【2024(令和6)年2月11日第5153号1面】

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SMTS特集 次の時代へ一歩踏み出す

漬物原料として用いられる島根県の津田かぶ
地域食伝統食に光
 「第58回スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)2024」「「デリカテッセン・トレードショー(DTS)2024」(主催:一般社団法人全国スーパーマーケット協会)「第19回こだわり食品フェア2024」(主催:一般財団法人食品産業センター)が2月14日から16日まで、千葉市の幕張メッセ全館で開催される。
 「第58回スーパーマーケット・トレードショー2024」(横山清実行委員長)は、スーパーマーケットを中心とする食品流通業界に最新情報を発信する商談展示会。2188社・団体、3515小間(2024年1月15日現在)の規模で開催する。
 今回も全国各地から自治体や地方金融機関などの取りまとめにより、1480社以上の地域産品メーカーが出展。海外からも13カ国、93社・団体、126小間が参加する。
ちりめんを炊く釜(香川県のサンコウフーズ)
 主催者企画「食のトレンドゾーン」では、急速な勢いで訪日外国人観光客数が回復するなど今注目のカテゴリー「インバウンド×食」ゾーンを新設。前回好評だった「冷凍×食」「サステナビリティ×食」のトレンドテーマと共に、来場者に最新のトレンド情報と商品・サービスを紹介する。
 また今回のSMTSは、4年ぶりに会場内に「SMTS・DTSセミナーステージ」が復活。同協会会長の横山清氏による「SMTSスピークス(タイトル『百年スーパー時代』)」の他、各種表彰式や「インバウンド」「物流2024年問題」「スーパーマーケット白書」など、今注目のテーマを題材にした各種セミナーを実施する(リアル開催のみで、オンライン配信はない)。その他、継続企画「てづくりNIPPON」「ビジネスマッチング@SMTS・DTS2024」「ジェトロ食品輸出商談会at SMTS2024」なども実施する。
 昨今、食品業界を取り巻く環境は厳しさを増している。ロシアによるウクライナ侵攻や急激な為替相場の変動により、原料や燃料費など様々なコストが上昇、食品メーカーを苦しめている。多くの品目で値上げが実施されているものの、物価上昇により生活者の節約志向が強く、売場ではPB商品など価格対応型の商品が好調な動きを見せる。今年4月には物流の2024年問題も控えており、環境が大きく変化する中で、その対応を求められている。
 こうした状況下で、スーパーマーケット業界では、合併や経営統合などの動きが活発化している。最近ではコンビニ業界でもKDDIがローソンの経営に参画することを発表。ドラッグストア業界ではイオングループがツルハホールディングスの株式取得を目指すなど、流通業界全体でめまぐるしい地殻変動が起きている。
 少子高齢化や人口減少が進む中、地域のライフラインであるスーパーマーケットの役割は大きい。近年、全国スーパーマーケット協会の賛助会員会員数が増え続けていることも、スーパーマーケットの存在意義がより高まっていることを示している。
 また、地域食や伝統食にも光が当たっている。バス旅やグルメ散歩など、全国のローカルグルメを紹介する番組が増えている。コロナ禍を経て、我々が気付いたのは、〝食は最大のエンターテイメント〟であること。生きることと切り離せない食への関心は今後も高まり続けていくだろう。
 コロナ5類移行後、初開催となる「スーパーマーケット・トレードショー2024」は、まさに次の時代への一歩を踏み出す展示会。「インバウンド」や「物流2024年問題」など時宜を得たテーマが満載で、今回も盛り上がりが期待される。
【2024(令和6)年2月11日第5153号1面】

漬物の素特集 「ぬか床」で食品ロスを削減

栄養成分が豊富なぬか漬
野菜摂取の有効な手段
 持続可能な社会の実現へ。「ぬか床」で食品ロスを削減しよう。
 まだ食べられるのに、捨てられてしまう食べ物のことを「食品ロス」と呼ぶ。食べ物を捨てることは、環境、世界の食料問題、社会、経済へも悪影響を及ぼす。
 農林水産省は昨年6月、日本における令和3年度の食品ロス量(推計値)を公表。それによると、前年度比0・2%増の523万t(前年度比1万t増)となり、このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は同1・5%増の279万t(同4万t増)、家庭から発生する家庭系食品ロス量は同1・2%減の244万t(同3万t減)となった。
 SDGsの認知度が高まる中、家庭では気を付けようとする動きが見られる動きがある一方で、チャンスロスや見栄えといった要素が重要となる外食や中食向けの商品は微増となった。
 国民1人当たりの食品ロス量は1日約114gで茶碗約1杯のご飯の量に近い量となり、年間では1人当たりの米の消費量(約51㎏)に近い約42㎏になる。
 世界を見ると食料は十分に生産されているが、地域別に見ると食料が不足している地域も存在し、全人口の10人に1人は栄養不足とされている。食料価格の高騰、貧困、飢餓とより深刻な食料不足を引き起こす可能性もあり、食品ロスを減らす意識を1人1人が持つことが重要だ。
 漬物の素の代表格である「ぬか床」が家庭における食料ロス削減の救世主となる。余って冷蔵庫にしまっておいた野菜の存在を忘れていたり、利用する機会がなかった等の理由でそのまま使わずに捨てる、というケースはどこの家庭でもあることだ。だが、野菜を入れるだけでぬか漬を作ることができる「ぬか床」があれば、余った野菜も捨てることなく食べることができる。
 栄養も豊富に摂れる。「ぬか床」で野菜を漬けたぬか漬には、野菜そのものの栄養素に加え、植物性乳酸菌、ビタミンB群、ビタミンE、γ‐オリザノール、フェルラ酸、イノシトールの栄養成分が含まれており、免疫力アップ、腸内環境改善、抗酸化作用、抗ガン作用、動脈硬化予防などの効果が期待される。また、発酵作用によって生野菜よりも保存期間が長くなることも魅力で、余った野菜を美味しく無駄なく健康的に食べることができる。
 現在、販売されている主力商品は熟成済みでチャック開封式タイプが主流となっており、袋を開けて野菜を入れるだけで簡単にぬか漬を作ることができる。また、より簡便性に優れた粉末タイプや液体タイプの商品の他、利用する量を調整することができるチューブタイプなど、新しい商品も登場してすそ野を広げている。
 漬け床としても使用される酒粕は、1~4㎏詰めの野菜漬物用(踏込粕)は郊外スーパーや農産物直売所では販売しているものの、近年は減少傾向。代わりに増えてきているのが柔らかな吟醸酒粕や練り粕を、チューブ容器や使い切りの個包装に入れて、少量ずつ使えるよう工夫した商品。野菜、肉、魚の粕漬や、甘酒、お菓子やソースの隠し味といった用途で利用されている。
 日本酒の副産物である酒粕はペプチドや食物繊維、ビタミンB群などの栄養の他、麹菌や酵母を豊富に含んだ発酵食品。用途の拡大に向けて様々な提案がされており、漬け床としての価値も再発見されることに期待がかかる。
 近年は塩こうじや甘酒など、漬物の素としても利用されるこうじから作った発酵食品がブームになっている。1月3日放送の「マツコの知らない世界・おはぎの世界」(TBS系)でビキニフィットネスの女王こと、安井友梨さんが筋トレの効果を高める食べ物として「発酵あんこ」を使用したおはぎを食べていると紹介。こうじの力で小豆のでんぷん質を糖化させた砂糖不使用で罪悪感なく食べられる「あんこ」として話題を呼んだ。
 漬物の素の利用は農林水産省が健康維持のために推奨する野菜摂取の有効な手段の一つで、豊かな食生活に貢献することができる。食品ロス削減、健康機能性、野菜摂取など、多くの魅力を持つ漬物の素を広く深く紹介する。
【2024(令和6)年2月1日第5152号1面】

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つけもと

春を呼ぶ商材特集 「桜花漬」稀少な存在

桜の花を塩漬した「桜花漬」
 桜の花を塩漬にした「桜花漬」は、春を想起させる代表的な商品として重宝されている。年明けから春にかけて出荷されることが多く、現在は最需要期となっている。
 春向け商品の素材として利用され、季節の売場に欠かせない存在となっている「桜花漬」だが、近年はその需給バランスが崩れつつある。
 コロナ禍では祝い事や人が集まることが自粛されていたこともあり、華やかなイメージがある「桜花漬」の需要も減少。
 そのため、高齢化や後継者不足といった課題を抱える生産者は規模を縮小するなど、収穫量の減少につながった。
 原料の確保が難しい状況となる中、需要は増加している。昨年5月、コロナが5類に移行し、観光地にも人手と賑わいが戻り、「桜花漬」の動きもさることながら「桜花漬」を素材とした商品開発を目指す企業から問い合わせが増加している。
 だが、各社では新規で供給する余力はなく、今後も生産量が増える見通しはないことから、チャンスロスとなっている。外国人観光客からの人気も高い「桜花漬」は、以前よりも希少な存在となっている。
 また、白身魚の身をほぐして煎りあげ薄紅色に色付けした「桜でんぶ」も春を想起させる商材。ちらし寿司や巻き寿司の具材として欠かせない一品であり、恵方巻の定番具材としてもお馴染だ。 
 節分の恵方巻はコロナ禍を経て、家族揃って楽しめるイベントとしてさらにその人気が高まっており、今年も「桜でんぶ」の需要の高まりが期待される。
【2024(令和6)年1月21日第5151号1面】

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愛知いわし特集 広がる「節分いわし」

柊鰯(ひいらぎいわし)
「鬼滅の刃」で今年も注目 
 本年も「節分の日」が近づいてきた。節分に食べる食材といえば「豆」や「恵方巻」が一般的だが、節分に「いわし」を食べる“節分いわし”の風習も根強く残っている。
 主に関西方面では、この季節、節分に向けていわし製品の需要が伸びるが、近年、関東方面でも広がりをみせている。古来より、鬼の嫌いなものは「鰯(いわし)の頭」の匂いと「痛い柊(ひいらぎ)のトゲ」とされ、いわしの頭を焼いて柊の枝に刺し、厄除けのため家の戸口に置いて鬼の侵入を防ぐという「柊鰯(ひいらぎいわし」の風習があり、それに因んでいわしを食べるようになったといわれる。
 節分イベントを後押ししているのが、アニメ『鬼滅の刃』のヒット。今年も節分に合わせて、映画「ワールドツアー上映『鬼滅の刃』絆の奇跡、そして柱稽古へ」が世界各国の映画館で2月2日よりスタートする。
 今春にはテレビアニメ「鬼滅の刃 柱稽古編」の放送が予定されており注目が集まる。愛知県の佃煮メーカーでは、いわし製品を製造するメーカーが数多く存在、「いわし甘露煮」「いわし生姜煮」「明太いわし」「梅いわし」「いわし味噌煮」など各社がこだわりのラインナップを展開している。
【2024(令和6)年1月11日第5180号13面】

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