1923年創業、日本初の調理缶詰カレーやミートソース、デミグラスソースなどを開発し、日本における洋食のパイオニアとして知られるのがエム・シーシー食品株式会社。現在はカレー、パスタ、ピザ、ハンバーグ、スープなどを家庭用・業務用の両面で展開し、こだわりの味わいが支持を集めている。同社では長年のノウハウが詰まったパスタソースを漬物に生かす新たな商品開発を提案している。同プロジェクトを担当するエム・シーシー食品株式会社東京支店フードサービスディビジョンフードサービス3グループリーダーの榑林鉄也氏にインタビューした。(藤井大碁)
――今回のプロジェクトの発端。
「実は私の実家は神奈川県相模原市で漬物店を営んでいました。現在は閉店してしまいましたが、小さい頃に店で漬けていた白菜やキムチの美味しさが今でも記憶の中に鮮明に残っています。今の会社に入社し、商品開発や営業の経験を積む中で、漬物と洋食のお互いの長所を融合できたら面白いのではないかとひらめいたのが今回の提案のきっかけです」
――どのような商品開発が可能となるのか。
「コンセプトは漬物のイノベーションです。弊社のノウハウが詰まったパスタソースを原料野菜と和えるだけでこれまでになかった洋風漬物”漬物イタリアン”が完成します。漬物の味わい深さや食感といった特長を生かしながら、パン食やお酒のおつまみにピッタリな商品に生まれ変わらせることができます。素材を生かすというイタリア料理の調理法は日本食と共通した部分が多いため、パスタソースに着目しました。漬物と洋食の掛け合わせにより新たな価値が提案できると確信しています」
――具体的なソースの使い方。
「野菜を軽く塩漬けにして何日か置き、ソースと和えるだけで簡単に洋風漬物が完成します。ソースはペペロンチーノ、明太子、レモンクリーム、ジェノベーゼなど現在16種類で、野菜との組合せにより様々な味わいを生み出します。実際に自分自身で多くの野菜とソースの組み合わせを試しましたが、一部の例を挙げると、きゅうりと明太子ソース、大根とジェノベーゼソース、ミョウガとゴルゴンゾーラソースなどを合わせた漬物イタリアンが完成しました。ソースの賞味期限は冷凍で一年間、内容量は相談になりますが最初は200キロくらいのスペックから考えています」
――惣菜売場への提案。
「昨年、”サラダチキン”が注目を集めましたが、漬物も提案の仕方によって、ヘルシーなおつまみやサラダとしてヒットするポテンシャルを秘めていると考えています。特に洋日配向け商品は比較的高価格帯で販売できる傾向が強いため、漬物に付加価値をつけるという点でも貢献できる可能性があります。ソース使用例として、ゴルゴンゾーラチーズソースで漬けたミョウガにスモークサーモンを合わせたり、セロリをペペロンチーノソースで漬けて帆立を合わせたメニューを試作しましたがどれもおつまみやサラダとして好評でした」
――最後に。
「弊社はもともと、昆布巻や佃煮を製造する和食メーカーとして創業しました。時代の中で洋食にシフトしてきましたが、今の時代は洋食も安泰ではなく、新しい要素を取り込んで進化を遂げなければならない時にきていると思います。そういう意味では、漬物も外の文化からヒントを得て、さらにステップアップしていける可能性があると考えています。今回のご提案により、漬物の可能性を少しでも広げることが出来れば嬉しく思います。どうぞサンプルのご依頼などお気軽にお問合せください」。問い合わせは電話03・5783・0960、担当:榑林(くればやし)氏まで。
【2018(平成30)年11月26日第4957号12・13面掲載】