本文へ移動

漬物研究同志会2024

<漬物研究同志会> 台湾視察研修会を実施 日本との歴史や食文化に触れる

龍山寺を訪問する参加者
天日塩が作られている北門井仔脚瓦脚鹽田
 漬物研究同志会(近清剛会長、宮尾茂雄名誉会長)は12~16日、2018年以来、6年ぶりの海外研修となる台湾視察研修会(台南3日、台北2日間)を実施した。
 一行は台湾の古都である台南、橋仔頭製糖工場跡(現台湾糖業博物館)、隆田酒廠、烏山頭ダム(八田興一記念館)、水仙宮市場、北門井仔脚瓦脚鹽田(天日塩製塩)などを訪問。故宮博物院、東三水街市場などを視察し、台湾の発展に貢献した日本人の功績や歴史を学び、現地の食文化に触れる機会となった。
 13日に訪問した台湾糖業博物館は、日本統治時代の1902年に操業を開始した台湾最初の近代的製糖工場だが、1999年に役割を終え、操業を停止した。工場の創設に関わったのは農業経済学者の新渡戸稲造で、1901年に台湾総督府技師として赴任し、糖務局長として台湾の製糖事業近代化に尽力したことから、「台湾砂糖の父」という栄誉を与えられている。
 現在、製糖工場及びその敷地の一部をそのまま博物館として保存し、公開されている。工場の建屋と内部の製造装置の大きさと複雑さは圧巻で、サトウキビの輸送、圧搾、不純物の除去、蒸発、結晶、分蜜、包装など、実際の製糖の流れを知ることができる。ほとんどの製造装置や検査器具類が当時のまま残されており、当時の様子を今に伝えている。
 烏山頭ダムに向かう途中で立ち寄った「隆田酒廠」は、日本統治時代、アルコールの増産需要に応えて、1939年に設立された醸造所だったが、戦後は麹工場となり、近年は高粱酒造りに重点が置かれている。2012年には、台湾初のバイオテクノロジーと酒造技術を融合させた薬味養生酒造所として稼働しており、販売も行っていることもあって、多くの見学者で賑わっていた。
 烏山頭ダムは、台湾統治時代、10年の工事を経て1930年に完成した当時東洋一といわれる広大なダム貯水池で、嘉南平野に広がる水田の貯水池として大きな役割を担っている。
 ダムの建設を指揮したのは、日本人土木技師の八田與一。現在、烏山頭ダムは公園として整備され、八田與一の銅像と墓が貯水池に向かって建てられている。また、八田與一を顕彰する記念館も併設されており、そこでは日本語の解説ビデオを観ることができる。
 八田興一はその功績から台湾で最も尊敬されている日本人の一人となっており、台湾の教科書にもその偉業が掲載されている。また、八田興一は地域の人のために病院や学校を建設するなど、ダム、灌漑用水の他に地元に多くの功績を残している。
 台南にある水仙宮市場に足を踏み入れると、蔬菜、果実、水産練り製品、鮮魚、乾物やテイクアウトの飲食店などが並び、大勢の客で賑わっていた。
 同志会のメンバーも地元の産品や普段見かけることのない珍しい農産物を興味深く視察した。
 次に訪れた台南の北方にある北門井仔脚瓦脚鹽田は、壺や甕のかけらの「瓦盤」を敷き詰めた結晶池で、海水から天日を利用して天然塩を製造する「瓦盤塩田」。粘土と砂地を利用した通常の塩田に比べて、瓦盤は熱が伝わりやすく水分の蒸発が速いので、細かな塩の結晶ができる。
 2002年に台湾にあった5カ所の大規模な塩田は全て閉鎖されたが、北門井仔脚瓦脚鹽田は、文化遺産を継承する観点から続けられており、年間約80トンの天日塩が作られている。塩田跡や史料はしっかりと保存されていて、製塩業の歴史や文化を次の世代に受け継いでいる。
 視察に加え、台南では地元の海鮮料理や台湾料理を味わい、親交を深めた。台北では2日間の短い滞在期間となったが、鼎泰豊で名物の小籠包を味わい、故宮博物院では、幸いにも見学者が少なかったこともあって、国宝級の美術品をゆっくりと観賞することができた。伝統文化や遺産(日本統治時代の遺産を含めて)を大切に保存、継承する台湾の姿勢に好感を覚え、日本との絆を改めて感じさせる研修旅行となった。
【参加者(敬称略)】
宮尾茂雄、皆川昭弘、小暮始、小暮愛美、前田節明、鶴泰博、鶴邦子、水溜政典、柴垣勝己、吉川絵美子、腰塚美帆子、小林登 ※順不同
【2024(令和6)年9月21日第5174号6面】

<漬物研究同志会> 豊洲視察研修会を開催 宮尾名誉会長が提言「常食量表示に」

近会長
前田副会長
宮尾名誉会長
小林事務局長
漬物研究同志会の研修会
「豊洲 千客万来」を視察
 漬物研究同志会(近清剛会長)は7月25日、東京都江東区豊洲で視察研修会を実施。東京中央漬物株式会社会議室で研修会を行い、豊洲千客万来の視察後は築地に移動して懇親会を開催した。
 研修会は事務局長の小林登氏が司会を務めて前田節明副会長が開会の挨拶を行い、「異常気象で色々な作物が影響を受けており、原料としては厳しい状況となっている。いまも暑い日が続いているが、全国から集まった皆さんとともに宮尾先生の講演を聞いて今後のことをしっかり考えていきたい」と語った。
 活動報告では吉川絵美子幹事が4月12日に開催したスタディツアー「川越視察研修会」、2月~3月に実施したインターンシップ実習について、動画で映像を見ながら説明を行った。吉川幹事は、「インターンシップ実習の取組は今年で7年目。東京家政大の生徒とやらせていただいているが、各社でも学生と接点を持ちたい、従業員のプレゼンに使いたい、という会社があれば是非活用していただきたい」とPRした。
 また、今後のスケジュールについては、9月12日から16日の台湾視察研修、10月25日の女子会スタディーツアー(訪問先は検討中)、11月16日の東京家政大卒論生及びOGとの漬物談義が予定されていることが報告された。
 続いて東京家政大学大学院客員教授で一般社団法人全国漬物検査協会会長でもある宮尾茂雄名誉会長が「漬物とナトカリ比」のテーマで講演を行った。塩の役割は主に食品加工と生体機能に分けられ、食品加工では塩味、浸透圧、調理に分類される。食品群別摂取量食塩相当量は1日10・1gで、漬物は0・4%。1人当たり食塩摂取量の3分2は醤油や味噌、その他の調味料など、調味料に由来している。おいしいとされる味噌汁の塩分濃度は0・8~1・0%でお椀一杯(200ml)当たりの食塩は1・6~2・0g。
 主な食品の常食量に含まれる塩分量を比較すると大半の漬物は1g以下。宮尾氏は、「漬物の栄養成分表示は常食量ではなく100g表示となっているが、他の食品は常食量での表示になっている。常食量での表示は消費者に適正な塩の摂取を理解してもらう上で有効な手段。全漬連ともガイドラインの作成などについて話し合っているが、このようなことを業界から発信していく必要がある」と指摘した。
 海藻や野菜などに含まれるカリウムは、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して尿中への排出を促進するため、血圧を下げる効果がある。また、塩分(ナトリウム)を摂取してもカリウムを多く摂取していればナトリウムは体外に排出されることから、ナトリウムとカリウムのバランスは国際的にも重視されるようになってきている。このナトリウムとカリウムのバランスを指標としたものが尿ナトカリ比。
 「これまで漬物はカリウムが多く含まれると言ってきたが、幅広い素材の中でカリウム含量はばらつきがある。漬物の中でナトカリ比が低いのは沢庵や野沢菜漬だが、品目ごとの特性に応じたPRが必要だ」と見解を示した。
 講演会後、今年2月1日に東京・豊洲市場場外にオープンした商業施設「豊洲 千客万来」を視察。江戸の町並みを再現した「食楽棟」と温浴施設などがある「温浴棟」から構成されており、連日国内外の観光客で賑わっている。インバウンド需要を意識した高価格帯の料理や若い人をターゲットにした目新しい商品などに触れ、刺激を受けた。
 「豊洲 千客万来」視察後は築地に移動し、「すしざんまい 奥の院」で懇親会を開催し、情報交換を行いながら懇親を深めた。
【2024(令和6)年8月1日第5169号14面】

<漬物研究同志会>「川越視察研修会」開催 河村屋川越店で“漬物寿司”

河村屋川越店で(前列右が染谷社長)
漬物寿司が楽しめる「春プレート」
松本醤油店にて
川越パターテで(前列右から三人目が金児社長)
 漬物研究同志会(近清剛会長)は4月12日、女子会主催のスタディツアー「川越視察研修会」を開催した。
 スタディツアーには、東京家政大学大学院客員教授の宮尾茂雄氏をはじめ15名が参加。近年、蔵造りの町並みが人気を集めている埼玉県の川越にて、河村屋川越店や新進グループの川越パターテ、松本醤油商店などを視察した。
 一行はJR川越駅に集合。小林登事務局長から当日のスケジュールなどについて説明が行われた後、河村屋川越店の松岡由起店長が川越の歴史や近年のトレンドを紹介しながら川越市内を案内。氷川神社や菓子屋横丁といった観光スポットを回った。
 その後、河村屋川越店にて、河村屋の染谷静香社長の出迎えを受け、昼食として「漬物寿司」を楽しんだ。同店は昨年8月にリニューアルを行い、店舗内に飲食スペースを設置。明るくモダンな店内では、旬の食材を使用した漬物寿司を提供、地ビールや地酒と共に楽しめると若い世代からも好評を博している。 
 漬物寿司のネタは、漬物にチーズや薬膳を組み合わせることで、食材のマリアージュを意識。当日のメニュー「春プレート」は、春キャベツや筍など旬の食材を使用した漬物に、ゴーダチーズや燻製オリーブオイルなどの洋風食材を合わせた漬物寿司の他、薬膳バーニャカウダやかき揚げを盛り合わせた色鮮やかな一皿。華やかな外観とその美味しさに一行から感嘆の声が漏れた。
 染谷社長は同社の取組について説明。現在、マーケティング、ブランディング、PRの3点に力を入れており、優秀な人材の採用やDX化を推進していること。また今後は浅草店のリニューアルを行い、増加するインバウントへ対応していくことなどを目標として語った。
 続いて、一行は川越で約250年続く蔵元である松本醤油店を訪問。松本公夫社長の説明を聞きながら醤油蔵を見学した。
 さらに、川越パターテでは、パターテ・ジャパンの金児裕子社長の出迎えを受け、川越名物のさつまいものジェラートやニョッキなどの人気メニューに舌鼓を打った。
 JR川越駅に戻り、川越視察研修会は終了。吉川絵美子幹事の挨拶により、散会となった。
【参加者(順不同・敬称略)】
 宮尾茂雄(東京家政大学大学院)、吉川絵美子(吉岡屋)、藤原静子、渡辺真里子(東京中央漬物)、染谷静香、松岡由起(河村屋)、萩原友美(萩原食品)、宮城恵美子(宮城商店)、山田摩耶(若菜)、遠山昌子(赤城フーズ)、腰塚美帆子(秋本食品)、星由夏(酒井甚四郎商店)、小林登(事務局)
【2024(令和6)年5月1日第5161号2面】

<漬物研究同志会> 第44回総会を実施 インターンシップ生の実習報告も

近会長
宮尾名誉会長
小林事務局長
関口社長
 漬物研究同志会(近清剛会長)は5日、東京都千代田区のAP東京丸の内にて、第44回総会及び東京家政大学管理栄養学科学生による株式会社吉岡屋でのインターンシップ実習報告、同大学大学院客員教授で一般社団法人全国漬物検査協会会長でもある宮尾茂雄名誉会長による講演会が開催された。
 第1部の総会は、小林登事務局長が司会を務めて近会長が開会の挨拶を行い、「本日も色々な勉強をさせていただきたいと思っている。全国の皆さんと集まれる機会はあまりないので、事業の規模も関係なく親交を深めていただきたい」と語った。
星氏
 令和5年度事業報告及び収支報告、令和5年度監査報告、令和6年度事業計画は原案通り承認、可決。事業計画では7月に視察研修会、11月に東京家政大学卒業生OGとの漬物談義を予定。また、コロナで中止していた海外視察研修会も検討していることが報告された。女子会スタディツアーは4月12日に、株式会社河村屋川越店で実施する。
 新会員紹介では昨年9月に入会した株式会社酒井甚四郎商店広報の星由夏氏と今年1月に入会した関口漬物食品株式会社の関口悟社長がそれぞれ自己紹介を含めて挨拶を行った。
修了証を授与された飯塚さん(中央)を祝福する近会長(左)と吉川幹事
漬物研究同志会の総会
 第2部の活動報告では、吉岡屋でインターンシップ実習を行った東京家政大学管理栄養学科の飯塚日菜乃さんが内容を報告。漬物が好きでよく食べていることや吉岡屋の漬物を使ったアレンジレシピ実習に興味を持ち、インターンシップに参加した。
 実習内容は漬物の効果・歴史、アレンジレシピ開発・試作・試食、SNSの投稿、漬物の販売など。アレンジレシピでは、漬物に苦手意識を持った子供をターゲットにした「ちくわごぼうの肉巻き」とお酒好きの大人にオススメの「奈良漬マリネ」を考案。ポイントを捉えたPOPも作成した。
 昨年8月から9月にかけて計7回のインターンシップ実習を通して学んだことについては飯塚さんは、「漬物は乳酸菌を豊富に摂取でき、美肌や腸活、肥満防止にも貢献できる。ただ美味しいというだけでなく、体へのメリットが多いということが分かった。1日1回は取り入れることを心がけている」と理解を深めたことを明かし、「若い人にも漬物の魅力を知ってもらい、効果やアレンジ方法を発信できたらいい」とまとめた。最後に吉岡屋の社長でもある吉川絵美子幹事より修了証が授与された。
 続いて令和5年秋の叙勲・褒章で前田食品工業有限会社の前田節明会長が黄綬褒章を受章したことが報告され、前田会長は「天皇陛下に手が届くところで私の話を聞いていただいたことは宝物」と皇居で天皇陛下に拝謁した時のエピソードを披露し、謝意を示した。
 講演会は宮尾名誉会長が「香辛料」の演題で講演。本題に入る前に年代別1人1日当たり漬物消費量、1人1年当たりの漬物購入額の推移、人口減少と産業の衰退、世界で人気の高い日本食について解説。漬物需要の促進として、「和食文化をPRする場合は米食を増やすことで伝統的な食文化のプラスになる。また、塩との関係についても漬物に含まれる塩分量は他の食品と比べても高くはない。それよりも野菜に含まれるカリウムが大事なので、そのPRが必要。塩分(ナトリウム)と野菜等(カリウム)の摂取バランスを表すナトカリ比の概念を普及させることが重要だ」と指摘した。
 香辛料のテーマでは、分類や基本作用、加工食品における位置付けなどについて、「香辛料の主な作用として矯臭や賦香、辛味、着色がある。その他、防腐、抗菌、抗酸化作用もある。漬物と香辛料は遠い位置にいるかもしれないが、若い人に受けるものが生まれる可能性もあるので本日の資料を取っておいて、活用していただきたい」と話し、各スパイスの特徴を説明した。
【2024(令和6)年3月11日第5156号5面】
株式会社食料新聞社
〒111-0053
東京都台東区浅草橋5-9-4 MSビル2F

TEL.03-5835-4919(ショクイク)
FAX.03-5835-4921
・食料新聞の発行
・広報、宣伝サービス
・書籍の出版
TOPへ戻る