本文へ移動

漬物JAS・全国漬物検査協会2022

新会長に宮尾茂雄氏 令和4年度第2回理事会で承認

宮尾新会長
西村前会長
大羽筆頭副会長
全漬連の野﨑会長
全漬連の秋本副会長
令和4年度第2回理事会
 一般社団法人全国漬物検査協会(東京都江東区、西村信作会長)の第8代会長に宮尾茂雄氏が就任した。同人事は9月30日に開かれた全漬検役付け理事会の推挙を受け、同日開催された令和4年度第2回理事会で正式に承認された。
 宮尾氏は昭和48年に東京農工大学農学部を卒業し、東京都農業試験所に入所。平成20年に東京家政大学の教授に就任。現在は、同大大学院客員教授。全日本漬物協同組合連合会では常任顧問を務めている。かねてより一身上の都合で退任の意向を示していた西村氏は、顧問理事に就く。
 就任の挨拶で宮尾新会長は、西村氏のこれまでの尽力、功績に感謝の言葉を述べた上、「全漬検にはこれまで研究者として協力させていただいたが、西村会長のお話をお聞きして、果たして自分に西村会長と同じようなことができるのかと思う反面、理事会の推挙を受けた以上これからは別の視点を付け加え、自分の持てる力を発揮していきたい。ついては全漬検の佐藤専務、スタッフの皆様、副会長を始めとする理事各位の絶大なる協力を仰ぎたい」と所信の一端を披歴した。このほか、従来の専門委員会・規格表示委員会とJAS普及委員会を新たにJAS規格普及委員会に改組することなどを決めた。
 令和4年度第2回理事会は、午後4時30分から江東区門前中町「東天紅」会議室で開かれた。
 佐藤惠専務理事の司会進行で定数を確認し、理事会の成立を宣言。西村会長が議長に就任して議事を進行した。議案は、①新会長の選定について②前会長の顧問推挙③専門委員会の改組
 新会長の宮尾氏選定については、先に開かれた役付け理事会の推挙を受け、理事会で満場一致で承認された。また、同時に西村氏の顧問理事就任も決まった。

専門2委員会に改組
規格普及委員会と技術委員会

 専門委員会の改組については事業の効率化を図るため、これまで3つあった専門委員会のうち、JAS普及委員会と規格表示委員会を発展的に解散し、新たにJAS規格普及委員会に統合、技術委員会の2委員会体制とすることが承認された。
 そのほか、佐藤専務から業務執行理事(役付理事)の職務執行状況の報告と、食品添加物の不使用表示に関するガイドラインの説明があった。
 顧問理事に新たに就任した西村氏は会長退任の挨拶で、「皆様のおかげで二十数年間、大過無くお役を果たすことができた」と語り、原料原産地の導入、JAS規格の変更、JAS法の改正、品質表示基準への取組を振り返りながら、「今、大変な時代で見通しが立ちにくいが、全漬連、関漬協,東漬の皆さんとも英知を結集してこの難局を切り抜けてほしい」とエールを送り、漬物産業の益々の発展を祈念した。
 これを受ける形で、閉会の辞を述べた大羽恭史筆頭副会長は、西村氏と農水省在籍時からの50年にも及ぶ知己であり、その立場から、「漬物業界のこの50年は、まさに苦難の時代であり、よくぞ無事ここまでやり遂げてくださった」と感謝の言葉を述べた。そして宮尾新会長には「業界を正しい方向に導いていただけますようお願いします」と語った。
 このあと、懇談会に移り、全漬連の野﨑伸一会長が挨拶し、西村氏の24年間の尽力に謝意を示すとともに、今後の活躍を祈念。併せて「宮尾新会長の手腕に期待したい」と述べ、全漬検の益々の発展を祈念して乾杯の音頭を取った。
 締めの言葉は秋本大典常務理事(全漬連副会長)。会員各位の理解と協力に感謝の言葉を述べた上で「本日は静岡から新幹線で駆け付けた。どうしても日頃からお世話になっているお二人に直接お会いして、お礼を述べたかった」と心情を吐露し、新旧会長の今後益々の活躍を祈念して締めの言葉とした。
【2022(令和4)年10月11日第5108号3面】

全国漬物検査協会 新会長に宮尾茂雄氏

宮尾新会長(左)と西村前会長
 一般社団法人全国漬物検査協会(東京都江東区)の第八代会長に宮尾茂雄氏が就任した。当人事は9月30日に開かれた役付け理事会の推挙を受け、同日開催された令和4年度第2回理事会で正式に承認された。
 宮尾氏は昭和48年に東京農工大学農学部を卒業し、東京都農業試験所に入所。平成20年に東京家政大学の教授に就任。現在は同大大学院客員教授。全日本漬物協同組合連合会では常任顧問を務めている。
 かねてより一身上の都合で退任の意向を示していた西村信作氏は顧問・理事に就く。
 就任の挨拶で宮尾新会長は、西村氏のこれまでの尽力、功績に感謝の言葉を述べた上、「全漬検さんには、これまで研究者として協力させていただきましたが、これからは理事会の推挙を受けた以上、会長としてできる限り尽力したい。ついては全漬検のスタッフ、副会長を始めとする各理事の皆さんの絶大なる協力を仰ぎたい」と所信の一端を披歴した。
 このほか、従来の専門委員会・規格表示委員会とJAS普及委員会を新たにJAS規格普及委員会に改組することなどを決めた。
【2022(令和4)年10月1日第5107号1面】

全漬検 令和4年度通常総会 安全・安心を広範囲に支援

西村会長
大羽副会長
籠島副会長
中田副会長
西村会長が退任の意向示す
 漬物の登録認定機関及びJAS格付のための依頼検査機関等である一般社団法人全国漬物検査協会(西村信作会長)は7月27日、東京ガーデンパレス(東京都文京区)にて令和4年度通常総会を開催。各議案を審議し、今年度の方針を決定した。収まったかに見えた新型コロナウイルスの第7波到来や、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー不足、円安、外国人実習生の受け入れ難など、様々な影響を受けている漬物業界は、年々高まる消費者の安全・安心へのニーズに、いかに応えて行けるかが課題だ。それらについて技術面から支援してきた全漬検は、全日本漬物協同組合連合会(野〓伸一会長)との連携をさらに強め、各種試験制度、認定制度、漬物グランプリ等の事業への協力も推進してきた。業界を取り巻く環境は、HACCP義務化、漬物製造業の許可制度移行など大きく変化し、法令を遵守した取組が求められている。そのような中、全漬検は来年創立50周年(1973年創立)を迎える。大きな節目を迎え、漬物業界を側面から支援する全漬検の重要性はさらに増すばかりだ。なお、総会後に西村会長が退任の意向を示し、後日開催の理事会で新会長が選任される。
 昨年度、全漬検に届いた問い合わせや相談は、会員と会員以外企業等を合わせて100件(会員80%、会員以外の漬物企業等から20%)。表示(55%)、品質(10%)、添加物等(10%)、法令等(10%)について、丁寧かつ的確な対応を行った。
 JAS格付のための依頼検査実績は過去2年連続で増加していたが、昨年度は2・5%の減少。計画数量は上回ったものの、依然として続くコロナ禍の家庭では刻みしょうゆ漬けや白菜キムチが好まれ、購入されていると推測している。
 一方、前年度は単価が高いとされて減少した調味梅干しや業務用のしょうゆ漬けは戻りつつあり、コロナ禍中の食生活で培われた漬物の食経験が活かされることが期待されている。
 各地のJAS工場棟の技術者が参加する講習会や研修会は、コロナ感染予防のため縮小や中止を余儀なくされた。JAS工場の認証等については、1工場を認証し、3工場を取り消した。この結果、令和3年6月年度当初のJAS工場は71企業、80工場であったが、本年5月末では68企業、78工場となっている。
 なお、同協会の登録認証機関の有効期限は本年3月29日であったが、更新申請を農林水産大臣に提出し、本年3月15日付で更新された。登録の有効期間は令和8年3月29日となっている。
 総会終了後、西村会長より「私が本会にお世話になり25年務めさせていただいたが、諸般の事情もあり、これ以上続けることは不可能と感じ、会長職を退任したい」と退任の意向を示し、佐藤惠専務理事が「事務局としてそのように取り計らっていく」と承諾の意を表した。
伊藤氏
木内氏
戸谷氏
佐藤専務理事
真野専務理事
全漬検 JASマークは安全・安心の認証マーク
格付検査数量2万4356t 全漬連との事業協力も継続
 通常総会は佐藤惠専務理事の司会進行で、大羽恭史副会長が開会の挨拶に登壇。「本日は非常に暑い日で、コロナの怖さ、熱中症の怖さ、円安による物価の怖さ、さらには各地で大雨が降るという怖さもある中、令和4年度通常総会が開催できたことを大変喜ばしく思っている。人数は絞られているが、慎重審議をお願いしたい」と述べ、開会の挨拶とした。
 続いて西村会長が挨拶に立ち、「新型コロナウイルス感染防止に努め、本総会は出席可能な少人数による開催を行うこととした」と説明。また、最近の世界情勢について触れながら、「国内では、6月早々の梅雨明け後の酷暑と、各地での豪雨災害が発生している。漬物原料である農産物の生育、収穫の心配が尽きることはない」と語った。
 続けて「JAS登録認証機関としては、食品に対する安全・安心の消費者ニーズに的確に対応する責務は重い。その責務を十分果たすことができるよう、関係者のご指導、ご支援を重ねてお願いする」と述べた。(挨拶全文別掲)
 出席役員の大羽副会長、籠島正直副会長、中田吉昭副会長が紹介された後、来賓として出席の農林水産省大臣官房新事業・食品産業部食品製造課基準認証室の伊藤里香子室長、同室の牟田大祐規格専門官、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の木内岳志理事長、一般社団法人日本農林規格協会の戸谷亨会長、全漬連野﨑伸一会長代理の真野康彦専務理事が紹介された。
 佐藤専務より、出席者と委任状合計が過半数を超えていることで総会成立が報告され、西村会長が議長に就いて議案審議に移った。
 ▼第1号議案=令和3年度事業報告及び収支決算承認の件▼第2号議案=令和4年度借入金最高限度額承認の件▼第3号議案=令和4年度会費及び徴収方法承認の件▼第4号議案=役員報酬の最高限度額承認の件▼第5号議案=その他。
 事業報告では、JAS格付のための依頼検査実績が1433件、2万4356t(5月分確定分)で、前年度の実績1519件、2万4971tに対して件数は86件減少。数量は615t(2・5%)減少した。目標とした検査数量2万900tに対しては、3456t上回る数量となった。
 JAS製品の普及宣伝等については、JASマークの意味を消費者に理解を求める「JASマークは、安全・安心の認証マーク」の標語を記載するようJAS企業に促すことに努めた。なお、依頼検査分析サンプル残余の未開封JASマーク入り小袋パウチ(学校給食用)を主に、都内の子供給食に提供した(年3回程度)。全漬連との協力連携については、問い合わせや技術的な相談に対応。外国人技能実習制度、発酵漬物認定制度、漬物ブランプリに協力を行った。
 会員の異動については、令和2年度末(令和3年5月31日)現在における会員数はJAS企業会員71、一般会員35、団体会員22の計127だったが、本年度においては脱退会員7(JAS企業会員3、一般会員2、団体会員2)の異動があり、令和3年度末(令和4年5月31日)現在の会員数は、JAS企業会員68、一般会員33、団体会員19の計120会員。
 収支決算については、川勝恵一監事より「適正である」旨の監査報告が行われ、承認された。その他の報告事項として、検査室内に宮尾茂雄氏(東京家政大学大学院客員教授)による「宮尾漬物微生物研究所」の創設、発足を報告。
 令和4年度における重点事項として、①JAS制度関係業務②依頼検査関係業務③教育研修関係業務について報告。④その他としては、全漬連事業における技術的な諸課題に関しての協力。創立(1973年)50周年記念誌の準備・作成。業務、事務の効率化を図るための通信・情報機器の整備、保守管理。依頼検査に使用する分析機器の点検・修繕を通した保守管理‐等が報告された。
 議事は滞りなく進行し、総会は終了したが、西村会長より報告があり、「私が本会にお世話になり25年、約4分の1世紀の間、皆様のご理解ご協力を得て務めさせていただいたが、諸般の事情等々もあり、会長職を退任したいと思っている。任期は来年まである中、任期途中での退任は非常に心苦しいが、皆様のご理解を得たい。役員の選任・交代は理事会で議決が必要で、本日は議決ができないため、事務局で時機を見て理事会を開催して頂き、私の退任と新会長の選任をお願いしたい」と意向を述べ、佐藤専務理事が「事務局としてそのように取り計らっていく」と承諾の意を表した。
 来賓挨拶では、伊藤室長が「本年6月の異動で担当に就任したが、漬物は地域の食文化と密接に結びついており、JAS制度が日本の食文化を支える一端になっている。貴協会で継続的に行われている技術研究セミナーや新たな研究所の発足など、発展に向けて取り組まれている。JAS制度は5年毎に規格の見直し・確認を行うが、来年はその年となる。会員、協会の実情など反映しながら、今後の漬物の発展に向けた検証・見直しを検討していただきたい。会長からはJAS制度の普及について国へのご要望があり、しっかりと取り組んで行きたい」と述べ、対応への決意を表した。
 FAMICの木内理事長は、「コロナへの不安が絶えない中、JAS格付の検査や全漬連への技術的な協力など、専門的知識を持つ組織として役割を果たされている点に敬意を表する。世界に広がっている発酵食品ブームの中、JAS及び我が国特有の発酵食品の国際化を進め、本物に対する需要に応えていく必要がある」とJASの普及に努める意向を伝えた。
 日本農林規格協会の戸谷会長は「漬物は日本を代表する食材。今後は、世界的な和食ブームによる輸出の振興、消費拡大で日本の農林水産業の発展に貢献するものと期待し、貴協会の益々のご尽力をお願いしたい。コロナ、円安、ロシア・ウクライナ問題など課題は山積しているが、ぜひ苦難を乗り切っていただき、発展を切に願っている」と激励の言葉を述べた。
 全漬連の真野専務理事は、「外国人技能実習制度では、3月に入国制限の緩和があり、4月から6月までの漬物製造業関連で新規に190名が入国している。これらの初級対象者と、既に入国している3年目の専門級対象者への試験実施について、またコロナで実施できなかった漬物製造管理士試験についても、貴協会のご協力を得ながら円滑に実施して行きたい」と、全漬検への協力を求めた。
 最後に佐藤専務による閉会挨拶で総会は終了した。

【西村会長挨拶】

JAS認証機関の責務果たす 食の安全・安心ニーズに応えて
 本日は、令和4年度の通常総会に、第7波とされるコロナ感染症流行の中、また、猛暑の中、ご参会の皆様には、ご出席いただきましたこと、大変有難く感謝申し上げます。
 2年半前から続く新型コロナウイルス感染症は、コロナ変異株オミクロンBA5による第7波が急拡大しています。このため、総会を開催する是非につきましては、昨年と同様に、公益法人法や本会定款に基づく委任代理人を含めての議決が可能ことから、出席可能な少人数による開催を行うこととしました。なお、会場のホテル側とともに感染防止にできるだけ努めたつもりでありますので、ご理解をお願いします。感染防止の対応をとりながら、生活や社会・経済活動を続ける外はなく、コロナ感染症流行が終息し、一日も早く、通常の生活や仕事に戻ることを、切に願うものです。
 今年の世界をみますと、引き続くコロナウイルス感染症の流行や新たにサル痘ウイルス感染症の流行、冬季オリンピック直後の2月にロシアのウクライナ侵攻があり戦闘が続きます。各国では猛暑、豪雨などの異常気象も頻発します。昨年後半からは、世界的なエネルギー・穀物不足によるインフレが進んでおり、わが国では、電気料金やすべての原料・資材等の価格が値上がりして、さらに為替取引における円安が加わっており、厳しい生産・製造状況になってきていると考えています。
 国内の天候は、6月早々の梅雨明け後の酷暑と各地での豪雨災害が発生しています。漬物原料である農産物の生育、収穫の心配が尽きることはありません。原料確保は大切な課題であり、夏以降の天候の安定と秋冬野菜の豊作を祈念したく思います。
 以前、札幌市の白菜漬けを原因としたO157食中毒死亡事件があり、漬物業界には大きな影響がありました。その後は漬物製造における衛生管理が徹底されており、10年間以上にわたり、漬物企業の製品の食中毒の発生はありません。また、従業員の製造作業の日常の手洗いと消毒の徹底、マスク・帽子着用などの服装は、コロナ感染症治療の防護服などと同じであり、漬物企業での従業員の集団感染(クラスター)はなかったと聞いています。
 しかしながら、消費者の食品の安全、安心への関心は依然として強く、その消費者のニーズに応えるためには、企業にとってコストがかかることではありますが、コンプライアンスの徹底はもとより、食品の安全・安心のための対策を、これまで以上に徹底する必要があると考えます。
 厚生労働省は食品の衛生管理を中心に食品衛生法の大改正をしまして、HACCP手法の義務化を昨年6月完全実施としました。HACCP手法は、JAS認証工場が行っている品質管理と、ほぼ同様の手法で行うものです。各企業では、衛生管理の徹底や見直しを品質管理の手法で進めてみてはいかがと思うところです。
 また、漬物製造業は、営業許可業種に新たにされて、昨年6月から各都道府県での営業許可の受付が開始されました。営業許可に加えて衛生管理責任者の配置も義務とされますので、今後の漬物製造業の衛生管理が向上するものと思われます。
 政府は、和食の海外での普及とともに、農水産物や加工食品の輸出にカを入れて、2020年には1兆円を目標としていました。このため食品の輸出振興に役立つようJAS法改正も行われ、製品の品質の規格に加えて、農林物資の取扱いや試験方法など、様々な規格での運用がされています。コロナ禍中でありながら、目標輸出額1兆は昨年には達成されたようです。なお、改正JAS法の第71条にはJAS規格の活用を図るための施策として、国やFAMICが、JAS規格に関する制度の普及に努めなければならないという、従来にない規定がされていまして、私どもは、農林水産省やFAMICが率先してJAS制度の普及を行っていくことを期待しています。
 また、なお、漬物の海外輸出への取組が必要と思いますが、JAS規格にする事項があれば、業界団体の全漬連に申し入れして頂ければと思います。
 今回の総会は、昨年の令和3年度の事業報告及び決算等を承認していただくことですが、本会の主要業務の漬物のJAS格付け依頼検査業務においては、コロナ感染流行の初期には、内食のためか大きな変化が見られ、キムチ、浅漬けの格付数量が大きく伸びたものの、その後はやや減少しています。業務用、学校給食用の漬物の格付依頼検査については、元に戻りつつあるようです。
 本会の令和3年度の事業の具体的な内容につきましては、後程事務局から説明させますが、JAS格付けのための依頼検査数量が計画を上回りましたが、昨年度より2・5%減少しました。なお、JAS認証工場調査では、コロナ感染リスクを考慮した調査延期を一部行いました。その他の諸事業につきましては、計画に沿ったかたちで、概ね終了することがきました。皆様のご支援に対しまして改めて感謝申し上げます。
 なお、令和4年度事業計画と収支・予算につきましては、5月末の書面による理事会で承認頂きました。その骨子等については、本日の総会へのご報告としていますが、本会の経営基盤であるJAS格付依頼検査事業の長期的な減少をとどめるため、JAS格付量の増加要請や新規の認証工場を増やす努力をいたしますので、認証工場並びに会員の皆様には特段のご協力をお願い申し上げます。
 本会は、全漬連事務局と同じ事務室で各々の業務を行っていますが、全漬連が取り組んでいます諸事業により連携を密にしながら、技術面の対応を積極的に行うなどして、漬物業界の発展に協力して参りたいと思っております。
 最後に、本会のようなJAS登録認証機関としての認証業務や検査業務を実施している機関としては、食品に対する安全・安心の消費者ニーズに的確に対応する責務は重いものと認識しておりますので、その責務を十分果たすことができますよう、また、理事会、総会で決定を頂きます諸事業関係者のご指導、ご支援を重ねてお願いいたします。
 コロナと猛暑には気を付けて、御身、ご自愛下されますよう申し上げます。本日の通常総会がスムースに終了いたしますよう出席者各位のご協力をお願い申し上げ、ご挨拶といたします。
【2022(令和4)年8月1日第5101号1,5面】

全国漬物検査協会 第30回漬物技術研究セミナー

西村会長
大羽副会長
松岡教授
保井氏

講演と研究発表に約50名参加

 一般社団法人全国漬物検査協会(西村信作会長)は13日、森下文化センター(東京都江東区)で第30回漬物技術研究セミナーを開催、約50名が参加した。
 東京家政大学大学院の宮尾茂雄客員教授、一般社団法人全国スーパーマーケット協会の籾山朋輝シニアディレクター、信州大学農学部食品免疫機能学研究室の田中沙智准教授の3名が講演。新進、山形県工業技術センター、茨城県産業技術イノベーションセンター、東海漬物、遠藤食品より5名が研究発表を行った。
 西村会長は開会の挨拶で本セミナーの開催にあたり、これまでの功労者と功労企業に感謝状を贈る旨を発表。続いて業界の現状に触れ、「コロナ禍にあって、漬物業界では需要、販売等に少なからず変化が生じている。また、最近のウクライナ情勢、円安による原材料の高騰などに大変ご苦労されていると聞き及んでおり、心配している。本日のセミナーでは宮尾先生、籾山先生、田中先生に講演をいただき、大変期待して拝聴したい。また、各企業、各県の試験研究機関の方々の発表の内容やその質疑応答は、必ず皆様のお役に立つものと思う。発表については、松岡先生、保井先生にもアドバイスをいただくことになっている」と主催者を代表して有意義なセミナーへの期待感を示した。
 続いてセミナー実行委員長の大羽恭史副会長が挨拶し、コロナ禍の影響を受けた業界について「この3年間で様変わりし、時代の大きな節目となった。50年前に起きたグローバリズム=国際分業という産業形態が崩れ去り、この流れはまだ数年続くだろう。私たちは次に何をすればいいのか、ということが次代への置き土産となったが、“地域に根差した漬物”がキーワードとなる。本日のセミナーが若い技術者の皆さんのお役に立てばと思う。しっかり勉強してほしい」と激励した。
 引き続き、第29回研究発表者表彰並びに30回開催記念感謝状贈呈が行われた。30回記念の表彰者・企業は、前田安彦氏(欠席)、大羽恭史氏、宮尾茂雄氏の3名と東海漬物、遠藤食品、新進、片山食品の4社。
 続いて講演と研究発表に移り、研究発表では宮尾教授がコーディネーターを務め、高崎健康福祉大学農学部生物生産学科の松岡寛樹教授、田中准教授、元信州大学教授で農学博士の保井久子氏がそれぞれの発表について講評とアドバイスを行った。それぞれの講演・発表要旨は別掲の通り。
【2022(令和4)年5月16日第5093号2面】
漬物技術研究セミナーの会場
第30回開催記念感謝状贈呈式

 講演・発表要旨

「時代を切り拓く漬物つくり」 東京家政大学大学院客員教授 宮尾茂雄氏

 東京家政大学大学院客員教授の宮尾茂雄氏が「時代を切り拓く漬物つくり」の演題で講演。宮尾氏は、今、漬物に求められているものについて説明。
 ①安全性では2012年8月に起きた食中毒事件からの教訓で、HACCPの考え方を取り入れた安全・安心な漬物作りの重要性を説いた。
 ②健康性では、食塩がヒトの健康を保つ(生体機能を維持する)上で必須の成分であること、漬物から摂取する食塩量は思ったより少ないことを強調した。また、ナトリウムとカリウムのバランス、食物繊維の重要性、乳酸菌の働きなど、漬物の持つ健康要素を多く挙げて説明した。
 ③の時代性では、コメの消費量に比例するように漬物生産量が減少している数値や、日本の総人口が減り高齢者の割合が増加すること、肉製品・乳製品の消費が大きく増加していることを説明した。
 これらの状況を鑑み、これからの漬物は和食の推進や新たな食べ合わせ、オシャレ感を持たせた製品開発などを推奨。さらに、子供世代に対する地道なPR活動(漬物教室、工場体験)の重要性を説いた。

「コロナ禍の食と食の流通」 全国スーパーマーケット協会 籾山朋輝氏

 一般社団法人全国スーパーマーケット協会シニアディレクターの籾山朋輝氏は、コロナ禍における食の消費行動の変遷と、アフターコロナにおける食のニーズ変化について解説した。
 コロナ禍では内食を司る食品スーパー、ドラッグストアの業績が急伸。中でも保存食、素材系の商品カテゴリーが伸長し、内食需要を取り込んだ漬物マーケットも大きく伸びた。一方、コンビニはオフィス立地の売上が急減。外食は壊滅的打撃を受け、百貨店は営業自粛と食品構成比の低さから売上を落とした。
 コロナ禍後の変化の予見では、勤務体制が変わらなかった(テレワークでない)就業者は70%に上り、通常勤務に戻る就業者は増えると想定。従って各業態の食品マーケット規模はほぼコロナ禍前の水準に戻ると予想したが、食品ECは低調に推移すると見ている。
 人員が少ない世帯ほど加工食品の消費率が高くなるため、即食ニーズはコロナ前をしのぐマーケットになると予想。一方、外食は業態でバラつきが起き、居酒屋業態はコロナ前の水準には戻りにくいと予想。商品容器、パッケージはSDGsの概念でエコ化が進むとの考えを示した。

「野沢菜の免疫機能メカニズム」 信州大学農学部准教授 田中沙智氏

 信州大学農学部准教授の田中沙智氏は、まず食の免疫機能について、いくつかの細胞が連携することによって病気を排除する例を、キャラクターに置き換えて分かりやすく説明した。
 野菜の免疫賦活作用について、感染症を予防する物質「インターフェロン・ガンマ」を産生させる49種類の野菜を調べたところ、野沢菜、ニラ、アスパラガスなどの数値が高いことを突き止めた。
 次に、生の野沢菜と漬物の野沢菜(浅漬・本漬)でインターフェロン・ガンマの産生量の違いを実験して調べると、浅漬で生の2倍、本漬で5倍の産生があることが分かった。さらに、発酵度合いでの差異を調べる実験では、発酵させる日数が7日目以降にインターフェロン・ガンマの産生数が大きく増加し、免疫機能の増強に大きく寄与することが分かった。
 これらはマウスに摂取させる実験では証明されたものの、ヒトへの介入試験では、被験者人数が少なかったこともあり個人差が大きかったという。今後については感染予防効果、塩分の影響、ヒトにおける効果の検証などについて、引き続き取り組んでいく考えを示した。

「乳酸発酵漬物の開発」 新進企画開発本部係長 金井洋和氏

 株式会社新進企画開発本部第一開発室係長の金井洋和氏は、発酵食品ブームを背景に取り組んだ「発酵漬物の開発」について発表した。
 原料野菜の選定では、観光資源として地産地消が必須条件となることから、同社所在の群馬県が全国2位の生産量で、機能性がありかつ様々な料理に合わせやすいキャベツを選定した。
 製造については、大掛かりな生産設備を必要とせず、安定した品質の発酵漬物を製造できるフロー及び設備を設定。
 次に乳酸菌の選定については自社培養、市販の乳酸菌のメリットとデメリットを考慮し、安定した生産計画が立てやすい市販の乳酸菌を選定した。
 より美味しくする工夫として、社内で乳酸発酵の味だけでは食べにくいとの意見があり、乳酸発酵後に本漬(調味漬)を行った。また殺菌温度と時間の調整も行い、最適な温度と時間を選定。これにより食べやすい商品が誕生した。
 この製品は、全漬連が制定した「発酵漬物制度」の認定を受けている。今後も食物繊維+乳酸菌の機能を調べ、乳酸発酵漬物の付加価値を追求していく。

「『ぺそら漬け』からの乳酸菌分離」 山形県工業技術センター 長俊広氏

 山形県工業技術センター食品醸造技術部専門研究員兼農業総合研究センター専門研究員の長俊広氏は、山形発酵漬物である「ぺそら漬け」から乳酸菌を分離する試みについて発表。
 山形県は赤かぶ、茄子、おみ漬、青菜漬など特徴のある漬物の宝庫。その中で「ぺそら漬け」は、茄子を塩と唐辛子で漬込んだ発酵漬物の一つで、山形県大石田町が発祥の地と言われている。
 今回は、ぺそら漬け製造工程中から乳酸菌の分離を試みた。漬込み初期段階から経時的にサンプリングを行い乳酸菌の分離を実施した結果、ぺそら漬け由来の乳酸菌を1000株取得できた。
 その1000株について菌種同定を行ったところ、ラクチプランチバチルス・プランタルムと、ラクチプランチバチルス・ペントーサスが優占種であることが分かった。
 この分離乳酸菌数株を用いて培地による発酵試験を実施したところ、プランタルムの方がペントーサスに比べてグルコースの資化性、有機酸生成が速い傾向であった。引き続き、分離乳酸菌の詳細な特性調査を行い、新規発酵食品開発を目指して取り組んでいく。

「漬物乳酸菌が免疫機能に及ぼす影響」 茨城県産業技術Iセンター 飛田啓輔氏

 茨城県産業技術イノベーションセンター技術支援部フード・ケミカルグループ主任研究員の飛田啓輔氏は、漬物由来乳酸菌の抗アレルギー作用を中心とした免疫調節作用について、主にマクロファージ(免疫機能の中心的役割を担う抗原提示細胞)を用いて調査した結果を報告した。
 発酵食品キムチから分離した乳酸菌HS‐1がマクロファージによるIL‐12(=インターロイキン12、ナチュラルキラー細胞を刺激する蛋白質)の産生に及ぼす影響を調べた。
 その結果、HS‐1によるIL‐12産生促進作用は、標準菌株や植物性発酵食品から分離された乳酸菌と比較して優位に高かった。さらに塩化ナトリウムを添加した培地において増殖することも明らかとなった。これらの結果から、HS‐1はアレルギーを軽減する発酵食品の開発に期待できると考えられる。
 また、漬物製造用乳酸菌TS3が、M2に分類されるマクロファージからのサイトカイン(細胞間相互に作用する生理活性蛋白質)産生を促進することで、アレルギー疾患を改善に導くことが示唆された。

「菌数測定見直しと低温細菌測定」 東海漬物漬物機能研究所主任 杉浦俊作氏

 東海漬物株式会社漬物機能研究所要素技術開発課主任の杉浦俊作氏は、①内菌数測定方法の見直し、②低温細菌数測定に関する検討について発表した。
 ①同社の菌数測定方法は、食品衛生検査指針に準拠した方法だが、前処理部分で一部独自の方法を用いているため、外部機関での分析結果を比較できない問題を抱えていた。そこで同社製のキムチと胡瓜浅漬を使用し、前処理方法を4種類、及び希釈水を3種類に変更し、菌数測定及び菌種同定を実施した。この結果、現行の前処理方法で測定した一般生菌数及び乳酸菌数は、外部分析機関での測定結果と同等の値を示した。
 ②10℃以下冷蔵での流通・保管を推奨する商品について、変敗リスクを調査。キムチ、浅漬胡瓜、浅漬白菜の3種で菌の単離・菌種同定を実施したところ、植菌試験において変敗は観察されなかった。これらの結果から、同社製品は一般的な低温細菌に対する抗菌性に優れ、変敗リスクは低いことが再確認された。

「新ガリ機能性食品の届出事例」 遠藤食品研究室開発部 熊谷正幸氏

 遠藤食品株式会社研究室開発部兼品質部課長の熊谷正幸氏は、同社製品「新ガリ生姜」の機能性表示食品届出事例を発表した。
 生姜は、これまでその機能性を実際に証明できていなかった。そこへ2015年4月に「機能性表示食品」制度が制定され、これに取り組むことで実現すると考えられた。
 当初は人がいない、時間がない、知識・能力がないことから届出は無理だろうと思われたが、外部の力を借りることで社内のレベルアップを図れると考え、1食の量目が明確な「ミニガリ」で取組を開始した。
 2019年4月から検討を開始し、10月より1~2名で月2~3日の実務をスタート。機能性関与成分の生姜由来ポリフェノール(6‐ジンゲロール、6‐ショーガオール)を分析し、成分量が届出を行う上で十分か、現実的かを実際に成分抽出・分析して判断した。
 約1年の準備期間を経て初回申請を行い、2度の差し戻しはあったものの、約半年で届出が完了した。
株式会社食料新聞社
〒111-0053
東京都台東区浅草橋5-9-4 MSビル2F

TEL.03-5835-4919(ショクイク)
FAX.03-5835-4921
・食料新聞の発行
・広報、宣伝サービス
・書籍の出版
TOPへ戻る