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漬物JAS・全国漬物検査協会2022

全国漬物検査協会 第30回漬物技術研究セミナー

西村会長
大羽副会長
松岡教授
保井氏

講演と研究発表に約50名参加

 一般社団法人全国漬物検査協会(西村信作会長)は13日、森下文化センター(東京都江東区)で第30回漬物技術研究セミナーを開催、約50名が参加した。
 東京家政大学大学院の宮尾茂雄客員教授、一般社団法人全国スーパーマーケット協会の籾山朋輝シニアディレクター、信州大学農学部食品免疫機能学研究室の田中沙智准教授の3名が講演。新進、山形県工業技術センター、茨城県産業技術イノベーションセンター、東海漬物、遠藤食品より5名が研究発表を行った。
 西村会長は開会の挨拶で本セミナーの開催にあたり、これまでの功労者と功労企業に感謝状を贈る旨を発表。続いて業界の現状に触れ、「コロナ禍にあって、漬物業界では需要、販売等に少なからず変化が生じている。また、最近のウクライナ情勢、円安による原材料の高騰などに大変ご苦労されていると聞き及んでおり、心配している。本日のセミナーでは宮尾先生、籾山先生、田中先生に講演をいただき、大変期待して拝聴したい。また、各企業、各県の試験研究機関の方々の発表の内容やその質疑応答は、必ず皆様のお役に立つものと思う。発表については、松岡先生、保井先生にもアドバイスをいただくことになっている」と主催者を代表して有意義なセミナーへの期待感を示した。
 続いてセミナー実行委員長の大羽恭史副会長が挨拶し、コロナ禍の影響を受けた業界について「この3年間で様変わりし、時代の大きな節目となった。50年前に起きたグローバリズム=国際分業という産業形態が崩れ去り、この流れはまだ数年続くだろう。私たちは次に何をすればいいのか、ということが次代への置き土産となったが、“地域に根差した漬物”がキーワードとなる。本日のセミナーが若い技術者の皆さんのお役に立てばと思う。しっかり勉強してほしい」と激励した。
 引き続き、第29回研究発表者表彰並びに30回開催記念感謝状贈呈が行われた。30回記念の表彰者・企業は、前田安彦氏(欠席)、大羽恭史氏、宮尾茂雄氏の3名と東海漬物、遠藤食品、新進、片山食品の4社。
 続いて講演と研究発表に移り、研究発表では宮尾教授がコーディネーターを務め、高崎健康福祉大学農学部生物生産学科の松岡寛樹教授、田中准教授、元信州大学教授で農学博士の保井久子氏がそれぞれの発表について講評とアドバイスを行った。それぞれの講演・発表要旨は別掲の通り。
【2022(令和4)年5月16日第5093号2面】
漬物技術研究セミナーの会場
第30回開催記念感謝状贈呈式

 講演・発表要旨

「時代を切り拓く漬物つくり」 東京家政大学大学院客員教授 宮尾茂雄氏

 東京家政大学大学院客員教授の宮尾茂雄氏が「時代を切り拓く漬物つくり」の演題で講演。宮尾氏は、今、漬物に求められているものについて説明。
 ①安全性では2012年8月に起きた食中毒事件からの教訓で、HACCPの考え方を取り入れた安全・安心な漬物作りの重要性を説いた。
 ②健康性では、食塩がヒトの健康を保つ(生体機能を維持する)上で必須の成分であること、漬物から摂取する食塩量は思ったより少ないことを強調した。また、ナトリウムとカリウムのバランス、食物繊維の重要性、乳酸菌の働きなど、漬物の持つ健康要素を多く挙げて説明した。
 ③の時代性では、コメの消費量に比例するように漬物生産量が減少している数値や、日本の総人口が減り高齢者の割合が増加すること、肉製品・乳製品の消費が大きく増加していることを説明した。
 これらの状況を鑑み、これからの漬物は和食の推進や新たな食べ合わせ、オシャレ感を持たせた製品開発などを推奨。さらに、子供世代に対する地道なPR活動(漬物教室、工場体験)の重要性を説いた。

「コロナ禍の食と食の流通」 全国スーパーマーケット協会 籾山朋輝氏

 一般社団法人全国スーパーマーケット協会シニアディレクターの籾山朋輝氏は、コロナ禍における食の消費行動の変遷と、アフターコロナにおける食のニーズ変化について解説した。
 コロナ禍では内食を司る食品スーパー、ドラッグストアの業績が急伸。中でも保存食、素材系の商品カテゴリーが伸長し、内食需要を取り込んだ漬物マーケットも大きく伸びた。一方、コンビニはオフィス立地の売上が急減。外食は壊滅的打撃を受け、百貨店は営業自粛と食品構成比の低さから売上を落とした。
 コロナ禍後の変化の予見では、勤務体制が変わらなかった(テレワークでない)就業者は70%に上り、通常勤務に戻る就業者は増えると想定。従って各業態の食品マーケット規模はほぼコロナ禍前の水準に戻ると予想したが、食品ECは低調に推移すると見ている。
 人員が少ない世帯ほど加工食品の消費率が高くなるため、即食ニーズはコロナ前をしのぐマーケットになると予想。一方、外食は業態でバラつきが起き、居酒屋業態はコロナ前の水準には戻りにくいと予想。商品容器、パッケージはSDGsの概念でエコ化が進むとの考えを示した。

「野沢菜の免疫機能メカニズム」 信州大学農学部准教授 田中沙智氏

 信州大学農学部准教授の田中沙智氏は、まず食の免疫機能について、いくつかの細胞が連携することによって病気を排除する例を、キャラクターに置き換えて分かりやすく説明した。
 野菜の免疫賦活作用について、感染症を予防する物質「インターフェロン・ガンマ」を産生させる49種類の野菜を調べたところ、野沢菜、ニラ、アスパラガスなどの数値が高いことを突き止めた。
 次に、生の野沢菜と漬物の野沢菜(浅漬・本漬)でインターフェロン・ガンマの産生量の違いを実験して調べると、浅漬で生の2倍、本漬で5倍の産生があることが分かった。さらに、発酵度合いでの差異を調べる実験では、発酵させる日数が7日目以降にインターフェロン・ガンマの産生数が大きく増加し、免疫機能の増強に大きく寄与することが分かった。
 これらはマウスに摂取させる実験では証明されたものの、ヒトへの介入試験では、被験者人数が少なかったこともあり個人差が大きかったという。今後については感染予防効果、塩分の影響、ヒトにおける効果の検証などについて、引き続き取り組んでいく考えを示した。

「乳酸発酵漬物の開発」 新進企画開発本部係長 金井洋和氏

 株式会社新進企画開発本部第一開発室係長の金井洋和氏は、発酵食品ブームを背景に取り組んだ「発酵漬物の開発」について発表した。
 原料野菜の選定では、観光資源として地産地消が必須条件となることから、同社所在の群馬県が全国2位の生産量で、機能性がありかつ様々な料理に合わせやすいキャベツを選定した。
 製造については、大掛かりな生産設備を必要とせず、安定した品質の発酵漬物を製造できるフロー及び設備を設定。
 次に乳酸菌の選定については自社培養、市販の乳酸菌のメリットとデメリットを考慮し、安定した生産計画が立てやすい市販の乳酸菌を選定した。
 より美味しくする工夫として、社内で乳酸発酵の味だけでは食べにくいとの意見があり、乳酸発酵後に本漬(調味漬)を行った。また殺菌温度と時間の調整も行い、最適な温度と時間を選定。これにより食べやすい商品が誕生した。
 この製品は、全漬連が制定した「発酵漬物制度」の認定を受けている。今後も食物繊維+乳酸菌の機能を調べ、乳酸発酵漬物の付加価値を追求していく。

「『ぺそら漬け』からの乳酸菌分離」 山形県工業技術センター 長俊広氏

 山形県工業技術センター食品醸造技術部専門研究員兼農業総合研究センター専門研究員の長俊広氏は、山形発酵漬物である「ぺそら漬け」から乳酸菌を分離する試みについて発表。
 山形県は赤かぶ、茄子、おみ漬、青菜漬など特徴のある漬物の宝庫。その中で「ぺそら漬け」は、茄子を塩と唐辛子で漬込んだ発酵漬物の一つで、山形県大石田町が発祥の地と言われている。
 今回は、ぺそら漬け製造工程中から乳酸菌の分離を試みた。漬込み初期段階から経時的にサンプリングを行い乳酸菌の分離を実施した結果、ぺそら漬け由来の乳酸菌を1000株取得できた。
 その1000株について菌種同定を行ったところ、ラクチプランチバチルス・プランタルムと、ラクチプランチバチルス・ペントーサスが優占種であることが分かった。
 この分離乳酸菌数株を用いて培地による発酵試験を実施したところ、プランタルムの方がペントーサスに比べてグルコースの資化性、有機酸生成が速い傾向であった。引き続き、分離乳酸菌の詳細な特性調査を行い、新規発酵食品開発を目指して取り組んでいく。

「漬物乳酸菌が免疫機能に及ぼす影響」 茨城県産業技術Iセンター 飛田啓輔氏

 茨城県産業技術イノベーションセンター技術支援部フード・ケミカルグループ主任研究員の飛田啓輔氏は、漬物由来乳酸菌の抗アレルギー作用を中心とした免疫調節作用について、主にマクロファージ(免疫機能の中心的役割を担う抗原提示細胞)を用いて調査した結果を報告した。
 発酵食品キムチから分離した乳酸菌HS‐1がマクロファージによるIL‐12(=インターロイキン12、ナチュラルキラー細胞を刺激する蛋白質)の産生に及ぼす影響を調べた。
 その結果、HS‐1によるIL‐12産生促進作用は、標準菌株や植物性発酵食品から分離された乳酸菌と比較して優位に高かった。さらに塩化ナトリウムを添加した培地において増殖することも明らかとなった。これらの結果から、HS‐1はアレルギーを軽減する発酵食品の開発に期待できると考えられる。
 また、漬物製造用乳酸菌TS3が、M2に分類されるマクロファージからのサイトカイン(細胞間相互に作用する生理活性蛋白質)産生を促進することで、アレルギー疾患を改善に導くことが示唆された。

「菌数測定見直しと低温細菌測定」 東海漬物漬物機能研究所主任 杉浦俊作氏

 東海漬物株式会社漬物機能研究所要素技術開発課主任の杉浦俊作氏は、①内菌数測定方法の見直し、②低温細菌数測定に関する検討について発表した。
 ①同社の菌数測定方法は、食品衛生検査指針に準拠した方法だが、前処理部分で一部独自の方法を用いているため、外部機関での分析結果を比較できない問題を抱えていた。そこで同社製のキムチと胡瓜浅漬を使用し、前処理方法を4種類、及び希釈水を3種類に変更し、菌数測定及び菌種同定を実施した。この結果、現行の前処理方法で測定した一般生菌数及び乳酸菌数は、外部分析機関での測定結果と同等の値を示した。
 ②10℃以下冷蔵での流通・保管を推奨する商品について、変敗リスクを調査。キムチ、浅漬胡瓜、浅漬白菜の3種で菌の単離・菌種同定を実施したところ、植菌試験において変敗は観察されなかった。これらの結果から、同社製品は一般的な低温細菌に対する抗菌性に優れ、変敗リスクは低いことが再確認された。

「新ガリ機能性食品の届出事例」 遠藤食品研究室開発部 熊谷正幸氏

 遠藤食品株式会社研究室開発部兼品質部課長の熊谷正幸氏は、同社製品「新ガリ生姜」の機能性表示食品届出事例を発表した。
 生姜は、これまでその機能性を実際に証明できていなかった。そこへ2015年4月に「機能性表示食品」制度が制定され、これに取り組むことで実現すると考えられた。
 当初は人がいない、時間がない、知識・能力がないことから届出は無理だろうと思われたが、外部の力を借りることで社内のレベルアップを図れると考え、1食の量目が明確な「ミニガリ」で取組を開始した。
 2019年4月から検討を開始し、10月より1~2名で月2~3日の実務をスタート。機能性関与成分の生姜由来ポリフェノール(6‐ジンゲロール、6‐ショーガオール)を分析し、成分量が届出を行う上で十分か、現実的かを実際に成分抽出・分析して判断した。
 約1年の準備期間を経て初回申請を行い、2度の差し戻しはあったものの、約半年で届出が完了した。
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