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日本漬物産業同友会 2023

<日漬同友会> 14名参加で島根研修 土江本店の津田かぶ圃場見学

遠藤会長
山本旅行委員長
関谷社長
島根で学びと交流深める ゲストも迎え和やかに
 【大阪支社】日本漬物産業同友会(遠藤栄一会長)は10月24、25日の2日間、島根県で研修旅行を14名参加で実施した。有限会社土江本店(関谷忠之社長、松江市)の工場や圃場を見学したほか、観光の時間を設け加盟者の親睦を図る機会となった。
 出雲空港に一行が集合すると、山本正憲旅行委員長は「2019年の九州訪問以来4年ぶりの研修旅行。旅行委員の仕事も良い経験をさせていただいた」と挨拶。軽妙なトークで和やかな道中を演出した。
 バスに乗り込み、最初の目的地へ向かう途中、特別参加となった株式会社タツミ商会の辰巳智和子社長の姉でキヤノングローバル戦略研究所の辰巳雅世子氏が自己紹介。「部外者にも関わらず受け入れてくださる懐の深さに感謝。漬物は日本の伝統文化であるのに知らないことばかりで、この旅で学びたい」と話した。
 最初の目的地となった土江本店では冬の主力商品となる津田かぶ漬の工場や圃場を見学した。(詳細別掲)
 その後は関谷社長の計らいで男女の健康や縁結びに御利益のある八重垣神社、日本最古の大社造りの本殿が国宝に指定されている神魂(かもす)神社を参詣。ガイドさながらの蘊蓄で、島根の歴史文化に触れる時間となった。
 ホテル一畑に到着して夕食へ集まると、まず遠藤社長が挨拶。「長続きする組織の条件はしゃべる・食べる・学べる・トラベルと4つのべるが揃うこと。今回の旅行は全てが揃っている」と話し、今後も定期的な情報交換会や研修事業を実施することへ意欲を見せた。
 東京中央漬物の齋藤正久社長が乾杯の音頭を取った。食事はホテルの眼前に臨む宍道湖特産のしじみや、島根和牛、地酒などに舌鼓を打ち、その後は三次会まで開かれ大いに交流を深めた。
 翌日は国宝である松江城を囲む堀川を船で巡り、八百万の神々が集まる神社とされる出雲大社へ詣で観光を楽しんだ。
 お土産の購入へと赴いた島根ワイナリーでは、「幻のしょうが」と呼ばれる出西しょうがを用いた同店オリジナル商品の「しょうがのスパークリング」に生姜漬関係者らが興味を示す一幕も。
 最後は空港へと向かうバス車内で研修の感想を述べ合い、勉強になったこと、交流を深められたことなどを口にし、皆満足げな表情を浮かべていたとおり、有意義な研修旅行となった。
<参加者一覧(敬称略)>
遠藤栄一(遠藤食品)、遠山昌子(赤城フーズ)、山本正憲(山本食品工業)、宮前有一郎(みやまえ)、浅田康裕(アサダ)、菅野嘉弘(すが野)、齋藤正久(東京中央漬物)、大久保欣也(大久保食品)、菅野嘉彬(菅野漬物食品)、中田悠一朗(中田食品)、向後範康(ワントントレーディング)、辰巳智和子(タツミ商会)、辰已雅世子(キヤノングローバル戦略研究所)、関谷忠之(土江本店)

土江本店の本社工場と圃場を見学
土江本店本社前で
津田かぶの干し場
圃場で津田かぶとともに
津田かぶ漬各種
 土江本店の本社工場は昭和51年に開業した松江内陸工業団地の第一号工場であり、JAS認定工場。全館をオゾン殺菌するなど衛生的な環境で漬物製造を行っている。
 工場では、看板商品である津田かぶ漬の製造ピーク時期を迎えている。
 津田かぶの特徴について関谷社長は「鮮やかな紅白、勾玉のように曲がった形、姿漬では長い葉茎の部分はぐるりと〝ご縁結び〟に。八百万の神が集う島根らしい、縁起の良い特徴が揃っている」と紹介。
 生の津田かぶをナタで切って一行へ手渡すと「すごく甘い」「これを漬物にするんだから美味しいはずだ」と感心の声があがった。
 工場を出ると、屋根付きのスペースで津田かぶの干し作業も行っていた。通常は圃場でハザ掛けして干しているが、雨が続きそうなときには、このスペースを活用している。干すことでかぶの肉質がより緻密に、甘みや旨みも増していく。
 同社はこの津田かぶをぬか漬、浅漬(液漬)、甘酢漬、粕漬の各種に漬けている。特にぬか漬はギフトとして人気が高く、試食した一行からも好評だった。
 続いて、同社の圃場へと赴いた。全国で5番目の広さを誇る湖・中海に平成元年に造成された干拓地に有する。自社栽培はここ数年も拡げ続けて現在約3000坪となっており、栽培管理や採種まで、全て自社社員が製造作業などと兼務で行っている。
 津田かぶの栽培期間は、概ね播種から約2か月程度。2週間ずつ播種をずらしながら栽培している。
 自社栽培は関谷社長が約30年前、社長就任する際に始めた。当時はまだ農家が多かったため投資額や手間の問題から反対意見もあったが、自社栽培をすれば品質やコストを平準化できると考えて踏み切った、と関谷社長は振り返る。生産者が減った今となっては津田かぶ原料のほぼ全量を自社生産するようになり、30年前の決断が今の津田かぶ漬文化維持に直結している。
 見学を終えて宮前有一郎前会長は「関谷社長のユニークさがそのまま会社に生かされている。工場も圃場も想像以上の規模感だった。他社に先駆けて行動する先見の明と意思決定力に驚かされた」と感想を述べた。
(小林悟空)
【2023(令和5)年11月1日第5144号1面、11月11日第5145号3面】

日本漬物産業同友会 原料対策委員会

遠藤会長
梅澤委員長
籠島理事

1円2円の攻防から脱却へ

 人材確保は他業種とも競合に
 日本漬物産業同友会(遠藤栄一会長)は7日、東京都中央区のホテルモントレ銀座にて原料対策委員会(梅澤綱祐委員長)を開催。全国から37名が出席して各品目の市況や原料に関する総合的な情報交換を行い、籠島正雄理事が総括した。
(千葉友寛)

 包装資材、副資材、人件費、物流費、燃料など、あらゆる製造コストが上昇し続ける中、海外原料、海外完成品を扱っている企業にとって大きな問題なっているのが為替。現在は1ドル146円~147円と円安の進行に歯止めがかからず、各メーカーの収益を大幅に圧迫している。
 そのような中、最も厳しい状況となっているのが生姜原料。タイ、中国南部、山東省と3つの産地で構成される生姜は、世界的な需要の増加に伴い生鮮向けの価格が高騰している。
 その影響で塩蔵原料の価格も高騰することが予想されており、2014年の史上最高値に迫る可能性が指摘されている。
 いずれの産地も円換算で1ケース(45㎏)1万2000円前後となることが予想され、各産地の10年平均価格(タイ:9041円、中国南部:8299円、山東省:7328円)と比較すると25~40%高い価格となる。価格転嫁は避けられない状況で、早ければ年内にも価格交渉の動きが本格化してくる様相だ。
 今後は原料だけではなく、物流の問題も出てくる。来年4月より自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって運賃は1・5倍まで上がり、現在の3~4割の荷物が運べなくなることが想定されている。
 また、人の確保については、上場企業や大手企業を含めた他業種の企業が競合となる。10月以降、最低賃金は全国平均で1004円(時間額)となり、時給1000円では人を雇うことができなくなる。
 このような環境下、業界内における1円、2円の攻防から脱却し、漬物市場を維持、発展させていくため、漬物の文化を未来に継承していくために適正価格での販売が求められている。原料対策委員会の内容は、改めて業界がその問題に迅速かつ真摯に取り組む必要があると痛感する情報開示となった。
 委員会は遠山昌子副会長の司会進行で開会の挨拶に立った遠藤会長は、「日本漬物産業同友会は輸入原料を扱っている企業が多く、円安などの不安を抱える中、足の引っ張り合いではなく、商品を適正な価格で販売し、末永く続く業界にしなければならない。本日はざっくばらんな情報交換を行い、課題や問題を共有して対応策を考えたい」と語った。
 初参加の丸イ食品株式会社の大曽根史典社長と株式会社新進生産本部購買部課長の五十嵐学氏に続いて挨拶を行った梅澤委員長は、「コロナ下ではズームで委員会を3回開催した。対面での開催は2回なので、ズームの方が多くなっている。ズームは効率的で情報交換に適したやり方だと思うが、対面で皆さんと顔を合わせて開催することにも大きな意義がある。委員会では主に原料について情報交換を行うのだが、会社を経営する上で人や物流の問題などを共有させていただきたい」と協力を求め、委員会を進行した。

各カテゴリー発表

日漬同友会の原料対策委員会
ガリ用の漬込み過去最低か
 適正価格化で漬物文化を継承
<漬物市況>
 国産の浅漬原料は酷暑のため価格が高騰。品質も悪い。白菜は安定しているが、夏の野菜は価格が上がっている。今年は台風も多く、契約分も予定通り入ってくるか不透明。浅漬は容器や包装を変えてリニューアルする時に値上げを実施するケースが多い。スーパーなどの小売店も値上げが理解されるようになってきているが、1カ月や2カ月までは間に合わない。来春から値上げするものは10月から動かないといけない。
<外食・業務用>
 外食や業務用は年明けから昨年の数字を上回っているが、コロナ前までには回復していない。様々なコストが上昇し、為替の影響も大きいので値上げを再検討している。また、鳥インフルエンザの影響で鶏肉や卵製品の取り扱いが減少したのだが、卵の黄色の彩りがないということで黄色い沢庵の需要が増えた。
<土産関連>
 コロナが落ち着いて売れ行きは好調。仙台駅ビルのテナントでは全体的に2~4割伸びている。外国人観光客が増えていて、今後も増加する見通し。
<梅>
 梅干しはスーパーのコロナ下の数字を見ると、毎年5%ずつ数字が落ちている。2018年にテレビ番組と猛暑の影響もあり年間で前年比120%と底上げされた。紀州梅は2020年が凶作で値上げを実施した。その後、コロナが発生して毎年少しずつ下がっていった。それでも今年に入って下げ止まり、今夏は暑い日が続いていることもあって好調に売れている。紀州梅産地は昨年まで2年連続豊作で、今年は平年作。原料在庫は余裕がある。
 中国梅は昨年に続いて今年も不作。今年の作柄は6~7割作。まだ相場は出ていないが、紀州梅の在庫があるので価格は弱含みになりそうだ。
 カリカリ梅の需要は減少しておらず、夏の売れ行きは好調。昨年の群馬は雹害で収穫量が平年の30%程度だった。今年は豊作傾向だったが、収穫期の雨や農家の高齢化などの影響もあり、豊作の割には数量が伸びず拡販できる状況ではない。また、今年は東北の梅も良かったが、需要に対しては足りていない。
 中国産の昨年のカリカリ梅は大減産。中国国内でカリカリ梅を入れたタピオカミルクティーが流行ったこともあり、日本に輸出する量が大幅に減少し過去最高値となった。今年は豊作で量もあるが、円安で到着価格が高いためコンテナ買いできる状況ではない。
 小梅の売れ行きは暑いこともあり、少し良かった。原料不足が続いているためここ3、4年は値上げを実施している。業務用の供給を止めた企業もあるが、それをカバーできる企業もない。市販向け商品は業務用より利益率が高いので、市販向けのみ対応している企業が多くなっている。
 小田原の梅は350tしかない。以前は他の産地の状況も考慮して価格が出ていたが、現在は生産者を減らさないためにJA主導で高値安定が続いている。
<生姜>
 タイは干ばつで植え付けが遅れたため、収穫も遅れている。本来は収穫が終わる時期だが、まだピークにもなっていない。種の価格が昨年の3~5倍となっており、ガリ用の確保は難しい見通し。予想価格は1ケース(45㎏)87ドル(昨年は71ドル)。
 中国南部も干ばつなどの影響で価格が上昇傾向にある。タイと同様に種の価格が高いこともあり、予想価格は82ドル(同67ドル)。
 山東省の収穫は9月、10月がピークになる見通し。生鮮向けの価格が高騰している状況が続いており、2023年産のガリ用の収穫はほぼなく、価格は高騰すると見られている。予想価格は83ドル(同69ドル)。
 今年は円安の影響が大きく、1ドル146・27円で計算するとタイが1万2725円、中国南部が1万1994円、山東省が1万2140円といずれの産地も1万円を超えることになる。3つの産地が1万円を超えるのは2014年以来、9年ぶりとなる。この数字をもとに計算すると、キロ50円値上げしないと現在の利益が確保できない。
 生鮮向けの価格が高く、ガリ用の漬け込み量は過去最低の数量となる見通し。塩蔵原料の確保は非常な困難な状況。予想される2023年の原料価格は、現在の製品の卸価格とほぼ同じ。価格改定しないメーカーは生き残れなくなる。
 1円、2円値上げしてもコストアップに追いつかない。給料は企業が決めるというよりも政府が最低賃金を上げている。物価が上昇する中で給料も上げなければならないが、経営の観点からは簡単なことではない。ガリや紅生姜はサービス品となっているケースが多いが、値上げすると数量と物量が減る。だが企業の存続をかけて価格改定のタイミングを検討している。
<楽京>
 中国産は原料価格、漬け込み量、輸出価格の全てが昨年とほぼ同レベルだが、進行する円安は大きな負担となっている。漬け込み量は合計4万3000tで昨年よりやや少ないが、安定した数量となっている。江西省では生鮮用で料理素材として利用される動きが出てきている。
 昨年と今年は順調に漬け込みができており、安定供給が可能。一昨年が不作だったため、昨年は量目調整と価格改定を実施した。価格改定で若干動きが鈍ったが、ここ3カ月は暑い日が続いていることもあって売れ行きは順調。
 昨年の国産は作柄が悪く、在庫をつなぐことが大変だった。量目調整や価格改定を行ったが、数量は減らなかった。今年の作柄は宮崎と栃木が平年作、鳥取が豊作となっており、商品を安定して出せる。
<塩漬け野菜>
 中国のときわ、四葉は昨年の在庫があるので作付面積がやや減少。苗を作るときの低温が懸念されていたが、生育は順調で必要量を確保した。四葉は昨年並みに栽培され、予定数量が確保できた。生の価格はときわが昨年並みで、四葉が昨年よりやや上昇。塩や物流費が上昇しているため、塩蔵価格も上がる見込み。
 茄子の作付面積も昨年並みで、収穫、漬け込みが順調に行われている。生の価格も昨年並みで推移している。その他、ミャンマーでメンマ原料の栽培をスタートした。
 昨年産のロシアのわらびは21年比で収穫量が6分の1に減少。今年は昨年の4分の1~半分に減産。原料の確保が困難な状況になっている。
 国産胡瓜は植え付け時期が低温だったこともあり収穫が遅れている。生産者の減少、気温の上昇などの影響で価格が上がっている。
<大根>
 沢庵の売れ行きは引き続き良好。昨年の新潟の作柄は75~80%となったため、足りない分を春大根でカバーしている。しかし、春大根は収穫シーズンが短いことや反収が良いスイカなどの栽培が増えているため、産地では農家に栽培管理までやってもらい、収穫はハーベスタを使用して自社で行った。
 新潟では7月21日から9月6日まで雨が降らず、連日37度、38度という高温が続いた。例年、秋大根の播種は8月までで80%に達するが、現在でも35%程度しか進んでいない。播種が遅れたため、年明けも大根原料の受け入れを行う予定だが、雪が降ると手の打ちようがない。
 2022年度産の宮崎の干し大根原料は前年並み。年々5%ずつ収量が減っており、原料を確保するため自社で農業法人を立ち上げた。昨年、干し大根の価格を20%上げ、今年は生沢庵と高菜の価格を10~15%上げた。それでもコスト上昇分をカバーできていないので、3回目の価格改定を検討している。
 べったら漬は気温が高すぎることもあり、売れ行きは芳しくない。現在は青森の原料が入ってきているが、高温障害などの影響で品質は良くない。10月のべったら市に向けて準備を進めているが、原料状況は思わしくない。この4年を振り返ると、原料状況が良い年はなかった。
<にんにく>
 中国の産地では春の低温が心配されたが、収穫に影響はなかった。塩蔵原料は計画数量が漬け込まれている。価格は春に投機が入ったことで上がっている。毎年、数%~2桁の値上げ要請が届いており、今年も値上げの話が来ていて交渉している。
<水産>
 魚卵の価格が高止まりしている。昨年高かった原料が残っており、昨年より少し回復してきている。かずのことししゃもはノルウェーとアイスランドで3年禁漁だったが、3年ぶりに解禁されて復活している。イカは世界的に漁獲量が減少している。おせちに使用される国産のコハダは7月から原料が入ってきておらず、欠品となっている。

<総括>【籠島正雄理事】
 現在、原料が安定しているのは紀州梅と中国産楽京のみ。中国の内需拡大や天候不順などの問題が重なっているところに輪をかけて農家の高齢化や円安の進行などの課題もあり、先行きは厳しい見通しだ。同友会は数年前に若返りを図ったのだが、先々の見通しに不安がある中での運営が求められている。
 厳しい状況の中でも我々が先を見据えて、何かしらの施策を立てて協力するところは協力し、競争するところで競争していかないと、漬物という文化そのものがなくなってしまうのではないかという危機意識を持っている。業界を通じてやるべきことはしっかりやって、次の世代に漬物の食文化を継承していくような取組を行っていきたいと考えている。
【2023(令和5)年9月11日第5139号1,2面】

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