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編集後記2024

魅力的なインドネシア 7月1日号

インドネシア名物のナシゴレン
 ここ1か月、プライベート、仕事を問わず、今までになく、インドネシアの名前を耳にする機会が多かった。「取引先がインドネシアに支店を新設した」「勤務先の高校にインドネシアから留学生が来ている」「インドネシアの技能実習生は礼儀正しい」と聞く。
 間を置かず、日経新聞で「首都がジャカルタからヌサンタラへ移転」という記事を見つける。今秋から移転を始め、2045年に完了予定だ。2023年の世界人口ランキングで、インドネシアはインド、中国、米国に次ぐ世界4位、今後も続く人口増で、首都ジャカルタが手狭になったことが一因とされる。
 人口増による内需拡大が牽引していることもあり、インドネシアのGDPも毎年伸長している。
 同国は人口の90%がイスラム教徒で、日本とは食文化が異なるものの、魅力的なマーケットなのは間違いない。(高澤尚揮)
【2024(令和6)年7月1日第5167号7面】

生梅の価格が高騰 6月21日号

2024年産の紀州南高梅
生梅の価格が高騰
3㎏で4980円。今月中旬にあるスーパーで販売されていた紀州南高梅の価格だ。
 秀品と表示されているが、よく見ると傷が入っていたり、黒い斑点があるものも多い。昨年までは1kg600円~1000円で販売されており、毎年のように生梅を購入して梅酒や梅シロップを作っていたが、今年はさすがに断念した。
 紀州梅産地の今年の作柄は、「かつて経験したことがない」(大手梅干し製造メーカー社長)と漏らす程の凶作となっている。
 産地では、「暖冬の年は不作になる」というのが通説となっており、今年は暖冬の影響で当初から実の成りが悪かった。
 そのような状況下で3月下旬に降雹があり、梅が落下したり傷が入るなどの被害が広範囲で発生。収穫はまだ終わっていないが、3~5割作の見通しとなっている。
 塩漬される量は不明だが、例年よりも大幅に少ないことは確実で、原料価格も上昇することが想定される。今年の梅の希少価値は高く、価格改定の動きが出てくることが予想される。
 今夏は昨年以上の猛暑になるとされ、梅干しの需要は増加すると見られる。需要と供給のバランスに注視する必要がある。
(千葉友寛)
【2024(令和6)年6月21日第5166号6面】

漬物×佃煮でヒット 6月11日号

おにぎりには不可欠の漬物と佃煮
 おにぎり具材として改めて注目が集まる漬物と佃煮。この2つを組み合わせたアイテムが広がりを見せている。
 「つぼ漬け昆布」「おかかたくあん」「梅のり佃煮」などの他、最近では昆布佃煮にいぶりがっこを混ぜ込んだ「いぶりがっこ昆布」も登場し人気を集めている。
 佃煮に漬物を加えることにより、野菜摂取につながるだけでなく、歯切れの良さがアップし、おかずやおにぎり具材として、さらにご飯が進む仕上がりとなる。
 また蒟蒻との組み合わせも有効だ。食物繊維がたっぷりと含まれ、カロリーが少ないという蒟蒻の健康性に加え、独特の食感を漬物や佃煮に付与できる。
 かつて、羽田地区の佃煮メーカーでは、貝類と蒟蒻を炊き合わせた佃煮を発売し、その美味しさが好評を得ていたようだ。
 様々な原料が高騰する中、食材の組み合わせによっては、内容量を変えずに、原料コストを減らすことができるだけでなく、味わいをより良いものにできる可能性もある。
 和日配カテゴリーの垣根を超えた商品開発により、新たなヒット商品を生み出していきたい。
(藤井大碁)
【2024(令和6)年6月11日第5165号7面】

客単価向上への気概 6月1日号

セブン-イレブンのドリンク売場
 全国調理食品協同組合のハワイ総会に同行した。
 日本との物価の違いは凄まじく、現地住民が利用するスーパーでも500mlのコーラ一本が2・5ドルほど。外食についてはファストフードチェーンのような手軽に済ませられる店で13ドルくらい、アルバイト募集は時給20ドル前後だった。
 この物価の違いは偶然ではなく、売る側の意識の差から生まれた必然であると感じた。
 まず「〇個買えば1個無料」式の販促が多かった。ついで買いや、複数人で連れ立っての買い物を誘発できる、店側にとってメリットの多い販促方法だ。
 外食でも単価が安いものであればデカ盛りにする、最小注文単位を3個以上にする、というように「10ドル以上に乗せる」という気概を感じた。
 一方で日本の販促は値下げやポイント付与のように、直接的に単価向上へ貢献するものは少ないように見える。商品傾向で見ても、わずかに割高になるとはいえ、少量化・個食化でむしろ客単価を下げるような方向に進んでいる。
 消費することを肯定するような取組が必要になるのではないだろうか。(小林悟空)
【2024(令和6)年6月1日第5164号6面】

カスハラ対策推進の意義 5月21日号

 SM3団体のカスハラ防止・啓蒙ポスター
 カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」を防ぐため、東京都は全国初の条例制定に向け、準備を進めている。
 昨今、なぜカスハラが増えたと思われているのか。関西大学の池内裕美教授(社会心理学)は、2020年刊行の「情報の科学と技術」で、次の要因を述べている。
 ①顧客第一主義の考えが根強かった②消費者基本法の改正や消費者庁の設置で、消費者が権利主張しやすくなったこと。
 社会意識や法律をすぐに変えることはできない。ただ池内教授は現場レベルでできる悪質クレーマーへの対処法として、コミュニケーション時に①傾聴②状況確認③解決法の提案④対応終了を適切に行うこと、また組織体制を整備することを推奨している。
 日本では就業者数の7割がサービス業に携わっており、高い離職率と人手不足が社会的課題である。定着率・就労意欲の両方を向上させるために、業界団体・企業がカスハラ対策を推進する意義は大きい。 
(高澤尚揮)
【2024(令和6)年5月21日第5163号11面】

ゴールへの到達 5月11日号

「シャキシャキ荏胡麻キムチ漬」(上)と「廃棄物を救う!信州蕎麦ぬか漬け」
 SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択された。2016年から2030年までの15年で、達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されており、今年でその3分の2が経過することになる。
 当初は、その意味も目的もほとんど分からなかったが、今では頭文字のSが表す「Sustainable(サスティナブル)=持続可能な」という言葉も耳に馴染み、すっかり世間に定着している。
 先日行われた全日本漬物協同組合連合会主催の「漬物グランプリ2024」でも、SDGsの考え方を取り入れた出品作が多く見られた。それも法人の部だけでなく、個人の部や学生の部の作品でも見られたことに新鮮な驚きがあった。
 学生の部グランプリの「シャキシャキ荏胡麻キムチ漬」(松下朋生さん・立命館大学)も、普段は廃棄されている荏胡麻の葉を使い、審査委員特別賞の作品も「廃棄物を救う!信州蕎麦ぬか漬け」(藤澤愛梛佳さん・長野県南安曇農業高校)と、そのものずばりのネーミングだった。
 あと5年。この意識の高まりで、ゴールへの到達を祈りたい。
(菰田隆行)
【2024(令和6)年5月11日第5162号4面】

食べる機会を創出 5月1日号

全漬連の試食ブースに長蛇の列ができる
4月25日~27日に東京ビッグサイトで開催された漬物グランプリ2024。
 毎年、同グランプリを取材をしていて思うことは、「消費者が漬物を食べない」ということは間違った認識だということだ。
 全日本漬物協同組合連合会のブースでは全国の漬物の試食が行われた。コロナや衛生の問題で2019年以来、5年ぶりの試食提供となったが、試食には連日長蛇の列ができ、その中には子供の姿もあった。
 親子で訪れていた東京在住の11歳と7歳の女の子に話を聞くと、漬物が大好きで特に胡瓜と梅干しを好んで食べているそうだ。
 自宅では余った野菜を漬物の素で漬けて食べることが多く、梅干しは購入しているという。この日は試食して美味しかったというカリカリ梅と特選マークの梅干しを特別価格で購入していた。
 11歳のお姉ちゃんは「漬物が好きなので、このようなイベントがあると楽しい。また来たい」と笑顔で話していた。漬物を食べない、ということと漬物を食べる機会がない、ということは少し意味が違う。漬物のPRはもちろんだが、食べる機会の創出も重要なテーマだと思っている。(千葉友寛)
【2024(令和6)年5月1日第5161号7面】

寛容が肝要 4月21日号

惣菜盛付工程のロボット化
 令和と昭和の価値観の違いを描いた人気ドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系列)。イケイケドンドンの昭和とコンプライアンス全盛の令和のギャップを風刺した内容は、納得と笑いの連続だった。
 最終回では、出演者がミュージカル風に、「寛容が肝要。大目に見ましょう」と2つの時代をつなぐ上で重要なキーワードを連呼し、分かり合えなくても、寄り添うことが大切だと呼びかけた。 
 最近、取材現場においても「寛容さが大切」と担当者が強調する場面があった。それは、経産省と日本惣菜協会が進める惣菜盛付工程ロボット化の記者発表会でのことだ。
 ロボットにはつい完璧を求めてしまいそうだが、実際は違う。完璧を求めれば求めるほど、ロボットの普及は遠のいてしまう。人間がロボットに寄り添うことで、ロボットを導入しやすい“ロボットフレンドリー(ロボフレ)”な環境を作っていくことが大切だ。
 そのためには、「サービスが多少いびつでも、それを受け入れる人々の寛容さが重要で、それができれば、技術進歩も爆発的に加速していく」と経産省の担当者は語った。過去と現在もそうだが、現在と未来をつなぐためにも、“寛容が肝要”なのである。(藤井大碁)
【2024(令和6)年4月21日第5160号5面】

【編集後記】4月1日号

第67回全国水産加工たべもの展で審査する日本昆布協会の吹田理事長と大調食の廣川理事長(奥)
審査の悩ましさ
 レシピコンテストなどを取材している折には記者も審査を依頼されることが時々あるのだが、毎回非常に悩まされる。
 審査シートを渡される場合には味、見た目、栄養、作りやすさなどの項目がそれぞれ10点満点で配点されていることがある。しかし、そのコンテストのテーマが「元気が出る〇〇」であれば栄養を重視して傾斜をかけるべきでは、「春を彩る〇〇」であれば見た目を重視したい…などと頭の中で右往左往しながら点数を付けることになる。
 さてこの度の全国水産加工たべもの展では、最終審査の際には取材しながら記者も一部を試食させてもらった。どれも美味しく、見た目も良いものばかりで、自分が審査員だったら心底悩んだはずだ。
 ところが、いざ結果発表を見てみると、どれも非常に納得感があった。学識者、同業者(メーカー)、消費者団体、生産者などそれぞれの視点が組み合わさり、公平かつ鋭い視点が生まれているのだろう。
 受賞商品の素晴らしさを、一般の人々にも知ってもらえることを願っている。そのきっかけ作りができるよう、本紙SNS「おいしい新聞」での発信を強化したい。
(小林悟空)
【2024(令和6)年4月1日第5158号5面】

【編集後記】3月21日号

東海漬物の親子ぬか漬教室
春休みの過ごし方
 今年の小学校や中学校の春休みは、東京都で3月23日~4月7日、大阪、名古屋、福岡もほぼ同期間だ。この2週間ほどの春休み、子どもたちは部活に励んだり、また親や友人たちと新作の映画を観に行ったりと、様々な過ごし方をするはずだ。
 東海漬物株式会社が地元豊橋で開催する「春休み親子ぬか漬け教室」を取材するため、会場の科学館を何度か訪れたことがある。ぬか漬け体験をし、きゅうりのぬか漬けを一緒に試食する仲睦まじい親子の姿を見ると、温かい気持ちになる。
 だが一方、別の取材では、食品メーカーが子ども食堂へ食品を寄贈する場に立ち会うこともある。子ども食堂のスタッフからは「子どもたちの中には、家庭で十分な食事を摂れず、学校給食が命をつないでいる子がいる。また家庭に居場所がなく、孤独に長期休みを過ごす子がいて、子ども食堂が心休まる居場所でありたい」という話も聞く。
  子ども食堂では、食事提供の他に、ボードゲームや卓球等のレクリエーションを用意しているところもあり、気軽に参加できる。子どもたちには、楽しい春休みを過ごし、笑顔で新学期を迎えてほしい。(高澤尚揮)
【2024(令和6)年3月21日第5157号10面】

【編集後記】3月1日号

あげたつもり募金
 2月14日のバレンタインデーと3月14日のホワイトデーは、菓子やギフト業界にとっては大きな商機となる1カ月である。
 しかし、職場や学校などでなかば儀礼的となっている、バレンタインデーの義理チョコとホワイトデーのお返しを「もったいない」と考える風潮もある。
 共栄火災海上保険では、もっと有意義な目的に使えないかと女性社員有志が発起し、1993年から「“義理チョコ・あげたつもり・もらったつもり”バレンタイン・チャリティ募金」を実施している。これはあげたつもり、お返ししたつもりで1口500円をチャリティ募金する活動。
 集まった募金は、マリ共和国(西アフリカ)の難民キャンプを支援するため、NGO(民間国際ボランティア組織)「マザーランド・アカデミー・インターナショナル」を通じて井戸や学校、医薬品倉庫の建設、砂漠化防止のための植林、近年では水田づくりのために活用されている。
 今年の結果を合わせた過去32年間の募金総額は、約5000万円。これも立派なSDGs活動として称えられて良いだろう。
(菰田隆行)
【2024(令和6)年3月1日第5155号5面】

【編集後記】2月1日号

持ち歩いている醤油のたれビン
地元の“醤油愛”
 日本の食卓に欠かせない調味料「醤油」。ネット通販が発達した現代でも、「醤油は地元のものでなければ」という嗜好が強い。
 九州の食文化を研究しているライター田端慶子氏は、江戸時代は家庭で醤油を仕込んでいたが、醤油造りに長けた人が出てくると、それを買い求める文化が定着した。
 交通網や流通網が発達していなかった昔は遠方に流通されなかったことで、地元の味が受け継がれていったと分析している。
 私は九州・福岡市の出身だが、東京単身赴任中の現在、関東の醤油は塩辛さが強過ぎて食べられない。そう、九州の醤油は「甘い」のだ。
 そこで実家の近くにあり、子供の頃から食べ慣れた醤油メーカーの商品を取り寄せ、お弁当などに添える「たれビン」に入れて持ち歩いている。
 福岡出身のお笑い芸人、博多華丸さんは、著書のグルメガイド本「食べずに終われんばい! in 福岡」の中で、人生最後の晩餐として食べたいという「華丸鍋」のレシピにも、私が愛用するメーカーの醤油を指定している。
 味の嗜好は人それぞれ。好みに合う醤油を見つけてみるのも、料理の楽しみ方の一つだ。
(菰田隆行)
【2024(令和6)年2月1日第5152号7面】

【編集後記】1月21日号

余った野菜もぬか漬に
ぬか漬で冬を乗り切る
 2052年までは1月20日が大寒の日となっている。昨年12月中頃までは暖冬、暖冬と誰もが口を揃えるほどだったが、年明けからは冷え込む日も増えた。震災復興中の北陸をはじめ各地で大雪も発生しているので、無事を祈るばかりだ。
 大寒の日は、全国ぬかづけのもと工業会(山西健司会長)が定めた「ぬか床の日」でもある。
 ぬか床というと胡瓜や茄子が豊富な夏のイメージが強い。しかし寒い冬の間は雑菌が繁殖しづらく、ぬか床はゆっくりと発酵が進むため味に深みのある良いぬか床ができる、と言われている。また秋に収穫された米の副産物であるぬかが出回る時期でもある。日本酒や味噌、醤油などにおいても「寒仕込み」が重宝されてきたように、発酵食品の仕込みを始めるのは冬が適していると、先人は熟知していたということだ。
 先日は、台湾の「酸菜白肉鍋」から着想を得て、ぬか漬を料理に使ってみた。京都・錦市場の桝俉で購入した壬生菜のぬか漬を豚汁に投入して軽く煮込んでみると、酸味が溶け出て食欲をそそるとても美味しい発酵鍋に変身した。
 寒い冬を乗り切るお供にぬか漬や発酵鍋をお試しあれ。(小林悟空)
【2024(令和6)年1月21日第5151号4面】

【編集後記】1月11日号

今いる場所から被災地支援 
 新年明けましておめでとうございます。元日に発生した能登半島地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被災された方々にお見舞い申し上げます。また、一日も早い被災地での復旧、復興をお祈りいたします。
 「被災地ために何ができるか」と語る人がいる。企業・団体からのまとまった支援物資は、避難所で重宝される。しかし、個人からの支援物資の送付は、被災地での仕分けの手間を考慮し、受け入れない、さらには控えてほしいという声も聞く。
 例えば、個人で支援できることとして、義援金送付、ふるさと納税がある。ふるさと納税の場合、「返礼品なし」を選択すると、ポータルサイトに手数料が入らず、寄付先の自治体に直接、寄付金が届く。
 他には、被災地企業の商品を購入することでも支援になる。大阪の阪急百貨店では毎年1月頃、石川県の特産品を集めた物産展、「旨し、美し。金沢・加賀・能登展」を開催し、今年は1月11日に始まった。被災地企業への応援として、同百貨店は本催事の売上の3%を石川県に寄付すると発表した。
 私たちが、今いる場所から被災地支援を行うことは可能だ。ぜひ一考いただきたい。 
(高澤尚揮)
【2024(令和6)年1月11日第5150号9面】
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