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「梅」データ・資料2022

梅の医学的効能研究報告会 新型コロナ予防や老化予防効果

宇都宮教授
山本教授
中村教授
奥野教授
報告に聞き入る出席者
宇都宮教授らの研究チーム
 【大阪支社】大阪河﨑リハビリテーション大学の宇都宮洋才教授、東海大学医学部の山本典生教授らの研究チームは10月30日、和歌山県みなべ町のみなべ町役場で「梅の医学的効能研究報告会」を開催。梅メーカーや一般参加者ら約40名が出席した。
 報告会に先立ち、小谷芳正みなべ町長は「梅の健康性について多くの人に知ってほしい。今年の冬は、新型コロナウイルスに加え、インフルエンザも流行すると言われている。梅干しはインフルエンザの予防にも期待されているので、ぜひ摂取してほしい」と挨拶した。
 初めに、大阪河﨑リハビリテーション大学の中村美砂教授が「認知症予防への梅効果の可能性を探る」をテーマに発表を行った。
 梅を1日1~2粒食べる人は、最も骨内のオステオカルシンという物質の産出を誘導する。オステオカルシンは、脂肪肝を抑えたり、インスリンの分泌を促して血糖値を下げたりする働きがある。また同物質は、脳の海馬に効くと、記憶力や認知能力を高める働きもあるため、梅を食べることで認知症の予防が期待できると結んだ。
 次に、和歌山工業高等専門学校の奥野祥治教授が「梅の老化予防効果」について発表。一般的に、老化によるコラーゲン不足で、皮膚の弾力性やハリが失われる。しかし、加齢に伴うコラーゲンの減少は、コラーゲンを分解する酵素であるコラゲナーゼの増加が原因であり、梅の果肉から抽出したエキスには、コラゲナーゼの阻害効果があることが検証できた。
 さらに、梅エキスには、クマル酸によく似た物質も含まれており、それらも抗老化効果を期待できることが分かった。現在は、ヒトの皮膚由来培養細胞を用いて、梅エキスの成分がどのように皮膚の老化を予防しているのかの研究を進めている。
 東海大学医学部の山本典生教授は「梅干しの新型コロナウイルスへの効果検証」をテーマに発表。みなべ町には古来より「風邪には梅干し、梅酢うがい」という言葉があると知り、梅干しには呼吸器感染症に対し有効な成分を含んでいると仮説を立て、研究を開始した。本研究では、梅干しからの抽出物をウイルスと混ぜた場合、ウイルスの感染が阻害された。この梅干し抽出物は、変異株の感染も阻害し、さらにインフルエンザの感染も阻害した。今後は、感染抑制メカニズムについてより詳細に解析を進めていく。
 最後に宇都宮洋才教授は、「みなべ町から、研究に必要な梅や梅干しを多くご提供いただいたため、これらの研究成果を上げることができた。梅の健康性を発表することで、注目を浴び、産地の経済に良い影響をもたらせればと常に考えて研究している」と総括した。
【2022(令和4)年11月11日第5111号13面】

東海大研究グループ 梅干抽出物がコロナ増殖抑制

解説する宇都宮教授
会場に駆け付けた梅干メーカーなど
1粒でコロナ感染予防が期待 
 東海大学医学部の研究グループは1日、和歌山県のみなべ町役場で、「梅干の果肉から抽出した成分が新型コロナウイルスの増殖を抑制する」研究成果を発表した。会場には、地元の梅生産者や梅干メーカーが駆け付け、発表に耳を傾けた。
 同研究では、アフリカミドリザルの腎臓の培養細胞に新型コロナウイルスを感染させた場合と、ウイルスと一緒に梅干の抽出物を投与した場合、後者が感染を抑制することを解明した。
 成分濃度を高めると、よりウイルス増殖の抑制効果が強まることも判明し、また武漢株、アルファ株、デルタ株、オミクロン株のすべての株に対して同様の効果が確認できた。今後は、梅干のどの成分がどのような仕組みでコロナの抑制効果をもたらしているのかを解明していく。
 研究グループのリーダーで、大阪河﨑リハビリテーション大学の宇都宮洋才教授は「個人的には驚異的とも呼べる感染抑制が見られた。梅干を1日1粒食べるだけで、十分感染予防が期待できる」と話した。
 同研究は、みなべ町から宇都宮教授に研究委託され、宇都宮教授は自身の母校で、かつ研究環境に最適な機関として東海大学医学部との連携を決めた。東海大学医学部の竹腰進教授、山本典生教授、さらに和歌山工業高等専門学校の奥野祥治教授、大阪河﨑リハビリテーション大学の河野良平講師が加わり、共同研究を進めた。
 宇都宮教授は、過去に梅干の摂取がインフルエンザの感染予防に効果があると発表し、各メディアで取り上げられ注目を浴びた。その後も梅干の健康機能性について研究を続け、梅干の成分であるポリフェノールがピロリ菌の活動を阻害、また別の成分が花粉症などのアレルギー症状を抑える可能性を突き止めてきた。
【2022(令和4)年6月11日第5096号2面】

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