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インタビュー2024

7月1日号 大会会長に聞く

第42回全漬連青年部会全国大会宮崎大会 大会会長 佐藤仁氏

宮崎大会は10月4日開催
業界を良くするきっかけに

 第42回全日本漬物協同組合連合会青年部会全国大会の宮崎大会が、10月4日(金)、宮崎観光ホテルで開催される。佐藤漬物工業の佐藤仁専務が大会会長を、野崎漬物株式会社の野﨑偉世社長が実行委員長を務める。大会テーマは「~みやざきhot wave~起こそう!イノベーションを!!」。佐藤会長は、宮崎ならではの切り口から漬物業界がより良くなるきっかけを作りたいと語る。(大阪支社・小林悟空)
◇    ◇
 ー宮崎漬協青年部について。
 「12名が加盟しており、20代のメンバーもいて平均年齢が若い。各種イベントに出店して県産漬物のPR販売を行うなど精力的に活動している。今回の大会準備を通して結束力は一段と強まっていると感じる」
 ー青年部会全国大会の存続が危惧されている。
 「青年部組織が全国的に解散や親会と合流する流れになっており従来の形式で実施するのは難しくなっている。来年からは東京と大阪で交互に、運営も全漬連が担って簡略化した形式で開催するという案が出ている。青年部が企画から運営まで担当して、地方へ大勢が集まって開催するのはこれで最後になるかもしれない。宮崎ならではの切り口から漬物業界がより良くなるきっかけを作ること、また皆様が宮崎に来てよかった、と思ってもらえる大会にしたい」
 ー大会の内容は。
 「焼酎でお馴染みの霧島酒造様(都城市)に講演していただく。焼酎の生産量は1970年代から2005年まで右肩上がりに増加、その後多少落ち着いたものの、今なお焼酎ブームと言われる高い数量を維持している。そんな中、同社は2004年の業界6位から、2012年にはトップへ躍り出ている。焼酎業界の成長と、霧島酒造のブランディングの秘密を語っていただく。懇親会では県内の名物を使った料理などを振る舞う予定だ」
 ー宮崎の漬物業界の現状。
 「沢庵、高菜、楽京に携わっている会社が大半。私の知る限り、売れ行きはいずれも需要が強まっており好調なのだが、原料不足が足かせとなってチャンスロスが起きている。全国的に農業の担い手不足は問題となっているが、農業大国である宮崎ではそれがより深刻な課題となって現れてきている。10月といえば大根や高菜の播種が始まる季節でもある。懇親会では、漬物業界による農業活性化といった話題も語り合いたい。ぜひ多くの方々にお越しいただきたい」
 ー貴社の動向は。
 「ありがたいことに昨年を上回っている。他産地の大根の不作や、中国産原料の値上がりの影響もあると思う。漬物は原料あってこそ、とあらためて感じている。また、輸送の問題から地元の小林市周辺限定にしているのだが、沢庵を袋に入れて輪ゴム留めにした商品が意外なほどよく売れている。宮崎市内や県外からも注文が来るほど。時代錯誤とも思える姿の商品が売れるのが、漬物の他ジャンルと違うところ。表面的に飾るのではなく、本質を見極めなければブランディングはなし得ない、という実例だと感じている」
【2024(令和6)年7月1日第5167号4面】

6月21日号 わさび関連特集インタビュー

全日本漬物協同組合連合会副会長 静岡県漬物商工業協同組合理事長 望月啓行氏

インバウンド対応へ力
業界越えた連携で価値創出
 全日本漬物協同組合連合会副会長、静岡県漬物商工業協同組合理事長を務める田丸屋本店の望月啓行社長にインタビュー。田丸屋本店ではICTを活用した畑わさび栽培など新たな取組を進めている。望月社長は業界の垣根を越えて他社と連携することにより、新たな付加価値を創出していきたいと語った。
‐わさび関連商品の販売動向。
 「昨年5月にコロナ5類移行となり、売上はコロナ前とほぼ同水準にまで回復している。市販用、業務用に関してはコロナ前の水準を越え、土産関係についてもある程度回復しているが、ビジネス客と観光バスがコロナ前に比べて減少していることもあり、回復途上にある。だが、わさびはインバウンドへの人気が高いため、今後インバウンドの増加に伴い、土産関係も伸長していくと考えている」
‐わさび原料が不足気味となっている。
 「わさび原料は非常に厳しい状況が続いている。わさびは根と茎が別々に流通しているが、どちらも不足気味となっている。根に関しては、2年前の台風被害から静岡の産地が回復しておらず、海外の引き合いも高まっているため、高値が続いている。茎に関しても、天候不順の影響もあり、需要と供給のバランスが崩れており、価格が高止まりしている。原料に関しては、この先も安定的な供給見通しは立っておらず、価格は高値で推移する見込みだ。弊社においては昨年一度値上げを実施したが、わさび以外の副原料やその他のコストも高騰しており、さらなる値上げが必要な状況にある。だが消費者の節約志向も強まっているため、今後の値上げについて慎重に見極めていかなければならない」
‐ICTを活用した畑わさび栽培を開始した。
 「静岡県産わさびの生産量回復を目的に、2023年3月より株式会社鈴生、西日本電信電話株式会社静岡支店と連携し、ICTを活用した施設栽培共同実証実験を進めてきた。この度、一定量の畑わさびが収穫できたことから、畑わさびの葉と茎を使用した2商品『コレカラわさび しょうゆ漬』『コレカラわさび ピクルス』を発売した。ICTを活用して栽培環境を管理することにより、これまでより辛みの強い畑わさびを栽培することができ、わさびの風味が存分に楽しめる商品に仕上がっている。原料が不足する中、こうした特長をプラスアルファの付加価値として提案し、新しいマーケットを開拓していきたい」
‐静岡工場内の「ステップインたまるや 見る工場」をリニューアルした。
 「1990年代に観光スポットを作りたいと考えて“見る工場”を手掛け、その役割を果たせていると思う。しかし、30年前とは時代が変わり、大勢での移動ではなく個人で計画を立てる旅行スタイルが増えてきている。そのような変化を捉え、“メッセージを共有できる”見学通路にしようというコンセプトでリニューアルを行った。わさびのことを知ってもらい、その魅力を共有してもらうため、プロジェクションマッピングを活用した空間など新たな仕掛けを作っている」
‐全漬連副会長に就任して1年が経つ。
 「漬物業界も後継者問題など、様々な課題があることを再認識している。そうした課題を一つ一つ解決していければ、漬物はこれからさらにたくさんの消費者に受け入れてもらえるのではないか。厳しい環境ではあるが、組合のメリットをどのように打ち出していけるかがテーマになると考えている」
‐今後について。
 「インバウンドが増えているので、それに対してどのように取り組んでいくかが観光面を伸ばす一つの起爆剤になると考えている。海外のユーチューブにおいて、弊社商品が紹介されている動画が情報源として購買につながっている事もあり、そのような事例を分析するなど、さらにインバウンドの方に認知を広げ、漬物を楽しんでもらうための対応を模索していきたい。また、わさびを使用した新商品開発の他、ICTを活用した畑わさび栽培の取組のように、業界の垣根を越え、他社と連携することにより、新たな付加価値を提供していきたい」(藤井大碁)
【2024(令和6)年6月21日第5166号11面】

6月11日号 山陰特集

泊綜合食品株式会社 代表取締役社長 岸田いずみ氏

50周年に向け新商品開発
新ウェブサイトで漬物情報発信
 泊綜合食品株式会社(鳥取市安長)では、4月1日付で岸田いずみ取締役が新社長に就任し、岸田隆志社長が取締役会長に就いた。来期で創業50周年を迎える同社の岸田新社長へ、抱負や今後の事業方針を聞いた。漬物の製造・卸売の軸を守りながら、オンライン販売の強化、他品目の取り扱い拡大にも努めていく。(大阪支社・高澤尚揮)
      ◇
 ー新社長へ就任した。
 「大学卒業後は、外資系ホテルでウェディング業に携わり、2010年に当社へ入社した。入社後の15年もの間、製造、営業、商品開発、経理と様々な職種を経験し、来期は創業50周年を迎えるため、父から社長の職を受け継ぐことになり、3代目の社長に就任した。らっきょう漬を始めとする鳥取の漬物文化の継承を使命に感じている」
 ー会社の近況は。
 「当社は11月決算で、昨年度は増収微増益で着地し、コロナ前の数字へ回復することができた。観光の土産需要の回復もあるが、経費削減や業務効率化に取り組んだことが功を奏したと思う。メーカーとしては、原料確保の安定化と増加を図っているところ。卸売としては、漬物以外に佃煮やこんにゃく、豆腐、冷凍食品などの新規取引先とのご縁が生まれ、今後も開拓を進めていきたいと考えている」
 ーオンライン販売にも注力している。
 「まだ売上の1割に満たないが、順調に伸びており、今後もネットでの売上は上昇傾向だと見ている。ウェブサイトをリニューアルし、5月21日から新バージョンを公開している。漬物の歴史や種類、取引先メーカーの会社紹介といったコラムを充実させ、今まで漬物をあまり食べなかった層にも情報発信をしていきたいと考えている」
 ー来期50周年を迎える。
 「周年事業として、新商品の開発を進めている。当社は、らっきょうチョコレートやポケモンをパッケージにした商品、地元の学生と共同開発したカラフルらっきょうなど、オリジナリティのある商品を発売してきた。味はもちろん、洗練した外観、包材、ネーミングにしたい」
 ー今後について。
 「当社では製造部門が2割を占める。らっきょう漬が大半を占めるものの、和惣菜やあんこ・ゼリー等の菓子製造の比率が近年高まっている。漬物を軸にしつつも、メーカーとしては取引先や消費者のニーズに常に耳を傾け、柔軟に対応した商品開発を今以上に行っていく」
 ー食育活動にも励む。
 「年数回ほど小学校に出向き、漬物教室を開催している。夏にはらっきょう漬作り、冬には干したくあん作りに取り組んでもらう。原料野菜の話から、小学生には少し難しい発酵についてまで説明し、漬物に興味を持ってくれる。子どもたちが漬物にまず親しんもらうこと、食べておいしいと知ってもらいたい」
【岸田いずみ新社長の略歴】
 1980年11月生まれ、甲南大学文学部卒業後、外資系ホテルでウェディング業に携わり、2010年に入社。美人らっきょう、カラフルらっきょう等の開発や漬物教室に取り組み、「漬物の魅力を若い世代に、より伝えたい」という想いにあふれる。
【2024(令和6)年6月11日第5165号3面】

泊綜合食品

有限会社土江本店 代表取締役社長 関谷忠之氏

青しまね瓜の育成を見守る関谷社長
原料野菜の自社栽培を拡大
SDGsに沿った商品開発
 有限会社土江本店(島根県松江市)の関谷忠之社長にインタビュー。同社は中国・四国地方有数のメーカー・ベンダーで、昨年2月に創業75周年を迎えた。原料野菜の自社栽培量を年々拡大させ、夏の青しまね瓜漬、冬の津田かぶ漬が名物となっている。飽くなき探求心とチャレンジ精神が、ひしひしと伝わってくる。(大阪支社・高澤尚揮)
◇   ◇
 ー原料野菜の自社栽培量が年々拡大している。
 「津田かぶは約30年前、私が社長へ就任する時に栽培を開始し、現在は約3000坪にまで拡大した。土作りから栽培管理まですべて自社社員が行っている。津田かぶは栽培する際、土が硬すぎても柔らかすぎても、勾玉状には育たないので、非常に細かい工夫が必要だ。今は農家の高齢化が深刻で、30年前から現在の状況を見越し、自社栽培に踏み切って良かったと思う。夏の青しまね瓜は、数年前に自社栽培を開始した。今では6次産業化が定番化したものの、全国でも先駆けて実践したことを誇りに思っている」
 ー漬物以外に干物「奉書干し」の製造も。
 「当社の看板商品の1つ『奉書干し』は、県内の浜田漁港で獲れた鮮魚を干物にしたもの。干物は魚を縦に吊るすと旨味が流れ、横に干すと魚の余分な水分が腐って味が変わってしまう課題があった。そこで、奉書紙で余分な水分を吸い取り、乾燥、発酵熟成させる工程を発案し商標を取得した。発酵熟成は、日本で唯一対応可能な急速冷凍庫を開発し、日々使用している」
 ー75周年で新しい試みもされている。
 「SDGsの理念に強く共感しており、その理念に沿って自社はどう実践できるか考えてきた。メーカーが最初にできるのは、フードロスを減らすことだ。従来捨てられてきた津田かぶや柿の葉、魚の骨を水蒸気乾燥してパウダー化することにより、ぬか床に入れたりお菓子に入れたりして再利用できる。今は、のどぐろや梅貝、アジなどのパウダー化にも成功している」
 ーパウダーの展開は。
 「現在、地元の和菓子屋さんと、津田かぶの葉のパウダーをおはぎに混ぜる試作を行っており、今年中に発売ができそうだ。葉のグリーンが鮮やかで、見た目も美しい。続々と、各地域の名産とコラボレーションしていきたいと考えている。チャレンジするのは楽しい」
 ー社長は島根愛がとても強い。
 「山陰浜田浜っ粉協議会会長を務め、浜田市の応援団、県の遣島使としても活動している。無報酬だが、島根の食や文化など魅力を全国の方々に伝えたい思いで一杯だ」
【2024(令和6)年6月11日第5165号3面】

土江本店

株式会社みやまえ 代表取締役社長 宮前有一郎氏

 生姜のサイクル維持を
メニュー採用伸び率は23%
 株式会社みやまえ(宮前有一郎社長、奈良県生駒郡平群町)は生姜製品の総合メーカーとして全国でトップクラスのシェアを持つ。原料高騰による値上げが浸透した一方で、ガリの有料化や代替品も登場していることに対し、宮前社長は栽培を含めた生姜のサイクル全体の維持へ危機感を示す。さらなる品質向上と、漬物を使ったレシピ提案強化の必要性を語った。(大阪支社・小林悟空)
◇    ◇
 ー今年の生姜原料の見通し。
 「3年連続で生姜が高騰していたこともあり、山東省、中国南部、タイのいずれも作付けが増えている。しかし、天候は現在までは順調だが、ラニーニャ現象が発生の可能性濃厚と気象庁が発表しており安心できない。価格面でも円安などのコスト増に加えて、農家としては高騰が続いている青果用で収穫したいという意向や、投機筋の動きもあるため、今後の動きに注視しなければならない」
 ー昨年は値上げを実施した。
 「数年連続の値上げとなったがお客様にはご理解いただき、数量を落とすことなく推移している。競合他社も同様で、むしろ各社の価格差が縮まってきているとも言えるので、当社の品質を改めてアピールするチャンスでもある。しかし中にはガリの有料化や、大根を使った代替品の出現といった判断も出てきている。
 仮に単価を上げられたとしても、数量が大きく減れば栽培量も減らすことになり、長年かけて築いてきた生姜のサイクルが崩れることになる。生姜漬は必須だ、と思ってもらえるような品質と価格の両立を守っていかなければならない」
 ー貴社製品の品質について。
 「当社は辛みがマイルドで柔らかいタイ産・中国南部産を主力にしている。買付時期も他メーカーより早く設定しており、繊維質が少ない。成長して硬くスジ張った原料を使った製品との差を食べ比べてみてほしい。味以外にも、安定供給やサポート体制でも評価いただいている。最近では、本物志向の強い欧米からの注文も増えている」
 ーレシピ提案にも力を入れている。
 「添え物としての利用だけでなく、料理素材としてならば和洋問わずすべての食品がターゲットになる。惣菜市場自体が成長産業であり、努力が成果に出る分野。過去3年間のメニュー採用伸び率は23%だ。当社の強みはカット幅や添加物の種類、包装形態など多様な規格を揃えていること。調理オペレーションの削減に繋がる提案もできるため、価格以上の価値を感じて頂けている」
 ー生姜漬以外の商品について。
 「取り扱い品目を広げることでお客様にとっては仕入先の一本化に繋げられる。協力工場もあるので、生姜以外、漬物以外でもご要望に応えられる体制を整えている。この度発売したドリップが出ず盛り付けやすい大根おろしのように、工夫次第で新たな需要が生まれる商品もまだまだあるはずだ」
【2024(令和6)年6月11日第5165号5面】

みやまえ

5月21日号 キムチ・浅漬インタビュー

秋本食品株式会社 代表取締役社長 秋本 善明氏

ワクワクする売場を作る 切磋琢磨して良い方向へ
 秋本食品株式会社(神奈川県綾瀬市)の秋本善明代表取締役社長にインタビュー。2023年度の決算や浅漬、キムチの売れ行き、6月11日と12日に開催する第44回全国漬物・惣菜展示見本市などについて話を聞いた。展示会のテーマは、『漬物からワクワクする食卓を』。物価高で消費者の節約志向は高まる中、製造コストの上昇、原料野菜の確保など、多くの課題が山積する中、改めてワクワクするような魅力ある売場作りが重要だと強調した。
◇    ◇
 ‐2023年度の決算について。
 「売上は前年比102%、130億円となった。売上は前年度より少しプラスとなったが、収益はだいぶ改善された。主な要因としては値上げによるもので、当社はおととしに続いて昨年も値上げを実施した。しかし、その後もコストが上がり続けており、満足できる価格にはなっていない。値上げは3カ月前から6カ月前に計画しているが、その間にもコストが上がるものもあるので、値上げ後も見直すが作業が必要になっている」
 ‐原料野菜の価格も上がっている。
 「輸入原料は現地価格が上昇していることに加え、為替の影響が大きい。国産原料の価格も上がり始めていて、特に白菜などの葉物は6月下旬くらいまで高値が続く見通しだ。白菜は主力原料なので契約率を高くしているが、100%ではないので高い原料を購入せざるを得ない。ぬか胡瓜も4月から3カ月は2本入りを1本増量して3本入りにしており、原料面では厳しい状況が続く。現在は以前よりも販促期間を短くしているが、それでも大きな課題になっている」
 ‐キムチの売れ行きについて。
 「当社の『王道キムチ』は好調が続いている。やはり、独自性があってお客様に支持されている商品は強い。『オモニの極旨キムチ』は販促や他社商品の価格に左右される部分もあり、一長一短ではあるが、キムチ全体としては良い数字となっている」
 ‐浅漬の動きは。
 「売れ行きは低調で当社も前年を割っている。今後の課題としてはすでに取り組んでいるが、アイテムの集約化を進めて利益を確保できない商品は止める、ということ。値上げを実施するのは簡単なことではないし、価格を上げたら売れなくなる。工場の一つのラインで多品目の商品を作るのではなく、単品のボリュームを増やして生産効率を図り、コスト削減をさらに進めていきたいと考えている」
 ‐6月11日と12日に展示会を開催する。
 「テーマは『漬物からワクワクする食卓を』。テーマの中に『ワクワク』という言葉を入れた意味としては、いまの売場は画一化されていて、ワクワクするような売場になっていないということ。最近は特に変化がなく、見ていても面白くない。それは消費者も同じ気持ちだと思う。もちろん、チャレンジすることは大事なのだが、近年はチャレンジしても売場に残るケースがほとんどない。回転しなければ売場も我慢できないし、消費者も物価高で収入が増えず生活防衛意識が高まっているので、味の想像ができないものや食べ方が分からものには手を出さない。結果的に商品選択は保守的になり、知っているものや分かりやすいものになる」
 ‐販売の課題は。
 「限られたスペースで商品の情報を伝えることは難しい。単品では情報量が少ないので、シリーズ展開して面での提案を行っていくことが重要だ。グループ会社のアキモのプチカップはシリーズ化したことで定着した。また、キムチにおいても韓国食材と一緒に並べると目立つので、コーナー化までできれば売れ方に大きく影響してくる。面で売場を演出するためにどのようなアイデアやテーマが必要なのか、ということを展示会で示していきたいと考えている」
 ‐展示会の新しい試みについて。
 「展示会には全国から多くのメーカーにお越しいただくので情報が集まる他、新商品や新しい提案など、各社の取組が参考になる部分もある。それを秋本会の会員で共有し、切磋琢磨して良い方向に進んでほしいと思っている。また、今回の展示会では新しいイベントとして、ご飯に合う商品を評価する『めし旨GP』と健康と美味しさをテーマにした『再発見!乳酸発酵の可能性』を開催する。どちらのイベントも商品の魅力をPRするもので、注目されることを期待している。各社におかれては自社の商品や取組も含めてバイヤーにアピールする場となるので、有効活用していただきたいと思っている」
(千葉友寛)
【2024(令和6)年5月21日第5163号4面】

秋本食品 電子版 バイヤー必見!イチ押しページ
https://www.syokuryou-shinbun.com/pages/896

関口漬物食品株式会社 取締役営業部長 関口 彰氏

白菜や胡瓜以外にもチャレンジ 差別化を図れる商品が強み
 関口漬物食品株式会社(関口悟社長、東京都世田谷区)は、斬新なアイデアとユニークなネーミングで、浅漬をメーンに製造、販売。また、首都圏の有力ベンダーとしても知られ、多種多様なニーズに合わせて各種漬物製品を供給している。同社の関口彰取締役営業部長にインタビュー。原料動向や商品の売れ行き、値上げの動きについて話を聞いた。「浅漬トリオ」、「ぬか漬四種」、「にんにくたっぷり白菜キムチ」など、差別化を図れる商品は同社の強みとなっていることを強調し、鮮度感や季節感を演出できる商材として引き続き浅漬の魅力をPRしていく考えを示した。
(千葉友寛)
 ‐原料動向とこれからのシーズンに向けての販売戦略について。
 「毎年、冬場は特に胡瓜の価格変動が大きくなる。今年の3月、4月は原料が全体的に不安定な状況となったが、売上と生産数は前年比で上回っており、しっかりとした数字を出せている。得意先の動きによる外的要因のプラスもあったが、価格競争では大手に勝てないので、大容量のお得用商品でユニット単価を上げる取組が上手くいった。5月から9月は胡瓜がメーンになるので、そこで売上と利益を確保したいと考えている」
 ‐原料確保が難しい冬場と夏場の対応について。
 「冬場の胡瓜は夏と異なる価格にしているが、原材料価格をはじめ人件費や運賃などが上がっていて、値上げしてもカバーしきれていない。胡瓜は当社の主力商品なので止めるに止められないということもあるが、単価を上げる以上は今よりも良い商品を作らないといけない。冬場の高い価格を理解していただいているので、価格が下がった時は還元させていただきたいと思っている。当社は9月決算で、来期に向けては一品ずつ価格を見直ししていく。今期も後半から新しい提案を行っていく予定だ」
 ‐値上げの取組について。
 「おととしは季節商品の価格改定または内容量調整を行い、昨年は主力の浅漬やキムチの価格改定を行った。色々なものの価格が上がる中で、ほとんどの得意先で価格改定を認めていただいたが、販売数量が減少した商品もあった。それでも値上げした分、金額は横ばいか微増となっている。近年は気候が変化し、今年は3月下旬に白菜の価格が高騰した。今後はきゃべつや大根など、白菜や胡瓜以外の商品開発にもチャレンジしていきたい」
 ‐現在の消費者ニーズは。
 「いま、消費者が一番求めているのはお得感や値ごろ感。食べて美味しい、ということは当然で、品質はこれまで以上に向上させていかなければならない。当社は味と品質には自信を持っている。それを伝えられれば数字に反映されていくと思う。コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスも大切だが、キャッチコピーや商品のポイントをしっかり伝えていくことも重要だ」
 ‐自社製品で好調な商品は。
 「液なしで簡便性の高い商品はニーズがある。当社の浅漬トリオは3種類のおしんこの盛り合わせで、惣菜売場でも展開できる商品。ぬか漬を盛り合わせたぬか漬四種も一定の評価をいただいており、同じような商品がないことに優位性があって価値を認めていただいている。にんにくたっぷり白菜キムチも相変わらず好調で、パンチ力やアレルギー特定原材料28品目不使用といった特徴が伝わっている。差別化を図れる商品は安くしてほしいとは言われず、比較的商談もしやすい。このようなアイテムを持っているということは当社の強みでもある」
 ‐浅漬とキムチの売れ行きは。
 「浅漬は売れ行きが苦戦していて、アイテム数が減少傾向にある。逆にキムチは伸び続けていて、同じ素材を主原料とする白菜の浅漬は買われなくなってきていると感じている。だが、浅漬は回転率が高いため、キムチが伸びてもこれまでの売上をカバーすることは難しい。販促がマンネリ化してきている中で、浅漬はキムチや梅干しよりも鮮度感や季節感を出すことができるので、取組次第ではまだまだ可能性があると思っている」
【2024(令和6)年5月21日第5163号9面】

http://www.sekiguchi-01.co.jp/

株式会社ピックルスホールディングス 代表取締役社長 影山直司氏

既存分野以外の売場に展開 物流問題で漬物空白地帯発生も
 株式会社ピックルスホールディングス(埼玉県所沢市)代表取締役社長の影山直司氏に2024年2月期の決算や値上げの動き、今年12月に完成する茨城工場、漬物製造業の営業許可制度の完全施行などについて話を聞いた。2024年2月期決算は増収増益となったが、苦戦が続く浅漬の商品開発や今後も市場の拡大が見込まれる惣菜、冷凍食品を強化し、既存分野以外の売場への展開を行っていく。また、物流問題によって漬物の空白地帯が生まれる可能性を指摘し、改めて同社の強みであるスケールメリットの優位性を強調した。(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐増収増益となった2024年2月期決算の総括を。
 「増収増益の形となっているが、浅漬は苦戦が続いている。キムチは値上げを行っていないが、キャンペーンの効果などがあって数字を伸ばすことができ、惣菜も好調だった、資材、調味料、物流費、人件費などのコストは上がっているが、増収効果によって増益となった。ただ、食品全般で値上げが続いており、消費者の考えとして、必要なものとそうではないものの線引きがはっきりしてきていると感じる。一人当たりの買い上げ点数は減少しており、その減少する中に浅漬が入ってしまっている、という印象だ。惣菜はおかずとしてすぐに食べるもので、キムチは様々なメニューへの汎用性が高い。浅漬は主菜として食卓に上がる頻度は高くないので、料理の素材として利用できるものやおかずになるような製品の開発が必要になっている」
 ‐苦戦が続く浅漬の方向性について。
 「当社では賞味期限延長に向けて研究開発を続けている。賞味期限を長くすると逆に鮮度やシズル感が訴求できないため、工夫は必要だが、食品ロス削減につながる取り組みとして賞味期限を1日でも長く延長できればロスの削減に貢献できる。賞味期限の延長が全ての正解ではないかもしれないが、方向性の一つだと思っている」
 ‐今後の販売戦略は。
 「売上を増やしていくためには、既存分野以外の売場への展開が必要だ。それぞれの分野に対応した商品開発はもちろん、漬物を豆腐や麺コーナーで関連販売するなど、メニュー提案をしっかり行うことが重要だと思っている。部門が異なる商談は難しい面もあるが、クロスMDで上手くいっている小売店もあり、成功事例を紹介し、販売計画に落とし込んだ提案を行い、販売先を拡大していきたい。精肉や鮮魚など、漬物以外の売場に飛び出していくことが重要だ」
 ‐値上げについて。
 「主力商品はまだ値上げを実施していないが、このままずっと値上げをしない、ということではない。製造コストは上がり続けており、商品の価値に見合った価格で販売していかなければならない。今期は主力商品の価格の見直しを進めていきたいと考えている。これまで主力商品は通年で販売しているので、価格の見直しの機会がなかった。価格が見合っていない商品については価格改定を実施していく。時間がかかるかもしれないが浅漬は価格改定をお願いしているところで、キムチについてもタイミングを見て判断したいと考えている」
 ‐輸入キムチについて。
 「輸入キムチは為替の影響が大きく、値上げを実施した。だが、消費者の反応はシビアで、売れ行きは悪くなった。現在も値上げ前までの水準には戻し切れておらず、トータルで見ても厳しい状況となっている。海外製品、海外原料を使用している商品は値上げを実施せざるをえないのだが、消費者の理解を得るのは簡単なことではない」
 ‐惣菜と冷凍食品の市場について。
 「どちらの市場もまだまだ拡大していくと見ている。惣菜は量販店における生鮮3品の次にくる柱と見ており、各チェーンの顔になっている。新店の売場を見ると、充実しているのは惣菜と冷凍食品。冷凍食品はお取り寄せ感覚で全国の美味しいものが並び、高価格帯の商品も販売されている。品揃えも豊富で買い物が楽しくなるような売場となっている。また、人口減少、少子高齢化が加速する日本の状況を考えれば、惣菜も伸びるだろう。食べたい時に食べたい量だけ購入することができ、作る手間も省ける。単身世帯や共働き世帯が増えることを考えても惣菜市場の可能性はまだまだ大きい。当社では惣菜事業が柱の一つになっている」
 ‐茨城県に新工場を建設している。
 「白菜の産地に白菜専用工場を建設しており、今年12月に引き渡し予定となっている。特徴としては機械化を進めて労務費を削減することに加え、既存工場より少ない人員で2倍の生産ができること。白菜専用工場なので首都圏の工場においては主力のキムチ製品の生産機能が移管される。既存工場の空いたスペースでは惣菜や冷凍食品などを作れるようになる。東は茨城の工場が新たな生産拠点となるが、西については、当初は新たな工場建設を計画していたが、茨城の新工場にコストがかかったこともあり、スペースに余裕があるグループ会社の工場に設備投資を行い、集中生産できる西の拠点になればと考えている。また、当社と漬物製造に限らず、協力してやっていただける工場があれば話をさせていただきたいとも思っている」
 ‐企業の倒産、廃業が続いている。
 「コロナ後は漬物以外の企業でも倒産、廃業があった。この後のことは分からないが、代替わりする時に大きなマーケットが広がっている状況ではなく、現状維持では投資もできない。事業をやめる、という判断を下す企業は今後も出てくるだろう。これからは物流の課題も増えて、遠くまで商品や荷物を運べなくなり、価格が合わなくなるケースも出てくることが想定される。場合によっては漬物の供給が難しいことで発生する空白地帯が出てくる可能性もある。当社は全国に製造拠点があり、自社製品だけではなく仕入れ商品も供給することができる」
 ‐漬物製造業は6月から営業許可制に完全移行する。
 「道の駅や野菜の直売所などを見ると、個人で作っている漬物も多く見られるが、6月以降はかなり減少すると見ている。売場からなくなった商品を誰がどのようにカバーするのか分からない。道の駅や直売所は個店対応になるので、きめ細かく対応することは難しい。ただ、このような店舗は野菜を作って加工品も販売することに加え、地域特産品の継承も担うなど、和食を支える大事なポジションにあると考えており、当社でも協力できることがあれば対応を検討していきたいと思っている」
【2024(令和6)年5月21日第5163号12面】


5月21日号 食品資材特集インタビュー「トップに聞く」

株式会社エコリオ 代表取締役 浦野 由紀夫氏

揚げカスにスポットライト
SAF生成できる原料として
 株式会社エコリオ(東京都千代田区)が取り組む揚げカスを活用した資源循環システムへ大きな注目が集まっている。同社が開発した揚げカス搾り機“エコリオ”は、揚げカスを搾り油と搾りカスに圧縮分離し、リサイクルプラントである「エコリオステーション」で、今まで“ゴミ”として扱われていた揚げカスを“資源”に変える機器。政府が2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2030年に国内のジェット燃料使用量の10%を持続可能な航空燃料(SAF)に置き換える目標を設定する中、SAFを生成できる貴重な原料として“揚げカス”にスポットライトが当たり始めた。同社は、こうした状況の中、機器をいかに導入するかではなく、いかに揚げカスを集めるかに目標を変え、国や大手企業と一体となった資源循環システムの構築に取り組む。代表取締役の浦野由紀夫氏に現状や今後の見通しについて聞いた。(藤井大碁)
ー揚げカスに注目が集まっている。
 「この一年間で、カーボンニュートラル実現への具体的なロードマップが制定され、SAFの原料となる揚げカスへの注目度が一気に高まっている。現在、経産省、商社、石油メーカー、航空機リース会社など様々なパートナーと共に、次世代の理想的な資源循環システムを構築するための仕組みづくりを行っている」
ー具体的な進捗状況は。
 「日本中で様々なプロジェクトが進行している。あるコンビニチェーンへ納入する複数の惣菜メーカーが一つのグループとして協力してマテリアルリサイクルに取り組む計画や、冷凍食品メーカーが独自にエコリオステーションのようなプラントを建設し、自社で資源循環を始める予定もある。エコリオはオンリーワンの技術だが、その技術を社会に活かすためには、今までのように我々が先頭に立ってプロジェクトを進めるのではなく、皆様がプロジェクトに参加しやすい器を作り、我々はそれに対して技術的なアドバイスやサポートをしていくことが理想であると考えている。そのため、川上である工場や外食、スーパー、中間の物流、川下の航空会社を含めてコンソーシアムを形成し、国には一事業者ではなく、その事業体全体に支援をしてもらう仕組み作りを行っている」
ー地方自治体もプロジェクトに参画する予定だ。 
 「行政と連携したプロジェクトも増えてきている。ゼロカーボンシティ宣言をした自治体が、地域にエコリオステーションを建て、民間企業の協力も受けながら揚げカスや廃棄物を集めて有効資源化していくというプロジェクトだ。ステーション建設費は国の補助金で賄うことができ、地元に雇用が生まれ、環境に優しく、ゼロカーボンのテーマにもマッチしているので、現在様々な自治体でこうした話が持ち上がっている。どこかで成功事例が出てくれば、それをモデルケースとして、一気に日本中に広がっていくのではないか」
ー新たに日本惣菜協会に加入した。
 「コスト削減でき、環境に優しいということで、エコリオに会員の皆様から大きな関心を持って頂いている。少し前まで、廃油はお金を払って処理してもらっていたが、今は買い取ってもらうことが当たり前になり、それがSAFの原料になっている。一方で、揚げカスはまだ処理をするために、お金を払っており、我々以外に買い取る業者がいないのが現状だ。会員の皆様にはまず、“揚げカスを買い取ります”というキーワードによりエコリオ導入へ興味を抱いてもらいたい」
ー将来的にエコリオを無料で貸し出す計画もある。
 「国が掲げるカーボンニュートラル実現への道のりを考慮すると、一刻も早く日本中の揚げカスを集めることが最も重視するべきミッションとなる。そのため、ユーザーの経済的な状況によりエコリオの導入が進まず、国内の揚げカスを30%しか集められないという状況より、無料で貸出すことで、揚げカスの回収率を少しでも高めることに軸足を置くべきだと考えている。食用油の卸売会社との連携などにより、無料貸し出しプランを実現できるよう現在知恵を絞っているところだ。是非、エコリオの今後の展開にご期待頂きたい」
【2024(令和6)年5月21日第5163号5面】

エコリオ HP

5月11日号 漬物グランプリインタビュー

株式会社雄勝野きむらや 代表取締役 木村吉伸氏

『みずの実っこ』が漬物GP
秋田漬物文化の価値向上へ
 漬物グランプリ2024「法人の部」において、グランプリに輝き、農林水産大臣賞を受賞したのが株式会社雄勝野きむらや(木村吉伸社長、秋田県湯沢市)の『みずの実っこ』。秋田県では初のグランプリ受賞となり、東北の漬物メーカーとしては2017年に青森県の有限会社いしたが『あんず梅(しそ巻)』で受賞して以来、7年ぶりの快挙となった。秋田県漬物協同組合の理事長を務める木村社長は今回の受賞が秋田の漬物文化全体の価値向上につながることを期待したいと語った。

‐『みずの実っこ』が日本一の漬物に輝いた。
 「もともと秋田県の夏の風物詩であり9月から10月初旬のほんのわずかな時期にしかとれない珍味である〝みずの実〟を、できるだけ長い期間食卓で楽しんでもらうことを目的に、約30年前に弊社が初めて漬物として商品化した製品だ。みずの実の美味しさは、秋田県民なら誰もが知るものだが、なかなか手に入らないため、県内の農産物直売所などで販売されれば、すぐに売り切れてしまう人気の山菜だ。近年は、異常気象による高温障害や、クマ被害が増えているために収穫のため山に入る人が減ったことなどにより、さらにその希少性が増している。今回のグランプリにおいて、秋田の郷土食であるみずの実の素朴で自然な味わいをご評価頂いたことに心より感謝したい」
‐5年前に味わいをリニューアルした。
 「素材自体の味わいを楽しんでもらうため、漬物でありながら極力控えめな味付けに変更した。みずの実は、秋田ではおひたしや浅漬けとして食べるのが最も人気のある食べ方であり、その味わいに近い素朴な醤油漬に仕上げている。みずの実を使用した漬物としては、みずの茎や他の食材と混ぜた漬物もあるが、『みずの実っこ』は、100%みずの実を原料として使用しているため、みずの実の風味や噛み込んだ時の粘りをダイレクトに楽しんでもらえる特長がある」
‐原料確保が難しくなっている。
 「みずの実は、もともと希少な山菜であるが、近年は山菜の採り手の高齢化や前述の通りクマ被害の増加、異常気象による高温障害等により、収穫量が減少している。今回のグランプリ受賞を機に、様々な地域の課題に向き合いながら、看板商品の一つとして原料の価値が伝わる商品製造・販売に取り組んでいきたい」
‐秋田の漬物と言えば、いぶりがっこのイメージが強い。
 「近年、いぶりがっこの知名度が上昇し全国的な人気を博するようになった。それは大変有難いことであるが、県内には他にも魅力的な漬物がたくさんある。今回グランプリを受賞した『みずの実っこ』の他にも、菊を使用した県南地区伝承の漬物『花ずし』や、大根のこうじ漬け『なた漬』など個性豊かで魅力的な秋田漬物が揃っている。今回の受賞を良い機会として、全国へと発信していけたらと思う」
‐「みずの実っこ」と共に漬物グランプリ2024に出品した「なた漬」は銀賞を受賞した。
 「厚刃のナタで大根をひび割れさせながら削り、米こうじを主体に加えて重石を乗せて漬け込んだ『なた漬』も、県内では人気の高い漬物だ。是非、この機会にその美味しさを味わって頂きたい」
‐最後に。
 「漬物グランプリ決勝大会のプレゼンテーションは、とても緊張したが楽しむことができた。商品をどう売り込むか、ということについて改めて勉強させてもらう良い機会になった。今回のグランプリ受賞を社員・関係者一同、大変喜んでおり、今後の地域活性化にもつながると考えている。『みずの実っこ』という地域性の高い漬物が受賞したことにより、いぶりがっこ以外の秋田漬物にも光が当たり、秋田県の漬物文化全体の価値向上につながることを期待したい」
(東京本社・藤井大碁)
【2024(令和6)年5月11日第5162号3面】

5月1日号 漬物の素・夏の甘酒特集インタビュー

日本いりぬか工業会 会長 足立昇司氏

「ぬか漬けの日」CPを実施
東西の交流復活へ
今年3月の総会で留任し、3期目を迎えた日本いりぬか工業会の足立昇司会長(株式会社伊勢惣専務取締役)にインタビュー。今年度の活動については、昨年度に続いて5月8日の「ぬか漬けの日」に合わせて本紙を始めとする業界紙のSNSを活用し、プレゼントキャンペーンなどを実施して新規ユーザーの獲得を目指す。また、コロナで交流が途絶えていた全国ぬかづけのもと工業会(山西健司会長)との交流を再開し、結束を強めていく方針を示した。(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐ぬか床の売れ行きは。
 「今年は厳しい状況が続いている。ぬか床は野菜が高くなると売れなくなる、というのが通説となっているのだが、年明けくらいから野菜価格の上昇が顕著となっていて、通説通りの動きとなっている。コロナ禍ではメディアで健康効果や美容効果が広く紹介されたことで、家庭でできる趣味としてぬか漬をやる人が増えたのだが、巣ごもり需要が落ち着いた現在は新たにぬか漬をやる人が増えておらず、全体的な数量としては苦戦している。ぬか床は手入れをすれば長く使用できるため、いつもぬか漬をしている方でも新しいぬか床を購入したり、頻繁に買い替えたりする商品ではない。そのため、新規ユーザーを獲得しないと数字としては伸びない」
 ‐会長として3期目を迎えた。
 「工業会の会長の任期は1年なので、今年3月の総会で3期目を迎えた。一昨年はコロナの影響もあって思うような事業をすることができなかった。昨年はコロナが落ち着き、会員企業との話し合いや新しい取組を行うことができたが、やり切ったという気持ちはなかった。事業についてもまだ中途半端な部分もあったこともあり、しっかりとした形を作ってから次の会長にバトンを渡したい、という気持ちが強かったので留任させていただいた。皆さんの協力をいただきながら少しでもお役に立てるよう頑張っていきたい」
 ‐5月8日の「ぬか漬けの日」について。
 「日本いりぬか工業会ではぬか床やぬか漬のことを一般の方に認知してもらうため、5月8日を『ぬか漬けの日』に制定した。工業会としては昨年、業界紙の電子媒体やSNSなどを活用してキャンペーンを実施した。今年もSNSを活用し、これまでぬか床やぬか漬に興味がなかったり、やったことがないという消費者にPRしたいと考えている。一般的な胡瓜や茄子などの素材ではなく、変わり種の素材だけど美味しいぬか漬を募集し、面白くて魅力的な素材を投稿してくれた方にプレゼントを送る、という内容。我々としても新しい食材の発掘につながる可能性もあり、広く消費者から募集することで掘り起こしにもつながると考えている」
 ‐今後の活動について。
 「今年3月に大阪で開催された全国ぬかづけのもと工業会の総会に甲斐義人前会長が来賓として出席した。コロナ前までは合同で展示会に出展したり、研修活動を行っていたが、コロナで交流が途絶えてしまっていた。コロナも落ち着いたことで、東西の交流を復活させたいと考えている。具体的な内容はこれから検討していくが、まずは懇親を図るところからでも再開し、結束を強めていければと思っている」
【2024(令和6)年5月1日第5161号4面】

調理食品特集インタビュー

第33回調理食品青年交流会神戸大会 実行委員長 柳本健一氏

「神戸大会」9月11日に
講演や工場視察で深い学びを 
 「第33回調理食品青年交流会・神戸大会」が9月11日に神戸ポートピアホテルで開催される。当日は大会セレモニーや代表者会議の他、株式会社神戸物産の沼田博和社長の講演が行われる予定。神戸物産は〝業務スーパー〟のフランチャイズ展開を中心に、事業成長に成功しており、その成長の秘訣や、食品業界の展望について耳を傾ける。翌日12日は、神戸の有力食品メーカーへの工場視察が実施される。実行委員長の柳本健一氏(マルヤナギ小倉屋常務執行役員)に見どころを聞いた。(大阪支社・高澤尚揮)
◇    ◇
 ー13年ぶりの神戸大会。
 「神戸での青年交流会は今回で3回目となる。初回は1997年に開催され、当初は95年の予定だったが、同年に阪神淡路大震災が起きたため、2年後の復興が進む中の開催となった。2回目は2011年に開催された。3月に東日本大震災が発生した4か月後の開催で、参加者で被災地の復興を祈り、業界に携わる人々の結びつきの強さを確かめ合う大会になったと聞く。前回から13年が経ち、青年交流会の運営者や参加者の世代交代が進み、多くの顔ぶれが変わっている。だが、参加者同士が交流すること、業界の未来について語り合うことの意義はより高まっている」
 ー神戸大会の見所について。
 「学びを持ち帰ってもらえる大会にしたい。講演では、神戸物産の沼田博和社長より、業務スーパーのフランチャイズ展開の成功の秘訣について、お聞きする。神戸物産は実は小売業ではなく、卸売業・食品製造業で、業務スーパーはフランチャイズ展開で運営されている。業務スーパーにフランチャイズ加盟したいと思ってもらえるよう、神戸物産では魅力的なPB商品開発を行っている。私たちメーカーが同社から学べることは多い。また、フランチャイズ加盟店を海外に増やす取組も進めていて、日本食の海外輸出のエピソードについても聞けそうだ」
 ー講演後の懇親会での主な話題は。
 「商品開発、人材開発、海外展開が主な話題になるのでは。年々、消費者の志向が多様化しており、消費者が何を求めているか見えづらくなっている。商品開発は、メーカーにとっては要であり、どんな商品が売れているのか、どんな商品を開発すべきか、最も情報交換したいはずだ。また経営者や管理職でチームの作り方や人材確保に悩む人は多いので、人材開発の悩みも共有してほしい。国内の人口減でマーケットが縮小していく中、業界メーカーの販路拡大は課題で、海外展開への関心は高まっている」
 ー大会翌日は工場視察へ。
 「二班に分かれてもらい、神戸の有力な食品メーカー、カネテツデリカフーズとロック・フィールドの工場視察を行う。人手不足の中でも両社は、付加価値の高い商品作りと自動化を両立させ、工場運営から学べることは大いにある。カネテツは魚肉ねり製品を主とした水産加工品を、ロック・フィールドは惣菜を製造し、オリジナリティ豊かで、バラエティーに富んだ商品を開発・製造している。社長自らが案内していただける予定だ」
 ー大会・視察の申し込み方法。
 「参加者が手軽に申し込めるよう、昨年の東京大会時に、神戸大会用のLINEグループを作成し、そこから申し込みできるようにした。最終出欠はLINEで実施する予定だ。従来通り、案内FAXもお送りしており、FAX貼付のQRコードからの申し込みもできる。大会前・大会後も同グループで交流を深めていただきたい」
【2024(令和6)年5月1日第5161号8面】

全調食東日本ブロック会 会長 菊池光晃氏

ベストな配送方法を模索
 同業他社と協力しコスト削減
 全調食東日本ブロック会の菊池光晃会長(菊池食品工業社長兼COO)に、昨年のおせち商戦や通常品の動向などについてインタビュー。菊池会長は物流費が上昇する中、他の食品メーカーとの共同配送を実施し、厳しい環境を乗り越えていきたいと語った。
◇    ◇
 ‐昨年のおせち商戦。
 「値上げにより単価が上昇した分、数量が落ち込み、売上は前年並で着地した。事前に分かっていたことではあるが、その通りの結果となった。数量が下がることで、工場の生産効率が落ちている」
 ‐値上げの影響。
 「内容量で調整して価格を変えなかった商品については、売れ行きにさほど影響はなかった。弊社の売れ筋である『栗いっぱい栗きんとん』は値ごろ感を維持するために内容量を減らしたが、影響は限定的だった。一方で、価格を上げたものに関しては、顕著に売上が鈍化した。重詰めも値上げした商品については動きが悪かったと聞く。消費者は可処分所得が増えない中、限られた予算内で生活費を切り詰めており、現在は中身より価格にニーズがあると感じている。通常品も同様に売価が重要になっている。だが、コストが大幅に上昇する中、値上げをしないわけにはいかない。自社努力による経費削減を徹底しながら、状況を見極め、慎重に対応していきたい」
 ‐今年のおせち商戦の見通し。
 「円安による輸入原料の高騰、物流2024年問題による物流費上昇など引き続き厳しい環境だ。節約志向が強まる中、昨年の経験を踏まえ、基本的には価格は変えずに規格変更で対応していく必要があると考えている。物流に関しては、同業者を始めとした食品メーカーへ現在、共同配送の打診を行っている。配送については、同業他社と協力することで、コストを削減し、厳しい環境を乗り越えていきたい」
 ‐小売店の配送にも変化の兆しがある。
 「物流2024年問題を機に、リードタイムを1日から2日に延長する企業も出てきており、これまでの商習慣が変わりつつある。賞味期限30日以上の食品は、隔日配送に切り替えるなど、配送の在り方をさらに工夫していくことで、物流の効率化や二酸化炭素排出量の削減にも繋がる。物流に関してはまだまだ改善点が多くあり、引き続き取引先と連携し、ベストな方法を模索していきたい」
 ‐佃煮や煮豆の通常品の動き。
 「節約志向の影響もあり、昨秋から動きが若干鈍化している。値上げにより特売や増量などの販促がかけられていないため、売場で訴求力が少ないことも動きが良くない理由の一つと分析している。ここにきて、お弁当やおにぎり具材としての引き合いが増えてきているので、今後の需要の高まりに期待したい」
 ‐今後について。
 「様々なコストが上昇し、人口減少も進む中、今までのビジネスモデルが通用しなくなってきている。規模を拡大し、売上を追い求めてきた時代から、規模を縮小し利益を重視するスタイルへの転換が求められている。配送についても、利便性を追求し、これまで配送頻度を上げてきたが、本当に必要なものなのか再考する時に来ている。過剰なサービスが世の中に溢れ、そのひずみが環境破壊にもつながっている。今後、さらに人口が減少していく中、時代を巻き戻すことも考えていかなければならないのではないか」
(東京本社・藤井大碁)
【2024(令和6)年5月1日第5161号9面】

全調食東海北陸ブロック会  会長 平松賢介氏

商品価値をいかに高められるか
販売チャネルの多角化問われる
 全調食東海北陸ブロック会の平松賢介会長(平松食品社長)にインタビュー。円安やコスト増が続く中、メーカーが難局を乗り切るには、いかに商品価値を高められるか、さらには販売チャネルの多角化を行えるかが問われていると語る。また平松食品では、昨年11月に発売した「本まぐろ煮」が、2月の全国水産加工たべもの展2024で、水産庁長官賞を受賞。栄えある賞を獲得した。(大阪支社・高澤尚揮)
◇ ◇
 ー年末商戦から現在の市況まで。
 「〝おせち〟の形が、私たちの得意とする単品の世界から『お重』というオードブルへと変化し、異分野の事業者も加わり乱戦模様となってきた。中身も和洋折衷、言い伝えも薄れてきて、食文化のパラダイムシフトが起きていると言っても過言ではない。昨年末の動きからは、その『お重』マーケットも安泰ではなくなった姿を見ると、総合的に取組むことのできる企業は、角度を変え新たなアプローチが求められている。特徴ある単品を持つ企業はその素材を深掘し、品質はもちろんのこと、その素材が持つ地域的、文化的背景を含め総合的に発信し、ローカルだからこそ地域にかかせない製品を送り出すことが求められる時代となったことを実感した」
 ー2月の節分いわしの動きについては。
 「節分に鬼除けでいわしを食べるという習わしは関西発祥と言われているが、近年、関東や九州も含め全国的な広がりを見せている。当社では年々、節分時期のいわし系つくだ煮商品の売上が前年比越えを達成しており、手堅い需要がある。これは、いわし商品を扱うメーカー同士で意見が一致している。価格より価値で購入してもらえる一例であり、どうすれば消費者に商品価値を感じてもらえるかが重要。イベントごとに留まらず、常に価値を提供し、価値を高めていけるかがメーカーに問われており、消費拡大のキーである」
 ー次に、今年の東海北陸ブロック会の活動は。
 「全調食の総会が今年5月にハワイで開催されるため、当ブロック会でも参加を呼び掛けてきた。現地では、当会の会員だけで集まる懇親会〝東海北陸ナイト〟を企画しているので、ご家族とともに有意義な交流の場になることを期待している。また、当会では毎年、秋の研修会を実施しているが、今秋は全調食本部が秋季大会を大阪にて開催するので、こちらの出席を薦めるため、今年は研修会を実施しない。ただ例年、研修会で、おせちや年末商戦の情報交換のリクエストがあるため、その場に替わる場は、適宜セッティングしたいと考えている。その他の活動は、例年通り実施予定だ」
 ー4月16日のブロック会総会では補助金の講演が催された。
 「毎年の総会では、有益で時節に合った情報提供を行いたく、講師をお招きし講演会を実施している。今回は、経産省と日本政策金融公庫の方をお招きし、『令和5年度の国の施策と支援制度』をテーマに語っていただいた。経産省では、IoTやロボットなどを活用し、足元の人手不足に対応するための省力化などを目的とした補助金『中小企業省力化投資補助金』を公募中であること、政策公庫の方からは、公庫の集約した食品業界の景況感や、国産原料活用に伴う優遇金利などの話をしていただいた。各社の事業発展のためには、国の施策などを活用し、補助金申請の機会を事業計画立案の機会と捉え、活用することを理解していただいたと思う」
 ー自社では「本まぐろ煮」が、たべもの展の水産庁長官賞に。
 「本まぐろの尾肉を秘伝のタレやオリジナルの本醸造うすくち醤油等を使用し、伝統的な竹籠製法で炊き上げた商品で、昨年11月に発売を開始した。たべもの展の審査講評で、見栄えする外観、コラーゲン豊富なまぐろテールのプルプルとした食感、まぐろの旨味をご評価いただき、商品開発のコンセプトや想いが伝わり嬉しい。前回に続き2回連続、栄誉ある水産庁長官賞を受賞でき光栄だ。励みになる」
 ー海外輸出にも積極的だ。
 「従来の販売先にとらわれない販売チャネルの多角化が、メーカーとしてビジネスチャンスをつかむためのキーだろう。当社では、欧米、中華圏等につくだ煮の輸出実績があり、中でも近年、力を入れているのがベトナムを始めとした東南アジア地域だ。ベトナムに出店している、ある日本の大手スーパーでは、現地の全店舗で当社のつくだ煮を販売していただき、スーパーの出店数拡大に伴い、年々取引数量が上昇することを期待している」
 ー最後に。
 「業界全体としては、30年続いたデフレからインフレにシフトし、造り手も売り手もこれまで価格を下げることが大きなウエイトを占めていたが、価値を付加する考え方に切り替えなくてはならない環境になった。つまり、より造り手の思いが必要な時代になってきたと思う。その矢先に原材料の調達が不安定となったことはもちろん、様々な課題が顕在化してきて、その課題を乗り越えて行くために時代が私たちへ『Think(考えよ)』と言っているかのようであり、ある意味、やりがいのある時代になったと言えるのではないだろうか」
【2024(令和6)年5月1日第5161号10面】

全調食近畿ブロック会  会長 阪田嘉仁氏

融和の精神が繋がり深める 
イベントや企画で消費拡大図る
 4月16日に神戸市内で開催された全調食近畿ブロック会の総会にて、西友商店株式会社(滋賀県高島市)の阪田嘉仁代表取締役社長が、近畿ブロック会長に就任した。ブロック会員同士の更なる交流の活性化に励み、「融和」の精神を大切にした会の運営に努めたいと語る。自社では、うなぎ蒲焼、うなぎ茶漬、湖魚佃煮の製造・販売を行っており、伝統的な食材を大切にしながらも、顧客が求める商品作りや魅せ方のアップデートを行い続けている。(大阪支社・高澤尚揮)
   ◇    ◇
ー近畿ブロック会長に就任した。
 「前会長の野村啓介氏、その前に会長を務められた柳本一郎氏といった業界の諸先輩方の名前が並ぶ中、このような重責を拝命し、大変恐縮だ。諸先輩方は、会員同士の交流、有益な情報の交換を大切にされてきて、しかも堅苦しくなく、遊び心のある会の運営や研修会の実施に尽力されてきた。ご指導いただきながら、継承していきたい」
ー新会長としての抱負や近畿エリアの特色。
 「会員同士の交流の深まりは『融和』(ゆうわ)という言葉で表すことができる。融和の精神で、当会会員が繋がり、また各ブロック会とのより一層の交流が深まるよう、場を設けるよう取り組んでいきたい。近畿の会員企業は、兵庫のいかなごのくぎ煮、大阪の昆布佃煮、京都のちりめん山椒、滋賀の湖魚佃煮と、各県バラエティー豊かだ。名産品は異なっても『もの作りへの想い』は一致している」
ー今年のブロック会の活動予定。
 「6月29日の『佃煮の日』は各県組合と協力して、私の地元である滋賀で、佃煮の無料配布を検討している。また、当会の名物は海外研修。世界のマーケットを肌で感じるため、現地のスーパーに訪れたり、工場見学を行ったりしてきた。本年度は台湾研修を予定している。台湾では日本の文化に関心を持つ人は多く、日本人の海外旅行先で台湾はトップクラスの人気がある。台湾の消費トレンドや最先端の食文化に触れることで、持ち帰れるものが必ずあるはずだ」
ー西友商店の歴史。
 「本社がある滋賀の近江今津は、古くから鮎漁を中心とした漁業で栄え、創業者の阪田嘉明は、川魚店ののれん分けから、昭和50年にうなぎ・川魚料理店として開業した。平成14年には京都市内の百貨店で、うなぎ関連商品や湖魚の佃煮を販売する専門店を出店し、そこから関西の有名百貨店を中心に多店舗運営を行ってきた歴史がある」
ー佃煮等の伝統食の売り方が変わってきた。
 「中元や歳暮の文化は減少してきたが、敬老の日や父の日・母の日、バレンタインデーといったイベントでの需要は手堅い。また、おつまみ需要も拡大している。企画性や限定性を打ち出していくことで、若年層の消費拡大も図れると期待している」
【2024(令和6)年5月1日第5161号11面】

ブンセン株式会社 代表取締役社長 田中智樹氏

ブランド再定着目指す 
「野村佃煮」の看板維持へ 
 ブンセン株式会社(田中智樹社長、兵庫県たつの市)は「アラ!」や「塩っペ」をはじめとした佃煮に加えロングライフ惣菜、デリカと多方面で活躍している。また、2月に民事再生法の適用を申請した株式会社野村佃煮(京都府宇治市)のスポンサーとなり、4月1日より新会社を設立。社名を引き継いで事業譲渡を受けて新・野村佃煮の社長には田中社長が就いた。佃煮・惣菜の有力企業2社の合流でシナジーが期待される。(大阪支社 小林悟空)
ーブンセンの取り組みは。
 「佃煮、日持ち惣菜、デリカが3本柱となっている。最も歴史の長い佃煮はブランドの再定着を図っている。食生活が変わり佃煮を食べる機会が減っている今、改めて若い方に知ってもらおうと努力しているところ。昨年は地元局のサンテレビとのコラボ商品で、勝利を呼ぶのりつくだ煮として虎柄模様の『アレ!』を発売した。その後地元球団が優勝、『アレ』が流行語大賞ともなり、本品も大変注目された。偶然だが、地元関西で認知していただけたのはありがたい」
ー日持ち惣菜分野は。
 「市場自体が成長しているが、その分ライバルも増え続けているので、当社ならではの強みを模索していかなければならない。この度発売した『ととのう』スープシリーズは健康と簡便性を訴求していく。味付けについても『酸辣湯』が酸味強めの本格的な味としているように、大手は手を出しづらい個性ある商品づくりを心がけている」
ー新事業にも取り組む。
 「2022年にペットフードの新ブランドを立ち上げた。当社は醤油醸造を祖業にその後佃煮、菓子、日配惣菜・弁当、日持ち惣菜、やわらか食……と食の力で人を笑顔にするため事業を広げてきた。この度、野村佃煮がグループに加わり人材、技術、販路等あらゆる面で相互連携がスムーズになるので挑戦の幅が広がると期待している」
ー野村佃煮について。
 「野村佃煮は京都錦市場の惣菜店として創業し、京都の食卓を支えてきた。一方ではおせち製造やお土産の分野でも活躍し、京都を代表する佃煮・惣菜メーカーとして日本中にファンがいて長年愛されてきた企業だ。その味を繋いでいくことは、京都の食文化を守ることに直結すると考えている」
ー改革の方針は。
 「現在は内情把握、引き継ぎを進めているところ。改革は必要となるだろうが、それは昨今のコスト上昇、人手不足が深刻な状況においてどの会社でも同じこと。野村佃煮の看板はしっかり守りながら、ブンセンとのシナジーを踏まえて取り組んでいくつもりだ」
【2024(令和6)年5月1日第5161号12面】

宝食品株式会社 代表取締役社長 三澤省一氏

新市場獲得へ商品開発
社員が活躍できる会社目指す
 昨年12月に宝食品株式会社(香川県小豆郡小豆島町)の社長に就任した三澤省一氏にインタビュー。同社は小豆島醤油を生かした佃煮に加え、佃煮の技術を生かした「めしの素」、「おもいやりごはん」など新たなジャンルへ挑戦し市場獲得を目指してきた。三澤社長はその動きを加速するため今期から企画課を販売企画部に昇格、また社員がやりがいをもって活躍できる会社づくりを推進していく方針を語った。
(大阪支社・小林悟空)
◇   ◇
ー宝食品について。
 「1948年に創業し小豆島特産の醤油を用いた佃煮製造を営んできた。その後OEM、業務用商材、レトルト商材へと業容を拡げ、2016年に佃煮・惣菜とレトルト食品用の第2工場を新設した。また2020年には『ちりめん山椒』がJAXAの宇宙日本食に認定、同年にFSSC22000を取得するなど、総合食品メーカーとしての道を歩み始めている」
ーユニークな商品が多い。
 「同じことをしているだけでは人口減少の時代を乗り越えられないので、積極的に新しい市場の獲得を目指している。今期から企画課を販売企画部に昇格し消費者ニーズに合った商品をスピード感を持って開発していく」
ー佃煮の動向は。
 「コロナ禍が明け土産需要が戻ってきた。しかし大局的には市場縮小傾向であることは否めず、また主力としてきた昆布、海苔、小魚ほかあらゆる水産原料が不足してきているため、変化を迫られているのは間違いない」
ー『宅杯瓶 ほたて 柚子唐辛子味』がたべもの展で大阪府知事賞を受賞した。
 「企画課(当時)が先頭に立って開発した商品。コロナ禍の真っ只中に、宅飲み需要を狙い、ハイボールやワインに合わせる、女性や若年層にも手にとってもらう、といった発想から始まり素材、味、デザインとも従来の佃煮に囚われないものを目指した。今後もこのように色々な方向性の佃煮に挑戦していく」
ーレトルト食品の動向。
 「佃煮で培った技術を生かした商品作りをしている。『めしの素』は佃煮に並ぶ柱へと成長してきている。昨年9月に発売したアウトドア用『soloメシのもと』のように、同じ炊き込みご飯の素であってもコンセプトを変えるだけで、全く違った層や売場へアピールできている。備蓄食の『おもいやりごはん』は医療施設等で採用いただいている」
ー今後の目標は。
 「弊社グループとなった醤油やぬか漬けの素等を製造する株式会社高橋商店、及び直売部門である有限会社京宝亭との連携を強化し挑戦の幅を拡げていく。3社共に風通しの良い、働きがいのある会社を目指していきたい」
【2024(令和6)年5月1日第5161号13面】

塩特集インタビュー

日本特殊製法塩協会会長(マルニ株式会社代表取締役社長)脇田 慎一氏

塩の高付加価値化が必要 懇話会と連携し効率的活動を
 特殊製法塩協会の脇田慎一会長(マルニ株式会社代表取締役社長)にインタビュー。脇田会長は、昨年7月頃に実施された価格改定は概ね受け入れられているものの、塩の消費量減は避けられないものとし、高付加価値化の必要性を指摘する。(大阪支社・小林悟空)
  ◇      ◇
‐特殊製法塩の動きについて。
 「昨年7月に当社を含め多くの企業が価格改定を実施した。原料塩や各種資材、電気代や輸送費などコスト上昇が襲いかかり、価格維持は困難な状況だった。大半のお客様には理解いただけているのだが、一部では実現できておらず、また売場価格にはあまり反映されていないのが実情だ」
‐各社の対応は。
 「人口減や家庭内調理の減少などは加速しており、家庭用塩の消費量を増やしていくことは容易ではない。付加価値を追求していく動きが強まっていると感じる。塩は安くていつでも手に入る物という感覚が根付いたままだが、その固定観念を崩せたこだわりの商品はよく売れているようだ」
‐御社の取組は。
 「同様に、高付加価値商品に注力している。中外食向けの小袋塩は引き続き成長している。当社は製塩を行わず原料塩を仕入れて、ブレンドすることを生業とする小規模メーカーだが、その分小回りが利く。顧客の要望に応じた小ロット生産も可能な点が評価いただいている。また今年7月から代表商品『エンリッチ塩』の生産設備を刷新し、商品包装もより使いやすいものへリニューアルする予定だ」
‐協会の活動は。
 「間もなく任期の2年問を終えようとしているが、全国塩業懇話会と連携する必要性を痛感した。当協会のメーカーが抱える問題は結局のところ、塩の流通全体に関わる。関連省庁への意見具申など実務的な活動は懇話会に集約していくのが効率的ではないか。当協会としては、加盟者の意見を残さず掬い上げて懇話会へ持ち込めるような仕組み作りと、『適塩』普及のための消費者向け活動に注力していきたい」
【2024(令和6)年3月21日第5157号9面】

日本特殊製法塩協会
https://www.tekien.net/

全国塩元売協会会長・塩元売協同組合理事長・全国塩業懇話会会長
株式会社ソルト関西代表取締役社長 山本博氏

塩消費量は減少を前提に 物流問題や災害時対応に指針
 株式会社ソルト関西(山本博社長、大阪市中央区)は、平成13年に関西域内の卸売会社6社が事業統合して設立された塩の元売企業。山本社長は、全国塩元売協会会長、塩元売協同組合理事長、そして塩の各団体が垣根を越えて業界を取り巻く共通課題へ取組むべく結成された全国塩業懇話会初代会長の要職を務めている。山本社長は塩の消費量は減少していくことを前提とした企業経営の必要性や、懇話会で取り組む課題について語った。
  (大阪支社・小林悟空)
  ◇      ◇
‐塩の出荷動向は。
 「当社の場合、出荷量の多い食品用、融雪用とも今年度は減少した。食品用に限って見ても昨年比95%ほどと厳しい結果となった。塩はあらゆる食品に入っているものであり、またその食品の質を大きく左右するため、これほどの減少幅は異例と言える。日本の人口減少と、フードロス削減の動きが影響しているのではないかと見ている。どちらも止めようのない問題であり、減塩化の逆風も重なり、塩の消費量はますます減っていくということを前提としなければならない」
‐御社の対応は。
 「塩以外の物、グルソーなどの調味料やマスク等の資材関係といった幅広い商材を扱うことで売上の維持拡大を図っている。塩と一括して納入できればお客様にとっても管理負担が軽減できる。飲食店から大規模工場まで食品事業者なら幅広くお取引してきた強みを活かせている。今後もお客様の要望があれば、扱う品目は増やしていく方針だ」
‐懇話会の活動は。
 「懇話会は日本塩工業会、塩元売協同組合、塩輸送協会、全国輸入塩協会、日本特殊製法塩協会5団体が連携した団体として、分野横断的に課題解決へ向け議論を重ねている。昨年10月には『物流の適正化・生産性工場に関する自主行動計画』を策定した。これは物流2024年問題による国内物流への影響を抑制し、塩の安定的な供給を守ることを目的としたものであり、物流業務の合理化、運送契約の適正化、労働環境改善などについて指針を定めている。また中期的課題として、カーボンニュートラル化を見据えた流通網の再整備やモーダルシフト、共同輸配送、物流DXにも言及している」
‐塩の地位向上は。
 「塩が人体に必要であることは各企業や『くらしお』の御尽力により、ある程度知られるようになってきたと思う。とはいえ塩の摂取基準(男性7・5g未満、女性6・5g未満)が緩和されることはないだろうし、先述の通り人口減少やフードロス削減といった社会的変化の影響もあるので、塩消費量を増加に転じさせるのは難しそうだ。しかし、日本の塩の品質の高さや、安定供給の価値をもっと知ってもらうという意味ではまだまだ余地はある。海外市場の開拓も視野に入る。日本の塩は異物混入や汚染がなく、世界トップレベルの品質を持つことを主体的に発信していけるような取り組みも考えていきたい」
【2024(令和6)年3月21日第5157号9面】

全国塩業懇話会
https://www.jp-salt-assoc.jp/

群馬特集インタビュー

群馬県漬物工業協同組合 副理事長 輸出委員会委員長 小山 勝宏氏

補助金で輸出事業展開へ 輸出重点品目に漬物追加を
 群馬県漬物工業協同組合(武井均理事長)では、組合員の海外輸出を後押しするため、2022年秋に輸出委員会を設立した。組合副理事長で輸出委員会委員長を務める小山勝宏氏(株式会社コマックス社長)は、委員会設立の経緯や、組合として補助金を受託し、海外での試食販売など輸出に関する事業を行っていく目標について語った。(藤井大碁)  
ー輸出委員会設立の経緯。 
 「将来的に人口が減少し国内マーケットが縮小していく中、輸出への関心は高まっている。2018年には、群馬県にも独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)の貿易情報センターが開設され、県内メーカーにとって輸出はより身近なものになっていた。そのような中、群馬県漬物工業協同組合の会員の一部も加入している群馬味噌醤油組合が、輸出に関する補助金により海外で輸出の取組を行っていることを聞いて、漬物組合でも同じようなことができないかと考えたのが設立のきっかけとなった」
ー現在の取組。
 「定期的に輸出に関するWEB会議を実施し、情報交換を行っている。また2月に開催された組合新年会においては、JETRO群馬貿易情報センター所長の宮﨑了一氏に『群馬から世界へ~今だからこそ考える海外ビジネス~』という演題でご講演頂いた。世界経済の変化や、中小企業の海外展開の現状、今後の展望などについて分かりやすく解説してもらい、組合員から大変好評だった」
ー今後の目標について。
 「当面の目標は組合として補助金を受託し、海外での試食販売など輸出に関する事業を行うことだ。前期は2つの補助金に応募したが、残念ながらどちらも不採択となった。不採択の要因は一つではないと思うが、農林水産省が定める輸出重点品目(28品目)の中に漬物が入っていないことは、補助金の採択を難しくしていると考えられる。全漬連や漬物議連を通して、重点品目に漬物を加えて頂けるよう働きかけていくことが必要ではないか。また、漬物の賞味期限が短いことも輸出のハードルを高めていると推測している」
ー現在の輸出状況。
 「弊社ではJETROの商談会において、約20カ国のバイヤーと商談実績があるが、梅干は酸味が強く、輸出へのハードルは高いと感じている。だが、カリカリ梅は梅干ほど酸っぱくなく、味わいが受け入れられやすいことに加え、群馬県の生産量が全国1位であるため、そこを切り口に海外に群馬の梅ブランドを広めていくことができると考えている。現在、おにぎりが海外においても人気なので、おにぎり具材として、梅が人気になる可能性もあるのではないか」
ー最後に。
 「県内には賞味期限が一年以上あるロングライフの福神漬を製造している企業もあり、そうした商品をお手本にすることで、各社が日持ちする漬物の開発を目指していきたい。賞味期限の短い浅漬やキムチについても、冷蔵・冷凍で保存して現地に送るための技術や設備のための補助金を受託できる可能性もある。組合員一丸となり、JETROの力も借りながら、群馬の漬物を少しでも多く輸出できるよう取り組んでいきたい」
【2024(令和6)年3月11日第5156号8面】

群馬県漬物工業協同組合HP
https://guntsuke.com/

東京特集インタビュー

東京中央漬物株式会社 代表取締役社長 齋藤 正久氏

特産品の減少を懸念 インバウンド需要に商機
東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(東京都江東区豊洲)の齋藤正久社長にインタビュー。年末年始の売れ行きや値上げの動き、6月から完全施行となる漬物製造業の許可制などについて話を聞いた。許可の取得にはHACCPの考え方に基づく衛生管理を行うための設備投資などが必要になってくることから、特に地方の小規模事業者への影響を懸念。地方の特産品も多く取り扱っている同社の齋藤社長は、悩みを抱える事業者をサポートしていく意向を示した。(千葉友寛)
   ◇   ◇
‐年末年始の売れ行きは。
 「12月は昨年と同じくらいで推移したが、1月は少し下がって前年比99%となった。勢いが落ちたというよりは昨年の1月から3月が良かったという印象で、99%くらいが本来の数字だと思っている。昨年は値上げもあったが、値上げによって消費者の商品に対する目が厳しくなり、必要なものしか買わないようになってきている。少し前のことだが、自宅の近くにスーパーがオープンした。オープン直後は特別価格で販売していたこともあってすごい賑わいを見せていたが、少し時間が経つとあれだけいた人が全くいなくなった。買い物に対する意識はシビアになってきており、スーパーも新店を出しているところは売上が増えていると思うが、新店が出なくなるとより厳しい状況になっていくと感じている」
‐値上げの動きは。
 「昨年の11月上旬から見ると、2月から5月にかけて値上げの打診があったのは64社。その半分以上が業務用の商品だった。コロナの5類移行後、業務用関係が回復し、動きが良くなっていることも影響している。値上げの理由については4月からの物流費の上昇に伴うものもわずかながらあるが、全体のコストから見ると大きな割合にはならないため、多くのメーカーが吸収する動きとなっている。春夏は様子を見て秋冬のタイミングで検討するところが多くなる、と見ている。一昨年から昨年にかけて値上げを行った後もコストは上がり続けている。漬物もカテゴリーによっては3回、4回の値上げを行っているものもあるが、大体の品目は一巡していて二巡目をいつ行うか、というところがポイントだ」
‐6月から漬物製造業が許可制になる。
 「得意先の要望もあり、1月中旬から製造許可取得に関するアンケートを行っている。アンケートの回収率はまだ6割程度だが、その内の8割はすでに許可を取得しているか申請中ということだった。残りの2割はこれから対応する、ということだったが、小規模事業者については事業を継続しないところも出てくると見ている。後継者が不在、人手不足、設備投資といった問題に加え、持続可能な商売ができているのか、ということもある。利益を確保しなければ設備投資をすることもできず、製造許可が下りない可能性もある。地方の特産品は小規模事業者が製造しているケースが多く、製造許可が取得できなければ特産品の減少につながり、その地域における食文化が継承されなくなる可能性もある。当社は日本の伝統的な漬物を後世に残したいと思っており、そのような商品を取り扱えなくなれば当社の魅力もなくなってしまう。地方で眠っている商品を掘り起こし、流通に乗せていくことは当社の責務でもある。事業の継続や製造許可取得で悩んでいる事業者の方は是非、声をかけてほしい」
‐インバウンド需要は。
 「浅草や築地には多くの外国人観光客が訪れており、インバウンド需要は活況となっている。2月1日には当社が所在する豊洲に新しい商業施設『千客万来』がオープンし、国内外の観光客で連日賑わっている。この3カ所は、日本の文化を発信する重要な拠点だと感じている。日本の食は海外の人からも高く評価されていて、外国人も列を作って並んでいる。土産店よりも飲食店の方が動きが良く、そこに付け合わせや試食など、漬物を入れられないかと思案している。ピンチもあるが、チャンスもある。自分たちの強みを再認識し、商機を逃さないように取り組んでいくことが重要だ」
【2024(令和6)年3月1日第5155号4面】

東京中央漬物 電子版「地域セレクション特別会員」
https://www.syokuryou-shinbun.com/pages/1293/

2月11日号 SMTS特別インタ

秋本食品株式会社 代表取締役社長 秋本 善明氏

食卓やニーズの変化捉える 「選択と集中」で商品見直し
 秋本食品株式会社(神奈川県綾瀬市)の秋本善明社長にインタビュー。浅漬やキムチの売れ行きなどについて話を聞いた。今年は原料や人手の不足、2024年物流問題など、対応しなければならない課題が山積しているが、「選択と集中」の取組を推進し、ブランド力を生かした展開を行っていく意向を示した。また、魅力ある売場を作るために見せ方や食べるシーンをイメージさせる提案の必要性を強調した。(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐浅漬とキムチの売れ行きは。
 「浅漬は年間を通して売れ行きは良くない。特に昨年10月からは野菜が安かったことも影響した。年末商材のなますや千枚漬もいまひとつだった。だが、年末だけはカップの白菜やゆず白菜、胡瓜、大根と全般的に動きが良かった。キムチは昨年12月までを見ると前年をクリアしている。10月以降は少し落ちているが、一昨年の動きが良かったこともあり、その反動だと見ている」
 ‐その他の商品の動きは。
 「POSデータを見ると梅干しは昨夏の猛暑の影響で売れたが、通年では微減となっている。本漬は良い動きが続いているが、酢漬や沢庵はやや減少傾向となっている。沢庵はカップのスライスが主流になったことによって復調してきており、容器革命によって活路を見出した。全体としては1%程度のマイナスとなっている」
 ‐ニーズの変化について。
 「物価の上昇に賃金のアップが追いついていないため、消費者の生活防衛意識はより強まっている。量販店では安いところやディスカウント店が好調だ。大企業は賃金のアップを表明しているが、我々のような企業はとても追いつかない。個人や企業だけではなく、産業としても格差の広がりを実感している」
 ‐売場によって異なる動きもある。
 「惣菜売場で販売されている漬物は比較的売れているようだ。目的を持って漬物売場に来る人もいるが、食シーンにマッチしているかどうかが重要で、惣菜売場に漬物があれば食べるシーンをイメージできて購入につながる。惣菜売場の漬物は液なしでスライスされたカップ製品が多く、蓋を開けるだけで食べられる簡便性や即食性の高い商品。液を切る作業や包丁を使うことは手間になるため、このようなニーズは以前よりも確実に強まっている」
 ‐漬物の食べ方や売場の変化について。
 「漬物は箸休めやお茶請けとしても利用されてきたが、いまの食卓にその要素が必要とされているのかどうか。世帯人数や食べる量、食生活の変化など、いまの食卓のことをもっと研究する必要がある。ご飯のお供という部分については、なくなることはないと思っている。1月7日にご飯のお供をテーマにしたテレビ番組が放送されたのだが、紹介された商品はかなり動いたと聞いた。量販店の売場でもご飯に合う商品やお酒に合う商品のランキングを作成し、消費者に情報を伝えるサービスがあってもいいと思う。画一化された売場でただ置いてあるだけでは売れない。美味しさや価値を伝え、食シーンをイメージさせることが必要だ。半期に一度売場を変えただけでは面白くないし、変化はほとんどない。売場に興味を持ってもらうためにも見せ方も含めた変化が必要だ」
 ‐2024年物流問題について。
 「物流費については一気に上がらず徐々に上がっていく流れになると見ている。物流費の上昇を製品価格に転嫁できるかということについては、トータルで見てどれだけ上がるかということにも関係するが、物流費が上がった分は製品価格に転嫁するべきだと考えている。企業の収益が落ちれば賃金が上がらず、物価高に追い付かないという流れになる」
 ‐値上げや今後の方向性は。
 「値上げをして売上が減った場合、それに見合った商売をしなければならない。市場性がなくなった商品を復活させることは至難の業だが、それでもメーカーとしては売れる商品を作り続けなければならない。当社としては選択と集中の取組で商品を見直し、主力の『あとひきだいこん』、『王道キムチ』、『オモニの極旨キムチ』を軸にそのブランド力を生かした姉妹品等の展開を行っていく」
 ‐漬物の魅力や強みについて。
 「漬物の最大の魅力は、植物性乳酸菌を豊富に摂取できる発酵食品であること。これは他の食品や業界にはないもので、漬物の特権とも言える。近年、キムチが大きく伸長した要素でもあるが、そのような情報をもっと発信し、腸活の観点からPRしていくことが重要だ」
【2024(令和6)年2月11日第5153号2面】

秋本食品 電子版 バイヤー必見!イチ押しページ
https://www.syokuryou-shinbun.com/pages/896

株式会社五味商店 代表取締役社長 寺谷 健治氏

過去最多157社が出展 “こだわり商品”市場拡大続く
 『スーパーマーケット・トレードショー2024』(2月14日~16日・幕張メッセ)において、全国から厳選した食品を紹介する株式会社五味商店(千葉県我孫子市)の「こだわり商品コーナー」(会場9ホール)は、今回で25回目の出展となる。【小間番号:9‐102】
 同ブースには今回、過去最多となる157社が出展、全国各地からこだわり商品が集結する。現在の消費動向である“メリハリ消費”が追い風となり、こだわり商品の市場は好調をキープしている。五味商店の寺谷健治社長は、今後、ベースアップによる賃金上昇が進めば、こだわり商品の市場はさらに拡大していくとその見通しを語った。
(藤井大碁)
   ◇    ◇  
―SMTSへの出展は今回で25回目となる。
 「2000年からブースを出展し、様々なことを勉強させて頂いた。継続的に“こだわり”という言葉を使い続け、その価値を訴求し続けた結果、この25年間で“こだわり”という言葉が市民権を得た。生前、毎回ブースに足を運んでくださったセブン&アイ・ホールディングスの伊藤雅俊名誉会長や全国スーパーマーケット協会の皆様を始め、たくさんの方々のおかげで今の五味商店があると感謝の気持ちでいっぱいだ」
―今回の見どころは。
 「昨年より15社増加し、過去最高の157社が出展する。そのうち行政関係の出展が58社を占める。能登半島地震により被災した石川県からは、7社が出展する予定だったが、そのうちの1社が震災の影響で出展できなくなった。まずは被災地の1日も早い復興を願うと共に、我々も展示会を通して、石川県の出展者と一緒に頑張っていくことでエールを送りたい」
―ブース内の特設コーナーについて。
 「特設コーナーでは、これから旬を迎える“初夏のレモン”と“新緑の抹茶”をテーマに関連商品を提案する。また、“TOPPIN’JAPAN”コーナーでは、ご飯のお供になる瓶詰商品、調味料、ドレッシングなど、ご飯や料理にプラスすることで食卓が豊かになるこだわり商品を紹介する」
―現在の消費者ニーズは。
 「アフターコロナになり、消費者のライフスタイルや価値観が大きく変化している。消費の二極化が進み、“メリハリ消費”が顕著になっている。安いPB商品が売れているが、高いこだわり商品も売れている。以前は、十人十色だった消費形態が、一人の消費者が、安いものを購入しながら、自分が美味しくて食べたいものは高くても購入する、という“一人十色”の消費形態に変化している。そのため、小売店では、両極のニーズに対応していく必要があり、PB商品の拡充などにより価格対応を行うと共に、1000円台などの高付加価値商品の取扱いを増やす店舗も出てきている」
―こだわり商品の動き。
 「弊社の直近3カ月の売上は前年比107%と好調に推移している。メリハリ消費が追い風になり、こだわり商品の市場は着実に成長している。今後のベースアップにより賃金が上昇していけば、さらにメリハリ消費が顕著になり、こだわり商品の需要は増加していくものと考えられる。そうした時代に向け、どういった商品を提案できるかが、小売店にとっては今後の重要なテーマになるのではないか」
―新たな取組について。
 「昨年4月にオープンした新宿高島屋の“Meetz STORE(ミーツストア)”に弊社から2アイテムを出品している。同売場は、購入前に商品を試すことができ、オンラインで購入するショールーミングストアで、雑貨や化粧品などと共に食品を取り扱っている。まだまだ売り上げは微々たるものだが、こうした新たな販売チャネルに積極的にチャレンジすることで、将来への種蒔きを行っていきたい」
―最後に。
 「我々の最大の目標は、『こだわり商品コーナー』から1社でも多くの成功企業を輩出し、地域活性化に貢献すること。その企業の売上が伸び、地元に新工場を建設することができれば、新たな雇用が生まれ、地域貢献につながる。実際にこれまで展示会への出展を機に、売上が20倍以上に拡大したケースもある。成功のために必要なのは、経営力・販売力・商品力の3つの力のバランスで、このうちどれかが欠けても競争に勝てない。逆に、この3つの力があれば、『こだわり商品コーナー』に出展することで、爆発的な売上増加のチャンスがある。今回も、展示会への出展を機に、地域活性化に貢献する企業が誕生することを期待し、全力でバックアップしていく」
【2024(令和6)年2月11日第5153号5面】

五味商店 電子版 地域セレクション特別会員
https://www.syokuryou-shinbun.com/pages/477/

株式会社山重 代表取締役社長 杉山 博氏

待ったなしの物流問題対応 消費者需要にマッチした商品を提案
 株式会社山重(杉山博社長、東京都葛飾区)は、漬物をはじめ日配のプロとして全国に物流網を持つ一次荷受問屋。取引先は全国44都道府県、仕入れ件数は346件と地方の名産品も数多く取り扱っている。同社は単に商品を物流に乗せるだけではなく、メーカーと商品を共同開発して企画・売場提案を行いながら量販店、外食、中食、ベンダーなど様々な販売チャネルに供給してきた。開発力と提案力を併せ持つ同社は業界内外から高く評価された歴史があり、厚い信頼を寄せられている。業界を取り巻く環境は厳しさを増しているが、杉山社長は改めてメーカーとともに消費者に求められる商品を作っていく姿勢を強調した。
(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐今期の業績は。
 「今期の売上は12月までで前年比増となっており、まだ2月と3月の動きは読めないが、通年で増収、利益は前年並みと予想している。消費者の需要にマッチした商品を提供できたことが結果的に増収につながったと考えている」
 ‐課題が山積する中、利益の確保について。
 「エネルギー価格や物流費の上昇で利益の確保は難しくなってきている。5月から再び電気代が上がる見通しで、これまで以上にコストダウンを図っていく必要がある。2024年物流問題は大きな問題で、運べる量が減って物流費が上がっても商品の価格に簡単には転嫁することはできないため、様々なことを視野に入れて取り組んでいきたいと考えている。当社は三郷に物流センターがあり、全国のメーカーの商品を一括管理して東日本を中心に全国へ供給できる。小分け販売や小回りの効く供給も可能だ。流通が短絡化にあると言われる今日でもメーカーだけではなく、問屋や流通からも山重が間に入ってくれている方がありがたい、と言っていただける企業で在り続けたい」
 ‐物流費上昇に伴う値上げの動きは。
 「1月下旬の時点で値上げの商談はほぼないので、春夏の棚割りで値上げは実施されない。次のタイミングは早くても秋冬向けとなる。漬物についてはこの数年で適正な価格になり、海外原料や海外完成品は2回、3回値上げした商品もあるが、国産や国内加工品も含めて一巡した流れとなっている。だが、その後も原材料や調味資材などのコストが上がり続けており、適正価格にするために2回目の値上げが必要な状況となっているが、競合の動きや消費者離れを招く可能性もあるため、慎重な判断が必要と考えている」
 ‐今後の値上げの見通しは。
 「数度の値上げを経ても売れ行きが落ちていないマクドナルドやパン製品の動きを見ても分かるように、必要なものや生活必需品、食べる価値のあるものは値上げをしても売れ続けるが、漬物は主菜ではなく副菜なので値上げをすると数量の減少につながりやすい。ブランド力のある商品でも値上げ後に数量が大幅に減少した例もあり、積極的に値上げに動いているメーカーは少ない。困難な状況下こそ『消費者が何を求めているのか』という構造を分析することが重要であり、必要とされる理由や食べる動機を消費者に訴求することが大切で、健康のために野菜を摂取するという観点の他、乳酸菌、発酵食品、食物繊維など有用なポイントをアピールしつつ、料理素材としても利用できることをPRし、用途の拡大を目指したいと思っている。若い人はテレビを見ないので、情報を発信するツールも考えなければならないし、売り方についても根本から見直す必要がある」
 ‐来期の見通しと抱負を。
 「昨年5月にコロナが5類に移行し、外食が回復してきていることから業務用にも力を入れていきたいと考えている。また、引き続きドラッグストアが伸びると見ている。薬品や化粧品といった主力商品に加え、食品の構成比も上がっているが、まだまだ伸びる要素はある。量販店の漬物売場は頭打ちで変化が求められている。我々も含めて消費者のニーズをキャッチして売場に落とし込んでいくことが重要で、商品を橋渡しするだけの問屋は必要とされない。日本は他国に比して商品が多品種小ロットが好まれており、ニッチな需要も今後増加すると予想している。消費者の需要が何かを調査し、その情報を関係各位にお伝えすることにより、商品を提供し続ける『新たな問屋』を目指していく」
【2024(令和6)年2月11日第5153号15面】

電子版 地域セレクション特別会員 山重

1月21日号 DTS特別インタビュー

(一社)全国スーパーマーケット協会 事業部流通支援課兼事業創造室 チーフディレクター 籾山朋輝氏

売場テーマは価値創出
おにぎり部門エントリー大幅増

 デリカテッセン・トレードショー2024(以下、DTS)が2月14日から16日まで幕張メッセにて開催される。DTSは中食産業の最新情報を発信する商談展示会。主催者企画「お弁当・お惣菜大賞」は近年注目度が上昇、売場の販促ツールとして大きな存在になりつつある。DTS会場内では今年も受賞商品の一部を実食できるフードコートを展開する予定だ。DTSを主催する一般社団法人全国スーパーマーケット協会事業部流通支援課兼事業創造室チーフディレクターの籾山朋輝氏にインタビュー。籾山氏は『お弁当・お惣菜大賞』の今年のエントリー商品の特徴について言及。商品開発の傾向が〝価格訴求”から〝価値訴求〟へ変化していることを挙げた。(藤井大碁)
 ーデリカ売場の販売動向について。
 「値上げが進んだことにより、惣菜カテゴリーの売上は、SM3団体統計調査の直近3カ月のデータを見ても、既存店で前年比3~6%増と好調が続いている。だが、同時に人件費や製造コストも上昇しており、利益面は売上ほどには伸びていないのが実情だ。全体的には、即食や簡便性を求める生活スタイルに加え、家飲みも定着しており、引き続きスーパーの惣菜への需要は堅調に推移していると言えるのではないか」
 ー今回のDTSの見どころ。
 「出展者数は前回よりやや増加し、50社・団体、238小間の規模になる。新規出展も10社程あり、中食産業に特化した様々な最新情報を発信するので是非ご注目頂きたい。『お弁当・お惣菜大賞』の受賞商品の一部を実食できるフードコートを今回も展開する他、デリカ関連のメニューを来場者に食べ比べしてもらう『食べくらべ体験 STAND』では、バックヤードでの導入が進むスチームコンベクションオーブンの活用メニューとして、注目が高まっている『ドリア』を試食して頂く予定だ」
 ー「お弁当お惣菜大賞2024」エントリー商品の特徴。
 「今回のエントリー商品を見てみると、極端な価格訴求型の商品が減っている。製造コストの高騰により、価格とクオリティの両立が難しくなった。その代わりとして、今回目立ったのが、メニューや食材に一捻り加えて、オリジナリティを演出した商品のエントリー。ご当地食材を使用したり、一つの弁当内で食べ比べが出来たり、様々な工夫を凝らすことにより価値を創出した商品が多く入賞している。またカテゴリーごとの特徴では、おにぎり部門のエントリー数が大幅に増加した。物価高で商品の一品単価が上昇する中、200~300円で一食完結できるこだわりのおにぎりのエントリーが増えた。一方、各国料理部門のエントリー数が減少した。コロナ禍で海外旅行に行けなかったため、家で海外の料理を食べて、旅気分を味わうというトレンドがあったが、そうした売場の企画が減少していることが見て取れる」
 ーデリカ売場の課題。
 「引き続き人手不足が大きな課題となっている。デリカ売場の商品を全て自社製造することは難しく、力を入れるもの、入れないものを見極めて、自社で作り切れない部分については、仕入れ商品をうまく活用していくことが求められている。また、コロナ前のデリカ売場でよく見られていた裸売りが未だ復活できないというのも売場にとっては課題の一つだ。裸売りができれば、華やかでシズル感のある売場が演出できるため、現在のテーマとなっている価値の創出にも繋がる」
 ー今後について。
 「即食や簡便性へのニーズは強く、惣菜への需要は引き続き高まっていくのではないか。近年、冷凍食品の進化も著しく、カテゴリーによっては惣菜と冷凍食品の棲み分けが進んでいく可能性もある。また、物価は今後も上昇していくと思うので、これまで以上に創意工夫を重ね、付加価値の高い商品の開発が必要になる。こらから先は、完全にコロナ明けの環境となるので、今年は、今後のデリカマーケットを占う意味でも重要な1年になると考えている」
【2024(令和6)年1月21日第5151号6面】

デリカテッセン・トレードショー公式サイト
https://www.delica.jp/

1月21日号 この人に聞く

神尾食品工業株式会社 常務取締役 神尾繁樹氏

漬物製造管理士1級合格
会社をブラッシュアップ
 全日本漬物協同組合連合会が昨年10月に実施した漬物製造管理士試験で1級に合格した神尾食品工業株式会社(神尾賢次社長、神奈川県小田原市飯泉)の神尾繁樹常務取締役にインタビュー。試験にチャレンジした目的や試験を通じて学んだことなどについて話を聞いた。また、小田原の名産である桜花漬や十郎梅の生産や製品の製造については、「共存の意識で対応していく必要がある」と強調した。(千葉友寛)
◇    ◇
 
漬物製造管理試験の1級に合格した。
 「これまで3級、2級の試験を受けて合格していたのだが、コロナの影響で1級試験が実施されず昨年10月に試験を受ける運びとなった。当社に1級の取得者は1人いるのだが、会社の経営に携わるものとして法令や品質管理、微生物、分析関係の内容を勉強したいと思っていたので試験を受けることはマストだと考えていた」
 
ー合格した時の心境。
 「やはり嬉しかった。試験に向けて半年くらい前から帰宅後や仕事の合間の時間を利用して勉強した。もちろん、毎日時間が取れるわけではないので、やれる時に少しずつ勉強していた。漬物は種類が多く、歴史もある。勉強を通じて目的としていたこと以外にも多くのことを学ぶことができた。衛生管理についてもHACCPの内容を知っているのと知っていないのでは製造現場を見る目が変わってくる。全て担当者に任せていればいい、ということではなく、経営者としても知識を持っていた方が様々な視点から会社をブラッシュアップすることができる。当社は梅干しの製造が多く、浅漬に携わることはないのだが、試験を通じて浅漬製造のプロセスなども学べたことは良かったと思っている。自分を磨きたい、知識を増やしたい、という意欲のある方は、経営者でも営業マンでも事務の方でも是非、チャレンジしてほしい。試験を通じて実務に活かせることは多々ある」
 
ー技能実習制度について。
 「現在、当社に技能実習生はいないのだが、日本全国で人手不足が叫ばれている中、今後は技能実習生の受け入れも視野に入れていく必要がある。技能実習生制度はこれからどのような形になっていくか分からないが、当社としても業界としても注視していく必要がある」
 
ー桜花漬の動きは。
 「コロナの5類移行でインバウンドも回復し、末端の製品が動き出している。原料の出荷は前年を上回っていて順調なのだが、生産者の減少や収量減などのため不足気味となっている」
 
ー小田原の梅について。
 「小田原の曽我梅林を代表するオリジナル品種の十郎梅は、手もぎのため収穫にも製造にも手間がかかる。十郎梅は皮が破れにくく、果肉が多いという特徴があり、産地性も合わせて紀州南高梅にはない部分をPRすることができる。しかし、他産地と同様に生産者の減少や高齢化が問題となっている。桜の花や梅を継続して生産していただけるよう、我々や流通も含めて共存の意識で対応していく必要がある」
 ー新年の抱負を。
 「私は入社12年目で、常務取締役に就任して6年目になるが、まだまだ実績がなく学ぶことが多いと感じている。現在は業務の全てを見ていて、人事、現場の合理化、社内の整備、原料の対応などに取り組んでいる。3月に34歳になるが、製造管理士の1級合格は一つのステップで、商品開発や実務に活かせるようにもっと力をつけていきたいと思っている。業界の皆様方におかれては、引き続きご指導、ご鞭撻をお願いしたい」
【2024(令和6)年1月21日第5151号6面】

神尾食品工業 http://kamio.co.jp/

株式会社天政松下 代表取締役社長 松下雄哉氏

SNS代行「ゼロべー」
認知度向上、人材採用で成果
 株式会社天政松下(松下雄哉社長、大阪市西淀川区)はSNS、特にYouTubeやTikTokといった動画サービスでの発信に注力し、認知度向上や人材採用で成果を上げてきた。この度その経験を活かし、動画制作・SNS運用代行を行う新会社「株式会社ゼロべー」を立ち上げた。松下社長は企業のリクルートやブランディングにおいて動画SNSの活用の重要性を語った。
(大阪支社・小林悟空)
◇    ◇
 ‐自社のSNS運用について。
 「天政松下としてインスタグラムやX(旧ツイッター)は以前から運用していたが、2022年春から大学ベンチャーで起業したメンバーとYouTubeやTikTok動画にも着手した。動画は文字や写真と比べて手間はかかるが、その効果は十分にある。特にYouTubeショートやTikTokはバズりが起こりやすく拡散性が非常に高い。認知や興味の拡大という側面では非常に有効だ」
 ‐動画投稿の効果は。
 「一番顕著なのが人材採用への影響。動画投稿以降、求人媒体サイトからの応募率は全国平均の倍近くに跳ね上がった。動画で当社を知って検索して応募したと話す学生の子もいて入社した」
 ‐人材採用に効果がある理由は。
 「求職者の知りたい情報は業種、労働条件はもちろんだが、実は社内の年齢層や雰囲気といった働く環境を非常に気にしている。情報が求人記事とホームページだけだとどうしても得られる情報量が少ない。ライバル社と条件が同じだった場合、情報量が多く働くイメージができる企業が優位になる。つまり人材獲得競争において社内のリアルな情報をいかに開示するかが重要になる。新会社ゼロべーではリクルートの強化を考えている企業の力になりたいと考えている」
 ‐サービス内容は。
 「動画の企画から撮影、編集、アップロード、分析、アカウント管理まで全て代行させていただく。クライアントにやっていただくのは撮影の協力と投稿前のチェックだけ。YouTubeショートとTikTokへ週2本(月8~9本)投稿で、撮影時間は月一回で3時間ほどで済む」
 ‐料金は。
 「料金はYouTubeショート、TikTokを各週2本(約月8)月額25~28万(税抜)。SNSの運用代行としては低価格に抑えて顧客がチャレンジしやすい環境を一番に考えている。動画SNSを自社で行おうとすれば、時間もテクニックも必要で片手間では難しい。また離職リスクなども考えると中小企業にとっては現実的でない。外注するのが最も低リスクであると実感を持って言える」
 ‐今後の活動は。
 「12月に設立が終わったので、1月から本格的に活動していく。設立前から契約の話を進めていただいている企業もある。中小企業が発信力を強化するお手伝いができればと思っている」
【2024(令和6)年1月11日第5150号9面】

大和屋守口漬総本家 代表取締役社長 青木茂夫氏

伝統を守りつつ変化する
生産者の作りがい生む施策支援
 株式会社大和屋守口漬総本家(愛知県名古屋市)では、青木茂夫常務取締役が昨年8月29日に代表取締役社長に就任した。青木新社長は、外資系企業に25年務め、50歳の節目で2022年に同社へ入社した。守口漬を代表するメーカーの5代目社長として、自社の伝統的な味を継承しつつ、消費拡大にも取り組み、社員のモチベーションを高めたいと抱負を語った。
(高澤尚揮)
◇    ◇
 ―青木新社長の経歴は。
 「1972年生まれで、高校まで愛知県岡崎市で育った。大学は東京に進み、早稲田大学大学院経営管理研究科でMBAを取得。学生時代から、スポーツビジネスとマーケティングに関心があったため、ナイキジャパンには24歳で転職し、25年間務めた。同社では、スポーツマーケティングに長年携わり、ディレクター職を最後に、50歳で大和屋守口漬総本家に入社した。鈴木昌義現会長は義兄であり、入社前から同社の状況や将来について議論することもあった」
 ―社長就任での抱負。
 「鈴木昌義現会長は20年に渡り社長を務め、『節目の年から、会社に変化をつけたい』という想いで、社長職を私に譲った。伝統のある守口漬の味など守るべきことは守り、変えるべきことは変えていきたい。当社は『一灯をともす』という言葉を大切にしており、社員のモチベーションを上げる評価制度の確立、守口大根の生産者の作りがいが生まれる施策を実行していく」
―自社の強みは。
 「守口漬を代表するメーカーの一社として、歴史に誇りがあり、お客様にも、商品の品質・歴史で信頼していただいている。扱う守口漬は、漬物の中でも一目置かれる存在だ。また当社は、みりん粕漬のブランド『鈴波』と、粕製品の『八幸八』、鈴波と姉妹店でお弁当を扱う『六行亭』があり、相乗効果がある。シナジーを加速させたい」
―守口漬の市況は。
 「お中元、お歳暮の市場が縮小する中で、既存のお客様に引き続きご支持いただけるよう、新たな取組を検討する。一方で、地元でも若年層を中心に、守口漬自体の認知度が下がっていると感じる。若年層へ守口漬のおいしさ、伝統性などの魅力に興味を持ってもらえるようPRもしていきたい」
―業界へ伝えたいことは。
 「守口漬、奈良漬、粕漬のPRは一社だけでなく、業界単位で行う必要があり、当社からは鈴木会長や私を中心に引き続き参加して参ります。皆様、よろしくお願い申し上げます」
 【青木茂夫新社長の略歴】▼1972年愛知県岡崎市生まれ▼早稲田大学大学院経営管理研究科でMBA取得▼ナイキジャパン社に25年勤務し、ディレクター職、経営会議メンバーを歴任後、2022年に大和屋守口漬総本家に入社。2023年10月に代表取締役社長就任。
【2024(令和6)年1月11日第5150号12面】

大和屋守口漬総本家 

1月1日 新年号 トップ・インタビュー

東京中央漬物株式会社 代表取締役社長 齋藤 正久氏

売上は前期比106・6%で推移
2回目の価格改定を想定
 東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(東京都江東区豊洲)の齋藤正久社長にインタビュー。2023年の振り返りや、24年3月期の業績等について話を聞いた。今期の売上はキムチと沢庵の動きが良く、11月までで前期比106・6%と好調に推移。また、値上げが一巡したことで数量に大きな変化はないものの、値上げによる増収効果が出ている。2024年物流問題については、安定供給を果たすため共同配送の可能性を探る意向を示した。
(千葉友寛)
  ◇      ◇
‐昨年を振り返って。
 「コロナの5類移行で人が外に出るようになり、飲食店や観光関係の動きが戻ってきた。インバウンドも増えてきているが、お土産の購入数は増えておらず、業界でも動きが良いところとそうでないところの差がはっきりとしている。また、人の足が地方に向いていることで地方のSMも良くなってきた。業界の値上げについては一巡し、数量は同じだが値上げした分だけプラスになっている。当社は昨年度の売上が良くなかったが、値上げによって底上げできている流れだ」
‐24年3月期の売上について。
 「昨年の2月から良い数字となり、11月までで前期比106・6%と好調に推移している。数量は大きく変わらないのだが、多くの品目で値上げが実施され、その分がプラスになっていると感じている。あと、飲食関係の業務筋の数字が伸びている。売れているのはキムチと沢庵。キムチは漬物の枠を飛び越えた存在として食卓に浸透している。沢庵は重量が前年の8割となっているものの、金額はほぼ同じとなっており、個食タイプやスライスタイプが増えていることが分かる。一本物はお得感があるが、食べきれないという側面もある」
‐キムチや沢庵以外の動きは。
 「梅干しはトータルで103%と微増している。今年は猛暑と残暑の影響もあり、7月から10月まで動きが良かった。生姜も伸びている。売れているのは紅生姜。夏に冷やし中華や焼きそばが売れたことで数字が伸びた。また、新生姜は引き続き安定した動きとなっている。浅漬も微増となっている。SMでは増えていないと思うが、当社は業務関係の得意先が多いことや野菜高の影響もあってプラスとなっている。総じて言えることは、漬物の需要は落ちてはいない、ということだ」
‐値上げの動きは。
 「海外原料や海外完成品は数回の値上げを実施しているが、国内原料や国内加工品については大体の商品が1回は値上げを実施して一巡した。しかし、その後も包装資材や調味料、電気代などは上がり続けており、4月には物流費も上がる。今の価格では採算が合わなくなる可能性が高く、多くの品目で2回目の価格改定が実施されるものと想定している。小売店との商談については、ベンダーの力も問われている。採算が合わない商売をしても意味がないし、他と同じことをやっていても価格の競争になる。漬物以外の商品を見ても、値上げを数回行っても必要とされる商品は売れ続けている。漬物が必要とされるのか、されないのか。単純に価格を上げる、ということだけではなく、食べる理由や価値をPRしていくことも重要で、漬物は198円や298円でなければ売れない、という固定概念を変えていく努力も必要だ」
‐2024年物流問題について。
 「当社も物流費が上がっていて、大きな問題ととらえている。当社は物流機能がないので、得意先とも話をしていかなければならないのだが、共同配送の可能性を探っていく必要が出てくる可能性もある。物流費が上がることも問題だが、運べる量が減ってしまうことも大きな問題。一社だけで解決できる問題ではないので、安定供給を果たすために協力し合える部分は協力していきたいと考えている」
‐2024年の抱負を。
 「これまでの当社のノウハウを活かして得意先に合う商品をメーカーとともに開発し、新しい商品を作っていきたいと考えている。商品開発と言っても、ただ商品を作るだけではなく、どこの売場で売るのか、売り先も選定するところまで踏み込んでやりたい。SMで売れても市場で売れない商品もある。また、その逆もしかりで、どこから声がかかるか分からないが、社内でも部門の枠を飛び越えて商品会議を行い、必要とされる商品をメーカーとともに作り上げて売場に落とし込んでいきたい。定番商品だけでは数量を増やすことができない。ならばこちら側から『このような商品もある』と提案していく必要がある」
【2024(令和6)年1月1日第5149号3面】

東京中央漬物 電子版「地域セレクション特別会員」
https://www.syokuryou-shinbun.com/pages/1293/

東海漬物株式会社 代表取締役社長 永井 英朗氏

キムチと沢庵が好調で増収
成長見据え世代交代を推進

 東海漬物株式会社(愛知県豊橋市)の永井英朗社長にインタビュー。第82期(2022年9月~2023年8月)を顧みて、第83期期首及び値上げに関する状況などについても話を聞いた。今期は選択と集中をテーマにアイテムの集約を図り、生産性を高めていく方針を示した。また、同社の新役員選任及びグループ会社の経営トップの交代で人事と体制が変わったことについて、次世代の成長を見据えて世代交代を推進していることを明かした。
(千葉友寛)  
  ◇   ◇
 ‐第82期決算について。
 「コロナで巣ごもり需要が増加し、過去最高の収益となった2021年8月期(80期)と比較すると、81期は減収減益となったが、82期は再び盛り返して増収となった。様々なコストが上がっていることもあり、利益については厳しい状況が続いているが、目標とした数字はクリアすることができた。増収となった主な要因としては、下期にキムチが伸長したことが上げられる。6月にテレビで『キムチ』が取り上げられたことや7月の増量企画が追い風となり、月間の売上で見ると7月は過去最高の数字となった。また、キムチに続いて沢庵の売れ行きも良かった。けん引しているのはカップのスライス沢庵」
 ‐83期のスタートについて。
 「キムチは引き続き好調だが、値上げした『きゅうりのキューちゃん』が非常に厳しい状況である。しかしながら数量は大幅に落ちているものの、98円の特売が減って店頭売価が上がっていることを考えれば値上げの効果は出せていると思っている。2月以降は新しいCMを入れたり、販促を行っていく予定だ。上期はまだスタートしたばかりだが、キムチと沢庵が引き続き好調で現時点では売上、利益ともに予算を達成している」
 ‐浅漬の動向について。
 「選択と集中をテーマに、数字が上がっている『ぷち浅漬』シリーズをしっかりと売り込んでいる。また、液なしでそのまま食べてもよし、ひと手間加えておかずになる新ジャンルの浅漬製品の第2弾を3月に発売する予定。この商品は当社の説明不足でコンセプトが伝わらず支持されなかったが、新しい需要の開拓を目指して再挑戦する」
 ‐本漬の動向は。
 「原料価格が上がっている部分もあるが、相変わらず為替の影響が大きい。直近では円高傾向になってきているが、1ドル110円の時と比較するとまだまだ円安である。『きゅうりのキューちゃん』は内容量を減らして価格も上げた。今後はきゅうりを中心に様々な海外原料手当てのやり方も変えていく必要がある。国産大根については、当社では昨年1月に沢庵の価格を約10%上げたのだが、数量は落ちなかった」
 ‐製造コストが上がり続ける中、今後の値上げの動きについて。
 「製造コストに加え『2024年物流問題』は大きな問題だ。漬物でも漬物以外でも日配の共同配送を希望している企業があれば、当社も検討していきたいと考えている」
 ‐原料面と製造面の課題は。
 「価格要因と天候要因の影響が大きくなるが、国内については産地を広げて選択と集中に取り組む。新しい産地については農業に進出する、ということではないが、拡大に向けて動いていく。製造面については人手の部分が大きい。当社では全体の約50%が中途採用。工場もパートの比率が高くなっている。設備投資をすることは可能だが、それを活用できるほどの生産量や人材を確保できるのか、という問題がある。近年は転職がスキルアップにつながるということもあり、ポジティブに捉えられている。そのような意味では中途で人材を確保しやすい環境でもあるということだ」
 ‐今後の戦略について。
 「営業面では売り込みたい商品をしっかりと売っていく、ということ。流通が目まぐるしく変化する中で、売価も含めてしっかりと対応していく必要がある。今期のテーマとしては選択と集中。利益至上主義ではないが、今後の展望が見えない商品は止める、という決断も必要だ。留め型やPBもあるが、最低でもここまでは利益が出ないとやれない、という線引きをしっかりやる、ということ。当社は浅漬の製造を行ったことでアイテム数が増えたのだが、今後はアイテムの集約を図り、生産性を高めていく。不得意な分野の商品については、他社の力を借りてOEMでの供給も視野に入れている」
 ‐御社をはじめグループ企業で新役員が選任され、人事と体制が変わった狙いは。
 「一言で言えば世代交代。私が考えていた計画よりは2年遅れたが、今回の人事で東海漬物の常務が2人退任し、新しく3人の取締役が就任した。グループ会社においては3社の社長が退任し、東海漬物の3人の常務がグループ会社の社長に就任した。いつの時代も同じだが、人の入れ替わりは必ずある。このタイミングを見誤ると大変なことになる。新体制で新たな追い風が吹き、グループ全体の成長につながることを期待する」
【2024(令和6)年1月1日第5149号5面】

東海漬物
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