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インタビュー2024

塩特集インタビュー

日本特殊製法塩協会会長(マルニ株式会社代表取締役社長)脇田 慎一氏

塩の高付加価値化が必要 懇話会と連携し効率的活動を
 特殊製法塩協会の脇田慎一会長(マルニ株式会社代表取締役社長)にインタビュー。脇田会長は、昨年7月頃に実施された価格改定は概ね受け入れられているものの、塩の消費量減は避けられないものとし、高付加価値化の必要性を指摘する。(大阪支社・小林悟空)
  ◇      ◇
‐特殊製法塩の動きについて。
 「昨年7月に当社を含め多くの企業が価格改定を実施した。原料塩や各種資材、電気代や輸送費などコスト上昇が襲いかかり、価格維持は困難な状況だった。大半のお客様には理解いただけているのだが、一部では実現できておらず、また売場価格にはあまり反映されていないのが実情だ」
‐各社の対応は。
 「人口減や家庭内調理の減少などは加速しており、家庭用塩の消費量を増やしていくことは容易ではない。付加価値を追求していく動きが強まっていると感じる。塩は安くていつでも手に入る物という感覚が根付いたままだが、その固定観念を崩せたこだわりの商品はよく売れているようだ」
‐御社の取組は。
 「同様に、高付加価値商品に注力している。中外食向けの小袋塩は引き続き成長している。当社は製塩を行わず原料塩を仕入れて、ブレンドすることを生業とする小規模メーカーだが、その分小回りが利く。顧客の要望に応じた小ロット生産も可能な点が評価いただいている。また今年7月から代表商品『エンリッチ塩』の生産設備を刷新し、商品包装もより使いやすいものへリニューアルする予定だ」
‐協会の活動は。
 「間もなく任期の2年問を終えようとしているが、全国塩業懇話会と連携する必要性を痛感した。当協会のメーカーが抱える問題は結局のところ、塩の流通全体に関わる。関連省庁への意見具申など実務的な活動は懇話会に集約していくのが効率的ではないか。当協会としては、加盟者の意見を残さず掬い上げて懇話会へ持ち込めるような仕組み作りと、『適塩』普及のための消費者向け活動に注力していきたい」
【2024(令和6)年3月21日第5157号9面】

日本特殊製法塩協会
https://www.tekien.net/

全国塩元売協会会長・塩元売協同組合理事長・全国塩業懇話会会長
株式会社ソルト関西代表取締役社長 山本博氏

塩消費量は減少を前提に 物流問題や災害時対応に指針
 株式会社ソルト関西(山本博社長、大阪市中央区)は、平成13年に関西域内の卸売会社6社が事業統合して設立された塩の元売企業。山本社長は、全国塩元売協会会長、塩元売協同組合理事長、そして塩の各団体が垣根を越えて業界を取り巻く共通課題へ取組むべく結成された全国塩業懇話会初代会長の要職を務めている。山本社長は塩の消費量は減少していくことを前提とした企業経営の必要性や、懇話会で取り組む課題について語った。
  (大阪支社・小林悟空)
  ◇      ◇
‐塩の出荷動向は。
 「当社の場合、出荷量の多い食品用、融雪用とも今年度は減少した。食品用に限って見ても昨年比95%ほどと厳しい結果となった。塩はあらゆる食品に入っているものであり、またその食品の質を大きく左右するため、これほどの減少幅は異例と言える。日本の人口減少と、フードロス削減の動きが影響しているのではないかと見ている。どちらも止めようのない問題であり、減塩化の逆風も重なり、塩の消費量はますます減っていくということを前提としなければならない」
‐御社の対応は。
 「塩以外の物、グルソーなどの調味料やマスク等の資材関係といった幅広い商材を扱うことで売上の維持拡大を図っている。塩と一括して納入できればお客様にとっても管理負担が軽減できる。飲食店から大規模工場まで食品事業者なら幅広くお取引してきた強みを活かせている。今後もお客様の要望があれば、扱う品目は増やしていく方針だ」
‐懇話会の活動は。
 「懇話会は日本塩工業会、塩元売協同組合、塩輸送協会、全国輸入塩協会、日本特殊製法塩協会5団体が連携した団体として、分野横断的に課題解決へ向け議論を重ねている。昨年10月には『物流の適正化・生産性工場に関する自主行動計画』を策定した。これは物流2024年問題による国内物流への影響を抑制し、塩の安定的な供給を守ることを目的としたものであり、物流業務の合理化、運送契約の適正化、労働環境改善などについて指針を定めている。また中期的課題として、カーボンニュートラル化を見据えた流通網の再整備やモーダルシフト、共同輸配送、物流DXにも言及している」
‐塩の地位向上は。
 「塩が人体に必要であることは各企業や『くらしお』の御尽力により、ある程度知られるようになってきたと思う。とはいえ塩の摂取基準(男性7・5g未満、女性6・5g未満)が緩和されることはないだろうし、先述の通り人口減少やフードロス削減といった社会的変化の影響もあるので、塩消費量を増加に転じさせるのは難しそうだ。しかし、日本の塩の品質の高さや、安定供給の価値をもっと知ってもらうという意味ではまだまだ余地はある。海外市場の開拓も視野に入る。日本の塩は異物混入や汚染がなく、世界トップレベルの品質を持つことを主体的に発信していけるような取り組みも考えていきたい」
【2024(令和6)年3月21日第5157号9面】

全国塩業懇話会
https://www.jp-salt-assoc.jp/

群馬特集インタビュー

群馬県漬物工業協同組合 副理事長 輸出委員会委員長 小山 勝宏氏

補助金で輸出事業展開へ 輸出重点品目に漬物追加を
 群馬県漬物工業協同組合(武井均理事長)では、組合員の海外輸出を後押しするため、2022年秋に輸出委員会を設立した。組合副理事長で輸出委員会委員長を務める小山勝宏氏(株式会社コマックス社長)は、委員会設立の経緯や、組合として補助金を受託し、海外での試食販売など輸出に関する事業を行っていく目標について語った。(藤井大碁)  
ー輸出委員会設立の経緯。 
 「将来的に人口が減少し国内マーケットが縮小していく中、輸出への関心は高まっている。2018年には、群馬県にも独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)の貿易情報センターが開設され、県内メーカーにとって輸出はより身近なものになっていた。そのような中、群馬県漬物工業協同組合の会員の一部も加入している群馬味噌醤油組合が、輸出に関する補助金により海外で輸出の取組を行っていることを聞いて、漬物組合でも同じようなことができないかと考えたのが設立のきっかけとなった」
ー現在の取組。
 「定期的に輸出に関するWEB会議を実施し、情報交換を行っている。また2月に開催された組合新年会においては、JETRO群馬貿易情報センター所長の宮﨑了一氏に『群馬から世界へ~今だからこそ考える海外ビジネス~』という演題でご講演頂いた。世界経済の変化や、中小企業の海外展開の現状、今後の展望などについて分かりやすく解説してもらい、組合員から大変好評だった」
ー今後の目標について。
 「当面の目標は組合として補助金を受託し、海外での試食販売など輸出に関する事業を行うことだ。前期は2つの補助金に応募したが、残念ながらどちらも不採択となった。不採択の要因は一つではないと思うが、農林水産省が定める輸出重点品目(28品目)の中に漬物が入っていないことは、補助金の採択を難しくしていると考えられる。全漬連や漬物議連を通して、重点品目に漬物を加えて頂けるよう働きかけていくことが必要ではないか。また、漬物の賞味期限が短いことも輸出のハードルを高めていると推測している」
ー現在の輸出状況。
 「弊社ではJETROの商談会において、約20カ国のバイヤーと商談実績があるが、梅干は酸味が強く、輸出へのハードルは高いと感じている。だが、カリカリ梅は梅干ほど酸っぱくなく、味わいが受け入れられやすいことに加え、群馬県の生産量が全国1位であるため、そこを切り口に海外に群馬の梅ブランドを広めていくことができると考えている。現在、おにぎりが海外においても人気なので、おにぎり具材として、梅が人気になる可能性もあるのではないか」
ー最後に。
 「県内には賞味期限が一年以上あるロングライフの福神漬を製造している企業もあり、そうした商品をお手本にすることで、各社が日持ちする漬物の開発を目指していきたい。賞味期限の短い浅漬やキムチについても、冷蔵・冷凍で保存して現地に送るための技術や設備のための補助金を受託できる可能性もある。組合員一丸となり、JETROの力も借りながら、群馬の漬物を少しでも多く輸出できるよう取り組んでいきたい」
【2024(令和6)年3月11日第5156号8面】

群馬県漬物工業協同組合HP
https://guntsuke.com/

東京特集インタビュー

東京中央漬物株式会社 代表取締役社長 齋藤 正久氏

特産品の減少を懸念 インバウンド需要に商機
東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(東京都江東区豊洲)の齋藤正久社長にインタビュー。年末年始の売れ行きや値上げの動き、6月から完全施行となる漬物製造業の許可制などについて話を聞いた。許可の取得にはHACCPの考え方に基づく衛生管理を行うための設備投資などが必要になってくることから、特に地方の小規模事業者への影響を懸念。地方の特産品も多く取り扱っている同社の齋藤社長は、悩みを抱える事業者をサポートしていく意向を示した。(千葉友寛)
   ◇   ◇
‐年末年始の売れ行きは。
 「12月は昨年と同じくらいで推移したが、1月は少し下がって前年比99%となった。勢いが落ちたというよりは昨年の1月から3月が良かったという印象で、99%くらいが本来の数字だと思っている。昨年は値上げもあったが、値上げによって消費者の商品に対する目が厳しくなり、必要なものしか買わないようになってきている。少し前のことだが、自宅の近くにスーパーがオープンした。オープン直後は特別価格で販売していたこともあってすごい賑わいを見せていたが、少し時間が経つとあれだけいた人が全くいなくなった。買い物に対する意識はシビアになってきており、スーパーも新店を出しているところは売上が増えていると思うが、新店が出なくなるとより厳しい状況になっていくと感じている」
‐値上げの動きは。
 「昨年の11月上旬から見ると、2月から5月にかけて値上げの打診があったのは64社。その半分以上が業務用の商品だった。コロナの5類移行後、業務用関係が回復し、動きが良くなっていることも影響している。値上げの理由については4月からの物流費の上昇に伴うものもわずかながらあるが、全体のコストから見ると大きな割合にはならないため、多くのメーカーが吸収する動きとなっている。春夏は様子を見て秋冬のタイミングで検討するところが多くなる、と見ている。一昨年から昨年にかけて値上げを行った後もコストは上がり続けている。漬物もカテゴリーによっては3回、4回の値上げを行っているものもあるが、大体の品目は一巡していて二巡目をいつ行うか、というところがポイントだ」
‐6月から漬物製造業が許可制になる。
 「得意先の要望もあり、1月中旬から製造許可取得に関するアンケートを行っている。アンケートの回収率はまだ6割程度だが、その内の8割はすでに許可を取得しているか申請中ということだった。残りの2割はこれから対応する、ということだったが、小規模事業者については事業を継続しないところも出てくると見ている。後継者が不在、人手不足、設備投資といった問題に加え、持続可能な商売ができているのか、ということもある。利益を確保しなければ設備投資をすることもできず、製造許可が下りない可能性もある。地方の特産品は小規模事業者が製造しているケースが多く、製造許可が取得できなければ特産品の減少につながり、その地域における食文化が継承されなくなる可能性もある。当社は日本の伝統的な漬物を後世に残したいと思っており、そのような商品を取り扱えなくなれば当社の魅力もなくなってしまう。地方で眠っている商品を掘り起こし、流通に乗せていくことは当社の責務でもある。事業の継続や製造許可取得で悩んでいる事業者の方は是非、声をかけてほしい」
‐インバウンド需要は。
 「浅草や築地には多くの外国人観光客が訪れており、インバウンド需要は活況となっている。2月1日には当社が所在する豊洲に新しい商業施設『千客万来』がオープンし、国内外の観光客で連日賑わっている。この3カ所は、日本の文化を発信する重要な拠点だと感じている。日本の食は海外の人からも高く評価されていて、外国人も列を作って並んでいる。土産店よりも飲食店の方が動きが良く、そこに付け合わせや試食など、漬物を入れられないかと思案している。ピンチもあるが、チャンスもある。自分たちの強みを再認識し、商機を逃さないように取り組んでいくことが重要だ」
【2024(令和6)年3月1日第5155号4面】

東京中央漬物 電子版「地域セレクション特別会員」
https://www.syokuryou-shinbun.com/pages/1293/

2月11日号 SMTS特別インタ

秋本食品株式会社 代表取締役社長 秋本 善明氏

食卓やニーズの変化捉える 「選択と集中」で商品見直し
 秋本食品株式会社(神奈川県綾瀬市)の秋本善明社長にインタビュー。浅漬やキムチの売れ行きなどについて話を聞いた。今年は原料や人手の不足、2024年物流問題など、対応しなければならない課題が山積しているが、「選択と集中」の取組を推進し、ブランド力を生かした展開を行っていく意向を示した。また、魅力ある売場を作るために見せ方や食べるシーンをイメージさせる提案の必要性を強調した。(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐浅漬とキムチの売れ行きは。
 「浅漬は年間を通して売れ行きは良くない。特に昨年10月からは野菜が安かったことも影響した。年末商材のなますや千枚漬もいまひとつだった。だが、年末だけはカップの白菜やゆず白菜、胡瓜、大根と全般的に動きが良かった。キムチは昨年12月までを見ると前年をクリアしている。10月以降は少し落ちているが、一昨年の動きが良かったこともあり、その反動だと見ている」
 ‐その他の商品の動きは。
 「POSデータを見ると梅干しは昨夏の猛暑の影響で売れたが、通年では微減となっている。本漬は良い動きが続いているが、酢漬や沢庵はやや減少傾向となっている。沢庵はカップのスライスが主流になったことによって復調してきており、容器革命によって活路を見出した。全体としては1%程度のマイナスとなっている」
 ‐ニーズの変化について。
 「物価の上昇に賃金のアップが追いついていないため、消費者の生活防衛意識はより強まっている。量販店では安いところやディスカウント店が好調だ。大企業は賃金のアップを表明しているが、我々のような企業はとても追いつかない。個人や企業だけではなく、産業としても格差の広がりを実感している」
 ‐売場によって異なる動きもある。
 「惣菜売場で販売されている漬物は比較的売れているようだ。目的を持って漬物売場に来る人もいるが、食シーンにマッチしているかどうかが重要で、惣菜売場に漬物があれば食べるシーンをイメージできて購入につながる。惣菜売場の漬物は液なしでスライスされたカップ製品が多く、蓋を開けるだけで食べられる簡便性や即食性の高い商品。液を切る作業や包丁を使うことは手間になるため、このようなニーズは以前よりも確実に強まっている」
 ‐漬物の食べ方や売場の変化について。
 「漬物は箸休めやお茶請けとしても利用されてきたが、いまの食卓にその要素が必要とされているのかどうか。世帯人数や食べる量、食生活の変化など、いまの食卓のことをもっと研究する必要がある。ご飯のお供という部分については、なくなることはないと思っている。1月7日にご飯のお供をテーマにしたテレビ番組が放送されたのだが、紹介された商品はかなり動いたと聞いた。量販店の売場でもご飯に合う商品やお酒に合う商品のランキングを作成し、消費者に情報を伝えるサービスがあってもいいと思う。画一化された売場でただ置いてあるだけでは売れない。美味しさや価値を伝え、食シーンをイメージさせることが必要だ。半期に一度売場を変えただけでは面白くないし、変化はほとんどない。売場に興味を持ってもらうためにも見せ方も含めた変化が必要だ」
 ‐2024年物流問題について。
 「物流費については一気に上がらず徐々に上がっていく流れになると見ている。物流費の上昇を製品価格に転嫁できるかということについては、トータルで見てどれだけ上がるかということにも関係するが、物流費が上がった分は製品価格に転嫁するべきだと考えている。企業の収益が落ちれば賃金が上がらず、物価高に追い付かないという流れになる」
 ‐値上げや今後の方向性は。
 「値上げをして売上が減った場合、それに見合った商売をしなければならない。市場性がなくなった商品を復活させることは至難の業だが、それでもメーカーとしては売れる商品を作り続けなければならない。当社としては選択と集中の取組で商品を見直し、主力の『あとひきだいこん』、『王道キムチ』、『オモニの極旨キムチ』を軸にそのブランド力を生かした姉妹品等の展開を行っていく」
 ‐漬物の魅力や強みについて。
 「漬物の最大の魅力は、植物性乳酸菌を豊富に摂取できる発酵食品であること。これは他の食品や業界にはないもので、漬物の特権とも言える。近年、キムチが大きく伸長した要素でもあるが、そのような情報をもっと発信し、腸活の観点からPRしていくことが重要だ」
【2024(令和6)年2月11日第5153号2面】

秋本食品 電子版 バイヤー必見!イチ押しページ
https://www.syokuryou-shinbun.com/pages/896

株式会社五味商店 代表取締役社長 寺谷 健治氏

過去最多157社が出展 “こだわり商品”市場拡大続く
 『スーパーマーケット・トレードショー2024』(2月14日~16日・幕張メッセ)において、全国から厳選した食品を紹介する株式会社五味商店(千葉県我孫子市)の「こだわり商品コーナー」(会場9ホール)は、今回で25回目の出展となる。【小間番号:9‐102】
 同ブースには今回、過去最多となる157社が出展、全国各地からこだわり商品が集結する。現在の消費動向である“メリハリ消費”が追い風となり、こだわり商品の市場は好調をキープしている。五味商店の寺谷健治社長は、今後、ベースアップによる賃金上昇が進めば、こだわり商品の市場はさらに拡大していくとその見通しを語った。
(藤井大碁)
   ◇    ◇  
―SMTSへの出展は今回で25回目となる。
 「2000年からブースを出展し、様々なことを勉強させて頂いた。継続的に“こだわり”という言葉を使い続け、その価値を訴求し続けた結果、この25年間で“こだわり”という言葉が市民権を得た。生前、毎回ブースに足を運んでくださったセブン&アイ・ホールディングスの伊藤雅俊名誉会長や全国スーパーマーケット協会の皆様を始め、たくさんの方々のおかげで今の五味商店があると感謝の気持ちでいっぱいだ」
―今回の見どころは。
 「昨年より15社増加し、過去最高の157社が出展する。そのうち行政関係の出展が58社を占める。能登半島地震により被災した石川県からは、7社が出展する予定だったが、そのうちの1社が震災の影響で出展できなくなった。まずは被災地の1日も早い復興を願うと共に、我々も展示会を通して、石川県の出展者と一緒に頑張っていくことでエールを送りたい」
―ブース内の特設コーナーについて。
 「特設コーナーでは、これから旬を迎える“初夏のレモン”と“新緑の抹茶”をテーマに関連商品を提案する。また、“TOPPIN’JAPAN”コーナーでは、ご飯のお供になる瓶詰商品、調味料、ドレッシングなど、ご飯や料理にプラスすることで食卓が豊かになるこだわり商品を紹介する」
―現在の消費者ニーズは。
 「アフターコロナになり、消費者のライフスタイルや価値観が大きく変化している。消費の二極化が進み、“メリハリ消費”が顕著になっている。安いPB商品が売れているが、高いこだわり商品も売れている。以前は、十人十色だった消費形態が、一人の消費者が、安いものを購入しながら、自分が美味しくて食べたいものは高くても購入する、という“一人十色”の消費形態に変化している。そのため、小売店では、両極のニーズに対応していく必要があり、PB商品の拡充などにより価格対応を行うと共に、1000円台などの高付加価値商品の取扱いを増やす店舗も出てきている」
―こだわり商品の動き。
 「弊社の直近3カ月の売上は前年比107%と好調に推移している。メリハリ消費が追い風になり、こだわり商品の市場は着実に成長している。今後のベースアップにより賃金が上昇していけば、さらにメリハリ消費が顕著になり、こだわり商品の需要は増加していくものと考えられる。そうした時代に向け、どういった商品を提案できるかが、小売店にとっては今後の重要なテーマになるのではないか」
―新たな取組について。
 「昨年4月にオープンした新宿高島屋の“Meetz STORE(ミーツストア)”に弊社から2アイテムを出品している。同売場は、購入前に商品を試すことができ、オンラインで購入するショールーミングストアで、雑貨や化粧品などと共に食品を取り扱っている。まだまだ売り上げは微々たるものだが、こうした新たな販売チャネルに積極的にチャレンジすることで、将来への種蒔きを行っていきたい」
―最後に。
 「我々の最大の目標は、『こだわり商品コーナー』から1社でも多くの成功企業を輩出し、地域活性化に貢献すること。その企業の売上が伸び、地元に新工場を建設することができれば、新たな雇用が生まれ、地域貢献につながる。実際にこれまで展示会への出展を機に、売上が20倍以上に拡大したケースもある。成功のために必要なのは、経営力・販売力・商品力の3つの力のバランスで、このうちどれかが欠けても競争に勝てない。逆に、この3つの力があれば、『こだわり商品コーナー』に出展することで、爆発的な売上増加のチャンスがある。今回も、展示会への出展を機に、地域活性化に貢献する企業が誕生することを期待し、全力でバックアップしていく」
【2024(令和6)年2月11日第5153号5面】

五味商店 電子版 地域セレクション特別会員
https://www.syokuryou-shinbun.com/pages/477/

株式会社山重 代表取締役社長 杉山 博氏

待ったなしの物流問題対応 消費者需要にマッチした商品を提案
 株式会社山重(杉山博社長、東京都葛飾区)は、漬物をはじめ日配のプロとして全国に物流網を持つ一次荷受問屋。取引先は全国44都道府県、仕入れ件数は346件と地方の名産品も数多く取り扱っている。同社は単に商品を物流に乗せるだけではなく、メーカーと商品を共同開発して企画・売場提案を行いながら量販店、外食、中食、ベンダーなど様々な販売チャネルに供給してきた。開発力と提案力を併せ持つ同社は業界内外から高く評価された歴史があり、厚い信頼を寄せられている。業界を取り巻く環境は厳しさを増しているが、杉山社長は改めてメーカーとともに消費者に求められる商品を作っていく姿勢を強調した。
(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐今期の業績は。
 「今期の売上は12月までで前年比増となっており、まだ2月と3月の動きは読めないが、通年で増収、利益は前年並みと予想している。消費者の需要にマッチした商品を提供できたことが結果的に増収につながったと考えている」
 ‐課題が山積する中、利益の確保について。
 「エネルギー価格や物流費の上昇で利益の確保は難しくなってきている。5月から再び電気代が上がる見通しで、これまで以上にコストダウンを図っていく必要がある。2024年物流問題は大きな問題で、運べる量が減って物流費が上がっても商品の価格に簡単には転嫁することはできないため、様々なことを視野に入れて取り組んでいきたいと考えている。当社は三郷に物流センターがあり、全国のメーカーの商品を一括管理して東日本を中心に全国へ供給できる。小分け販売や小回りの効く供給も可能だ。流通が短絡化にあると言われる今日でもメーカーだけではなく、問屋や流通からも山重が間に入ってくれている方がありがたい、と言っていただける企業で在り続けたい」
 ‐物流費上昇に伴う値上げの動きは。
 「1月下旬の時点で値上げの商談はほぼないので、春夏の棚割りで値上げは実施されない。次のタイミングは早くても秋冬向けとなる。漬物についてはこの数年で適正な価格になり、海外原料や海外完成品は2回、3回値上げした商品もあるが、国産や国内加工品も含めて一巡した流れとなっている。だが、その後も原材料や調味資材などのコストが上がり続けており、適正価格にするために2回目の値上げが必要な状況となっているが、競合の動きや消費者離れを招く可能性もあるため、慎重な判断が必要と考えている」
 ‐今後の値上げの見通しは。
 「数度の値上げを経ても売れ行きが落ちていないマクドナルドやパン製品の動きを見ても分かるように、必要なものや生活必需品、食べる価値のあるものは値上げをしても売れ続けるが、漬物は主菜ではなく副菜なので値上げをすると数量の減少につながりやすい。ブランド力のある商品でも値上げ後に数量が大幅に減少した例もあり、積極的に値上げに動いているメーカーは少ない。困難な状況下こそ『消費者が何を求めているのか』という構造を分析することが重要であり、必要とされる理由や食べる動機を消費者に訴求することが大切で、健康のために野菜を摂取するという観点の他、乳酸菌、発酵食品、食物繊維など有用なポイントをアピールしつつ、料理素材としても利用できることをPRし、用途の拡大を目指したいと思っている。若い人はテレビを見ないので、情報を発信するツールも考えなければならないし、売り方についても根本から見直す必要がある」
 ‐来期の見通しと抱負を。
 「昨年5月にコロナが5類に移行し、外食が回復してきていることから業務用にも力を入れていきたいと考えている。また、引き続きドラッグストアが伸びると見ている。薬品や化粧品といった主力商品に加え、食品の構成比も上がっているが、まだまだ伸びる要素はある。量販店の漬物売場は頭打ちで変化が求められている。我々も含めて消費者のニーズをキャッチして売場に落とし込んでいくことが重要で、商品を橋渡しするだけの問屋は必要とされない。日本は他国に比して商品が多品種小ロットが好まれており、ニッチな需要も今後増加すると予想している。消費者の需要が何かを調査し、その情報を関係各位にお伝えすることにより、商品を提供し続ける『新たな問屋』を目指していく」
【2024(令和6)年2月11日第5153号15面】

電子版 地域セレクション特別会員 山重

1月21日号 DTS特別インタビュー

(一社)全国スーパーマーケット協会 事業部流通支援課兼事業創造室 チーフディレクター 籾山朋輝氏

売場テーマは価値創出
おにぎり部門エントリー大幅増

 デリカテッセン・トレードショー2024(以下、DTS)が2月14日から16日まで幕張メッセにて開催される。DTSは中食産業の最新情報を発信する商談展示会。主催者企画「お弁当・お惣菜大賞」は近年注目度が上昇、売場の販促ツールとして大きな存在になりつつある。DTS会場内では今年も受賞商品の一部を実食できるフードコートを展開する予定だ。DTSを主催する一般社団法人全国スーパーマーケット協会事業部流通支援課兼事業創造室チーフディレクターの籾山朋輝氏にインタビュー。籾山氏は『お弁当・お惣菜大賞』の今年のエントリー商品の特徴について言及。商品開発の傾向が〝価格訴求”から〝価値訴求〟へ変化していることを挙げた。(藤井大碁)
 ーデリカ売場の販売動向について。
 「値上げが進んだことにより、惣菜カテゴリーの売上は、SM3団体統計調査の直近3カ月のデータを見ても、既存店で前年比3~6%増と好調が続いている。だが、同時に人件費や製造コストも上昇しており、利益面は売上ほどには伸びていないのが実情だ。全体的には、即食や簡便性を求める生活スタイルに加え、家飲みも定着しており、引き続きスーパーの惣菜への需要は堅調に推移していると言えるのではないか」
 ー今回のDTSの見どころ。
 「出展者数は前回よりやや増加し、50社・団体、238小間の規模になる。新規出展も10社程あり、中食産業に特化した様々な最新情報を発信するので是非ご注目頂きたい。『お弁当・お惣菜大賞』の受賞商品の一部を実食できるフードコートを今回も展開する他、デリカ関連のメニューを来場者に食べ比べしてもらう『食べくらべ体験 STAND』では、バックヤードでの導入が進むスチームコンベクションオーブンの活用メニューとして、注目が高まっている『ドリア』を試食して頂く予定だ」
 ー「お弁当お惣菜大賞2024」エントリー商品の特徴。
 「今回のエントリー商品を見てみると、極端な価格訴求型の商品が減っている。製造コストの高騰により、価格とクオリティの両立が難しくなった。その代わりとして、今回目立ったのが、メニューや食材に一捻り加えて、オリジナリティを演出した商品のエントリー。ご当地食材を使用したり、一つの弁当内で食べ比べが出来たり、様々な工夫を凝らすことにより価値を創出した商品が多く入賞している。またカテゴリーごとの特徴では、おにぎり部門のエントリー数が大幅に増加した。物価高で商品の一品単価が上昇する中、200~300円で一食完結できるこだわりのおにぎりのエントリーが増えた。一方、各国料理部門のエントリー数が減少した。コロナ禍で海外旅行に行けなかったため、家で海外の料理を食べて、旅気分を味わうというトレンドがあったが、そうした売場の企画が減少していることが見て取れる」
 ーデリカ売場の課題。
 「引き続き人手不足が大きな課題となっている。デリカ売場の商品を全て自社製造することは難しく、力を入れるもの、入れないものを見極めて、自社で作り切れない部分については、仕入れ商品をうまく活用していくことが求められている。また、コロナ前のデリカ売場でよく見られていた裸売りが未だ復活できないというのも売場にとっては課題の一つだ。裸売りができれば、華やかでシズル感のある売場が演出できるため、現在のテーマとなっている価値の創出にも繋がる」
 ー今後について。
 「即食や簡便性へのニーズは強く、惣菜への需要は引き続き高まっていくのではないか。近年、冷凍食品の進化も著しく、カテゴリーによっては惣菜と冷凍食品の棲み分けが進んでいく可能性もある。また、物価は今後も上昇していくと思うので、これまで以上に創意工夫を重ね、付加価値の高い商品の開発が必要になる。こらから先は、完全にコロナ明けの環境となるので、今年は、今後のデリカマーケットを占う意味でも重要な1年になると考えている」
【2024(令和6)年1月21日第5151号6面】

デリカテッセン・トレードショー公式サイト
https://www.delica.jp/

1月21日号 この人に聞く

神尾食品工業株式会社 常務取締役 神尾繁樹氏

漬物製造管理士1級合格
会社をブラッシュアップ
 全日本漬物協同組合連合会が昨年10月に実施した漬物製造管理士試験で1級に合格した神尾食品工業株式会社(神尾賢次社長、神奈川県小田原市飯泉)の神尾繁樹常務取締役にインタビュー。試験にチャレンジした目的や試験を通じて学んだことなどについて話を聞いた。また、小田原の名産である桜花漬や十郎梅の生産や製品の製造については、「共存の意識で対応していく必要がある」と強調した。(千葉友寛)
◇    ◇
 
漬物製造管理試験の1級に合格した。
 「これまで3級、2級の試験を受けて合格していたのだが、コロナの影響で1級試験が実施されず昨年10月に試験を受ける運びとなった。当社に1級の取得者は1人いるのだが、会社の経営に携わるものとして法令や品質管理、微生物、分析関係の内容を勉強したいと思っていたので試験を受けることはマストだと考えていた」
 
ー合格した時の心境。
 「やはり嬉しかった。試験に向けて半年くらい前から帰宅後や仕事の合間の時間を利用して勉強した。もちろん、毎日時間が取れるわけではないので、やれる時に少しずつ勉強していた。漬物は種類が多く、歴史もある。勉強を通じて目的としていたこと以外にも多くのことを学ぶことができた。衛生管理についてもHACCPの内容を知っているのと知っていないのでは製造現場を見る目が変わってくる。全て担当者に任せていればいい、ということではなく、経営者としても知識を持っていた方が様々な視点から会社をブラッシュアップすることができる。当社は梅干しの製造が多く、浅漬に携わることはないのだが、試験を通じて浅漬製造のプロセスなども学べたことは良かったと思っている。自分を磨きたい、知識を増やしたい、という意欲のある方は、経営者でも営業マンでも事務の方でも是非、チャレンジしてほしい。試験を通じて実務に活かせることは多々ある」
 
ー技能実習制度について。
 「現在、当社に技能実習生はいないのだが、日本全国で人手不足が叫ばれている中、今後は技能実習生の受け入れも視野に入れていく必要がある。技能実習生制度はこれからどのような形になっていくか分からないが、当社としても業界としても注視していく必要がある」
 
ー桜花漬の動きは。
 「コロナの5類移行でインバウンドも回復し、末端の製品が動き出している。原料の出荷は前年を上回っていて順調なのだが、生産者の減少や収量減などのため不足気味となっている」
 
ー小田原の梅について。
 「小田原の曽我梅林を代表するオリジナル品種の十郎梅は、手もぎのため収穫にも製造にも手間がかかる。十郎梅は皮が破れにくく、果肉が多いという特徴があり、産地性も合わせて紀州南高梅にはない部分をPRすることができる。しかし、他産地と同様に生産者の減少や高齢化が問題となっている。桜の花や梅を継続して生産していただけるよう、我々や流通も含めて共存の意識で対応していく必要がある」
 ー新年の抱負を。
 「私は入社12年目で、常務取締役に就任して6年目になるが、まだまだ実績がなく学ぶことが多いと感じている。現在は業務の全てを見ていて、人事、現場の合理化、社内の整備、原料の対応などに取り組んでいる。3月に34歳になるが、製造管理士の1級合格は一つのステップで、商品開発や実務に活かせるようにもっと力をつけていきたいと思っている。業界の皆様方におかれては、引き続きご指導、ご鞭撻をお願いしたい」
【2024(令和6)年1月21日第5151号6面】

神尾食品工業 http://kamio.co.jp/

株式会社天政松下 代表取締役社長 松下雄哉氏

SNS代行「ゼロべー」
認知度向上、人材採用で成果
 株式会社天政松下(松下雄哉社長、大阪市西淀川区)はSNS、特にYouTubeやTikTokといった動画サービスでの発信に注力し、認知度向上や人材採用で成果を上げてきた。この度その経験を活かし、動画制作・SNS運用代行を行う新会社「株式会社ゼロべー」を立ち上げた。松下社長は企業のリクルートやブランディングにおいて動画SNSの活用の重要性を語った。
(大阪支社・小林悟空)
◇    ◇
 ‐自社のSNS運用について。
 「天政松下としてインスタグラムやX(旧ツイッター)は以前から運用していたが、2022年春から大学ベンチャーで起業したメンバーとYouTubeやTikTok動画にも着手した。動画は文字や写真と比べて手間はかかるが、その効果は十分にある。特にYouTubeショートやTikTokはバズりが起こりやすく拡散性が非常に高い。認知や興味の拡大という側面では非常に有効だ」
 ‐動画投稿の効果は。
 「一番顕著なのが人材採用への影響。動画投稿以降、求人媒体サイトからの応募率は全国平均の倍近くに跳ね上がった。動画で当社を知って検索して応募したと話す学生の子もいて入社した」
 ‐人材採用に効果がある理由は。
 「求職者の知りたい情報は業種、労働条件はもちろんだが、実は社内の年齢層や雰囲気といった働く環境を非常に気にしている。情報が求人記事とホームページだけだとどうしても得られる情報量が少ない。ライバル社と条件が同じだった場合、情報量が多く働くイメージができる企業が優位になる。つまり人材獲得競争において社内のリアルな情報をいかに開示するかが重要になる。新会社ゼロべーではリクルートの強化を考えている企業の力になりたいと考えている」
 ‐サービス内容は。
 「動画の企画から撮影、編集、アップロード、分析、アカウント管理まで全て代行させていただく。クライアントにやっていただくのは撮影の協力と投稿前のチェックだけ。YouTubeショートとTikTokへ週2本(月8~9本)投稿で、撮影時間は月一回で3時間ほどで済む」
 ‐料金は。
 「料金はYouTubeショート、TikTokを各週2本(約月8)月額25~28万(税抜)。SNSの運用代行としては低価格に抑えて顧客がチャレンジしやすい環境を一番に考えている。動画SNSを自社で行おうとすれば、時間もテクニックも必要で片手間では難しい。また離職リスクなども考えると中小企業にとっては現実的でない。外注するのが最も低リスクであると実感を持って言える」
 ‐今後の活動は。
 「12月に設立が終わったので、1月から本格的に活動していく。設立前から契約の話を進めていただいている企業もある。中小企業が発信力を強化するお手伝いができればと思っている」
【2024(令和6)年1月11日第5150号9面】

大和屋守口漬総本家 代表取締役社長 青木茂夫氏

伝統を守りつつ変化する
生産者の作りがい生む施策支援
 株式会社大和屋守口漬総本家(愛知県名古屋市)では、青木茂夫常務取締役が昨年8月29日に代表取締役社長に就任した。青木新社長は、外資系企業に25年務め、50歳の節目で2022年に同社へ入社した。守口漬を代表するメーカーの5代目社長として、自社の伝統的な味を継承しつつ、消費拡大にも取り組み、社員のモチベーションを高めたいと抱負を語った。
(高澤尚揮)
◇    ◇
 ―青木新社長の経歴は。
 「1972年生まれで、高校まで愛知県岡崎市で育った。大学は東京に進み、早稲田大学大学院経営管理研究科でMBAを取得。学生時代から、スポーツビジネスとマーケティングに関心があったため、ナイキジャパンには24歳で転職し、25年間務めた。同社では、スポーツマーケティングに長年携わり、ディレクター職を最後に、50歳で大和屋守口漬総本家に入社した。鈴木昌義現会長は義兄であり、入社前から同社の状況や将来について議論することもあった」
 ―社長就任での抱負。
 「鈴木昌義現会長は20年に渡り社長を務め、『節目の年から、会社に変化をつけたい』という想いで、社長職を私に譲った。伝統のある守口漬の味など守るべきことは守り、変えるべきことは変えていきたい。当社は『一灯をともす』という言葉を大切にしており、社員のモチベーションを上げる評価制度の確立、守口大根の生産者の作りがいが生まれる施策を実行していく」
―自社の強みは。
 「守口漬を代表するメーカーの一社として、歴史に誇りがあり、お客様にも、商品の品質・歴史で信頼していただいている。扱う守口漬は、漬物の中でも一目置かれる存在だ。また当社は、みりん粕漬のブランド『鈴波』と、粕製品の『八幸八』、鈴波と姉妹店でお弁当を扱う『六行亭』があり、相乗効果がある。シナジーを加速させたい」
―守口漬の市況は。
 「お中元、お歳暮の市場が縮小する中で、既存のお客様に引き続きご支持いただけるよう、新たな取組を検討する。一方で、地元でも若年層を中心に、守口漬自体の認知度が下がっていると感じる。若年層へ守口漬のおいしさ、伝統性などの魅力に興味を持ってもらえるようPRもしていきたい」
―業界へ伝えたいことは。
 「守口漬、奈良漬、粕漬のPRは一社だけでなく、業界単位で行う必要があり、当社からは鈴木会長や私を中心に引き続き参加して参ります。皆様、よろしくお願い申し上げます」
 【青木茂夫新社長の略歴】▼1972年愛知県岡崎市生まれ▼早稲田大学大学院経営管理研究科でMBA取得▼ナイキジャパン社に25年勤務し、ディレクター職、経営会議メンバーを歴任後、2022年に大和屋守口漬総本家に入社。2023年10月に代表取締役社長就任。
【2024(令和6)年1月11日第5150号12面】

大和屋守口漬総本家 

1月1日 新年号 トップ・インタビュー

東京中央漬物株式会社 代表取締役社長 齋藤 正久氏

売上は前期比106・6%で推移
2回目の価格改定を想定
 東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(東京都江東区豊洲)の齋藤正久社長にインタビュー。2023年の振り返りや、24年3月期の業績等について話を聞いた。今期の売上はキムチと沢庵の動きが良く、11月までで前期比106・6%と好調に推移。また、値上げが一巡したことで数量に大きな変化はないものの、値上げによる増収効果が出ている。2024年物流問題については、安定供給を果たすため共同配送の可能性を探る意向を示した。
(千葉友寛)
  ◇      ◇
‐昨年を振り返って。
 「コロナの5類移行で人が外に出るようになり、飲食店や観光関係の動きが戻ってきた。インバウンドも増えてきているが、お土産の購入数は増えておらず、業界でも動きが良いところとそうでないところの差がはっきりとしている。また、人の足が地方に向いていることで地方のSMも良くなってきた。業界の値上げについては一巡し、数量は同じだが値上げした分だけプラスになっている。当社は昨年度の売上が良くなかったが、値上げによって底上げできている流れだ」
‐24年3月期の売上について。
 「昨年の2月から良い数字となり、11月までで前期比106・6%と好調に推移している。数量は大きく変わらないのだが、多くの品目で値上げが実施され、その分がプラスになっていると感じている。あと、飲食関係の業務筋の数字が伸びている。売れているのはキムチと沢庵。キムチは漬物の枠を飛び越えた存在として食卓に浸透している。沢庵は重量が前年の8割となっているものの、金額はほぼ同じとなっており、個食タイプやスライスタイプが増えていることが分かる。一本物はお得感があるが、食べきれないという側面もある」
‐キムチや沢庵以外の動きは。
 「梅干しはトータルで103%と微増している。今年は猛暑と残暑の影響もあり、7月から10月まで動きが良かった。生姜も伸びている。売れているのは紅生姜。夏に冷やし中華や焼きそばが売れたことで数字が伸びた。また、新生姜は引き続き安定した動きとなっている。浅漬も微増となっている。SMでは増えていないと思うが、当社は業務関係の得意先が多いことや野菜高の影響もあってプラスとなっている。総じて言えることは、漬物の需要は落ちてはいない、ということだ」
‐値上げの動きは。
 「海外原料や海外完成品は数回の値上げを実施しているが、国内原料や国内加工品については大体の商品が1回は値上げを実施して一巡した。しかし、その後も包装資材や調味料、電気代などは上がり続けており、4月には物流費も上がる。今の価格では採算が合わなくなる可能性が高く、多くの品目で2回目の価格改定が実施されるものと想定している。小売店との商談については、ベンダーの力も問われている。採算が合わない商売をしても意味がないし、他と同じことをやっていても価格の競争になる。漬物以外の商品を見ても、値上げを数回行っても必要とされる商品は売れ続けている。漬物が必要とされるのか、されないのか。単純に価格を上げる、ということだけではなく、食べる理由や価値をPRしていくことも重要で、漬物は198円や298円でなければ売れない、という固定概念を変えていく努力も必要だ」
‐2024年物流問題について。
 「当社も物流費が上がっていて、大きな問題ととらえている。当社は物流機能がないので、得意先とも話をしていかなければならないのだが、共同配送の可能性を探っていく必要が出てくる可能性もある。物流費が上がることも問題だが、運べる量が減ってしまうことも大きな問題。一社だけで解決できる問題ではないので、安定供給を果たすために協力し合える部分は協力していきたいと考えている」
‐2024年の抱負を。
 「これまでの当社のノウハウを活かして得意先に合う商品をメーカーとともに開発し、新しい商品を作っていきたいと考えている。商品開発と言っても、ただ商品を作るだけではなく、どこの売場で売るのか、売り先も選定するところまで踏み込んでやりたい。SMで売れても市場で売れない商品もある。また、その逆もしかりで、どこから声がかかるか分からないが、社内でも部門の枠を飛び越えて商品会議を行い、必要とされる商品をメーカーとともに作り上げて売場に落とし込んでいきたい。定番商品だけでは数量を増やすことができない。ならばこちら側から『このような商品もある』と提案していく必要がある」
【2024(令和6)年1月1日第5149号3面】

東京中央漬物 電子版「地域セレクション特別会員」
https://www.syokuryou-shinbun.com/pages/1293/

東海漬物株式会社 代表取締役社長 永井 英朗氏

キムチと沢庵が好調で増収
成長見据え世代交代を推進

 東海漬物株式会社(愛知県豊橋市)の永井英朗社長にインタビュー。第82期(2022年9月~2023年8月)を顧みて、第83期期首及び値上げに関する状況などについても話を聞いた。今期は選択と集中をテーマにアイテムの集約を図り、生産性を高めていく方針を示した。また、同社の新役員選任及びグループ会社の経営トップの交代で人事と体制が変わったことについて、次世代の成長を見据えて世代交代を推進していることを明かした。
(千葉友寛)  
  ◇   ◇
 ‐第82期決算について。
 「コロナで巣ごもり需要が増加し、過去最高の収益となった2021年8月期(80期)と比較すると、81期は減収減益となったが、82期は再び盛り返して増収となった。様々なコストが上がっていることもあり、利益については厳しい状況が続いているが、目標とした数字はクリアすることができた。増収となった主な要因としては、下期にキムチが伸長したことが上げられる。6月にテレビで『キムチ』が取り上げられたことや7月の増量企画が追い風となり、月間の売上で見ると7月は過去最高の数字となった。また、キムチに続いて沢庵の売れ行きも良かった。けん引しているのはカップのスライス沢庵」
 ‐83期のスタートについて。
 「キムチは引き続き好調だが、値上げした『きゅうりのキューちゃん』が非常に厳しい状況である。しかしながら数量は大幅に落ちているものの、98円の特売が減って店頭売価が上がっていることを考えれば値上げの効果は出せていると思っている。2月以降は新しいCMを入れたり、販促を行っていく予定だ。上期はまだスタートしたばかりだが、キムチと沢庵が引き続き好調で現時点では売上、利益ともに予算を達成している」
 ‐浅漬の動向について。
 「選択と集中をテーマに、数字が上がっている『ぷち浅漬』シリーズをしっかりと売り込んでいる。また、液なしでそのまま食べてもよし、ひと手間加えておかずになる新ジャンルの浅漬製品の第2弾を3月に発売する予定。この商品は当社の説明不足でコンセプトが伝わらず支持されなかったが、新しい需要の開拓を目指して再挑戦する」
 ‐本漬の動向は。
 「原料価格が上がっている部分もあるが、相変わらず為替の影響が大きい。直近では円高傾向になってきているが、1ドル110円の時と比較するとまだまだ円安である。『きゅうりのキューちゃん』は内容量を減らして価格も上げた。今後はきゅうりを中心に様々な海外原料手当てのやり方も変えていく必要がある。国産大根については、当社では昨年1月に沢庵の価格を約10%上げたのだが、数量は落ちなかった」
 ‐製造コストが上がり続ける中、今後の値上げの動きについて。
 「製造コストに加え『2024年物流問題』は大きな問題だ。漬物でも漬物以外でも日配の共同配送を希望している企業があれば、当社も検討していきたいと考えている」
 ‐原料面と製造面の課題は。
 「価格要因と天候要因の影響が大きくなるが、国内については産地を広げて選択と集中に取り組む。新しい産地については農業に進出する、ということではないが、拡大に向けて動いていく。製造面については人手の部分が大きい。当社では全体の約50%が中途採用。工場もパートの比率が高くなっている。設備投資をすることは可能だが、それを活用できるほどの生産量や人材を確保できるのか、という問題がある。近年は転職がスキルアップにつながるということもあり、ポジティブに捉えられている。そのような意味では中途で人材を確保しやすい環境でもあるということだ」
 ‐今後の戦略について。
 「営業面では売り込みたい商品をしっかりと売っていく、ということ。流通が目まぐるしく変化する中で、売価も含めてしっかりと対応していく必要がある。今期のテーマとしては選択と集中。利益至上主義ではないが、今後の展望が見えない商品は止める、という決断も必要だ。留め型やPBもあるが、最低でもここまでは利益が出ないとやれない、という線引きをしっかりやる、ということ。当社は浅漬の製造を行ったことでアイテム数が増えたのだが、今後はアイテムの集約を図り、生産性を高めていく。不得意な分野の商品については、他社の力を借りてOEMでの供給も視野に入れている」
 ‐御社をはじめグループ企業で新役員が選任され、人事と体制が変わった狙いは。
 「一言で言えば世代交代。私が考えていた計画よりは2年遅れたが、今回の人事で東海漬物の常務が2人退任し、新しく3人の取締役が就任した。グループ会社においては3社の社長が退任し、東海漬物の3人の常務がグループ会社の社長に就任した。いつの時代も同じだが、人の入れ替わりは必ずある。このタイミングを見誤ると大変なことになる。新体制で新たな追い風が吹き、グループ全体の成長につながることを期待する」
【2024(令和6)年1月1日第5149号5面】

東海漬物
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