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インタビュー2022

8月1日号 長野特集 <理事長に聞く>

長野県こんにゃく組合 理事長 細萱 聖氏

需要創出の鍵は即食性
全社を挙げてSDGs推進

 長野県こんにゃく組合の新理事長に就任した細萱聖氏(細萱食品社長)にインタビュー。同組合の前身である長野県蒟蒻協同組合は2021年に解散。今年4月に「長野県こんにゃく組合」として組合員5社により再スタートを切った。細萱理事長は、こんにゃくの需要を伸ばしていくためのポイントとして、即食性の高い製品の開発を挙げた。
(藤井大碁)
◇    ◇
 ―「長野県こんにゃく組合」の理事長に就任された。
 「もともと長野県蒟蒻協同組合には、16社が加盟していたが、組合の会合に出席する組合員が少なく、小林文人前理事長が会長を退任されるのを機に解散することになった。その後、改めて組合の必要性を感じていた5社(小林蒟蒻店、寺田屋、上州屋、荻原、細萱食品)が加入し再スタートを切った。規模は縮小してしまったが、力を合わせて、こんにゃく業界活性化のために取り組んでいきたい」
 ―組合事業について。
 「長野県蒟蒻協同組合の時代から長年実施してきたこんにゃくの寄贈を継続していく。今期は、こんにゃく祭りのイベントとして、10月1日に長野市の児童養護施設『三帰寮』へ組合員5社のこんにゃく製品を各200個、計1000個を寄贈する予定だ」
 ―こんにゃく製品の販売動向。
 「量販店向けの需要はコロナの影響がそこまでないが、土産物や業務用は引き続き厳しい状況が続いている。こんにゃくは、おでんや煮物を良く食べる秋冬シーズンが最需要期で、寒い季節に比べると夏場の動きは弱い。その中でも、しらたきやこんにゃく麺は堅調に動いている。こんにゃく屋が、原料や製法がこんにゃくと全く異なる〝ところてん〟を昔から手掛けているのも、夏場の売上対策によるところが大きい。弊社でもところてんの製造を行っているが、暑くなればなるほど、ところてんは良く売れる。今年も6月下旬に気温が一気に上昇したことで、出荷量が大きく伸びた。ところてんはゴールデンウイーク明けからお盆までが勝負なので、暑くなることを期待しながら頑張って製造していきたい」
 ―こんにゃくの需要を伸ばすために。
 「こんにゃくは、カットやアク抜きなど、手間がかかるイメージがあるので、もっと手軽に食べられる製品を開発していく必要があると思う。味付け済みでレンジアップしてすぐ食べられる製品や他の食材とコラボした惣菜製品など即食性の高いラインナップが増えれば、需要は伸びていくのではないか」
 ―令和元年に新工場が稼働した。
 「昔ながらの製法を再現しつつ、現代に合わせた衛生的な環境と設備により製造を行っている。弊社はOEMがメーンとなるので、安定したものを失敗なく作ることを特に重視している。2020年には食品安全規格〔JFSーB〕認証や環境配慮の取組の評価基準〔エコアクション21〕認証を取得した」
 ―長野県SDGs推進企業にも登録されている。
 「全社を挙げてSDGs推進に取り組んでいる。食品ロス削減においては、ところてん製造で発生した天草の残渣を必要とする農家に提供することで、100%のリサイクル率を実現している。また二酸化炭素の排出量削減を目指し、具体的な目標値を設定し、それに向けて取り組んでいる」

【細萱聖氏プロフィール】1982年9月29日長野県佐久市生まれ。2004年上武大学経営情報学部卒、2004年オリヒロ入社、2007年細萱食品入社。2015年より代表取締役社長
【2022(令和4)年8月1日第5101号13面】

細萱食品 HP

8月1日号 長野特集 <この人に聞く>

旭松食品株式会社 研究開発本部研究所 副主任研究員 石黒 貴寛氏

フレイルや腸活研究強化
伝統製法が生む食感と栄養

 旭松食品株式会社(木下博隆社長、本店=長野県飯田市)は高野豆腐のトップメーカーとして、健康機能性や新製品開発で業界をリードしている。研究開発本部研究所副主任研究員の石黒貴寛氏は、豆腐を凍結・低温熟成させる伝統製法が高野豆腐の特徴的な栄養成分であるレジスタントプロテイン(難消化性タンパク質、RP)を形成、肉のような食感を生み、様々な健康機能性につながっていると解説する。(小林悟空)
◇    ◇
 ―高野豆腐の栄養は。
 石黒氏 大豆由来の栄養成分が豊富で、1枚16・5g中にタンパク質8・5g、カルシウム81㎎、鉄1・0㎎などがあります。特筆すべきが、RPの多さ。他の大豆加工品と比べても圧倒的に多い。健康のために子どもからお年寄りまでおすすめできる食材です。
 ―RPについて。
 石黒氏 RPは人が分泌する胃酸や酵素では消化されにくい食物繊維のようなタンパク質。大腸に到達すると腸内細菌が消化してくれるので、タンパク質としての恩恵も得られます。RPの機能性が注目され始めたのはここ10年ほど。当社では特に中高年のメタボ予防に焦点を当てて研究し、ヒト試験において「食後中性脂肪上昇抑制効果」、「脂質代謝改善効果」、「糖尿病改善・予防効果」などを確認しています。
 ―今後の機能性研究は。
 石黒氏 現在は健康寿命を伸ばすロコモティブシンドローム・フレイル予防や、若年層で関心の高い腸活・免疫といった分野でも研究を進めています。昨年は「免疫賦活効果」「腸管バリア機能向上効果」について発表しました。
 ―高野豆腐にRPが多い理由は。
 石黒氏 高野豆腐は豆腐を製造し、凍結・低温熟成を経て完成します。この原料豆腐は普通の豆腐よりも強いプレスをかけ硬く作り、さらに凍結・低温熟成工程によって大きな氷結晶ができ、それが豆腐成分を物理的に圧迫します。この工程でタンパク質が強く結合し、RPが形成されることが分かってきました。
 ―高野豆腐といえば独特の肉様食感だ。
 石黒氏 RPが出来るほどの強い圧力が、豆腐の構造を変え、あの食感を生んでいます。しっかり噛みごたえはありながら、口内や歯茎を傷めることは無いため、子どもや高齢者の咀嚼力をトレーニングするのにも適しています。
 ―製造方法の進化は。
 石黒氏 硬い豆腐を作り、凍結・低温熟成させるという基本は大昔から変わっていません。昔の人はどうやってこの最適化された製法に行き着いたものかと改めて驚かされます。今は製造効率化の研究も進めています。
 これまでに大きく変わったのは喫食時に軟らかくするための膨軟加工です。昔はアンモニアを膨軟剤として使っていたので臭いがキツく、何度も水を替えて水戻しする必要がありました。1972年に重曹(NaHCO3)を使う新技術が開発されると、臭いがなく水戻し不要になりました。
 さらに2014年に炭酸カリウム(K2CO3)を使用する減塩製法を開発(製法特許取得済)し、一般的な高野豆腐よりナトリウム(Na)量を98%減、ナトリウムの排出を促すカリウムは23倍になりました。これが現在の「『新』あさひ豆腐」です。
 ―10月に「TOPURO」を新発売する。
 石黒氏 カップ入りで、お湯を入れるだけで高野豆腐が食べられる簡便性の高い即食商品。通常の高野豆腐よりも戻りやすくなるよう工夫されています。1食100kcal未満、塩分1・0g以下に抑えながら、タンパク質約8・5g以上、RP3・0gを摂ることができます。健康美意識の高い方々をターゲットに「ベジタブルブロス」「ボニートブロス」「チキンブロス」の3種類を発売します。
 原料加工から完成まで、高野豆腐の伝統製法を継承しつつも新しい発想を取り入れています。特許出願中のため詳細は明かせないが、ぜひ一度食べてみていただきたいです。
【2022(令和4)年8月1日第5101号14面】

旭松食品 HP

7月21日号 梅特集 <トップインタビュー>

中田食品株式会社 代表取締役社長 中田吉昭氏

梅雨明けから需要増加
持続可能な紀州梅産地を形成

 中田食品株式会社(和歌山県田辺市)の中田吉昭社長にインタビュー。今年の梅の作柄や漬け込み状況などについて話を聞いた。今年の作柄は平年作の見通しで、紀州梅産地では十分な量が漬け込まれている。今年は梅雨明けが早く、6月下旬から全国的に気温が上昇したことに連動し、梅干し製品も動き出している。今夏は熱中症対策などで需要の増加が期待される中、中田社長は改めて持続可能な産地の在り方を強調した。(千葉友寛)
◇   ◇
 ―今年の作柄は。
 「平年作の見通しだ。まだ収穫は終わっていないのだが、塩の出荷量が1万1000tを上回ったので平年並みの収穫量はあると見ている。他の梅産地の話も聞いているが、雹害などが発生し、原料確保に苦労されているところもある。漬物も値上げの機運が高まってきているが、3年ぶりに産地視察に訪れたバイヤーに話を聞くと、値上げについては慎重な対応となっているようだ。原材料価格だけではなく、調味資材、物流費、電気代などのコストが上昇し、多くの品目で値上げが実施されているように致し方ないことだと思っているが、漬物全体の売上が良くないため、売場では慎重にならざるを得ない状況となっている」
 ―中国産梅の状況は。
 「中国産は不作で原料価格が上がっている。その上、製造・輸送コストの上昇と円安の影響が大きく、値上げは必至の状況だ。国産製品との価格差は以前より縮まってきているが、まだまだ歴然とした差がある。中国梅は価格面に加え、品質や安定供給の観点からも売場に必要な存在だ」
 ―梅干しの売れ行きは。
 「今年は梅雨明けが早く、気温も一気に上昇したことで梅干しの需要もぐっと伸びてきている。春からの動きを見ると、他の漬物と同様に前年の90%台で推移していた。新型コロナ感染者の減少とともに巣ごもり需要が落ち着き、外食や観光関係が回復してきた。そのような状況下で今夏は熱中症対策に加え、田辺市やみなべ町が研究成果を発表した梅の成分によるコロナ予防への期待などが梅干しの購入動機につながることを願っている」
 ―産地の在庫状況は。
 「A級は十分にある。量販向けの売れ筋商品の原料の全体的な量は分からないが、弊社は困っている状況ではない。今年は青果向けの動きが弱く、塩漬けされる流れとなった。後半に塩の追加注文もあったと聞いており、農家の方でも十分な量の塩漬けが行われているようだ」
 ―夏の動きが期待される。
 「今夏は猛暑で、残暑も厳しくなるという予報のため、長くて暑い夏となる。特需が発生した2018年も7月上旬に梅雨明けして林修先生のテレビ番組で『梅干しの機能性』という内容が放映されたことで想定以上の動きとなった。今年は2018年の時よりも梅雨明けが早く、需要に結び付くことを期待している」
 ―産地の課題は。
 「持続可能な紀州梅産地を形成していくためには、農家に梅を生産し続けていただかないといけない。紀州梅産地でも農家の高齢化や後継者不足が大きな課題となっているが、農業生産が減少すると、我々梅干メーカーは製品供給が困難になり、産業として成り立たない。梅には捨てるところがない、と言われているが、農家にしても生で市場や農協に販売することができ、塩漬けして梅干しや梅肉の原料として売ることもできる。販売するチャネルが多く、紀州南高梅というブランドも確立されているため、他の作物と比較しても高単価となっている。さらに、梅は科学的な研究によって様々な健康機能性が実証され、健康食品としてのイメージもあり、こんなに恵まれた作物はないと思っている。加工や販売だけではなく、農家も喜べる環境を作っていくことが我々の役割だと認識している。売上も重要だが、農家が一生懸命育ててくれた梅を大事に販売していくことも重要だと考えている」
【2022(令和4)年7月21日第5100号1面】

中田食品株式会社 HP

7月21日号 梅特集 <理事長に聞く>

山梨県漬物協同組合 理事長 長谷川正一郎氏

原料ひっ迫で値上げへ
適正利益での販売を目標に
 小梅の生産量日本一を誇る山梨県。特産品ブランドとして著名な〝甲州小梅〟の作柄や原料状況、販売動向について、山梨県漬物協同組合理事長の長谷川正一郎氏に話を聞いた。生産農家が減少していることから収穫量も毎年減っている状況を懸念し、買い取り価格を上げることにつながる適正価格での販売の重要性を訴えた。(菰田隆行)
◇  ◇
 ―今年の甲州小梅の作柄と在庫状況は。
 「昨年から今年にかけての冬は長かったが、春になると一斉に花が咲き、受粉も一気に終わって実の生りは良かった。しかし、その後は収穫直前の4月に例年以上の雨が降り、日照不足となった。収穫期の5月に入っても気温が上がらなかったため太りきらず、小粒のままで収穫せざるを得なかった。従ってSサイズが多く、収量は昨年比で5%~10%、平年比で30%~35%程度少ない。毎年値上がりしている生の価格は、産地にもよるが、今年も5%程度上がっている。昨年の原料も予定数量は入って来なかったのだが、在庫量を去年の今頃と比べると、今年は1割程度少ない状況だ」
 ―農家の現状は。
 「収量減は天候の影響もあるが、それよりもこの3~4年で農家が毎年5%程度減っているのが、一番大きな要因だ。梅の木は植えてから30年過ぎると老木となって収量も落ちる。新しく木を植えても実が生るのに5~6年はかかるため、高齢化している兼業農家では老木を切り倒したり、実が生っても収穫しないまま放棄してしまう人もいる。農家は減少し、老木が増えていくという現状から、今後も小梅の収穫量は増える要素がない。これ以上減らないよう、買い取り価格を上げていくしかない状況だ」
 ―小梅の製品値上げについて。
 「原料ひっ迫、諸経費高騰から小売用、業務用とも9月頃から10%程度の値上げへ動かざるを得ない。業務用は量目調整できないので4年連続の値上げとなり、小売用も量目調整ではなく値上げの方向だ」
 ―値上げすると客離れが懸念される。
 「値上げすると、消費者より先にバイヤーから敬遠される。売り場の尺数が縮小している現状から、価格だけ見てSKUから外れてしまう。しかし本当に美味しいものなら、お客様の方から〝なぜ置いてないの?〟と店側に問い合わせが来て復活することもある。バイヤーには価格優先ではなく、本当に美味しいものを見極め、適正な利益で販売することを考えてほしい」
 ―今後について。
 「コロナによってネット通販は若干増えたが、当社ではまだ分母が小さい。先ほど言った適正利益を考えれば、メーカーが小売するのが一番良いと思うので、取組は進めて行かなければならないだろう。小梅は40年ずっと同じ値段だったが、今年は値上げしなければ立ち行かなくなる。現在の198円を298円、398円を498円の価格帯に持っていくことを目標としなければ、農家がついて来られなくなるだろう」
【2022(令和4)年7月21日第5100号2面】

山梨県漬物協同組合 HP
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7月21日号 梅特集 <トップに聞く>

田辺米穀株式会社 代表取締役社長 久保正氏

創立70周年迎える
物流の幅を広げて変化に対応
 7月1日に創立70周年を迎えた総合食品卸売問屋の田辺米穀株式会社(和歌山県西牟婁郡上富田町)の久保正社長にインタビュー。今後の事業や新しい取組などについて話を聞いた。久保社長は2024年4月に控える物流改革に対応するため、今年4月より物流部を創設。貨物を運ぶ緑ナンバーを取得し、3温度帯に対応している物流倉庫をフルに活用しながら、中継地として物流の幅を広げていく意向を示した。
(千葉友寛)
◇   ◇
 ―創立70周年を迎えた。
 「弊社は昭和27年に内麦や雑穀類の販売を行う会社として、田辺市内の米穀店からの出資で設立した。以来、取り扱い品目を少しずつ拡大し、砂糖や小麦の他、加工食品、飲料、業務用調味料、食品添加物を扱う食品問屋として事業を行ってきた。平成8年からは冷凍食品、市乳の取り扱いを始め、その後は水産物、日配食品、食肉製造を扱い総合食品卸売問屋として、常温、冷蔵、冷凍、定温の温度帯別倉庫や危険物倉庫も完備し、和歌山県の中南部から三重県熊野地方までを主なカバーエリアとして営業している。取引先様をはじめ、諸先輩方、社員、地域の皆さんのおかげで今の会社があり、心から感謝している。私は一昨年11月に6代目社長として就任したが、次の世代につなげていくことが自分の使命だと思っている」
 ―新しい取組について。
 「4月から新しい期となり、100年続く会社を作っていこう、ということで時代に合った取組をスタートした。具体的には4月から物流部を新たに作り、貨物を運ぶ緑ナンバーを取得し、『食と物流』のトータルサポートという特徴をより強く打ち出していきたいと考えている。2024年4月1日から自動車運転業務(運送業ドライバー)に年間残業時間上限960時間の規制が設けられ、労働基準法の基本労働時間は原則1日8時間(休憩時間1時間除く)となる。この物流改革は運送事業者にとって大きな課題で、3温度帯に対応している弊社の物流倉庫をフルに活用し、中継地として利用していただきたいと考えている」
 ―今後の事業や方向性について。
 「弊社のような地方の問屋が生き残っていくためには時代の流れに対応しながら、変革や新しい取組を推進していく必要がある。新型コロナウイルスによって消費の流れや物の動きが変わり、市場の形も変わった。自分たちの特徴や強みを考えた時に、物流の多様性が重要になってくると考えた。以前から『うちの荷物も運べないか』と多くの方に依頼されていたが、緑ナンバーがないので運ぶことができなかった。この事業をしっかり行うことができれば地域貢献にもつながる。これまでの70年を一つの区切りとして、新たな歴史を作っていきたいと思っている。世の中の動きは自分たちが思っている以上のスピードで変化している。私も含めて社員1人1人が意識と自覚を持ち、取り組んでいくことが重要だ。今年はそのようなスタートの1年にしたいと考えている」
【2022(令和4)年7月21日第5100号2面】

田辺米穀 HP

7月21日号 梅特集 <新社長に聞く>

株式会社福梅 取締役社長 北脇祐一氏

ニッチ狙う「福梅ぼし」
旨味ある紅映の強み活かす
 株式会社福梅(福井県三方上中郡若狭町)は7月より、長く社長を務めた前田靖二氏が勇退し、執行役・営業担当だった北脇祐一氏が取締役社長に就任した。同社は県内栽培の「紅映(べにさし)」を主力に、青梅塩漬けから出荷までを一貫管理。ISO9001を取得し安心安全な商品を提供する、日本海側を代表する梅加工メーカーである。北脇新社長は、原料確保が課題としながらも、ニッチ市場を突く戦略で成長を目指していく。
(小林悟空)
◇    ◇
 ―新社長就任の抱負を。
 「前田前社長が88歳まで長きにわたり会社を育ててきた。この度、組織の若返りや活性化を目的に、交代となった。私自身は平成11年から28年まで製造に従事した後、営業部へ移った。原料仕入れから営業まで経験した立場から、福井梅の魅力を発信して売上向上を図るとともに、効率化を進めしっかり利益の出る会社を目指したい」
 ―会社の現状は。
 「35期目が終わり売上は前年比で約10%の増収となった。成長エンジンとなったのはネット通販。自社通販の他、各種ECサイトへも出品しており、コロナによる土産等の減少をカバーした。課題は原料面。生産農家は10年前に400軒以上あったのが今は320軒程に減った。気候変動もあり、平年作のラインが大きく下がっている」
 ―福井梅の作柄は。
 「330t入荷の計画が、200t程に留まる凶作となった。元々裏年の予想ではあったが、雨不足や人手不足で収穫できない農家があり想定を下回る入荷となった。特にLサイズが少なく、通常通りに出荷すれば不足することは目に見えている。使用するサイズを一つずつ大きいものにスライドしたり、出荷制限も検討しなければいけなくなりそうだ」
 ―他産地との競争は。
 「基本的に紀州梅とも中国産とも規模が違うので同じ土俵に立つことは難しく、ニッチな市場を狙っている。具体的にはしそと塩だけで漬けた塩分15%の『しそ漬福梅ぼし』が当社の主力商品となっている。低塩で甘めの梅干しが主流になりつつある市場において、昔ながらの酸っぱくしょっぱい梅干しは貴重となっている。最近の健康志向にも合致しファンを獲得できている」
 ―福井梅の特徴は。
 「『しそ漬福梅ぼし』など約8割に使うのが紅映という品種。肉厚でぽったりとした触感があり、南高梅と比較すると旨味成分(遊離アミノ酸)が多く酸度が低いというデータが出ている。これらの特徴があるから、しそ漬のようなシンプルな味付けがよく合う。チューブに入れた『しそねり梅』、『しそねり梅しその葉入』も、シンプルゆえ料理に使いやすいと好評頂いている」
 ―「新福井梅」も発売されている。
 「新しい品種の福太夫(ふくだゆう)を使用している。こちらはやや小ぶりで糖度が高く、フルーティな香りがある。数年前に植えた樹がようやく収穫適齢を迎え始めたところで、当社の自社農園でも今年初収穫できた。これまではギフト中心となっていたが、収穫が増えれば別の販路へも提案していく方針だ」

 【北脇祐一新社長】
昭和49年4月5日生まれ。前田前社長の姪孫に当たる。学生時代に福梅でアルバイトを経験。測量会社に勤務後、ものづくりに魅力を感じ平成11年に福梅入社。以来製造部門に長く従事し20年に工場長就任。同28年に営業部へ異動。今年7月、取締役社長就任。
 ※同時に、前田靖二前社長長男の前田良治氏が代表取締役会長に就いた。良治氏は建設業の株式会社前田産業社長も務めている。
【2022(令和4)年7月21日第5100号3面】

株式会社福梅 HP

7月21日号 梅特集 <理事長に聞く>

紀州田辺梅干協同組合 理事長 大谷喜則氏

暑い夏の到来に期待
優れた健康機能性をPR

 紀州田辺梅干協同組合理事長の大谷喜則氏(大谷屋社長)にインタビュー。今年の作柄状況や梅産業の課題、組合活動の方針などについて話を聞いた。コロナ禍でこの2年は積極的な活動を行うことができなかったが、梅の消費拡大、産地維持、安定供給の観点から進むべき道を模索していく考えを示した。
(千葉友寛)
◇    ◇
 ―今年の紀州梅産地の作柄は。
 「収穫する場所によって多少の差はあるものの、終盤に漬け込み量の目安となる塩の出荷量が1万1000tを超えたことからも平年作を少し上回る作柄になっていると見ている。収穫前にまとまった雨が降らなかったこともあり全体的にはやや小粒傾向だが、後半は玉太りしたところもある。台風や風などの影響もなく、良質な梅が収穫されている」
 ―在庫状況は。
 「2019年と2020年は不作で、2021年は豊作となった。2020年の3月以降、コロナの影響で巣ごもり需要が発生したが、梅干しの需要には結び付かず、この2年の売れ行きは芳しくなかった。そのようなこともあり、産地では昨年の在庫に余裕がある。そのため、産地全体で漬け込み意欲は強くなかったのだが、青果向けの需要が少なかったこともあり、今年も十分な量が漬け込まれているようだ」
 ―販売面の課題は。
 「紀州梅はここ1、2年の間に値上げを実施した。その多くは内容量調整だったのだが、割高感が出たことで買い控えされてしまったと考えられる。また、その2年間は冷夏や長雨となり、2年続けて夏らしい気候にならなかったことも大きかった。夏商材の代表格でもある梅干しの需要は気温が上昇すると増加するので、今年の夏は暑くなることを期待している。6月後半から記録的な猛暑となり、梅干しにも動きが出てきている。7月中旬は全国的に雨模様となっており、気温も下がっているため一服しているが、再び気温が上がってくれば需要は伸長すると思っている。ありがたいことに、梅干しは熱中症対策のアイテムとして広く認知されている。夏に売れれば秋、冬とその流れが続いていく。これからの気候にもよるが、6月下旬から7月上旬のような暑い日が続き、夏らしい夏になれば梅産業には追い風になる」
 ―観光土産や業務用の動きは。
 「量販店や通販関係の売れ行きは堅調だったが、業務用や観光土産品はコロナの影響で打撃を受けた。今年に入ってコロナ感染者が減少し、外食関係は回復傾向で和歌山にも観光客が少しずつ戻ってきていたのだが、再び感染者が増加に転じたことで先行きは不透明となっている」
 ―今後の販売動向の見通しは。
 「今年は青梅の価格が昨年よりも下がり、昨年の原料も十分に余裕があることを考えても原料価格は下がる方向だ。だが、製品価格については、調味料、包材、容器、物流費、電気代とあらゆるコストが上昇しているため、とても下げられる状況ではない。梅メーカーがここ数年で経験してきたことだが、値下げは簡単にできるが、値上げは簡単にはできない、ということ。過去の例を見ても、原料価格の上昇分をスムーズに製品価格に転嫁できたことはない。ただ、直近の値上げによって梅干しの嗜好性は高まり、一部の消費者が離れた感は否めない。メーカーとしては高品質な梅干しを供給することも重要だが、健康機能性のPRや食べるシーンの提案など、まだまだやるべきことがあると思っている。この2年間、組合では積極的な活動を行うことができなかったが、梅の消費拡大、産地維持、安定供給の観点から進むべき道を模索していきたいと考えている」
【2022(令和4)年7月21日第5100号4面】

紀州田辺梅干協同組合の加盟社一覧
大谷屋 HP

7月21日号 梅特集 <理事長に聞く>

紀州みなべ梅干協同組合 理事長 殿畑雅敏氏

価格の安定化で産地保護
数年に1度か2度は不作

 紀州みなべ梅干協同組合理事長の殿畑雅敏氏(株式会社トノハタ社長)にインタビュー。今年の作柄や製品の売れ行きなどについて話を聞いた。一昨年まで2年連続の不作、凶作で値上げの機運が高まったが、改めて価格改定の難しさを指摘。重要な課題として「価格の安定化」を挙げた。
(千葉友寛)
◇    ◇
 ―今年の作柄と在庫状況は。
 「昨年は豊作だったので、十分な在庫がある。ただ、5年に1回か2回は不作や凶作の年がある。そのような意味では、現在の在庫は足りなくなった年の補充用として考える必要がある。梅の原料は保管しておくことができるので、単年ではなく、4~5年スパンで在庫を調整することが産地にとって良いことだと思っている」
 ―今年の原料相場について。
 「青梅の場合は、その年の加工業者の漬け込みキャパと供給量により価格が形成される。一方、梅干しの場合は、その年の総供給量と見込み総需要のバランスで価格が形成される。青梅は置いておくことができないので、青梅の出荷が漬け込みキャパより多くなれば価格は下がるし、少なければ上がる。塩漬すれば2年、3年とストックしておくことができるため、青梅と同じ状況にはならない。過去を振り返っても青梅安梅干高の年もあれば、青梅高梅干安の年もある。即ち、青梅価格と梅干価格は価格形成論理が異なるので価格的にリンクはしない。本年度の梅干し樽価格は、現時点ではっきりしたことは言えないが、ただ、一つ言えるのは、梅干し原料の価格が極端に上がったり、下がったりすると『不作→原料価格上昇→製品値上げ→市場の縮小→製品価格下落→売上減』という負のスパイラルに陥るので、望ましくはない。今の若い世代の後継者は、将来的に継続できる安定的な収入を求めている。今年の製品価格に関しては、調味資材、容器、ラベル、段ボール、塩、物流費、電気代などあらゆる費用がすでに平均20%前後上がり、これからさらに上がるものもある。また、仮に今年は一部製品価格が下がったとして、2~3年後に必ずやってくる不作による原料価格の上昇局面で、値上げを実施できるかどうか。そのようなことも総合的に考慮して判断すべきだ」
 ―様々なコストが上昇する中、値下げの動きが懸念される。
 「梅のような作物は数年に1度ないしは2度は不作の年が必ずくる。そこで値上げをすると市場は確実にシュリンクする。産地保護の観点からも再生産可能な原料価格を出していくことが重要で、製品価格の安定化を図り、安定供給に努めていかなければならない。原料価格が乱高下すると消費者が離れてしまうので、産地、加工メーカー、流通、お客様にとって適正な価格を探っていく努力はより必要になってくる」
 ―中国産の作柄は。
 「今年の作柄は不作で原料価格も上がる見通しだ。だが、それ以上に円安の進行で為替差損が大きく、資材関連も平均で約20%上がっている。円安と製造コストの上昇で値上げしなければ大幅な採算割れとなり、継続して販売することができなくなる状況だ。中国梅は秋冬から価格改定の動きが加速するだろう」
【2022(令和4)年7月21日第5100号5面】

紀州みなべ梅干協同組合の加盟社一覧
トノハタ HP

日本惣菜協会「惣菜管理士」30周年記念インタビュー

一般社団法人日本惣菜協会 専務理事 清水誠三氏

【第3回】優秀な人材が業界発展の鍵 「日本デリアカデミーの会」開設
 一般社団法人日本惣菜協会(平井浩一郎会長、東京都千代田区)では「惣菜管理士資格試験制度」が今年7月に創設30周年を迎える。それを記念して、本紙では、「惣菜管理士30周年記念インタビュー」として3回シリーズで、同協会の清水誠三専務理事にお話を伺った。第3回目のテーマは『惣菜管理士30周年と協会の取組』。日本惣菜協会では30周年記念事業として、学生向けの惣菜業界PR動画の作成などを実施する。また新たに、「日本デリアカデミーの会」の開設やS級惣菜管理士の拡充といった新規事業を予定しており、惣菜管理士のさらなるレベルアップに取り組んでいく。清水専務理事は「惣菜業界へ優秀な人材に入ってもらうことが業界発展の鍵」と語り、優秀な人材に集まってもらえるような環境作りの必要性を語った。
(藤井大碁)
◇   ◇
 ―惣菜管理士資格試験制度が30周年を迎えた。
 「1992年に研修がスタートし、翌93年3月に第1回目の試験が行われた。30周年を迎えるにあたり、これまで惣菜管理士資格試験制度に関わってこられた関係者の方に改めて御礼を申し上げたい。スタート当初は惣菜製造業や食品メーカーの方が取得する資格だったが、その後、食の総合的なカリキュラムとして、卸、小売、外食、資材メーカー、学生まで幅広い層の方に取得者が広がった。2009年には資格取得者が1万人を突破、昨年、お陰様で資格取得者が3万人を超えた」
 ―惣菜管理士資格制度が支持される理由。
 「惣菜管理士という名称ではあるが、大手食品メーカーなど食のトップ企業の方にもたくさん受験して頂いており、総合的に食の知識が習得できる資格として認知頂いている。資格取得が目標ではなく、勉強して食のリテラシーを上げてもらうことを目的としており、通信教育のテキストを読み、課題を毎月提出しなければならないなど、勉強するための仕組みが整えられていることも高い評価を頂いている。惣菜管理士資格制度が人材育成の一助になり、惣菜業界がさらに発展していくことを期待している」
 ―2019年~2021年にかけてカリキュラムの大幅な刷新を行った。
 「法改正や惣菜市場の変化、食のグローバル化などが進む中、時代に合わせた内容へカリキュラムを変えるべきだという声があり、2019年から3年をかけて大幅な刷新を行った。15年振りの大幅な食品衛生法改定や食品表示法の改正、HACCPやGAP、食のグローバル化、ライフステージと栄養なども新たに盛り込まれ、さらに時代ニーズに沿った内容に生まれ変わった」
 ―30周年記念事業。
 「優秀な人材に惣菜業界へ入ってもらうため、学生に向けたPR動画を作成する。動画内では、惣菜メーカーや惣菜販売会社の品質管理や開発、営業企画などで活躍している方を紹介し、業界の認知度アップを図る。また惣菜管理士のロゴを作成し、パンフレットやホームページ、資格取得者の名刺などへの掲載を検討している。さらに、試験で満点を取った受験生を対象に成績優秀者表彰も開始する。その他、記念セミナーの開催や日本デリアカデミーの会の開設、S級惣菜管理士の拡充などの新規事業も計画している」
 ―「日本デリアカデミーの会」の開設とS級惣菜管理士の拡充について。
 「日本デリアカデミーの会は、一級惣菜管理士の交流と惣菜知識を更に深めて頂き、業界のレベルアップを目指すもので、検討中ではあるが、『マーケティング部門』として営業や開発、『生産管理部門』として品質管理、生産管理の専門性を高めるセミナーや共同研究、『女性開発者WEB上のサロン』等も考えている。業界発展と惣菜管理士同士の交流や相互啓発、惣菜管理士の価値向上にもつながるものと考えている。またS級惣菜管理士については、現在、一級惣菜管理士の中でHACCPの衛生管理ができる人材をS級惣菜管理士として認定しているが、新たに『食品表示』、『工場の生産管理』のプロフェッショナルをそれぞれS級惣菜管理士として認定していきたいと考えている」
 ―『惣菜和英辞典』も完成した。
 「以前から会員企業より、惣菜メニュー名の英語表記の指針となるものを協会主導で作成して欲しいとの要望があり、プロジェクトがスタートし、この度完成した。訪日外国人の購入に限らず、海外への日本食の普及にも主眼を置いている。海外進出した惣菜メーカーが現地の言語で商品説明を記す際など、輸出入のビジネスにも役立てて頂きたい。また日本で働く外国人技能実習生の方々にもお役立て頂けると考えている。会員企業のみならず、広く多くの事業者に活用してもらうために、協会ホームページから全編を無料でダウンロードすることができるので是非ご活用頂きたい」
 ―今後のビジョン。
 「業界を良くしていくためにはやはり人が重要で、優秀な人材が業界発展の鍵と言える。そういう意味で、教育、人材育成と優秀な人材に集まってもらえるような環境を作ることも、我々の大きな役割の一つだ。若い世代から働きたいと思ってもらえる職場づくりを行い、将来的には優秀な人材が惣菜業界にイノベーションを起こし、さらなる業界発展につながることを目指していく」
【2022(令和4)年7月21日第5100号11面】

<塩特集インタビュー>

株式会社天塩 代表取締役社長 鈴木恵氏

三食で適正な塩分摂取を
 付加価値高い商品が伸長

 株式会社天塩(鈴木惠社長、東京都新宿区)は、江戸時代から続くにがりを多く含ませた塩づくり“差塩製法”を継承した「にがりを含んだ塩」にこだわり、日本の伝統食文化の良さを未来につなげている。「赤穂の塩作り」は文化庁より日本遺産に認定され、その歴史的な価値が証明されている。同社代表取締役社長の鈴木恵氏に塩の動向や今後のビジョンについてインタビュー。鈴木社長は熱中症対策が日常的になる中、1日三食の中で適正な塩分摂取を行うことなど改めて塩の大切さを訴えていく必要性を示した。
(藤井大碁)
◇   ◇
―直近の塩の動き。
 「コロナ初期にあった巣ごもり需要は縮小し、家庭用の塩の消費はやや減少傾向にある。だが極端に落ち込んでいるわけではなく、一部では伸びている商品もある。弊社でも海洋深層水を使用した平釜塩など競合が少なく付加価値の高い商品については伸長している。コロナをきっかけに、以前より料理素材にこだわる人や健康に気を遣う人が増えていると推測できる。また単身世帯の増加などにより1キロサイズなどの大容量製品は引き続き厳しい状況で、700gや500gの製品が売れている。人口減少が続く中、塩だけでなく食品全体の需要は何もしなければ年々減少していく。長期的な見通しを立て対策を練っていかなければならない」
―梅干し向けの塩の需要。
 「梅干しメーカー向けの出荷については、各メーカーが昨年の在庫をまだ持っているようで、昨年より動きが悪い。また一般消費者向けについても、様々な食品が値上がりして節約志向が高まる中、梅干しを漬ける人が減っているのか苦戦している。最近のトレンドとしては、通販で梅を購入して梅干しを漬ける人が増えている。こうした消費形態の変化にも対応していく必要がある。今年は梅雨明けが例年よりだいぶ早かったので、今後の巻き返しに期待したい」
―塩の需要を高めるために。
 「最も大切なのは根底から塩の重要性を訴えていくことだ。近年、熱中症対策が日常的になってきているが、1日三食の中で塩をしっかりとることが重要であるということを改めて訴えていきたい。特に夏場は、塩飴で少量ずつ塩分補給を行うより、三食の中で適正な塩分摂取を行う方が、経済的であるし効率的な対策が立てられる。自分で料理を作り、どのくらいの塩分を摂っているのか把握することが大切ではないか。そうした基本的な塩の知識を発信していくことが重要だと考えている」
―特殊製法塩協会の会長を2年務め、今年の総会にて任期満了で退任された。
 「2年間にわたり会長を務めさせて頂いた。コロナ禍によりPRイベントなどリアルの活動を実施することは難しかったが、HACCP制度化に伴い、業界として作らなければならなかったHACCP手引書を作成し、会員に配布した。協会会員以外からも参考にしたいという声があり、協会ホームページから自由にダウンロードできるようにしている。安全安心な塩づくりのために是非ご活用頂きたい。特殊製法塩協会は今期よりマル二の脇田社長が会長に就任された。私も副会長として引き続き会長をサポートし、塩の重要性を訴える活動に力を入れていきたい。来年は食育推進全国大会へ協会として出展することも検討していく」
―今後について。
 「消費者の節約志向は高まっているが、付加価値の高いものについては、高くても売れる傾向にある。そうした商品を開発し、価値をしっかり伝えながら販売していくことが大切だ。長期的には人口減少が進む中、塩だけでなく塩と関連する新規事業の立ち上げにも力を入れていきたい」
【2022(令和4)年7月21日第5100号12面】

電子版 Web展示会 天塩

<塩特集インタビュー>

鳴門塩業株式会社 専務取締役 石井英年氏、取締役営業本部長 青木貴嗣氏

石炭価格高騰が影響大
安全安心の塩作り守る価格を

 鳴門塩業株式会社(安藝順社長、徳島県鳴門市)は、年間最大20万tの製塩プラントを有する国内製塩大手であり、株式会社大塚製薬工場へ医薬品原薬の塩を供給してきた経緯から国内製塩メーカーでは初めて医薬品製造業許可を取得し局方塩の生産を行うなど、万全の体制下で国産塩を製造している。石井英年専務(左)と青木貴嗣本部長(右)は、石炭価格を筆頭にコスト上昇が自助努力の範囲を超えていることを指摘。安全安心な国産塩の供給には、適正価格の追求が必要であると話す。
(小林悟空)
◇   ◇
―価格改定を進めている。
 青木本部長「今年4月より、kg当たり10円以上の値上げを行った。決定したのは昨年11月、石炭高騰が主要因だった。製塩にかかるエネルギー費や物流費、人件費が塩の値段を大きく左右することになる。中でもエネルギー費用は大きな割合を占めており、企業努力による吸収は不可能と判断しての価格改定だった」
―その後も石炭価格は上昇している。
 石井専務「この状況が続くなら第2次値上げも現実味を帯びていく。ロシア産石炭の使用が世界各国で禁止された結果、インドネシア産石炭やオーストラリア産石炭に需要が集中し高騰している。昨年の上昇幅よりさらに大きい。円安やその他の諸コスト増も続いており、前回の価格改定が完了してもなお、全く利益が出ない状態になってしまった」
―カーボンニュートラルへの取組も求められている。
 石井専務
「高騰しているとは言え石炭が最も安価であるし、他のエネルギー源へ切り替えるとなれば新たに莫大な設備投資が必要であり、現状としては難しい。別の方法で環境負荷軽減を図っている。まず石炭を使うボイラーは、硫黄酸化物、窒素酸化物の排出が少ない流動床ボイラーを使用している。ボイラーの蒸気から自家発電をするコージェネレーションシステムの採用、ボイラーで発生した灰は路盤材として有効活用している。その他エネルギー源の活用についても、業界団体などで企業の垣根を超え研究している所だ。この他、持続可能な開発目標(SDGs)に賛同し実現に向けた積極的な取組を進めている」
―塩の製法について。
 青木本部長
「膜濃縮製塩法を採っている。これは目に見える異物は勿論、海水中に含まれる環境ホルモンやダイオキシン、ヒ素などの物質も分子レベルで除去し、非常に品質の高い食塩を作ることができる。万が一、海が汚染されていたとしても安全だということ。この製塩法は日本が生み出したものであり、世界に誇れる技術だと言える」
―国内製塩他社との差別化は。
 青木本部長
「安全衛生管理という面に強みがある。塩は金属を侵すためサビ等の異物混入が大敵で、設備や商品のチェックは万全の体制を整えている。当社は2002年に医薬品製造許可を取得し、医薬品GMP管理のもと、日本薬局方塩化ナトリウム(医薬用原薬)を生産している。医薬品の製造は食品よりさらに厳しい管理が求められる。この経験が食品製造においても意識を高め、衛生管理レベルは格段に向上した」
―品質面での違いは。
 青木本部長
「製塩における『加工助剤』の大半を当社では使用していないことが特徴。基本的に製塩工程の中で無害化されるため『使っているからダメ』という訳では決してないのだが、当社は医薬品製造工場としての責任上からも、たとえ助剤といえども使用しないほうが望ましいとの考えで、使用を廃止している。根本から断っているため、それらの成分が混入することは万に一つもないと言える」
―今後の方針は。
 石井専務
「人間にとって必須である塩は安定供給・品質維持は最重要事項であるので、エネルギー相場等見極めながら、柔軟に対応していかなければならない。勿論、流れに身を任せるだけではなくて、効率化や環境負荷軽減などやるべきことにも取り組んでいく。全社員から常に改善策を募っており、年間100以上の意見が出て、中には数千万円規模のコスト削減に繋がることもある。製造から物流、事務作業まで、まだまだ改善できることはありそうだ」
【2022(令和4)年7月21日第5100号13面】

鳴門塩業 HP

7月11日号 滋賀特集 この人に聞く

株式会社丸長食品 代表取締役社長 金井 長光氏

「まぜちゃい菜」TVで話題
 購入者との交流が商品開発に
 株式会社丸長食品(金井長光社長、大津市尾花川)は、2014年のTー1グランプリ(現漬物グランプリ)でグランプリに輝いた「まぜちゃい菜」を始めとした漬物や、赤こんにゃく、佃煮、レトルト食品など様々な商品が揃う。地域性を追求した高品質な商品はテレビや一般紙などメディア出演の機会が増えている。金井社長は購入者とのコミュニケーションを増やすことが口コミを増やし、商品開発にも繋がっていると話す。
(小林悟空)
◇   ◇
‐メディア出演が連続している。
 「テレビ番組は全国放送、関西ローカル、他エリアローカルでも紹介いただいた。雑誌や一般紙でも取り上げてくださっている。多くは『まぜちゃい菜』の紹介だが、それを素材にタルタルソースにした『まぜタル』や、県名産の赤こんにゃくを出汁で炊いた『あかこん』、琵琶湖産の鮎を使った『大鮎の炊き込みご飯の素』など様々な商品を紹介頂いた。特にこの2年間のコロナ下ではお取り寄せグルメが注目され、テレビ出演の回数も非常に多くなった」
‐反響は。
 「大変な反響で、リピートしてくださる方も増えて通販部門は好調だ。コロナで落ち込んだ土産部門をカバーしてくれている。また気が付いたのが、メディア紹介の際にはいつも“漬物屋さんが作る~~”といったキャッチフレーズを付けて頂くこと。意外性だけでなく、漬物という言葉は日本人にとって熟成とか、職人技とかのイメージに直結する特別な言葉なのではないか」
‐メディア出演増加の背景は。
 「お客様の口コミが広がり、それがメディア関係者の目に留まっているようだ。正直なところ当社はSNS等による自力での発信はあまり積極的にできていない。代わりに漬物を使ったアレンジレシピの募集など、お客様と交流を取れる仕組みづくりをしてきたことで、口コミが広がっているのだと思う」
‐「まぜちゃい菜」について改めて教えて下さい。
 「2014年にT‐1グランプリでグランプリを獲得して以来、看板商品の一つとなった。前年に『青トマとサラダ』を出品した際、味の評判は大変良かったのだが“漬物とは言い難い”との評価があり受賞を逃した。ならば本当にご飯に合う漬物を作って見返してやろうという思いで生まれたのが『まぜちゃい菜』だ。主原料の日野菜は県の特産品。それまで根茎の部分のみ使われており、葉も有効活用する狙いがあった。今で言うSDGsにも合ったコンセプトだ。醤油ベースに食欲を刺激する唐辛子のピリ辛味、そして日野菜のシャキシャキ感を活かした。テレビ出演の際にもご飯に合うこと、アレンジもしやすいことを評価して頂いている」
‐「まぜタル」もテレビ出演した。
 「『まぜちゃい菜』のアレンジレシピをお客様から教えて頂く中で、人気があったタルタルソースを商品化したものだ。こうした商品を我々から提示することが、漬物は自由に食べて良いとさらに多くの方へ気づいてもらうきっかけになると思う。現在は『まぜちゃい菜』ともう一つの滋賀県名産品を組み合わせたコロッケを開発中だ」
‐漬物以外の商品も多彩だ。
 「それぞれ専門の職人が付き、製造している。赤こんにゃくをかつお節ベースのタレで炊き上げた『あかこん』は究極のおせちの一品としてテレビで紹介いただいたようにこだわった商品を作っている。当社は創業時から鮒ずしと千枚漬作りを続けており、野菜や魚、出汁、発酵等への理解が今の商品開発にも繋がっている。滋賀ならでは、当社ならではの商品開発を今後も続けていきたい」
【2022(令和4)年7月11日第5099号4面】

丸長食品HP
まぜちゃい菜(袋)
あかこん
大鮎の炊き込みご飯の素

7月1日号 愛知特集 会長に聞く

公益社団法人愛知県漬物協会 会長 山田 謹一氏

日本一の漬物屋に
「洋漬物」で新たな市場を創造

 公益社団法人愛知県漬物協会の山田謹一会長(株式会社若菜会長)にインタビュー。漬物グランプリ2022(主催:全日本漬物協同組合連合会)で同社の「真鯛のミルフィーユ」がグランプリ(農林水産大臣賞)を受賞したことや積極的に展開している「チーズの漬物」などについて話を聞いた。全漬連の副会長も務める山田会長は、消費の幅を広げるため「洋」に合った漬物の開発や提案の重要性を強調した。
(千葉友寛)
◇   ◇
 ―漬物GPでは御社のGP受賞をはじめ、愛知県の5社が金賞以上を受賞した。
 「弊社の商品をはじめ、愛知県の漬物が評価されたことを嬉しく思っている。愛知県は奈良漬から沢庵まで、作っている漬物の幅が広い。そのような意味でも多くの漬物が目に留まったと考えている。賞を狙ってエントリーしたわけではないのだが、グランプリを受賞させていただいたことで社員のモチベーションがアップし、大変ありがたく思っている。日頃から社員には規模は小さいけど、品質や味は日本一を目指してやっていこう、と言っていて、今年は胸を張って日本一と言えるようになった」
 ―GP受賞の反響は。
 「おかげさまで5月から注文が増えている。だが、弊社は多品目生産を行っているのでGP受賞の商品だけを作るわけにはいかない。『真鯛のミルフィーユ』は週1回の仕込みで限定販売している」
 ―自社製造のこだわりについて。
 「弊社は7割が自社製造で、残りの3割が仕入れ商品となっている。効率を考えれば仕入れ商品の方が良い部分もあり、数量が多いものは仕入れ商品で対応している。百貨店の店舗では約100品目用意する必要があり、自社製造の商品で全てをカバーすることはできない。それでも、仕入れ商品については割合を増やしていくことは考えておらず個性を出しながらこだわった商品を作り上げていくことをテーマとしている」
 ―チーズの漬物が人気となっている。
 「少し前に北海道の帯広の近くにあるチーズ工場を視察させていただいた。チーズはヨーロッパが本場だが、現在は国産のチーズがヨーロッパで賞を取るようになっている。日本のチーズはレベルが上がっていて、日本の食のレベルの高さに改めて感銘を受けた。美味しいチーズの特徴は食べ飽きないこと。本当に美味しいものは朝、昼、夜食べても飽きない。漬物業界においては、米離れが進む中で和食だけに頼っていても消費の幅が狭まってしまう。洋の部分も摂り入れて新しい食べ方や市場を創造していくことが重要だ」
 ―業界の課題は。
 「何と言っても値上げだろう。原料価格だけではなく、包装容器、調味料関連などの製造コストが上がっていることに加え、物流費、燃料、電気代も上昇している。感覚的には10%~15%くらいの値上げは消費者も認めてくれると思うが、20%以上上がると買い控えになる。弊社では3月に納品する商品も含めて全体の3分の1程度の商品を対象に値上げを行った。売れる商品は変わっていくと思うし、売り方も変わっていく。商品に付加価値がなければ残ることが難しい状況になってくるだろう」
【2022(令和4)年7月1日第5098号4面】

7月1日号 奈良漬特集 この人に聞く

盛田株式会社 営業本部食品事業部副事業部長 東日本支社デイリーフード営業部部長 河野 秀生氏

9月より6%値上げ
猛暑で「土用の丑」伸長予想
盛田株式会社 営業本部食品事業部副事業部長 東日本支社デイリーフード営業部部長 河野 秀生氏
 忠勇ブランドで奈良漬の製造販売を行う盛田株式会社では「あっさり味なら漬胡瓜」や「伝統製法なら漬」といった製品を売場で展開する。7月23日“土用の丑の日”商戦の見通しや奈良漬製品のトレンドについて、営業本部食品事業部副事業部長東日本支社デイリーフード営業部部長の河野秀生氏に聞いた。
(藤井大碁)
 ―奈良漬製品の動向。
 「近年、家庭用については巣ごもり需要の影響で堅調に推移してきたが、外出制限の解除と共に、売上は減少傾向となっている。ただ弊社においては、『あっさり味なら漬 胡瓜』が引き続き伸長しており、他の製品の落ち込みをカバーすることで、奈良漬製品全体の売上は前年を上回って推移している」
 ―「あっさり味なら漬胡瓜」が人気だ。
 「売場が広がり続けており、おかげ様で単品4億円の売上が視野に入ってきた。酒粕の香りを控えた甘めの味わいや、漬物の中でもポピュラーな野菜である胡瓜を使用していることなどが人気の理由だと分析している」
 ―値上げの状況。
 「奈良漬製品は9月1日出荷分より一律で6%の値上げを実施する。砂糖、重油、電気代、包材などあらゆるコストが上昇しており、海外原料に関しても為替の影響を受け、大幅なコストアップが見込まれる。量目調整は包材のロスが著しく、SDGsの流れに逆行してしまうため、環境配慮の観点からも、今回は実質値上げを進めていく」
 ―「土用の丑」商戦。
 「今年は鰻が若干高いようだが、猛暑が予想されており、売上は伸びると予想している。弊社では土用の丑の日に合わせた昨年6~7月の出荷額が、コロナ前の2019年と比較して115%と拡大しており、今年もさらに10%程の上乗せを目指す」
 ―消費者ニーズ。
 「外食でお金を使わない分、ちょっぴり贅沢な商品が好調に推移している。奈良漬もこの流れを受け、国産原料を使用して漬け方にこだわったものなど高質な商品がコロナ前より支持を集める傾向にある」
 ―今後に向けて。
 「まだ弊社のラインナップにない即食性の高いカップ容器のスライスタイプの商品を開発していく。土用の丑の日だけでなく、年間を通して定番品として提案することで、トライアル層にも手軽に奈良漬を手に取ってもらい、結果的にブロック物も売れる流れを作っていきたい」
【2022(令和4)年7月1日第5098号7面】

盛田 HP

五味商店(千葉県) 第17回こだわり商品展示会 7月20日に浜松町で開催

 「安全安心」「美味しい」「本物」「健康」といったテーマで全国から厳選した“こだわり食品”を有名百貨店や高質スーパーなどに納入する株式会社五味商店(寺谷健治社長、千葉県我孫子市)は、7月20日に東京都港区の東京都立産業貿易センター浜松町館にて「第17回こだわり商品展示会」を開催する。コロナ禍の影響により同展示会の開催は2019年以来3年ぶりとなる。寺谷健治社長に今回の見どころや消費動向の変化について聞いた。
(藤井大碁)
―こだわり食品の動き。
 「おかげ様で好調に推移している。3月決算は売上が前期比2桁増で着地した。今年のゴールデンウイークは外出制限が解除されたこともあり苦戦すると予想していたが、売上は落ち込むことなく、4月・5月も前年比105%と伸長している。コロナ禍でお金を使う機会が少なく、個人所得は減っているが個人資産は増えている。旅行や外食などにお金を使わない分、ちょっぴり贅沢なこだわり食品へのニーズは高まり、食に対する価値基準が変わった。食べ物に関しては一度美味しいものを食べてしまうと、品質を下げることが難しく、以前の食生活に戻れなくなるという側面もある。それが4月・5月に売上が減少しなかった理由ではないだろうか。値上げが続いている中での、売上増に驚いている」
―消費動向について。
 「節約できるところは徹底的に節約し、自分が食べたいものは少し贅沢しても食べるという消費形態が浸透している。十人十色の考え方であれば、可処分所得が減る中で、こだわり食品の需要がシュリンクしていくと考えられるが、今の消費スタイルは”一人十色”と言えるもので、消費者の一人ひとりが、節約と贅沢を両立するようになったと推測している」
―どのような販路が伸びているか。
 「特に雑貨店向けの売上が伸びている。近年、食品を取り扱う雑貨店が増えており、売り先が広がっている。こうした店舗では、アフターコロナに向け、ネットとリアルの激しい競争が予想される中、リアル店舗に呼び込むための仕掛けとしてこだわり食品の品揃えに力を入れている。また価格より品質を重視するスーパーマーケットも増えてきており、そうした店舗へのこだわり食品の納入も増えつつある」
―「こだわり商品展示会」の開催は3年ぶりとなる。
 「来場者も出展企業もリアル開催を待ち望んでいる。2月のスーパーマーケット・トレードショーも、首都圏からは来られたが、地方からは来られなかった方も多く、久しぶりに全国から多くの方に来てもらえる展示会になる。今回は会場が東京駅の丸ビルから浜松町の産業貿易センターに変更となり、新しい会場で皆様の来場をお待ちしている」
―今回の見どころ。
 「行政との取組に注目してほしい。111社が出展する中、三重県の尾鷲市や鹿児島県の指宿市など、我々と行政のコラボは、中小企業基盤整備機構のブースも含めると約30社に及ぶ。地方の人口減少が進む中、”地産外商”は地方の食品メーカーの重要なテーマとなっている。だが、そのために何をしていいか分からない、という経営者は多く、首都圏で市場を開拓するための手段として、我々を使ってもらう。まずは、地元でしか商売をしていなかった事業者が、展示会に出展することで、県外にも市場があるということを肌で感じてほしい。経営者のマインドを外向きに変えることが、我々の最初の目標だ。最終的なゴールは、首都圏に販路を広げることで売上を拡大し、製造ラインや工場の増設に繋げること。それにより地元の雇用を拡大し、地域活性化に繋げていく。既に展示会出展者にこうした成功事例があり、今後も行政と一体となり取り組んでいく」
―今後について。
 「県民割りなどが始まり人の流れが活発になっており、内食需要は減少していくと思うが、前述したような消費形態の変化もあり、ライフスタイルがコロナ前に戻ることは考えられない。美味しいものを食べたいというのは、人間の求める生理的な欲求の一つなので、それを満たすだけの商品をしっかり供給していく。また供給するだけでなく、その商品の価値をどのように料理すれば生かせるか、というところまで落とし込んで提案していくことが大切だと考えている」
【2022(令和4)年7月1日第5098号8面】

電子版 地域セレクション特別会員

「惣菜管理士」30周年 記念インタビュー

一般社団法人日本惣菜協会 専務理事 清水 誠三氏

【第2回】惣菜市場は前年比3%拡大 『総惣菜化』など5つのトレンド
 一般社団法人日本惣菜協会(平井浩一郎会長、東京都千代田区)では「惣菜管理士資格試験制度」が今年7月に創設30周年を迎える。それを記念して、本紙では、「惣菜管理士30周年記念インタビュー」として3回シリーズで、同協会の清水誠三専務理事にお話を伺う。第2回目のテーマは「惣菜市場について」。日本惣菜協会では6月1日に、惣菜の業態別市場規模や消費者動向などを調査する「2022年版惣菜白書」を発刊。今回の調査結果から算出した2021年の惣菜市場規模は、前年対比103%の10兆1149億円となり、コロナ禍の影響を受けて、11年ぶりに前年を下回った昨年からは回復したものの、2019年対比では98%に留まった。清水専務理事は、近年の惣菜市場の変化について『総惣菜化』など5つのトレンドを挙げ、即食をテーマにさらに市場が拡大していくという見解を示した。
(藤井大碁)
◇    ◇
 ―最新の惣菜市場規模が発表となった。
 「2021年の惣菜市場規模は前年比103%となり、2年ぶりに大台となる10兆円を回復した。2020年は前年比95・2%とコロナの影響を受け2009年以来11年ぶりに前年を下回ったこともあり、まずはこの結果にほっとしている。10年前の2011年比で見ると食市場全体は103・3%で推移している。コロナ禍により外食市場が79・7%と10年前に比べ大幅に縮小する中、惣菜市場は121%と順調に拡大している」
 ―業態別の推移。
 「全業態で前年をクリアしたものの、明暗が分かれている。顕著なのは食品スーパーの好調ぶりで、コロナ前と比べ大きく構成比を上げている。食品スーパーは、コロナ初期こそ感染対策のための客数減などにより惣菜売上が苦戦したものの、その後回復。他の業態が全て前年を下回る状況となった2020年に関しても100・8%と唯一前年を上回り、2021年も前年比106・6%と大きく伸長している。一方、コロナ禍により大きな打撃を受けた百貨店やコンビニは徐々に売上が回復しているもののコロナ前には届いていない。全体的には、外食を控えている方がまだ多く、外食マーケットの一部が惣菜へシフトしていることもあり、惣菜への注目度や消費者の利用度は高まっている。今後、インバウンドを含めて観光客が増加していけば、全ての業態で売上はさらに回復していくのではないか」
 ―近年の惣菜市場の変化。
 「コロナ禍の影響もあり惣菜市場は目まぐるしく変化しているが、大きく分けて5つのトレンドがあると分析している。1つ目が『総惣菜化』だ。現在、惣菜売場の強いスーパーは売上が好調な傾向にある。その中で見られるのが、即食性の高い商品をどの売場においても販売する流れだ。鮮魚売場ではアジフライや鮭弁当、精肉売場ではサイコロステーキやローストビーフ、青果売場ではカップサラダやカップフルーツといった具合に、それぞれの売場で即食をテーマにした商品ラインナップが広がっている。2つ目が、『冷凍食品の伸長』。保存が効き、食べたいときにすぐ食べられる利便性に加え、近年の味わいの進化もあり、需要が伸びている。3つ目が『外食のフードデリバリー、テイクアウト、キッチンカー』。コロナ禍により、外食が中食に大きくシフトし、このカテゴリーが拡大している。4つ目が『Eコマース、宅配サービス』。オイシックス、ヨシケイ、生協といった食品宅配事業者の存在感が高まった。素材だけでなくミールキットや冷凍食品の販売も好調に推移している。5つ目が『異業種の参入』。無印良品がスーパーを展開し食品や惣菜を販売し始めた他、健康食品で有名な世田谷自然食品も冷凍惣菜の販売を始めるなど、新しい事業者の参入が目立っている」
 ―消費者動向について。
 「惣菜白書の調査によると、消費者が惣菜を購入する際の選択基準は、一番目が美味しさ、二番目が価格となっており、いくら価格が安価でも美味しくないと支持を得られないということが分かる。特に、鮮度の良さや材料の良さなど食材の品質を重視する消費者が多い」
 ―惣菜市場の展望。
 「年収別の中食、外食の利用率データを見てみると、年収の低い層は外食の利用率が低いが、中食は年収の多い少ないに関わらず利用率があまり変わらない。このデータからも、中食が国民全体の食生活に浸透していることが分かる。先ほどお話しした総惣菜化の流れもあり、即食というニーズに支えられ、中食市場はまだまだ伸長していくと考えている。現在、外食のフードデリバリーやテイクアウトといった業態については、惣菜白書の市場規模には含まれていない。そういう意味では、惣菜白書で捉えきれていない中食マーケットについても間違いなく拡大していると言える」
 ―今後求められていく惣菜。
 「高齢者が増加する中、惣菜を利用する理由の一つとして経済合理性が挙げられる。家族が多いと素材から作ったほうが安いが、2人住まいであれば、買ってきた方が安いというのが実情だ。こうした理由から惣菜を購入される方の中には、毎食惣菜を購入したいという方もいる。だが個人的には、現在の惣菜は毎食食べるには味が濃すぎると考えている。家で作る惣菜には、完全には代替ができない。今後に向け、毎日、毎食でも食べられる優しい味わいの『ケの惣菜』が開発されることを期待したい。家庭内でご飯を炊く機会が減る中で、こうした惣菜や弁当が登場することにより、ますます惣菜市場の拡大が見込めるのではないだろうか」
【2022(令和4)年6月26日第5097号2面】

6月26日号 山陰特集 トップに聞く

宝福一有限会社 代表取締役社長 髙野 昌康氏

ラベル傾きも妥協せず
地域密着で真のブランド確立
 宝福一有限会社(鳥取県倉吉市)の髙野昌康社長にインタビュー。高野社長は、宝福一が株式会社大物のグループに参画した2019年に社長就任。その直後にコロナ禍に見舞われることとなったが、この期間を活用して宝福一のブランド育成を目指し品質向上や、SNSや各種メディアによる情報発信を強化。成果を上げつつある。
(小林悟空)
◇    ◇
 ―コロナが発生し2年半が経つ。
 「土産の売上構成比が大きい会社だったためコロナの影響は大きく、行政の補助金を受けて何とか乗り越えられたのが正直なところ。しかしそのお陰で、宝福一の強みと課題点を見つめ直し、改善に取り組む時間が得られた。無駄の削減、IT導入による作業効率改善、ブランド育成へ、社員全員を巻き込んで取り組むことができた」
 ―ブランド育成について。
 「第一に品質向上。商品をどこで、誰に、どのように買って頂きたいかを考え、それに見合った品質を目指した。看板商品に育ちつつあった『福ノ誉シリーズ』はラベルシールの傾きにまで気を配るように徹底した。細かいことだが、これでようやく鳥取県内の土産に留まらず、都市部のセレクトショップや、ギフトとして販売するにふさわしい商品になれたと思う」
 ―情報発信にも取り組まれている。
 「地域で愛される企業を目指し、SNSや動画サイトで日々の会社の様子を発信し始めた。地元新聞での発信も増やしている。また当社は小ロットでのOEM対応が得意なので、個人経営の飲食店様などとの取引も増やした結果、これが口コミを呼び地元事業者とのコミュニケーションが増えた。地域密着企業であることが真のブランドを作り、他府県での販売にも良い影響を与えてくれる」
 ―価格改定も進めている。
 「この2年間にも商品ごとに適正価格を追求し価格改定、規格変更を行ってきた。今回のインフレには秋頃に対応していく予定だ。とはいえ、ただ値上げをするだけではお客様の理解を得られないので品質向上も同時に進めている。その一例が、『プレミアム健康酢』のリニューアル品として発売した『飲むお酢』。リッチな果汁感と飲みやすさで、従来以上の売れ行きとなった」
 ―大物との相乗効果は。
 「宝福一は非常に魅力的な商品を作っていたが後継者が不在で、縁あって大物グループに参画した。大物としての販路を活かし、宝福一の商品をもっと広く販売していくこともできるはずだ。また宝福一の運営を通して得られたメーカーとしての知見は、大物にとって貴重なものとなっていきそうだ」
【2022(令和4)年6月26日第5097号7面】

宝福一 HP

6月26日号 徳島特集 理事長に聞く

徳島県漬物加工販売協同組合 理事長 田中 民夫氏

野菜契約価格を引き上げ
重要度増す国産野菜の一大産地
 辰巳屋食品株式会社(板野郡藍住町)の田中民夫社長にインタビュー。辰巳屋食品は現在①農業、②一次加工原料の卸、③奈良漬や千枚漬・菊花蕪漬等の製造、と3事業を柱とした安定経営を進めており、特に奈良漬は宮内庁献上の実績を持ち、巣ごもり消費を受け販売を伸ばした。徳島県漬物加工販売協同組合理事長としては生産農家と漬物メーカー、双方の立場から価格見直しの必要性を指摘するとともに、県全体で原料の安定供給を目指すため組合事業の多角化について考えを語った。
◇    ◇
 ―徳島の農業について。
 「生産農家の高齢化や後継者不足はやはり問題となっていて、その最大の原因は価格だと思う。瓜などの漬物原料は大半が契約栽培となっているが、契約価格が十年以上あまり上がっていない。その一方で塩や肥料、資材は年々値上がりしており生産農家は利益を得づらいのが現状だ」
 ―今年は値上げの年となっているが。
 「生産農家との契約価格を引き上げた。また当社から出荷する一次加工原料や完成品は野菜価格に加え、調味料や物流コストの上昇も乗ってくる。価格見直しは検討しなければいけない」
 ―今年の奈良漬の見通しは。
 「コロナが落ち着いてきて業務筋からの注文が増えていること、また昨年が不作だったことから、今年は瓜、胡瓜ともに作付を増やしている。海外旅行の回復はまだ先だろうが、その分国内旅行が活発になってきているので期待したい」
 ―通販やSNS発信を強化されている。
 「令和元年に奈良漬を宮内庁へ献上したことをきっかけに、以前は業務筋への出荷が多かったが、徐々に自社ブランドを強化している。通販やふるさと納税、量販店への出荷が増えたことで、消費者の声が直接届くようになり、改めて自分の仕事に誇りを感じている」
 ―農業、原料卸、メーカーのバランスは。
 「3つ全てを全力で取り組むのが当社にとってベストと感じている。柱を3本持つことは経営的に安定するだけでなく、仕事量を年間通して平準化することにも繋がる。夏は瓜の収穫時期と、土用丑や中元による奈良漬の出荷最盛期が重なる。冬は千枚漬・菊花蕪漬がある。一方で春と秋は漬物メーカーにとっては稼働率の谷となりやすい時期なのだが、当社の場合は農業へシフトすることで安定して仕事がある」
 ―組合事業について。
 「資材の共同購入や、外国人技能実習生の受入事業など、実効性のある事業が脈々と受け継がれてきた。これをさらに推し進め、得意分野ごとに分業体制を築いたり、物流の共同化を図ったりと、原料の安定供給に貢献できる事業も検討していきたい。まずは、組合内の情報交換の促進が第一歩だ」
 ―国産原料の重要度は増している。
 「徳島漬協加盟者の多くが農業やその一次加工に関わっている。漬物だけでなく惣菜など様々な用途に使われており、日本の食文化の縁の下の力持ちだ。我々が安定供給を実現していくことは徳島全体のイメージアップとなり、生産農家の収益確保、野菜の国内自給率改善へも繋がっていくはずだ」
【2022(令和4)年6月26日第5097号8面】
 

6月11日号 酢漬特集 トップに聞く

株式会社みやまえ 代表取締役社長 宮前 有一郎氏

7月から価格改定宣言
品質とサポート力で付加価値

 生姜の総合メーカーとして全国でトップクラスのシェアを持つ株式会社みやまえ(奈良県生駒郡平群町)の宮前有一郎社長にインタビュー。宮前社長は日本漬物産業同友会の立ち上げに尽力し初代会長を務めるなど漬物業界を牽引する存在として信頼を集めている。5月に実施された情報交換会では、7月からの値上げを宣言。今なお円安やコスト上昇が継続する中、品質とサポート力を強みに、価格以上の価値を提供していく戦略を語る。
(小林悟空)
◇   ◇
 ーー同友会会長を2期4年間務められた。
 「日本漬物輸入事業協同組合の解散時に、任意団体として同友会を立ち上げて活動存続を呼びかけ、会長を務めることとなった。後半2年間は新型コロナがまん延し、他団体の活動が軒並み制限された中、オンライン会議をすぐに取り入れ情報共有の場を提供できただけでも、同友会の存在意義は示せたと思う」
 ーー情報交換の重要性。
 「我々メーカーは、取引先とのやり取りだけでは情報が偏ってくることがある。産地の情報は正しいのか、原料の仕入れ価格が相場に合っているか、経営者として何に取り組むべきか、必ず直面する悩みだ。同業者とコミュニケーションを取ることが出来れば自分の立ち位置を認識し判断の材料が得られる。遠藤新会長には、情報共有はもちろん、業界活性化へ向けた取組を期待したい」
 ーー情報交換会で7月からの値上げを発表された。
 「調味料、包材など各種資材コストの上昇があり、企業努力で吸収することが不可能と3月時点で判断した。7月からの値上げを案内し大半は了承頂けた。ところが、資材コストの上昇は4月以降も続き、急激な円安も発生した。そして今年度産の生姜原料は中国、タイともに作付けが減り、肥料等の高騰を受けて高止まりする見通しと、値上げを完了しても厳しい状況となってしまった」
 ーー価格以外の強みが求められる。
 「商品自体の品質と、生姜の総合メーカーならではのきめ細かいサポート力の2点をお伝えするようにしている。当社が主に使用するのは中国南部やタイ産原料であり、これらは日本で古来から栽培していた品種に近く、辛みがマイルドで柔らかい。買付時期も他メーカーより早く設定しており、繊維質が少なく漬物用に適した原料を確保できるルーチンを組めている。商談の際にはブラインドテストを行い、品質の差を実感していただいている」
 ーーサポート力について。
 「一つが安定供給。今回、海上輸送が不安定になり、海外完成品を扱う商社などは欠品を起こしたが、当社の場合は在庫を国内に確保しているため基本的にその心配はない。もう一つは小回りが利くこと。味付けやカット形状、包装形態など得意先の要望に応えられる。また惣菜や練り物など他業種のメーカーへの納入も多いのだが、その際には紅生姜の色止めなどを求められることもある。そうした専門性の高い要望へ応えられるのは当社の強みだと感じている」
 ーー今後の方針は。
 「生姜を軸として、漬物に限らず幅広い商品を提供する。OEMも活用していく。その一つが2013年に発売した『冷凍刻み生姜』。1本1本を個別急速冷凍しているため調理の手間を削減でき、中外食業界でご利用頂いている。他にも機能性を高めたおろし生姜や粉末生姜など着手している。これまで培ってきた生姜に関する知見と販路を活かし、ビジネスチャンスを見出していきたい」
【2022(令和4)年6月11日第5096号6面】

みやまえ HP

6月11日号 わさび関連企業特集 理事長に聞く

静岡県漬物商工業協同組合 理事長 望月 啓行氏

オンリーワン商品で差別化
「かつおのUMAMIわさび」が金賞
 静岡県漬物商工業協同組合の望月啓行理事長(田丸屋本店社長)に商品動向や今後の展望についてインタビュー。望月理事長は、コロナ後に向け、観光販路以外の売上比率上昇やオンリーワン商品の開発などに取り組んでいく必要性を語った。
(藤井大碁)
 ーー商品動向について。
 「コロナ禍により観光販路は大きな影響を受けた。ようやく感染状況が落ち着き、人が出始めてはいるが、弊社ではバス旅行の売上が大きかったため、そこが戻らなければ本格的な回復は見込めない。バス会社の企画が回復するまでにはまだ数カ月の時間が必要だろう。駅や空港などの交通販路も回復傾向にはあるものの、コロナ前の状況には戻っていない。この先も完全に売上が戻ることはなく、戻っても8割程度だと考えている。また小売店向けの売上に関しても、巣ごもり需要が落ち着き、前年比でみると厳しい状況にある。観光販路の売上がコロナ前に戻らない中、小売店を含めてそれ以外の売上構成比をどう高めていくか考えていかなければならない」
 ーー具体的な施策は。
 「もう一度、自社の強みと付加価値を整理して、それに応じた新商品を開発していく。あえてマーケットを絞り、何かしらに特化した形で商品開発を進めて、他のメーカーとは違ったオンリーワン商品を発売することで差別化を図っていく。もう一つは、販路の構成比を見直していく。業務用の売上比率を伸ばすための取組などを行っていきたい」
 ーーアウトドアに特化した新商品「WASABBQ(ワサビービーキュー)~太陽と青空のわさび~」の売行きが好調だ。
 「“キャンプ食”というトレンドに合わせて、ターゲットを明確化したことがヒットに繋がったと考えている。アウトドア用品店などこれまでなかった売場にも販路が広がっている。ここまでトライアル層の獲得はうまくいっているが、今後リピーターになってもらえるよう努力していかなければならない」
 ーー漬物グランプリ2022にて「かつおのUMAMIわさび」が金賞を受賞した。
 「『かつおのUMAMIわさび』は、わさびを日常的に食卓で楽しんでもらえるようご飯との相性の良さを追求して開発した商品だ。問屋さんから受賞商品をまとめて量販店向けに提案したいというお話も頂いている。受賞商品の売上が伸びれば漬物グランプリの価値も上昇していくと思うので、今後の売上増に期待したい」
 ーー「静岡県の持続的なわさび産業振興」に関する連携協定を締結した。
 「NTT西日本、鈴生、田丸屋本店の3社が連携し、畑わさびの生産量を増やしていくための取組がスタートした。水わさびは環境面で生産量を拡大していくのは容易ではなく、既存のマーケットを維持しながら、新しいマーケットをつくろうという取組だ。ICTのプロであるNTT西日本、農業のプロである鈴生、ワサビのプロである田丸屋本店が組み、新しいマーケットをつくり、長期的に静岡県のわさびマーケットを拡大していくことを目指していく」
 ーー今後に向けて。
 「様々な事がコロナで変わった。PDCAの回し方や、付加価値の付け方、提案の仕方などもコロナ前と大きく変わっている。幸いなことに食は無くなることのない業態だと思うので、コロナで確立された方法論を捉え、新しい取組を進めていきたい」
【2022(令和4)年6月11日第5096号10面】

静岡県漬物商工業協同組合 HP
田丸屋本店 電子版Web展示会

「惣菜管理士」30周年 記念インタビュー

一般社団法人日本惣菜協会 専務理事 清水 誠三氏

【第1回】惣菜製造業のAI・ロボット化 日本が誇る惣菜文化を未来へ
 一般社団法人日本惣菜協会(平井浩一郎会長、東京都千代田区)では「惣菜管理士資格試験制度」が今年7月に創設30周年を迎える。それを記念して、本紙では、「惣菜管理士30周年記念インタビュー」として3回シリーズで、同協会の清水誠三専務理事にお話を伺う。第1回目のテーマは「惣菜製造業のAI・ロボット化」。日本惣菜協会では、2021年9月に、経済産業省が推進する「令和3年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に事業の代表として採択され、15社の協力企業とともに、ロボット・AI・量子コンピューターの現場導入に取り組んでいる。清水専務理事は、将来的にロボット1台あたりの価格を下げることにより、惣菜業界に広くロボットを普及し、人手不足などの課題を解決することで、日本の惣菜文化を未来に繋いでいくビジョンを語った。
(藤井大碁)
◇    ◇
 ーロボット事業を実施することになった背景。
 「2020年に協会会員向けに実態調査を行ったところ約250社から回答が得られ、惣菜業界が対処すべき課題が浮かび上がった。労働人口の減少、見込み生産によるロスの発生、外国人や高齢者中心の労働環境など、その課題は様々で、マーケットは伸長しているものの、課題も多いのが現在の惣菜製造業ということが明らかになった。惣菜製造業は労働集約型であり、人材確保に苦慮しているため、デジタル化を推進することによりこうした課題を解決していこうという流れの中、AI・ロボット化推進に向けた事業を行うことになった」
 ー経済産業省と連携したプロジェクトがスタートしている。
 「2020年度に、ロボットが稼働しやすい環境、〝ロボットフレンドリー(ロボフレ)な環境〟の実現にあたり組成された予算事業『革新的ロボット研究開発等基盤構築事業』の食品分野の分科会(食品TC)に協会が参画させて頂き、活動を行ってきた。2年目に現状の課題について発表を行ったところ、公平性が担保でき、業界全体に影響力が出てくるということで、2021年度より、協会が補助事業の幹事を務めることになった。現在、惣菜盛付ロボットシステムの開発、量子コンピューターによる惣菜作業者シフト計算の実用化開発などを進めている。日立製作所やキユーピーで活躍した技術者の荻野武氏がAI・ロボット推進イノベーション担当フェローとして協会に加入し、プロジェクトの陣頭指揮を執っている。荻野氏が提唱する『One for all, All for one』や『利他の心』という理念の下、食品TCに加入する様々なメーカーが志を一つにして、業界貢献のために取り組んでくれている」
 ー具体的にどのような作業をロボットが行うのか。
 「国内で食品製造業に従事している方は130~150万人とされているが、その中で盛付に従事している方は約半分の60万人に及ぶ。これをなんとかしていきたいと考え、2種類の盛付ロボットが既に4社(マックスバリュ東海、ヒライ、イチビキ、藤本食品)の現場にテスト導入されている。ロボットは、一般的に、導入される現場に応じてカスタマイズする必要がある。だが、そうすると2000万円を超えるような高額なものになってしまい、とても中小の惣菜企業が導入できるような価格には収まらない。これを今回参画している15社が共同開発し、またロボフレな環境を整えることで標準化し、ロボットの販売量を増やすことで価格を下げ、中小企業が無理なく導入できるような価格でロボットを供給することを目指している。今回は経済産業省の補助事業なので、協会や惣菜業界だけが恩恵を受けるだけではダメだと思っており、惣菜業界以外の食品メーカー様、漬物メーカー様でも使えるようであれば、どんどん使って頂きたい。それにより受注台数が増えれば、ロボットの価格が下がっていく。最終的には、1台500万円でロボットを販売することが目標だ。補助事業の期間は5年間なので、あと3年以内に食品業界に広く導入できるよう取り組んでいく」
 ー量子コンピューターによるシフト計算。
 「もう一つの補助事業が、量子コンピューターによるシフト計算だ。複雑な従業員のシフト計算は多くの業界にとって悩みの種になっている。数百人規模のシフトの最適化を現存のコンピューターで行えば、数十年、数百年かかるものが、量子コンピューターであればわずか数分でできる。シフト計算は現在5社が導入している。またそれに付随して、何をどれだけ生産するべきかという需要予測のシステム開発にも取り組んでいる。需要予測は様々な業界のデータを取り入れ、どこでも使えるシステムを目指しており、実用化できれば食品ロス削減にも大きく貢献できるものと考えている。その他にも、中小企業庁のものづくり補助金事業を活用し、協会会員企業30社を対象に課題解決を支援する取組も並行して行っており、工場をデジタルで分析して効率化を図る〝デジタルツイン〟の運用などもスタートしている」
 ーロボット導入の課題。
 「日本人の美的感覚は研ぎ澄まされており、惣菜や弁当の盛付にも一定の美しさが求められている。だが、現在のロボットの盛付は残念ながらそこまでのレベルには達していない。それがエシカル消費の浸透などでどこまで許容してもらえるようになるか。ロボットの盛付のレベルも今後上昇していくと思うので、どこかで合致点が見つかることを期待している。またヒライでは、ロボットが盛付しやすい大振りな具材を詰めた〝ロボフレ弁当〟を開発した。今の弁当がそのままロボット化されるイメージではなく、まったく違った形でイノベーションが起き、ロボフレ弁当のようにロボットが簡単に盛付できる弁当が一気に普及するというイメージもある。もう一つの課題が、盛付のスピード。現在は安全基準が厳しく盛付スピードを上げることができない。生産性に合うスピードにどこまで追いついていけるかが課題となる」
 ーロボット導入には、ロボフレの考え方が重要とされる。
 「消費者の意識改革も大切だが、流通関係においても、番重や容器の規格を統一化することができれば一気にロボフレな環境が整う。惣菜の競争領域は、味や栄養分などの商品開発に絞り、それ以外の領域は、協調領域としていくことができれば、効率化が進み、環境にも優しく、SDGsの推進にも繋がる」
 ー惣菜製造業の理想的な未来。
 「AI・ロボット化によるメリットは、人手不足解消だけでなく、作業環境の改善や惣菜業界のイメージアップにも及ぶ。理想的な未来像は、ロボットと人が共存する製造現場で、揚げ物など危険が伴う調理場にはロボット、繊細な職人技が求められる調理場には人というような融合がベストではないか。ロボット化を推進し、惣菜業界の課題を解決することで、日本が誇る素晴らしいお惣菜の食文化を未来に繋いでいくことが最大の目標だ」
【2022(令和4)年5月21日第5094号3面】

5月21日号 資材機器特集 インタビュー

株式会社タカハシ 代表取締役 髙橋 晃氏

高い処理能力の裁断機
独自“垂直裁断方式”で著名

 食品用機械と設備の総合メーカー、株式会社タカハシ(東京都中野区)は、独自設計の“垂直裁断方式”による「タカハシ式高速裁断機」で著名である。その高い処理能力に加え、操作性、安全性、衛生面においてもワンランク上の作業環境を実現。漬物・佃煮・珍味をはじめ給食・食品・ペットフード・製薬業界まで、多方面で活躍している。同社代表取締役の髙橋晃氏に取引実績のある各業界の動向、課題などについて話を伺った。(文中敬称略)
◇   ◇
‐取引のあるカテゴリーの現状は。
 髙橋 ペットフード業界は元気がある。無添加の食材や健康バランスを考えた凝った商品など、かなりいい値段のする物も多い。人が食べる物と同じ切り方をするが、ユーザーによっては斜めに切ってほしいという要望もある。練り物のキャットフードの乾燥品は、焼く前に10㎜ほどに細かく裁断してほしいという要望があり、角切りの刃で裁断する。以前は手作業でやっていたものを機械で裁断することで、効率が良くなった。切る際に、粘度のある食材が刃に付かないように裁断するのは、これまでの経験上のノウハウが生きてくる部分だ。
 岩手・宮城の海岸端では、「三陸わかめ」ブランドで海藻を手掛けているメーカーさんも多い。漬物業界では、九州の沢庵や高菜漬のメーカーさんが堅調だ。その他では、食肉業界、ケーキやドライフルーツなどの菓子業界に導入実績がある。海外進出は、この2年間コロナでストップしてしまっているが、タイでソーセージやウインナーを加工しているメーカーさんへは何台か納入させていただいている。
 その他では、せんべいやあられなどの米菓業界に納入しているスライサー機のメーカーより、対応できない裁断の依頼が来ている。スライサーでは繊維質の食材は切りにくいため、垂直裁断の依頼が来ることもある。そういった機械メーカーの横の繋がりによって、お陰様で取引先が広がっている。
‐機械メンテナンス対応の課題は。
 髙橋 機械の動きを制御する電子部品は寿命が短く、ほぼ5~6年で部品交換を行わなければならない。ところが現行では世界的に電子部品が不足しており、注文してから納品まで半年ほどかかることもしばしばある。部品調達では、オーバーホールした際に出た部品を再利用するなどの対応を行っているが、なかなかうまくいっていない。
 顧客は機械が故障したり、調子が悪くなった時に連絡をくださるが、そこから交換部品を発注しても、何カ月も待たなければならなくなる。そうなると製造ラインが止まってしまい、ご迷惑をおかけすることになってしまう。
 そこで、メンテナンス契約を結んで定期的に訪問し、大きな故障になる前に機械をチェックする体制を作っていきたいと思っている。まず、関東エリアで始めて行きたいと考えている。
‐人手の確保について。
 髙橋 何年も前から恒常的な人手不足が続いている。工場内での製造員が足りずに、納期に時間がかかっているのが現状だ。東京都公認の人材募集サイトなども利用し、なんとか確保していきたい。
‐漬物の将来展望は。
 髙橋 漬物は料理素材としての利用度が高まっている。コンビニのサンドイッチやポテトサラダに、細かく切った沢庵が使われている。沢庵に限らず、カットの仕方で様々な食材としての使用法が考えられるので、「こんな切り方ができないか?」というアイデアがあればぜひ、相談していただきたい。
【2022(令和4)年5月21日第5094号5面】

電子版 工場長・店長必見!関連資材機器・原料 →タカハシ登録ページ

5月21日号 新社長に聞く

マルヤナギ小倉屋 代表取締役社長 柳本 勇治氏

食育型カンパニーに
伝統食材の素晴らしさ次代へ

 蒸し豆・国産蒸しもち麦・煮豆・佃煮の製造・販売を行う株式会社マルヤナギ小倉屋(柳本勇治社長、神戸市東灘区)は、27年社長を務めた柳本一郎氏が今年2月に会長へ就任し、新社長には副社長の柳本勇治氏が選任された。同氏は、日本初の蒸し大豆商品や、国産もち麦商品の開発・販売を主導してきた。多くの人に「食と健康に対する関心」をより高めてほしいと語る柳本新社長に新体制での取組について話を聞いた。
(大阪支社・高澤尚揮)
◇   ◇ 
 当社は、経済産業省が推進する健康経営優良法人の認定制度において、4年連続(大規模法人部門は2年連続)認定取得している。食を通じて人々の健康に奉仕するためには、社員自らが健康に関心を高めて増進する必要がある。
 すでに各種取り組み、社内の肥満率(BMI25以上)が大幅に改善した実績があり、近隣企業からの依頼で、当社の取組を講演でご紹介したこともある。2022年に注力したいのは、更なる健康経営と地域の健康増進だ。
 まず全社員の健康診断を9月までに行い、早期にフィードバックできるようにする。特に循環器疾患と糖尿病対策の強化を図り、具体的な数値目標としてLDLコレステロールと糖代謝の異常者数の10%改善を目指す。メンタルヘルスにも気を配り、ストレスチェックを全員に実施し、ストレスを比較的感じやすい中堅社員と若手社員における高ストレス者の割合をそれぞれ10%を目標に軽減したい。社内での成功事例を着実に広げていく方針だ。
 地域の健康増進については、当社で加工するもち麦は、兵庫県の加東市が主な生産地で、行政・JA一丸となって地域の名産化に取り組んでいる。もち麦の健康機能性の研究には、加東市役所の職員の方々にご協力いただいた。食育活動では毎年、現地の小学校でもち麦の生育と機能性について学習してもらい、給食でもち麦を使用した料理に毎月親しんでもらっている。
 現地でのPRは、市内のケーブルテレビで30分番組を放送していることもあり、同市のもち麦消費量は全国平均の4倍以上となっている。人口4万人の加東市の町全体の健康増進へ貢献し、さらには全国的にもち麦の消費量が増えるように仕掛けていきたい。
 当社のメインテーマは、「伝統食材の素晴らしさを次の世代へ」だ。創業社長が伝統食メーカーとしての礎を築き、現会長の柳本一郎が日配の販路を広げた歴史がある。
 私は3代目の社長として「新しい食の提案に取り組む食育型カンパニー」に成長させたい。伝統食品の素材の良さ、おいしさ、健康性といった素晴らしさを発信していきたい。
 昨年は、地元兵庫を代表するベーカリーの協力の下、もち麦を粉末化したもち麦粉でアレンジパンを作っていただく「ひょうごもち麦パンプロジェクト」を発足させた。地元産の原料を魅力に感じてもち麦パンを製造していただき、消費者からはもっちり食感が好評だったと聞く。
 4月には神戸市の元町にもち麦を使用したおこわ・おはぎの専門店「m’ocowa KOBE(もこわ こうべ)」をオープンさせた。おこわやおはぎは従来もち米で作るが、同店ではもち米ともち麦を半分ずつ使用している。食べ歩きも可能で、新しい食の提案の1つとして、利用者にもち麦を楽しんでほしいという思いを込めた。  
 チャレンジはまだまだ道半ばであり、事業づくりでは他社との「違い」をいかに生み出し、PRできるか常に考えている。健康経営や地域密着の取組が社員の採用や定着率に繋がっていると実感している。
 皆様のご支援を引き続き賜りながら、ご期待に応えられますよう更なる高みを目指して精進して参ります。よろしくお願いいたします。
【2022(令和4)年5月21日第5094号8面】

マルヤナギ小倉屋 HP

5月16日号 漬物の素・夏の甘酒特集 インタビュー

日本いりぬか工業会 会長 足立昇司氏

ぬか床はSDGsに貢献
地道な情報発信を続ける
 3月の総会で日本いりぬか工業会の会長に就任した足立昇司氏(株式会社伊勢惣専務取締役)にインタビュー。会の活動に向けて抱負を聞いた。足立会長は「ぬか床はSDGsの活動に貢献できる存在」と語り、情報発信の重要性を強調した。
(千葉友寛)
◇   ◇
 ―3月の総会で新会長に就任した。
 「諸先輩方のご指導、ご鞭撻をいただきながら事業を進めていきたいと考えている。どのような活動をやっていくのか考えていることもあるが、コロナの影響で今後の動きが読めない部分も多分にあるので、まずは総会で承認された議案を着実に進めていきたい」
 ―事業の具体的な内容について。
 「令和4年度の事業計画は、①関連省庁との関係強化、行政情報及び対応。②いりぬか製品の啓発及び消費者への普及促進活動の推進。③会員の事業に関する知識及び情報の提供。④関係団体との連絡協調。⑤工業会加入促進。⑥分科会(委員会)の設立による新組織体制の構築。⑦その他、全員参加型の工業会としていくことが確認され、具体的な分科会の内容などを協議していく。昨年まではコロナの影響で会の活動は休止状態だった。会の活動としては今年から再スタートになる」
 ―7年前に5月8日を「ぬか漬の日」に制定した。
 「ぬか漬の普及を目的にぬか漬の日を制定した。それから2年はイベントを開催したが、その後は途絶えてしまっている。今年は事業計画に組み込めなかったので、来年は消費者を巻き込んだ活動を実施したいと考えている。また、会でぬか漬をPRするプロモーション動画を作ったのだが、現在は見られなくなっている。動画にはストーリーがあって、ぬか漬とは?というところから、ぬか漬の漬け方など、一連の流れを映像で紹介する内容だったのだが、まだ途中までしか作ることができていないまま止まってしまっている。それも復活させてストーリーを完結させたいと思っている」
 ―動画などを通して消費者に伝えたいことは。
 「ここ数年、ぬか漬がブームになっている感もあるが、まだまだ知らない人やぬか漬をやったことがない人も多い。使い方が分からないと、いりぬかを購入してもそこで終わってしまう。これは私が考えていることだが、会に加盟している企業の商品に動画のQRコードがあれば携帯で動画を見ながらぬか漬を作ることができる。これを1社でやるとコスト負担なども大きいので、会としてやれれば良いと思っている」
 ―ぬか床は食品ロス削減にも貢献できる。
 「米ぬかの有効活用や残った野菜を捨てることなくぬか漬にして食べられること、発酵食品として健康に寄与できることなど、SDGsの活動に貢献できる存在だということを訴えていくことも必要だ。ありがたいことにぬか床やぬか漬がメディアで紹介される機会が増えているが、情報発信を続けていかないと取り上げられなくなる。ぬか床にはまだまだ注目される要素があり、やれることもたくさんあると思う。これからも地道な情報発信を続けていきたい」
【2022(令和4)年5月16日第5093増刊号4面】

伊勢惣 HP

5月6日号 キムチ浅漬特集 インタビュー

宮本社長
影山副社長

株式会社ピックルスコーポレーション 代表取締役社長 宮本雅弘氏 代表取締役副社長 影山直司氏

2023年2月期業績は減収予想
グループの競争力強化へ

 株式会社ピックルスコーポレーション(埼玉県所沢市)代表取締役社長の宮本雅弘氏と代表取締役副社長の影山直司氏にインタビュー。前期の決算や様々なコストが上昇し、あらゆる商品の値上げが相次ぐ中、2023年2月期連結業績予想などについて話を聞いた。
(千葉友寛)
◇    ◇
 ‐減収ながら過去最高の利益を達成した要因について。
 「原料が年間を通じて安定していたことが一番の要因。胡瓜製品については一部で値上げを行った。また、不採算な商品の見直しやアイテム数見直しによる生産の効率化の取組を行った。売上は秋口からキムチや浅漬の売れ行きが低調となったことなどで前年に届かなかった」
 ‐惣菜が10・8%増と伸びている。
 「コロナの影響で巣ごもり消費が増えて2年が経っている。家庭での料理疲れや簡便商品のニーズが増えてスーパー全体の惣菜も好調となっている。弊社はその流れに乗ることができた。キムチと浅漬は低調だが、主力商品なので商品開発を進めていく。浅漬は価格競争が起きていないが、その理由は無理して売場を取ろう、という動きがなくなってきているからだ。だが、キムチは価格競争という面もあり、少なからずその影響がある」
 ‐海外産原料(製品含む)と国産原料の今後の見通しは。
 「浅漬のオクラやブロッコリーは海外から輸入している冷凍野菜で、そういったものの価格は上昇していくと想定され、価格転嫁が必要になってくるだろう。その他、糖絞り大根は中国からの輸入で、影響が出てくると見ている。浅漬やキムチの国産原料は集中的な契約を止めて各工場の近隣で契約率を上げるように取り組んでいる。また、原料の安定調達や農業を通じた地域活性化への取組を目的に、今年3月に子会社でピックルスファームを設立した。野菜の研究などの取組を行い、美味しい野菜を、まずは自社工場、グループ会社向けに生産する。5反歩からのスタートだが、今後は勉強しながら耕作面積を増やしていく方針だ」
 ‐2023年2月期は減収を計画しているが、その理由は。
 「売上は約10%の減収を計画しているのだが、このうちの6%は収益認識に関する新しい会計基準の適用によるもので、実際には4%減の計画。4%減の理由は、巣ごもり需要からの反動減などの影響がある。値上げについては競合の動きや得意先によっても対応が変わってくるが、例えば『ぬか胡瓜』については、以前は3本入りでやっていたが、基本は2本にしている。また、グループ会社で製造している大容量商品も量目を減らすために規格変更を検討する。弊社の浅漬はカップを袋にしたり、180gを160gに変更することを検討している。いずれにしても根拠のある値上げだということをしっかり説明できれば、理解していただけると思っている」
 ‐9月1日(予定)に持株会社に移行する。
 「ピックルスコーポレーションには子会社があるが、親子の関係になっているため、子は親の目を気にして自由な行動が取りづらい環境になっていた。その関係を横並びにすることで切磋琢磨し、各事業社における意思決定を迅速に行える体制を整え、グループの競争力を高めたいと考えた」
 ‐SDGsの取組について。
 「弊社では子ども食堂への支援の他、環境に配慮した容器への切り替えなど、様々な取組を行っている。SDGsの取組はサステナブルな社会の実現に貢献できるだけでなく、企業のコストダウンにも貢献できる。例えば工場で使用する白菜は外葉を産業廃棄物として処理しているが、堆肥化するなど再資源化することができ、弊社も有効利用の手段を議論している。得意先である量販店もSDGsを掲げているので、商品を供給するメーカー側にもそのような活動を行うことが必然になってくる。その流れの中にはビジネスチャンスもあると見ている」
 ‐5月26日に社長就任が内定している影山副社長に抱負を。
 「厳しい環境の中でどう進んでいくか、ということをしっかり考えなければならない。SDGsの活動についても、小学生、中学生、高校生と学校でSDGsを学んだ方が消費者となっていくので、物事を判断する基準も変化していく。消費者や販売先にそのような部分でもアピールできるようにIR活動を進め、選ばれる企業になることを目指している。また、生産面では人が集まらない状況となっているため、機械化して作業効率を上げるなど、労働環境を整えていくことが重要だ。農業についても生産者の高齢化が進む中、大きくなった白菜や大根を収穫するのは大変なので弊社が収穫作業を請け負うなど負担を軽減し、高齢の方でも農業を持続していただけるサポート体制を構築していきたいと思っている。生産農家の方、お得意先、取引先の皆さんのご協力をいただきながら事業を行っていきたいと考えている」

2022年2月期決算説明会

冷凍食品の商品開発に着手
 ピックルスコーポレーションは4月22日、2022年2月期決算説明会をオンラインで開催した。
 当連結会計年度における売上高は450億600万円(前年同期比2・2%減)、営業利益は29億4200万円(同8・5%増)、経常利益は30億6800万円(同8・5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は21億2800万円(同16・2%増)となり、過去最高の営業利益、経常利益、純利益を達成した。
 2023年2月期連結業績予想は、売上高が407億円、営業利益が25億円(前年同期比15・0%減)、経常利益が26億3000万円(同14・3%減)、当期純利益が17億6000万円(同17・3%減)と約10%の減収を見込む。
 売上高は、収益認識に関する新たな会計基準を適用したことと、巣ごもり需要からの反動減の影響。営業利益は、減収計画や原料価格を例年の価格で見込んでいることから、減益を計画している。
 主力商品である浅漬とキムチの売れ行きが低調となっていることについて宮本社長は、「浅漬とキムチは前期から売れなくなってきている。乳酸菌を豊富に含むキムチは健康ブームが落ち着いてきた影響で売上が落ちている」と分析した。
 今後の商品展開については、「食品ロスを考えると冷凍食品に注目している。冷凍食品を共同開発している企業の施設を借りて商品開発を進めていきたいと考えている」と冷凍食品の商品開発に着手する意向を示した。
 また、昨今のコストアップについては、「原料高に加えて包装資材が7~10%の値上げになっている。調味料も上がっているし、輸入原料も上昇している。今後は商品の見直しをしたいと考えている。ただ、値上げをすると競合に売場を取られる可能性もあるので、対策を考えていきたい」と述べた。
 最後に5月26日に社長就任が内定している影山直司副社長が挨拶を行い、終了となった。
【2022(令和4)年5月6日第5092号10面】

5月6日号 キムチ浅漬特集 インタビュー

秋本食品株式会社 代表取締役専務 秋本善明氏

主力3品に資源を集中
価格の維持は困難
 秋本食品株式会社(秋本大典社長、神奈川県綾瀬市)の代表取締役専務食品事業本部長(兼)マーケティング部長の秋本善明氏にインタビュー。2021年度の決算やSDGsの取組、値上げなどについて話を聞いた。同社では3月から太陽光発電を運用し、工場で使用する約3割の電力を賄うなど、今後も持続可能な事業を展開していく方針を示した。(千葉友寛)
◇   ◇
 ‐2021年度の決算は。
 「売上は前年に少し届かなかった。昨年は巣ごもり需要の特需が発生した2020年の反動減が影響した。それでもコロナ発生前の2019年と比較すると、売上はプラスとなっているので、漬物需要のベースアップにはつながったと見ている」
 ‐浅漬とキムチの動き。
 「浅漬はほぼ前年並みで、2019年以上の数字となっている。月によって差があり、春先や年末は厳しかったが、秋口は良かった。直近の動きもそれほど悪くなく、リニューアルした『あとひきだいこん』は好調が続いている。全体的に大きな波はなかった。キムチは2020年の伸長率が高かった分、前年比で見ると大きく落ち込んでいる。売場としては主原料の白菜の価格が安定していたこともあって価格訴求の流れとなり、売りづらい環境だった」
 ‐今期の販売戦略は。
 「17年ぶりに放映したテレビCMを効果があるうちに『オモニの極旨キムチ』の販促を行う。また、『オモニシリーズ』の味で展開した『オモニの極旨大根キムチ』もセットで売っていきたいので力を入れていく。今期は弊社の主力商品である『オモニの極旨キムチ』、『王道キムチ』、『あとひきだいこん』に資源を集中して販促を行っていく。弊社は主力3品を中心に新規の取引が始まる。それをきっかけに仕入れ商品も配送できるようになれば効率が上がって、売上も上がる流れとなる」
 ‐製造コストが上昇している。
 「頭の痛い問題だが、電気代に関してはタイミング良く太陽光発電の運用が3月から始まったので、湘南工場では使用する電力の3割近くを自家発電で賄っている。太陽光発電の取組は1年以上前から計画していたもので、ようやく運用がスタートした。持続可能な社会を作る上でSDGsに関連する取組は必要不可欠なもので、再生可能な自然エネルギーを利用する太陽光発電もその一環だ。植物性由来の容器などの包装資材の活用の他、巾着から平袋への変更も検討している。そもそも、野菜を使って商品を供給する我々の事業は農業や自然環境を守り、生活者の健康に寄与するサステナブルな仕事だと思っている」
 ‐環境が変化している。
 「国内外の環境はものすごい速さで変化しており、先が読めない。これまで市場では『時短』がキーワードになっていたが、コロナの影響でおうち時間が増えたことで『時短』のトーンが弱まった感がある。環境の変化が読めない中で、主流だった動きがすぐに変わるため、対応していくことは難しい。今後は外出が増え、外食、旅行、観光の重要も増えるだろう。そのような中でも健康意識は高いところで維持されると見ており、キムチに含まれる乳酸菌などを訴求したPRが重要になってくる」
 ‐値上げの動きは。
 「仕入れ商品の値上げ要請は着実に増えている。特に輸入製品や輸入原料を使用した商品は為替の影響も大きく、採算が合わなくなっている。得意先の反応は様々だが、値上げの機運は高まっており、現状では価格の維持は困難な状況のため取り合わないという雰囲気ではない。持続可能な事業を行っていく上でも根拠のある値上げだということを説明し、理解を求めていくことが急務となっている」
【2022(令和4)年5月6日第5092号2面】

<インタビュー2022> 東京中央漬物(東京都) 新社長には齋藤氏、古海氏が専務

皆川会長
齋藤社長
古海専務
東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(皆川昭弘社長、東京都江東区豊洲)は、4月1日付けの新人事を決定。皆川昭弘代表取締役社長が代表取締役会長、齋藤正久取締役常務が代表取締役社長、古海利明取締役常務が代表取締役専務、守随純一取締役部長と横田博一取締役部長が常務取締役にそれぞれ就任(藤原静子取締役部長は留任)した。
同社は昭和9年12月、東京都(当時は東京市)に卸売市場法が公布されたことで漬物の荷受機関を設置することになり、日本橋から築地に市場が移転した同時期に会社が創立。平成19年10月に全国漬物株式会社と統合し、平成18年11月に皆川昭弘氏が7代目社長に就任、平成30年11月に市場移転に伴い豊洲に移転した。
創業当時の主な取扱い品目は奈良漬、みそ漬、福神漬、しょうが漬、楽京漬、からし漬、べったら漬などで、現在は常時1000アイテム以上を取り扱っている。90年以上に亘って大消費地である東京で卸売の業容を拡大した。同社に商品を販売する荷主共和会の会員は約80社で、全国の特産品を供給、幅広いニーズにきめ細かく対応している。
新体制となり、第93期を迎えた同社の皆川会長、齋藤社長、古海専務にインタビュー。齋藤社長は「売上10%増を目標に掲げ、社員の自主性を育てながら利益を生み出せる体質にしていく」と抱負を語った。
(千葉友寛)
◇   ◇
‐社長就任の心境は。
齋藤社長「皆川会長は漬物業界で顔が広く、ポジションも高い位置にある。コロナの影響がある中でやっていけるのかという不安もあるし、プレッシャーも大きい。しかし、社長として会社を預かる以上は歴代社長に引けを取らないように頑張ってやっていくしかない。恥をかくこともあると思うが、周りの意見を聞きながら役員、社員と一丸となって進んでいきたい」

‐専務就任の心境は。
古海専務「大変身が引き締まる思いだ。特にこの2年間はコロナの影響が大きく、売上も苦戦した。役員だけではなく、社員全員が知恵を出し合ってこの苦境を切り抜けていきたいと考えている」

‐コロナ禍の2年を振り返って。
齋藤社長「消費の流れが大きく変化した。スーパーの動きを見ると、1年目は巣ごもり需要が増加し、特需的な動きが発生した。2年目は前年の数字をクリアできなかったが、後半から再び需要が増えて売上も戻り、通年ではそこそこの数字となった。ホテルや業務用関係、企業向けの仕出し弁当は観光需要が大幅に減少したことと、テレワークが定着してきたことで厳しい状況が続き、廃業する企業もあった。市場関係も外食や居酒屋中心のところは緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されると売上が大きく落ち込み、一番ひどい時は売上が10%しかない、というところもあった。コロナ感染者が減少すれば客足の回復も見込めるが、元に戻ることはないと見ている。今の売上を基準に今後の展開を考えていく必要がある」

‐新期の販売戦略は。
齋藤社長「私が皆川会長からよく言われていた言葉に『経営者になったつもりで考えろ』がある。社内向けについては経営者の立場になって利益を生み出せる仕事にチャレンジしていく必要があると考えており、そういった意味では社員の自主性を育てていきたい。一人一人が意識を高く持ち、失敗を恐れず何事にもチャレンジしていく雰囲気や流れを作っていきたい。お得意先や取引先については利益が生まれないと向き合っていただけないので、東京中漬と取引していれば利益が出る、取引して良かった、と思っていただけるようにWinWin(ウィンウィン)の関係を築いていきたい」

‐仕事のこだわりは。
古海専務「信用と信頼が大事。取引先から商品を仕入れたらすぐに支払う。商品を販売したらすぐに支払っていただく。当たり前のことだが未だに支払いについては一番神経を使っている。信用や信頼を築くためには時間がかかるが、失うのは一瞬。社員が頑張ってやってきた仕事を台無しにするわけにはいかない。今年はコロナ発生から3年目となり、ウィズコロナ、アフターコロナの流れで売上の回復を予想している。社員一丸となって新しいお客様や販路を開拓していきたい。ここ2年は厳しい状況が続いていたが、利益が出ればしっかり社員に還元していきたい」

‐御社の役割は。
齋藤社長「コロナ禍の2年間で改めて感じたことは、食品はどんな状況でも必要とされる、ということ。お得意先や取引先に対して有益な情報を発信できれば売上アップにつながり、役に立つことができる。漬物は健康志向や機能性といった部分でまだまだ伸び代があるカテゴリーだと思っているので、これまで築いてきたパイプを生かしながら全国の魅力ある商品を案内していきたい」

‐新期の目標は。
齋藤社長・古海専務「目標は売上10%増。コロナ前の売上が45億円だったので、そこまでは持っていきたい。そして数年後には過去最高の50億円を達成したいと考えている」

‐人事のタイミングについて。
皆川会長「世代交代は私が社長に就任した58歳の時、今から15年前から年表を決めて考えていた。健康寿命は長くても73歳くらいまでなので、元気なうちに新しい世代に役と道を譲ることを計画していた。企業によっては高齢になった会長や社長が長く役についているケースもあるが、若い人たちに早くバトンを渡さないと世の中のスピードについていけなくなる。また、年齢とともに考え方が保守的になり、安全な道を選んでチャレンジしにくい体質となる。ここ数年は自分自身、それを感じていた部分もある」

‐社長と専務に対する期待は。
「2人はミスが少なく、温厚な性格で社内外の人から好感が持たれている。若い社員を育てるには適役で、社内融和できる人を役員にした。社内で問題があれば上手くいくものもいかなくなる。若い社員でも意見を言える環境を作ることが大切で、これまで以上に風通しの良い会社になると思っている。私もあと数年は会長として仕事を続ける予定だが、今後については新しい挑戦をしてほしいと思っている。現状維持を目指しているだけでは減退していくだけだ。将来性があることには投資も必要だが、ミスを恐れず新たなマーケットを作り上げてほしい」

【齋藤正久社長】
1968年1月30日、千葉県出身、社歴31年
【古海利明専務】
1961年3月16日、埼玉県出身、社歴33年

【2022(令和4)年4月1日第5089号1、2面】
東京中央漬物 HP


4月1日号 <高菜漬特集> この人に聞く

水溜食品株式会社 常務取締役 水溜 光一氏

高菜の漬込みは計画通り
カイゼン活動で生産性が向上

水溜食品株式会社(水溜政典社長、鹿児島県南さつま市)は、鹿児島産寒干し大根の銘品「島津梅」や、高品質な“ホール物”の高菜漬製造で知られる。その他にも、割干し大根個包装「ぽり×2」や、ごぼう酢漬の個包装「ごぼう酢てぃっくす」など、オンリーワン商品の開発力にも定評がある。また2021年2月には、鹿児島県が制定している「食品関連産業カイゼン活動取組優秀社表彰」で同社の取組が認められ、表彰を受けた。その活動の中心として高菜漬の製造工程見直しや生産性の向上に取り組んだ、常務取締役の水溜光一氏に話を伺った。
【菰田隆行】<文中敬称略>
◇     ◇
‐今期の高菜原料の作柄は。
水溜 昨年12月に収穫した早ものは、大変良好な作柄でした。今年に入り、1月以降は普通作といったところですが、全体では計画通りの数量が入荷し、品質も上々だったと思います。3月末いっぱいで、漬け込みを終了しました。
‐農家の作付意欲は。
水溜 当社の契約産地は地元の金峰町(南さつま市)と吹上町(日置市)ですが、作付の意欲はあり、今年も「もっと作らせてほしい」と申し出る農家さんもありました。ただ、新型コロナウイルスの影響で末端の動きがやや低調だったため、ヒネ在庫との兼ね合いで作付面積は前年並みとしました。高菜漬の需要は増えてきていますので、今後は作付面積を増やしていく計画です。

‐製品動向は。
水溜 業務用(刻み)の需要も年々増え、力を入れていますが、やはりホール物比率が高い状態。量販店やお土産ルートでご評価をいただいています。姿物の高菜漬(200g、250g)で全体の80%以上を占めており、残りが刻み物の高菜漬です。あと最近では、原料の注文もスポット的に入ってきています。今後は、お客様の使用するニーズに合わせて、最適な状態で提供できるかが課題です。コロナもようやくまん延防止等重点措置が解除となり、これからの人の動きに期待がかかりますが、お土産ルートでの販売は完全に元に戻るか懸念があります。

‐製造工程でのカイゼン活動について。
水溜 当社の高菜漬は、塩分を少なめにしてタンクに漬け込み、乳酸発酵させた後にナベトロに入れ替えて冷蔵庫に移します。そこでマイナス1℃で冷蔵熟成させて製品化します。これにより脱塩工程がなくなるため、風味の良さをご評価いただけています。高菜漬製造ライン改善への経緯としては、整形工程(検査・ヘタ切り・半割・カット)のところで時間と人が多くかかり、計量・包装ラインで手待ち時間が発生するという課題がありました。干し大根や生大根製品は22回転/分であったのに対し、高菜漬は手作業による整形・袋詰めのため8回転/分しかできず、出荷に影響を与えていました。また、高菜には異物(石・笹の葉など)が多く、非効率な洗浄工程も課題でした。

‐見直したカイゼン点は。
水溜 ボトルネックの整形作業を軽減させるため、余力のあった洗浄工程でまず半割カットを実施しました。すると、整形工程での作業が1つ減り、手待ち時間が減少。また、洗浄工程でカットすることで異物も発見、除去しやすくなりました。さらに取組を進め、全体のラインバランスを取るために洗浄工程に整形工程(検査・ヘタ切り・半割・カット)を移動させて実施することにしました。これにより包装工程が短縮され、8枚/分だった出来高が18枚/分に改善、作業人員も10名から6名に削減することができました。結果として全体の生産性がアップし、在庫管理工程や取り置き工程が減少して、ジャストインタイムでの出荷が可能となりました。加えて、細かく整形をしてから洗浄することにより異物が除去され、社外クレームが減少しました。

‐カイゼンの成果は。
水溜 具体的な数字や実績を元に対策を考える、カイゼンの手法が身につきました。生産に余裕ができると教育への時間確保ができるようになり、従業員にも向上心が生まれ、自発的なカイゼン提案も出てくるようになりました。今後も、出来高の平準化を目指し、需要増に対応できる原料確保や、補助金を活用した洗浄工程における機械化の導入も進めて行きたいと考えています。
【2022(令和4)年4月1日第5089号3面】

食料新聞電子版 九州うまかモン 水溜食品


3月11日号 社長に聞く

株式会社丸漬 代表取締役社長 加勢 智啓氏

就任初年度は効率化注力
試食販売の成功事例をSNSで

株式会社丸漬(加勢智啓社長、京都市下京区)は、京都市中央卸売市場近くに本社を構える漬物問屋であり、また自らも全国へ京都の漬物を届けるメーカーとしても活躍する。
昨年4月に社長就任した加勢社長は試食販売での成功事例を基に、消費者への発信を強化していく方針を語った。
(小林悟空)
◇    ◇
‐コロナ禍の最中に社長就任され1年が経つ。
加勢社長 新型コロナウイルスが流行してちょうど1年の時期と厳しい環境下でしたが、だからこそ会社が変化していかなければいけないという危機感があり、社長交代する運びとなりました。
この1年は既存の売上を維持しながら業務効率を改善することをテーマに、社内体制の見直しに注力してきました。
京のどぼ漬
‐今後の取り組みは。
加勢社長 インターネット上での発信と販売を強化していく方針です。漬物の製造や、野菜の収穫風景など、ちょっとしたことでも発信していこうと準備しています。
我々にとっては見慣れたものでも一般の方にとっては珍しく興味深いことで、知れば食べてみたくなるのが人間の心理です。当社はお取引先のスーパー様で試食販売を企画することも多いのですが、そうすると初めは漬物に興味がない様子だった方も購入してくださるようになります。SNSでも同じことを積み重ねれば少しずつでも漬物に関心を持つ方は増えるはずです。その方たちへダイレクトに商品を届ける方法として、ネット通販も取り組んでいきます。

‐スーパーでの試食販売について。
加勢社長 メーカーとしての当社は、先人が築き皆で守っている京都の漬物というブランドに恥じることのない高品質と、日常使いできる価格帯の両立というポジションを目指してきました。ただ、価格だけで選択肢から外れて一度も手にとってもらえないのでは、どれだけこだわっても効果がないので、漬物メーカーとしては珍しいほど試食販売を頻繁に実施してきました。 コロナ禍で試食販売ができなくなったのは大きな痛手ですが、SNSで補えるよう検討しています。
百菜漬
‐最近の売れ筋は。
加勢社長 どぼ漬(ぬか漬)が好調です。「京のどぼ漬(胡瓜2本入/胡瓜・茄子各1本入)」はすぐき由来の「ラブレ乳酸菌」を加え、さらに発酵を促進したぬか床に漬け込んだ製品です。また白菜のどぼ漬は、白菜に一手間を加えたということで「百菜漬(ひゃくさいづけ)」と命名しています。
発酵食品ブームという環境下で、乳酸発酵をしっかり訴求してきたことが功を奏したと言えます。

‐問屋としての役割は。
加勢社長 漬物には様々な種類があり、さらに同じ種類でもメーカーにより味や価格、量目などに幅があります。この幅広さは漬物文化の長い歴史で育まれた強みです。これを卸先の客層や立地条件、流行等に合わせて提案し、時にはメーカー様と共にオリジナル商品を開発する調整役が漬物問屋ならではの仕事だと考えています。京都という全国的に見ても恵まれた環境だからこそ培ってこれた知見を活かし、独自の提案を行ってまいります。
【2022(令和4)年3月11日第5087号3面】

食料新聞電子版 バイヤー必見イチ押し商品

3月1日号 東京特集 トップに聞く

東京中央漬物株式会社 代表取締役社長 皆川 昭弘氏

適正価格での販売が重要
SDGsに関連した対応を

東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(皆川昭弘社長、東京都江東区豊洲)の皆川社長にインタビュー。新型コロナウイルスの影響や値上げの動きなどについて話を聞き、事業継続のために必要なことは「適正価格での販売」と改めて強調した。(千葉友寛)
◇     ◇
‐今期の業績は。
「今期もコロナ感染者の増減によって巣ごもり消費や外食関係に大きな影響が出たため、数字が良い月と悪い月で差が出た。昨年の6月、8月、10月は落ち込んだが、11月から今年1月までは良かった。2月までの売上は昨年並みで、3月末決算では若干の黒字になると見ている」

‐漬物の売れ行きは。
「弊社はお客様とメーカーの中間に位置する問屋なので、全体の流れを感じることができる。一部のメーカーや好調が続くキムチメーカーの動きは良いのだが、全体的には良くない。沢庵、刻み、浅漬の動きは鈍くなっている。梅干は昨年末から1月は前年比1割減くらいで推移しているが、梅の花が咲いて暖かくなるこれからの季節に向けて積極的な販促を行う見込みで、潤沢な原料を活かして売場を盛り上げてくれることを期待している」

‐値上げの動きは。
「中国産楽京など、一部の製品は春夏の棚割りから量目調整を実施するが、その他の商品は案内が届いていない。競合他社や小売店の動きを注視しているのだろう。燃料、包装資材、調味料、物流費とあらゆるコストが上がっている状況で、胡瓜や楽京は不作で原料価格も上昇している。近年は生姜の価格も高止まりしており、量目調整だけでは立ち行かない状況となっている。適正価格で販売し、利益を確保しなければ体力がなくなって廃業した方が良い、という意見も出てくる。事業を継続するためにも適正価格で販売することが重要だ」

‐ニーズの変化。
「時代は変化していくのでニーズも変わっていく。漬物では沢庵が代表的な例で、昔は一本物が主流だったが、個食のニーズが高まってきたことでハーフ、ミニ、スライス、カップと変化してきた。製造する側にとっては一本物やホール物の方が手間がかからなくて良いのだが、現在は個食に加えて簡便性の高い商品が支持されている。また、最近では巾着の袋を平袋に替える動きが出てきている。これは上部を留めるクリップを使用しないため、コスト削減と環境対策になるなど、SDGsに関連した対応として消費者の関心も高い。漬物でも一部商品で導入されているが、近いうちに平袋形態が主流になると見ている」

‐御社に求められている役割は。
「無理な販売価格で事業を続けていても疲弊するだけだ。時間をかけてでも誠意を持って適正価格での販売を目指さなければならない。原料の生産者は減少の一途を辿っており、少しでも維持してもらうためにも買い上げ価格を上げる必要がある。私が入社した昭和40年代は、漬物関連のメーカーと問屋を合わせ3000社あったが、いまは1000社を割っている。ここ数年で予想を上回る速さで寡占化が進んでおり、あと10年で500社まで減る可能性もある。健全な経営ができているうちに次世代に継承する体制を整えていくことが重要で、廃業が増えると地域の名産品を作るメーカーがなくなる恐れがある。名産品は一度途絶えると再生することはない。全国の名産品を供給することは我々の使命で、これからもメーカーに寄り添った取組を行っていきたい」
【2022(令和4)年3月1日第5086号1面】

東京中央漬物 HP


2月11日号 SMTS特集 特別インタビュー

秋本食品株式会社 代表取締役専務 秋本善明氏

秋本食品株式会社(秋本大典社長、神奈川県綾瀬市)の代表取締役専務食品事業本部長(兼)マーケティング部長の秋本善明氏にインタビュー。コロナ禍で予断を許さない状況となっているが、同社の取引先で組織され、会員相互の企業発展と親睦を目的とする秋本会会員企業と連携強化を図り、ともに難局を乗り切っていく考えを示した。(千葉友寛)
◇ ◇
‐浅漬の動きは。
「年間を通して見れば前年並みで推移しているが、年末に近づくにつれ徐々に売れなくなってきた。特に白菜となますの動きが悪く、千枚漬はまずまずだった。年末の売場は年々盛り上がりが弱くなっていて、売場を変えない店舗もある。その他の要因としては、野菜安のため浅漬が苦戦している状況が続き、そのまま年末を迎えたことが影響したと見ている」

‐キムチの売れ行きは。
「通年通して苦戦中。秋口に若干持ち直した感もあったが、浅漬と同様、原料野菜安によってまたブレーキがかかってしまった。他社による低価格販売も影響していると思われる。2021年は巣ごもり需要が増加した2020年比で見ると厳しい数字となっているが、2019年比で見るとプラスとなっている。ベースは上がっているものの、市場としては落ち着いてきている。それでも、テレビCMなどの販促を行っている『オモニの極旨キムチ』は今月に入って好調だ」

製造コストが上昇している。
「添加物、包装資材、燃料、電気代、物流費など、様々なコストが上がっている。これだけのものが一気に上がると量目調整だけでは対応できず、企業努力で吸収することはできない。近々に実施するということではないが、弊社も今後の対応を検討していかなければならないと思っている」

‐「いんげん」を素材とした新商品を発売する。
「弊社では積極的な新商品開発を行っているが、新しい素材にもチャレンジしている。ここ数年で見ればオクラが定着し、ブロッコリーも広がっている。これらの商品は漬物というよりも、サラダや惣菜の感覚で食されていると思う。オクラやブロッコリーはもともと人気のある野菜だったが、茹でるなど下処理に手間がかかる。手間を省くことができ、ドレッシングをかけずにそのまま食べることができる。色合いも良く、手軽に食べられることが食卓で一般化してきている理由だろう。今後もこのような商品を展開していきたいと思っている」

‐1月に開催予定だった展示会が中止となった。
「本来ならば弊社のテレビCMが放映されている期間だったので、『オモニの極旨キムチ』を大々的にPRする予定だった。しかし、新型コロナウイルスの感染者が年明けから急激に増加し、来場者の方をはじめ、出展される企業の皆さん、弊社社員の感染リスクを考慮し、中止と決断した。我々食品メーカーは感染者が出てしまうと工場の稼働に支障が出る可能性があり、安定供給の義務を果たせなくなる。それらのことを総合的に考えても、中止は良い判断だったと思っている」

‐秋本会会員企業にメッセージを。
「昨年11月にリモートで研修会を実施したが、ここ1、2年はほとんどの方と直接会うことができていない。皆さんのために役立つ事業を行うことができず、大変申し訳なく思っている。今後の見通しを予測するのは難しく、皆さんも大変なことが多いと思うが、情報を共有しながら連携を強化し、一緒に乗り切っていきたいと考えている。現状では、相対では難しいが、リモートで随時商談を行っているので、良い商品や良い提案を待っている」

‐御社の特長と魅力は。
「昔から『秋本の商品は少し高いけど美味しい』と言われてきた。これは先代から受け継いできていること。弊社は品質と味が第一で、味の追及を最も重要視している。また、弊社との取引先で組織された秋本会会員企業とのパイプを生かし、全国の商品を集めることができる。マーケティング活動をフィードバックしながら、浅漬やキムチを主力とする自社商品と仕入れ商品を組み合わせ、売場をトータルでプロデュースすることができる。お得意先様には長年に亘ってご支持いただいており、今後はこれまで築いた信頼関係をさらに強固なものとしていきたいと考えている」
【2022(令和4)年2月11日第5084号2面】

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