<東北特集>「いか人参」が躍進 地域色豊かな東北の「食」
東北にもインバウンド需要の波が押し寄せている。
国土交通省東北運輸局が10月15日に東北6県の全宿泊者数を発表。それによると、同局管内における2024年7月までの外国人宿泊者数は126万人で、2007年の宿泊統計調査開始以来、1月から7月まで単月として最多を更新。年間でも最多となることが確実視されている。
「訪日外国人消費動向調査2023年年次報告書」によると、外国人が旅行などで訪日する目的の1位は、「日本食を食べること」(83・2%、複数回答)。豊かな風土は東北の大きな魅力の一つで、地域の素材を活用したご当地グルメも脚光を浴びている。
漬物では青森の「梅漬」、秋田の「いぶりがっこ」、岩手の「金婚漬」、宮城の「仙台長茄子」、山形の「青菜」や「赤かぶ」、福島の「いか人参」など、伝統の技法を駆使して作られた特産品や郷土料理が地域に根付き、近年は県外でも親しまれるようになった。
その中でもメディアに取り上げられる機会が増加している「いか人参」の躍進は目覚ましく、18日に放送されたTBSテレビ「世界くらべてみたら」に森藤食品株式会社(森藤洋一社長、福島市大波)の「いか人参」が登場。アメリカ、スペイン、ペルーの人が全国の逸品10種を食べ比べて「日本のご飯のお供世界で一番人気」を決定する内容で、7位となった。上位には入らなかったが、国内外に「いか人参」の存在感を示した。
今年は梅や胡瓜が不作となった他、青菜や赤かぶの作柄も平年の2、3割減と予想され、原料面では一抹の不安が残る。だが、東北の地域性や伝統を付加価値にすることで、インバウンド需要につながることも期待される。地域食豊かな東北の「食」を取材した。
国土交通省東北運輸局が10月15日に東北6県の全宿泊者数を発表。それによると、同局管内における2024年7月までの外国人宿泊者数は126万人で、2007年の宿泊統計調査開始以来、1月から7月まで単月として最多を更新。年間でも最多となることが確実視されている。
「訪日外国人消費動向調査2023年年次報告書」によると、外国人が旅行などで訪日する目的の1位は、「日本食を食べること」(83・2%、複数回答)。豊かな風土は東北の大きな魅力の一つで、地域の素材を活用したご当地グルメも脚光を浴びている。
漬物では青森の「梅漬」、秋田の「いぶりがっこ」、岩手の「金婚漬」、宮城の「仙台長茄子」、山形の「青菜」や「赤かぶ」、福島の「いか人参」など、伝統の技法を駆使して作られた特産品や郷土料理が地域に根付き、近年は県外でも親しまれるようになった。
その中でもメディアに取り上げられる機会が増加している「いか人参」の躍進は目覚ましく、18日に放送されたTBSテレビ「世界くらべてみたら」に森藤食品株式会社(森藤洋一社長、福島市大波)の「いか人参」が登場。アメリカ、スペイン、ペルーの人が全国の逸品10種を食べ比べて「日本のご飯のお供世界で一番人気」を決定する内容で、7位となった。上位には入らなかったが、国内外に「いか人参」の存在感を示した。
今年は梅や胡瓜が不作となった他、青菜や赤かぶの作柄も平年の2、3割減と予想され、原料面では一抹の不安が残る。だが、東北の地域性や伝統を付加価値にすることで、インバウンド需要につながることも期待される。地域食豊かな東北の「食」を取材した。
【2024(令和6)年12月21日第5182号3~7面】
<山陰特集> らっきょうやかぶ原料不足 確かなニーズが産地継承支える
<愛知特集>太古から発酵食文化牽引 消費と生産一体でニーズ捉える
愛知県は日本における漬物発祥の地とされる。あま市の萱津神社には全国で唯一、漬物の神様が祀られており、この地で野菜を塩に漬けたものが良い香りを発したことから「香の物」という呼び名が生まれたとの伝承がある。
漬物以外にも酢、みりん、豆みそ、たまり、白しょうゆや日本酒など多くの発酵食品が古くから製造されてきた土地柄である。江戸前寿司が流行したきっかけを作ったのは愛知の酢であったと言われるように、愛知の発酵食品は和食の歴史に大きな役割を果たしてきた。
現代においても大きな影響力を有している。愛知の人口は約755万人で全国4位という大都市でありながら、野菜産出額も全国5位という消費地と生産地が隣接している。消費者ニーズを間近に捉えられる地の利を活かし、愛知発のヒット商品が多数誕生してきた。
さらに今年5月にはこれら食品団体や自治体らにより「愛知『発酵食文化』振興協議会」が結成されたように、地域を上げて発酵食品の新たな潮流を作ろうとしている。
今回の特集では、注目の商品情報に加えて、少子高齢化やSDGsといった課題への各社の取組を取材した。
漬物以外にも酢、みりん、豆みそ、たまり、白しょうゆや日本酒など多くの発酵食品が古くから製造されてきた土地柄である。江戸前寿司が流行したきっかけを作ったのは愛知の酢であったと言われるように、愛知の発酵食品は和食の歴史に大きな役割を果たしてきた。
現代においても大きな影響力を有している。愛知の人口は約755万人で全国4位という大都市でありながら、野菜産出額も全国5位という消費地と生産地が隣接している。消費者ニーズを間近に捉えられる地の利を活かし、愛知発のヒット商品が多数誕生してきた。
さらに今年5月にはこれら食品団体や自治体らにより「愛知『発酵食文化』振興協議会」が結成されたように、地域を上げて発酵食品の新たな潮流を作ろうとしている。
今回の特集では、注目の商品情報に加えて、少子高齢化やSDGsといった課題への各社の取組を取材した。
(大阪支社・小林悟空、高澤尚揮)
【2024(令和6)年12月1日第5181号4面】
【2024(令和6)年12月1日第5181号4面】
<奈良漬特集> 輸出やインバウンドに商機 日本酒「無形文化遺産」登録へ
高級漬物の代名詞的な存在である奈良漬、今その価値に改めてスポットライトが当たっている。奈良漬は瓜を始めとした野菜を、発酵させた酒粕で何度も漬け替えを繰り返し出来上がる漬物。その歴史は古く、飛鳥時代から奈良時代を生きた皇族・長屋王邸宅跡から掘り出された木簡に「加須津毛(かすづけ)」と記載があったところまで遡ることができる。
近年、海外で日本酒の人気や知名度が高まる中、その副産物である酒粕を用いて作られる奈良漬への関心が高まっている。日本酒や焼酎、泡盛などの「伝統的酒造り」は、12月2日からパラグアイで開催されるユネスコ政府間委員会で無形文化遺産に登録される見通しとなっており、日本酒と共に、奈良漬への注目度が世界的に高まることが期待される。
奈良漬が持つ芳醇な味わい、手間暇と時間をたっぷりとかけて作られる製造面のストーリーは、外国人から見れば、とても興味深く価値あるものだ。さらに今回、日本酒が無形文化遺産へ登録されることにより、そのストーリー性が増す。奈良漬の海外輸出だけでなく、足元で増加するインバウンド向けの提案にも強力な追い風が吹き、商機が拡大する。
奈良漬は国内市場においても、新しい価値を創出している。奈良漬の特徴と言える歯切れの良い食感と芳醇な香りを料理やスイーツへ生かす取組が活発化している。近年、料理素材として存在感を高める「いぶりがっこ」と同じように、食感と香りを付与できる貴重な食材として奈良漬に脚光が当たっている。
また、奈良漬とチーズの組合せの提案も盛んで、シニア層だけでなく、これまで奈良漬を食べていなかった若年層など新たなユーザーにも購買層が広がってきた。奈良漬メーカーでは手軽に食べられるスライスや刻み製品を拡充すると共に、酒粕ごとそのまま食べられる製品を提案し、若年層の需要開拓を目指す。
今後は国内市場と共に、日本酒の無形文化遺産登録により海外輸出への期待も高まっており、大きなポテンシャルを秘めた漬物カテゴリーの一つと言える。(藤井大碁)
近年、海外で日本酒の人気や知名度が高まる中、その副産物である酒粕を用いて作られる奈良漬への関心が高まっている。日本酒や焼酎、泡盛などの「伝統的酒造り」は、12月2日からパラグアイで開催されるユネスコ政府間委員会で無形文化遺産に登録される見通しとなっており、日本酒と共に、奈良漬への注目度が世界的に高まることが期待される。
奈良漬が持つ芳醇な味わい、手間暇と時間をたっぷりとかけて作られる製造面のストーリーは、外国人から見れば、とても興味深く価値あるものだ。さらに今回、日本酒が無形文化遺産へ登録されることにより、そのストーリー性が増す。奈良漬の海外輸出だけでなく、足元で増加するインバウンド向けの提案にも強力な追い風が吹き、商機が拡大する。
奈良漬は国内市場においても、新しい価値を創出している。奈良漬の特徴と言える歯切れの良い食感と芳醇な香りを料理やスイーツへ生かす取組が活発化している。近年、料理素材として存在感を高める「いぶりがっこ」と同じように、食感と香りを付与できる貴重な食材として奈良漬に脚光が当たっている。
また、奈良漬とチーズの組合せの提案も盛んで、シニア層だけでなく、これまで奈良漬を食べていなかった若年層など新たなユーザーにも購買層が広がってきた。奈良漬メーカーでは手軽に食べられるスライスや刻み製品を拡充すると共に、酒粕ごとそのまま食べられる製品を提案し、若年層の需要開拓を目指す。
今後は国内市場と共に、日本酒の無形文化遺産登録により海外輸出への期待も高まっており、大きなポテンシャルを秘めた漬物カテゴリーの一つと言える。(藤井大碁)
【2024(令和6)年12月1日第5181号6面】
<徳島特集> 産地の重要性高まる 葉物生育は2週間遅れ
温暖な気候と、吉野川沿いの平野を中心とした肥沃な土壌に恵まれた徳島県は農業が盛んな土地柄であり、すだちや、奈良漬などの原料になる白瓜が全国一位の出荷金額を誇る。
冬期には漬物に縁深いニンジンや壬生菜、野沢菜、菜の花などの生産が盛んであり、これらは県内で利用されるだけでなく、各県の漬物・惣菜メーカーへと出荷される。いわば徳島県は縁の下の力持ちの存在だ。
近年は全国的に農業人口が減っていること、また海外産原料が為替の関係も相まって国産品以上の値をつけることも珍しくないため、徳島の存在感はますます高まっている。
徳島県漬物加工販売協同組合(佐野好宏理事長)でも、加盟者同士は「争うよりも、全員で利益の最大化を」と助け合いの姿勢を強めている。
ただ、今冬の葉物野菜(壬生菜、野沢菜、菜の花)の収穫状況は不作傾向。8~9月の猛暑と干ばつで播種が遅れ、例年の2週間ほど後ろ倒しになり、需要に間に合わず小さいままの収穫を余儀なくされ歩留まりも悪い、という状況だ。
異常気象に加えて肥料や燃料等の農業コストも上がっており、漬物メーカーは「原料野菜の買取価格を上げなければ生産農家がいなくなる。製品価格への転嫁も必須だが、その分品質と供給力をさらに整えていきたい」と口を揃える。
天候不順や人手不足といった課題に対応しながら、良質な原料と漬物作りに努める徳島県の企業を紹介する。
(大阪支社・小林悟空)
冬期には漬物に縁深いニンジンや壬生菜、野沢菜、菜の花などの生産が盛んであり、これらは県内で利用されるだけでなく、各県の漬物・惣菜メーカーへと出荷される。いわば徳島県は縁の下の力持ちの存在だ。
近年は全国的に農業人口が減っていること、また海外産原料が為替の関係も相まって国産品以上の値をつけることも珍しくないため、徳島の存在感はますます高まっている。
徳島県漬物加工販売協同組合(佐野好宏理事長)でも、加盟者同士は「争うよりも、全員で利益の最大化を」と助け合いの姿勢を強めている。
ただ、今冬の葉物野菜(壬生菜、野沢菜、菜の花)の収穫状況は不作傾向。8~9月の猛暑と干ばつで播種が遅れ、例年の2週間ほど後ろ倒しになり、需要に間に合わず小さいままの収穫を余儀なくされ歩留まりも悪い、という状況だ。
異常気象に加えて肥料や燃料等の農業コストも上がっており、漬物メーカーは「原料野菜の買取価格を上げなければ生産農家がいなくなる。製品価格への転嫁も必須だが、その分品質と供給力をさらに整えていきたい」と口を揃える。
天候不順や人手不足といった課題に対応しながら、良質な原料と漬物作りに努める徳島県の企業を紹介する。
(大阪支社・小林悟空)
【2024(令和6)年12月1日第5181号10面】
<埼玉特集> 「近いがうまい埼玉産」 全国4位を誇る漬物出荷額
埼玉県では 恵まれた自然条件と大消費地である首都圏の中央に位置するという「地の利」を生かし、多彩な農業生産が行われていることから、「近いがうまい埼玉産」をキャッチフレーズに掲げ、県産農産物のPRを行っている。
特に11月は「埼玉県地産地消月間」に定められ、集中的にPRが実施されている。11月16日と17日に埼玉県熊谷市の熊谷スポーツ文化公園で開催された「2024彩の国食と農林業ドリームフェスタ」には、埼玉県産の採れたての野菜や新米などの県産農産物が出品。埼玉県漬物協同組合(鶴田健次理事長)においてもブースを出店し、沢庵、らっきょう、べったら漬、胡瓜漬など埼玉県内の漬物メーカーが作るこだわりの漬物を販売し好評を博した。
埼玉県は漬物出荷額でも全国トップクラス。経済産業省「経済構造実態調査」の2022年都道府県別漬物出荷額は212億円となっており、全国4位にランクインしている。
県内に本社を置く山本食品工業(行田市)やピックルスコーポレーション(所沢市)といった大手メーカーの躍進に加え、全国屈指の漬物産地として知られる深谷地区を始め、県内全域の漬物メーカーが魅力的な漬物を製造、出荷額を押し上げている。
(藤井大碁)
【2024(令和6)年11月21日第5180号1、8~10面】
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<広島特集>「広島菜漬」残暑で遅れ 佃煮は付加価値商材にシフト
【大阪支社】広島県漬物製造業協同組合(山本千曲理事長)は7日、第39回目を迎える漬物献上祭を嚴島神社本殿にて執り行い、特産品である広島菜漬を献上し業界発展を祈願した。
しかし今年は残暑と雨不足により広島菜の生育が大幅に遅れている。山本理事長も「地元産の新物を奉納できなかった」と話す。異常気象に加えて農業コストも上昇している中、各社は契約原料の買取価格を上げるなど生産量維持に奔走している。
厳しい原料状況とは裏腹に販売面は順調だ。県名を名に冠した野菜は全国的に見ても珍しく、土産品としての存在感は抜群。また人流の回復で中外食市場が活性化しているため、弁当の付け合せや、おにぎりの巻き材といった用途での引き合いも増えている。
広島は、漬物と同じく伝統食品である佃煮の製造も盛んな土地。瀬戸内海に囲まれているのに加え、かつて北海道と大阪を繋ぐ北前船の寄港地であったことから、昆布やイカの加工が盛んに行われた歴史を持つ。
しかし水産物は昆布が過去最低生産量となったのを筆頭に、全般的に不足、高騰。メーカー各社は付加価値商材にシフトする流れを強めている。今回の特集では、各社の新商品や展望を紹介する。(大阪支社・小林悟空)
【2024(令和6)年11月21日第5180号1、4~5面】
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<滋賀特集>近江の魅力再発見 近江漬物の魅力伝える
近江漬物の存在感が増している。今年は大河ドラマ「光る君へ」が放送され、石山寺を始め紫式部にゆかりのある近江のスポットへ全国から観光客が訪れた。また大阪、京都へ訪れたインバウンドが県内の名所へ立ち寄る例は年々増えてきている。ご飯のお供として、近江漬物の魅力を伝える機会も増えている。
11月2日、3日の2日間、滋賀県彦根市の株式会社平和堂本社にて、西川貴教さんが企画・立案・総合演出するイベント『SHIGA KOMEKON 2024(米コン)』が開催された。新米の近江米と相性の良い日野菜漬、うなぎ蒲焼などの近江の名産品が並び、来場者は炊き立ての白米と一緒に楽しみ、イベントは盛況を博した。
琵琶湖を有する滋賀県は、数多くの湧水地に恵まれ、その名水を用い、国内で指折りの米の生産県である。琵琶湖の肥妖な土地で育まれた米は「近江米」と称され、キヌヒカリ、きらみずきと様々な品種が並ぶ。
キヌヒカリは、絹のようにつややかで、あっさりとした口当たりが特徴。全国の寿司店、和食店で重宝されている。「近江漬物」のおいしさも引き立たせる。
近江の名産品をPRする場の拡大で、近江漬物と出合うシーンも創出されている。
11月2日、3日の2日間、滋賀県彦根市の株式会社平和堂本社にて、西川貴教さんが企画・立案・総合演出するイベント『SHIGA KOMEKON 2024(米コン)』が開催された。新米の近江米と相性の良い日野菜漬、うなぎ蒲焼などの近江の名産品が並び、来場者は炊き立ての白米と一緒に楽しみ、イベントは盛況を博した。
琵琶湖を有する滋賀県は、数多くの湧水地に恵まれ、その名水を用い、国内で指折りの米の生産県である。琵琶湖の肥妖な土地で育まれた米は「近江米」と称され、キヌヒカリ、きらみずきと様々な品種が並ぶ。
キヌヒカリは、絹のようにつややかで、あっさりとした口当たりが特徴。全国の寿司店、和食店で重宝されている。「近江漬物」のおいしさも引き立たせる。
近江の名産品をPRする場の拡大で、近江漬物と出合うシーンも創出されている。
(大阪支社 小林悟空・高澤尚揮)
【2024(令和6)年11月21日第5180号1、6面】
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<かぶら漬特集>伝統の価値伝える 色も形も”かぶらない”
冬の漬物として、量販店から贈答品まで大きな市場を作っているかぶら漬。その品種は多種多様で、色彩は白・赤・青など彩り豊かで、形も丸形・コマ型・ひょうたん型と個性に溢れている。
改良品種に押され栽培が途絶えかける伝統野菜を、漬物メーカーが主導して維持・復興を進める事例も多数ある。飛騨の赤かぶ「飛騨紅蕪」、大阪の「天王寺かぶら」、高知の「弘岡かぶ」などは栽培されたほとんどが漬物メーカーへ出荷されている。企業活動が伝統や食文化の維持継承に貢献している好例と言える。
課題は原料面だ。千枚漬原料の大かぶらは、シーズン初期の北海道産や北陸産が昨年に続き不作となった。関西で需要が急増する12月分の原料も滋賀、京都の産地は残暑と雨不足で生育が大幅に遅れているが、年末には回復する見込み。
品種改良の進んでいる大かぶらでも異常気象に翻弄されている状況であり、栽培難易度の高い伝統品種は言うまでもない。
こうした状況下、メーカー各社は「買取価格を上げ、生産農家を守っていかなければ継続不可能」と口を揃える。商品品質の向上や、「伝統」が持つストーリー性を伝える商品開発に力を注いでる。
【大阪支社 小林悟空・高澤尚揮】
【2024(令和6)年11月21日第5180号1、7面】
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<沢庵特集> 沢庵はアップトレンド コロナ禍以降需要が高止まり
ダウントレンドからアップトレンドへ。沢庵の売れ行きが上昇している。
大きな転機となったのは2020年に発生した新型コロナウイルス。2019年まで沢庵の需要は減少傾向にあり、漬物の中でもダウントレンドだった。しかし、コロナ禍で巣ごもり消費が増加すると沢庵も他の漬物と同様に需要が増加した。
コロナ収束後、人と物の動きは以前に戻ってきている中で、漬物もカテゴリーによって売れ行きに変化が出てきている。2019年比でマイナスとなっている品目と高止まりしている品目の差が顕著になってきている中、沢庵の需要はキムチ、胡瓜漬、高菜漬とともに2桁以上の増加となっており、関東の市場規模は2019年比で約20%増加。まさにアップトレンドとなっている。
沢庵は一本物、ハーフ、ミニ、カットタイプ(袋)、スライスタイプ(カップ・袋)と様々な規格があり、多様なニーズに対応。その中でもカップのスライスタイプは切る手間がなく、蓋を開けるだけで食べられる簡便性が支持され、下段で販売する店舗も出てくるなど、好調な売れ行きをキープしている。
社会的な動きとして単身世帯の増加や世帯人数の減少がプラスに働いていると考えられ、若い女性が購入するケースも少なくない。一本物は食べ切れないが、スライスタイプのカップは手軽に食べることができて内容量もちょうど良く、コンビニエンスストアでも定番商品として販売されていることが大きい。
一本物やハーフ、袋のカットタイプはお得感、カップのスライスは簡便性の高さが魅力で、同じ大根を素材とする加工品だが、それぞれの特徴が異なっており、ニーズがすみ分けされている。11月11日は沢庵の日で、これからの季節は新物が出てきて売場が拡大するため、活発な動きになることが期待されている。
沢庵が売れ続けている理由を明示することはできないが、他の漬物と内容量や価格を比較するとコストパフォーマンスが高く、カップのスライスはタイムパフォーマンスに優れている。コスパとタイパのニーズに対応した売場を構成し、消費者の支持を得ている。
全国の大根産地では収穫がスタートしている。昨年に続く猛暑の影響で作付を遅らせたため、生育も遅れている。収穫のピークは今月中旬以降となるため、その影響がどれだけ出てくるかは不透明。現時点では関東や新潟、九州ともやや不作と予想されている。慢性的な原料不足は大きな課題だが、需要が高止まりしていることは明るい材料。弁当や定食の付け合わせとして幅広く利用され、最も身近な漬物と位置付けられる「沢庵」の今を特集した。
大きな転機となったのは2020年に発生した新型コロナウイルス。2019年まで沢庵の需要は減少傾向にあり、漬物の中でもダウントレンドだった。しかし、コロナ禍で巣ごもり消費が増加すると沢庵も他の漬物と同様に需要が増加した。
コロナ収束後、人と物の動きは以前に戻ってきている中で、漬物もカテゴリーによって売れ行きに変化が出てきている。2019年比でマイナスとなっている品目と高止まりしている品目の差が顕著になってきている中、沢庵の需要はキムチ、胡瓜漬、高菜漬とともに2桁以上の増加となっており、関東の市場規模は2019年比で約20%増加。まさにアップトレンドとなっている。
沢庵は一本物、ハーフ、ミニ、カットタイプ(袋)、スライスタイプ(カップ・袋)と様々な規格があり、多様なニーズに対応。その中でもカップのスライスタイプは切る手間がなく、蓋を開けるだけで食べられる簡便性が支持され、下段で販売する店舗も出てくるなど、好調な売れ行きをキープしている。
社会的な動きとして単身世帯の増加や世帯人数の減少がプラスに働いていると考えられ、若い女性が購入するケースも少なくない。一本物は食べ切れないが、スライスタイプのカップは手軽に食べることができて内容量もちょうど良く、コンビニエンスストアでも定番商品として販売されていることが大きい。
一本物やハーフ、袋のカットタイプはお得感、カップのスライスは簡便性の高さが魅力で、同じ大根を素材とする加工品だが、それぞれの特徴が異なっており、ニーズがすみ分けされている。11月11日は沢庵の日で、これからの季節は新物が出てきて売場が拡大するため、活発な動きになることが期待されている。
沢庵が売れ続けている理由を明示することはできないが、他の漬物と内容量や価格を比較するとコストパフォーマンスが高く、カップのスライスはタイムパフォーマンスに優れている。コスパとタイパのニーズに対応した売場を構成し、消費者の支持を得ている。
全国の大根産地では収穫がスタートしている。昨年に続く猛暑の影響で作付を遅らせたため、生育も遅れている。収穫のピークは今月中旬以降となるため、その影響がどれだけ出てくるかは不透明。現時点では関東や新潟、九州ともやや不作と予想されている。慢性的な原料不足は大きな課題だが、需要が高止まりしていることは明るい材料。弁当や定食の付け合わせとして幅広く利用され、最も身近な漬物と位置付けられる「沢庵」の今を特集した。
【2024(令和6)年11月11日第5179号1、4~7面】
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<香川・愛媛・高知特集>伝統野菜の継承者育つ 農家とメーカーが一体で
香川・愛媛・高知は、金時人参の醤油漬、からし菜漬、緋の蕪漬、弘岡かぶ漬、高知産紅生姜、ガリと、他県メーカーと差別化し、ニッチトップとして独自路線を歩む傾向にある。
今秋に収穫の高知産生姜は、猛暑、残暑、雨不足により予想以上の小ぶりで、来年以降の原料ひっ迫が危惧されている。消費者からの生姜ニーズは安定しており、健康性への認知が年々高まっていることで、原料不足は喫緊の課題となっている。来年以降は貴重な原料を大切に活用する年になると見られる。
一方、愛媛のからし菜や緋の蕪、高知の弘岡かぶの栽培は、新規就農者が近年参入しており、農家の高齢化や引退が相次ぐ中でも、伝統野菜を継承する貴重な人材が育っており、漬物メーカーでは安堵する声が聞こえる。
漬物メーカーは、農家が原料野菜を栽培したくなるようモチベーションを高め、農家にとって作りがいがあると感じてもらえる商品開発や、適正価格での販売実現に苦心する。
その尽力もあり、新規就農者が年々出てきており、原料野菜の生産量の維持や拡大という結果に繋がっている。
(大阪支社 小林悟空・高澤尚揮)
【2024(令和6)年11月11日第5179号8,9面】
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今夏は昨年に続いて猛暑となり、梅干しの売れ行きも好調に推移。5月~7月は前年を上回る売れ行きで、8月と9月は前年が好調だったため反動減で数字としてはやや下回ったものの、一昨年比ではプラスとなった。また、10月は気温も高かったこともあり、前年の数字を上回った。
だが、例年と状況が大きく異なるのが今年の作柄。暖冬の影響で着果数が少なかったことに加え、3月の降雹被害や虫害も発生し、平年比3割作という史上最低の作柄となった。
各メーカーでは10月、11月から価格改定を実施。対応は内容量調整、値上げ、内容量調整と値上げ、とメーカーや商品によってバラバラで、値上げ幅もA級原料の商品で30%以上、B・C級原料の商品でも10%から40%と大きな開きがある。いずれにしても過去最大幅の価格改定となる。
10月は価格改定した商品と価格改定を行っていない商品が混在し、こちらも売れ行きに大きな差が出ている。全体としては紀州産の動きが低調となり、秋冬の棚割りで価格改定が見送られた中国産の売れ行きが好調となっている。
中国産の原料価格も上昇傾向にあるものの、大幅には上がっていない。それでも為替の影響が大きいため、本来は大半の企業が秋冬からの価格改定を予定していたが、紀州産が凶作となったことで紀州産の値上げが優先され、中国産商品の値上げは来春以降に持ち越される形となった。
紀州産は深刻な原料不足となっている。平年の3割しか漬け込み量がなく、原料価格も1・7倍から2倍に高騰。しかし、金額を提示しても量を集められない状況となっている。和歌山県では紀州産の梅干ししか扱っていない企業も多く、中国産で売場をカバーすることも難しい状況だ。資金繰りも課題で年明け以降、経営が厳しくなる企業が出てくることが懸念されている。
紀州みなべ梅干協同組合(殿畑雅敏理事長)と紀州田辺梅干協同組合(前田雅雄理事長)では、合同で県に低金利の融資策など、セーフティネット構築の協力と支援を要請。また、紀州みなべ梅干協同組合では、組合加盟企業の売上アップに貢献すべく梅酢を使用した「梅香る鍋つゆ」(梅旨だし鍋つゆ、梅香るクリーミー鍋つゆ)を開発。和歌山県田辺市の「囲酒和屋」の辻真基氏が監修した鍋つゆで、10月1日よりみなべ梅干組合加盟の各企業の直売店や通販での販売がスタートしている。
物価高で節約志向の高まりが顕著となる中、値上げで単価が上昇する梅干しの売れ行きにも大きな影響が出てくることが想定されている。メーカーとしては、「売れても困る、売れなくても困る」という極めて困難な状況だ。当面の話題は中国産か梅関連製品となる見通しで、来年の新物が出てくる来夏以降まで梅業界の苦悩は続く。
【2024(令和6)年11月1日第5178号1、4~6面】
だが、例年と状況が大きく異なるのが今年の作柄。暖冬の影響で着果数が少なかったことに加え、3月の降雹被害や虫害も発生し、平年比3割作という史上最低の作柄となった。
各メーカーでは10月、11月から価格改定を実施。対応は内容量調整、値上げ、内容量調整と値上げ、とメーカーや商品によってバラバラで、値上げ幅もA級原料の商品で30%以上、B・C級原料の商品でも10%から40%と大きな開きがある。いずれにしても過去最大幅の価格改定となる。
10月は価格改定した商品と価格改定を行っていない商品が混在し、こちらも売れ行きに大きな差が出ている。全体としては紀州産の動きが低調となり、秋冬の棚割りで価格改定が見送られた中国産の売れ行きが好調となっている。
中国産の原料価格も上昇傾向にあるものの、大幅には上がっていない。それでも為替の影響が大きいため、本来は大半の企業が秋冬からの価格改定を予定していたが、紀州産が凶作となったことで紀州産の値上げが優先され、中国産商品の値上げは来春以降に持ち越される形となった。
紀州産は深刻な原料不足となっている。平年の3割しか漬け込み量がなく、原料価格も1・7倍から2倍に高騰。しかし、金額を提示しても量を集められない状況となっている。和歌山県では紀州産の梅干ししか扱っていない企業も多く、中国産で売場をカバーすることも難しい状況だ。資金繰りも課題で年明け以降、経営が厳しくなる企業が出てくることが懸念されている。
紀州みなべ梅干協同組合(殿畑雅敏理事長)と紀州田辺梅干協同組合(前田雅雄理事長)では、合同で県に低金利の融資策など、セーフティネット構築の協力と支援を要請。また、紀州みなべ梅干協同組合では、組合加盟企業の売上アップに貢献すべく梅酢を使用した「梅香る鍋つゆ」(梅旨だし鍋つゆ、梅香るクリーミー鍋つゆ)を開発。和歌山県田辺市の「囲酒和屋」の辻真基氏が監修した鍋つゆで、10月1日よりみなべ梅干組合加盟の各企業の直売店や通販での販売がスタートしている。
物価高で節約志向の高まりが顕著となる中、値上げで単価が上昇する梅干しの売れ行きにも大きな影響が出てくることが想定されている。メーカーとしては、「売れても困る、売れなくても困る」という極めて困難な状況だ。当面の話題は中国産か梅関連製品となる見通しで、来年の新物が出てくる来夏以降まで梅業界の苦悩は続く。
【2024(令和6)年11月1日第5178号1、4~6面】
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<八郎潟特集> わかさぎ、白魚が旬 「揚げる×炊く」製法で新商品
わかさぎの佃煮、甘露煮、唐揚げの名産地として知られる秋田県八郎潟では、今年も9月21日より八郎湖で、通称・どっぴき漁と呼ばれる機船船引(きせんふなび)き網漁がスタートした。
わかさぎは昨年不漁となったが、今年は昨年に比べて漁獲量が増えており佃煮メーカーには連日新鮮なわかさぎが運び込まれている。だが、漁師の減少も影響し、平年の漁獲量には届いておらず、原料の慢性的な不足感は解消されていない。一方で、白魚はここまで豊漁となっており、佃煮メーカー各社では販売に力を入れていく。
近年の不漁に伴い、開発が活発化しているのが、地元農作物を使用した商品だ。秋田県産の生姜やさつまいもなどを使用することで、水産物だけに頼らない商品展開を各社が模索している。
新商品開発において際立つのが八郎潟佃煮メーカーならではの“揚げる”という技術。わかさぎや白魚のから揚げの製造により培われてきた確固たる技術は、農作物を使用した製品開発でも力を発揮する。そこに、従来の炊く技術も融合し、「揚げる×炊く」製法により旨味が凝縮された新商品が誕生している。
秋田県において、佃煮の人気は健在だ。総務省家計調査「魚介のつくだ煮」の一世帯あたり支出金額においても、秋田市は例年上位に位置している。県内の佃煮売場のラインナップも華やか。秋田県民のソウルフードとして知られる甘納豆入りの「いかあられ」など独自の佃煮文化が育まれている。
今年も新物のわかさぎ、白魚が水揚げされ、多くの佃煮ファンが待ちわびた旬の季節がやってきた。
(東京本社・藤井大碁)
【2024(令和6)年10月21日第5177号1面】
わかさぎは昨年不漁となったが、今年は昨年に比べて漁獲量が増えており佃煮メーカーには連日新鮮なわかさぎが運び込まれている。だが、漁師の減少も影響し、平年の漁獲量には届いておらず、原料の慢性的な不足感は解消されていない。一方で、白魚はここまで豊漁となっており、佃煮メーカー各社では販売に力を入れていく。
近年の不漁に伴い、開発が活発化しているのが、地元農作物を使用した商品だ。秋田県産の生姜やさつまいもなどを使用することで、水産物だけに頼らない商品展開を各社が模索している。
新商品開発において際立つのが八郎潟佃煮メーカーならではの“揚げる”という技術。わかさぎや白魚のから揚げの製造により培われてきた確固たる技術は、農作物を使用した製品開発でも力を発揮する。そこに、従来の炊く技術も融合し、「揚げる×炊く」製法により旨味が凝縮された新商品が誕生している。
秋田県において、佃煮の人気は健在だ。総務省家計調査「魚介のつくだ煮」の一世帯あたり支出金額においても、秋田市は例年上位に位置している。県内の佃煮売場のラインナップも華やか。秋田県民のソウルフードとして知られる甘納豆入りの「いかあられ」など独自の佃煮文化が育まれている。
今年も新物のわかさぎ、白魚が水揚げされ、多くの佃煮ファンが待ちわびた旬の季節がやってきた。
(東京本社・藤井大碁)
【2024(令和6)年10月21日第5177号1面】
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<おせち特集>おせち商戦消費の二極化へ対応 付加価値と値ごろ感両面で
2025年元旦に向けたおせち商戦がスタートした。原材料価格や物流費の高騰など様々なコストアップにより、栗きんとん、黒豆、昆布巻きといった佃煮おせちの値上げ幅は5~15%程になる見込みで、今年も近年の値上げトレンドが継続する。
おせち市場はコロナ禍の巣ごもり需要を追い風に拡大を続けてきたが、昨年はコロナ5類以降に伴う社会の正常化により、単品おせち、重詰めおせち共に伸び悩んだ。また冷凍おせちの台頭により販売チャネルが多様化。通販で重詰めおせちを早期予約する消費者が増加していることも、単品おせちの需要減退につながっている。
今年は12月29日が日曜日となり、大型連休が取りやすい曜日周りのため、例年より首都圏から地方への人流が増加する可能性がある。一方で、物価上昇やホテル・旅館の宿泊費高騰により、宿泊を避けて日帰り旅行に切り替える人も多くなると見られ、年末年始の人流は読みづらい。
そのような中、おせちメーカーでは、値上げによる数量減少と単価上昇を踏まえ、前年並から微減の売上を想定している。
今年のおせちの売れ行きを左右するのが消費の二極化への対応だ。おせち料理はハレの日の食卓を彩る特別な食事として認識されており、高価格帯商品への需要は根強い。一方で、物価上昇による節約志向の高まりから、おせちにかける予算を抑える家庭が増えることも予想され、付加価値提案と共に、例年以上に値ごろ感の演出が求められる。
各社の取組は様々だ。栗きんとんでは、同一商品で異なる3種類の規格を展開、内容量や価格帯の選択肢の幅を広げる取組や、内容量を減らす代わりに芋餡のグレードをアップさせるといった提案が見られる。
また今年の特徴となっているのがセット物の拡充。セット物は年々売上が伸長していることに加え、値ごろ感の演出にも効果的であることから各メーカーはラインナップを増やし対応する。栗きんとん、黒豆、たづくり、昆布巻きといった定番の4点セットの他、2点セット、3点セット、またおつまみ用佃煮セット、くるみ製品のみのセットなど多彩な商品が揃う。
百貨店各社も消費の二極化への対応を強める。価格据え置き商品の拡充や早期予約により送料無料にする取組など節約ニーズに応えながらも、各社が高価格帯製品のラインナップを強化している。株式会社髙島屋では、約1万円のおせちから、輪島塗の重箱に入った66万円のおせちまで豊富なラインナップを揃え、多様化する消費者ニーズへ対応する。
近年のインバウンドの増加により、おせちは、日本の伝統食の一つとして、海外からの認知度が高まっている。年始に国内の宿泊先でおせちを食べた外国人観光客がその魅力を発信することで、日本が誇るおせち文化は世界中から注目を集め始めている。
(おせち特別取材班)
おせち市場はコロナ禍の巣ごもり需要を追い風に拡大を続けてきたが、昨年はコロナ5類以降に伴う社会の正常化により、単品おせち、重詰めおせち共に伸び悩んだ。また冷凍おせちの台頭により販売チャネルが多様化。通販で重詰めおせちを早期予約する消費者が増加していることも、単品おせちの需要減退につながっている。
今年は12月29日が日曜日となり、大型連休が取りやすい曜日周りのため、例年より首都圏から地方への人流が増加する可能性がある。一方で、物価上昇やホテル・旅館の宿泊費高騰により、宿泊を避けて日帰り旅行に切り替える人も多くなると見られ、年末年始の人流は読みづらい。
そのような中、おせちメーカーでは、値上げによる数量減少と単価上昇を踏まえ、前年並から微減の売上を想定している。
今年のおせちの売れ行きを左右するのが消費の二極化への対応だ。おせち料理はハレの日の食卓を彩る特別な食事として認識されており、高価格帯商品への需要は根強い。一方で、物価上昇による節約志向の高まりから、おせちにかける予算を抑える家庭が増えることも予想され、付加価値提案と共に、例年以上に値ごろ感の演出が求められる。
各社の取組は様々だ。栗きんとんでは、同一商品で異なる3種類の規格を展開、内容量や価格帯の選択肢の幅を広げる取組や、内容量を減らす代わりに芋餡のグレードをアップさせるといった提案が見られる。
また今年の特徴となっているのがセット物の拡充。セット物は年々売上が伸長していることに加え、値ごろ感の演出にも効果的であることから各メーカーはラインナップを増やし対応する。栗きんとん、黒豆、たづくり、昆布巻きといった定番の4点セットの他、2点セット、3点セット、またおつまみ用佃煮セット、くるみ製品のみのセットなど多彩な商品が揃う。
百貨店各社も消費の二極化への対応を強める。価格据え置き商品の拡充や早期予約により送料無料にする取組など節約ニーズに応えながらも、各社が高価格帯製品のラインナップを強化している。株式会社髙島屋では、約1万円のおせちから、輪島塗の重箱に入った66万円のおせちまで豊富なラインナップを揃え、多様化する消費者ニーズへ対応する。
近年のインバウンドの増加により、おせちは、日本の伝統食の一つとして、海外からの認知度が高まっている。年始に国内の宿泊先でおせちを食べた外国人観光客がその魅力を発信することで、日本が誇るおせち文化は世界中から注目を集め始めている。
(おせち特別取材班)
【2024(令和6)年10月21日第5177号1面】
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<さつまいも特集> 商品開発が活発化
近年、サツマイモの人気が高まっている。
品種改良により安納芋や紅はるか、など様々な品種が登場。サツマイモを使用した商品開発も活発化している。
今年も旬を迎えているサツマイモ製品を紹介する。
【2024(令和6)年10月21日第5177号9面】
【2024(令和6)年10月21日第5177号9面】
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<浅漬キムチ漬特集>成熟期迎えるキムチ 浅漬は「おかず」が新たな柱に
漬物売場をけん引するキムチは、コロナ禍の巣ごもり消費による特需で成長期を迎え、現在は成熟期に入っている。
キムチの市場規模はコロナ前の2019年と比べると約20%拡大しているが、前年比では微減となっている。甘口、辛口、韓国輸入キムチ、大容量、食べ切りサイズ、浅漬タイプをはじめ、白菜、大根、胡瓜といった一般的な素材だけではなく、エリンギ、ねぎ、にんにく、らっきょう、アボカド、ザーサイ、中華くらげの他、ホタテの貝ひも、たら、もずく、さきいかといった海産物を原料とした幅広い商品が置かれ、売場も広がっている。
だが、ラインナップとしては出尽くした感があり、単価が高い韓国輸入キムチが苦戦するなど、消費者の目はブランド力のある大手メーカーのNB商品や大容量でお得感のある商品に向けられている。
売場が広がっていることはポジティブな要素だが、1人の来店客がキムチを2つ購入するケースは少なく、競争はより激しくなってきていることで単価が下がってきている。
それでも、そのまま食べるだけではなく、鍋や炒め物の具材として利用できるなど、汎用性が高いことや比較的長い賞味期限、豊富に含まれていることで知られる植物性乳酸菌による健康効果など、多くの魅力を有していることは大きな強みだ。
また、11月に入ると主力原料である白菜の産地が長野から茨城に移り、増量企画などの販促も実施されるため、増収効果が期待される。漬物売場の主役の座は、しばらく揺らぎそうにない。
苦戦が続く浅漬だが、昨年に続いて夏は暑い日が続き、夏野菜の代表格でもある胡瓜が好調に動いた。旬の時期のため、通常2本入りの規格を3本入りにする商品もあり、売上に貢献した。だが、胡瓜は猛暑の影響でいずれの産地も不作となり、原料価格が高騰したため、利益には結びつかなかった。
茄子の売れ行きも堅調だったが、主力の白菜は低調だった。各社では浅漬売場を盛り返すため、液なしで賞味期限を長くした惣菜風のものやおかずになる商品を開発。市場に投入している。まだ定着までには至っていないが、「食べやすい」、「料理に使える」といった認知が広がれば新しい柱になる可能性もある。
キムチにも言えることだが、間もなく茨城県産の白菜がシーズンを迎え、新鮮な原料が入ってくる。キムチは調味の味が強いのが特徴だが、素材を生かした製法で素材の味を最も楽しめるのが浅漬。旬の魅力を訴求し、再び消費者の支持獲得を目指す。
キムチの市場規模はコロナ前の2019年と比べると約20%拡大しているが、前年比では微減となっている。甘口、辛口、韓国輸入キムチ、大容量、食べ切りサイズ、浅漬タイプをはじめ、白菜、大根、胡瓜といった一般的な素材だけではなく、エリンギ、ねぎ、にんにく、らっきょう、アボカド、ザーサイ、中華くらげの他、ホタテの貝ひも、たら、もずく、さきいかといった海産物を原料とした幅広い商品が置かれ、売場も広がっている。
だが、ラインナップとしては出尽くした感があり、単価が高い韓国輸入キムチが苦戦するなど、消費者の目はブランド力のある大手メーカーのNB商品や大容量でお得感のある商品に向けられている。
売場が広がっていることはポジティブな要素だが、1人の来店客がキムチを2つ購入するケースは少なく、競争はより激しくなってきていることで単価が下がってきている。
それでも、そのまま食べるだけではなく、鍋や炒め物の具材として利用できるなど、汎用性が高いことや比較的長い賞味期限、豊富に含まれていることで知られる植物性乳酸菌による健康効果など、多くの魅力を有していることは大きな強みだ。
また、11月に入ると主力原料である白菜の産地が長野から茨城に移り、増量企画などの販促も実施されるため、増収効果が期待される。漬物売場の主役の座は、しばらく揺らぎそうにない。
苦戦が続く浅漬だが、昨年に続いて夏は暑い日が続き、夏野菜の代表格でもある胡瓜が好調に動いた。旬の時期のため、通常2本入りの規格を3本入りにする商品もあり、売上に貢献した。だが、胡瓜は猛暑の影響でいずれの産地も不作となり、原料価格が高騰したため、利益には結びつかなかった。
茄子の売れ行きも堅調だったが、主力の白菜は低調だった。各社では浅漬売場を盛り返すため、液なしで賞味期限を長くした惣菜風のものやおかずになる商品を開発。市場に投入している。まだ定着までには至っていないが、「食べやすい」、「料理に使える」といった認知が広がれば新しい柱になる可能性もある。
キムチにも言えることだが、間もなく茨城県産の白菜がシーズンを迎え、新鮮な原料が入ってくる。キムチは調味の味が強いのが特徴だが、素材を生かした製法で素材の味を最も楽しめるのが浅漬。旬の魅力を訴求し、再び消費者の支持獲得を目指す。
【2024(令和6)年10月11日第5176号1面】
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<高菜漬特集>中外食活性化が追い風 レシピ提案は包材やSNSで
「高菜漬」は消費拡大基調にある数少ない漬物カテゴリーである。本紙が3月21日号で発表した「2023年漬物出荷金額」でも、高菜漬は前年比8・5%と大幅な伸びとなった。
好調の背景にあるのが料理素材としての用途の広さだ。ラーメンや炒飯、パスタ、鍋物など、洋の東西を問わず、様々な料理で高菜漬は利用されている。コロナ禍が収束し、中外食市場が活性化したことは高菜漬には追い風となっている。
特に豚骨ラーメンには欠かせない存在で、ラーメンはいまや日本を代表する美食の一つとして、人気ラーメン店には海外旅行客が列をなす光景も珍しくない。高菜漬の美味しさも同時に世界へ知れ渡っていくことが期待される。
市販においてもメーカー各社はSNSでのレシピ提案を強化。商品でも包装デザイン上で料理活用を訴求するものや、惣菜風の製品も増えてきている。
本場九州の量販店では10アイテム近くを揃える店舗もあるが、それ以外ではまだ2,3アイテム程度に留まっているが、この差の分だけ伸び代を残していると言える。
消費が拡大する一方で、課題となるのは原料面だ。今春は久しぶりに作柄は悪くなかったものの、在庫の不足分をカバーしきれるほどではなく、引き続き貴重な国産原料を大切に売っていく流れは続く。
今回の特集では、高菜漬新製品や各社の動向を取材した。
好調の背景にあるのが料理素材としての用途の広さだ。ラーメンや炒飯、パスタ、鍋物など、洋の東西を問わず、様々な料理で高菜漬は利用されている。コロナ禍が収束し、中外食市場が活性化したことは高菜漬には追い風となっている。
特に豚骨ラーメンには欠かせない存在で、ラーメンはいまや日本を代表する美食の一つとして、人気ラーメン店には海外旅行客が列をなす光景も珍しくない。高菜漬の美味しさも同時に世界へ知れ渡っていくことが期待される。
市販においてもメーカー各社はSNSでのレシピ提案を強化。商品でも包装デザイン上で料理活用を訴求するものや、惣菜風の製品も増えてきている。
本場九州の量販店では10アイテム近くを揃える店舗もあるが、それ以外ではまだ2,3アイテム程度に留まっているが、この差の分だけ伸び代を残していると言える。
消費が拡大する一方で、課題となるのは原料面だ。今春は久しぶりに作柄は悪くなかったものの、在庫の不足分をカバーしきれるほどではなく、引き続き貴重な国産原料を大切に売っていく流れは続く。
今回の特集では、高菜漬新製品や各社の動向を取材した。
【2024(令和6)年10月11日第5176号1面】
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<茨城特集> シン・いばらきメシ総選挙2024 「食」の観光資源を創出
シン・いばらきメシ総選挙実行委員会(大井川和彦会長=茨城県知事、事務局:茨城県政策企画部地域振興課)は、10月12日から14日までの3日間、茨城県三の丸庁舎(水戸市)にて、「シン・いばらきメシ総選挙2024~市町村対抗いばらき最強グルメ決定戦~」を開催する。
初開催となる本イベントは、茨城県を代表する新たな「ご当地グルメ」の誕生により、「食」の観光資源の創出に加え、「食」を通した地域振興を目的としており、グランプリを獲得したご当地グルメは、県内外へ集中的にプロモーションが実施される。
県内44市町村が新規グルメであること、県産の食材を使用していること、県内に所在する飲食店事業者と連携していることなどの条件をクリアしたご当地グルメを開発して出店。インターネットでの事前投票(9月2日~10月4日)と総選挙会場の得票数を総合し、一般料理・スイーツそれぞれ上位10市町村の「グルメ」を選び、審査員による審査で各部門のグランプリ、準グランプリ、第3位、特別賞を決定する。
茨城県は収穫量全国1位の農産物も多く、豊かな漁場にも恵まれ、畜産物もブランド銘柄がいくつもある食材の宝庫。しかし、県を代表するグルメがなく、豊かな食材を活かしきれていなかった。その状況を打破すべく、ご当地グルメ決定戦を開催して茨城の「食」を盛り上げていく。
全国7位(令和3年)の生産量を誇る大根は、ここまで順調に生育。今年は昨年に続く猛暑の影響で種蒔きの時期を8月中旬から9月上旬に遅らせ、その後の天候が安定していることから良好な状況となっている。11月からは白菜の出荷が本格的にスタートする見通しで、原料供給県としても茨城県への期待と注目度は高まっている。
【2024(令和6)年10月11日第5176号6面】
初開催となる本イベントは、茨城県を代表する新たな「ご当地グルメ」の誕生により、「食」の観光資源の創出に加え、「食」を通した地域振興を目的としており、グランプリを獲得したご当地グルメは、県内外へ集中的にプロモーションが実施される。
県内44市町村が新規グルメであること、県産の食材を使用していること、県内に所在する飲食店事業者と連携していることなどの条件をクリアしたご当地グルメを開発して出店。インターネットでの事前投票(9月2日~10月4日)と総選挙会場の得票数を総合し、一般料理・スイーツそれぞれ上位10市町村の「グルメ」を選び、審査員による審査で各部門のグランプリ、準グランプリ、第3位、特別賞を決定する。
茨城県は収穫量全国1位の農産物も多く、豊かな漁場にも恵まれ、畜産物もブランド銘柄がいくつもある食材の宝庫。しかし、県を代表するグルメがなく、豊かな食材を活かしきれていなかった。その状況を打破すべく、ご当地グルメ決定戦を開催して茨城の「食」を盛り上げていく。
全国7位(令和3年)の生産量を誇る大根は、ここまで順調に生育。今年は昨年に続く猛暑の影響で種蒔きの時期を8月中旬から9月上旬に遅らせ、その後の天候が安定していることから良好な状況となっている。11月からは白菜の出荷が本格的にスタートする見通しで、原料供給県としても茨城県への期待と注目度は高まっている。
【2024(令和6)年10月11日第5176号6面】
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秋を彩る「日本橋べったら市」 10月19、20日に開催
「日本橋べったら市」(べったら市保存会)が昨年に引き続き開催される。
毎年10月19、20日に日本橋大伝馬町の宝田恵比寿神社界隈で開かれている「べったら市」は、東京の秋を彩る、庶民の祭りとしてつとに知られている。
コロナの影響で2020年と2021年は中止となっていた「べったら市」は一昨年10月、3年ぶりに復活。昨年10月には4年ぶりの本格開催となり、かつての賑わいを取り戻した。
この市の始まりは、江戸時代中期に、百姓が飴と麹で漬けた大根を浅漬として売り始めたのが起源と言われている。戦後一時期、中断されていたが、にいたか屋が「べったら市保存会」とともにこの70年余り復興、そして継続開催に尽力し、今日の人気と共に、人出を導引するに至った。
来場者は期間10万人以上(前回実績)。露店は約500軒。大方、株式会社東京にいたか屋(中川英雄社長、東京都中央区日本橋)が商品供給をしている。今年もメディアへの露出も期待されている。
べったら漬の出荷金額は約50億円(本紙調べ)。今から25年前のべったら漬の市場規模は、秋冬の一季節商材として約5億円規模(本紙推定)であったことから、「べったら市」がこれまで果たしてきた販促・PR効果は大きい。
昨今では需要の高まりから定番アイテムとしてハーフサイズ商品、さらには販売好調のカップ詰めのスライスタイプを品揃えする小売店が多い。べったら漬は、秋冬の代表的な季節商材であると同時に商圏も広がり、全国区、通年商材としての存在感が増している。
【2024(令和6)年10月11日第5176号1面】
日本橋べったら市(東京にいたか屋HP)
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<秋冬商材特集>冬も甘酒がオススメ 「こうじ」は発酵食品の素
今年の夏は記録的な猛暑となり、昨年以上となる残暑も9月下旬まで続いた。現在は暑さが少し落ち着き、季節の移り変わりが感じられるようになってきた。これからのシーズンは、「こうじ」、「甘酒」、「酒粕」などを代表する秋冬商材の需要が増加するため、売場に各アイテムを拡充する流れとなっている。
米麹由来の「甘酒」は栄養価が高く、古くから夏の栄養補給ドリンクとして飲まれていたことから、夏の季語として用いられる。だが、正月に神社などで甘酒が振舞われることから、冬の飲み物として捉えている人も多く、それを示すように寒い時期が最需要期となっている。
甘酒は冬もオススメのアイテムと位置付けられる理由がある。米を糖化させる麹菌は発酵の過程で、でんぷんやタンパク質を糖やアミノ酸に変えて、甘く美味しいものに変化させるだけでなく、米の何倍ものビタミンB群を作り出す。
このビタミンB群が炭水化物やたんぱく質、脂質を代謝(分解)して、身体のエネルギーを生み出す。この一連のエネルギー代謝が活発になることで体温が上昇する。そのため、身体を温めるには、ビタミンB群が含まれる甘酒はぴったりの食品だ。
2016年の甘酒ブーム以降の需要は年々減少傾向にあるが、麹が脚光を浴びる2012年以前の市場規模と比べると数倍拡大しており、現在も定番アイテムとなっている。体を温める機能性などが再び認知されれば、ポテンシャルが高い甘酒の需要が再び増加する可能性もある。
「こうじ」の可能性も大きい。今年の3月と4月は紅麹の事実誤認の影響もあったが、現在は元に戻っている。世界人口の増加や温暖化などの影響で食糧生産性が低下し、食糧やたんぱく質の不足が指摘されているが、日本ハム株式会社では、新しいたんぱく質源として〝麹(こうじ)〟に着目し、たんぱく質が豊富な麹そのものを食材とした研究開発を推進。大きな期待が寄せられている。
日本酒の副産物である酒粕は、旨味と華やかな香りを加えてくれる食材としての素材利用が定着しつつある。
総合食品卸大手の加藤産業(兵庫県西宮市)は地元酒蔵・大関の酒粕使用の「発酵ふっくら味噌煮の素」を発売中、サッポロビール(東京都)は酒粕を使用した「男うめサワー和の旨味」を11月に発売する。
商品展開としても溶かしやすい吟醸粕や練り粕が増えており、その用途はお菓子作りや料理の隠し味。粕汁や甘酒以外の市場を広げてきている。こうじや酒粕は、野菜などの漬け床としても利用できる。
発酵食品とは、微生物(乳酸菌、麹菌、酵母など)の働きによって食物が変化し、食品の保存性、また味わいや香り、栄養価や健康調節機能のアップなど、人にとって有益に作用する食品のことを指す。「発酵食品」の認知度は数年前よりも広がっているが、まだまだ伸び代もある。
発酵の素となる「こうじ」、発酵食品である「甘酒」や「酒粕」。これらを取り扱う全国のメーカーの動向を取材した。
米麹由来の「甘酒」は栄養価が高く、古くから夏の栄養補給ドリンクとして飲まれていたことから、夏の季語として用いられる。だが、正月に神社などで甘酒が振舞われることから、冬の飲み物として捉えている人も多く、それを示すように寒い時期が最需要期となっている。
甘酒は冬もオススメのアイテムと位置付けられる理由がある。米を糖化させる麹菌は発酵の過程で、でんぷんやタンパク質を糖やアミノ酸に変えて、甘く美味しいものに変化させるだけでなく、米の何倍ものビタミンB群を作り出す。
このビタミンB群が炭水化物やたんぱく質、脂質を代謝(分解)して、身体のエネルギーを生み出す。この一連のエネルギー代謝が活発になることで体温が上昇する。そのため、身体を温めるには、ビタミンB群が含まれる甘酒はぴったりの食品だ。
2016年の甘酒ブーム以降の需要は年々減少傾向にあるが、麹が脚光を浴びる2012年以前の市場規模と比べると数倍拡大しており、現在も定番アイテムとなっている。体を温める機能性などが再び認知されれば、ポテンシャルが高い甘酒の需要が再び増加する可能性もある。
「こうじ」の可能性も大きい。今年の3月と4月は紅麹の事実誤認の影響もあったが、現在は元に戻っている。世界人口の増加や温暖化などの影響で食糧生産性が低下し、食糧やたんぱく質の不足が指摘されているが、日本ハム株式会社では、新しいたんぱく質源として〝麹(こうじ)〟に着目し、たんぱく質が豊富な麹そのものを食材とした研究開発を推進。大きな期待が寄せられている。
日本酒の副産物である酒粕は、旨味と華やかな香りを加えてくれる食材としての素材利用が定着しつつある。
総合食品卸大手の加藤産業(兵庫県西宮市)は地元酒蔵・大関の酒粕使用の「発酵ふっくら味噌煮の素」を発売中、サッポロビール(東京都)は酒粕を使用した「男うめサワー和の旨味」を11月に発売する。
商品展開としても溶かしやすい吟醸粕や練り粕が増えており、その用途はお菓子作りや料理の隠し味。粕汁や甘酒以外の市場を広げてきている。こうじや酒粕は、野菜などの漬け床としても利用できる。
発酵食品とは、微生物(乳酸菌、麹菌、酵母など)の働きによって食物が変化し、食品の保存性、また味わいや香り、栄養価や健康調節機能のアップなど、人にとって有益に作用する食品のことを指す。「発酵食品」の認知度は数年前よりも広がっているが、まだまだ伸び代もある。
発酵の素となる「こうじ」、発酵食品である「甘酒」や「酒粕」。これらを取り扱う全国のメーカーの動向を取材した。
【2024(令和6)年10月1日第5175号1面】
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<関連資材機器特集> 社会的共感を得てブランド力向上 食に関わる専門展示会開催
記録的な猛暑や残暑、ゲリラ豪雨など、日本の気候は変わりつつあり、今年の和歌山の紀州南高梅が史上最低の作柄になった現実を見ても、異常気象はもはや異常ではなく、通常や日常として考えていくことが求められている。
また、日本は人口減少や少子高齢化により、深刻な人手不足に陥っており、品質を維持しながら生産量を減らさず、事業を継続していくことが困難になってきている。
さらに、原材料価格をはじめ、人件費、物流費、包装資材、添加物、調味料など製造に関わる多くのコストが上昇しており、収益を圧迫している。
末端では影響力のある大手企業が値上げを実施しているが、中小企業は競合の動きや消費者離れを警戒し、積極的な価格改定を行うことができていない状況だ。
このような環境下で重要になってくるのが省力化や省人化、再生可能エネルギー設備等の導入による環境負荷低減、持続可能な開発目標(SDGs)の推進、フードロス削減など。
これらの取組は直接的にコスト削減につながらないこともあるが、社会的共感を得ることで企業のブランド力が向上し、「エシカル消費(倫理的消費)」につながる。「コスト削減はやり尽くした」とよく耳にするが、各企業でできることはまだあるはずだ。
また、日本は人口減少や少子高齢化により、深刻な人手不足に陥っており、品質を維持しながら生産量を減らさず、事業を継続していくことが困難になってきている。
さらに、原材料価格をはじめ、人件費、物流費、包装資材、添加物、調味料など製造に関わる多くのコストが上昇しており、収益を圧迫している。
末端では影響力のある大手企業が値上げを実施しているが、中小企業は競合の動きや消費者離れを警戒し、積極的な価格改定を行うことができていない状況だ。
このような環境下で重要になってくるのが省力化や省人化、再生可能エネルギー設備等の導入による環境負荷低減、持続可能な開発目標(SDGs)の推進、フードロス削減など。
これらの取組は直接的にコスト削減につながらないこともあるが、社会的共感を得ることで企業のブランド力が向上し、「エシカル消費(倫理的消費)」につながる。「コスト削減はやり尽くした」とよく耳にするが、各企業でできることはまだあるはずだ。
10月9日から11日の3日間、東京ビッグサイト東ホールで開催される「FOOD展2024」は、食品製造に関わる現場のさらなる課題解決を目指す展示会として注目を集めている。
「FOOD展2024」は、「給食・大量調理」、「食品衛生・品質管理」、「食品工場設備、製造・加工機器」、「食品物流」、「惣菜製造」など、“食”に関わる5つの分野を網羅した秋口唯一の食品業界向け展示会。
出展企業による最新製品・技術・サービスの展示に加え、最新の業界動向や企業の事例紹介など、有識者によるセミナーが多数企画されている。
また、10月23日から25日には、東京ビッグサイト東1‐6ホールで「TOKYO PACK 2024(2024東京国際包装展)」が開催される。
過去2回は東京オリンピックや新型コロナウイルスによる制限のもと、規模を縮小しての開催となっていたが、今回は通常規模に戻り、包装に関連する幅広い情報が発信される。足を運べば新たな知見や技術を得る絶好の機会になる。
「工場長・店長必見! 安全安心 関連資材機器特集」では、各社で活用できる機械や包装資材をはじめ、企業のブランド力や既存の商品に磨きをかける商品を幅広く紹介する。
【2024(令和6)年9月21日第5174号1面】
TOKYO PACK 2024
https://www.syokuryou-shinbun.com/pages/1392/#block19949
「FOOD展2024」は、「給食・大量調理」、「食品衛生・品質管理」、「食品工場設備、製造・加工機器」、「食品物流」、「惣菜製造」など、“食”に関わる5つの分野を網羅した秋口唯一の食品業界向け展示会。
出展企業による最新製品・技術・サービスの展示に加え、最新の業界動向や企業の事例紹介など、有識者によるセミナーが多数企画されている。
また、10月23日から25日には、東京ビッグサイト東1‐6ホールで「TOKYO PACK 2024(2024東京国際包装展)」が開催される。
過去2回は東京オリンピックや新型コロナウイルスによる制限のもと、規模を縮小しての開催となっていたが、今回は通常規模に戻り、包装に関連する幅広い情報が発信される。足を運べば新たな知見や技術を得る絶好の機会になる。
「工場長・店長必見! 安全安心 関連資材機器特集」では、各社で活用できる機械や包装資材をはじめ、企業のブランド力や既存の商品に磨きをかける商品を幅広く紹介する。
【2024(令和6)年9月21日第5174号1面】
TOKYO PACK 2024
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FOOD展2024
https://www.food-exhibition.info/
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<鹿児島特集> 高菜漬・沢庵とも好調 農業育成で強まる存在感
九州最南端に位置する鹿児島は、食材の宝庫と言える風土を持っている。温暖な気候、火山灰により形成された土壌、黒潮の回遊する漁場と山海の幸が揃う。
漬物においても、恵まれた環境を生かした農業を背景に沢庵、高菜漬の一大生産地として全国トップクラスの生産量を誇っている。
高菜漬は外食向けや土産製品が多いカテゴリであるため、コロナが発生した2020年から2022年までは厳しい環境だったが、昨年からコロナ禍が収束し、人流が回復した恩恵を受けて伸長している。九州の枠を飛び超えて、関東や関西での導入率も高まってきている。
鹿児島の沢庵も昨年から好調な売れ行きを示している。その背景には北・東日本の原料が不足しているため、供給可能な鹿児島に注文が集中している、という面もある。日本の農業は将来的に縮小していくと見られ、農業育成に精力的な鹿児島の存在感は強まっていくだろう。
とはいえ鹿児島も原料が潤沢なわけではなく、多少のブレーキを掛ける必要がある歯がゆい状況となっている。このため現地メーカー各社は9月下旬から始まる大根の作付けを可能な限り増やしてもらおうと契約生産者との交渉を進めているところだ。
商品開発にも原料面の課題が反映されている。スライス、刻みタイプの商品を拡充することで一本物の規格を外れた原料を有効活用している。簡便性という点から消費者ニーズにもマッチしている。料理素材として混ぜ込む用途に主眼を置いた商品も増えてきた。
今回の特集では、鹿児島の魅力的な商品に加え、原料確保やSDGsの取組を紹介する。
(小林悟空)
【2024(令和6)年9月11日第5173号1面】
漬物においても、恵まれた環境を生かした農業を背景に沢庵、高菜漬の一大生産地として全国トップクラスの生産量を誇っている。
高菜漬は外食向けや土産製品が多いカテゴリであるため、コロナが発生した2020年から2022年までは厳しい環境だったが、昨年からコロナ禍が収束し、人流が回復した恩恵を受けて伸長している。九州の枠を飛び超えて、関東や関西での導入率も高まってきている。
鹿児島の沢庵も昨年から好調な売れ行きを示している。その背景には北・東日本の原料が不足しているため、供給可能な鹿児島に注文が集中している、という面もある。日本の農業は将来的に縮小していくと見られ、農業育成に精力的な鹿児島の存在感は強まっていくだろう。
とはいえ鹿児島も原料が潤沢なわけではなく、多少のブレーキを掛ける必要がある歯がゆい状況となっている。このため現地メーカー各社は9月下旬から始まる大根の作付けを可能な限り増やしてもらおうと契約生産者との交渉を進めているところだ。
商品開発にも原料面の課題が反映されている。スライス、刻みタイプの商品を拡充することで一本物の規格を外れた原料を有効活用している。簡便性という点から消費者ニーズにもマッチしている。料理素材として混ぜ込む用途に主眼を置いた商品も増えてきた。
今回の特集では、鹿児島の魅力的な商品に加え、原料確保やSDGsの取組を紹介する。
(小林悟空)
【2024(令和6)年9月11日第5173号1面】
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<酢漬特集>紅生姜は用途と裾野が拡大 「第4の楽京」を提案
楽京と生姜を主軸とする酢漬は、甘酢漬が多く、清涼感があることから5月~8月が最需要期となる。
今夏は昨年以上の猛暑となり、出荷のピークは楽京が6月、生姜が7月となったが、9月に入っても全国的に30度以上の真夏日が続いていることもあり、極端に落ち込む動きにはなっておらず、緩やかなカーブを描きながら落ち着いてきている。
楽京、生姜ともに今年に入って内容量調整を実施したメーカーもあり、売れ行きには多少のブレーキがかかっているが、楽京はNBだけではなく、PBも含めれば大手数社がシェアの大半を占めており、売場を持っているメーカーは前年並みか前年を上回る数字となっている。
中国産は為替が8月下旬頃から1ドル140円台前半で推移するなど、円高になってきていることで昨年よりはコストの上昇が抑えられている他、高付加価値の国産商品で前年を上回る動きも見られ、プラスの流れもある。
だが、物価高で節約志向が高まっている中、全体としてはやや低調な動きとなっている。特に楽京は嗜好性が強い商品だが、消費マインドが低下している現在の環境ではマイナスに働くケースも見られる。
商品や売場に目新しさが求められている。楽京の売場は主に「ピリ辛らっきょう」と「甘らっきょう」に「塩らっきょう」を加えた3種類で構成されている。過去に新しいフレーバーの商品が発売されても定着せず、すぐに終売となるケースが多かった。
そんな売場に一石を投じようと、株式会社すが野では食卓の彩りとしても利用できる新商品「ワインらっきょう」をボジョレーヌーボーの解禁に合わせて発売する。「第4の楽京」として積極的に提案し、定着を目指す。
生姜の売れ行きは前年比で見ると低調となっているが、コロナ前の2019年年比では同等の数字となっており、コロナ禍に発生した巣ごもり消費の特需が4年かけてようやく落ち着き、元に戻った形だ。
夏に売れ行きが目立ったのが紅生姜。暑い日が続き、冷やし中華の付け合わせとして業務用、家庭用ともに需要が増加した他、学校が夏休みに入り、自宅で焼きそばやお好み焼きなどを食べる機会が増えたことが影響したと見られる。
また、関西では平切りにした紅生姜の天ぷらが定番となっているが、関東の量販店では細切りの紅生姜を天ぷらにした惣菜が販売されている他、卵焼きやポテトサラダ、タルタルソースなど、酸味と塩味、色合いを生かし、具材として利用するレシピが料理サイトなどでも数多く紹介されており、用途が広がっている。
また、人流が回復して外食の需要が回復してきていることから、業務用のがりもコロナ前に近い数字に戻ってきている。
今夏は昨年以上の猛暑となり、出荷のピークは楽京が6月、生姜が7月となったが、9月に入っても全国的に30度以上の真夏日が続いていることもあり、極端に落ち込む動きにはなっておらず、緩やかなカーブを描きながら落ち着いてきている。
楽京、生姜ともに今年に入って内容量調整を実施したメーカーもあり、売れ行きには多少のブレーキがかかっているが、楽京はNBだけではなく、PBも含めれば大手数社がシェアの大半を占めており、売場を持っているメーカーは前年並みか前年を上回る数字となっている。
中国産は為替が8月下旬頃から1ドル140円台前半で推移するなど、円高になってきていることで昨年よりはコストの上昇が抑えられている他、高付加価値の国産商品で前年を上回る動きも見られ、プラスの流れもある。
だが、物価高で節約志向が高まっている中、全体としてはやや低調な動きとなっている。特に楽京は嗜好性が強い商品だが、消費マインドが低下している現在の環境ではマイナスに働くケースも見られる。
商品や売場に目新しさが求められている。楽京の売場は主に「ピリ辛らっきょう」と「甘らっきょう」に「塩らっきょう」を加えた3種類で構成されている。過去に新しいフレーバーの商品が発売されても定着せず、すぐに終売となるケースが多かった。
そんな売場に一石を投じようと、株式会社すが野では食卓の彩りとしても利用できる新商品「ワインらっきょう」をボジョレーヌーボーの解禁に合わせて発売する。「第4の楽京」として積極的に提案し、定着を目指す。
生姜の売れ行きは前年比で見ると低調となっているが、コロナ前の2019年年比では同等の数字となっており、コロナ禍に発生した巣ごもり消費の特需が4年かけてようやく落ち着き、元に戻った形だ。
夏に売れ行きが目立ったのが紅生姜。暑い日が続き、冷やし中華の付け合わせとして業務用、家庭用ともに需要が増加した他、学校が夏休みに入り、自宅で焼きそばやお好み焼きなどを食べる機会が増えたことが影響したと見られる。
また、関西では平切りにした紅生姜の天ぷらが定番となっているが、関東の量販店では細切りの紅生姜を天ぷらにした惣菜が販売されている他、卵焼きやポテトサラダ、タルタルソースなど、酸味と塩味、色合いを生かし、具材として利用するレシピが料理サイトなどでも数多く紹介されており、用途が広がっている。
また、人流が回復して外食の需要が回復してきていることから、業務用のがりもコロナ前に近い数字に戻ってきている。
【2024(令和6)年9月11日第5173号1面】
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<中華商材特集> メンマやザーサイ売上伸長
近年、中華料理の人気が高まっている。子どもから大人まで幅広い年齢層からの支持に加えて、地域に根差した”町中華”がテレビ番組での放送を機に注目を集めるなど、中華料理はさらに身近な存在になっている。
特に、ラーメンやチャーハン、餃子といった定番料理は食卓への登場機会も多く、日本人にとって欠かせないメニューとなっている。
こうした中華料理の付け合せとして近年売上を伸ばしているのがメンマやザーサイといった漬物類だ。メンマはラーメンの具材として欠かせないアイテムである他、おつまみとしての需要も高い。
ザーサイの人気も拡大している。おつまみや料理素材としてはもちろん、猛暑が続く中で、冷やし麺の具材としての引き合いが強まっている。
また近年の韓流ブームが追い風となり、ナムルやビビンバの人気も右肩上がりだ。ご飯に混ぜるだけで簡単手軽にビビンバが完成するタイムパフォーマンスに優れた商品も登場しており、増加する単身世帯や二人世帯、共働き世帯を中心に支持を集めている。
特に、ラーメンやチャーハン、餃子といった定番料理は食卓への登場機会も多く、日本人にとって欠かせないメニューとなっている。
こうした中華料理の付け合せとして近年売上を伸ばしているのがメンマやザーサイといった漬物類だ。メンマはラーメンの具材として欠かせないアイテムである他、おつまみとしての需要も高い。
ザーサイの人気も拡大している。おつまみや料理素材としてはもちろん、猛暑が続く中で、冷やし麺の具材としての引き合いが強まっている。
また近年の韓流ブームが追い風となり、ナムルやビビンバの人気も右肩上がりだ。ご飯に混ぜるだけで簡単手軽にビビンバが完成するタイムパフォーマンスに優れた商品も登場しており、増加する単身世帯や二人世帯、共働き世帯を中心に支持を集めている。
【2024(令和6)年8月21日第5171号1面】
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<新潟特集> 「佐渡島の金山」世界遺産登録 国内外から熱視線
日本を代表する金山である「佐渡島の金山」が7月27日、ユネスコの世界文化遺産に登録されることが決定した。1997(平成9)年に市民団体による世界遺産登録に向けた運動が始まってから27年、悲願が成就した。
「佐渡島の金山」は、鎖国を行っていた江戸幕府の直接管理の下、高純度の金を産む生産技術とそれを可能とする高度に専門化された生産体制が整備され、世界でも類を見ない大規模な金生産システムが長期間にわたって継続。また、幕府によって日本各地から集められた労働者たちによって、信仰や芸能、娯楽などの豊かで多様な鉱山由来の文化が育まれた。
「佐渡島の金山」では異なる二つの金銀鉱床(鉱脈鉱床・砂金鉱床)の開発が進められ、17世紀には世界最大級の産出量を上げ、江戸幕府の財政やオランダを通じて世界貿易にも貢献した。
今回の決定で国内の世界遺産は、文化遺産と自然遺産を合わせて26件となり、国内外で高い関心が寄せられている。地元の新潟でも歓喜の声が上がっており、観光、外食、土産関係で追い風が吹くことが期待されている。
夏が終われば収穫の秋を迎える。猛暑の影響で全国的にコメ不足が問題となっている中、日本一の米生産県である新潟への期待度は例年以上に高まっている。
きめの細やかな大根を原料とした沢庵漬、山海漬をはじめとする海産珍味(野沢菜昆布、数の子松前漬、数の子はりはりなど)、越後みそを使用した味噌漬など、地域性を活かした特産品を生み出してきた。新潟県漬物工業協同組合(佐久間大輔理事長)では、新たな可能性を求めてフリーズドライ漬物の開発を行うなど、国内外から熱視線が注がれる新潟の企業を特集した。(千葉友寛)
【2024(令和6)年8月11日第5170号1面】
「佐渡島の金山」は、鎖国を行っていた江戸幕府の直接管理の下、高純度の金を産む生産技術とそれを可能とする高度に専門化された生産体制が整備され、世界でも類を見ない大規模な金生産システムが長期間にわたって継続。また、幕府によって日本各地から集められた労働者たちによって、信仰や芸能、娯楽などの豊かで多様な鉱山由来の文化が育まれた。
「佐渡島の金山」では異なる二つの金銀鉱床(鉱脈鉱床・砂金鉱床)の開発が進められ、17世紀には世界最大級の産出量を上げ、江戸幕府の財政やオランダを通じて世界貿易にも貢献した。
今回の決定で国内の世界遺産は、文化遺産と自然遺産を合わせて26件となり、国内外で高い関心が寄せられている。地元の新潟でも歓喜の声が上がっており、観光、外食、土産関係で追い風が吹くことが期待されている。
夏が終われば収穫の秋を迎える。猛暑の影響で全国的にコメ不足が問題となっている中、日本一の米生産県である新潟への期待度は例年以上に高まっている。
きめの細やかな大根を原料とした沢庵漬、山海漬をはじめとする海産珍味(野沢菜昆布、数の子松前漬、数の子はりはりなど)、越後みそを使用した味噌漬など、地域性を活かした特産品を生み出してきた。新潟県漬物工業協同組合(佐久間大輔理事長)では、新たな可能性を求めてフリーズドライ漬物の開発を行うなど、国内外から熱視線が注がれる新潟の企業を特集した。(千葉友寛)
【2024(令和6)年8月11日第5170号1面】
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<霞ヶ浦特集> シラウオと川エビに価値 ワカサギ不漁で期待高まる
霞ヶ浦北浦では7月21日より恒例のトロール漁が解禁となった。だが、近年の不漁の流れの中、今年もここまでワカサギの漁獲量は少なく、漁業者、加工業者にとっては厳しい環境が続いている。
不漁のワカサギに代わり、期待されるのが〝霞ヶ浦のダイヤモンド〟と呼ばれるシラウオだ。
シラウオは、淡白ながら独特の甘味とほど良い苦味があり、脂肪が少なく、ヘルシー。佃煮や煮干しといった伝統食として加工され、人気を集めている。
また〝霞ヶ浦のルビー〟と呼ばれる川エビも希少な霞ヶ浦の水産資源だ。川エビは、殻ごと食べることができるため、カルシウムが豊富な食材。加熱することで豊かなエビの香りを楽しむことができ、佃煮や釜揚げなどに加工される。
ワカサギの不漁が続く中、霞ヶ浦北浦の加工業者では、こうした限られた霞ヶ浦の水産資源を最大限に生かし、付加価値を付けて販売していくことが求められている。
霞ヶ浦北浦水産加工業協同組合では、今年6月の総会において小沼和幸氏が新組合長に就任した。小沼組合長は、「組合員と協力し、地域の食文化である佃煮や煮干しを次世代へつないでいきたい」と話し、PRイベントなどを通して、シラウオや川エビ、ワカサギといった霞ヶ浦の水産資源の魅力を積極的に発信していく意向を示す。
今年、地元霞ヶ浦高校が5年ぶりに夏の甲子園への出場を決めた。球児たちの活躍により、霞ヶ浦ブランドの価値がさらに高まることが期待される。
(藤井大碁)
不漁のワカサギに代わり、期待されるのが〝霞ヶ浦のダイヤモンド〟と呼ばれるシラウオだ。
シラウオは、淡白ながら独特の甘味とほど良い苦味があり、脂肪が少なく、ヘルシー。佃煮や煮干しといった伝統食として加工され、人気を集めている。
また〝霞ヶ浦のルビー〟と呼ばれる川エビも希少な霞ヶ浦の水産資源だ。川エビは、殻ごと食べることができるため、カルシウムが豊富な食材。加熱することで豊かなエビの香りを楽しむことができ、佃煮や釜揚げなどに加工される。
ワカサギの不漁が続く中、霞ヶ浦北浦の加工業者では、こうした限られた霞ヶ浦の水産資源を最大限に生かし、付加価値を付けて販売していくことが求められている。
霞ヶ浦北浦水産加工業協同組合では、今年6月の総会において小沼和幸氏が新組合長に就任した。小沼組合長は、「組合員と協力し、地域の食文化である佃煮や煮干しを次世代へつないでいきたい」と話し、PRイベントなどを通して、シラウオや川エビ、ワカサギといった霞ヶ浦の水産資源の魅力を積極的に発信していく意向を示す。
今年、地元霞ヶ浦高校が5年ぶりに夏の甲子園への出場を決めた。球児たちの活躍により、霞ヶ浦ブランドの価値がさらに高まることが期待される。
(藤井大碁)
【2024(令和6)年8月1日第5169号1面】
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<梅特集> 紀州産史上最低の凶作に 秋冬から価格改定が急務
日本一のブランド品種として知られる紀州南高梅の作柄が平年比3割作で史上最低の凶作となった。
大きな要因となったのは暖冬と雹害。昨年12月中旬以降から気温が高く、南高梅の満開期は平年比で2週間以上早かった。
開花が早まったことでめしべが発達しない不完全花が増加し、暖冬かつ施肥量が少なかったことで花数が減少した。
その後、3月20日に田辺市、みなべ町の広範囲に降雹があり、落果や傷が入るなど甚大な被害が発生。その他、カメムシの被害も出るなど、収穫量の大幅な減少に加え、秀品率は大きく低下した。
産地では収穫、漬け込みが終了。青果向けの青梅は昨年の2倍~3倍の高値で推移し、出荷量は例年の半分以下と見られている。
塩漬に使用される塩の出荷量は平年作だった昨年の44%となる4680tに留まったが、想定以上に梅が入らず使い切れなかったところも多く、実際に漬け込まれた量は例年の3割程度となったようだ。
昭和39年に半作(平年比)、昭和44年に49%(平年比)と歴史的な凶作の年もあったが、平年作の4割以下という作柄は過去最低の数字で、今後に大きな不安を残す形となった。
原料の確保は非常に難しい状況となっている。昨年まで3年続いて作柄が良かったこともあり、産地在庫としてはある程度の量が残っていると見られているが、今年の新物と合わせて来年までつなげなければならないため、風向きが一気に変わった。
昨年まで落ち着いていた原料価格は、2倍前後に高騰すると想定される新物価格と同額に設定される見込みで、各メーカーは新物原料に限らず、高い原料で製品を製造しなければならない。
原料価格は通販やギフト用に使用されるA級、量販店など市販用の原料となるB・C級、梅肉など業務用に使用される外など、全ての等級で大幅に上がることになる。
原料の在庫量は各社で異なるが、多くの企業は秋冬以降、新物に切り替わる。そのため、秋冬からの価格改定は避けられず、迅速な対応が求められている。
梅干し市場ではすでに混乱が起き始めている。多くのメーカーは得意先に対し、6月中に価格改定の実施を伝えている。内容については新物の原料価格が出てからとなるが、最低でも15%~30%の価格改定が必要となる。
想定される価格改定の手段は、量目調整と価格改定、価格改定のみ、秋冬と来春夏の段階的な価格改定で、7月下旬から8月上旬にかけて急ピッチで商談が行われる見通しだ。
他の食品カテゴリーでもよくあることだが、値上げを行うと相見積もりを取られて棚を失う可能性が出てくるが、今年は過去に経験がない厳しい原料状況となっており、各メーカーが「新規は対応できない」と口を揃えるように余力があるメーカーは皆無。既存の売場への供給が最優先となる。それでも、年間を通しての安定供給については、不安が拭い切れない状況となっている。
今年の梅の作柄は全国的に悪く、紀州を中心とする国産の梅が供給不安を抱えていることから、中国梅が売場をカバーする流れとなる。国産梅の動向を見て、中国梅の価格も上昇傾向にあるが、国産との価格差はまだまだ大きいものがある。円安の影響もあり、当初は中国梅も秋冬から価格改定を希望する声が多かったが、紀州梅の状況が予想以上に深刻となったことで、多くのメーカーは来春以降に持ち越すようだ。
今夏は梅雨明けが早く、昨年以上の猛暑になると予想されている。昨夏の売れ行きは暑かった割には5~10%増に留まり、盛り上がりに欠けた。
だが、今年は全国的に危険な暑さが続いており、熱中症対策のアイテムとして昨年以上の売れ行きが見込まれている。また、棚替えとなる9月いっぱいは現行の規格のため、駆け込み需要も想定される。
原料不安を抱えることから出荷を抑えるための価格改定となるが、メーカーとしては売上も作らなければならない。また、消費者の梅干し離れも懸念される。梅干し業界は「売れても困る、売れなくても困る」という厳しい局面に立ちながら、将来への不安も抱える状況となっている。
【2024(令和6)年7月21日第5168号1面】
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<塩特集> 猛暑で適量補給必須 安定供給へ「日本塩協会」設立
熱中症に塩の継続的な補給が欠かせないのは今や常識となった。汗とともに塩分が流れ出た際に水分だけを摂ると、体は塩分濃度を保とうとますます汗や尿を出すという悪循環に陥る(自発的脱水)。
塩は人体において重要な役割を持つ。細胞を保つ働きや、ナトリウムイオンとなって脳全身へ、あるいは全身から脳へ信号を伝える働き、塩化物イオンとなって胃酸の素を作る働き、等々。不足すれば疲労感や頭痛、吐き気、筋肉の痙攣といった症状に襲われる。急激な場合には死を含む重症に至ることもあり得る。
厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」は、1日の塩分量は男性で7・5g、女性で6・5g未満としているが、これは標準的な体格や活動量、気温を想定したものであり「近年の我が国の特に夏季の気温の上昇を考慮すると、熱中症対策としても適量の食塩摂取は必要」と認めている。
スポーツや肉体労働で日頃から多量の汗をかく場合には、この数値は絶対的なものではないことにも留意しておく必要があるだろう。
塩は「食」においても根幹を為している。調味料としてはもちろん、防腐作用や脱水作用など様々な効果を持ち、あらゆる食品作りで代替の利かない役割を持つ。
このように必需品である塩はインフラともいえる存在であり、各企業は安定供給の責務を果たし続けている。今年4月には、イオン交換膜製塩4社により、新たに一般社団法人日本塩協会(野田毅会長)が設立された。カーボンニュートラルを始めとする塩業界に係る諸課題への対応や国産塩の安全性のPRなどに取り組んでいく。
また、地政学的リスクが高まる中、国産塩の安定供給の重要性や塩の正しい知識の普及に努めていく。
今回の「塩特集」では各社・団体のこだわりの塩や塩関連製品を紹介するとともに、塩業界が抱える課題とその対応方針を取材した。
【2024(令和6)年7月21日第5168号1面】
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<長野特集> 漬物で野菜摂取のモデル県 ナトカリ比低く健康長寿実現
農林水産省が昨年スタートした「漬物で野菜を食べよう!」プロジェクトのモデル県といえるのが長野県だ。
長野県は健康長寿県として知られ、令和2年都道府県別生命表(厚生労働省)の平均寿命は、男性82・68歳(全国2位)、女性88・23歳(全国4位)となっている。
この健康長寿を支えているのが、長野県民の食生活だ。平成28年国民健康・栄養調査報告によると、長野県民の1日の野菜摂取量平均値は、男性352g、女性335gと男女ともに全国1位。それに対して塩分摂取量は男性11・8g(全国3位)、女性10・1g(全国1位)となっており、野菜とともに塩分の摂取量も多い。
長野県は冬の寒さが厳しく、保存食の文化が発達したため、様々な種類の漬物が生まれた。
県内には野沢菜漬やすんきなど各地域で食べられている漬物が存在し、漬物にすることで野菜をうまく摂取し、ナトリウムとカリウムのバランスである〝ナトカリ比〟が低いことも、県民の健康長寿につながっている。
農水省「漬物で野菜を食べよう!」プロジェクトのモデル県として、長野県民の食生活に今こそ注目したい。
本特集では漬物の他、蒟蒻、煮豆、甘露煮、高野豆腐といった長野県の伝統食品を幅広く紹介する。
(藤井大碁)
【2024(令和6)年7月21日第5168号1面】
長野県は健康長寿県として知られ、令和2年都道府県別生命表(厚生労働省)の平均寿命は、男性82・68歳(全国2位)、女性88・23歳(全国4位)となっている。
この健康長寿を支えているのが、長野県民の食生活だ。平成28年国民健康・栄養調査報告によると、長野県民の1日の野菜摂取量平均値は、男性352g、女性335gと男女ともに全国1位。それに対して塩分摂取量は男性11・8g(全国3位)、女性10・1g(全国1位)となっており、野菜とともに塩分の摂取量も多い。
長野県は冬の寒さが厳しく、保存食の文化が発達したため、様々な種類の漬物が生まれた。
県内には野沢菜漬やすんきなど各地域で食べられている漬物が存在し、漬物にすることで野菜をうまく摂取し、ナトリウムとカリウムのバランスである〝ナトカリ比〟が低いことも、県民の健康長寿につながっている。
農水省「漬物で野菜を食べよう!」プロジェクトのモデル県として、長野県民の食生活に今こそ注目したい。
本特集では漬物の他、蒟蒻、煮豆、甘露煮、高野豆腐といった長野県の伝統食品を幅広く紹介する。
(藤井大碁)
【2024(令和6)年7月21日第5168号1面】
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<徳島特集> 全国の食品産業支える原料王国 白瓜や胡瓜盛んに
白瓜の生産で数十年にわたって日本一、野沢菜や壬生菜といった「つけ菜」や、菜の花が2位、蓮根や人参が3位と全国有数の野菜産地である徳島県。山地が多く大規模農業には向かないが、その分マイナー作物が盛んな傾向にある。夏の漬物原料では白瓜、胡瓜、茄子といった野菜の栽培が盛んで、現在のところは平年並みの生育状況。これらを用いた奈良漬や小茄子漬などが盛んに作られている。またこの良質な原料は県内メーカーだけでなく、半加工品として全国の漬物・惣菜メーカーへ供給されており「縁の下の力持ち」的に全国の食品産業を支えている。課題は農業人口の減少。異常気象リスクの増大、各種コストの上昇や、またインボイス制度など、離農に繋がる要素がますます増えてきている。メーカー各社は契約価格の引き上げを実施しており、商品価格への転嫁も進んでいる。こうした状況下、各社は業務効率化によるコスト削減を図る一方で、高付加価値化にも力を入れている。海外産食材も価格が急騰している今、国産野菜は相対的に優位性が増してきている。また人参のお菓子や、奈良漬に魚介を組み合わせるなど、新製品開発も進む。各社の取組を取材した。(大阪支社・小林悟空)
【2024(令和6)年7月21日第5168号18面】
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<滋賀特集> 「三方良し」で育まれた近江の魅力
商売に関わる者にとって近江商人の「三方良し」はよく知られるところだ。その発祥地である滋賀県はもの作り県でもあり県内総生産に占める製造業の割合は44・4%。全国平均22・9パーセントの約2倍で、国内第1位を誇る。滋賀県漬物協同組合(林洋一理事長)は17日、株式会社イシダの滋賀事業所にて視察研修を実施し、計量・包装機器シェア国内トップクラスとして著名なイシダの「食の安全・安心」に貢献したいというもの作りへの工夫や、効率的な工場の運営方法について学んだ。このイシダも自分良し、相手良し、第三者良しと、企業理念に「三方良し」を掲げている。滋賀漬協においても、びわ湖マラソンでランナーの塩分補給として漬物を提供したり、組合の賛助会員である資材業者との親睦を深めたりと、地域、取引先への感謝の想いを大切にしている。その精神は現代のSDGsにも通ずるところがある。滋賀の文化にも注目が集まっている。今年の大河ドラマ「光る君へ」は平安時代が舞台であり「源氏物語」には近江の名勝が多数登場する。大津市の石山寺は、紫式部が源氏物語の構想を練った場所として知られ、大河ドラマと関わりのあるスポットへ全国から観光客が訪れている。紫式部をモチーフにしたお土産として観光業界や食品業界が連携して新たな製品開発が進んでいる。こうした好機を捉え、製品開発ができるのは滋賀が培ってきた技術や知恵の蓄積があってこそといえるだろう。今回の特集でも滋賀ならではの魅力を存分に引き出した商品の数々や、各社の「三方良し」の取り組みを紹介する。
(大阪支社 小林悟空・高澤尚揮)
(大阪支社 小林悟空・高澤尚揮)
【2024(令和6)年7月21日第5168号22面】
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<売れ筋商品特集> 秋冬の棚割りに提案 物価高で強まる選別消費
量販店などの小売店では8月下旬から9月上旬にかけて秋冬向けの棚割りが実施される。
商品や品揃えは春夏の素材から旬の野菜である白菜や大根など、新物を訴求した商品構成となる。また、気温が下がっていくことからキムチなど、鍋需要に対応したアイテムも拡充される。
物価高によって節約志向が高まり、食料品を中心とした家計の購買力は急速に低下し、消費者マインドも悪化。選別消費の動きはより強まっており、割合としては少ないものの、梅干し、惣菜、山菜、干し沢庵、沢庵、浅漬など、秋冬から多くの品目で実施される価格改定の影響が懸念される。
それでも、コロナ前との比較でキムチと沢庵の市場は約20%増となっており、支持される品目もある。これらは料理素材としても幅広く利用できることから、付け合わせや添え物といった副菜的な存在を飛び越え、常備菜としての利用も増えるなど、日常の食卓に浸透していることを示している。
特集では各社が提案する秋冬向けの商品を紹介する。
商品や品揃えは春夏の素材から旬の野菜である白菜や大根など、新物を訴求した商品構成となる。また、気温が下がっていくことからキムチなど、鍋需要に対応したアイテムも拡充される。
物価高によって節約志向が高まり、食料品を中心とした家計の購買力は急速に低下し、消費者マインドも悪化。選別消費の動きはより強まっており、割合としては少ないものの、梅干し、惣菜、山菜、干し沢庵、沢庵、浅漬など、秋冬から多くの品目で実施される価格改定の影響が懸念される。
それでも、コロナ前との比較でキムチと沢庵の市場は約20%増となっており、支持される品目もある。これらは料理素材としても幅広く利用できることから、付け合わせや添え物といった副菜的な存在を飛び越え、常備菜としての利用も増えるなど、日常の食卓に浸透していることを示している。
特集では各社が提案する秋冬向けの商品を紹介する。
【2024(令和6)年7月21日第5168号23面】
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宮崎特集 農業振興へ産官連携 契約栽培や新素材開拓推進
沢庵やらっきょう、高菜漬など全国に知られる漬物ブランドを有する宮崎県。
その基盤となっているのが温暖な気候、豊かな大地、きれいな空気や澄んだ水と恵まれた自然だ。平均気温、日照時間、快晴日数を基に設けた総合指標「ひなた指数」は全国一位となっており、この風土をいかした農業によって漬物産業も栄えてきた。
令和3年2月には「宮崎の太陽と風が育む『干し野菜』と露地畑作の高度利用システム」が日本農業遺産に認定。約100年前から大根などの露地野菜を干し野菜として加工・販売するシステムが受け継がれてきた。中でも乾燥した冬の西風を利用して大根を干すための「大根やぐら」の景観は宮崎平野の冬の風物詩ともいえる存在だ。
また7月現在はらっきょう収穫の真っ直中にある。県南部の都城市は霧島山系の豊かな水、肥沃な火山灰土により、玉締まりが良く、歯ごたえがあり、香りの良いらっきょうが育まれる。砂丘で栽培する鳥取や鹿児島県南薩地域とは異なる、独自の魅力を放つ国産らっきょうとして揺るぎない地位を確立している。
しかし、全国的に農業人口の高齢化、減少が問題視されているように、宮崎においても例外ではない。
宮崎市が集計した農業産出額の推計によれば「漬物用だいこん」の生産面積は平成26年度が375・5haだったが、令和元年度は272・5ha、令和4年度には207・7haと年を追うごとに急速に縮小している。
大根は重量野菜であるため高齢農家にとっては体力的負担が大きい作物であり、農業は続けていても他作物へ転作するケースも出てきている。まして、干し大根は巨大な櫓の組み上げから干し作業、雨除けシートの設置など、全てを手作業で行わなければならない。ある干し沢庵メーカーの見立てでは、5年後には生産農家数がこれからさらに半減するとの危機的状況だ。
昨シーズンにおいても、生産量こそ維持出来ていたものの、長雨によって雨ズレができる等きれいな干し上がりにならず、干し沢庵原料が不足。メーカーは出荷制限を検討する状況に陥っている。
らっきょうも、農林水産省「地域特産野菜生産状況調査」を見ると、平成28年に2032tの収穫だったのが、令和2年には763tに激減している。漬物メーカーは契約栽培の割合を高めてなんとか対応している。
高菜も同様だ。全日本漬物協同組合連合会(中園雅治会長)の高菜部会によるメーカー聞き取り調査で、平成26年は1630tの収穫。平成31・令和元年には歴史的豊作となり3190tとなったが、その後令和4年は1039t、同5年は1306tだった。天候による増減はあるものの、平均ラインは下がっていると見て間違いない。
このように原料の不足がネックとなって「注文はあるのに売るものが無い」というチャンスロスも度々発生している。経済産業省の経済構造実態調査(旧工業統計)によれば宮崎県の漬物の生産額は平成28年が116・4億円、令和2年は98・6億円と減少していることと無関係ではないだろう。
こうした原料問題に対して、業界団体は主体的に対策を講じようとしている。九州漬物協会(大久保次郎会長)は全漬連で解散した干そう沢庵部会・高菜部会を引き継ぎ、収穫状況の集計や、農業技術の意見交換などを行っている。6月12日に行われた総会では高菜収穫機3台が紹介された。
また宮崎県漬物協同組合(野﨑偉世理事長)は昨年11月に県知事を訪問し、業界の現状を訴えた。今月24日には県との勉強会を開く。農業振興に向けた意見交換のほか、「適塩」の普及啓蒙、学校給食への漬物導入といった議題を計画しており、産官連携で課題解決へ向けて動き出す。
今年10月4日には全日本漬物協同組合連合会青年部会全国大会の宮崎大会(佐藤仁大会会長、野﨑偉世実行委員長)も開催される。農業振興や、漬物のさらなる地位向上へ向けて意識を共有し知恵を合わせる場ともなることが期待される。
メーカーの動きに目を向けると、契約栽培や自社農場による原料安定確保への対応が目立つようになっている。また製品面でも、規格外原料を利用できるスライス・刻みタイプや、端材を利用できる「たくあんチップス」のような製品開発、大根を切ってから干す割干し大根の活用などの新素材開拓が見られる。
特集では、これらメーカーの注目製品を紹介する。(大阪支社・小林悟空)
その基盤となっているのが温暖な気候、豊かな大地、きれいな空気や澄んだ水と恵まれた自然だ。平均気温、日照時間、快晴日数を基に設けた総合指標「ひなた指数」は全国一位となっており、この風土をいかした農業によって漬物産業も栄えてきた。
令和3年2月には「宮崎の太陽と風が育む『干し野菜』と露地畑作の高度利用システム」が日本農業遺産に認定。約100年前から大根などの露地野菜を干し野菜として加工・販売するシステムが受け継がれてきた。中でも乾燥した冬の西風を利用して大根を干すための「大根やぐら」の景観は宮崎平野の冬の風物詩ともいえる存在だ。
また7月現在はらっきょう収穫の真っ直中にある。県南部の都城市は霧島山系の豊かな水、肥沃な火山灰土により、玉締まりが良く、歯ごたえがあり、香りの良いらっきょうが育まれる。砂丘で栽培する鳥取や鹿児島県南薩地域とは異なる、独自の魅力を放つ国産らっきょうとして揺るぎない地位を確立している。
しかし、全国的に農業人口の高齢化、減少が問題視されているように、宮崎においても例外ではない。
宮崎市が集計した農業産出額の推計によれば「漬物用だいこん」の生産面積は平成26年度が375・5haだったが、令和元年度は272・5ha、令和4年度には207・7haと年を追うごとに急速に縮小している。
大根は重量野菜であるため高齢農家にとっては体力的負担が大きい作物であり、農業は続けていても他作物へ転作するケースも出てきている。まして、干し大根は巨大な櫓の組み上げから干し作業、雨除けシートの設置など、全てを手作業で行わなければならない。ある干し沢庵メーカーの見立てでは、5年後には生産農家数がこれからさらに半減するとの危機的状況だ。
昨シーズンにおいても、生産量こそ維持出来ていたものの、長雨によって雨ズレができる等きれいな干し上がりにならず、干し沢庵原料が不足。メーカーは出荷制限を検討する状況に陥っている。
らっきょうも、農林水産省「地域特産野菜生産状況調査」を見ると、平成28年に2032tの収穫だったのが、令和2年には763tに激減している。漬物メーカーは契約栽培の割合を高めてなんとか対応している。
高菜も同様だ。全日本漬物協同組合連合会(中園雅治会長)の高菜部会によるメーカー聞き取り調査で、平成26年は1630tの収穫。平成31・令和元年には歴史的豊作となり3190tとなったが、その後令和4年は1039t、同5年は1306tだった。天候による増減はあるものの、平均ラインは下がっていると見て間違いない。
このように原料の不足がネックとなって「注文はあるのに売るものが無い」というチャンスロスも度々発生している。経済産業省の経済構造実態調査(旧工業統計)によれば宮崎県の漬物の生産額は平成28年が116・4億円、令和2年は98・6億円と減少していることと無関係ではないだろう。
こうした原料問題に対して、業界団体は主体的に対策を講じようとしている。九州漬物協会(大久保次郎会長)は全漬連で解散した干そう沢庵部会・高菜部会を引き継ぎ、収穫状況の集計や、農業技術の意見交換などを行っている。6月12日に行われた総会では高菜収穫機3台が紹介された。
また宮崎県漬物協同組合(野﨑偉世理事長)は昨年11月に県知事を訪問し、業界の現状を訴えた。今月24日には県との勉強会を開く。農業振興に向けた意見交換のほか、「適塩」の普及啓蒙、学校給食への漬物導入といった議題を計画しており、産官連携で課題解決へ向けて動き出す。
今年10月4日には全日本漬物協同組合連合会青年部会全国大会の宮崎大会(佐藤仁大会会長、野﨑偉世実行委員長)も開催される。農業振興や、漬物のさらなる地位向上へ向けて意識を共有し知恵を合わせる場ともなることが期待される。
メーカーの動きに目を向けると、契約栽培や自社農場による原料安定確保への対応が目立つようになっている。また製品面でも、規格外原料を利用できるスライス・刻みタイプや、端材を利用できる「たくあんチップス」のような製品開発、大根を切ってから干す割干し大根の活用などの新素材開拓が見られる。
特集では、これらメーカーの注目製品を紹介する。(大阪支社・小林悟空)
【2024(令和6)年7月1日第5167号1面】
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<奈良漬特集>うなぎと食べて夏バテ予防 風味や色合いの研究進む
今夏の土用の丑の日は7月24日と8月5日。夏の土用に‟う”がつくものを食べると健康でいられるという言い伝えは知られている。
定番はうなぎの蒲焼と、瓜の奈良漬。うなぎと奈良漬の組み合わせは風習だけでなく、実は合理的な理由がある。
奈良漬には「メラノイジン」という成分が含まれており、栄養豊富なうなぎに含まれるビタミンやミネラルの吸収を助ける働きがあるとされている。またメラノイジンは最高の抗酸化成分とも呼ばれ、抗酸化作用に加え、免疫力を高めるという研究もある。夏バテしやすい季節に、奈良漬はまさにぴったりだ。
さらに、奈良漬の酒粕にはペプチドが含まれ、脂質豊富なうなぎを食べても、ペプチドによる脂肪燃焼の効果が期待されている。
1300年ほどの歴史を持つ奈良漬だが「奈良漬ができるまでに、微生物がどのような働きで、奈良漬独特の色や風味を生み出すのか」まで、ほとんど研究されてこなかった。
奈良先端科学技術大学院大学の渡辺大輔准教授(微生物学)らは研究資金の確保のため、昨年末にクラウドファンディングを行い、目標金額を達成。奈良漬の微生物の中で、主に現在、乳酸菌の働きについて研究を進めている。奈良漬の色や味、熟成度の調整方法の幅が広がり、高付加価値化を目指せると期待されている。 (高澤尚揮)
【2024(令和6)年7月1日第5167号1面】
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<わさび関連特集>売場の清涼感を演出 猛暑で売れるわさび製品
日本伝統の香辛料「わさび」が人気だ。
刺身や寿司、蕎麦など和食の付け合せやわさび漬としての使用はもちろん、最近ではポテトサラダやタルタルソースなど洋食メニューの素材として活躍の場が広がっている。
コロナ禍で大きな影響を受けた観光販路もコロナ5類以降に伴い回復基調にあり、足元では増加するインバウンドからの需要が拡大、わさび市場は今後さらなる盛り上がりが期待されている。
一方で、わさび原料は厳しい状況にある。温暖化や生産者の減少、一昨年の静岡わさび産地の台風被害の影響などを受け、生産量が減少。コロナ後の外食の回復や海外からの引き合いの増加などにより、需要と供給のバランスが崩れている。
慢性的に不足感があるわさびは、価格が高止まりしており、加工メーカーでは、もう一段の値上げが必要な状況だ。
静岡県漬物商工業協同組合(望月啓行理事長)では、5月23日に令和6年度通常総会を開催。
総会に先駆け、今年も駿府城公園の山葵漬記念碑前で「山葵漬感謝祭」が実施され、良質なわさびが生産されることへの感謝と業界の発展を祈念した。
猛暑続きの近年、夏場の清涼感を演出するわさび製品の売れ行きは高まっている。今年も猛暑が予想される中、この夏注目のわさび製品を紹介する。(藤井大碁)
刺身や寿司、蕎麦など和食の付け合せやわさび漬としての使用はもちろん、最近ではポテトサラダやタルタルソースなど洋食メニューの素材として活躍の場が広がっている。
コロナ禍で大きな影響を受けた観光販路もコロナ5類以降に伴い回復基調にあり、足元では増加するインバウンドからの需要が拡大、わさび市場は今後さらなる盛り上がりが期待されている。
一方で、わさび原料は厳しい状況にある。温暖化や生産者の減少、一昨年の静岡わさび産地の台風被害の影響などを受け、生産量が減少。コロナ後の外食の回復や海外からの引き合いの増加などにより、需要と供給のバランスが崩れている。
慢性的に不足感があるわさびは、価格が高止まりしており、加工メーカーでは、もう一段の値上げが必要な状況だ。
静岡県漬物商工業協同組合(望月啓行理事長)では、5月23日に令和6年度通常総会を開催。
総会に先駆け、今年も駿府城公園の山葵漬記念碑前で「山葵漬感謝祭」が実施され、良質なわさびが生産されることへの感謝と業界の発展を祈念した。
猛暑続きの近年、夏場の清涼感を演出するわさび製品の売れ行きは高まっている。今年も猛暑が予想される中、この夏注目のわさび製品を紹介する。(藤井大碁)
【2024(令和6)年6月21日第5166号1面】
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<ものづくり県「愛知」特集> 「発酵食文化」発信地に
愛知県では古くから酢、みりん、豆みそ、たまり、白しょうゆや日本酒、漬物など多くの発酵調味料・食品が製造されてきた。
歴史的に見れば、全国の和食文化へ影響を与えたものも多い。江戸前寿司が流行したきっかけを作ったのは愛知の酢であったとされる。他にも、みりん粕を使った守口漬や、醤油で炊き込む佃煮や甘露煮のように、発酵食は和食文化と切っても切り離せない存在となっている。
この発酵食文化の魅力発信や、さらなる発展を目指そうと、大村秀章知事の肝入りで、5月1日に「愛知『発酵食文化』振興協議会」が設立された。構成員は発酵食に関わる有識者、業界団体、自治体、商工観光団体関係者らなど。公益社団法人愛知県漬物協会も加盟している。
現在においても、漬物の出荷金額は全国5位をキープしているように、漬物は愛知県の重要な産業の一つと言える。
また、愛知県は野菜の生産も盛んであり、漬物の消費拡大は農業振興にも直結する点から、愛知漬協では長年に亘って県知事を協会名誉会長へ迎えてきたという歴史もある。
今回、振興協議会が設立されたことにより、漬物以外のジャンルとのコラボレーションなど新たな切り口のPRが生まれることにも期待がかかる。
発酵食の健康的なイメージは一般にも定着してきている。コロナ禍においてキムチや納豆、ぬか漬が大きく売上を伸ばしたことは記憶に新しい。
愛知県内を中心に展開する食品スーパー「フィール」では一部店舗の漬物売場において「新鮮野菜×魔法の力 発酵=つけもの」というボードを設置していたことからも、発酵は食をPRする上でキラーコンテンツになりつつあるといえるだろう。
県内メーカーの動きに目を向けると、製品名やラベル上で「発酵」を打ち出した製品を数多く展開するようになっている。また県内メーカー同士のコラボ商品が続々登場していることからも、改めて愛知県の食文化の豊かさがうかがえる。
今回の愛知特集では、注目度が高まる愛知県の発酵食品=漬物メーカーの売れ筋商品や新たな取組を中心に取材した。(大阪支社・小林悟空)
歴史的に見れば、全国の和食文化へ影響を与えたものも多い。江戸前寿司が流行したきっかけを作ったのは愛知の酢であったとされる。他にも、みりん粕を使った守口漬や、醤油で炊き込む佃煮や甘露煮のように、発酵食は和食文化と切っても切り離せない存在となっている。
この発酵食文化の魅力発信や、さらなる発展を目指そうと、大村秀章知事の肝入りで、5月1日に「愛知『発酵食文化』振興協議会」が設立された。構成員は発酵食に関わる有識者、業界団体、自治体、商工観光団体関係者らなど。公益社団法人愛知県漬物協会も加盟している。
現在においても、漬物の出荷金額は全国5位をキープしているように、漬物は愛知県の重要な産業の一つと言える。
また、愛知県は野菜の生産も盛んであり、漬物の消費拡大は農業振興にも直結する点から、愛知漬協では長年に亘って県知事を協会名誉会長へ迎えてきたという歴史もある。
今回、振興協議会が設立されたことにより、漬物以外のジャンルとのコラボレーションなど新たな切り口のPRが生まれることにも期待がかかる。
発酵食の健康的なイメージは一般にも定着してきている。コロナ禍においてキムチや納豆、ぬか漬が大きく売上を伸ばしたことは記憶に新しい。
愛知県内を中心に展開する食品スーパー「フィール」では一部店舗の漬物売場において「新鮮野菜×魔法の力 発酵=つけもの」というボードを設置していたことからも、発酵は食をPRする上でキラーコンテンツになりつつあるといえるだろう。
県内メーカーの動きに目を向けると、製品名やラベル上で「発酵」を打ち出した製品を数多く展開するようになっている。また県内メーカー同士のコラボ商品が続々登場していることからも、改めて愛知県の食文化の豊かさがうかがえる。
今回の愛知特集では、注目度が高まる愛知県の発酵食品=漬物メーカーの売れ筋商品や新たな取組を中心に取材した。(大阪支社・小林悟空)
【2024(令和6)年6月21日第5166号8面】
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<山陰特集>食パラダイスとご縁の国 インバウンドへ食の魅力発信
円安の影響も受け、鳥取と島根へ訪れるインバウンド数が上昇傾向にあり、各県は食の魅力発信に力を入れている。
鳥取県はこれまで「食のみやこ」を標榜し、地産地消に力を入れてきたが、昨年6月からは新たに「食パラダイス鳥取県」のスローガンを打ち出している。
県内のらっきょうや松葉カニといった食の魅力により、国内外の誘客促進、農林水産物事業者の輸出拡大の推進などを加速させている。
また今年4月25日からは山陰、広島・山口のセブンイレブン店舗で「食パラダイス鳥取県フェア」を実施し、県産らっきょう使用のおにぎりや、県オリジナル品種の長芋「ねばりっこ」を使用した小容量の惣菜の販売も開始した。
出雲大社を有する島根県では「ご縁の国しまね」とブランディングを図る。勾玉状に育つ津田かぶの漬物、青しまね瓜の漬物といったストーリー性の高い食をインバウンドは求めている。(大阪支社・小林悟空、高澤尚揮)
【2024(令和6)年6月11日第5165号1面】
鳥取県はこれまで「食のみやこ」を標榜し、地産地消に力を入れてきたが、昨年6月からは新たに「食パラダイス鳥取県」のスローガンを打ち出している。
県内のらっきょうや松葉カニといった食の魅力により、国内外の誘客促進、農林水産物事業者の輸出拡大の推進などを加速させている。
また今年4月25日からは山陰、広島・山口のセブンイレブン店舗で「食パラダイス鳥取県フェア」を実施し、県産らっきょう使用のおにぎりや、県オリジナル品種の長芋「ねばりっこ」を使用した小容量の惣菜の販売も開始した。
出雲大社を有する島根県では「ご縁の国しまね」とブランディングを図る。勾玉状に育つ津田かぶの漬物、青しまね瓜の漬物といったストーリー性の高い食をインバウンドは求めている。(大阪支社・小林悟空、高澤尚揮)
【2024(令和6)年6月11日第5165号1面】
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<酢漬特集> 用途拡大でブレークスルー 定番以外のメニュー提案を
楽京と生姜を主軸とする酢漬。例年、気温の上昇とともに出荷数が伸び始め、5月~8月が需要期となる。
今年は昨年以上の猛暑になると予想されており、売場では酢漬製品が拡充されている。
酢漬にとっても熱い夏になることが期待されているが、ここまでの売れ行きはやや低迷している。物価高に伴う節約志向の高まりで量販店の1人当たりの買い上げ点数は減少しており、副菜や添え物、箸休めといった位置付けとなる漬物は全般的に苦戦の色が見える中、紅生姜も厳しい状況となっている。
コロナ禍で巣ごもり需要が増加し、自宅でお好み焼きやたこ焼き、焼きそばなどの粉もんメニューが増加。それに伴って紅生姜は特需的な動きを見せ、国産、海外産、細切り、みじん切り、食べ切りサイズから大容量までアイテム数が増加。売場も広がった。だが、コロナが5類に移行し、巣ごもり消費が縮小したことで紅生姜の出番も減少している。
新生姜は巾着の袋タイプを中心に、ふたを開けるだけで食べられる液なしのカップ及びスライスのカップなど、簡便性の高い商品を漬物売場だけではなく、惣菜売場にも展開。需要は落ちることなく、堅調な動きを見せていることから普段の食卓に浸透していることをうかがわせている。
楽京も幅は少ないものの、やや売れ行きが落ちている。特に海外原料の商品は量目調整と価格改定の影響が尾を引いており、一時離れた消費者が戻らない状態が続いている。それでも、楽京はもともと嗜好性が高い商品と位置付けられているように一定以上の需要が維持されており、高付加価値商品の国産製品も根強い人気がある。
しかしながら現状は甘らっきょうとピリ辛らっきょうを中心とする楽京売場は変化が少なく、売場によってはPB商品しか並ばないところもある。300gといった大容量でお得感を訴求した商品を置く店もあるが、お得感とともに高まっている「簡便」や「即食」といったニーズを取り入れる必要があり、新しいニーズを掘り起こす取組や商品開発が求められる。
酢漬の最大の武器は健康機能性。生姜においては漬物の中でも機能性表示食品が発売されているが、生姜に含まれる「ジンゲロール」には殺菌作用があるだけではなく、悪玉コレステロール値を下げ、血糖値の上昇を抑える働きがある。また、生姜を加熱すると発生する「ショウガオール」には、傷ついた血管を修復して血流を良くし、動脈硬化を予防する働きがある。
野菜の中で最も多くの水溶性食物繊維を含むことで知られるのが楽京。水溶性食物繊維「フルクタン」は腸内環境を整え、免疫力をアップすることで便秘の解消や便通の改善につながる。その他にも、楽京に含まれる成分は血液を浄化し、血液中の中性脂肪やコレステロール値を低下させる作用も認められている。
コロナ禍を経て消費者の健康志向は高まりを見せており、こうした酢漬の健康機能性は大きな購売動機となっている。
酢漬の売上をさらに伸ばすために有効なのがメニュー提案。寿司の付け合わせにはガリ、カレーには楽京、といったイメージが浸透していることは強みだが、裾野を拡大するためには定番の付け合わせ以外のメニュー提案などの取組が必要になる。
酢漬各社ではHPやSNSを活用し、定番とは異なるメニューへの付け合わせや料理の素材としての利用などの情報を発信。定番からの「ブレークスルー」に向けた動きが出てきている。
【2024(令和6)年6月11日第5165号1面】
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<キムチ浅漬特集> 集客の目玉となるキムチ 浅漬は新たな付加価値で進化
漬物出荷金額でトップに君臨するキムチ。白菜、胡瓜、茄子など幅広い素材を使用し、季節によって品揃えを変化させる浅漬はキムチに次ぐ市場規模を誇る。キムチと浅漬を合わせた品目別出荷金額は全体の47%(本紙調べ)を占め、まさに漬物売場のけん引役となっている。
コロナ禍で需要が急増したのがキムチ。巣ごもり需要の拡大に加え、発酵食品、植物性乳酸菌の摂取、腸活、免疫力アップなど、健康に関連する要素を有していたことから、日常的にキムチを摂取する人が大幅に増加。そのまま食べるだけではなく、炒め物や鍋の具材など汎用性が高いことも支持され、各家庭の常備菜になった。
2020年と2021年は特需的な動きとなったが、その後は落ち着いて横ばいで推移。それでも2019年比では1・2~1・3倍の市場規模となっている。
売場には大手メーカーのNB商品の他、PB商品、輸入キムチが並び、甘口、辛口、本格タイプ、浅漬タイプ、大容量、プチカップ、様々な味と規格の商品がラインナップ。食卓にキムチのある生活が浸透していることをうかがわせているが、あるチェーンの売場では、キムチの構成比が漬物の全アイテムの約半分という圧倒的な存在感を示すところもある。キムチの市場はまだまだ拡大する可能性を秘めており、集客の目玉として欠かせない商品となっている。
千葉県で5月下旬にオープンした別のチェーンの売場では、白菜や大根の他、エリンギ、昆布と沢庵、アボカド、にんにく、もずく、中華くらげ、さきいか、ホタテの貝ひも、ザーサイ、とり皮、ねぎ、イカ、岩海苔、長芋を主原料としたキムチを展開。キムチのアイテム数は42種類と最も多く、他店と差別化を図った商品を展開して来店客の目を引いている。
懸念材料もある。輸入キムチは相次ぐ値上げで単価が上昇し、物価高で節約志向が高まる中、売れ行きはやや低調となっている。国産キムチについても競争が激しいため特売の対象となる頻度が高く、価格訴求の販売が目立っている。
キムチや他の品目と比べても苦戦が続く浅漬だが、逆襲に転じる動きも出てきた。浅漬は白菜、胡瓜、茄子を主力に姿物や刻みのカップ商品が主流となっているが、時代の流れとともに変化するニーズを捉えることなく、同じ白菜を主原料とするキムチにトップの座を譲ることとなり、売場も縮小傾向にある。
各社では状況の打開を図り、液なしや液切り不要など簡便性の高いカップタイプで、漬物以外の売場でも販売できる商品を開発。導入が進んでいる。
これらの商品は従来の浅漬製品よりも賞味期限が長く、炒め物などの具材としても利用できることから、新しいコンセプトの浅漬として提案。定着することを目指している。
また、キャベツ、胡瓜、人参をカットしたサラダタイプの商品や大根と胡瓜をカットした大容量(320g)の「加工済み野菜」を並べ、野菜の価格が高止まりする中、「漬物で上手に野菜を取ろう!」というコンセプトを訴求する店舗もある。
「加工済み野菜」は、ドレッシングなどが不必要な味付けの野菜で、生野菜よりも賞味期限が長く、切る手間もない。サラダ代わりにそのまま、しかもお得に食べられる。漬物の枠を飛び越えた商品で、今後の展開が注目される。
簡便性や野菜摂取といった新たな付加価値を加えて進化する浅漬とトップを走るキムチの動きを取材した。
【2024(令和6)年5月21日第5163号1面】
コロナ禍で需要が急増したのがキムチ。巣ごもり需要の拡大に加え、発酵食品、植物性乳酸菌の摂取、腸活、免疫力アップなど、健康に関連する要素を有していたことから、日常的にキムチを摂取する人が大幅に増加。そのまま食べるだけではなく、炒め物や鍋の具材など汎用性が高いことも支持され、各家庭の常備菜になった。
2020年と2021年は特需的な動きとなったが、その後は落ち着いて横ばいで推移。それでも2019年比では1・2~1・3倍の市場規模となっている。
売場には大手メーカーのNB商品の他、PB商品、輸入キムチが並び、甘口、辛口、本格タイプ、浅漬タイプ、大容量、プチカップ、様々な味と規格の商品がラインナップ。食卓にキムチのある生活が浸透していることをうかがわせているが、あるチェーンの売場では、キムチの構成比が漬物の全アイテムの約半分という圧倒的な存在感を示すところもある。キムチの市場はまだまだ拡大する可能性を秘めており、集客の目玉として欠かせない商品となっている。
千葉県で5月下旬にオープンした別のチェーンの売場では、白菜や大根の他、エリンギ、昆布と沢庵、アボカド、にんにく、もずく、中華くらげ、さきいか、ホタテの貝ひも、ザーサイ、とり皮、ねぎ、イカ、岩海苔、長芋を主原料としたキムチを展開。キムチのアイテム数は42種類と最も多く、他店と差別化を図った商品を展開して来店客の目を引いている。
懸念材料もある。輸入キムチは相次ぐ値上げで単価が上昇し、物価高で節約志向が高まる中、売れ行きはやや低調となっている。国産キムチについても競争が激しいため特売の対象となる頻度が高く、価格訴求の販売が目立っている。
キムチや他の品目と比べても苦戦が続く浅漬だが、逆襲に転じる動きも出てきた。浅漬は白菜、胡瓜、茄子を主力に姿物や刻みのカップ商品が主流となっているが、時代の流れとともに変化するニーズを捉えることなく、同じ白菜を主原料とするキムチにトップの座を譲ることとなり、売場も縮小傾向にある。
各社では状況の打開を図り、液なしや液切り不要など簡便性の高いカップタイプで、漬物以外の売場でも販売できる商品を開発。導入が進んでいる。
これらの商品は従来の浅漬製品よりも賞味期限が長く、炒め物などの具材としても利用できることから、新しいコンセプトの浅漬として提案。定着することを目指している。
また、キャベツ、胡瓜、人参をカットしたサラダタイプの商品や大根と胡瓜をカットした大容量(320g)の「加工済み野菜」を並べ、野菜の価格が高止まりする中、「漬物で上手に野菜を取ろう!」というコンセプトを訴求する店舗もある。
「加工済み野菜」は、ドレッシングなどが不必要な味付けの野菜で、生野菜よりも賞味期限が長く、切る手間もない。サラダ代わりにそのまま、しかもお得に食べられる。漬物の枠を飛び越えた商品で、今後の展開が注目される。
簡便性や野菜摂取といった新たな付加価値を加えて進化する浅漬とトップを走るキムチの動きを取材した。
【2024(令和6)年5月21日第5163号1面】
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<深谷特集> 渋沢栄一の生誕地で注目
埼玉県深谷市に注目が集まる〝その日〟が迫っている。
深谷市出身の渋沢栄一が肖像画として描かれる新一万円札の発行が7月3日から始まる。
深谷市では、新1万円札発行を記念し、様々なイベントを開催する。発行日前日の7月2日には、渋沢栄一の生誕地、八基地区で『新一万円札発行記念カウントダウン』を開催。『日本で一番早い祝賀イベント』を目指し、7月3日午前0時に合わせてカウントダウンを行う。
新1万円札発行日当日の7月3日には、東京証券取引所で現1万円札の福沢諭吉から新1万円札の渋沢栄一へのバトンタッチイベントとして、『一万円札引継式』を行う。
また、7月14日には、『新一万円札発行祝賀パレード』と『深谷博覧会』を同時開催。午前11時から、市役所通りで市民参加型の祝賀パレードを実施。大河ドラマ『青天を衝け』の出演者らの参加や、ダンス、楽器演奏などの演出を予定している。
深谷市では、7月3日の新1万円札発行を機に、今後も様々なイベントを開催し、『渋沢栄一イコール深谷市』という全国的なイメージを持ってもらえるよう、盛り上げていく。
深谷市の一大産業として知られるのが漬物だ。現在でも、岡部地区を中心に多くの漬物業者が事業を展開している。生産者の減少や異常気象により漬物原料の手当てが難しくなる中、深谷市は関東の原料拠点としても、その存在感を発揮している。
10日に開催された深谷地区漬物協会の総会では新たに小林宏閣氏が新会長に就任。「漬物メーカーと原料メーカーが一体となって漬物の魅力を発信していきたい」と意気込みを示した。
深谷市の漬物、豆腐、蒟蒻メーカーなどの取組を取材した。
【2024(令和6)年5月21日第5163号1面】
深谷市出身の渋沢栄一が肖像画として描かれる新一万円札の発行が7月3日から始まる。
深谷市では、新1万円札発行を記念し、様々なイベントを開催する。発行日前日の7月2日には、渋沢栄一の生誕地、八基地区で『新一万円札発行記念カウントダウン』を開催。『日本で一番早い祝賀イベント』を目指し、7月3日午前0時に合わせてカウントダウンを行う。
新1万円札発行日当日の7月3日には、東京証券取引所で現1万円札の福沢諭吉から新1万円札の渋沢栄一へのバトンタッチイベントとして、『一万円札引継式』を行う。
また、7月14日には、『新一万円札発行祝賀パレード』と『深谷博覧会』を同時開催。午前11時から、市役所通りで市民参加型の祝賀パレードを実施。大河ドラマ『青天を衝け』の出演者らの参加や、ダンス、楽器演奏などの演出を予定している。
深谷市では、7月3日の新1万円札発行を機に、今後も様々なイベントを開催し、『渋沢栄一イコール深谷市』という全国的なイメージを持ってもらえるよう、盛り上げていく。
深谷市の一大産業として知られるのが漬物だ。現在でも、岡部地区を中心に多くの漬物業者が事業を展開している。生産者の減少や異常気象により漬物原料の手当てが難しくなる中、深谷市は関東の原料拠点としても、その存在感を発揮している。
10日に開催された深谷地区漬物協会の総会では新たに小林宏閣氏が新会長に就任。「漬物メーカーと原料メーカーが一体となって漬物の魅力を発信していきたい」と意気込みを示した。
深谷市の漬物、豆腐、蒟蒻メーカーなどの取組を取材した。
【2024(令和6)年5月21日第5163号1面】
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<資材特集> 「FOOMA2024」開催 6月4日~7日東京ビッグサイトで
コロナ禍を経て、消費者の安全安心意識はこれまで以上に高まりを見せると共に、HACCPの義務化、食品表示法の改正など、食品加工業者にはより高度な対応が求められている。
こうした中、一般社団法人日本食品機械工業会(大川原行雄会長)は、6月4日~7日の4日間、東京ビッグサイトにて、「Breakthrough FOOMA」をテーマに、「FOOMA JAPAN 2024」を開催する。
47回目を迎える今回は、食品製造プロセス21カテゴリーとイノベーションを生み出すスタートアップゾーンに約1000社・5000超のソリューションが集結。圧倒的規模と多様性で、食品工場が抱える製造プロセスの課題を解決する。
会場内では、「食の安全・安心」という基本テーマはもちろん、生産性向上や高効率のための技術、自動化、省人化を図るロボット、AIなど最先端テクノロジーと最新鋭の製品・サービスの展示が行われる。
3年目を迎えたスタートアップゾーンには、次世代テクノロジーが集結。第3回FOOMAアワード2024では今年も食品製造プロセスを革新する最先端技術を発表する。
【2024(令和6)年5月21日第5163号6面】
こうした中、一般社団法人日本食品機械工業会(大川原行雄会長)は、6月4日~7日の4日間、東京ビッグサイトにて、「Breakthrough FOOMA」をテーマに、「FOOMA JAPAN 2024」を開催する。
47回目を迎える今回は、食品製造プロセス21カテゴリーとイノベーションを生み出すスタートアップゾーンに約1000社・5000超のソリューションが集結。圧倒的規模と多様性で、食品工場が抱える製造プロセスの課題を解決する。
会場内では、「食の安全・安心」という基本テーマはもちろん、生産性向上や高効率のための技術、自動化、省人化を図るロボット、AIなど最先端テクノロジーと最新鋭の製品・サービスの展示が行われる。
3年目を迎えたスタートアップゾーンには、次世代テクノロジーが集結。第3回FOOMAアワード2024では今年も食品製造プロセスを革新する最先端技術を発表する。
【2024(令和6)年5月21日第5163号6面】
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<茄子特集>V字回復へ期待高まる
気温が上昇する5月から10月が最需要期となる茄子漬。胡瓜と並ぶ夏野菜の代表格で、これからの時期にかけてボリュームが増える茄子紺色の商品が売場で季節感を演出する。
季節性が強みでもある茄子漬は気温が高くなればなるほど売れる。昨年は例年以上の猛暑となったが、今年は昨年以上の猛暑になると予想されている。5月から7月にかけて関東甲信地方を含めて全国的に気温が平年より高くなる見込みとなっており、茄子漬への期待も高まっている。
昨年は国産、海外産ともに原料の確保が大きな問題となった。国産は猛暑の影響を受けて大幅な減産となり、秋以降は原料不足となった。タイを中心とする海外産も環境の変化や異常気象の影響で作柄が悪く、原料確保が難しい状況となった。
今年は昨年の反省を生かし、各社では綿密な計画を立てて例年より早い段階から準備に着手。作付も増加するなど、万全の生産体制を敷いている。
茄子漬の主力商品は巾着タイプだが、時代のニーズに対応し、簡便性の高いカップ商品の需要が高まっている。切る手間がないスライスタイプや蓋を開けるだけで食べられて皿に移し替える必要がない商品は好調な動きが続いており、今後も簡便タイプの売場が広がっていくことが予想される。
漬物売場では初夏の訪れとともに茄子漬のアイテムを拡充。定番の姿物を中心に、簡便性の高いカップタイプ、サラダ感覚で食べられる皮むきのカットタイプやスライスタイプ、他の素材を合わせたミックスタイプ、一口タイプの小茄子など、お得感、簡便性、家飲みのおつまみといった様々なニーズに対応し、幅広いアイテムがラインナップされている。本格シーズンを迎える茄子漬。昨年は原料不足で数字が落ち込んだだけに、今年はV字回復が期待されている。
【2024(令和6)年5月11日第5162号1面】
季節性が強みでもある茄子漬は気温が高くなればなるほど売れる。昨年は例年以上の猛暑となったが、今年は昨年以上の猛暑になると予想されている。5月から7月にかけて関東甲信地方を含めて全国的に気温が平年より高くなる見込みとなっており、茄子漬への期待も高まっている。
昨年は国産、海外産ともに原料の確保が大きな問題となった。国産は猛暑の影響を受けて大幅な減産となり、秋以降は原料不足となった。タイを中心とする海外産も環境の変化や異常気象の影響で作柄が悪く、原料確保が難しい状況となった。
今年は昨年の反省を生かし、各社では綿密な計画を立てて例年より早い段階から準備に着手。作付も増加するなど、万全の生産体制を敷いている。
茄子漬の主力商品は巾着タイプだが、時代のニーズに対応し、簡便性の高いカップ商品の需要が高まっている。切る手間がないスライスタイプや蓋を開けるだけで食べられて皿に移し替える必要がない商品は好調な動きが続いており、今後も簡便タイプの売場が広がっていくことが予想される。
漬物売場では初夏の訪れとともに茄子漬のアイテムを拡充。定番の姿物を中心に、簡便性の高いカップタイプ、サラダ感覚で食べられる皮むきのカットタイプやスライスタイプ、他の素材を合わせたミックスタイプ、一口タイプの小茄子など、お得感、簡便性、家飲みのおつまみといった様々なニーズに対応し、幅広いアイテムがラインナップされている。本格シーズンを迎える茄子漬。昨年は原料不足で数字が落ち込んだだけに、今年はV字回復が期待されている。
【2024(令和6)年5月11日第5162号1面】
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<調理食品特集> 付加価値提案へ3つの鍵 おにぎりブームで新たな需要
佃煮、煮豆を始めとする調理食品業界では、不漁による原料高騰、円安や物流費上昇などの影響を受け、厳しい経営環境が続く。
メーカーを取り巻く環境が厳しい一方で、佃煮の動きは堅調だ。総務省家計調査による直近3カ月(2023年12月~2月)の全国1世帯当たりの品目別支出金額の平均値は「魚介のつくだ煮」が前年比105%、「こんぶつくだ煮」で同101%となっており、値上げの影響があるとしても、佃煮が売場で底堅い動きを示していることが分かる。煮豆も毎日食べるファン層が存在しており、売場で安定した売上を築いている。
追い風となっているのがコロナ5類以降に伴うお弁当、おにぎり需要の復調。特におにぎりは近年、専門店が増加、パリやニューヨークでも店舗前に行列ができるなど国内外で一大ブームを巻き起こしており、今後の佃煮需要を底上げするファクターとして期待が高まる。
おにぎり具材として、定番の存在である佃煮ではあるが、近年のおにぎりブームを牽引する「進化系おにぎり」は佃煮×洋風食材の組み合わせという新たな食シーンを生んでいる。昆布佃煮×クリームチーズ、海苔佃煮×バターなどその組み合わせは様々で、若い世代やインバウンドからの注目度も高い。
製造コストが上昇し続ける中、調理食品業界のテーマとなっているのが付加価値提案だ。その鍵と言えるのが、職人技、旬、地域性の3つ。“炊く”という職人技で生み出される佃煮や煮豆は、その日の原料の状態や天候により微妙な炊き加減の調整が求められる。
デジタル全盛の時代に、職人の経験や技術により生み出される手作りの価値はなお輝きを増している。
また、旬や地域性の提案も有効だ。その時季、その地域でしか食べられない食材を炊くことにより“名物”を作り出し、付加価値を高めていくことを目指している。
(藤井大碁)
【2024(令和6)年5月1日第5161号1面】
メーカーを取り巻く環境が厳しい一方で、佃煮の動きは堅調だ。総務省家計調査による直近3カ月(2023年12月~2月)の全国1世帯当たりの品目別支出金額の平均値は「魚介のつくだ煮」が前年比105%、「こんぶつくだ煮」で同101%となっており、値上げの影響があるとしても、佃煮が売場で底堅い動きを示していることが分かる。煮豆も毎日食べるファン層が存在しており、売場で安定した売上を築いている。
追い風となっているのがコロナ5類以降に伴うお弁当、おにぎり需要の復調。特におにぎりは近年、専門店が増加、パリやニューヨークでも店舗前に行列ができるなど国内外で一大ブームを巻き起こしており、今後の佃煮需要を底上げするファクターとして期待が高まる。
おにぎり具材として、定番の存在である佃煮ではあるが、近年のおにぎりブームを牽引する「進化系おにぎり」は佃煮×洋風食材の組み合わせという新たな食シーンを生んでいる。昆布佃煮×クリームチーズ、海苔佃煮×バターなどその組み合わせは様々で、若い世代やインバウンドからの注目度も高い。
製造コストが上昇し続ける中、調理食品業界のテーマとなっているのが付加価値提案だ。その鍵と言えるのが、職人技、旬、地域性の3つ。“炊く”という職人技で生み出される佃煮や煮豆は、その日の原料の状態や天候により微妙な炊き加減の調整が求められる。
デジタル全盛の時代に、職人の経験や技術により生み出される手作りの価値はなお輝きを増している。
また、旬や地域性の提案も有効だ。その時季、その地域でしか食べられない食材を炊くことにより“名物”を作り出し、付加価値を高めていくことを目指している。
(藤井大碁)
【2024(令和6)年5月1日第5161号1面】
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<漬物の素・夏の甘酒特集> 5月8日「ぬか漬けの日」 SDGs関連商品として注目
5月8日は「ぬか漬けの日」。
日本いりぬか工業会により、夏野菜が多く出回り、春夏のぬか漬けシーズンのスタートとなるタイミングに合わせて2015年に制定された。今年もぬか漬けの本格シーズンを迎え、いりぬか、ぬか床製品を取り揃える漬物の素コーナーの盛り上がりに期待がかかる。
近年、発酵食品への注目度が上がり、コロナ禍の巣ごもり需要を経て、健康志向から自分でぬか漬けを漬ける人が増えている。
ぬか漬けにする食材も、胡瓜、大根、かぶ、人参といった定番の野菜だけでなく、ゆで卵やアボカド、こんにゃくなど様々な食材に広がり、ぬか漬けの楽しみ方の幅が広がっている。
日本いりぬか工業会では昨年に続き、今年も「ぬか漬けの日」に合わせ、本紙の電子媒体やSNSなどを活用したプレゼントキャンペーンを実施。今年は、昨年の内容をより進化させ、ぬか漬けにするオススメの変わり種食材をキャンペーンを通じて募集し、その結果を公表することで、ぬか漬けの新たな楽しみの提案や需要促進に繋げていく。
野菜を美味しく無駄なく食べられる“漬物の素”は近年、食品ロス削減を推進するSDGs関連商品としても注目の存在。今回の特集では、いりぬか、ぬか床製品の他、浅漬、辛子漬など様々な漬物の素や酒粕、こうじ製品を紹介する。
(藤井大碁)
【2024(令和6)年5月1日第5161号1面】
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泉州水なす漬特集 甘くジューシー「大阪の宝」
値上げに負けず市場拡大続く
今年も泉州水なす漬のシーズンが始まった。今年は3月に寒い日が続きスタートはやや出遅れたものの、その後の生育は順調。5月の大型連休や母の日のギフトシーズンには十分な原料が出てくる見込みだ。
水なすはアクが少なく、ジューシーな果肉には甘みがあるのが特徴。主力となっているのはぬか漬と調味浅漬。各社とも素材の良さを活かすため、あえてあっさりとした味付けとしているものが多い。
水なすの甘みとほどよい塩気の絶妙なバランスは、夏にぴったりの味わい。スーパーで市販されるだけでなく、居酒屋での導入が進んでいることが示すように、お酒のアテにも大人気で、いまや全国に知られる存在となった。
この甘くみずみずしい水なすを作るのは泉州地域の温暖な気候、潮風の吹く立地、ため池が多く水分の多い土壌などの条件が必要とされる。天候の影響を受けやすく、泉州地域以外の土壌では品質が保てない非常に繊細な素材であることは、販売拡大の障壁でもある。
しかしそれゆえに、希少性・地域性が保たれ、地位を向上させた面もあるだろう。
大阪府がまとめた「大阪府の農業データ」によれば、平成26年の水なす栽培面積は44haだったのが、令和元年には47haに増加。収穫量は3489tに上った(泉佐野市、岸和田市、貝塚市の合計)。その大半は漬物として利用されており、漬物としては数少ない成長を続けるカテゴリである。大阪府漬物事業協同組合(長谷川豊光理事長)は「大阪の宝」と呼ぶほどだ。
昨年は農業資材から包材、輸送費まですべてのコストが上昇したことを受け、水なす漬の店頭価格も上昇した。しかし、お酒のアテなど嗜好品としての需要が強い水なす漬は、価格よりも味で選ばれる商材の一つ。値上げにも負けず、販売数量を着実に伸ばしている。
来年4月からは大阪・関西万博も開催予定であり、大阪の食文化はますます知名度をあげていくことが期待される。各社は製品品質の向上や新商品開発に取り組み、需要増加へ万全の構えを敷いている。
(大阪支社・小林悟空)
【2024(令和6)年4月21日第5160号1面】
今年も泉州水なす漬のシーズンが始まった。今年は3月に寒い日が続きスタートはやや出遅れたものの、その後の生育は順調。5月の大型連休や母の日のギフトシーズンには十分な原料が出てくる見込みだ。
水なすはアクが少なく、ジューシーな果肉には甘みがあるのが特徴。主力となっているのはぬか漬と調味浅漬。各社とも素材の良さを活かすため、あえてあっさりとした味付けとしているものが多い。
水なすの甘みとほどよい塩気の絶妙なバランスは、夏にぴったりの味わい。スーパーで市販されるだけでなく、居酒屋での導入が進んでいることが示すように、お酒のアテにも大人気で、いまや全国に知られる存在となった。
この甘くみずみずしい水なすを作るのは泉州地域の温暖な気候、潮風の吹く立地、ため池が多く水分の多い土壌などの条件が必要とされる。天候の影響を受けやすく、泉州地域以外の土壌では品質が保てない非常に繊細な素材であることは、販売拡大の障壁でもある。
しかしそれゆえに、希少性・地域性が保たれ、地位を向上させた面もあるだろう。
大阪府がまとめた「大阪府の農業データ」によれば、平成26年の水なす栽培面積は44haだったのが、令和元年には47haに増加。収穫量は3489tに上った(泉佐野市、岸和田市、貝塚市の合計)。その大半は漬物として利用されており、漬物としては数少ない成長を続けるカテゴリである。大阪府漬物事業協同組合(長谷川豊光理事長)は「大阪の宝」と呼ぶほどだ。
昨年は農業資材から包材、輸送費まですべてのコストが上昇したことを受け、水なす漬の店頭価格も上昇した。しかし、お酒のアテなど嗜好品としての需要が強い水なす漬は、価格よりも味で選ばれる商材の一つ。値上げにも負けず、販売数量を着実に伸ばしている。
来年4月からは大阪・関西万博も開催予定であり、大阪の食文化はますます知名度をあげていくことが期待される。各社は製品品質の向上や新商品開発に取り組み、需要増加へ万全の構えを敷いている。
(大阪支社・小林悟空)
【2024(令和6)年4月21日第5160号1面】
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<全日本漬物協同組合連合会> 漬物グランプリ2024 金賞以上確定の13品を発表
各賞は4月27日に発表
全日本漬物協同組合連合会(中園雅治会長)は10日、「漬物グランプリ2024」の法人の部において、金賞以上の受賞が確定した13品を発表(右画像)した。
全国の名産品、特産品、オリジナリティー溢れるこだわりの漬物が揃い、この13品の中からグランプリ1作品(農林水産大臣賞)、準グランプリ各部門より1作品(農林水産省大臣官房長賞)、地域特産品特別賞(1作品)、一般審査特別賞が選出される。なお、上記4賞以外の9作品は金賞となる。
各賞の結果は、4月27日に東京ビッグサイトで開催される第17回ホビークッキングフェア2024内で行われる「漬物グランプリ2024」特設ステージでの表彰式にて発表される。
法人の部は「本漬部門」と「浅漬・キムチ部門」の2部門で、応募総数は112作品。1次審査は2月下旬から3月上旬に全国5ブロックで実施し、本漬部門30品、浅漬・キムチ部門20品の計50品が通過。3月28日に2次審査が行われ、金賞以上の13品が選出された。
法人の部は東京家政大学大学院客員教授の宮尾茂雄氏を審査委員長とした6人の審査委員で審査を実施。個人の部では、全漬連の中園会長を含めた7人が審査委員を務めた。
審査方法は審査委員による書類・実食による審査。審査は①彩り(見た目・ネーミング・考え方)、②素材の性質(機能性・地域性・時代性)、③味覚(味・香り・食感)、④安全性(生産・製造工程)、⑤販売価格(コストパフォーマンス)の5項目を各10点満点で採点。得点数を集計した後、審査委員による合議を経て金賞以上の作品が決定した。
4月27日の決勝大会は、審査委員と一般審査委員の総合評価(審査基準は2次審査と同様)。特設ステージで商品のプレゼンを行い、実食の上、最終審査を行う。25日と26日も行われる一般審査は会場内特設コーナーで、一般の来場者が試食と投票を実施する。
全漬連ブースでは全国の名産漬物の試食販売を実施する。昨年は衛生面などの問題で試食を中止して販売のみ行ったが、今年は2019年以来、5年ぶりに好評の試食を実施する。試食の提供はファン作りの有効な手段であり、全国の名産漬物を広くPRする。
なお、1次審査通過作品は「銀賞」以上が確定し、受賞ロゴが授与される。また、グランプリ、準グランプリ、地域特産品特別賞、金賞についても、それぞれ受賞ロゴが授与される。
漬物グランプリへの評価と関心が高まっている。昨年から新設された学生の部には、前回の26作品を大幅に上回る67作品がエントリー。昨年の模様がテレビなどで広く発信されたことで参加校が増加した。また、個人の部のエントリーも前回(23人)の約2倍となる45人と増えており、これまでの取組の成果やPR効果が数字に表れている。
業界が注目する法人の部においても熱い戦いになることが期待されている。
【2024(令和6)年4月21日第5160号1面】
漬物グランプリ2024
全日本漬物協同組合連合会(中園雅治会長)は10日、「漬物グランプリ2024」の法人の部において、金賞以上の受賞が確定した13品を発表(右画像)した。
全国の名産品、特産品、オリジナリティー溢れるこだわりの漬物が揃い、この13品の中からグランプリ1作品(農林水産大臣賞)、準グランプリ各部門より1作品(農林水産省大臣官房長賞)、地域特産品特別賞(1作品)、一般審査特別賞が選出される。なお、上記4賞以外の9作品は金賞となる。
各賞の結果は、4月27日に東京ビッグサイトで開催される第17回ホビークッキングフェア2024内で行われる「漬物グランプリ2024」特設ステージでの表彰式にて発表される。
法人の部は「本漬部門」と「浅漬・キムチ部門」の2部門で、応募総数は112作品。1次審査は2月下旬から3月上旬に全国5ブロックで実施し、本漬部門30品、浅漬・キムチ部門20品の計50品が通過。3月28日に2次審査が行われ、金賞以上の13品が選出された。
法人の部は東京家政大学大学院客員教授の宮尾茂雄氏を審査委員長とした6人の審査委員で審査を実施。個人の部では、全漬連の中園会長を含めた7人が審査委員を務めた。
審査方法は審査委員による書類・実食による審査。審査は①彩り(見た目・ネーミング・考え方)、②素材の性質(機能性・地域性・時代性)、③味覚(味・香り・食感)、④安全性(生産・製造工程)、⑤販売価格(コストパフォーマンス)の5項目を各10点満点で採点。得点数を集計した後、審査委員による合議を経て金賞以上の作品が決定した。
4月27日の決勝大会は、審査委員と一般審査委員の総合評価(審査基準は2次審査と同様)。特設ステージで商品のプレゼンを行い、実食の上、最終審査を行う。25日と26日も行われる一般審査は会場内特設コーナーで、一般の来場者が試食と投票を実施する。
全漬連ブースでは全国の名産漬物の試食販売を実施する。昨年は衛生面などの問題で試食を中止して販売のみ行ったが、今年は2019年以来、5年ぶりに好評の試食を実施する。試食の提供はファン作りの有効な手段であり、全国の名産漬物を広くPRする。
なお、1次審査通過作品は「銀賞」以上が確定し、受賞ロゴが授与される。また、グランプリ、準グランプリ、地域特産品特別賞、金賞についても、それぞれ受賞ロゴが授与される。
漬物グランプリへの評価と関心が高まっている。昨年から新設された学生の部には、前回の26作品を大幅に上回る67作品がエントリー。昨年の模様がテレビなどで広く発信されたことで参加校が増加した。また、個人の部のエントリーも前回(23人)の約2倍となる45人と増えており、これまでの取組の成果やPR効果が数字に表れている。
業界が注目する法人の部においても熱い戦いになることが期待されている。
【2024(令和6)年4月21日第5160号1面】
漬物グランプリ2024
公式サイト http://tsukemono-gp.jp/
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栃木特集 進化を続け次世代へ
訪日宿泊者数が過去最多
栃木県の人気が高まっている。
観光庁が2月29日に発表した2023年の宿泊旅行統計(速報値)によると、栃木県の訪日宿泊者数は新型コロナウイルス禍前の19年実績を28%上回る45万人となり、過去最多を更新。2019年比で見ると、東京(146%)、高知(136%)に次ぐ全国3位の伸長率となっている。
栃木は東京から日帰りできる距離のため、外国人宿泊者数は増えない状況が続いていた。だが。外資系高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン日光」の開業で、海外でも日光の認知度が高まったことや自然を満喫できるツアーなど、海外向けの新しいブランド戦略で情報発信してきた取組がインバウンド需要の増加につながったようだ。
栃木県はガリや紅生姜など、業務用商品や観光土産品を製造するメーカーが多く、アフターコロナで外食産業や観光産業の復調は追い風となっている。特に寿司は外国人からの人気も高く、築地や豊洲、浅草では高額なメニューを提供する店に行列ができるほどの盛況ぶり。寿司の付け合わせとして欠かせないガリの出番も増えている。
昨年8月には路面電車としては75年ぶり、全国で初めて全線を新設する宇都宮ライトレール(LRT)が開業。宇都宮市と芳賀町を結ぶ路線として運航がスタートした。LRTは騒音や振動が少なく、快適な乗り心地など、人と環境にやさしい乗り物。宇都宮市東部の渋滞緩和にも貢献している。宇都宮市が進めるLRTを軸とした新たなまちづくりは、国内外で注目され、全国の自治体や海外から多くの関係者が視察に訪れている。
漬物業界では、昨年10月17日に栃木県漬物工業協同組合(秋本薫理事長)の青年部(遠藤栄一部長)がライトキューブ宇都宮で全日本漬物協同組合連合会青年部会第41回全国大会栃木大会を開催。青年部員は2人しかいないが、少人数でも開催できることやペーパーレス、省人化などSDGsの要素も盛り込んだ内容で実施し、これからの全国大会や青年部活動、業界の方向性を示すメッセージを発信した。
経済産業省の経済構造実態調査によると、2021年の都道府県別漬物出荷金額で栃木県は全国4位。1事業所当りの額は6位と漬物製造業においても確固たる存在感を示している。進化を続ける栃木県の県内企業を特集した。(千葉友寛)
【2024(令和6)年4月11日第5159号1面】
観光庁が2月29日に発表した2023年の宿泊旅行統計(速報値)によると、栃木県の訪日宿泊者数は新型コロナウイルス禍前の19年実績を28%上回る45万人となり、過去最多を更新。2019年比で見ると、東京(146%)、高知(136%)に次ぐ全国3位の伸長率となっている。
栃木は東京から日帰りできる距離のため、外国人宿泊者数は増えない状況が続いていた。だが。外資系高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン日光」の開業で、海外でも日光の認知度が高まったことや自然を満喫できるツアーなど、海外向けの新しいブランド戦略で情報発信してきた取組がインバウンド需要の増加につながったようだ。
栃木県はガリや紅生姜など、業務用商品や観光土産品を製造するメーカーが多く、アフターコロナで外食産業や観光産業の復調は追い風となっている。特に寿司は外国人からの人気も高く、築地や豊洲、浅草では高額なメニューを提供する店に行列ができるほどの盛況ぶり。寿司の付け合わせとして欠かせないガリの出番も増えている。
昨年8月には路面電車としては75年ぶり、全国で初めて全線を新設する宇都宮ライトレール(LRT)が開業。宇都宮市と芳賀町を結ぶ路線として運航がスタートした。LRTは騒音や振動が少なく、快適な乗り心地など、人と環境にやさしい乗り物。宇都宮市東部の渋滞緩和にも貢献している。宇都宮市が進めるLRTを軸とした新たなまちづくりは、国内外で注目され、全国の自治体や海外から多くの関係者が視察に訪れている。
漬物業界では、昨年10月17日に栃木県漬物工業協同組合(秋本薫理事長)の青年部(遠藤栄一部長)がライトキューブ宇都宮で全日本漬物協同組合連合会青年部会第41回全国大会栃木大会を開催。青年部員は2人しかいないが、少人数でも開催できることやペーパーレス、省人化などSDGsの要素も盛り込んだ内容で実施し、これからの全国大会や青年部活動、業界の方向性を示すメッセージを発信した。
経済産業省の経済構造実態調査によると、2021年の都道府県別漬物出荷金額で栃木県は全国4位。1事業所当りの額は6位と漬物製造業においても確固たる存在感を示している。進化を続ける栃木県の県内企業を特集した。(千葉友寛)
【2024(令和6)年4月11日第5159号1面】
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高菜特集 外食復活で消費拡大
5年ぶり平年作も不足感続く
九州を代表する特産漬物「高菜漬」の消費が拡大している。本紙3月21日号で掲載した「2023年漬物出荷金額」でも、高菜漬は前年比8・5%と大幅な伸びとなった。これを牽引したのが値上げによる単価上昇、外食・観光土産の回復だった。
昨年は、5月にコロナウイルスが「5類」へと引き下げられたことで外出自粛ムードが一気に緩和され、外国人旅行客も急激に増加した年となったのが高菜漬にとって追い風だった。
「外国人旅行客は漬物を買わない」というのが漬物店での定説ではあるが、高菜漬の場合はラーメンや炒飯、パスタ、鍋物などで用途が広い商材であり、食産業全体の活性化が高菜漬にも影響している。
特に豚骨ラーメン店では必ずといって良いほど高菜漬が添えられるか、卓上で取り放題になっている。ラーメンは日本観光の目的の一つともなっている存在であり、その成長とともに高菜漬も需要が高まっている。
市販においても、メーカー各社はWebやSNSで積極的にレシピ提案し、その魅力の発信に努めている。包装デザインでアレンジレシピを訴求する製品や、すでに大豆ミートと組み合わせて惣菜風になっている製品も増えてきている。
消費が拡大する一方で、課題となるのが原料面だ。
国内では農家の高齢化による高菜原料の減少は数年前から続いており、栽培量のベースが減っている。そこへ天候不順の追い打ちもあり、不作が4年続いていた。九州漬物協会高菜部会の集計によると2023年産の高菜収穫量は1万3936tであり、平年作ラインの2万tを大きく割った。原料在庫は逼迫してきている。
今シーズンは南九州が3月末に、北部九州でも4月中頃に収穫を終える予定で、5年ぶりに平年並の作柄となったようだ。九州全土にかけて、昨年末から年明けまでは暖冬傾向だったため生育が良く、豊作が期待された。しかしシーズン後半の2月になると降雨が続いたため、最終的には平年並に収まった。
だが、この作柄では在庫不足を補えるほどではなく、引き続き貴重な国産原料を、大切に売っていく流れとなりそうだ。
中国産を中心とする海外産原料も、為替や輸送費、現地人件費の上昇など複合的な要因から国産原料に近い水準の単価となっている。
しかし国産原料だけで需要を満たすことは不可能であり、海外産原料の重要性はむしろ高まっていくと考えられる。
このように原料確保が課題となっている中で、原料の買取価格引き上げや、漬物メーカー主導での収穫機開発が急がれている。
そのため各メーカーとも製造コストは上がり続けており、既存製品の価格改定や、利益の取れる付加価値商材の開発にも取り組んでいるところだ。今回の特集では、高菜漬メーカー各社の動向を取材した。
【2024(令和6)年4月11日第5159号1面】
昨年は、5月にコロナウイルスが「5類」へと引き下げられたことで外出自粛ムードが一気に緩和され、外国人旅行客も急激に増加した年となったのが高菜漬にとって追い風だった。
「外国人旅行客は漬物を買わない」というのが漬物店での定説ではあるが、高菜漬の場合はラーメンや炒飯、パスタ、鍋物などで用途が広い商材であり、食産業全体の活性化が高菜漬にも影響している。
特に豚骨ラーメン店では必ずといって良いほど高菜漬が添えられるか、卓上で取り放題になっている。ラーメンは日本観光の目的の一つともなっている存在であり、その成長とともに高菜漬も需要が高まっている。
市販においても、メーカー各社はWebやSNSで積極的にレシピ提案し、その魅力の発信に努めている。包装デザインでアレンジレシピを訴求する製品や、すでに大豆ミートと組み合わせて惣菜風になっている製品も増えてきている。
消費が拡大する一方で、課題となるのが原料面だ。
国内では農家の高齢化による高菜原料の減少は数年前から続いており、栽培量のベースが減っている。そこへ天候不順の追い打ちもあり、不作が4年続いていた。九州漬物協会高菜部会の集計によると2023年産の高菜収穫量は1万3936tであり、平年作ラインの2万tを大きく割った。原料在庫は逼迫してきている。
今シーズンは南九州が3月末に、北部九州でも4月中頃に収穫を終える予定で、5年ぶりに平年並の作柄となったようだ。九州全土にかけて、昨年末から年明けまでは暖冬傾向だったため生育が良く、豊作が期待された。しかしシーズン後半の2月になると降雨が続いたため、最終的には平年並に収まった。
だが、この作柄では在庫不足を補えるほどではなく、引き続き貴重な国産原料を、大切に売っていく流れとなりそうだ。
中国産を中心とする海外産原料も、為替や輸送費、現地人件費の上昇など複合的な要因から国産原料に近い水準の単価となっている。
しかし国産原料だけで需要を満たすことは不可能であり、海外産原料の重要性はむしろ高まっていくと考えられる。
このように原料確保が課題となっている中で、原料の買取価格引き上げや、漬物メーカー主導での収穫機開発が急がれている。
そのため各メーカーとも製造コストは上がり続けており、既存製品の価格改定や、利益の取れる付加価値商材の開発にも取り組んでいるところだ。今回の特集では、高菜漬メーカー各社の動向を取材した。
【2024(令和6)年4月11日第5159号1面】
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群馬こんにゃく特集 国内外で注目の存在
健康性と手軽さにニーズ
こんにゃく芋生産量で全国の90%以上を占める群馬県。県内のこんにゃく関連メーカーでは、伝統的なこんにゃく、しらたきの製造を行うとともに、新たな商品開発に力を入れている。
こんにゃくの食シーンと言えば、おでんや煮物が一般的だが、新商品の顔ぶれは、プラントベースのハンバーグ、こんにゃく麺、くずきりなど様々で、時代のニーズに沿った商品が開発され、人気を呼んでいる。
また、こんにゃくやしらたきを作る際の原料となる、こんにゃく粉も著しい進化を遂げている。近年話題を集めているのが、こんにゃくの特性を生かした新しいこんにゃく粉「マジックマンナン」。凝固剤不要で、水や各種溶媒を加えて練るだけで固まり、加熱調理しても溶けないため、こんにゃく以外の様々な食品に活躍の場が広がっている。
こんにゃくは日本の伝統食品でありながら、海外においてはサステナブルで健康性の高い最先端フードの一つとして受け入れられている。群馬県のこんにゃく加工品輸出額は、この10年間で5倍に拡大。世界的な日本食ブームやヴィーガン・ベジタリアン人口の増加を背景に、さらなる輸出額の伸長が見込まれる。
国内市場においても、即食性の高い商品開発が進み、手軽さと健康性を兼ね備えた食品としてこんにゃくは注目の存在だ。生産者減少や異常気象により原料確保が困難を極める中、こんにゃくは国産原料で国内需要が100%まかなえる食品でもある。不透明な国際情勢が続く中、食料安全保障の観点からも、こんにゃくへの期待は高まっている。(藤井大碁)
こんにゃくの食シーンと言えば、おでんや煮物が一般的だが、新商品の顔ぶれは、プラントベースのハンバーグ、こんにゃく麺、くずきりなど様々で、時代のニーズに沿った商品が開発され、人気を呼んでいる。
また、こんにゃくやしらたきを作る際の原料となる、こんにゃく粉も著しい進化を遂げている。近年話題を集めているのが、こんにゃくの特性を生かした新しいこんにゃく粉「マジックマンナン」。凝固剤不要で、水や各種溶媒を加えて練るだけで固まり、加熱調理しても溶けないため、こんにゃく以外の様々な食品に活躍の場が広がっている。
こんにゃくは日本の伝統食品でありながら、海外においてはサステナブルで健康性の高い最先端フードの一つとして受け入れられている。群馬県のこんにゃく加工品輸出額は、この10年間で5倍に拡大。世界的な日本食ブームやヴィーガン・ベジタリアン人口の増加を背景に、さらなる輸出額の伸長が見込まれる。
国内市場においても、即食性の高い商品開発が進み、手軽さと健康性を兼ね備えた食品としてこんにゃくは注目の存在だ。生産者減少や異常気象により原料確保が困難を極める中、こんにゃくは国産原料で国内需要が100%まかなえる食品でもある。不透明な国際情勢が続く中、食料安全保障の観点からも、こんにゃくへの期待は高まっている。(藤井大碁)
【2024(令和6)年4月1日第5158号1面】
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梅特集 降雹で凶作の見通しが広がる
熱中症対策に梅干しをPR
開花が早い年は不作になる‐。紀州梅産地ではこの言葉が通説となっており、今年はその言葉通りになることが懸念されている。紀州では昨年まで3年連続で良い作柄が続いており、不作となれば令和2年以来、4年ぶりとなる。
JA紀南の発表によると、昨年12月中旬以降から気温が高かったため、主力の南高は満開期が1月30日、開花終期が2月19日となり、平年と比べて満開期で16日程度早くなった。また、開花期間は31日と長く、授粉樹木でもある小梅との満開期はほぼ同じだった。
梅加工業者の話を総合すると、暖冬で開花及び満開期が2週間以上早まった年の作柄は良かったことがなく、すでに不作を覚悟した声も上がる中で、その度合いが心配されている。
その心配に追い打ちをかける出来事が発生。3月20日に梅産地の広範囲で降雹があり、作柄だけでなく秀品率の低下という問題も浮上。被害の全容は不明だが、「穫ってみないと分からない」という淡い期待は打ち砕かれ、梅事業者の思考は不作から凶作に切り替わりつつある。
紀州の産地在庫については、持ち越し在庫があるため、現時点では全体的にタイト感はない。また、農家や業者がまだ干していない塩漬の梅も相当量あると見られており、今年が不作になったことを想定しても当面は原料不足に陥ることはなさそうだ。
量販店における昨年の売れ行きについては、2022年比で微増となっている。昨夏は記録的な猛暑だったこと、残暑が長く続いたことで8月と9月は大きく伸長した。
だが、物価高で節約志向が高まり、スーパーにおける買い上げ点数が減少する中、漬物の中でも単価が高い梅干しは買い控えの対象となり、10月以降は前年を下回るようになった。
特に12月は全体で10%以上数字を落とし、年明けも低調な動きとなっている。それでも売場に商品が入っている大手メーカーは国産、中国産ともに前年並みか前年以上の数字となっており、メーカー間で格差が生じていることを示している。
アフターコロナで百貨店や観光土産、外食関係の需要は回復傾向にあるが、通販も含めてコロナ前の水準には戻っていない。同じ梅干しメーカーでも需要の割合の内容によって業績も異なる。
今年も売れるチャンスが到来する。昨夏は暑い日が続いたが、熱中症対策のアイテムとして梅干しがメディアで大々的に紹介されることはなく、需要に結びつかなかった。気象庁によると、4月から暑くなる予報で早くも熱中症対策が呼びかけられている。また、夏においても全国的に気温が高くなり、猛暑日が増えると予想されている。
熱中症対策として梅干しを食べることは認知されているが、テレビなどのメディアで推奨されると、その効果は絶大なものとなる。2018年7月3日、TBS系の「林修の今でしょ!講座」で梅干しの健康効果が紹介されると翌日から梅干しの需要が急上昇し、150~200%の状態が1カ月以上続くなど大特需が発生した。
作柄などの不安要素もあるが、今年は2018年の再現が期待されている。
【2024(令和6)年3月21日第5157号1面】
JA紀南の発表によると、昨年12月中旬以降から気温が高かったため、主力の南高は満開期が1月30日、開花終期が2月19日となり、平年と比べて満開期で16日程度早くなった。また、開花期間は31日と長く、授粉樹木でもある小梅との満開期はほぼ同じだった。
梅加工業者の話を総合すると、暖冬で開花及び満開期が2週間以上早まった年の作柄は良かったことがなく、すでに不作を覚悟した声も上がる中で、その度合いが心配されている。
その心配に追い打ちをかける出来事が発生。3月20日に梅産地の広範囲で降雹があり、作柄だけでなく秀品率の低下という問題も浮上。被害の全容は不明だが、「穫ってみないと分からない」という淡い期待は打ち砕かれ、梅事業者の思考は不作から凶作に切り替わりつつある。
紀州の産地在庫については、持ち越し在庫があるため、現時点では全体的にタイト感はない。また、農家や業者がまだ干していない塩漬の梅も相当量あると見られており、今年が不作になったことを想定しても当面は原料不足に陥ることはなさそうだ。
量販店における昨年の売れ行きについては、2022年比で微増となっている。昨夏は記録的な猛暑だったこと、残暑が長く続いたことで8月と9月は大きく伸長した。
だが、物価高で節約志向が高まり、スーパーにおける買い上げ点数が減少する中、漬物の中でも単価が高い梅干しは買い控えの対象となり、10月以降は前年を下回るようになった。
特に12月は全体で10%以上数字を落とし、年明けも低調な動きとなっている。それでも売場に商品が入っている大手メーカーは国産、中国産ともに前年並みか前年以上の数字となっており、メーカー間で格差が生じていることを示している。
アフターコロナで百貨店や観光土産、外食関係の需要は回復傾向にあるが、通販も含めてコロナ前の水準には戻っていない。同じ梅干しメーカーでも需要の割合の内容によって業績も異なる。
今年も売れるチャンスが到来する。昨夏は暑い日が続いたが、熱中症対策のアイテムとして梅干しがメディアで大々的に紹介されることはなく、需要に結びつかなかった。気象庁によると、4月から暑くなる予報で早くも熱中症対策が呼びかけられている。また、夏においても全国的に気温が高くなり、猛暑日が増えると予想されている。
熱中症対策として梅干しを食べることは認知されているが、テレビなどのメディアで推奨されると、その効果は絶大なものとなる。2018年7月3日、TBS系の「林修の今でしょ!講座」で梅干しの健康効果が紹介されると翌日から梅干しの需要が急上昇し、150~200%の状態が1カ月以上続くなど大特需が発生した。
作柄などの不安要素もあるが、今年は2018年の再現が期待されている。
【2024(令和6)年3月21日第5157号1面】
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滋賀県水産物加工品品評会 湖魚で趣向凝らす逸品
若年層に注目される佃煮・鮒寿し
滋賀県水産加工業協同組合(奥村龍男組合長)が主催する、第39回滋賀県水産物加工品品評会が2月16日、滋賀県草津市の近鉄百貨店草津店で開催された。
出品された中から、農林水産大臣賞に西友商店の「小鮎若炊き」、水産庁長官賞で奥村佃煮の「鮒寿し×つやこブルー」、滋賀県知事賞に山喜食品の「氷魚葉山椒煮」が選出された他、鮎家の「あゆ柚子味噌煮」が滋賀県水産加工業協同組合組合長賞を受賞した。
西友商店の「小鮎若炊き」は、湖魚の小鮎を浅炊き風に炊き上げ、山椒で風味豊かに味付けした、春夏のみ販売する人気商品だ。
奥村佃煮の「鮒寿し×つやこブルー」は、鮒寿しに子持ちであるニゴロブナのメスが重宝される中、オスの活用を考え、オスのお腹にチーズを入れるという発想の転換で生み出された商品である。
山喜食品の「氷魚葉山椒煮」は、鮎の稚魚である氷魚を爽やかな香りとアクセントのある辛味が特徴の葉山椒で味付けし、葉山椒は地元大津市産にこだわる。
湖魚の佃煮や鮒寿しは、一般的に伝統性が強く、味やラインナップが変わらないと思われる傾向にあり、また県民でさえ、湖魚を家庭で食べる機会は少しずつなくなってきた。だが、今回受賞された商品のように「季節限定」「発想の転換」「地元産」を打ち出すことで、若い世代に注目されるよう各社、趣向を凝らしている。
【2024(令和6)年3月21日第5157号1面】
出品された中から、農林水産大臣賞に西友商店の「小鮎若炊き」、水産庁長官賞で奥村佃煮の「鮒寿し×つやこブルー」、滋賀県知事賞に山喜食品の「氷魚葉山椒煮」が選出された他、鮎家の「あゆ柚子味噌煮」が滋賀県水産加工業協同組合組合長賞を受賞した。
西友商店の「小鮎若炊き」は、湖魚の小鮎を浅炊き風に炊き上げ、山椒で風味豊かに味付けした、春夏のみ販売する人気商品だ。
奥村佃煮の「鮒寿し×つやこブルー」は、鮒寿しに子持ちであるニゴロブナのメスが重宝される中、オスの活用を考え、オスのお腹にチーズを入れるという発想の転換で生み出された商品である。
山喜食品の「氷魚葉山椒煮」は、鮎の稚魚である氷魚を爽やかな香りとアクセントのある辛味が特徴の葉山椒で味付けし、葉山椒は地元大津市産にこだわる。
湖魚の佃煮や鮒寿しは、一般的に伝統性が強く、味やラインナップが変わらないと思われる傾向にあり、また県民でさえ、湖魚を家庭で食べる機会は少しずつなくなってきた。だが、今回受賞された商品のように「季節限定」「発想の転換」「地元産」を打ち出すことで、若い世代に注目されるよう各社、趣向を凝らしている。
【2024(令和6)年3月21日第5157号1面】
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塩特集 食と健康を支える塩
コスト増や脱炭素へ対応模索
塩は「食」の根幹を為している。調味料としてはもちろん、防腐作用や脱水作用など様々な効果を持ち、あらゆる食品作りで代替の利かない役割を持っている。
熱中症対策アイテムとしての認識が強いが、塩は人体において様々な働きを持つ。細胞を保つ働きや、ナトリウムイオンとなって脳から全身へ、あるいは全身から脳へ信号を伝える働き、塩化物イオンとなって胃酸の素を作る働き、などがある。
塩は汗とともに流れ出る。水分だけを摂ると、体は塩分濃度を保とうとますます汗や尿を出す(自発的脱水)。塩が不足すれば疲労感や頭痛、吐き気、筋肉の痙攣といった症状に襲われる。急激な場合には重症に至ることもあり得る。
必需品である塩は、かつて国家による専売制度が取られてきた。自由化が進められた後も各企業はインフラとしての責務を担い続け、現代日本において塩不足となったことが一度もない。
そんな必需品である塩も、変化の岐路に立たされている。塩の価格決定要素は製塩にかかる燃料費や物流費、そしてそれに関わる設備費や人件費が主となってくるが、その全てが上昇している。このため昨年までに国内製塩、特殊製法塩大手が価格改定に踏み切っている。
また持続可能性への要請が強まっている中で、業界団体では脱炭素化やカーボンニュートラル化へ向けた技術研究、物流網の再整備・共同輸送の検討を進めている。
今回の「塩特集」では各社・団体のこだわりの塩や塩関連製品を紹介するとともに、塩業界が抱える課題とその対応方針を取材した。
【2024(令和6)年3月21日第5157号1面】
熱中症対策アイテムとしての認識が強いが、塩は人体において様々な働きを持つ。細胞を保つ働きや、ナトリウムイオンとなって脳から全身へ、あるいは全身から脳へ信号を伝える働き、塩化物イオンとなって胃酸の素を作る働き、などがある。
塩は汗とともに流れ出る。水分だけを摂ると、体は塩分濃度を保とうとますます汗や尿を出す(自発的脱水)。塩が不足すれば疲労感や頭痛、吐き気、筋肉の痙攣といった症状に襲われる。急激な場合には重症に至ることもあり得る。
必需品である塩は、かつて国家による専売制度が取られてきた。自由化が進められた後も各企業はインフラとしての責務を担い続け、現代日本において塩不足となったことが一度もない。
そんな必需品である塩も、変化の岐路に立たされている。塩の価格決定要素は製塩にかかる燃料費や物流費、そしてそれに関わる設備費や人件費が主となってくるが、その全てが上昇している。このため昨年までに国内製塩、特殊製法塩大手が価格改定に踏み切っている。
また持続可能性への要請が強まっている中で、業界団体では脱炭素化やカーボンニュートラル化へ向けた技術研究、物流網の再整備・共同輸送の検討を進めている。
今回の「塩特集」では各社・団体のこだわりの塩や塩関連製品を紹介するとともに、塩業界が抱える課題とその対応方針を取材した。
【2024(令和6)年3月21日第5157号1面】
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群馬特集 漬物出荷額全国2位に
輸出事業展開へ委員会開設
群馬県は昨年発表された経済産業省「経済構造実態調査」において県別漬物出荷金額(2021年)が前年から順位を一つ上げ、全国2位となった。県内では豊富な農作物を生かした漬物製造が行われている。
梅の生産量においても群馬県は全国2位。箕郷、榛名といった梅産地では、梅の花が、例年より2週間ほど早い3月初旬に満開となった。近年、雹害などの影響により不作が続いていた群馬梅産地であるが、昨年は2018年以来5年ぶりに豊作型の作柄となった。だが、生産者の減少や収穫期の人手不足により、豊作となっても、需要に供給が追いつかない慢性的な不足傾向が続いている。
こうした状況下で、県内の梅メーカー5社(村岡食品工業、大利根漬、コマックス、赤城フーズ、梅吉)で組織する「うめのわ」では、〝群馬の梅〟のブランド化や産地活性化を目指して積極的な取組を行う。今年2月には、11月10日(いい音の日)が、「カリカリ梅の日」に制定されたことが発表され、各メディアで報道されるなど注目を浴びた。
また群馬県漬物工業協同組合(武井均理事長)では、2022年に輸出委員会を開設。輸出関連の補助金を受託し、海外において輸出関連事業を実施することを目指している。2月に開催された組合新年会においても、日本貿易振興機構による講演会が実施されるなど、群馬の漬物を世界へ輸出しよういう機運が高まっている。(藤井大碁)【群馬特集8・9・12面】
梅の生産量においても群馬県は全国2位。箕郷、榛名といった梅産地では、梅の花が、例年より2週間ほど早い3月初旬に満開となった。近年、雹害などの影響により不作が続いていた群馬梅産地であるが、昨年は2018年以来5年ぶりに豊作型の作柄となった。だが、生産者の減少や収穫期の人手不足により、豊作となっても、需要に供給が追いつかない慢性的な不足傾向が続いている。
こうした状況下で、県内の梅メーカー5社(村岡食品工業、大利根漬、コマックス、赤城フーズ、梅吉)で組織する「うめのわ」では、〝群馬の梅〟のブランド化や産地活性化を目指して積極的な取組を行う。今年2月には、11月10日(いい音の日)が、「カリカリ梅の日」に制定されたことが発表され、各メディアで報道されるなど注目を浴びた。
また群馬県漬物工業協同組合(武井均理事長)では、2022年に輸出委員会を開設。輸出関連の補助金を受託し、海外において輸出関連事業を実施することを目指している。2月に開催された組合新年会においても、日本貿易振興機構による講演会が実施されるなど、群馬の漬物を世界へ輸出しよういう機運が高まっている。(藤井大碁)【群馬特集8・9・12面】
【2024(令和6)年3月11日第5156号1面】
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東京特集 インバウンド需要が追い風に
〝東京ブランド〟で差別化
東京がインバウンド需要の追い風を受けて賑わっている。
東京都は今年1月、令和5年4月から6月までに東京を訪れた旅行者数を発表。日本人旅行者は約1億1511万人(平成31年・令和元年同期比13・9%減)、外国人旅行者が約521万人(同25・3%増)となり、全体としては約1億203万人(同12・7%減)となった。
同時期の観光消費額については、日本人旅行者は約9676億円(平成31年・令和元年同期比15・%減)、外国人旅行者の消費額が約8783億円(同157・0%増)となり、全体としては約1兆8459億円(同23・8%増)となった。
いずれも目立っているのが外国人旅行者の数と消費額。消費額においては、コロナが明けて国内外の観光が活況となったことを考慮しても157%増と日本人旅行者に迫る勢いで大幅に増加し、全体の数字を押し上げている。
2月1日には東京の新名所として注目されている商業施設「豊洲 千客万来」にオープン。同施設は「食べる」、「買う」、「過ごす」、「温泉」をテーマに、築地特有の貴重な財産である賑わいを継承・発展させるとともに、豊洲市場本体施設と連携して豊洲ならではの活気や賑わいを生み出す施設として話題となっており、オープン後は連日、国内外の観光客が訪れている。
希少な「Made in Tokyo」も注目だ。江戸時代の宝田恵比寿神社例祭にまで起源を遡るべったら漬、江戸の佃島が発祥とされる江戸前佃煮、徳川家康の命により開発されたと伝えられる江戸甘味噌など、継承されてきた伝統と技術を生かし、今日まで広く愛される産品を伝えている。
東京都では東京都産の原材料を使用している加工食品や東京の伝統的手法など、生産方法に特徴があると認められる食品を審査。東京都地域特産品認証食品(Eマーク認証)に認定する取組も推進している。
昨年10月19日、20日には、東京の秋の風物詩である「べったら市」が4年ぶりに本格開催され、かつての賑わいを取り戻した。アフターコロナで様々なイベントが復活し、国内外から熱視線を浴びている。
人と物が動く東京は、伝統と革新が融合し、新しい文化を生み出してきた。変化のスピードが速い中で、その役割は今後ますます重要となり、差別化を図ることができる〝東京ブランド〟は、付加価値として大きな期待が寄せられている。【特集4・5・8面】
東京都は今年1月、令和5年4月から6月までに東京を訪れた旅行者数を発表。日本人旅行者は約1億1511万人(平成31年・令和元年同期比13・9%減)、外国人旅行者が約521万人(同25・3%増)となり、全体としては約1億203万人(同12・7%減)となった。
同時期の観光消費額については、日本人旅行者は約9676億円(平成31年・令和元年同期比15・%減)、外国人旅行者の消費額が約8783億円(同157・0%増)となり、全体としては約1兆8459億円(同23・8%増)となった。
いずれも目立っているのが外国人旅行者の数と消費額。消費額においては、コロナが明けて国内外の観光が活況となったことを考慮しても157%増と日本人旅行者に迫る勢いで大幅に増加し、全体の数字を押し上げている。
2月1日には東京の新名所として注目されている商業施設「豊洲 千客万来」にオープン。同施設は「食べる」、「買う」、「過ごす」、「温泉」をテーマに、築地特有の貴重な財産である賑わいを継承・発展させるとともに、豊洲市場本体施設と連携して豊洲ならではの活気や賑わいを生み出す施設として話題となっており、オープン後は連日、国内外の観光客が訪れている。
希少な「Made in Tokyo」も注目だ。江戸時代の宝田恵比寿神社例祭にまで起源を遡るべったら漬、江戸の佃島が発祥とされる江戸前佃煮、徳川家康の命により開発されたと伝えられる江戸甘味噌など、継承されてきた伝統と技術を生かし、今日まで広く愛される産品を伝えている。
東京都では東京都産の原材料を使用している加工食品や東京の伝統的手法など、生産方法に特徴があると認められる食品を審査。東京都地域特産品認証食品(Eマーク認証)に認定する取組も推進している。
昨年10月19日、20日には、東京の秋の風物詩である「べったら市」が4年ぶりに本格開催され、かつての賑わいを取り戻した。アフターコロナで様々なイベントが復活し、国内外から熱視線を浴びている。
人と物が動く東京は、伝統と革新が融合し、新しい文化を生み出してきた。変化のスピードが速い中で、その役割は今後ますます重要となり、差別化を図ることができる〝東京ブランド〟は、付加価値として大きな期待が寄せられている。【特集4・5・8面】
【2024(令和6)年3月1日第5155号1面】
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飯田特集 日本一の焼肉の町
飯田・下伊那地域を中心とした南信州エリアは天龍峡や下栗の里といった美しい景勝地と共に、野菜や果物など食材の宝庫としても知られる。
その新鮮な野菜を使用した漬物業も盛んで、南信州エリアの漬物メーカーでは、信州を代表する漬物である野沢菜漬や下伊那郡松川町原産の「竜峡小梅」を使った小梅漬など様々な漬物を製造している。
また飯田市は、人口1万人あたりの焼肉店舗数が全国の市の中で最も多い”日本一の焼肉の町”としても知られる。
この地域資源を生かそうと2015年から開催されているのが、焼肉を食べながら音楽を楽しむイベント「焼來肉ロックフェス」。今年も7月20日と21日に飯田市の野底山森林公園で開催される予定で、県内外から大勢の来場者が見込まれている。(藤井大碁)【飯田特集8・9面】
その新鮮な野菜を使用した漬物業も盛んで、南信州エリアの漬物メーカーでは、信州を代表する漬物である野沢菜漬や下伊那郡松川町原産の「竜峡小梅」を使った小梅漬など様々な漬物を製造している。
また飯田市は、人口1万人あたりの焼肉店舗数が全国の市の中で最も多い”日本一の焼肉の町”としても知られる。
この地域資源を生かそうと2015年から開催されているのが、焼肉を食べながら音楽を楽しむイベント「焼來肉ロックフェス」。今年も7月20日と21日に飯田市の野底山森林公園で開催される予定で、県内外から大勢の来場者が見込まれている。(藤井大碁)【飯田特集8・9面】
【2024(令和6)年2月11日第5153号1面】
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静岡特集 ”食材の王国”山海の幸
静岡県は日本一の標高を誇る霊峰富士や日本一深い駿河湾など多様な風土に育まれた”食材の王国”だ。
伊豆、三島、静岡のわさび、焼津のまぐろやかつお、浜松のうなぎなど、東西に長い県内には各所に個性豊かな山海の幸が存在する。
昨年は大河ドラマ「どうする家康」の舞台として、県内に大勢の観光客が訪れた。浜松城の来訪者数は2023年8月に前年比2倍以上に増加するなど、大河特需により、県内の観光産業は大きな恩恵を受けた。
伊豆、三島、静岡のわさび、焼津のまぐろやかつお、浜松のうなぎなど、東西に長い県内には各所に個性豊かな山海の幸が存在する。
昨年は大河ドラマ「どうする家康」の舞台として、県内に大勢の観光客が訪れた。浜松城の来訪者数は2023年8月に前年比2倍以上に増加するなど、大河特需により、県内の観光産業は大きな恩恵を受けた。
静岡の伝統食メーカーでは、わさびや麹、魚介類など県内の特産品を使用した新商品開発が活発化している。
わさびに海外料理のテイストを取り入れた調味料や箱根西麓三島野菜を使用したドレッシングなどその顔ぶれは様々。
静岡の魅力的な食を紹介する。(藤井大碁)【静岡特集13面、14面】
【2024(令和6)年2月11日第5153号1面】
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SMTS特集 次の時代へ一歩踏み出す
地域食伝統食に光
「第58回スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)2024」「「デリカテッセン・トレードショー(DTS)2024」(主催:一般社団法人全国スーパーマーケット協会)「第19回こだわり食品フェア2024」(主催:一般財団法人食品産業センター)が2月14日から16日まで、千葉市の幕張メッセ全館で開催される。
「第58回スーパーマーケット・トレードショー2024」(横山清実行委員長)は、スーパーマーケットを中心とする食品流通業界に最新情報を発信する商談展示会。2188社・団体、3515小間(2024年1月15日現在)の規模で開催する。
今回も全国各地から自治体や地方金融機関などの取りまとめにより、1480社以上の地域産品メーカーが出展。海外からも13カ国、93社・団体、126小間が参加する。
「第58回スーパーマーケット・トレードショー2024」(横山清実行委員長)は、スーパーマーケットを中心とする食品流通業界に最新情報を発信する商談展示会。2188社・団体、3515小間(2024年1月15日現在)の規模で開催する。
今回も全国各地から自治体や地方金融機関などの取りまとめにより、1480社以上の地域産品メーカーが出展。海外からも13カ国、93社・団体、126小間が参加する。
主催者企画「食のトレンドゾーン」では、急速な勢いで訪日外国人観光客数が回復するなど今注目のカテゴリー「インバウンド×食」ゾーンを新設。前回好評だった「冷凍×食」「サステナビリティ×食」のトレンドテーマと共に、来場者に最新のトレンド情報と商品・サービスを紹介する。
また今回のSMTSは、4年ぶりに会場内に「SMTS・DTSセミナーステージ」が復活。同協会会長の横山清氏による「SMTSスピークス(タイトル『百年スーパー時代』)」の他、各種表彰式や「インバウンド」「物流2024年問題」「スーパーマーケット白書」など、今注目のテーマを題材にした各種セミナーを実施する(リアル開催のみで、オンライン配信はない)。その他、継続企画「てづくりNIPPON」「ビジネスマッチング@SMTS・DTS2024」「ジェトロ食品輸出商談会at SMTS2024」なども実施する。
昨今、食品業界を取り巻く環境は厳しさを増している。ロシアによるウクライナ侵攻や急激な為替相場の変動により、原料や燃料費など様々なコストが上昇、食品メーカーを苦しめている。多くの品目で値上げが実施されているものの、物価上昇により生活者の節約志向が強く、売場ではPB商品など価格対応型の商品が好調な動きを見せる。今年4月には物流の2024年問題も控えており、環境が大きく変化する中で、その対応を求められている。
こうした状況下で、スーパーマーケット業界では、合併や経営統合などの動きが活発化している。最近ではコンビニ業界でもKDDIがローソンの経営に参画することを発表。ドラッグストア業界ではイオングループがツルハホールディングスの株式取得を目指すなど、流通業界全体でめまぐるしい地殻変動が起きている。
少子高齢化や人口減少が進む中、地域のライフラインであるスーパーマーケットの役割は大きい。近年、全国スーパーマーケット協会の賛助会員会員数が増え続けていることも、スーパーマーケットの存在意義がより高まっていることを示している。
また、地域食や伝統食にも光が当たっている。バス旅やグルメ散歩など、全国のローカルグルメを紹介する番組が増えている。コロナ禍を経て、我々が気付いたのは、〝食は最大のエンターテイメント〟であること。生きることと切り離せない食への関心は今後も高まり続けていくだろう。
コロナ5類移行後、初開催となる「スーパーマーケット・トレードショー2024」は、まさに次の時代への一歩を踏み出す展示会。「インバウンド」や「物流2024年問題」など時宜を得たテーマが満載で、今回も盛り上がりが期待される。
また今回のSMTSは、4年ぶりに会場内に「SMTS・DTSセミナーステージ」が復活。同協会会長の横山清氏による「SMTSスピークス(タイトル『百年スーパー時代』)」の他、各種表彰式や「インバウンド」「物流2024年問題」「スーパーマーケット白書」など、今注目のテーマを題材にした各種セミナーを実施する(リアル開催のみで、オンライン配信はない)。その他、継続企画「てづくりNIPPON」「ビジネスマッチング@SMTS・DTS2024」「ジェトロ食品輸出商談会at SMTS2024」なども実施する。
昨今、食品業界を取り巻く環境は厳しさを増している。ロシアによるウクライナ侵攻や急激な為替相場の変動により、原料や燃料費など様々なコストが上昇、食品メーカーを苦しめている。多くの品目で値上げが実施されているものの、物価上昇により生活者の節約志向が強く、売場ではPB商品など価格対応型の商品が好調な動きを見せる。今年4月には物流の2024年問題も控えており、環境が大きく変化する中で、その対応を求められている。
こうした状況下で、スーパーマーケット業界では、合併や経営統合などの動きが活発化している。最近ではコンビニ業界でもKDDIがローソンの経営に参画することを発表。ドラッグストア業界ではイオングループがツルハホールディングスの株式取得を目指すなど、流通業界全体でめまぐるしい地殻変動が起きている。
少子高齢化や人口減少が進む中、地域のライフラインであるスーパーマーケットの役割は大きい。近年、全国スーパーマーケット協会の賛助会員会員数が増え続けていることも、スーパーマーケットの存在意義がより高まっていることを示している。
また、地域食や伝統食にも光が当たっている。バス旅やグルメ散歩など、全国のローカルグルメを紹介する番組が増えている。コロナ禍を経て、我々が気付いたのは、〝食は最大のエンターテイメント〟であること。生きることと切り離せない食への関心は今後も高まり続けていくだろう。
コロナ5類移行後、初開催となる「スーパーマーケット・トレードショー2024」は、まさに次の時代への一歩を踏み出す展示会。「インバウンド」や「物流2024年問題」など時宜を得たテーマが満載で、今回も盛り上がりが期待される。
【2024(令和6)年2月11日第5153号1面】
漬物の素特集 「ぬか床」で食品ロスを削減
野菜摂取の有効な手段
持続可能な社会の実現へ。「ぬか床」で食品ロスを削減しよう。
まだ食べられるのに、捨てられてしまう食べ物のことを「食品ロス」と呼ぶ。食べ物を捨てることは、環境、世界の食料問題、社会、経済へも悪影響を及ぼす。
農林水産省は昨年6月、日本における令和3年度の食品ロス量(推計値)を公表。それによると、前年度比0・2%増の523万t(前年度比1万t増)となり、このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は同1・5%増の279万t(同4万t増)、家庭から発生する家庭系食品ロス量は同1・2%減の244万t(同3万t減)となった。
SDGsの認知度が高まる中、家庭では気を付けようとする動きが見られる動きがある一方で、チャンスロスや見栄えといった要素が重要となる外食や中食向けの商品は微増となった。
国民1人当たりの食品ロス量は1日約114gで茶碗約1杯のご飯の量に近い量となり、年間では1人当たりの米の消費量(約51㎏)に近い約42㎏になる。
世界を見ると食料は十分に生産されているが、地域別に見ると食料が不足している地域も存在し、全人口の10人に1人は栄養不足とされている。食料価格の高騰、貧困、飢餓とより深刻な食料不足を引き起こす可能性もあり、食品ロスを減らす意識を1人1人が持つことが重要だ。
漬物の素の代表格である「ぬか床」が家庭における食料ロス削減の救世主となる。余って冷蔵庫にしまっておいた野菜の存在を忘れていたり、利用する機会がなかった等の理由でそのまま使わずに捨てる、というケースはどこの家庭でもあることだ。だが、野菜を入れるだけでぬか漬を作ることができる「ぬか床」があれば、余った野菜も捨てることなく食べることができる。
栄養も豊富に摂れる。「ぬか床」で野菜を漬けたぬか漬には、野菜そのものの栄養素に加え、植物性乳酸菌、ビタミンB群、ビタミンE、γ‐オリザノール、フェルラ酸、イノシトールの栄養成分が含まれており、免疫力アップ、腸内環境改善、抗酸化作用、抗ガン作用、動脈硬化予防などの効果が期待される。また、発酵作用によって生野菜よりも保存期間が長くなることも魅力で、余った野菜を美味しく無駄なく健康的に食べることができる。
現在、販売されている主力商品は熟成済みでチャック開封式タイプが主流となっており、袋を開けて野菜を入れるだけで簡単にぬか漬を作ることができる。また、より簡便性に優れた粉末タイプや液体タイプの商品の他、利用する量を調整することができるチューブタイプなど、新しい商品も登場してすそ野を広げている。
漬け床としても使用される酒粕は、1~4㎏詰めの野菜漬物用(踏込粕)は郊外スーパーや農産物直売所では販売しているものの、近年は減少傾向。代わりに増えてきているのが柔らかな吟醸酒粕や練り粕を、チューブ容器や使い切りの個包装に入れて、少量ずつ使えるよう工夫した商品。野菜、肉、魚の粕漬や、甘酒、お菓子やソースの隠し味といった用途で利用されている。
日本酒の副産物である酒粕はペプチドや食物繊維、ビタミンB群などの栄養の他、麹菌や酵母を豊富に含んだ発酵食品。用途の拡大に向けて様々な提案がされており、漬け床としての価値も再発見されることに期待がかかる。
近年は塩こうじや甘酒など、漬物の素としても利用されるこうじから作った発酵食品がブームになっている。1月3日放送の「マツコの知らない世界・おはぎの世界」(TBS系)でビキニフィットネスの女王こと、安井友梨さんが筋トレの効果を高める食べ物として「発酵あんこ」を使用したおはぎを食べていると紹介。こうじの力で小豆のでんぷん質を糖化させた砂糖不使用で罪悪感なく食べられる「あんこ」として話題を呼んだ。
漬物の素の利用は農林水産省が健康維持のために推奨する野菜摂取の有効な手段の一つで、豊かな食生活に貢献することができる。食品ロス削減、健康機能性、野菜摂取など、多くの魅力を持つ漬物の素を広く深く紹介する。
持続可能な社会の実現へ。「ぬか床」で食品ロスを削減しよう。
まだ食べられるのに、捨てられてしまう食べ物のことを「食品ロス」と呼ぶ。食べ物を捨てることは、環境、世界の食料問題、社会、経済へも悪影響を及ぼす。
農林水産省は昨年6月、日本における令和3年度の食品ロス量(推計値)を公表。それによると、前年度比0・2%増の523万t(前年度比1万t増)となり、このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は同1・5%増の279万t(同4万t増)、家庭から発生する家庭系食品ロス量は同1・2%減の244万t(同3万t減)となった。
SDGsの認知度が高まる中、家庭では気を付けようとする動きが見られる動きがある一方で、チャンスロスや見栄えといった要素が重要となる外食や中食向けの商品は微増となった。
国民1人当たりの食品ロス量は1日約114gで茶碗約1杯のご飯の量に近い量となり、年間では1人当たりの米の消費量(約51㎏)に近い約42㎏になる。
世界を見ると食料は十分に生産されているが、地域別に見ると食料が不足している地域も存在し、全人口の10人に1人は栄養不足とされている。食料価格の高騰、貧困、飢餓とより深刻な食料不足を引き起こす可能性もあり、食品ロスを減らす意識を1人1人が持つことが重要だ。
漬物の素の代表格である「ぬか床」が家庭における食料ロス削減の救世主となる。余って冷蔵庫にしまっておいた野菜の存在を忘れていたり、利用する機会がなかった等の理由でそのまま使わずに捨てる、というケースはどこの家庭でもあることだ。だが、野菜を入れるだけでぬか漬を作ることができる「ぬか床」があれば、余った野菜も捨てることなく食べることができる。
栄養も豊富に摂れる。「ぬか床」で野菜を漬けたぬか漬には、野菜そのものの栄養素に加え、植物性乳酸菌、ビタミンB群、ビタミンE、γ‐オリザノール、フェルラ酸、イノシトールの栄養成分が含まれており、免疫力アップ、腸内環境改善、抗酸化作用、抗ガン作用、動脈硬化予防などの効果が期待される。また、発酵作用によって生野菜よりも保存期間が長くなることも魅力で、余った野菜を美味しく無駄なく健康的に食べることができる。
現在、販売されている主力商品は熟成済みでチャック開封式タイプが主流となっており、袋を開けて野菜を入れるだけで簡単にぬか漬を作ることができる。また、より簡便性に優れた粉末タイプや液体タイプの商品の他、利用する量を調整することができるチューブタイプなど、新しい商品も登場してすそ野を広げている。
漬け床としても使用される酒粕は、1~4㎏詰めの野菜漬物用(踏込粕)は郊外スーパーや農産物直売所では販売しているものの、近年は減少傾向。代わりに増えてきているのが柔らかな吟醸酒粕や練り粕を、チューブ容器や使い切りの個包装に入れて、少量ずつ使えるよう工夫した商品。野菜、肉、魚の粕漬や、甘酒、お菓子やソースの隠し味といった用途で利用されている。
日本酒の副産物である酒粕はペプチドや食物繊維、ビタミンB群などの栄養の他、麹菌や酵母を豊富に含んだ発酵食品。用途の拡大に向けて様々な提案がされており、漬け床としての価値も再発見されることに期待がかかる。
近年は塩こうじや甘酒など、漬物の素としても利用されるこうじから作った発酵食品がブームになっている。1月3日放送の「マツコの知らない世界・おはぎの世界」(TBS系)でビキニフィットネスの女王こと、安井友梨さんが筋トレの効果を高める食べ物として「発酵あんこ」を使用したおはぎを食べていると紹介。こうじの力で小豆のでんぷん質を糖化させた砂糖不使用で罪悪感なく食べられる「あんこ」として話題を呼んだ。
漬物の素の利用は農林水産省が健康維持のために推奨する野菜摂取の有効な手段の一つで、豊かな食生活に貢献することができる。食品ロス削減、健康機能性、野菜摂取など、多くの魅力を持つ漬物の素を広く深く紹介する。
【2024(令和6)年2月1日第5152号1面】
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春を呼ぶ商材特集 「桜花漬」稀少な存在
桜の花を塩漬にした「桜花漬」は、春を想起させる代表的な商品として重宝されている。年明けから春にかけて出荷されることが多く、現在は最需要期となっている。
春向け商品の素材として利用され、季節の売場に欠かせない存在となっている「桜花漬」だが、近年はその需給バランスが崩れつつある。
コロナ禍では祝い事や人が集まることが自粛されていたこともあり、華やかなイメージがある「桜花漬」の需要も減少。
そのため、高齢化や後継者不足といった課題を抱える生産者は規模を縮小するなど、収穫量の減少につながった。
原料の確保が難しい状況となる中、需要は増加している。昨年5月、コロナが5類に移行し、観光地にも人手と賑わいが戻り、「桜花漬」の動きもさることながら「桜花漬」を素材とした商品開発を目指す企業から問い合わせが増加している。
だが、各社では新規で供給する余力はなく、今後も生産量が増える見通しはないことから、チャンスロスとなっている。外国人観光客からの人気も高い「桜花漬」は、以前よりも希少な存在となっている。
また、白身魚の身をほぐして煎りあげ薄紅色に色付けした「桜でんぶ」も春を想起させる商材。ちらし寿司や巻き寿司の具材として欠かせない一品であり、恵方巻の定番具材としてもお馴染だ。
節分の恵方巻はコロナ禍を経て、家族揃って楽しめるイベントとしてさらにその人気が高まっており、今年も「桜でんぶ」の需要の高まりが期待される。
【2024(令和6)年1月21日第5151号1面】
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愛知いわし特集 広がる「節分いわし」
「鬼滅の刃」で今年も注目
本年も「節分の日」が近づいてきた。節分に食べる食材といえば「豆」や「恵方巻」が一般的だが、節分に「いわし」を食べる“節分いわし”の風習も根強く残っている。
主に関西方面では、この季節、節分に向けていわし製品の需要が伸びるが、近年、関東方面でも広がりをみせている。古来より、鬼の嫌いなものは「鰯(いわし)の頭」の匂いと「痛い柊(ひいらぎ)のトゲ」とされ、いわしの頭を焼いて柊の枝に刺し、厄除けのため家の戸口に置いて鬼の侵入を防ぐという「柊鰯(ひいらぎいわし」の風習があり、それに因んでいわしを食べるようになったといわれる。
節分イベントを後押ししているのが、アニメ『鬼滅の刃』のヒット。今年も節分に合わせて、映画「ワールドツアー上映『鬼滅の刃』絆の奇跡、そして柱稽古へ」が世界各国の映画館で2月2日よりスタートする。
今春にはテレビアニメ「鬼滅の刃 柱稽古編」の放送が予定されており注目が集まる。愛知県の佃煮メーカーでは、いわし製品を製造するメーカーが数多く存在、「いわし甘露煮」「いわし生姜煮」「明太いわし」「梅いわし」「いわし味噌煮」など各社がこだわりのラインナップを展開している。
【2024(令和6)年1月11日第5180号13面】
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