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佃煮女子 2023

2月11日号 佃煮女子インタビュー

株式会社寺岡銈吉商店 代表取締役 寺岡舞 氏

佃煮を若い世代へ
「キャンプ飯プロジェクト」に参加
 創業より107年の歴史をもつ老舗佃煮メーカー・株式会社寺岡銈吉商店(静岡県焼津市)。マグロやカツオの角煮を主力とする同社だが、4代目の寺岡舞社長は若い世代の佃煮離れが進む中、「佃煮ではない佃煮を作って佃煮を食べてもらいたい」と新製品開発に意気込む。昨年7月にはその活躍が認められ、静岡県の川勝平太知事から知事褒賞の表彰を受けた。寺岡社長に新たなプロジェクトや今後の方向性について聞いた。(藤井大碁)
   ◇    ◇
――社長ご就任までの経緯。
 「今年で社長に就任して8年目になる。家族が代々守ってきたものを伝えていくことは、私しかできないので、大学で進路を決める際から家業を継ごうと考えていた。大学卒業後、築地の水産卸売会社で4年間修行し、家業に入った。幼稚園に通う前から祖父と焼津港へ朝の競りに行くのが日課で、今の私があるのは祖父の愛情や焼津のおかげ。96歳になる祖父は今でも健在で、佃煮のことをたくさん教えてもらっている。すんなり家業を継ごうと思えたのは、そんな祖父や店舗を一生懸命切り盛りする母の背中を見て育ってきたからだと思う。現在は、弟が製造面を担当してくれており、二人三脚で事業を営んでいる」
――貴社の強み。
 「なまり節からつくる焼津伝統の角煮づくりを継承している。マグロやカツオの角煮は、一度焙乾にしてから炊き上げることで、身が崩れず、長期保存が可能になる。この製造方法を創業から100年以上続けてきた。伝統を守るだけでなく、女性ならではの視点で、新たなプロジェクトにもチャレンジしていきたい」
――新しい佃煮の売り方。
 「毎週水曜日限定で、出来立ての佃煮を『生佃煮』として直営店で販売し始めたところ好評で、地元スーパーにも卸すようになった。佃煮を惣菜感覚で手軽に食べてもらえるため、若い世代からも人気を集めている。また、新たに立ち上げたオンラインショップは、コロナの影響もあり売上が伸長している。シニア層の方も意外にネットで購入して頂くケースが多く、顧客の裾野が広がっている」
――新商品を発売する。
 「マグロとカツオ以外の原料も使用した佃煮製品の第一弾として、『soft 塩まぐろ』、『vinegar 味噌さば』、『smoke 追いかつお』など地元素材に特徴を加えた商品を4月に発売する。野菜を入れたシリーズは前述の定番3品に加えて季節ごとに順次発売を予定している。容器には、リサイクルできる環境に優しい素材として、あえて瓶詰めを採用した。若年層は環境問題に関心が高いと感じるので、共に環境のことを考え、サステナブルな活動を通して弊社のことを知ってもらいたい。まずは地元マルシェなどで若い世代に向けて販売していく予定だ」
――焼津市の新プロジェクトもスタートする。
 「拡大するアウトドア市場に焼津の水産加工品を売り込むことを目的とした焼津市などが主催する『やいづキャンプ飯プロジェクト』に参加している。3月4日に焼津港で開催されるキックオフイベントで新商品をお披露目する予定だ。佃煮は調理がいらず、開けてすぐに食べられるため、キャンプ飯にも適しており、若い世代に食べてもらうきっかけになるのではないか」
――昨年、7月に知事褒賞を受賞した。
 「県内の水産業において、女性経営者は珍しいようで、そのロールモデルとして、静岡県の川勝知事から表彰して頂いた。知事からこうして評価して頂いくことはとても光栄なことで、これを励みにさらにステップアップしていきたい」
――今後について。
 「お米離れと良く言われるが、先日新聞で、若い人ほどお米を食べており、逆にシニア層が食べなくなっているという記事を見た。それが自分的には意外であると同時にすごく嬉しくて、まだまだご飯のお供である佃煮の可能性を感じている。ただ、これまでと同じことをやっているだけではダメで、佃煮ではない佃煮を作って、佃煮を食べてもらう、ということもやっていかなければならない。今は漁業者の減少もあり焼津の街が寂しくなっているが、街に活気が戻るように若手事業者が頑張り、街に恩返しをしていきたい」
【寺岡舞(てらおか・まい)氏】 1987年静岡県焼津市生まれ。専修大学経営学部卒、大都魚類に勤務後、寺岡銈吉商店入社。2015年より代表取締役。
【2023(令和5)年2月11日第5119号9面】

株式会社寺岡銈吉商店
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