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日本漬物産業同友会 2020

9月11日号 原料対策委員会

原料対策委員会の参加者
 
 

「変動相場制」導入を WEB会議で課題共有

日本漬物産業同友会(宮前有一郎会長)は9月9日、原料対策委員会(梅澤綱祐委員長)を同会では初となるWEB会議の形で開催。全国の30社が参加し、漬物市況、浅漬、梅干、生姜、楽京、塩漬け野菜、沢庵と原料別に近年の作付状況や原料価格の変動、今後の見通しを中心に情報交換を行った。委員会は遠藤栄一副会長の司会進行で宮前会長が開会の挨拶を行い、「コロナの中、このような形での開催とさせていただいた。これだけ多くの幅広いジャンルの方に参加していただき、感謝している。天候不順は日本だけではなく、アジア、世界で発生し、多くの農産物がかつてないほど厳しい状況となっている。我々のお客様や消費者へ正しい情報を伝えられるよう、情報を交換して意義ある会にしたい」と開会を宣言した。新会員紹介で中央容器株式会社(愛知県大府市)の栗田俊郎社長が紹介された後、梅澤委員長が挨拶を行い、「WEBでの委員会となったが、30社の方に参加していただき、大変ありがたいと思っている。近年の原料状況と今後の見通し、コロナの影響などについてお話を聞きたい」と委員会を進めた。今年は新型コロナウイルスと天候不順の影響が大きく、新型コロナでは緊急事態宣言が発出されたことで外食向けの業務用製品や観光地の土産品製品の動きは低調となった。天候不順においては暖冬、気象庁が「令和2年7月豪雨」と命名するほどの長雨、梅雨明け後の記録的な猛暑など、農作物の生育に多大な影響を及ぼしている。世界を見ても近年は恒久化する異常気象をはじめ、原料野菜の流通の変化によって価格が高騰する流れとなっている。原料の確保、製品の安定供給は今後も大きなテーマとなっているが、原料価格の上昇に伴う価格改定ができているとは言い難い状況が続いている。青果のように仕入れ価格によって売価が変わる売場もあるが、「加工食品」は半年前の商談で決まった価格で納入しなければならず、大きなリスクとなっている。同委員会では「変動相場制」の導入を訴える声が上がり、業界を上げて取り組まなければならない課題を共有する場となった。
 
【浅漬】
4月の緊急事態宣言以降、給食の停止やインバウンド需要の減少でホテル、外食、観光地は大きく落ち込んだが、スーパー、量販店の動きは良く、食品デリバリーも好調だった。5月25日に緊急事態宣言が解除され、外食は少しずつ回復していたが、感染者が再び増えて売れ行きも先止まりとなった。その後、巣ごもり消費は落ち着いてきた。巣ごもり消費で売れ行きが良かったのはカレー、麺類の付け合わせとなる福神漬、紅生姜、沢庵一本漬。その他、免疫力アップにつながる、ということでぬか漬やぬか床、キムチが売れた。キムチは過剰とも言える発注が届き、原料高騰の中、メーカーは苦労した。キムチの供給については力が弱いところの供給率が低く、力のあるメーカーの供給率は高かった。6月から8月は長梅雨と日照不足の影響で野菜価格が高騰。その中で胡瓜のカット、水なすのカットとホール、なすの2本入りが売れた。梅干は昨年並みだったが、梅雨明け後は暑くなったので活躍した。
浅漬原料は昨年末から2月まで順調に推移していたが、3月は野菜不足となった。暖冬で白菜が早く育ち、上手く回らなかった。4月から新物が出てくるが、市場価格で6400円という価格が出た。通常は1200円前後。漬物業を50年やっているが、こんな高値になったのは初めてのこと。6、7月は長雨と日照不足で野菜全般が高くなり、契約していても契約通りに入ってこなかった。瓜、胡瓜、茄子は順調で、その他は普通の作柄だった。浅漬メーカーは天候産業なので、変動相場制を採用してほしい。製品価格を上げられないと買い上げ価格も上げられないので、農家も原料を作ってくれなくなる。全漬連としてそのような対応が必要だと感じている。
 
【梅干】
今年の紀州産梅の作柄は平年の半分。暖冬から雨不足と天候の要因が大きい。作柄は全国的に悪く、青果価格も高騰した。コロナで梅や梅酒を漬ける家庭が増え、スタートから生梅価格が高かった。メーカーが生梅を仕入れて自社で漬ける需要も高まった。安価な原料を調達するために生から原料を調達して自社で塩漬する流れとなっている。従来は農家が原料の生産を行っていたが、高齢化が進み、収穫、漬け込みの作業が重労働ということで、漬け込み量は減少傾向にある。作柄が悪い上に生価格の高騰が重なり、原料も大変な高値になった。多い年では300万樽(1樽〓10㎏)漬けられていたが、今年は100万樽もないと見られている。中国梅は平年並みに漬け込まれており、価格的にも昨年と変わらない。国産が足りないところは中国産の製品でカバーする流れになる。売れ行きは8~9割。業務用は弁当、外食需要が減ったので減少した。通販はネット販売を中心に好調だった。
群馬県では昨年、大雹害が発生したが、今年も主要産地の3分の1で降雹があった。かりかりの加工用原料の収穫は5月17日から、市場向けは24日からスタート。市場向けも最初から高値となった。今年の作柄は昨年よりは良いものの、例年の3~4割減。単価も急激に上昇している。県全体の数量は前年比121%だが、豊作年の半分程度。金額は前年比165%、市場の単価は前年比137%のキロ523円。白加賀も数量は前年比281%だが、平年の1~2割減。金額は前年比310%。単価は前年比110%の525円。過去最高となった昨年の477円から50円アップとなった。
 
【生姜】
100ドルを超えた2014年並みに原料価格が高騰する見通し。タイは100ドル、中国南部は89ドル、山東省は69ドルと予想。アジア圏における生鮮生姜不足のためタイに買い付けが入ってきことが原因。塩蔵の確保が難しくなっている。タイの価格は18バーツでスタートしたが、今は25バーツでも集めにくい状況となっている。中国南部も高い状況が続いている。生姜マーケットの相場を握っているのは山東省の製品メーカー。コロナ禍でメーカーの在庫が出ていないため、日本メーカーが高い原料を購入すると、山東省メーカーにとってはチャンスとなる。動向を見ながら慎重に対応しなければならない年になる。1ケース(45㎏)の価格が100ドルになると原料代だけで25ドルになり、製品にすると1㎏400円以上となる。市場に対して業界を上げて理解を求めていく必要がある。業務用の動きについては、3月下旬から5月までの売上は半分になった。スーパー関係の商品も含めると4月と5月は3割減。
塩蔵生姜価格に大きく影響するのは山東省の生鮮マーケットの動き。山東省の生姜に対するニーズは高まっており、作付も増えている。だが、生鮮生姜が不足するなどの問題が発生すると、アジア全体の価格に影響が出てくる。気象などの影響も毎年ある中で、南アジアのスパイスメーカーの材料を集める商社がかなり入ってきている。工場に入る価格がキロ25バーツになると最終製品は100ドルになるのだが、スパイスメーカーは30~50バーツで買っても問題ない。50バーツになると200ドルの原料になるので、お客様に無料で食べていただく環境を維持するのは困難になる。タイが100ドルになると前年比で1746円、福建省は2035円、山東省は967円の価格差が出てくることになる。10㎏の製品にすると、原料代だけでタイは437円、福建省は509円、山東省は242円上げないといけなくなる。今後も厳しい状況が続く見通しで、適正価格の販売が重要となる。山東省のメーカーとの競合が多くなっていて、下がった時には価格も下げるといった形で、変動制の形に持っていきたいと考えている。
※文末に価格推移資料掲載
 
【楽京】
2019年産は収穫量が少なく、相場も高騰。原料確保に苦労した。原料価格は上がっているが、製品価格に転嫁することはほぼできていない。2020年産は生価格が高かった。農家は栽培意欲が高く、作付面積は少し増加。収穫量は悪くなかった。天候も6月まで安定しており、品質も良い。生価格は少し下がったが、その他の諸経費が上がっているのでトータルの原料価格としては下がっていない。売れ行きについては1㎏、500gの業務用が厳しかった。市販用はSM、ドラッグストア、100均ショップ、雑貨屋などで好調だった。全体的には前年並みか若干下がるくらいと見ている。昨年は10月から1月まで低調。コロナ下では、家で食べるカレーの需要が増えて110~130%で推移した。
国産の作柄は中粒傾向。青果価格は変動があったが、契約の価格は変わらない。量は潤沢。コロナの影響では、国産製品がお土産になっていることが多いため、影響を受けている。
 
【塩漬け野菜】
中国産四葉胡瓜の栽培面積は単価が安いため栽培意欲が低く、前年比10~15%減。ときわ胡瓜は昨年と同じ栽培面積。生育環境は概ね順調で、生価格も大きな変動はなく昨年と同等。塩蔵についても若干の値上がりの可能性はあるが、昨年と同じ状況となる見通し。中国産の茄子も大きな変動はない。国産胡瓜は長梅雨のため、九州では予定数量の半分程度となった。関東、福島も前年より不足気味で価格も上昇傾向。市況としては福神漬、生姜、メンマなどファミリー向けのアイテムの動きが良かった。巣ごもり需要で4月と5月は売れたが、直近では大きな変動がない。
中国ではコロナの影響で政府の工場規制がされなかったため、小規模の漬物工場も稼働した。茄子は市場の方が高く売れるので大きくして出されている。小茄子、仙台中長茄子などは遼寧省に産地が移っている。
にんにくの原料は確保できた。価格は下がる見通しだったが、徐々に上昇してきて現在は想定以上の価格を提示されている。最終価格は先延ばしにして交渉している。以前の価格にはならないと思っている。
 
【沢庵】
干し沢庵は農家の引継ぎが上手くいっておらず、収量は年々減っている。当社では1年分確保できている。3月と4月は原料出荷ベースで130%になり、このままのペースでいくと原料切れの不安があり、6月から1本ものはNB、PBともに出荷調整を行っている。
九州では台風で8月上旬に蒔いたものが流されたので蒔き直ししたが、秋大根の収穫には間に合う見通し。埼玉県では沢庵を作っている生産農家の減少が課題。意欲のある農家はハーベスタを導入して収穫作業を行っているところもある。
 
【その他】
コロナの影響で巣ごもり需要が増加し、福神漬、メンマは付け合わせとして好調に推移した。全国チェーンの大手スーパーの数字は非常に良く、数字が引っ張られた。業務用は厳しい環境が続き、今も昨対には届いていない。野菜ペーストも業務用が主となっているが、伸びていない状況が続いている。今後は巣ごもり、テイクアウト需要が伸びていくと予測しており、スーパー関係の惣菜コーナーへの営業を強化している。大根おろしは好調で、とろろも発売した。時短、簡便がポイントの商品は好調。120%程度の伸びとなっている。
 

2020年度生姜集計表.xls

(2020-09-29 ・ 55KB)

 
【食料新聞デジタル 9月30日号再掲】
【2020(令和2)年9月11日第5033号1,2面】
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