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編集後記2023

【編集後記】3月1日号

変化のシグナル
 「生活者の行動は変わっていないようで変わっている。この価値変容に対応していくことが求められる」。先日開催されたスーパーマーケット・トレードショーの記者会見で全国スーパーマーケット協会の横山会長はこう述べた。
 変化とは分かりづらいものだ。自分の生活習慣が変わっていても、それは無意識で、人から指摘されない限り気付かないということも多い。ましてや人の生活習慣の変化に気付くには、鋭い観察力が必要だ。だがこの変化に気付き、いち早く対応できれば時代ニーズを捉えることができる。
 東京に初めて緊急自体宣言が発令されたのは3年前の4月のことだ。あれから世界は随分と変わった。マスクの着用、手の消毒、体温の測定。こうした表面的な習慣だけでなく、人との距離感やコミュニケーションの取り方、食事のスタイルまで大きな変化が起こった。だがもっと具体的に何が変わったかを突き詰めていくことが大切だろう。
 5月8日のコロナ5類移行から、何が元に戻り、何が元に戻らないか。ひとつ先を予想し、その対策を立てていくことも必要だ。
 東京にも外国人観光客が増え、街の景色はコロナ前に戻りつつある。だが、元に戻らないものもたくさんある。横山会員はWEB講演で「本当に変わるのはこれから」と指摘した。変化のシグナルを注意深く読み取りたい。
(藤井大碁)
【2023(令和5)年3月1日第5121号5面】

【編集後記】2月11日号

「梅干しの現実」3万リツイート
 株式会社梅樹園(生田富哉社長、和歌山県日高郡みなべ町)が公式ツイッターで、梅干しの購入数量が減少していることへ危機感を示し話題となった。
 梅樹園(@Baijuen_Umebosi)は1月10日のツイートで
「梅干しの現実。皆さん、現在梅干し業界がどのような状況かご存じでしょうか。令和元年から令和3年の梅干しの年間消費量※は、1世帯当たり約663gです。(中略)弊社の梅干し倉庫はパンクしており、梅農家さんが作った梅干しの多くは行き場のない状態です」
と綴った(※本紙注:正しくは年間購入数量)。
 1月20日時点でリツイートが2・9万、いいねは6・2万と反響を呼んだ。「思っていたよりずっと少ない」「梅干し業界を応援したい」など、梅干しへの愛を込めたコメントも多く寄せられた。
 「1世帯当たり約663g」とは総務省家計調査の令和元年~3年の平均値を示したもの。家計調査における梅干しの購入数量のピークは平成13年の1053gであり、約6割にまで減少していることが分かる。
 また令和3年のデータで、世帯主の年齢が29歳以下の世帯の平均購入数量は303g、30~39歳で387g、40~49歳で436g…というように年齢が上がるほど梅干しを多く購入している。
 梅干し離れが起きているのは事実だが、希望はある。今回、梅樹園の発信が多くの人の心を動かしたように、梅干しを愛する人は多くいる。
 また「ニッチ産業」であるため、仮に毎年1パック(約150g)多く買ってもらえるようになるだけで大きなインパクトになる。熱中症対策アイテムなど、需要の掘り起こしに期待したい。
(小林悟空)
【2023(令和5)年2月11日第5119号15面】

【編集後記】1月21日号

子ども食堂へ支援を
 子ども食堂は、貧困家庭が利用しているというイメージをいまだに持たれている。多くの場所で食事の提供は行っているが、それだけではない。子どもの居場所づくり、地域コミュニティーとしての役割を担っている。子ども食堂の認知が高まるにつれ、気軽に立ち寄れる場所になっていくのが理想だ。
 4月1日に「こども家庭庁」が設置される。子ども政策の司令塔になり、令和5年度は5兆円規模の予算が付けられた。子ども食堂関連の予算も拡大するとみられ、より活動しやすくなるはずだ。
 政府の財政支援に留まらない。企業や個人が対象のNPOに寄付すると税額控除が受けられつつ、支援できる。支援の輪がさらに広がることを期待したい。
(高澤尚揮)
【2023(令和5)年1月21日第5118号5面】

【編集後記】1月11日号

進む二極化 
 最近、中間価格帯の物が売れなくなっているという話をよく聞く。食品に限らず、衣料品についてもその傾向が見られる。徹底的に安いもの、お得感のあるもの、高くても他にはない価値があるもの、こうしたものが売れているようだ。
 注目すべきなのは、消費の二極化が単純に所得と連動していない点だ。同じ消費者が安いものと高いものを買い分けている。自分にとって、本当に必要なものにはお金をかける。平日はとことん節約して、週末はその分少し贅沢したり、冒険したりする。「ケ」と「ハレ」を消費者がうまく使い分けるようになった。
 二極化は価格だけに留まらず内容量にも見られる。個食、少量化の流れの中、お得感のある大容量品も売れている。大容量品を購入し、小分けにして冷凍保存したり、知人とシェアして節約するというスタイルが定着した。
 こうしたスタイルはミレニアル世代やZ世代が消費の主役となる今後ますます強まっていくことが予想される。
 二極化の流れの中、ハレとケ、どちらの市場で戦うか、両方のニーズに対応するか、中途半端を削除した商品戦略が求められる。
(藤井大碁)
【2023(令和5)年1月11日第5117号17面】

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