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編集後記2022

【編集後記】12月21日号

ステルス値上げ
 令和4年の納刊号となった。
 今年1年間の総括を各社へ取材していると「外食、土産の需要は戻ってきた。値上げ交渉も今までにないほどスムーズに進み売上は確保できているのだが、問題は利益。値上げをしてもコスト上昇をカバーしきれていない」と異口同音の悩みを聞いた。
 日本ではコスト上昇に対し価格を変えずに内容量を減らす手法がよく取られてきた。一方海外では、ゼロではないものの決して主流ではないようだ。
 先日、輸入食品店でお菓子を買った際はボリューム感に驚かされた。国産のお菓子と同じくらいの大きさの袋なのに、持ち上げると明らかに重く、ゆすってもがさがさと音がしないほど中身がきつく詰められていた。
 内容量調整は最近では「ステルス値上げ」としてSNSなどで批判の対象となっている。また内容量を仮に10%減らしても包材費や労務費等を考慮すれば実際のコスト抑制はごくわずかという場合もあり、その有効性に疑問を呈す意見は多い。
 あるメーカーは「今年春は内容量調整を行ったが、コスト上昇に対して不十分だった。これ以上減らすのは満足度の面でも限界がある。来年は価格改定する計画」と話した。来年2月の値上げは既に公表されている分だけで5000品目近い。
 価格が重要であることは間違いない。しかし価格を優先し品質を落としたり、中身が少なくてがっかりさせては本末転倒。商品特性に合った対応が必要だ。
(小林悟空)
【2022(令和4)年12月21日第5115号3面】

【編集後記】12月11日号

2日目のカレー(1月22日は「カレーの日」)
  元々カレーは大好きだったが、本紙電子版に「【公式】カレー部」を立ち上げてから、カレーを食べる機会がさらに増えた。
 それで気が付いたことがある。カレーを食べた日の翌日も、何故かまた食べたくなることはないだろうか。他の料理なら、よっぽどのことがない限り2日続けて食べたりはしない。では、何故カレーだけは続けて食べたくなるのか。
 それは、子どもの頃の記憶からきていると思う。小さい頃から母が作ってくれたカレーは鍋いっぱいで、ひと晩では食べ切れず翌日まで残っていた。その2日目のカレーが、また特別おいしく感じられたものだ。
 2日目のカレーがおいしいのは、たまねぎに含まれるグルタミン酸や、じゃがいものでんぷん、繊維質などがルーに溶け出し、“うまみ”と“とろみ”が加わったコクが生まれるから、と言われている。
 この、「2日目のカレーはおいしい」という子どもの頃の記憶が、2日続けてカレーを食べたくなる遠因だろう。
 ただ、2日目のカレーは香辛料の風味は飛んでしまうので、スパイスを追加すると良い。また、常温で放置しておくとウエルシュ菌食中毒のリスクもあるので、冷蔵庫で保存し、しっかりと温め直して食べることをお勧めする。(菰田隆行)
【2022(令和4)年12月11日第5114号3面】

【編集後記】12月1日号

梅干で疲労回復!
  11月20日にカタールで開幕したサッカーW杯。日本代表は11月23日の初戦で格上のドイツに勝利し、日本列島は熱狂の渦に包まれた。
 続く27日のコスタリカ戦は低調なプレーに終始してまさかの敗戦。1次リーグ突破は12月2日のスペイン戦の結果次第となった。
 1次リーグは中3日の過密日程で行われるため、疲労回復や体のケアが重要となる。日本は冨安選手や遠藤選手らの主力選手が負傷を抱えており、ベストメンバーを組めるかが大きなポイントとなっている。
 そんな日本代表チームをサポートしているのが「梅干し」だ。中田食品は、なでしこジャパンが2012年に和歌山県西牟婁郡上富田町で合宿をした際、梅干しを土産に贈ったことから、日本サッカー協会との交流がスタート。以来、国際大会に出場する男女のチームに梅干しを提供している。今回は「はちみつ完熟梅」27㎏を主力に約35㎏の梅干しを送った。
 日本代表では福島県南相馬市出身の西芳照さんが専属シェフとして帯同し、料理を提供している。中田食品広報課長の小串慎一氏は、「梅干しに含まれるクエン酸には疲労回復効果がある。日本代表では料理素材としても利用されているそうだが、梅干しパワーで1次リーグを突破してほしい」と会社をあげて応援している。
 試合のキックオフは午前4時。梅干しを食べながら応援したい。(千葉友寛)
【2022(令和4)年12月1日第5113号6面】

【編集後記】11月21日号

「足るを知る」の精神
  最近、食べ物を注文する際に「足るを知る」という言葉が脳裏を横切る。以前はラーメンだけでは寂しく、チャーシュー麺など様々な具材が入ったラーメンを注文していた。だが、今はシンプルなラーメンを注文することにしている。
 食材とスープのベストバランスを味わえるだけでなく、素材一つ一つの味わいを吟味して楽しめる。ラーメンに限らず、そばやうどん、定食もそうだ。付け合せや、おかずの数が多すぎると、麺やお米自体の味への注目度が薄れてしまう。品数が少なければ、その分、有り難みがあり、一品一品を大切に味わって食べることができる。そういう意味では、ご飯と味噌汁に漬物と佃煮だけでも、十分に満足ができる組合せだ。
 「足るを知る」は老子の言葉で、「現状を満ち足りたものと理解し、不満を持たないこと」の意。食卓にあてはめるのはやや解釈が違うかもしれないが、世界的な食料危機が叫ばれる中、こうした考えが必要になる日も近いかもしれない。とはいえ、ラーメンを注文する際、煮玉子だけはトッピングしてしまう自分がいる。人間の欲は無限だが、その欲とうまく付き合い、一口一口を大切に味わっていきたい。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年11月21日第5112号5面】

【編集後記】11月11日号

食育で次世代へ継承
  和歌山県漬物組合連合会が毎年10月に行う「梅干で元気!!キャンペーン」の取材を昨年に続き行った。組合員が、県内の学校に紙芝居「梅と梅干しの話」を持参し、クイズを交えながら南高梅の歴史や梅干しの健康機能性などについて講義する。 
 今回訪問したのは白浜町立安宅小学校で、全校生徒が9名、1年生が欠員していた。過疎化で年々生徒数が減り、数十年先に学校が存続しているかは分からない。
 しかし、生徒も先生の数も少ないものの、その分密度の高い関係性を育んでいた。普段の授業では、タブレット端末を使いこなし、教育の機会もしっかり得られているそうだ。
 「梅と梅干しの話」を静かに聞き、梅クイズではしっかり声を出して答えてくれた。「和歌山県は国内の梅生産量の約65%を占める」、「梅の日は6月6日」などの質問に、次々と正解した。
 月3回、南高梅を使った給食を食べ、授業でも時折、梅について教わっているだけあって詳しい。家庭でも梅干しをよく食べ、食育の機会に恵まれている。
 何十年後かに児童が次世代に伝え、ふとその時今回の授業を思い出せばと祈った。(高澤尚揮)
【2022(令和4)年11月11日第5111号10面】

【編集後記】11月1日号

広島の歴史と未来
 広島大会を取材した。先日発刊した広島漬協の創立70周年記念誌の編集を昨年から担当する中で広島の漬物業界が歩んだ歴史を学んだだけに、無事に開催されたことを嬉しく思った。
 大会テーマには「平和」が入っていた。組合が設立されたのは戦後、砂糖の配給を受けるためだった。漬物を作ることすらままならない時代があったことを忘れてはならない。
 式典に寄せられた祝辞には全て「広島菜漬」がキーワードとなっていた。組合による普及促進事業、都市化の進む広島市内で農業を続ける生産者の方々の言葉が思い起こされた。
 また交流会で印象的だったのが、会中に「誰々を紹介してほしい」と何度も依頼を受けたこと。コロナにより停滞していた人と人の出会いが、堰を切ったように動き出すのを肌で感じた。
 広島大会が未来の「革新と伝統継承」のきっかけになることは、間違いなさそうだ。(小林悟空)
【2022(令和4)年11月1日第5110号11面】

【編集後記】10月26日号

ピンチをチャンスに
 政府の全国旅行支援(全国旅行割)が10月11日からスタートした。10月中旬に仕事で和歌山に行く機会があり、全国旅行割の効果を実感した。和歌山への航空機の搭乗率は、行きも帰りも7~8割で、その内の8割以上が観光客だった。
 白浜の土産店では県外からの観光客で賑わい、飲食店も活気が戻ってきていた。コロナの第7波が落ち着き、旅行や外食に行こうという機運が高まっており、各地で特産品を製造する企業をはじめ、日本経済にとっては大きな追い風になる。
 年末年始の人の動きはどうなるのだろうか。円安の影響が大きく、日本人は国内に留まり、海外からの旅行者は増加することが予想され、国内消費とインバウンド需要の復活が期待される。間もなく年末商戦を迎える。ピンチの中にもチャンスはある。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年10月26日第5109号13面】

【編集後記】10月11日号

冷凍食品の進化
 戦後の高度成長期に電化製品の「三種の神器」、テレビ(白黒)・洗濯機・冷蔵庫が一般家庭に普及した。1960年代後半のいざなぎ景気の時代にはカラーテレビ・クーラー・自動車が新・三種の神器(3C)として喧伝された。
 70年代に入ると、電子レンジがキッチンの主役に躍り出た。我が国では70年代中盤に家庭への普及率が10%を超え、現在の普及率は90%台後半を保っている。
 もはや電子レンジは家庭のキッチンになくてはならないものだが、歩調を合わせるかのように進化してきたのが「冷凍食品」だ。
 以前は食味や食感で劣るとされていた冷凍食品も、今では普通に調理したものと区別がつかないほど美味しい。共働き、シニア世代の増加などで冷凍食品の需要は右肩上がりだったが、それが新型コロナウイルスによって一気に加速した。
 イオンリテールは8月30日、千葉県浦安市の「イオンスタイル新浦安MONA」内に、日本最大級(約1500品目)の冷凍食品を取り揃える新業態「@FROZEN」をオープンし、注目を集めた。
 10月18日は、社団法人日本冷凍食品協会が制定した「冷凍食品の日」。この日に合わせたPR活動で、更なる需要拡大が見込まれる。
(菰田隆行)
【2022(令和4)年10月11日第5108号4面】

【編集後記】9月21日号

給食のあげパン
 昭和レトロがブームだ。各地に横丁をテーマにした飲食店街が生まれ、懐かしの給食メニューが楽しめる店も人気を集めている。
 私が小学生の頃の学校給食は、週5日のうち4日がパン食だった。コッペパンが基本で、たまに、あげパンが登場すると教室内に歓声が上がった。だが、それより皆が楽しみにしていたのは毎週金曜日のごはん食だった。わかめご飯とカレーライスが人気を二分しており、その日は、おかわりの声が鳴り止まなかった。
 あれから30年経った。先日、小学生の娘の給食メニューを見てみると、ほとんどがごはん食だ。しかも、ナシゴレン、ピロシキといった海外メニュー、タコライス、石狩ごはんといったご当地メニューなどバリエーションに富んだメニューが並ぶ。9月の献立表を見ると、パン食の日はわずか2日間だけだった。
 自分が小学生だったら羨ましかっただろうと思いながら、献立表の裏面をめくると児童の投票による給食人気メニューランキングがあった。その1位は「あげパン」。昭和の人気メニューは時代を超え、不動の地位を築いている。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年9月21日第5106号7面】

【編集後記】9月1日号

食べ残しを防ぐ
 ある日、昼食で会社近くの中華料理屋へ入った。店内で横の男性がランチセットを頼んでおり、回鍋肉と白米を忙しげに食べていた。
 数分で完食して、お茶を飲んで休憩している。「きゅうりの漬物が丸々残っていますよ」と伝えたくなった。
 それから数日後、定食屋に入ると、別の男性が刺身を白米と一緒に美味しそうに食べていた。「ごちそうさま」と立ち去るが、漬物には1度も箸をつけていない。
 定食の漬物は、おまけと思われているふしがあり、食べ残された漬物が不憫でならない。一方で、ラーメン屋での紅生姜や高菜漬、寿司屋でのガリは、お客さん自らが取るスタイルを取り、いわば能動的に漬物が食べられている。
 すでに定食屋では沢庵や梅干がテーブルに備え付けられているところが多いが、食べ残しを防ぐためにぜひ拡大してほしい。
(高澤尚揮)
【2022(令和4)年9月1日第5104号7面】

【編集後記】8月21日号

最低賃金が上昇
 最低賃金が10月より引き上げられる。東京は31円(約3%)上がり1072円、全国最低だった高知県と沖縄県は33円(約4%)上がり853円になり過去最大の上げ幅となる。
 人件費は企業にとって負担であり、昨今のあらゆるコストが上昇する局面において、この決定は厳しいものになるのは間違いない。
 昨今の値上げラッシュでも国内外での人件費の増大を理由に挙げる発表は多かった。10月の最低賃金引き上げはさらなる値上げのきっかけとなりそうだ。
 しかし、金は天下の回りもの。その給料を受け取る「従業員」も、職場を一歩出れば「消費者」となる。今回の最低賃金引き上げも、物価高騰に対し消費者の家計を守る目的があるようだ。
 消費が少しでも活発になることを期待したい。
(小林悟空)
【2022(令和4)年8月21日第5103号5面】

【編集後記】8月11日号

漬物売場に光を
 日本はロシアのウクライナ侵攻、火力発電の休廃止などの影響を受け、電力不足に陥っている。
 6月27日に関東で梅雨明けが発表されると、気温上昇による電力消費量の増加が懸念され、東京電力管内では「電力需給ひっ迫注意報」が発令。電力需給の逼迫を受け、家庭や企業に節電が呼びかけられている。
 食品スーパーや量販店では、節電及び省エネ対策として、商品棚や売場照明の一部消灯、店頭・店内照明の消灯や照度抑制、空調設備の温度調整等の方針を打ち出している。
 入口付近や一部売場の照明が消え、店内は以前よりも薄暗くなり、室温もやや上昇している。ここで気になるのは、どこの売場の照明が落ちているのか、という点だが、関東の売場を見てみると、漬物売場の照明が落とされているケースが多くなっている。
 生鮮売場や惣菜売場は光が煌々と照らされており、この違いや理由はどこにあるのか。おかずとなる主菜は食卓に欠かせない存在だが、漬物などの副菜はなくてもご飯を食べることができる。主菜と副菜のどちらに光を当てるか、と聞かれれば多くの人が主菜と答えるだろう。
 物価高の影響で財布の紐は以前にも増して堅くなっている。それでも、生活必需品は堅調に推移している。食卓に必要とされる副菜として進化していくのか、主菜となる新商品の開発を目指すのか、進むべき方向性が問われている。いずれにしても、売場に光が差し、明るい未来が想像できる業界であってほしいと思っている。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年8月11日第5102号17面】

【編集後記】8月1日号

新旧野沢菜の魅力
 「昔、スキー場で食べたべっ甲色の野沢菜が忘れられない」という人がいる。確かに私も幼い頃、長野のスキー場で食べた野沢菜は美味しかった、そんな記憶が残っている。その頃は、わさび風味がとても人気で(今でも人気だが)、背伸びしてヒーヒー言いながら食べた思い出がある。
 あれから時は流れ、野沢菜漬は進化した。最近の人気は刻んで昆布と和えた野沢菜昆布。野沢菜のシャキシャキにトロっとした昆布がたまらない。野沢菜の燻製やキムチ、オリーブオイル和えなど新しい食べ方提案も行われている。
 そんな中、注目したいのが地元で食べられてきた故郷の味。べっ甲色が美しい本漬野沢菜はもちろん、野沢菜油炒め、野沢菜きりづけなど、先人の知恵から生まれた食べ方は一度食べたらハマる美味しさだ。
 今回の取材時に良く食べたきりづけは、野沢菜を塩漬けにせず、そのまま調味漬にする食べ方。野沢菜の旨みや食感が楽しめる野趣溢れる味わいで、肉料理などの副菜にもってこいだ。野沢菜漬の天ぷらも地元ではよく食べられる食べ方だが、まだ県外でお目にかかる機会は少ない。野沢菜の魅力、知られているのはまだ一部だ。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年8月1日第5101号11面】


【編集後記】7月11日号

読んでみたい鴎外
 7月9日、東京都文京区立森鴎外記念館を訪ねた。鴎外の作品は、小学生の時に「山椒大夫」を読み、高校の国語の授業で「舞姫」に触れただけである。
 しかし、この7月9日は偶然鴎外の命日で、しかも没後100年、生誕160年の記念すべき日であった。入館券を購入しようと列に並ぶと、目の前の女性が「私は鴎外の遠い親戚です」と話し、親戚の方まで訪ねていた。ファンや親戚にとっては記念すべき格別な日であった。
 鴎外は顔写真から、気難しいエリート、作品からは硬いと勝手にイメージを持っていた。けれども、展示物を見ていくうちに、子供の時間割を手づくりしたり、あちらこちらに顔を出したり子煩悩で気さくな人であったことを知る。
 また、大学卒業時の成績は28番中8番。陸軍で当初希望していたドイツ留学は諦めたものの、就職してからの翻訳の仕事の出来を買われ、ドイツ留学を認められた。その後、30代後半には小倉左遷も経験した。鴎外は実は泥臭い努力家で、決して順調な人生ではなかった。そんな渋い鴎外を今年こそは、読破してみたい。
(高澤尚揮)
【2022(令和4)年7月11日第5099号5面】

【編集後記】7月1日号

鍋に漬物、おやつに佃煮
 我が家では、大鍋で具材たっぷりの汁物を作り、おかずを兼ねて数日に分けて食べるのが定番だ。その具材によく漬物を使う。
 始めは少し薄味に作り、卓上で各々好きなように調味する。2~3日目には具材を再追加してリメイクしたり、全体へカレーを加えて食べきってしまったりと自由自在だ。
 鍋をリメイクするときに便利なのが漬物。浅漬、キムチ、醤油漬、味噌漬など味のバリエーションは豊富だ。漬液ごと入れてしまえば無駄がない。奈良漬は粕ごと入れれば、即席で粕汁風になる。
 生野菜は煮込みすぎるとグズグズになってしまうが、漬物の場合は食感が残るのも魅力だ。白菜漬はシャキシャキ感がずっと残る。煮込んだ沢庵のギュッと噛みしめるような食感は肉にも劣らない存在感を持つ。
 間食には佃煮・煮豆をよく食べる。しっかりした歯ごたえと濃い味付けで、少量でも満足感を得られる。魚や豆が主原料であるため高タンパク質、低脂質。昆布豆などは食物繊維も摂れるためダイエットにも向いている。
 調理済みの食材として、漬物・佃煮・煮豆の食べ方は無限大だ。
(小林悟空)
【2022(令和4)年7月1日第5098号3面】

【編集後記】6月26日号

値上げ先行の妙
 2022年は、空前の値上げラッシュが続いている。
 漬物業界も製造コストの上昇分を価格に転嫁する値上げの動きが秋冬の棚替えから本格化してくると見ていたが、現在までにほとんどの品目で具体的な期間、量目、価格などは提示されておらず、秋冬向けの商談期間は終盤を迎えようとしている。
 取材を行うと全てメーカーが価格転嫁の必要性を訴えている。だが、値上げの商談は進んでおらず、他業界に後れを取っている。
 その理由の一つに、「値上げを先行すると競合に売場を取られる」ということがある。お互いが競合より先には値上げをしない、という考えを持っている限り、値上げがスムーズに行われることはない。
 このような状況下、これまでの通説を覆す事例を耳にした。あるメーカーが4月に先行する形で値上げを案内したところ、そのタイミングでは理解を得ることが困難だったが、6月に入ると多くの小売店から見積りの依頼が急増。
 6月から動いた競合他社より値上げ幅が少なかったことや信頼性を回復できたこともあり、実現性の高い商談が進んでいるという。
 輸入原料や輸入製品は円安の影響も大きく、価格転嫁は急務とされている。重要なのは他社の動きもさることながら、自社の状況を見極めること。漬物業界は大きな決断を迫られている。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年6月26日第5097号10面】

【編集後記】6月11日号

つぼ漬卵かけご飯
 卵かけご飯と「つぼ漬」の組合せにはまっている。
 4月に開催されたCGC合同商談会の漬物コーナーでは、「つぼ漬たまごかけごはん」のレシピ提案により、関東のあるスーパーで1週間に172パックを販売した事例が紹介された。会場で試食して、その美味しさの虜になった。
 このレシピの特長は、つぼ漬のシャキシャキとした強い食感が卵かけご飯にアクセントを加えてくれるところにある。それに、卵の甘みとつぼ漬の甘じょっぱさが相性抜群で、黄色のグラデーションも美しい。納豆を加えても、さらに美味しく食べられる。
 卵かけご飯は、佃煮との相性も良い。卵の甘みと甘辛い佃煮が絡まり、すき焼きに卵を付けて食べるように、コク深くまろやかな味わいが楽しめる。昆布、あさり、小魚、まぐろ角煮、たらこ、様々な佃煮が卵かけご飯に合うが、個人的な好みは江戸前佃煮やしぐれ煮のような辛口の佃煮。濃く強い味わいに卵が優しく絡んでご飯が進む。
 様々な食品が値上がりする中、手軽で美味しい卵かけご飯+漬物、佃煮の可能性は広がっていきそうだ。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年6月11日第5096号3面】


※6月1日号は休載。

【編集後記】5月21日号

豚骨ラーメン熱望
 マンボウが解除となって外食店が通常営業を再開し、単身赴任の毎日の食事には困らなくなった。
 そんな今、禁断症状が出ているのが、子供の頃から慣れ親しんで来た豚骨ラーメンだ。あっさりスープに細麺のあのラーメンは東京ではなかなか味わえない。
 と思っていたが、今更ながらネット検索すると意外とヒットすることが判明。辛子高菜と紅生姜のトッピングは譲れないので、更に絞り込み検索してから出かけてみたい。
(菰田隆行)
【2022(令和4)年5月21日第5094号7面】

【編集後記】5月16日号

プロデューサー型記者
 GWに京都市の京都文化博物館へ「鈴木敏夫とジブリ展」を観に行った。ジブリ映画を世界に広め、またビジネスとして成功へ導いたのは、鈴木敏夫プロデューサーの手腕といっても過言ではない。
 徳間書店で雑誌編集長を務めた鈴木氏は自身を「編集者型プロデューサー」と話す。監督の相談に乗り、作品を理解しつつ、時代の空気を見て観客との架け橋を作るのが役割だという。中でもこだわるのが宣伝。ポスターと新聞広告を作成する際は、制作物のビジュアルとキャチコピーを作りこむ。ビジュアルを紙面、コピーを見出しと置きかえれば、新聞記者もプロデューサー的な役割を担っていると思えてきた。  
 私は「プロデューサー型記者」を目指し、名前負けしないよう精進していきたい。本展覧会は全国を巡回しており、7月からは東京で開催される。
(高澤尚揮)
【2022(令和4)年5月16日第5093号9面】

【編集後記】5月6日号

遠出しない理由
 今年の大型連休(ゴールデンウイーク)は、3年ぶりで緊急事態宣言やまん延防止重点措置による行動制限が無く、各地の人出は大幅に増えた。
 携帯電話の位置情報をもとにしたデータによると、5月3日(憲法記念日)の人出は昨年と比べて東京の浅草が3・6倍、京都の清水寺が3・6倍、大阪の梅田駅が3・4倍。コロナ以前を上回る人出となった地域もあったとのことだ。
 ところが、消費回復にはまだ遠い。観光地の店頭に立つ人々に聞くと、「近隣府県からの小旅行がほとんどで、買物をしていかない。消費意欲旺盛なのは遠方からの旅行や、シルバー層の団体旅行。それらはまだまだ回復していない」と口を揃える。
 遠出を避ける理由は、自身の感染防止以外にも色々とあるだろう。「まん防」が解除された3月末からでは気に入る宿が取れなかったこと、再び感染者が急増して観光施設が閉鎖し退屈な旅行となる心配があったこと、GoToキャンペーンの再開を待った方がお得という節約心が働いたこと…。
 旅行産業の復活には、計画を立てられるという「安心」が必要となりそうだ。
(小林悟空)
【2022(令和4)年5月6日第5092号8面】

【編集後記】4月21日号

値上げ商談の実態
 政府は昨年12月、原油価格などの高騰で原材料費などが上昇する中、大企業から事業を受注する中小企業が適切に取引価格に転嫁できるよう対策を検討する会議を開き、毎年1月から3月を集中的な取組期間と位置付け、対応を強化する政策パッケージを示した。
 岸田文雄総理大臣は企業側に対し下請け企業との間で取引価格を決定する際に十分協議すること、下請け企業に対し適正なコスト負担を伴わない短い納期での発注や急な仕様変更を行わないことなどを要請した。
 価格転嫁交渉を政府が側面から支援する方針が表明され、値上げ商談はスムーズに行われるものと見ていたが、実態は違った。特定される可能性があるのでカテゴリーや品目を表記することはできないが、ある問屋業を営む企業の社長に値上げ商談について取材すると、「メーカーの値上げ分を転嫁して値上げの商談に行ったところ、取引を停止する、と言われた。会社のコストも上昇する中で、完全に板挟みになっている。二重苦どころではなく、三重苦、四重苦の状況だ」と頭を抱えていた。
 原材料費に加え物流、包装資材、調味料、燃料代、電気代が上昇しており、輸入品であれば1ドル130円が目前に迫っている為替の影響も大きい。価格を据え置きにできる方がおかしいくらいの状況となっており、値上げの機運はこれまでにない以上に高まっている。企業を存続させるためには、早急な判断と行動が求められている。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年4月21日第5091号9面】

【編集後記】4月11日号

対面販売のメリット
 今回、調理食品特集の取材で佃煮煮豆メーカーさんを回らせて頂き、感じたのが対面販売のメリットだ。 ある佃煮屋さんではコロナ前に比べ直売店の売上が約4割増加したという。コロナ禍により、地元住民が近所を散策する機会が増え、若い世代も店先の看板に引かれ来店するようになった。店内で佃煮とご飯の相性が良いことを説明することで、購買につながり、その後、若い世代でもリピーターになってくれるケースが多いという。
 自社製品のこだわりやストーリーをパッケージのみで伝えるのは容易ではない。その点、思いやこだわりなど商品価値を伝える手段として、対面販売は有効だ。一度ファンになってもらえれば、その後、通販で定期的に購入してもらうこともできる。値上げが進む今だからこそ、原点に戻り、対面販売に力を入れるのも良いかもしれない。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年4月11日第5090号11面】

【編集後記】4月1日号

SKUへの対応
 スーパーでは、春夏に向けての棚替えが行われた。
 棚替えで注目されるのが「SKU」(最小管理単位)だ。限られた棚の広さでどんな品揃えをするかが、売上にも作用する。特に昨今はスーパーでも都市型の小型店舗が増えてきたため、より管理が難しくなってきていると言える。
 しかし、それをカバーできるのがネット通販だ。以前はSKUから商品が外れると、メーカーに「どこに行ったら買えますか?」という問い合わせもあったが、今では「オンラインショッピングでご購入ください」と言えるようになった。
 ところで新聞も、限られた紙面でどれだけの情報を提供できるか、SKUがあると言っていい。それをカバーすべく、本紙も2014年に「食料新聞 電子版」を開設し、昨年7月からは「食料新聞 デジタル30」の配信を開始した。
 本紙では、その電子版を今月より全面リニューアルする。今後も紙面と電子版を合わせ、より有益な情報を発信していく所存である。
(菰田隆行)
【2022(令和4)年4月1日第5089号6面】

【編集後記】3月21日号

いかなご貧乏
 今年のいかなご漁は3月1日に解禁され、大阪湾は実質4日で終了。播磨灘では昨年より獲れたと聞くが、価格は高止まりで消費者は手を伸ばしづらい。
 明石の魚の棚商店街では、釘煮100gで1000~1200円、いくら旬のものとはいえ、気軽にご飯のお供にできるものではなくなった。
 「いかなご貧乏」という言葉が一昔前はあったそうだ。家庭だけでなくご近所さんに釘煮をおすそ分けするために、小女子をたくさん仕入れ出費していたからだ。
 今は家庭用に出回る数量も減少し、炊かない家が年々増えている。わが家では、今年も購入した釘煮を噛みしめてじっくり味わった。
(高澤尚揮)
【2022(令和4)年3月21日第5088号14面】

【編集後記】3月11日号

緊迫するロシア情勢
 2月24日よりロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した。2週間が経つ今もなお歯止めはかからず緊迫した状況が続いている。
 何か自分にもできることはないかと焦燥感が募るが双方の犠牲者がこれ以上増えないこと、日本や世界へ戦火が広がらないことを祈ることしか出来ずにいる。
 仮に、今のところ日本での生活に変化はないからとこの戦争に目を背け続けるとしても、経済的な影響という形で日常がむしばまれ始めている。化石燃料や鉱山資源、穀物、水産物といった一次資源は既に急騰してきた。対ロシア制裁が長引けば世界経済や金融市場へのダメージも甚大なものとなっていくと見られる。
 新型コロナウイルスにより海外との交流が減っているが、世界は全て繋がっていることを改めて実感させられる。市場原理を超えた所で物価が変動するため、商環境も非常に難しくなっていきそうだ。
(小林悟空)
【2022(令和4)年3月11日第5087号4面】


【編集後記】3月1日号

新しいニーズ
日本で初めてコロナの感染者が確認されてから2年以上が経った。
感染者数は変異株の発生などによって増減を繰り返しているが、マスク着用やソーシャルディスタンスの取組など、新しい生活様式が定着してきている。
感染者が減少傾向にあっても外出や外食を控える人も多く、中食の在り方や方法に変化が見られるようになってきた。
会員制の大型スーパーとして知られるコストコでは、材料が全部揃っている料理キットが人気となっている。
自宅で作るにはハードルが高い本格的な料理を家庭で楽しみながら作ることができる。
私も「豚肉とハーブの塩釜焼キット」を試してみたことがあるが、気軽に外食ができない中で、レストランで食べているかのような気分を味わうことができた。
ひと手間かける時間も楽しみながら美味しい料理を家族で食べる。近年のニーズは、個食や簡便性がキーワードとなっていたが、「おうち時間」が増えたことによって、新しいニーズが生まれてきている。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年3月1日第5086号4面】


【編集後記】2月21日号

ネットスーパー
このところ我が家でもネットスーパーを利用する機会が増えた。配送料がかかることを考えるとリアル店舗の方がお得に買物ができると自分は考えていたが、家内にその理由を聞いて納得した。
子供を連れて買物に行くと、おねだりされて、購入予定の無いものまで購入することになるため、結果的にはネットスーパーで購入した方が配送料を支払っても安く済むというのだ。
確かに、小さな子供を持つ親にとって、子供のおねだりは無視できない。キャラクター商品の前で立ち止まった子供を、従来の買物ルートに連れ戻すのは至難の技だ。説得する時間や労力を考えると、購入するという選択肢を選ぶ親は多い。
だが子供にとってはスーパーでおねだりするのは楽しみで、それを奪ってしまうのもなんだか可哀想な気もする。
しばらくは、平日はネットスーパー、休日はリアル店舗という買物スタイルを試していきたい。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年2月21日第5085号4面】



【編集後記】2月11日号

知って食べると
「知って食べると、もっとおいしい」。ある漬物店で掲げられていた言葉だ。食べ物の背景にある情報や物語を訴求しようとする取り組みの意義を、端的に表現していると思う。
これも受け売りの話だが、情報によって価値が決まる最たる例がワインだ。ワインには色、香り、味わいを表現する表現が数百以上もある。普通なら「飲みづらい」と言われるような渋みも、ワインは肯定的な表現をすることができる。1本数万円でも納得して買う人がいるのは、その背景にある物語や希少性を伝えられているからだ。
諸コストが急上昇している今、食品業界は値上げの判断に苦慮している。安さ以外の魅力を持っていなければ、値上げ後に選んでもらうことは出来ない。「知って食べると、もっと美味しい」という言葉は、一つの道筋となりそうだ。
SMTSで出展される伝統食の魅力も、広く知ってもらうことを願いたい。
(小林悟空)
【2022(令和4)年2月11日第5084号8面】



【編集後記】2月1日号

栽培ユニットに期待
植物工場ユニットによる野菜栽培が広がりを見せている。本紙福岡支局がある福岡市中央区舞鶴に、「GG.SUPPLY」(國村隼太代表)の店舗が昨年12月にオープンした。
舞鶴地区はマンション等が立ち並ぶ住宅地で、同店もマンション1階の飲食店跡地に開店。街中で道路から栽培ユニットが見える光景は、とても新鮮だ。
首都圏のスーパーでも紀ノ国屋、サミットは店内に栽培ユニットを置き、育てた野菜を店頭で販売。西友はバックヤードの空きスペースにユニットを設置し、「店産店消」のキャッチフレーズで販売している。
GG.SUPPLYで販売している野菜は「フリルアイス」など、あまり聞かない品種だが、いずれも食物繊維、カルシウム、βカロチン、マグネシウム、鉄分、亜鉛などミネラル分を多く含んでおり、その健康性をアピールしている。
漬物業界では現在、原料栽培農家の高齢化や後継者不足が大きな課題となっている。漬物の原料野菜がユニットで栽培できる可能性は未知数だが、場所を限定せず人手もかからないメリットは大きく、可能性に期待したい。
(菰田隆行)
【2022(令和4)年2月1日第5083号5面】



【編集後記】1月31日号

組合組織のメリット ローマは一日にして成らず
全漬連は創立50周年を迎え、本紙は制作・印刷として創立50周年記念史誌「あゆみ」の発刊に携わらせていただいた。
本来であれば2年前の11月に創立50周年記念式典が開催される予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を考慮し、翌年5月に延期された。
だが、昨年4月25日、4都府県に3回目の緊急事態宣言が発出されたことを受け、コロナ感染のリスク回避が最優先と考え、また今後の見通しも不透明なことから記念式典の開催は延期ではなく、中止することが決定した。
半世紀という歴史的な節目を祝う式典を開催することはできなかったが、本紙では誠に微力ながら全漬連の創立50周年に華を添えるべく、「創立50周年記念史誌『あゆみ』発刊特別号」を臨時号として発刊させていただくこととした。
漬物業界の取材をしていると、「組合に入っているメリットがない」などと耳にすることがある。しかし、身近な存在として普段から全漬連の取材を行っている我々は、行政との窓口となっている全漬連の役割や重要性を強く認識している。
代表的な例を一つ挙げると、すでに多数の企業が活用している外国人技能実習制度における農産物漬物製造業技能実習評価試験は、全漬連が実施している漬物製造管理士・技能評価試験から段階を踏んでスタートしたもの。同試験は、外国人技能実習機構(OTIT)認定の公的評価システムで、全漬連が試験機関となっている。
外国人技能実習生が「技能実習1号」から「技能実習2号」へ移行するためには、農産物漬物製造業技能実習評価試験(初級)を受検し、合格しなければならない。
「技能実習2号」に移行し、最長3年の外国人技能実習生受け入れが可能となったが、この制度を活用する場合、全漬連が実施している漬物製造管理士・技能評価試験で2級以上の有資格者が在籍していることが条件となっている。
特定技能の外国人を雇用する手段もあるが、人数や賃金等の課題もあり、技能実習制度の活用は今後ますます広がっていくものと見られている。
漬物製造管理士・技能評価試験は、構想から実現まで10年以上の時間を要した。まさに「ローマは一日にして成らず」。先人たちが業界発展を目指し、取り組んできたからこそ今の業界がある。
臨時号は、記念史誌が会員企業の手元に届くタイミングでの発行とさせていただいた。
「あゆみ」と合わせてこの12年を振り返りながら、これからの10年を展望する一助になれば幸いだ。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年1月31日第5082号5面】
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