商品開発や海外展開盛ん
蒟蒻の新たな可能性探る
県内の貴重な水源地=櫛田川源流に程近い三重県中南部の松阪市飯高町。この地で昭和33年から蒟蒻の製造卸業を営む有限会社上野屋は、雄大な自然と清流に恵まれたこの地から、特色ある商品開発や果敢な海外展開を行っている。
昨年(2017年)代表取締役に就任した佐々木幸太郎氏は、販路開拓には高付加価値商品が必要、との観点から麺やスイーツなど多彩なジャンルの商品を生み出す。近年は地元の魅力を伝える商品作りにも着手するなど、取り組みを活発化する佐々木氏に話を聞いた。(門馬悠介)
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‐三代目として代表取締役就任後、気持ちの面での変化は。
「最も意識するのは危機感だ。私が家業に入った2002年前後、インターネットの普及や輸送手段の発達から県内経済が大きな転換を迎えた。県内メーカーは全国展開する大手メーカーとの競争を強いられることになり、それまでの県内市場のみを見据えた商売の難しさが表面化した。その流れが続く中、代表として会社を存続させるため、新たな商品開発、従来のお客様を大切にしながら県外の新たな販路をどう開拓するかを強く意識している」
‐商品開発に取り組むきっかけ。
「私が初めて開発に携わったのが、2008年の三重大学とコラボ商品だ。食感を生かしスライスした蒟蒻を炒め、お肉のように使える商品として販売した。試作や製造現場との調整、売価設定まで全て手探りの状態で、たくさんの失敗があり結果として販売数は思うように伸びなかったが、商品開発のプロセスを一貫して経験出来たことが大きな財産になった」
‐販路開拓の苦労。
「県外での販売は相対的に輸送コストが上がるため、それでも利益が出る、以前より売価の高い商品でなくては商売にならない。闇雲に利益を上げる訳ではなく、良いものを作り続けられる、設備投資やリスク管理を行える仕組みが必要だからだ。子供たちが工場見学に来た際、蒟蒻の値段には原材料・人件費・会社を継続させて行くための費用が含まれていると話すと、すんなり納得してもらえる。メーカー・流通・店舗が利益を上げられるような、付加価値の高い商品作りに苦労している」
‐国内から海外に活躍の場が広がっている。
「きな粉や黒蜜をかけて食べる〝こんにゃくすい~つ〟を、4年前から香港で販売している。これはさしみ蒟蒻の食べ方提案のひとつとして始めたものを評価いただき、商品化に至ったものだ。綺麗な水で作るため蒟蒻の臭みが無く、甘い味付けでも美味しく食べていただける。少しずつだが定着して来たと思う」
‐展示会等で話題を呼んでいる新商品〝香肌(かはだ)麺〟について。
「香港では蒟蒻と言えばゼリーをイメージし、糸こんにゃくは蒟蒻のヌードルタイプと認識する人が多い。そこで、あえてヌードルのジャンルとして提案することで、蒟蒻の良さ・ヘルシーさが引き立つのではと考えた。今は業務用として発売しており、今後は市販用を発売予定だ」
‐ネーミングの由来は。
「地元の香肌峡から名前を貰った。当社が、臭みがなく品質の良い蒟蒻を作ることが出来るのは、綺麗な水があるおかげ。蒟蒻の良さを通じ地域の良さを知っていただきたいという想いを込めて名づけた。蒟蒻は様々な食材の置き換えに提案出来る商材なので、まだまだ可能性はあると考えている」
【2018(平成30)年12月10日第4959号7面掲載】