株式会社ソルト関西
代表取締役社長 山本 博氏
需要は家庭用から業務用へ 売上88億円を突破
株式会社ソルト関西(大阪市中央区)は、平成13年に関西域内の卸売会社6社が事業統合して設立された元売企業。近年は塩元売として培った長年の信頼関係をもとに多角的な経営を展開することで売上を伸ばしている。
代表取締役社長の山本博氏は、現在全国塩元売協会会長、塩元売協同組合理事長の要職を務めており、長年にわたって塩の安定供給、業界発展に貢献して来た功績から、昨年藍綬褒章を受章した。製造・物流コスト増による国内塩の値上げ、食用塩の使用量減少など難しい局面が続く業界の動向や、同社業績について聞いた。(門馬悠介)
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‐昨年から今年にかけての食用塩の動向。
「人口減に合わせ全体としては右肩下がりだが、中でも特に農水産業向けの減少幅が大きい。水産物の相次ぐ不漁や昨年秋の野菜の不作など自然を相手にする業界の難しさを改めて感じる。一方で加工食品業界では比較的安定した量を使用いただいている。またこのところ顕著なのは、家庭用から業務用への需要のシフトだ。家庭用が弱含みしている割には、業務用が落ち込んでいない。今年の年明けなど外食産業の数字が落ち込んだと言われていたが、塩の使用量に影響するほどでは無かった。背景には主婦が働きに出ることで、家庭で料理をする機会が減りそれに伴って中食・外食需要が伸びている状況があると考えている。商品個別に見ると業務用は家庭用と比較すれば幅が少ないので、商品が集約化される傾向になって来ている」
‐商品の分類別に見て好不調の波はあるか。
「塩は業種によって、使用するタイプが異なる。例えば業務用では、野菜加工は野菜に付着しやすいウェットな塩、添加物関係はブレンドしやすいドライな塩などだ。いずれも安心安全を基本とした上で、作業性によって使い分けられている。また全体の分母が非常に大きいため、ひとつのトレンドが使用量全体に影響することが起き難い。強いて挙げるとすれば、家庭用を中心にして近年藻塩が増加している」
‐国内塩値上げについて。
「得意先の各社にご理解をいただき、今年度から約20%の値上げを実施させていただいた。理由として1番大きいのは石炭価格の上昇で、続いて物流費、工場設備を維持するための部材費の上昇がある。国内塩メーカーが強く望まれたことで、非常に骨のある値上げとなった。食品として安心安全というのは大前提であり、高品質な商品を供給し続けていくにはお願いせざるを得ない状況だった。塩は重くて安い、所謂物流費の負担能力が非常に小さい商品であることも理由の一つとなっている」
‐輸入塩では。
「輸入商社の発表を待たなくては具体的なことは申し上げられないが、現状、来年1月からの値上げは間違い無い。輸入塩ではまずソーダ工業用の価格が決まり、次に一般用が決まるといる流れだが、今年の秋口には実際の値上げ幅などが判明するだろう。製造コストの上昇は国内外問わず同じ状況なので、止むを得ない部分だと考えている」
‐適塩に関する取り組み。
「人間は生体機能として、多少塩を多く摂取しても体外へ排出する機能が備わっている。そのため、個人的には過剰に心配する必要は無いと考えているが、消費者へPRする上では〝一律な減塩では無く生活スタイルに合わせた塩の摂取が必要〟という言い方が適していると思う。炎天下の中、力仕事をすることが多かった時代と現代とを比べれば、体が必要とする塩の量は異なる。頭で考えて減塩するのではなく、舌で美味しく感じられる食事を摂ることが適切な塩分摂取に繋がる。塩は人間の生命維持に欠くべからざるもので、我々業界に携わっている者としては、そうしたものを扱っている誇りを持って臨むことも必要だ」
‐全国塩元売協会、塩元売協同組合としての活動。
「塩と暮らしを結ぶ運動(くらしお)には、協会・組合として協力している。業界団体としての我々の強みは、全国各地域に会員組合員企業があることだ。昨年は6企業が塩事業センターと業界団体に協力いただき、それぞれの地域で開催されるイベントに出店した。今年も引き続きこうした活動を続けて行けるよう、各企業に話をしている。当社でも京都府漬物協同組合、滋賀県漬物協同組合にお声掛けいただき、勉強会やイベントに参加させていただいた。それぞれの地域に根ざしながら、塩を使用していただいている業界とタッグを組み、正しい知識を普及出来るよう取り組んで行きたい」
‐減塩商品について。
「各社が何度も取り組んできたものの、中々定着が難しいジャンルだというのが正直な印象だ。理論としては正しい商品だが、食べ続けてもらうにはそれ以外の要素も重要だ。品揃えとしては必要なジャンルだと思うので、引き続きアピールして行く必要があると思う」
‐御社の業績。
「2017年度(3月末決算)は売上が88億円を超え、2016年度から約6億円の増収で着地した。日本海側を中心とした大雪の影響で道路用の需要が大きく増えたことが大きいが、一般用も少し増加した。ただし物流費の上昇というコスト増要因があり、増収増益こそ達成出来たものの利益率としては厳しい部分があった。グルソーや砂糖といった調味料関係など塩以外の部門は金額が年々増えて来ており、もう少しで20億円に届くところだ。塩を通じた優良取引先が多くいらっしゃるので、今後もお客様のご要望をお聞きして、こうした塩以外の部門を増加させて行きたい。塩の物流を生かし、他の商品を一緒に配送するのが理想だ」
‐初めて売上が80億円を突破した昨年以降躍進が続いているが、その背景は。
「我々のような業態は、人を基本とした会社でしか成り立たない。お客様の要望に応じて取り扱い品目を増やして行けるのも、営業社員の人の力に尽きる。社員には視野を広く持って仕事をして欲しいと考えているので、部署を限定せず社員が交流出来る場、コミュニケーションの機会を作れるような企画を実施している。若手社員同士で集まり、新しい仕事をしようとする動きも出て来ており、期待しているところだ」
‐今後の取り組みや課題について。
「日本国内の人口が減少していることを考えれば、海外に目を向けるのはひとつの考えだ。いきなり現地と直接のやり取りは難しいだろうが、新たな市場の開拓には社を挙げて取り組むべきだと考えている」
【2018年6月25日第4939号11面】