「トップに聞く」
関東屋またの食品株式会社 代表取締役社長 俣野貴彦氏
野菜を軸に惣菜進出 「食べたい」思わせる商品提案
関西トップクラスの規模で漬物の製造・販売を行う、関東屋またの食品株式会社(本社=兵庫県伊丹市)。カット野菜・サラダ等惣菜の製造にも力を入れており、現在では売上高の2割近くまで成長した。今回、俣野貴彦社長に漬物と惣菜についての考えや、今後の方針を聞いた。
(小林悟空)
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‐5月に決算を控えているが、状況は。
「昨年度と比べ売上、利益とも改善する見込みだ。売上の約7割を占める卸売業において、昨年は梅干やキムチの動きが良く、全体を押し上げる結果となった。また製造事業については前期に比べて漬物、惣菜とも原料である野菜の調達が容易であったことが改善に大きく寄与した」
‐惣菜進出の背景。
「人の胃袋には上限がある以上、漬物のライバルは漬物だけでなくあらゆる食品だと言える。日本は人口減少、高齢化でますます小さく、少なくなる胃袋の取り合いになる。食生活の欧米化や原料野菜の価格高騰等の要因から漬物が苦境に立たされている状況下で、培ってきた技術やネットワークをどう生かしていくかを考えた結果、カット野菜やサラダ等、野菜を軸とした惣菜の進出へ行き着いた。今では漬物を大きく超える製造額に成長している」
‐漬物売場と惣菜売場の違い。
「来訪者の商品の選び方が違ってくる。漬物売場の場合、元々漬物に馴染みのある人が目的を持って訪れる。味や価格を見る目もシビアだ。一方惣菜の場合、その日食べたいものをその場で見つける買い方になるので、どれだけ魅力的に見せられるかが重要になる。これまで漬物に関心がなかった人に対しても偶然の出会いを演出できる」
‐商品提案のポイント。
「食品を選ぶ動機は主に『食べたい』『(家族や友人に)食べさせたい』『食べなくてはならない』であり、どこに訴求するか。昨年は異常な猛暑により、梅干は体を守るため『食べなくてはならない』ものとなり、飛ぶように売れた。健康機能性は漬物の強みの一つであり、業界で進める『発酵漬物』認定制度にも期待している」
「『食べたい』『食べさせたい』と思わせるには、より深く消費者の欲求に寄り添う必要がある。いま弊社では営業、商品開発ともに若い社員が男女で活躍していて、見た目も味も細やかな気遣いのある商品が増えてきたと思う。それでも消費者の心理は複雑で、最終的にはトライ&エラーで微調整を繰り返している。漬物もそうだが、特に惣菜については週単位で商品提案を行っている」
‐野菜価格が不安定だが、どう利益を確保するか。
「弊社では契約栽培を推進しているが、前提となるのは、農家と弊社双方にメリットのある契約関係だ。異常気象が毎年起こる中で、安心して農業を続けられる環境を整えていく必要がある。また、農家同士の交流会や勉強会を開き信頼関係を構築するとともに、自然環境の変化に対応していかなければならない。農業は担い手不足、高齢化が心配されるが、やる気のある農家も多い。大口の需要者である我々が率先してサポートをしていくべきである」
‐今後の戦略は。
「価格ではなく見せ方、売り方で訴求していけるよう力を入れている。スーパーマーケットに加えドラッグストアやECが食品購入の選択肢となった状況下で、価格競争一辺倒になれば全員が疲弊していく。『食べたい』『食べさせたい』と感じ、選んでもらえる価値ある商品作り、品揃えを目指していきたい」
【2019(平成31)年4月15日第4974号1面】