本文へ移動

インタビュー2020

10月1日号 トップに聞く

株式会社Kスリー 代表取締役社長 佐藤 潔氏

幅広い国産原料を供給
全量買い取りで信頼得る

株式会社Kスリー(佐藤潔社長、福島県福島市西中央)は、国産原料を幅広く取り扱う原料メーカー。生産農家との確かなパイプを構築し、全国のネットワークを生かして生原料及び塩漬原料の安定供給を行っている。7月21日には長野営業所(近藤貴彦所長、長野県安曇野市穂高7229‐14)を開設し、業容とサービスの充実を図る。産地と販路の拡大を目指す佐藤社長は、改めて信頼関係の重要性を強調した。(千葉友寛)
◇     ◇
―原料動向は。
「福島県と関東のハウスものの生胡瓜が入ってきていて、11月中旬まで続く。青森の青首大根は6月下旬から10月まで続き、その後、11月から5月までが鹿児島県産となる。同時期は九州産の二十日大根も入ってくる。熊本産の筑陽茄子は通年で栽培している」
―コロナの影響は。
「4月と5月は業務用、物産関係が全く動かなかったので、弊社も大きな影響を受けたが、6月から需要が回復してきたので、8月までの3カ月でかなり巻き返し、前年並みの売上まで戻すことができた。胡瓜、茄子、青首大根を中心にしながら取り扱う品目を絞り、集中的に生産している。産地は東北から九州までごく一部の地域を除いた産地とパイプを構築し、農事法人組合やJA、農家に生産を行っていただいている」
―春から夏にかけて野菜の作柄が悪く、生価格も高騰した。
「胡瓜は3月から7月が関東のハウスもの、4月から6月が福島のハウス、7月から9月下旬までが福島の露地、9月中旬から11月中旬までが福島のハウス、9月上旬から10月下旬までが関東のハウスという流れとなる。今年は長雨、日照不足などの影響で作柄は悪かったが、弊社では生産農家を増やしていたこともあり、契約通り欠品を出すことなく100%供給することができた」
―生産者と信頼関係を築く方法について。
「野菜は天候の影響を大きく受けてしまい、価格については暴騰することや暴落することが多々ある。弊社ではどのような状況でもシーズンの最後まで相場に関係なく、約束通り買い取らせていただいている。時には多く生産できてしまうこともあるが、契約分しか買わないと生産意欲が下がるため、できたものは全量買い取りするようにしている。余った野菜は協力工場で塩漬し、本漬原料として在庫にしている。そのような取組みを続けているので農林水産省傘下の公益財団法人流通研究所より登録業者の認定を受けることができたし、生産者からの信頼につながっていると思っている」
―産地と販路の拡大について。
「7月21日に長野営業所を開設した。同営業所では長野、静岡、愛知、富山、石川、滋賀、京都方面をフォローさせていただき、既存のユーザー様に加えて新規開拓にも力を入れていく。弊社は生、塩蔵、チルド原料、調味料、製剤を取り扱っており、漬物、惣菜、醸造企業に納めさせていただいている。多岐にわたる分野で対応できるのが弊社の強みなので、何か困っていることや聞きたいことがあればいつでも気軽にご連絡をいただきたい」
【2020(令和2)年10月1日第5035号7面】

10月1日号 トップに聞く

株式会社五味商店 代表取締役 社長 寺谷 健治氏

〝こだわり食品〟コロナ禍も好調
「健康・安全安心」ニーズに対応

「安全安心」「美味しい」「本物」「健康」といったテーマで全国から厳選した〝こだわり食品〟を紹介する株式会社五味商店(千葉県我孫子市)では、前期売上高が過去最高を記録、今期もコロナ禍の中で売上は好調に推移している。同社の寺谷健治社長に消費者ニーズの変化や中小食品メーカーに今求められることなどについて聞いた。(藤井大碁)
――直近の消費動向。
「昨年10月の消費増税の影響で食品スーパーは今年1月までマイナス成長が続いていたが、2月からコロナの影響でプラスに転じた。増税により可処分所得が2%減ったものの、給料は変わらないため、消費者は限られた所得の中で賢い消費をしなければならなくなった。それにより、安く買えるものはできるだけ安く買うが、自分の健康のために必要なものは少し高くても買うという消費の二極化が生まれている。中小メーカーは価格では大手メーカーにかなわないため、健康・安全安心という現在の消費者ニーズに沿って、自分たちの強みを生かした独自性のある商品を作っていく必要がある」
――前期売上は過去最高を記録した。
「前期(2019年4月~2020年3月)は前年比106%と過去最高の売上を記録した。今期もコロナ禍の中、ここまで前年比105%と好調を持続している。主要取引先であるスーパーが好調なこと、節約志向が高まる中たまには特別な食品が食べたいというニーズがあること、旅行に行けない人向けに地域フェアのオファーがあることなどが主な要因となっている。百貨店は一時的な休店などもあったが、少しずつ売上が回復しており、雑貨店などライフスタイルショップへの販売も年々拡大している」
――ニーズの変化。
「これまでは〝国産、創業〇〇年”といった謳い文句だけで購入してもらうことができていたが、今はそれだけでは買ってもらえなくなっている。消費者の関心が〝免疫力アップ〟など健康な身体づくりに移っている中、産地や老舗のアピールだけではニーズと噛み合わなくなっている。例えば、食物繊維やイソフラボン含有など、健康性のエビデンスをもっと具体的に提示しながら販売していく必要性があり、消費者の価値観とどうリンクさせるかが、販売戦略のポイントとなっている」
『スーパーマーケット・トレードショー2020』の五味商店「こだわり商品コーナー」にて
――今年の「こだわり商品展示会」はコロナの影響で中止となった。
「バイヤー側は展示会が無いため新商品情報が入らず不安を覚え、メーカー側も展示会に向けて開発していた新商品の発表の場が無く困っている。弊社では定期的に発行する情報媒体で、新商品情報などを提供し、依頼があればサンプルを発送するというスタイルで商談を進めている。バイヤーも足下の売上は良いが、それがコロナという外的な要因によるため、いつまでこの状況が続くか見通しが立たず、今後の戦略を立てるのに困惑している。我々も今は種まきの時期と捉え、将来の売上に貢献できるよう積極的な情報発信を続けていく」
――今、中小食品メーカーに求められること。
「マーケティングを経営の中に、取り入れてもらう。この作業をしなければ、いくら優れた商品を作っても売れない。中小食品メーカーは製・販・配のうち、『製』だけに力を入れがちだが、営業力の強化や流通の仕組みを理解し、『販』や『配』をしっかりとカバーすることも物を売るためには必要だ。行政もこのことに気付き始め、最近では商品のブラッシュアップや販路開拓だけでなく、経営改革の支援に力を注ぎ始めている」
――今後に向けて。
「消費者のライフスタイルは日々向上しており、食品のより具体的な情報を知りたいという欲求が高まっている。健康・安全安心という現在の消費者ニーズに対応しながら、さらに具体的な健康のエビデンスを付加し、その価値をお客様が求めているものとリンクさせていく。我々としても商品価値をどのように伝えるかが今後の大きなテーマになっていく」
【2020(令和2)年10月1日第5035号12面】
 

9月21日号 この人に聞く

株式会社共栄商会 常務取締役 金原正典氏

コロナ禍でWEB売上急伸  わさび漬の可能性感じる機会に
こだわりのわさび漬「封印」で知られる菜乃屋・株式会社共栄商会(金原擴社長、浜松市中区)では、金原社長の子息である正典氏が昨年、常務取締役に就任した。同社ではコロナ禍で観光物産関連の売上が落ち込む中、WEB通販の拡充に力を注ぐ。現状や今後の展開などについて話を聞いた。
(藤井大碁)
――コロナ禍の状況。
「我々のメーンのお客様は観光物産関連なので、コロナの影響は非常に大きい。駅やホテル、高速道サービスエリアなどが主要販売先となり、売上は少しずつ回復しているものの厳しい状況が続いている。直営店については浜松駅構内、浜松駅前の百貨店内、工場併設の店舗の3店舗だが、駅は売上大幅減、百貨店は厳しいながらも健闘、直営店は催事を実施するなどして幸いにも好調に推移している。コロナ終息後も以前の状況に戻るのは難しいと思うので、今方向転換できる部分であったり、新しくチャレンジできることをやっていく。その中で、核となるのがWEBを始めとした通販だ」
――WEB通販の取組。
「自社サイト内での通販は以前から行っていたが、2018年に『楽天市場』へ出店、本格的にWEB通販をスタートした。出店してすぐに、林修先生の番組内で『封印』が紹介され、一時的に売上が伸びたが、それ以降は厳しい状況が続いていた。打開策を見出すため、2019年に一念発起し楽天の講座に参加し、売り方のノウハウを学んだ。それを機に少しずつ売上が伸び始めた。その後、コロナ禍の中で、今年5月以降は売上が急伸した。父の日や母の日向けなど贈答用としても需要が増えている」
――家業に入社するまでの経歴。
「大学卒業後、総合楽器店に約20年間務め、楽器販売の営業を行っていた。鍵盤楽器や管弦打楽器などを音大や高校など教育機関を中心に販売していた。家業に入り売るものは変わったが、一環して大切だと感じているのは、商品とお客様の間にきちんと立つこと。お客様のことを気にかけながら、商品のことを熟知していなければいけない。WEBページ1つ作るのも製造現場に入り実際に製造工程を見て、その商品のこだわりがどこにあるのか、ページを開いてくれたお客様にしっかりと伝える必要がある」
――最後に。
「わさび漬をネットで販売することで、従来であれば手にして頂くことができなかった全国のお客様に商品を食べてもらえるようになった。正直、楽天に出店して、売れなかったらこの先わさび漬は厳しいだろうという思いもあったが、売上や顧客が少しずつ拡大し、注文が満遍なく来るところを見ると、まだまだわさび漬にも可能性があると感じている。ネット経由の売上が増加すれば、出荷体制や受注処理など会社全体のシステムを増強していくことも必要になる。今後はそういった課題を乗り越え、着実に売上を増やしていきたい」
【金原正典(きんぱらまさのり)氏】1976年浜松市生まれ。近畿大学商経学部商学科卒業後、総合楽器店に勤務。2016年、共栄商会に入社。2019年より常務取締役。小学校から始めたトランペットの腕前は一流。
【2020(令和2)年9月21日第5034号4面】
 
 

9月11日号 トップに聞く

株式会社みやまえ 代表取締役社長 宮前有一郎氏

海外産原料は高騰見通し  コロナはミニパック移行促進

生姜の総合メーカーとして全国でトップクラスのシェアを持つ株式会社みやまえ(奈良県生駒郡平群町)。2013年より代表取締役社長を務める宮前有一郎氏は、2018年に発足した「日本漬物産業同友会」で初代会長に就任。全日本漬物協同組合連合会でも各種委員を務めるなど漬物業界を牽引する存在として信頼を集めている。今回、宮前氏に海外生姜原料の見通し(9月8日時点)と生姜漬市場への考えを聞いた。
(小林悟空)
‐海外原料の見通しは。
「主産地である中国山東省、南部(福建省)とタイのいずれも生育状況としては悪くないが、収穫が進んでいないことや、他国との競合が原因で、漬物用は価格が20~25%程上昇する見通し。また、品質低下についても危惧している。生姜は収獲時期によって繊維質や水分量が変わり、ガリ用から順にハーフ、刻み、生鮮用へと移るため、収穫の遅れが漬物用としては品質低下に繋がる」
‐収穫遅れの原因。
「最大産地である山東省で生鮮生姜の価格が高騰しており、農家が漬物用の収穫を控えていることが原因。これは2年前に山東省で洪水が起きたことがきっかけだが、根本的にはアジア、中東諸国の人口増加や経済成長による生姜の需要増によるものであり、今後もこの傾向は続くと思う」
‐他国との競合。
「前述の通り他国の成長により生姜の価格も徐々に上がっていくはずだ、また今年の特殊な事情として、新型コロナにより山東省を視察できなかった中東の業者がタイで買付を始めたのだが、彼らが提示する価格は我々を大きく上回っていた」
‐価格高騰の影響。
「予測通り原料価格が上昇すれば、当社としては商品価格を見直さなければ品質を維持することは難しくなってくる。しかし『安かろう悪かろう』の品が出回れば、生姜漬文化に不信感が出てしまうことは確実。日本漬物産業同友会には生姜漬メーカーが複数加盟されているが、生姜漬文化を未来へつなげる視点を大切にしていただきたい」
‐生姜漬の市況。
「当社が主力とする業務用についてお話しする。新型コロナウイルスにより、外食店の卓上でガリや紅生姜の無料提供が大打撃を受けた。特に緊急事態宣言下の4、5月は出荷が50%減少した。その後6月になるとテイクアウトや宅配が流行し、ミニパックの出荷が激増した。現在も外食は完全復活しておらず、テイクアウト対応の有無で店の明暗が分かれている。大袋からミニパックへの移行は人手不足を背景に進んでいたが、今年その流れが加速した形だ」
‐生姜漬の地位向上は。
「寿司や牛丼の〝脇役〟としての地位が主力であるが、当社では紅生姜の天ぷらなどを提案し、全国へ浸透してきた。また唐揚などの調味料兼具材としての提案も進めている。このほか海外での発信も進めていきたい。和食の流行に生姜漬を含め漬物が付いていければ市場はまだまだ拡がるし、本場である日本製への注目は増していくはずだ」
【2020(令和2)年9月11日第5033号6面】
 
 

9月11日号 トップに聞く

遠藤食品株式会社 代表取締役社長 遠藤栄一氏

海外生姜原料さらに上昇  食シーン提案で販売チャネル開拓
業務用がりのトップシェアを誇り、『新がり』、『新がり完成品』の商標登録並びに全国鮨組合の指定商社として広く知られている遠藤食品株式会社(遠藤栄一社長、栃木県佐野市下彦間町)は、業務用から市販用まで、「生姜を食卓に…」のコンセプトでこだわりの生姜製品を提供している。来年、創業60周年を迎える同社の遠藤社長は、新型コロナウイルスの影響で消費の流れが大きく変化する中、メーカーとしても業界としても進化が求められていることを強調した。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐海外産生姜の現状は。
「海外の生姜産地の状況は農家の減少や生鮮向けの需要増加など、年々厳しくなっているが、今年はさらに難しい状況となっている。タイや中国南部は種の価格が上昇し、農家が種を買うことができなかった。また、新型コロナで移動が制限されたこともあり、作付を行うことができなかった。その後の生育環境や品質面に問題はなかったのだが、生鮮の需要が増加したことによってがり用の生姜を集めることができなくなっている。当初、タイのスタート価格は18バーツ前後と見ていたが、25バーツでも農家が収穫して漬けてくれない状況となっている」
‐量の確保が課題となっている。
「漬け込み量は大幅に減少するだろう。1ケース(45㎏)の価格についても昨年の10ドル~20ドルアップになると予測している。昨年も上昇したタイの価格は78ドルだったので、100ドルに迫る可能性もある。タイの価格が上昇すれば、他の産地も上がる。今年は全体的な原料価格の上昇は避けられず、今後の動向を見極めなければならない」
‐値上げは避けられない状況か。
「本来ならば原料価格が上昇した分、適正価格での販売を実施するべきなのだが、中国メーカーの製品がコロナの影響で売れていないこともあり、在庫には余裕がある。ここで安易に値上げしてしまうと、中国メーカーの製品に取って代わられる可能性がある。国内メーカーとの競合もあるが、中国メーカーの動きも注視しながら慎重な対応が求められている」
‐業務用製品の動きは。
「全体的な動きで言えば、3月下旬から全てにおいて自粛ムードとなり、外食も控えるようになったため、4月、5月は半減した。その代わり、巣ごもり消費が増加したので、小売用の紅生姜やテイクアウト用のミニパックの需要が大幅に増加した。その後は回復傾向にあるものの元には戻っておらず、2、3割減の状況が続いている。今後についても冬にコロナの第3波がくるようなことになれば再び自粛ムードが高まり、外食は大きな打撃を受けることになる」
‐今後の対応策は。
「コロナは社内体制を見直すきっかけになった。弊社としてはこれまでのように1つの業務に特化するのではなく、柱を5本作り上げて育てていきたいと考えている。具体的にはこれから動き出していくが、社員には売上が減っても諦めるな、と言っている。社員の給料を下げないことが私の仕事なので、このような状況でも社内の雰囲気は良い。今後はメニューや素材として提案を行い、販売チャネルを開拓していきたいと思っている。がりは寿司、紅生姜は焼きそばやお好み焼きの付け合わせ、というだけではなく、色々な食シーンを提案していきたいと考えている。生姜は汎用性が高く、健康素材としても広く浸透している。そのような意味でも生姜にはまだまだ大きな可能性がある」
【2020(令和2)年9月11日第5033号8面】
 
 

9月11日号 新社長に聞く

九州新進株式会社 代表取締役社長 髙橋宏輔氏

風通しの良い会社目指す  製品歩留まり向上に取組み
新進グループの九州新進株式会社(鹿児島県姶良市)は今年6月、北海道新進アグリフーズより髙橋宏輔氏が新社長に就任した。髙橋新社長に現在の製品動向、今後の抱負などについて、リモート取材にてお話を伺った。(菰田隆行)
◇   ◇
‐コロナ禍の製品動向。
現在、コロナウイルス感染防止で在宅勤務が増え、外食を控えていることもあり、業務用製品は落ち込みが大きい。反面、家庭用の一般商品は伸びが良い。商品は約60アイテム、売上比率は業務用が35%、一般商品が65%。4~7月期の重量ベース前年比は105%、売上の前年比は110%となっている。業務用だけに絞ると、昨対80%となっている。製造品目は干し大根が40%、大根刻みおよび福神漬が35%、高菜漬が25%。福神漬は親会社の新進利根川工場でも生産しているが、リスク分散と運賃コストのメリットを考えて、西日本向けに供給している。
 
‐今後の計画。
既存のカテゴリーに固執せず、いろいろな商品に取り組んでいきたいと思っている。新商品開発について、本社と相談しながら進めているところだ。あとは、初のケースとして大手ネット通販サイトに外部委託し、通販の取組みを進めている。また、ふるさと納税の返礼品にも、地元の姶良市にご協力を頂いて取り組んでいるところだ。
 
‐現在の原料状況。
原料在庫に関しては、以前に比べると少なめに管理している。予測が難しい時期となっているので、実績をよく勘案しながら仕入れを細かく対応している。あとは社内での改善活動を実施し、製品の歩留まり向上をテーマに取り組んでいる。原材料に対する出来高は以前より確実に増えており、必然的に原料の仕入れも少なくなっているという状況だ。
 
‐農家との取組み。
高菜では、農家と「高菜栽培検討会」を毎年実施している。契約生産者に集まっていただき、コミュニケーションを取りながら情報収集して、栽培から漬け込みまでの指導を行っている。ただ今年はコロナの影響で、個別面談という形で実施した。近年、農業では後継者不足が表面化しているが、高菜や大根では若い人が頑張っているところもある。労力が少ない中で効率化を目指し、機械化などを進めて力を入れている。また、大根品種の選定についても、これまで沢庵用大根は下ぶくれの形が多かったが、機械で抜きやすいストレート形状のものが増えてきているようだ。
 
‐外国人技能実習生の取組み。
当社でもベトナム、ミャンマーから計20名の技能実習生を受け入れている。全日本漬物協同組合連合会の2号試験の受検で、期間延長にも取り組んでいる。次年度も切らさずに受け入れ、しっかりと勉強して本国に帰ってもらいたいと考えている。
 
‐グループ企業の「北海道新進アグリフーズ」からの転任だが、北海道と九州の連携計画など。
北海道も九州も地理的に不利で、運賃や消耗品の価格が高い。しかし、どちらも本州には真似できないこだわった農産物は多いと感じている。北と南でなかなか連携は難しいだろうが、両方の工場に携わっているのでノウハウは共有できればと思っている。北海道はじゃがいも加工が中心だったが惣菜も製造していたので、九州の顧客からの問い合わせに対し、北海道に相談しやすくなった。私がこちらに来たことで、北海道と九州に太いパイプができたと感じている。
 
‐今後の抱負。
利益の追求はもちろんだが、風通しの良い会社にしたい。現在は社員とのコミュニケーションをとるため、面談やミーティングを進めている最中だ。食品会社ではマスクと帽子が必須で普段は顔が見えないので、まずは顔と名前を覚えたいと思っている。北海道と九州では人柄も違うが、上司も部下も関係なくものが言える会社にしていきたい。
 
【髙橋宏輔(たかはし・ひろすけ)氏の略歴】
昭和38(1963)年9月24日生まれ、群馬県前橋市出身。東京農業大学卒で管理栄養士の資格を持つ。食品製造の仕事に就きたいと、地元で伝統のある新進に入社した。趣味はオートバイで、いずれ九州をゆっくり一回りしたいそうだ。
【2020(令和2)年9月11日第5033号4面】
 

9月11日号 この人に聞く

丸千千代田水産株式会社 加工品部加工品二課主任 星野一平氏

〝早出しおせち〟拡大傾向 少人数用や個食タイプが増加
今年も年末に向けたおせち商戦がスタートした。コロナ禍の影響で、百貨店や業務用商材の苦戦が続く中、おせち商戦への期待は例年以上に高まっている。今年の傾向や見通しについて、丸千千代田水産株式会社加工品部加工品二課主任の星野一平氏に聞いた。
(藤井大碁)

――おせち商戦の見通し。
「コロナの影響で、海外旅行に加え、帰省出来ない人も多く、自宅でどのように過ごし、お金をどこに使うかというのが焦点となる。こうした後ろ向きな時代だからこそ、あえておせちのような縁起物にお金を使う、という予想もあり、量販店各社でも例年以上に強気の姿勢を見せているところが多い。そういった流れもあり、弊社でも今年は前年比5~6%増を目指していく」
 
――今年の特徴。
「セット物に関しては、おもてなしの機会が減るため、3段重などの大人数向けより、2~3人用の少人数向けや個食タイプのおせちのラインナップが増えている。また、年末に集中する売場の混雑を緩和するため、量販店では〝早出しおせち〟に力を入れる傾向もある。おせち売場は例年、クリスマス後の棚替えによりスタートするのが一般的だが、少しでもお客様を分散させるため、今年は早めに売場を展開する店舗が増えるのではないか。ただ、一般的な栗きんとん製品などは、統一賞味のため日持ちの面で懸念があり、レトルト殺菌された常温で日持ちする商品などの需要が増えることも予想される」
 
――単品おせちの傾向。
「近年、単品からセット物への移行が進む中で、単品にはセット物にはないようなこだわりが求められるようになってきている。例えば、栗きんとんであれば、芋あんに安納芋を使用していたり、栗の産地まで明記したものなど、何かしらコンセプトがある商品の方が打ち出しやすく、バイヤー側としてもチャレンジしやすい商品となっている」
 
――コロナ禍の佃煮の動き。
「4~5月は外出自粛による巣ごもりで、ご飯と相性の良い昆布や海苔、あみの佃煮などの需要が高まったが、弊社では市販用に比べ、鮮魚店や飲食店向けといった業務用の割合が多いため苦戦した。6月以降も業務用の売上はなかなか戻ってきていない。一方で、市販用は前年比微増と堅調に推移している。今月に入り、新米が出始めて、海苔の佃煮などの需要は再び伸びてきている」

――今年は『年末商品合同展示会』が中止となった。
「年末の情報が一番得やすい展示会が中止になった影響は大きいが、電話やメールで積極的な情報発信に努めている。例年以上に提案力が求められており、それが年末商戦の結果にも繋がると思う。事前に試食サンプルを送り、Zoomで商談するという新しいスタイルもスタートしている」
 
――新たな取組み。
「霞ヶ浦では、7月に解禁されたワカサギ漁が不漁のため、シラウオ漁を例年より早くスタートしており、量的にもかなりとれている。ちりめんぐらいのサイズ感で、前浜でとれたものを生炊きし、佃煮にしている。味がとても良く、色合いも薄口醤油で炊くことで黄金色に仕上がっており差別化できる商材として人気を集めている。シラウオ漁は11月末頃まで続くが、少しずつサイズが大きくなっていくため、佃煮にするには今が一番で、今しか食べられない、まさに旬の佃煮と言える」
 
――今後に向けて。
「佃煮は一度棚に入ると、変わらず安定した売上を上げられる商材で、春夏・秋冬の変動も季節変わりもなかったが、これだけ水産原料を調達することが難しくなると状況が変わってくる。先ほどのシラウオの話ではないが、その季節にとれるものを炊き、旬の提案を店側にしていかなければ、佃煮がさらに伸びていくことは難しいのではないか。そのためには、我々荷受け側が主導して、原料面の提案を行っていくことも必要だと考えている」
【2020(令和2)年9月11日第5033号1面】
 

9月1日号 トップに聞く

株式会社日本東泉 社長 李忠儒氏

契約栽培の強み活かす  山東省生姜は価格上昇見込み
 
株式会社日本東泉(大阪市住之江区)の李忠儒社長にインタビュー。同社は中国最大の生姜産地である山東省に、自社工場として現地法人「龍口東寶(ドンパオ)食品有限公司」を有し、生姜の契約栽培から加工までを一貫して行う。代表商品「東泉ホワイトガリ」は、自然な風味や柔らかな食感から世界30の国と地域へ出荷されている。9月中頃から収穫が本格化する加工用生姜の作柄や、海外の市場動向について聞いた。
(小林悟空)
◇ ◇
‐現在の中国産生姜の作柄について。
「山東省では作付面積が1割ほど増加した。作柄も良好で豊作傾向と見ていたのだが、8月25日の暴風雨で冠水した畑も出たので、影響を調査中だ。それ以前は、夜に雨が降り、日中は晴れるという気候が続いたため病気も発生しておらず、昨年より早い8月20日頃からガリ用生姜の収穫が始まっていた。9月中旬頃にまとまった量が出てきて、価格交渉も本格化してくる」
 
ー相場の予想は。
「豊作であったとしても、昨年より安くなるということはないと見ている。原因の一つは青果用の価格が高止まりしていること。種の価格が3割程高かった。また生姜の収穫はガリ用からスタートし、ハーフ、刻み、青果用へと順次進むが、生産者が価格の高い青果用に残しておきたいと考えれば、加工用に出回る量は少なくなる。もう一つの原因が、在庫が不足しつつあること。新型コロナウイルスの影響で2~3月に止まっていた輸出が4月になり復活して以降、日本だけでなく世界中が本来以上の買い付けを行ったためだ」
 
ー御社の販売状況。
「外出自粛で外食がしづらくなり塩蔵生姜の必要量も減るかと思われたが、実際には家庭での利用や持ち帰りが増えた。当社は塩蔵原料、完成品のほか冷凍品なども扱っており、そのトータルで見ると現在までの出荷はほぼ前年並みに戻った。中国南部やタイでは作付減となり、塩蔵生姜の不足、高騰が懸念されているが、当社は栽培から加工まで一貫している強みを活かして安定供給に全力を尽くしたい」
 
ー現地法人の龍口東寶食品有限公司について。
「当社の自社工場として1994年に設立し、自社農場と契約農場栽培の形をとって加工を行っている。一昨年にはお客様からの要望でFSSC22000を取得、倉庫も改築してタンクの数を増やしたため、漬け込み容量は5万tを超えた。衛生的で徹底的な管理のもと製造しているので、日本の方々にも安心して利用していただける」
 
‐東泉ホワイトガリの特長。
「品種改良や土作りに研究を重ねた生姜を極若・早堀・無漂白で漬け込んだ。ほどよい辛さと、シャキシャキとしながらやわらかな食感が自慢のガリだ。料理を引き立てる名脇役として、活用いただきたい」
【2020(令和2)年9月1日第5032号4面】
 
 

トップに聞く

東京中央漬物株式会社 社長 皆川昭弘氏

キムチと生姜が大幅に伸長
ネット通販に名産品を供給
 
東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(皆川昭弘社長、東京都江東区豊洲)の皆川社長にインタビュー。新型コロナウイルスの影響や商品の動きなどについて話を聞いた。巣ごもり需要が増加し、定着していく流れの中で新しい売り方を考える必要性を訴えた。(千葉友寛)
◇ ◇
‐新型コロナウイルスの影響について。
「3月から5月は人が動かず、外食や観光関係は大打撃を受けた。弊社も量販店の売上は好調だったが、業務用がガクッと落ちてしまったので10~15%減となった。秋頃にはマイナス幅をもっと小さくし、年明けから98%から100%にしたいと考えている」
‐量販店で売れた商品は。
「特に目立ったのはキムチと生姜。3月から5月までの3カ月間はものすごい勢いで売れた。要因としては乳酸菌の健康機能性が浸透していることが大きい。6月に入ると少し落ち着いてきたが、例年に比べると需要は大幅に増加している。生姜では紅生姜が伸長している。家庭で焼きそばやお好み焼きを食べる機会が増え、付け合わせとしての利用頻度が飛躍的に増えた。その他で良かったのはにんにくや楽京、胡瓜などの本漬の刻み、沢庵。逆に梅干や浅漬は微減傾向だった」
‐11日に東京アラートが解除され、ステップ3に移行した。
「豊洲市場では一般客向けの見学が8日から再開され、東京アラートも解除されたが、人手は1割も戻ってきていない。土日は寿司店で行列ができたようだが、平日はほとんど人がいない。コロナ以前は外国人観光客が大多数を占めていたが、いまはゼロに等しい。日本人観光客は秋頃から戻ってくるかもしれないが、外国人が戻ってくるまでに2、3年はかかると見ている。内需が爆発的に増えることはないので、長期戦を覚悟して辛抱強く事業を行っていくしかない」
‐漬物のニーズも変化した。
「我々も変化していく必要がある。売り方も重要だ。巣ごもり消費が増えたことで、セルフで購入する量販店の売上は伸びたが、コロナ収束後はその勢いが弱まっていくはずだ。外出の自粛ムードはしばらく続く見通しで、家にこもっている人にどのように商品を購入していただくのか、ということを考えるとネット通販やオンラインショップは有効なツールとなる。これまでの漬物のネット通販は決められたセット商品を販売するものが主流だったが、全国の地域名産品を30~50品の中からセレクトできるものはなかったと思う。観光に行けない人のために『観光に行った気になれる』商品を提供することができればおもしろいと思う。お客様の目線で見ると選ぶ楽しさを提供できて良いのだが、商品を揃えるのに手間がかかる。弊社がオンラインショップを行う、ということではないが、弊社は常時1000アイテムを取り扱っているので、そのような事業を考えている企業に商品を供給することはできる。我々にも言えることだが、楽をして儲かる仕事はない。人がやらないこと、考えないことを先駆けてやるからチャンスがある。もちろん、先を読むことも大事だが、チャレンジ精神を持って取り組むことが何より重要だ」
【2020(令和2)年6月15日第5024号1面】
 
東京中央漬物株式会社 →こちらから
 

理事長に聞く

茨城県漬物工業協同組合 理事長 長島久氏

売れ行きの二極化が進行
新たな商品開発を模索
 
新型コロナウイルスの影響を受け、例年になく、不安要素の多い見通しが続く中、茨城県漬物工業協同組合の長島久理事長(長島漬物食品株式会社社長)に現状と今後の方針などについて話を聞いた。(石川周一)
◇ ◇
‐例年と比べてどのような状況か。
「2月までの売上げは好調であったが、3月の自粛ムードの広がりを受け、一転して厳しい状況となった。4月に入るとさらに良くない状況となった。量販店向けの製品は好調のように見えたが、4月に入ると売れる製品が少し変わってきた。売れるのは、次第に安い製品へと変わっていったように思う」
‐節約志向か。
「消費者の収入が不安な部分が相当出ているのではないかと思う。特に本漬に関しては、100円前後の安い製品が非常に売れている。ところが、付加価値を付けて売っているようなものが極端に悪くなってきている。また、4月に入り、外食などの業務用需要がほとんど無くなってしまった影響はかなり大きく、痛手となっている」
‐量販店側の動きは。
「売れているものと売れないものが二極化してきてしまっている。量販店側も目先で売れているものを欠品しないようにしていくので精一杯という状況。何でも売れている、という状況ではなくってきているので、需要のあるもの、お客様の必要としているもの、購入しやすいもの、財布の中身と相談しながら買えるものが主流となってきていて、緊急事態宣言が解除されたが、生活が元に戻るわけでは無い以上、今後もこの状況が長く続くのではないかと考えている」
‐消費者の生活の変化はどう影響するか。
「生活パターンを変えざるを得ない状況になっているので、新型コロナウイルスに感染しない、させないということだけでなく、毎月の収入が元に戻らない限り、厳しい状況が続くだろう」
‐今後しばらくはどのように対処していくか。
「耐えていくしかないのではないか。今の状況では他力本願しかない。またデフレに逆戻りするのではないかという不安がある。その時にどういった商品開発をするかということを考えていかねばならない。細かく製造コストなどを計算しているため、既存の製品を値下げすることはできない状況になっている。そうすると、デフレになった際に売れる製品を開発していくことを考えておく必要がある。メーカーがいくら講釈を垂れても、お客様が手にとってくれなければ、何にもならないので、ニーズを追求していくしかないと思う」
‐原料への影響は。
「弊社は国産のものしか扱っていないが、楽京や胡瓜など今後は海外、特に中国からの原料が、どういった状況になってくるか、ということも先を見て対処していかねばならない課題だろう。従来通りということにはならないのではないだろうか。原料が海外から潤沢に回ってくるかどうか、ということも影響するだろう。また、その影響は国産原料しか扱っていない弊社のような企業にも影響が出るだろうと考えている」
【2020(令和2)年6月15日第5024号2面】
 
茨城県漬物工業協同組合 →こちらから
長島漬物食品株式会社 →こちらから
 

トップに聞く

株式会社Kスリー 代表取締役社長 佐藤潔氏

幅広い国産原料を販売
アルコール製剤も安定供給
 
国産原料を幅広く取り扱う株式会社Kスリー(福島県福島市西中央)では、昨年3月1日より佐藤潔氏が代表取締役社長に就任した。同年2月には農水省や経産省らとプロジェクトを進める公益財団法人・流通経済研究所より登録業者の認定も受けた。国産原料の安定供給を中心とした今後の事業展望について、佐藤社長に聞いた。※取材方法は電話(千葉友寛)
◇ ◇
‐社長就任から1年が経過した。
「昨年2月に流通経済研究所からいただいた認定は、産地と買い手の双方にメリットがある取引が認められたもの。適正な商売というお墨付きを頂戴したことはとても励みになる」
‐国産原料の重点品目は。
「ベースとなるのは、当社の位置する福島県が大産地の胡瓜だ。3~6月は関東産、5月~11月は福島県産の露地・ハウスとなる。例年シーズンで生換算1200~1300tを扱っており、当社の事業で最もボリュームがある部分だ。生以外にも一時加工品として塩蔵・塩蔵の洗浄品があり、胡瓜に関しては特に幅広い規格を提案している。今年も例年通りの面積が契約出来ており、質・量ともに期待している」
二十日大根の圃場
‐特に注力する品目。
「今年は大根の契約を大幅に増やしている。青首は青森と鹿児島、白首は群馬と茨城がベースで、生・塩押し(一押し・二押し)がある。他にも関東産の塩蔵白瓜約10万枚や関東産と高知県産の塩蔵生姜約200t、筑陽茄子、二十日大根(ともに九州産)等は例年ボリュームが大きい。また近年増加している一次加工品では、人参千切り・生姜の千切りとダイスカット、長いも(拍子切り・乱切り)などが重点品目だ。当社は100%が契約原料で産地を分散し、ゆとりある量を契約するため、気候変動による数量のブレは比較的少ない。これが強みだと考えている」
‐原料以外に今後注力する事業について。
「漬物・惣菜カテゴリでのOEM生産の案内に力を入れて行く他、調味料、添加物、製剤関係も積極的に販売する。需要が急増して品不足となっているアルコール製剤『プルーフ65』の安定供給を行っており、手配に困っているお客様にもお声がけをいただきたい。これらの商品を一貫して供給できる当社の特徴を生かした事業で、直売店で販売する商品等を対象に、これまでも行って来た。今後はさらに力を注ぎ、事業を拡大して行くつもりだ」
【長野営業所を開設】
8月1日より長野営業所を開設する。住所は長野県安曇野市穂高7229‐14
【2020(令和2)年5月25日第5022号7面】
 

理事長に聞く

京都府漬物協同組合 理事長 森義治氏

緊宣解除も安心できず
和食の魅力発信する時期に
 
伝統的な文化や建築物を数多く残し、世界中から観光客を集めてきた古都・京都。現在は新型コロナウイルスの影響により観光客は激減している。京都府漬物協同組合(森義治理事長=株式会社もり代表取締役社長)の加盟企業も、店舗休業を余儀なくされる未曾有の事態となった。森理事長に京つけもの業界の現状と、困難を乗り越えるための方針を聞いた。※取材方法は電話(小林悟空)
‐現時点までの新型コロナウイルスの影響。
森理事長 当組合は加盟事業者の大半が製造小売の業態であり、どこも非常に厳しい状況だと感じている。当社の場合、2~3月中は例年と比べると中国・韓国などアジア系旅行者は少なかったが、国内旅行や出張は続けられており、若干の売上減に留まっていた。しかし4月に緊急事態宣言が発せられてからは商業施設内や繁華街の店舗が休業せざるを得なくなり、売上はゼロになってしまった。
卸売先である外食店や宿泊業者も厳しい状況なのはご存知の通りだ。我々の努力を超えた所で人の動きが止まっており、一刻も早い正常化を願うばかりだ。
‐25日に全国で緊急事態宣言が解除された。
森理事長 安心はできない。人出が少ない状態はしばらく続くと予想され、店舗を営業再開をしても赤字になる恐れがある。外食店・宿泊業者への卸売も少ない状態が続くだろう。インバウンドを考えると、元の状態に戻るには数年がかりとなりそうだ。
また第2波の心配もある。従業員の健康をどう守るか、対策も強化していくことが必要。
‐オンラインショップで臨時のセールを行っていた。
森理事長 通常の3倍以上の出荷と順調だった。特に人気なのがぬか漬、キムチの2カテゴリだった。乳酸菌で免疫力を高めるイメージが強いのだろう。また筍や春キャベツなど季節の漬物も注文が多かった。外食や旅行を出来ない分、家での食事をちょっと豪華にしよう、というニーズが見えた。
‐〝巣ごもり〟で和食の良さが見直されるのでは。
森理事長 その雰囲気はあり、当社にもぬか床の要望が増え、「どぼ漬(ぬか漬)手作りセット」を商品化することとなった。この流れを一時的なもので終わらせないために組合で運営するWebサイト「きょうとおつけもんライフ」や各社のSNS等を通じて和食・漬物の魅力を発信し続けなければならない。
‐組合としての対応。
森理事長 まずは加盟業者へ対して助成金の情報がしっかりと届くよう補助している。また行政に対して、全漬連や漬物振興議員連盟とも連携しながら、既に決まった施策をスピーディに実施するよう要請をしていく。一社一社が磨き上げた技で独自性を発揮しているからこそ、京つけものの多様性は保たれているのであり、皆様が事業を続けられることは当組合にとって大切なこと。協力しながら、この苦境を乗り越えていきたい。
【2020(令和2)年5月25日第5022号7面】
 
京都府漬物協同組合 http://www.kyo-tsukemono.com/
株式会社もり http://www.kyoto-mori.com/
 

キムチ浅漬2大インタ

秋本食品株式会社 代表取締役専務 秋本善明氏

売上、利益は前年並み
点から線の生産物流体制に
 
秋本食品株式会社(秋本大典社長、本社=神奈川県綾瀬市)の代表取締役専務食品事業本部長(兼)マーケティング部長の秋本善明氏にキムチと浅漬の他、漬物全般の売れ行きや新型コロナウイルスの影響、対応策などについて話を聞いた。※取材方法は電話及びメールを活用(千葉友寛)
◇ ◇
‐新たに食品事業本部長に就任したが、食品事業本部の役割、機能について。
「マーケティング、物流、原料とこれまでの3本部でカバーしきれていない部門を担当、後述するが今後さらに重要性を増すセクションと考える」
‐前期の売上、利益の経緯及び総括を。
「売上は上期の低迷(原料安)が響いたが、後半の追い上げもあった為、ほぼ前年並みに落ち着いた。利益については本社ベースでは前年並みだったが、東海工場の立ち上げに伴う支出により減益となった」
‐新型コロナウイルスの影響は。
「まだ社員や周囲での感染は見られないが、休校に伴う休職者は出ている。営業も商談がことごとく休止となっており、外回りの仕事が激減している。売り先も業務用卸はかなり受注が減っており、専門店(対面販売)も休業を余儀なくされている。その反面、スーパー関係はどこも好調で推移、二桁伸びも珍しくない」
‐コロナウイルスの社内対策について。
「マスク着用は当然、毎日検温とその記録、工場関係者とそれ以外との食事場所を分ける、外来者のマスク&アルコール消毒義務化、通勤以外の電車バスの使用制限、出張を控える、送迎バス増便(路線バス利用を減らす)などの対応を行っている」
‐お米の買い溜めが発生し、中食需要が増加した。キムチと浅漬の売れ行きとニーズの変化について。
「やはり年明けから右肩上がりが続いており、浅漬けよりキムチの方の動きが特に目立つ。中には150%以上の売れ行きも見せている。近年横ばいだったキムチのトレンドだが、ここにきて120~130%と伸長、近々テレビの特集で紹介される話もあるので更に伸びる事も想定される」
‐仕入れ商品も含め漬物全般の動きについて。
「特によく売れているのが沢庵と酢漬で、沢庵は上記と同じ米食増加が要因と見る。酢漬については焼きそば、チャーハンの付け合わせ用として紅生姜の需要増がその要因と分析する。意外なのが梅干しで、他のサブカテゴリーと比較してやや取り残されている感がある」
‐4月に予定していた第50回秋本会総会、6月に予定されていた第42回全国つけ物・惣菜展示見本市が中止となった。書面決議による主な総会の内容と展示見本市を11月に再度開催とした狙い及び目的について。
「秋本会総会はやむなく中止、事前に開催された理事会において決算、新年度事業計画及び予算案は承認されたので、それをもって決議とさせていただいた。役員改選等の大きな変更はないが、一部支出の科目変更、受託事業費の使用内容変更をお願いしている。6月の展示会もやむなく中止させていただいた。その後同会場(TRC)の予約状況を確認すると11月まで埋まっており、各社考えている事は同じだと感じた。時期的には(棚割の時期と外れ)中途半端だが、今の市場に見合ったテーマを現在検討している最中。今はその時期までにはコロナ禍が沈静化している事を願うばかりだ」
‐原料の安定確保や人手不足、コロナウイルスの影響で予測される経済の停滞など漬物業界にも多くの課題が山積している中、新年度にかける意気込みや抱負を。
「原料問題については今その最中にあり、白菜の原料不足に伴う高騰に悩まされている。昨年から続く暖冬による前倒し出荷のツケが回ってきた感じで、おそらく6月いっぱいまではこの傾向が続くと思われる。上記キムチの好調が逆に厳しい状況を作り出しており、これ以上の需要増にはとても応えられない。今まで以上に原料の契約が重要になってくる。弊社は昨年、幸男相談役が逝去するなど時代の節目を迎えたと思っている。その年に東海工場を稼働させたのは何かの縁かもしれない。これでグループ全体として関東~東海エリアまで安定的な生産体制が整ったが、それぞれ拠点毎の〝点〟での生産計画ではなく、それぞれをネットワーク(物流)で繋いだ〝線〟での生産体制を構築し、シナジーを生んでいきたいと考えている。おそらく今年度後半はかなり厳しい経済状態になっていると思うが、今から体制を整えておくことが必要と考えている。食品事業本部はそのキーになると考えている」
【2020(令和2)年4月27日第5019号1面】
 
食料新聞電子版「プロが売りたい!地域セレクション 特別会員」サイト →こちらから
株式会社秋本食品 https://www.akimoto.co.jp/
 

キムチ浅漬2大インタ

株式会社ピックルスコーポレーション 代表取締役社長 宮本雅弘氏

影山専務と代表取締役2名体制
来期は売上430億円を計画
 
2020年2月期決算で売上、利益ともに過去最高を記録した株式会社ピックルスコーポレーション(埼玉県所沢市)代表取締役社長の宮本雅弘氏に新人事や新型コロナウイルスの影響などについて話を聞いた。※取材方法は電話及びメールを活用(千葉友寛)
◇ ◇
‐代表取締役の異動(荻野会長の退任、影山専務の就任)及び今後の体制について。
「私が代表取締役社長に就任してから7年が経過し、その間、当社グループの業績も順調に拡大し、東証一部上場も実現した。現経営陣に会社を任せても大丈夫な体制となったこともあり、荻野会長は退任されることとなった。現状2名の代表取締役体制のため、それを継続し、影山が代表取締役専務に就任することになった」
‐14日に発表した2020年2月期決算(連結)で売上高414億1700万円(1・8%増)、当期純利益12億9000万円(40・2%増)を計上されました。好調に推移した売上高と当期純利益が大幅に増加した要因は。
「当期は、ピックルスコーポレーション西日本の佐賀工場が4月で稼働から1年経過し、生産が安定し、西日本エリアでの供給体制の整備が進むとともに、当社の宮城ファクトリーの工場増築、手柄食品の工場改築やピーネブランドの専用工場の建設などの設備投資を行い、当社の強みである全国ネットワークの強化を行った。2019年10月には、当社の看板商品である『ご飯がススム キムチ』が、おかげさまで発売10周年を迎えた。これを記念して、プレゼントキャンペーンや、特設サイトの開設、他社とのコラボ商品の開発など、様々な販売促進施策を実施した。また、はなわさんを起用し、新しいCMの制作を行い、全国で放映した。これらの取り組みの結果、売上高は10期連続で増収を達成し、利益については、台風15号や台風21号による生産や出荷への影響はあったものの、佐賀工場の収益が改善したことや、原料野菜の価格が安定していたことなどにより、3期連続の増益となり、売上、利益いずれも過去最高を更新することができた」
‐感染の拡大が懸念される新型コロナウイルスの影響は。
「今後感染が拡大することにより、原料調達、生産体制の維持など様々な影響が懸念されるが、現在のところ、業績面では大きな影響はない。足元では、キムチ需要が拡大しており、それに対応するため、生産アイテムの集約などに取り組んでいる」
‐コロナウイルスの社内対策について。
「事務、営業、開発等においては、時差出勤、在宅勤務などを行っている。工場や事務所への来客は、基本的にはお断りしている。来客があった場合は検温や健康確認(のどの痛み、せきなどの症状がないかなど)を行っている。休憩室は、通常テーブルに6名座れるようになっているが(片側3名ずつ)、片側の椅子を撤去し、対面に座れないようにしている。社内において、昼食など食事の際にはマスクを外すが、それ以外の時間はマスク着用としている(休憩時間であっても基本マスク着用)。事務所については、定期的に窓を開けて換気を行っている。事業所内のドアノブ、スイッチ、テーブル、椅子など様々な人が触れるところは毎日、定期的に、清掃(消毒)を行っている。入社式については、従来はグループでまとまって行っていたが、今回は、会社ごとに行っている。新卒採用については、説明会や面接開催時期を延期している。その他、WEB会議システムなどの活用を行っている」
‐2021年2月期の計画について。新規事業や強化していく事業は。
「消費税増税、原料価格の高騰並びに人手不足による労働力確保及び人件費高騰などのコスト増加への対応も求められており、また、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済の押し下げの影響もあり、引き続き厳しい経営環境が続いている。このような状況のもと、当社グループは、営業面では、看板商品である『ご飯がススムキムチ』を中心としたキムチや、主力となる浅漬、惣菜を積極的に提案することにより、新規得意先の開拓や既存得意先とのパイプを強化していく。製品開発面では、ナショナルブランドの製品の開発や既存製品の見直しなどに加え、新たなカテゴリーでの製品開発や、他社との共同開発への取り組みも実施する。製造面では、商品の集約化や省力化設備の導入などの設備投資を行い、生産効率の改善を図る。売上高は、430億円(前年同期比3・8%増)を計画している。営業利益は19億500万円(同1・8%増)を計画している。親会社株主に帰属する当期純利益は13億2200万円(前年同期比3・3%増)を計画している。11期連続の増収、4期連続の増益を見込んでいる。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響が長期化・深刻化した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があるが、現時点で今後の動向を見通すことは困難であるため、業績予想においてはこれによる影響を見込んでいない。また、現時点における新型コロナウイルス感染症の拡大による当社グループへの影響については、軽微となっている。なお、今年については新型コロナウイルス感染症の感染状況を考慮して、決算説明会を中止とした」。
‐売上高500億円、漬物カテゴリーシェア25%達成の目途(達成時期の予想)について。
「当社グループでは、中期経営計画を策定しており、3年後の目標を売上高457億円、営業利益20・8億円に設定。引き続き増収・増益基調を継続していく。さらに近い将来を目標に売上高500億円を達成したいと考えている。計画の達成に向けて、販売面では、佐賀工場の稼働により強化された西日本エリアにおいて、引き続き積極的な拡販を行っていく。そして、既存得意先の深耕を行うとともに、食品を扱うドラッグストアや、高級スーパーなど、新たな販路について営業を強化する。商品開発においては、浅漬やキムチの新製品開発や既存製品のリニューアルに継続して取り組んでいく。惣菜については、加熱設備などを用いた新製品開発にも取り組む。生産面では、商品の集約化や省力化設備の導入などの設備投資を行い、生産効率の改善を図る。品質管理においては、食品安全の規格であるJFS‐BやFSSC22000の取得を進める。今後も食の安全・安心への取り組みを強化する。これらの取り組みにより、中期経営計画の達成を目指していく」
【2020(令和2)年4月27日第5019号2面】
 
株式会社ピックルスコーポレーション http://www.pickles.co.jp/
 

トップに聞く

大阪府漬物事業協同組合 理事長 林野雅史氏

水なすの原料状況は良好
ギフト需要と物流能力を懸念
 
大阪発の漬物として全国的に知られるようになった水なす漬のシーズンが近づいている。今回、大阪府漬物事業協同組合理事長の林野雅史氏(堺共同漬物社長)にインタビュー。水なすの原料事情や、新型コロナウイルスが流行する局面での市場動向につき聞いた。
(小林悟空)
◇ ◇
-泉州水なす漬の原料状況。
林野理事長(以下敬称略) 今冬は暖冬で質、量共に問題なく4月から仕入れ出来ている。3月下旬に寒の戻りがあったため本来ならばギフト需要が高まるゴールデンウイークから母の日頃に出荷する分の生育が若干遅れているのが懸念点ではあるが、シーズン全体で見れば、一昨年の台風被害からの復興も進んだため十分な量が採れると予想している。
-台風被害からの復興について。
林野 泉州地域のハウスはなぎ倒され、壊滅的な状況だった。昨シーズンは最終的には気候に恵まれ露地物の量が採れたのだが、ハウス物が主力の前半は厳しい展開だった。
今年は、当組合で府に対してハウス再建の助成について請願書を申し入れた成果もあり、完全に元通りとはいかないまでもかなり復興が進んでいる。多額の再建費用を掛けてでも栽培を続けてくれる方がいることや、水なす農家の若返りが進んでいることからも分かる通り水なすは成長産業と見られている。大口の利用者である私たち漬物メーカーがその期待に応えていかなければいけない。
-新型コロナウイルスが流行する中、水なす市場の動向は。
林野 ギフトや外食向けでの出荷が大幅に落ち込んでいる。前述のギフトシーズンである大型連休~母の日も、例年の半分程の注文という状況だ。一方で、量販店や宅配向けは前年比120%超の所もあるほど順調に推移している。同じ水なす漬メーカーでも企業によって得意な取引先が分かれるので、はっきり明暗が出てしまった。とはいえ量販店や宅配についても急激な需要増で物流能力がボトルネックとなる恐れがあり、今後も安泰とは誰も言えない状況だ。
-自然災害や感染症のリスクは今後も続く。
林野 梅干やキムチが免疫力向上に効果があると言われ売上が伸びている。それは良いことだが、浅漬や他の漬物がその流れに乗り切れていない現実がある。漬物の多くが発酵食品であることや、野菜の食べ方の一選択肢として提案を広めていければ、皆様の食卓の助けになれるはずだ。
また漬物は近年、嗜好品としての役割を強めているが、当社としては日常的に食べる習慣を取り戻してもらえるような商品づくりを心がけている。今年の漬物グランプリでは『みずなすの薬味漬』で金賞を頂いたが、多くの方に、この商品をきっかけに漬物は自由にアレンジできると気づいて欲しいと願っている。
-新型コロナウイルスへの組合の対応。
林野 当組合では府の要請に応え日持ちのする漬物を災害備蓄品として確保しているため、万が一の事態にはすぐに対応するつもりだ。組合員に対しては行政による補助等について都度案内するようにしている。このような時こそ協力の精神が必要なので、困っていることがあれば遠慮なく相談を頂きたい。
また外国人労働や外国人技能実習制度は、審査などの予定が全てキャンセルとなった状態。受け入れ企業も、労働者・実習生の方々も大変な不安を抱えていると思う。全漬連や漬物振興議員連盟へは各種手続き期限を延期する対応を求めていきたい。
【2020(令和2)年4月20日第5018号3面】
 
大阪府漬物事業協同組合→こちらから
食料新聞電子版「バイヤー必見イチ押し商品」サイト→こちらから
堺共同漬物株式会社 http://www.mizunasu.co.jp/
 

この人に聞く

旭食品工業株式会社 代表取締役社長 鶴泰博氏(福岡県漬物工業協同組合理事長)

高菜原料は漬込み良好に
コロナ終息の先行きに不安
 
新型コロナウイルスの影響が広がる中、高菜漬業界は4月中旬には今年度原料の漬込みが終了する。高菜漬製造大手、旭食品工業株式会社(福岡県みやま市)の社長で、福岡県漬物工業協同組合理事長の鶴泰博氏に、業界の現況や課題などについて話を伺った。(文中敬称略、菰田隆行)
◇ ◇
‐今年度の高菜原料は。
鶴 九州内での作柄は全体的に良かったが、鹿児島県大隅半島は計画の7割作に終わった。昨年末から1月までは暖冬で生育も良かったが、終盤となった2~3月に長雨や寒暖差が大きかったこと等が影響し、収量減となった。
また、収穫時期遅れのためにトウ立ちした高菜や、乾燥不足の高菜の場合は歩留まりが極端に悪くなる。そのため今年度は若採りの推奨と、乾燥を徹底していたこともあって、高菜本来の効率の良い、良好な漬け込みができて本当に良かったと思っている。大隅半島は3割減だったが、南九州の薩摩半島や北部九州はまずまずの作柄だったので、九州全体ではほぼ計画通りの漬込み量を確保できたのではないか。
‐中国産の原料は。
鶴 ホール物の高菜原料は順調に入荷している。ただ、コロナウイルスの影響で中国国内での人手不足が続いているため、手のかかる刻み物などには多少の遅れが出ているようだ。
‐製品の動きは。
鶴 コロナウイルス感染防止で外出を控えているため、外食関連の業務用は売上が落ちている。一方で、家庭で食事する機会が増えているので、スーパー向けや、業務用でも中食の弁当向け商材は好調だ。豊作だった昨年分の在庫も残っており、今年度分の原料も計画通りだったので、例年並みに売れてくれれば丁度良い数量を確保しているが、コロナ終息の先が見えないのがいちばん心配だ。
‐製造現場の状況は。
働き方改革で、残業できなくなったことが大きく響いている。毎年3~4月頃は春の需要期で製品が動くのと高菜の漬込みが重なり、必ず人手不足となる。数年前までは残業、残業でしのいできたが、労働環境改善の動きでそれができなくなったのが痛い。そのため、製品アイテムを絞らざるを得なかった。
ただし、今回のコロナの影響で業務用製品の受注が減っていることもあり、仕事は減っている。しばらくは平日の時間を短縮し、土曜日は休みという流れになるだろう。
‐組合活動については。
鶴 会合は、緊急事態宣言の発令もあり、自粛する流れとなっている。毎年5月に開いている県の漬物組合の通常総会も、まだ正式には決定していないが、今年は書面で決算・予算資料を確認してもらい、承認という流れとなりそうだ。
‐ありがとうございました。
【2020(令和2)年4月13日第5017号7面】
 
旭食品工業株式会社 http://asahi-food.com/

理事長に聞く

栃木県漬物工業協同組合 理事長 秋本薫氏

総会は書面決議で承認
「ものづくり」が産業の基本
 
4期目の2年目を迎えた栃木県漬物工業協同組合の秋本薫理事長(株式会社アキモ社長、本社=栃木県宇都宮市)にインタビュー。新型コロナウイルスの影響や今後の方向性などについて話を聞いた。(千葉友寛)
◇   ◇
‐3月11日の栃木漬協総会が中止となった。
「新型コロナウイルスは日本でも拡大しており、全国でも会合やイベントが中止となっている。東京オリンピック・パラリンピックも1年延期となり、終息の目途が立たないが、栃木漬協の総会は会員に資料を送付して書面決議で承認していただいた。全ての議案を承認していただき、事業を行っていくのだが、心配していることがある。栃木県の青年部は2022年に全国大会を開催するのだが、今年の新潟大会が延期となった場合、開催年が1年ずれる可能性が出てくる。2022年は栃木県で国体が開催される年で、宇都宮駅東口の再開発も終了する。そこに合わせて立候補した経緯があるだけに、今後の動向に注視したい」
‐コロナウイルスの影響。
「漬物は特需が発生している。全般的に売れているが、その中でも日持ちが長い本漬、キムチ、酢漬の売れ行きが増えており、『保存食』がポイントになっているようだ。スーパーでは首都圏を中心に買いだめ需要が発生していて、中食需要も増加している。米が売れて米食が増えていることを考えれば漬物も売れる流れになる。いまはまさにそのような状況だ」
‐注意していることは。
「弊社では普段から行っていることだが、手洗い、うがい、体温チェック、マスク着用を基本に衛生管理には注意を払っている。特に手洗いは一番コストがかからないのだが、ウイルスや菌を洗い流す一番効果的な方法なので徹底している。外部の人との打ち合わせについては、ビデオ会議、電話、メールを使用し、極力接触を避けるようにしている。また、移動を制限しており、電車利用は禁止、どうしても必要な場合は車での移動としている」
‐今後の業界について。
「東日本大震災の時も同じだったが、食品企業はこのような有事の時は必要な企業となるので強い。漬物メーカーも真価を発揮している。秋本食品2代目社長の故秋本善幸さんから言われたことだが、船を作る企業は漁船よりもレジャーボートの方が高く販売することができ、会社も華やかに見えて羨ましがられる。だが、台風や地震などの自然災害が発生したり、情勢が不安定になるとレジャーボートは必要ないものになる。産業の基本はものづくりで、それは未来永劫変わらない。確かに同じことをやっているだけでは継続することができない。変えてはいけない部分と変えないといけない部分を見極めることが重要だ」
【2020(令和2)年4月13日第5017号4面】
 
栃木県漬物工業協同組合 公式フェイスブック https://www.facebook.com/tochitsuke
株式会社アキモ https://www.akimo.co.jp/

トップに聞く

東京中央漬物株式会社 社長 皆川昭弘氏

新型コロナで中食、内食が増加
発酵漬物の健康訴求
 
東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(皆川昭弘社長、東京都江東区豊洲)の皆川社長にインタビュー。感染拡大が懸念されている新型コロナウイルスの影響や商品の動きなどについて話を聞いた。(千葉友寛)
◇ ◇
‐新型コロナウイルスの影響について。
「人が動かないから観光業、外食産業は大打撃を受けている。豊洲も2月29日から一般の方が見学できなくなり、閑散としている。飲食店は客が来ないので、半分以上の店が閉めている。この流れは短期的というよりも、中長期的に大きな影響が出てくるはずだ。政府は融資策を打ち出しているが、返す見込みがなければ借りても意味がない。お金が回らないので個人店は特に厳しい状況で、今の状態が4月まで続けば中堅以上の企業もいよいよ厳しくなる。仮に早期に収束したとしても、その間の売上は戻らない。飲食業界も寡占化が進むことになりそうだ。また、7月に開幕する東京オリンピック・パラリンピックの開催が危ぶまれるようになると、日本経済にとっては未曽有の損失が発生することになる」
‐日配業界への影響は。
「学校が全国的に臨時休校となり、在宅勤務の人も増えていて、家でご飯を食べる機会が増加しているので中食、内食関連の数字は良い。米、パン、カップラーメンは品薄で、お菓子も売れている。量販店やコンビニエンスストアの売上は増加しており、そこに商品を供給しているところはプラスとなっている。この流れは少なくても3月いっぱいは続くだろう。日配製品で特に目立つのは納豆とキムチ。納豆はテレビ効果があって欠品が続いている。キムチは乳酸菌を豊富に含んでいるというイメージが強く、ウイルス対策の需要が出てきている。全日本漬物協同組合連合会では基準を満たした発酵漬物を認定する制度をスタートしているが、病気予防の観点からも漬物と発酵の関係性を訴求していくことが重要だ」
‐中国製品の動きは。
「中国産の生野菜では風評被害があると聞いている。日本でも感染者が多い土地の『ふるさと納税』返礼品受け取り拒否や観光のキャンセル等が発生している。だが、加工食品ではそのような動きは出てきていない。それは加工する企業のブランドが確立されているからで、中国産原料を使用していてもこの企業なら大丈夫、といった安心感がある。売場で定番となっている胡瓜の刻み、新生姜、にんにくに影響は見られない。加工食品の風評被害は心配していないが、中国の工場が稼働できないことによる生産量の減少や物流の問題で商品が日本に入ってこない、という供給不足は懸念している」
‐東京の名産品について。
「漬物では東京沢庵、べったら漬、わさび漬、奈良漬がある。関東では地方の物産フェアが開催されるケースが多いが、逆に東京の物産フェアを地方で開催できれば面白いと思う。オリンピックの開催はまだはっきり分からないが、開催できれば世界の人の視線が東京に集まる。日本に来て和食を食べる機会があればインバウンド需要が期待できるし、その先には輸出の可能性も出てくる。私はこの業界で50年仕事をしていて色々な企業や商品を見てきたが、急上昇したものは必ず急降下する。企業も商品も少しずつ伸びていった方が長く続く。弊社はこれからもそのスタンスで欲を出さず少しずつ成長していきたいと考えている」
【2020(令和2)年3月16日第5014号1面】
 
東京中央漬物株式会社 http://www.c-z.jp/

トップに聞く

関口漬物食品株式会社 代表取締役 関口悟氏

 
環境問題への対応開始
包装形態変更やゴミ削減で
 
大手浅漬メーカー、並びに首都圏有数のベンダーとして知られる関口漬物食品株式会社(東京都世田谷区)の関口悟社長に同社の近況などについて聞いた。
(藤井大碁)
◇ ◇
ー商品の動き。
「新型コロナの影響で家で食事をする機会が増えているため、浅漬やキムチは前年比を超え好調に推移している。特にキムチは、2月にテレビで免疫力を高める納豆のトッピングとして紹介された後、売れ行きが伸びている。日持ちする本漬関係も動きが良いようなので、漬物は全体的に売れているのではないか。この冬も暖冬で野菜が安かったものの、白菜浅漬やキムチの動きは悪くなかった。気候が良く白菜を始めとした原料野菜の品質が高かったことも味わいの良さに繋がり、購買に結び付いたのではないか」
ー近年、白菜や大根にも力を入れている。
「創業時は白菜や大根の浅漬を主力としていたが、時代と共に胡瓜の割合が増えていった。だが、近年は東日本大震災などの影響もあり、胡瓜の生産者が著しく減少し収量もピーク時の半分程度しか上がらなくなってきた。それを追いかけて、無理をしてやっていくと、なかなか厳しいものがあった。昨年より、原点回帰で、創業時と同じように白菜と大根に力を入れ始めており、現在は胡瓜と白菜の扱い量は年間通して同じくらいになってきている。これまでのように無理をして胡瓜を追いかけることをやめたため、業績は上向いている」
ー昨年新発売した「辛からず甘からず旨辛なキムチ」が好調だ。
「昨春新発売し、発売当初はそれほどではなかったが、発売から半年程経過した頃からよく売れるようになった。現在は一日2000パックを超える出荷数にまで伸びている。特徴は心地良い酸味があること。飽きのこない味わいがご好評頂いている」
ーSDGs(持続可能な開発目標)への対応もスタートした。
「弊社で開催した勉強会でSDGsについて学んだことをきっかけに、今、何が出来るのかを社内で話し合った。その結果、環境問題への対応を積極的に行っていくことになった。具体的には、浅漬の巾着パッケージに使用するプラスチック留め具の使用量を抑えるため、浅漬商品の包装形態を巾着から平袋へ少しずつ移行させていく。またゴミを減らすというテーマでは、原料野菜の配送にダンボールではなく、できる限りコンテナを使用することを心掛けていく。キャベツや白菜は、ダンボールを一度だけ使用して捨てるためゴミがたくさん出てしまう。会社として、ただ物を作って売るだけではなく、地球全体の未来を考え、出来る事をやっていきたい」
【2020(令和2)年3月16日第5014号2面】
 
関口漬物食品株式会社 http://www.sekiguchi-01.co.jp/

理事長に聞く

山梨県漬物協同組合 理事長 長谷川正一郎氏(長谷川醸造株式会社 社長)

甲州小梅は凶作で原料不足
 大事に販売していく1年
 
山梨県は県周囲を山岳に囲まれる豊かな自然を背景に、小梅生産量日本一を誇る。特産品の一つである甲州小梅の魅力や原料状況などについて山梨県漬物協同組合の長谷川正一郎理事長に話を聞いた。(千葉友寛)
◇ ◇
‐原料状況は。
「昨年の作柄は開花期に気温の乱高下や降雪があり、着果率が少なかった。そして収穫直前の降雹と低温の影響が大きく、全体的には6割作という凶作となった。小梅は長野県や群馬県でも生産されているが、どこの産地も大きな被害を受け、場所によっては壊滅的な被害が発生したところもある」
‐原料価格について。
「カリカリ梅用の価格は1割以上上がった。山梨県では生産者と加工業者の信頼関係が構築されており、産地ごとに原料の供給ルートが確立されている。我々は毎年わずかでも原料を高く買い上げる努力をしている。それは豊作の時も同じで、収入の安定化を目指している。昔から両者が助け合ってきた経緯があり、これまでは生産量の振れ幅ほど価格の変動がなかった。しかし、今年は原料が全く入らず、他県の業者が高値でも原料を購入しようとする流れもあったが、原料の絶対量が足りないため、どこのメーカーも予定数量を漬け込むことはできていないようだ」
‐販売状況は。
「昨夏は冷夏だったこともあり、猛暑で好調に売れた一昨年の夏と比べると売れ行きは大きく下回っている。値上げも実施して出荷数が減少している分、原料の使用量も減って助かっている部分もあるが、今年の新物が入ってくるまで原料をつなげることは難しい状況となっていることに加え、売上も落ちている。当社は豊作だった一昨年に漬け込みを増やしたこともあり、原料が切れる心配はないものの、限られた原料を大事に販売していく年になっている」
‐甲州小梅の魅力は。
「山梨県の小梅の生産量は全国一を誇り、製品の出荷量も全国第1位。質、量ともに山梨県が自慢できる特産品の一つだが、残念なことに県民をはじめ全国的にもあまり知られていない。今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されるので、日本のみならず世界の人に甲州小梅の魅力を知っていただく活動をしたいと思っている」
‐今後の活動について。
「一昨年1月の山梨漬協の新春賀詞交歓会で山梨学院大の名取貴光先生に講演していただき、アンチエイジング効果や認知症の予防効果など甲州小梅の健康機能性についての研究発表を行っていただいた。付加価値の要素となる特産品や健康機能性をPRしていくことが重要だ。2月1日に甲府市で開催された食育シンポジウム&ワークショップ『未来につなげたい食文化~おいしい発酵食生活で健康長寿~化』に参加した。同イベントは山梨県食品産業協議会の主催で、料理家の真藤舞衣子さんとパネルディスカッションを行った。今後はワイン業界などの他業種、行政、大学、研究機関と連携して甲州小梅の付加価値を高めていきたいと考えている」
【2020(令和2)年2月10日第5010号10面】
 
山梨県漬物協同組合 http://www3.nns.ne.jp/~rs-date/
長谷川醸造株式会社 https://www.umeume.co.jp/

新社長に聞く

宝福一有限会社 代表取締役社長 髙野昌康氏

㈱大物との連携生かす
 細やかなニーズ対応に強み
 
宝福一有限会社(鳥取県倉吉市)は昨年9月、大阪市の総合食品卸商社である株式会社大物(日阪俊典社長)へ事業譲渡した。それに伴い、宝福一には大物専務取締役である髙野昌康氏が新たに代表取締役社長に就任。創業家で前社長の倉都章氏は顧問へ就任した。今回、新社長の髙野氏へインタビュー。事業譲渡の経緯とその狙いを尋ねた。
(小林悟空)
◇ ◇
‐事業譲渡の経緯。
髙野社長 大物は総合食品卸商社として、日清食品㈱や三菱商事㈱をはじめ多数の取引先を持ち、関西を代表する地域問屋の地位を確立してきた。しかし商環境が変化する中で、大手企業にはない強みを作っていく必要があった。そのようなタイミングで、事業継承の課題を抱えていた宝福一と金融機関を通してマッチングし、事業譲渡へ至った。
‐宝福一に感じた魅力とは。
髙野社長 OEM製品含めて多品目の製品を高品質で製造する技術があった。また調味酢の製造工場で鳥取県HACCPの認定を受けていることやレトルト機械を保有していることなど基盤が整っており、大物の商社機能と連携すれば活躍の幅は拡がると確信した。
‐具体的な戦略は。
髙野社長 「着眼大局着手小局」という言葉がある。従来のお取引先様に加えて大物の情報網を活用し、大局を見極めながら、大手企業ではカバーしきれない細やかなニーズへ対応できる宝福一の強みをしっかり生かした商品開発を目指していく。「福の誉」シリーズが鳥取県の食文化を上手くアレンジしたものとしてヒットしているように、未だ見つかっていない組み合わせはたくさんあるはずだ。
‐地域活性化にも繋がりそうだ。
髙野社長 宝福一を始め、多くの地方企業が事業継承などの課題を抱えており、蓄積された技術が消滅の危機に瀕している。地元企業同士や、鳥取県出身者とのコラボなど積極的に取り組んでいくことも検討しており、地方活性化には貢献していきたい。食品業界は自前主義が根強いが、協業や技術のオープンソース化など、当社だからリードできることがある。他社・他地域には無い強みを自ら作り出し、山椒が小粒でもぴりりと辛いように存在感ある企業を目指していきたい。
【髙野昌康氏プロフィール】1957年生まれの62歳。慶応大学卒業後、三菱商事㈱入社。2018年大物専務取締役。2019年9月に宝福一代表取締役社長に就任。
【2020(令和2)年2月10日第5010号11面】
 
宝福一有限会社 https://takarafukuichi.jp/

副会長に聞く

九州ゆず愛ランド 副会長 福田豊樹氏(株式会社福田農場 社長)

価値観広がるメリット
 九州のブランド力を発信
 
九州ゆず愛ランドの副会長を務める福田豊樹氏は、柑橘類の加工(ジュース、酒類の割り材など)や、レストラン、パン工房、直売店を運営する株式会社福田農場(熊本県水俣市)の代表取締役社長。同社はグループ会社に農業生産法人を持ち、温州ミカン、甘夏ミカン、梨、野菜などを自社栽培している。福田副会長に、自社での取組みや九州のゆず・柑橘業界の現状ならびに将来展望等について話を聞いた。
(文中敬称略)
◇ ◇
‐現在、自社で取り扱っている果樹は。
福田 九州全県でとれる柑橘類で13種類、約700tを取り扱っている。一部、沖縄からも果汁のみを仕入れている。収穫期は9月の「ハウスミカン」から、10月には「かぼす」「ゆず」「へべす」、11月からは〝デコポン〟の名で知られる「青不知火」、1月から「だいだい」「不知火」「甘夏ミカン」と続き、だいたい5月頃まで搾汁を行っている。
‐農家は高齢化と人手不足が深刻化しているが、果樹栽培農家の現状は。
福田 個人でやっている農家は、法人経営等の大きな農家が吸収している。果樹園は山間地の斜面などを利用することが多いので、立地が悪い場所は放棄地になってしまっている。
外国人労働者は、熊本県内では八代のトマト農家で採用しているようだが、当社の地元・水俣市ではまだ外国人は見られない。これからは採用が進むと思うがサービス業と比べれば農家は3K産業なので、若い人を確保できるかどうか…。ただ、今は売り手市場だがたくさんの外国人が入ってくれば、いずれは買い手市場に戻っていくのではないか。そういった駆け引きが、今後は起こってくるはずだ。
‐「九州ゆず愛ランド」の意義は。
福田 ゆず愛ランドに加盟するまでは、それぞれのお客様も違うので意外と同業の人と接する機会がなかった。しかし、この集まりに参加するようになって、今まで見えていなかったことが見えてくるようになった。価値観が広がったのが最大のメリットだ。
また、九州ゆず愛ランドという団体は、九州7県というエリアの大きさがちょうど良いと思う。各県ごとに、いろいろな観光名所や名産物が豊富で多様性があり、かつ仲間意識も強い。九州としてのまとまりの強固さを全国の方に知ってもらいたいと思う。
‐今後の業界動向は。
福田 現在、イチ押しの食材が鹿児島の「桜島小みかん」。他のみかんに比べて香りが強く、ゆずのように皮の需要も期待できる。また、当社の新規事業ではイチゴやトマトを透明な果汁に搾汁する事業を計画している。他には、トマトはアミノ酸が豊富なので調味料の原材料としても重要なアイテムとなる可能性を秘めている。
こうした九州内での産地がしっかりしていて、かつブランド力のある果樹や野菜の需要が高まっていくはずだ。九州ゆず愛ランドの横の繋がりで、それらの事業に取り組んで行ければと考えている。
‐貴重なお話をありがとうございました。
【2020(令和2)年1月27日第5009号7面】
 

トップに聞く

神尾食品工業株式会社 代表取締役社長 神尾賢次氏

生産者とともに歩む
 桜花漬は需要と用途が拡大
 
桜花漬製品の最大手である神尾食品工業株式会社(神奈川県小田原市飯泉)の神尾賢次社長に桜花漬の原料状況及び販売動向、需要の変化などについて話を聞いた。(千葉友寛)
◇ ◇
‐原料状況は。
「一昨年産と昨年産については平年作。収穫期の天候も安定したので順調に収穫することができた。桜の花の収穫期間は7日から10日間と限られているので、花が咲いていても収穫期の天候によって収穫量が大きく変わってしまう。また、生産者の高齢化は課題なのだが、解決策を見出すことは難しい。一度生産を止めると戻って来ることはない。努力しないと生産者が減少してしまうので弊社では仕入れ部門を中心に生産者への働きかけや声掛けなどの取組みを行っている。弊社は生産者とともに歩んでいく考えで、そのような活動をもっと発信していきたいと思っている」
‐桜花漬製品の売れ行きは。
「桜花漬の主な使用用途は、桜ご飯、桜茶、あんぱん、和菓子などだが、原料も供給しているので、2次加工、3次加工を含めると菓子、アイス、飲料など、様々な分野で使用されており、裾野は広がっている。お土産としても外国人観光客に人気で、箱根では定番の商品となっている。小売用としては『さくらごはんの素』が赤飯に替わる祝い事の席でのご飯として利用されるケースも増えてきた。桜の花びら入りで彩りも良い『桜ジャム』は、他にはないアイテムで特に女性からの人気が高い。プレーンのヨーグルトにかけるだけで桜の香りが漂うオシャレなスイーツになるので、春の売場にオススメしている」
‐ここ数年の需要の変化について。
「桜の花は日常的に食べるものではなく、春の季節限定で需要がある特殊な商材。しかし、近年は通年で販売したい、という取引先も増えており、土産用としても季節に関係なく売れている。外国人観光客にとっては季節も大事だが、ホッケー女子日本代表の愛称が『さくらジャパン』であるように、日本をイメージさせる代表的なものとして『桜』があるのだと思う。今後はインバウンド需要や輸出も視野に入れていきたいと考えている」
‐今後について。
「桜の花の生産量は限られた量しかなく、増やすことは難しい。量を集めて1次加工することは誰でもできることではなく、そういった意味では桜花漬は希少価値の高い商材と言える。今後はさらにその価値を高めて販売に結びつけていきたい。今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されるので、海外の人が日本の食や文化に注目する大きな機会となる。弊社としても外国人の目に留まるような商品を開発していきたいと思っている」
【2020(令和2)年1月20日第5008号3面】
 
神尾食品工業株式会社 http://www.kamio.co.jp/

クローズアップ

株式会社やまへい 代表取締役社長 塩川正徳氏

外国人実習生を受入れ
 自ら漬物製造管理士2級取得
 
株式会社やまへい(長野県小諸市)では今春、ベトナム人の外国人技能実習生6名と特定技能2名の計8名を受入れる。同社の塩川正徳社長は、実習生受入れのために自ら漬物製造管理士2級を取得。受入れに際してはベトナムの送り出し機関を直接訪問し、現地の状況を把握した。深刻な人手不足により今後増加していくとみられる外国人技能実習生。塩川社長に受入れまでの流れや注意事項などについて聞いた。
(藤井大碁)
―漬物製造管理士の取得について。
「人手不足に悩む中、2018年10月にベトナムの送り出し機関から会社に直接連絡があり、受入れを検討し始めた。受入れ条件をチェックすると、実習生が3年以上滞在するためには漬物製造管理士2級が必要であることを初めて知り、そこから急いで勉強を開始した。社内で私を含めて6名が受検することになり、試験対策の勉強会などを実施し、昨年2月の試験で6名が3級に、9月に4名が2級に合格することができた。実際受検してみて、漬物製造管理士試験は漬物の幅広い知識を学ぶことができ、社内のモチベーションアップにも役立つと感じた」
ー実習生受入れの注意点。
「受入れ可能人数は社員数により決まっていると思われがちだが、正しくは雇用保険を掛けている社員数で決まる。社員に社会保険や厚生年金を掛けていない会社は、受入れができないということになり注意が必要だ」
ー受入れまでの流れ。
「これまでは、国内の監理団体が受入れ企業を探して、海外の送り出し機関に何人送り出しができるか、送り出し人員数に応じて面接希望者を集め、挨拶などを教えて面接に臨むというのが一般的な流れだった。最近では監理団体へ依存せず送り出し機関が直接、受入れ企業を探すことも増えてきているようだ。弊社の場合も、送り出し機関より監理団体の紹介を受けた。その後、現地で面接があり、採用が決まった実習生は、数カ月に及ぶ日本語教育を受けた後、来日することになる」
ー送り出し機関の選び方。
「昨年6月にベトナムに行き、実際に6カ所の送り出し機関を訪問した。送り出し機関によっては、日本語授業料の他、寮費などだけでなく、日本語学校(送り出し機関)に入るためにブローカーが間に入ることにより高額な紹介料を取り実習生に多額の借金を負わせるところもある。借金が多すぎると実習生の脱走リスクが増えるため、受入れ企業にとってデメリットになる。最近では、実習生が送り出し機関を選ぶ際の口コミサイトなども登場しており、現地の送り出し機関を選ぶ目が厳しくなっており、以前より健全な運営がされるようになってきている。弊社では、実習生から最高で5000ドルしか受け取らないという送り出し機関を選んだ。こうした送り出し機関には、実習生のベトナムでの費用が少なく借金が少なくて済むため大卒や短大卒などをはじめ現地の優秀な人材が集まりやすいようだ」
ーブローカーの存在。
「採用予定者の人員によっても違うようだが、2~3倍程度の面接者を用意するのが一般的のようだ。その際にブローカーが面接希望者を探したり、実習生になりたい人を送り出し機関へ斡旋したりした際に費用発生があるようだ。今まで、送り出し機関は、ベトナムのそれぞれの地方出身者を雇用しリクルート活動を行い日本語学校の生徒数をコントロールしようとしていた(実習生からは授業料をもらえるが、面接前や面接不合格者からはもらえない)。リクルート費用についても同様で、実習生自らの応募に対しては費用が発生しないのでインターネットなどで募集する送り出し機関が出てきている」
ー監理団体選定のポイント。
「月の管理費が監理団体により異なる。もちろん安いに越したことはないが、何かあった時にしっかり対応をしてくれる監理団体なのかどうかの見極めが必要だ。そのあたりは話をしていく中で信頼できるかどうか、過去の実績も含めて判断していく必要がある」
ー送り出し機関と監理団体に払う月の費用。
「弊社では月に実習生一人あたりの金額を監理団体に支払い、この中から監理団体から送り出し機関への管理費用が支払われる。送り出し機関によっては、日本に駐在員を置いたり営業所を置いてフォロー体制をしている機関もある。最近では送り出し機関が日本の監理団体を傘下にするケースもあり、そうした場合はセットになっているため安い傾向にあるようだ。また人件費が異なるため都心部より地方の方が安い傾向もある」
【2020(令和2)年1月6日第5007号20面】
 
株式会社やまへい http://www.yamahei.com/

トップに聞く

株式会社丸越 代表取締役社長 野田明孝氏

気候の変化が需要に影響
 希望を持てる1年へ
 
大正3年創業で、直営店とフランチャイズ店を全国に展開する株式会社丸越(本社=愛知県名古屋市天白区)の野田明孝社長にインタビュー。原料や製品の動向、今後の方針などについて話を聞いた。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐昨年の売れ行きは。
「弊社は3月末決算なのだが、春先の売れ行きはまずまずだった。6月の梅雨の時期から7月まで長雨が続き、猛暑となった昨年と打って変わった気候となったことで売れ行きが低迷した。昨夏は梅干が爆発的に売れてキムチ、甘酒も好調だった。今年はそれらの商品も苦戦し、売上を伸ばすことができなかった。お盆明けから暑さが本格化したのだが、時すでに遅しで夏商材は全く動かなかった。9月はその流れに引っ張られた感じで数字が伸びず、10月は消費税増税の影響もあって全体の消費が落ち込んだため、食品も動きが悪かった。紅葉シーズンとなる11月は暖冬で浅漬が売れず、鍋つゆや鍋回り商材も厳しい状況となった」
‐気候と需要の関係は。
「気温の変化は需要に影響する。昨年は夏が寒く、冬が温かく、と本来の気候と逆になってしまったことで、本来その季節に売れる商材が売れない状況となった。予報では昨年末から寒くなるということで、冬商材が売れる流れになることを期待している。気候については我々がどうにかできることではないのだが、気候が変化することによって消費動向も大きな影響を受ける。そして、原料も生育不良や不作といった影響が出てくる。メーカーにとってはダブルパンチとなってしまう。白菜は暖かい日が続いているため、巻きが緩く品質はあまり良くない。数はあっても重量がないので歩留まりも悪い。関東を直撃した昨秋の台風は、通過した直後だけでなく、数カ月後にも野菜への影響が出てくる。近年の台風は大型化しているのでリスクも高まっている。そういった意味でも常にリスクの分散化を考えている。また、売上についても台風で百貨店やスーパーが休業することになったが、1日の売上がなくなるということなので、もともと悪い流れに拍車がかかった」
‐流通の変化について。
「弊社は対面とセルフの両輪で事業を行っている。地方の百貨店は閉鎖するところも出てきているので、駅に併設されたところを中心に拠点を構えるようにしている。百貨店は客層の若返りを図っているので、弊社の店舗でもサラダ漬物と本漬製品を併売するハイブリッド店を展開して対応していきたい。セルフについては従来通り、味と品質はもちろん、個食化、簡便性といった時代のニーズを捉えてお客様に支持される商品を提案していきたいと思っている。デフレの流れだが、今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されるので、日本経済が活性化する起爆剤になればと期待している。弊社もそういった波に乗っていきたいと思っている」
‐新年の抱負を。
「メーカーとしては品質の良いもの作りを基本とし、安全・安心の取組みを引き続き強化していく。ベンダーとしては取引先の商品を1品でも多く提案して中部圏の売場に落とし込んでいきたいと考えている。皆様方には今後ともご協力をいただき、希望を持てる1年にしたい」
【2020(令和2)年1月6日第5007号11面】
 
株式会社丸越 http://www.marukoshi.co.jp/
株式会社食料新聞社
〒111-0053
東京都台東区浅草橋5-9-4 MSビル2F

TEL.03-5835-4919(ショクイク)
FAX.03-5835-4921
・食料新聞の発行
・広報、宣伝サービス
・書籍の出版
TOPへ戻る