<企業紹介> 株式会社五味商店
消費者の本物志向が高まる中、全国から厳選したこだわり商品を紹介する食品問屋が株式会社五味商店。同社では、「安全安心」「美味しい」「本物」「健康」という4つの視点で商品をセレクト。地域産品やオーガニック製品など素材や製法にこだわった食品を取り揃えている。
取り扱いアイテム数は、全国1500社の約20000点。その大多数を占めるのが地方の中小零細企業だ。高品質なものづくりを行いながらも売場を持てない地方メーカーが多い一方で、売場側は地域性の高い商材を求めている。この両者の橋渡し役を担い、地域商材を表舞台に送り出すのが同社の役割といえる。最近では、地方自治体や中小企業基盤整備機構との連携が進み、さらに魅力的な商品が集まっている。
毎年2月に開催される『スーパーマーケット・トレードショー』における「こだわり商品コーナー」、7月に開催される「こだわり商品展示会」は、それぞれ100社以上のメーカーが出展する一大イベントとして知られ、有名百貨店や高質スーパーのバイヤーらを中心に、本物志向のアイテムや地域性の強い商品を求める来場者で賑わいをみせる。
<寺谷社長の思い>
同社の寺谷社長は、「簡単便利な食文化が根付くことで、古くから続いてきた伝統的な食文化が失われつつある」と懸念する。しかし、ここにきて流れが変わってきた。時間をかけてじっくりと熟成させた醤油や、添加物を使用せず素材の味を丁寧に引き出した加工食品など手間暇かけてつくられたモノへの理解が進んでいる。
また、若者でも本格的なダシをとるなど、より本物の味を求める人が増えてきた。その背景には、健康志向や安全安心への意識の高まりと共に、インターネットの普及により、個人が自分好みの食品を選択できるようになったことがあるという。今後は、社会の中心層となっていくミレニアルズの消費形態に対応し、”モノ”から”コト”へと価値発信の基準を変えていくことの大切さを指摘する。
近年、”サステナブル”がキーワードとなる時代の到来により、消費者の価値観が大きく変化し、健康性に加え、社会や環境に貢献することで得られる精神的な満足感も求められるようになっている。「日本には精進料理のように、サステナブルな要素が多分に含まれている食文化があり、伝統食にとっても、その価値を改めて訴求していくことがチャンスに繋がっていく」と語る。
毎日の食卓が無添加製品など健康的な食品に変われば、国民の健康寿命が伸び将来的な社会保障費の削減にもつながる。日本の伝統的な食文化を継承し、日本人の健康を守る。寺谷社長の思いは少しずつ日本の食卓を変えている。
2月11日号 SMTS特別インタビュー
株式会社五味商店 代表取締役社長 寺谷健治氏
『冷凍食品』『全国銘菓』コーナーも
『スーパーマーケット・トレードショー2023』(2月15日~17日・幕張メッセ)において、全国から厳選した食品を紹介する株式会社五味商店(千葉県我孫子市)の「こだわり商品コーナー」(会場9ホール)は今回で24回目の出展となる。スーパーマーケット・トレードショーの出展者代表委員も務める五味商店の寺谷健治社長に、今回の見どころや現在の消費トレンドについて聞いた。(藤井大碁)
◇ ◇
――今回の見どころ。
「今回の出展者数は昨年より32社多い140社で、過去最多となる。ブース面積も前回より広がる。全国商工会連合会から新規で20社が出展するなど新規出展者も39社あり、今回もたくさんの発見をして頂けると思う。ブース内では、夏の展示会の際にバイヤーさんから要望が多かった『冷凍食品』と『全国銘菓』のコーナーを展開する。今、一番有益な情報をタイムリーに提案することで、来て良かったと思って頂けるブース作りを行っている」
――足元の状況。
「3月決算は前年並の売上を見込んでいる。コロナ下の3年間で売上は上昇を続けてきたが、ピークは過ぎ、昨年夏以降は動きが落ち着いてきている。だが引き続きこだわり商品へのニーズは高止まりしている。様々な物が値上がりし、節約志向が強まっているが、自分の欲しいものにはしっかりとお金を払う〝メリハリ消費〟が定着した。こうした消費者ニーズに対応していけば、まだまだ売上が伸ばせると考えている」
――消費者トレンド。
「現在、出展者の皆様に出品をお願いしているのは〝サステナブル”や〝SDGs〟の要素を持つ商品だ。時代の変化や、世代による価値観の違いもあり、価値のある商品は十人十色になっている。これまでのような大きな市場はシュリンクし、今後は細分化した市場への対応が求められる。美味しさや安全安心が商品の絶対条件だとすれば、サステナブルやSDGsといった要素は必要条件と言える。だがZ世代のように、そうした価値観に基づいて商品を選択する人たちが増えてきている。また、甘すぎる商品も時代が変わり受け入れられなくなってきている。減塩、添加物や砂糖の不使用等素材を生かした薄味への変化が求められている」
――新しい売場。
「ある農協の直営店舗では、弊社から商品を卸すようになり、商品単価が1割以上上昇し、全体の売上も伸長した。各地の農作物直売所では生鮮品については地元農家から仕入れられるが、加工品の品揃えに課題を持つ店舗もある。この部分を弊社が補うことで売上増に貢献できる事例が出てきている。近年、食品を取り扱う雑貨店が増え、売り先が広がっているが、まだまだこうした新しい売り先を開拓できると考えている」
――食品メーカーにとって厳しい環境が続いている。
「様々なコスト増により、経営のプロでないと生き残るのが難しい時代になっている。前述の通り、消費者ニーズは多様化しており〝付加価値のある市場〟は確かに存在する。だが、その市場にあった商品を作り、販売していくためには、経営力・販売力・商品力といった3つの力が必要で、どれかが欠けても競争に勝てない。この中で一番大切なのは経営力を磨くことだ。そのために、経営者のマインドを外向きに変えていく作業が必要で、トレードショーへの出展はその一つのステップとなる。昨年初めて出展した事業者は、経営者が新しい世界を見てやる気になり、新工場を建設することになった。新工場ができれば、雇用が生まれ、地域活性化につながる。弊社の目標はこうしたケースを1つでも多く作っていくことだ」
――今後の見通し。
「時代の変化は早いが、〝人間が生活の豊かさを求めること〟はいつの時代も変わらない。その豊かさは時代と共に変化し、サステナブルやSDGsといった自然との共生という価値観が広がっている。豊かな生活をしたいというのは、人間の本質的なものであり、それがある限りは、我々の商品を供給することで喜んで頂けるのではないか」
【2023(令和5)年2月11日第5119号5面】
株式会社五味商店
コロナ禍の影響により2019年以来3年ぶりの開催となった同展示会には、全国各地から111社が出展、会場には過去最高となる約400名のバイヤーや関係者らが来場し、食品値上げが続く中、“価値”の提案ができる「こだわり商品」への注目度の高さが垣間見えた。
同社が今、注目の商品を紹介する「営業マン イチ押しコーナー」では、“サスティナブル”や“ブラッシュアップ”というテーマで商品をセレクト。サスティナブルでは、包材に植物性プラスチックを使用した商品や、アニマルウェルフェアに配慮した商品、ブラッシュアップでは、五味商店との取組によりお客様目線でパッケージや味わいを改良した商品が並んだ。
会場内では、簡便性や健康性、個食化といった現在のニーズに沿って、醤油や味噌、漬物や佃煮といった伝統食を提案するメーカーが多かった。また地域の伝統野菜を使用した地域性に富んだ商品や、個食化に対応する少量パックの商品も目立った。
五味商店の寺谷社長は「コロナ感染状況が悪化する中、どれだけの方に来て頂けるか不安があったが、結果的にたくさんの方にご来場頂き感謝している。出展者も来場者もリアルの展示会の開催を待ち望んでおり、その期待感を強く感じる場となった。様々なコストが上昇し、価格での差別化が難しくなる中、今回は特に品質やストーリー性といった付加価値のある商品を求めている方が多かったのではないか」と話した。
主な出展者と注目商品は次の通り。▼中園久太郎商店(鹿児島県):漬物グランプリ2022地域特産品特別賞受賞の鹿児島伝統「ミニ山川漬」、▼山豊(広島県):広島菜ゆかり®入りや広島菜カレー、▼平松食品(愛知県):『骨付き炙りサーモン 黒胡椒味』など「Teriyaki Fish(テリヤキ・フィッシュ)」シリーズ、▼丸昌稲垣(長野県):「信州しま瓜粕漬スライス」や「クリームチーズの味噌漬」、▼春月(長野県):定番のおたふく豆や天女魚甘露煮、▼佃食品(石川県):佃煮の二色カップシリーズ「二味好日」、▼キムフーズ(長野県):「熟成中辛キムチ」など本格発酵熟成キムチ、▼ハコショウ食品工業(岩手県):保存に便利なチャックタイプの漬物シリーズ、▼マル伊商店(愛知県):愛知県産生炊きしらすや生炊きえび、▼小田原屋(福島県):クラフトコーラベースやジンジャーエールベース、▼尾鷲金盛丸(三重県):重量25キロ以上の国産メバチマグロを使用した「まぐろの角煮」
五味商店(千葉県) 第17回こだわり商品展示会 7月20日に浜松町で開催
―こだわり食品の動き。
「おかげ様で好調に推移している。3月決算は売上が前期比2桁増で着地した。今年のゴールデンウイークは外出制限が解除されたこともあり苦戦すると予想していたが、売上は落ち込むことなく、4月・5月も前年比105%と伸長している。コロナ禍でお金を使う機会が少なく、個人所得は減っているが個人資産は増えている。旅行や外食などにお金を使わない分、ちょっぴり贅沢なこだわり食品へのニーズは高まり、食に対する価値基準が変わった。食べ物に関しては一度美味しいものを食べてしまうと、品質を下げることが難しく、以前の食生活に戻れなくなるという側面もある。それが4月・5月に売上が減少しなかった理由ではないだろうか。値上げが続いている中での、売上増に驚いている」
―消費動向について。
「節約できるところは徹底的に節約し、自分が食べたいものは少し贅沢しても食べるという消費形態が浸透している。十人十色の考え方であれば、可処分所得が減る中で、こだわり食品の需要がシュリンクしていくと考えられるが、今の消費スタイルは”一人十色”と言えるもので、消費者の一人ひとりが、節約と贅沢を両立するようになったと推測している」
―どのような販路が伸びているか。
「特に雑貨店向けの売上が伸びている。近年、食品を取り扱う雑貨店が増えており、売り先が広がっている。こうした店舗では、アフターコロナに向け、ネットとリアルの激しい競争が予想される中、リアル店舗に呼び込むための仕掛けとしてこだわり食品の品揃えに力を入れている。また価格より品質を重視するスーパーマーケットも増えてきており、そうした店舗へのこだわり食品の納入も増えつつある」
―「こだわり商品展示会」の開催は3年ぶりとなる。
「来場者も出展企業もリアル開催を待ち望んでいる。2月のスーパーマーケット・トレードショーも、首都圏からは来られたが、地方からは来られなかった方も多く、久しぶりに全国から多くの方に来てもらえる展示会になる。今回は会場が東京駅の丸ビルから浜松町の産業貿易センターに変更となり、新しい会場で皆様の来場をお待ちしている」
―今回の見どころ。
「行政との取組に注目してほしい。111社が出展する中、三重県の尾鷲市や鹿児島県の指宿市など、我々と行政のコラボは、中小企業基盤整備機構のブースも含めると約30社に及ぶ。地方の人口減少が進む中、”地産外商”は地方の食品メーカーの重要なテーマとなっている。だが、そのために何をしていいか分からない、という経営者は多く、首都圏で市場を開拓するための手段として、我々を使ってもらう。まずは、地元でしか商売をしていなかった事業者が、展示会に出展することで、県外にも市場があるということを肌で感じてほしい。経営者のマインドを外向きに変えることが、我々の最初の目標だ。最終的なゴールは、首都圏に販路を広げることで売上を拡大し、製造ラインや工場の増設に繋げること。それにより地元の雇用を拡大し、地域活性化に繋げていく。既に展示会出展者にこうした成功事例があり、今後も行政と一体となり取り組んでいく」
―今後について。
「県民割りなどが始まり人の流れが活発になっており、内食需要は減少していくと思うが、前述したような消費形態の変化もあり、ライフスタイルがコロナ前に戻ることは考えられない。美味しいものを食べたいというのは、人間の求める生理的な欲求の一つなので、それを満たすだけの商品をしっかり供給していく。また供給するだけでなく、その商品の価値をどのように料理すれば生かせるか、というところまで落とし込んで提案していくことが大切だと考えている」
【2022(令和4)年7月1日第5098号8面】
<企業情報>
会社 | 株式会社 五味商店 |
代表 | 代表取締役 寺谷 健治 |
創業 | 1931年3月1日(昭和6年) |
業務内容 | 農水産加工品卸、小売業 |
住所(本社) | 〒270-1151 千葉県我孫子市本町3丁目4番32号 |
電話(代表) | 04-7183-7700 |
FAX | 04-7183-7710 |
HP | http://www.5-3.co.jp/index.html |
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