香港の食トレンド学ぶ
JETRO香港では、市場開拓部海外コーディネーター(農林水産・食品分野)の彦坂久美子氏の出迎えを受け、最新の香港の動向や食事情に関してレクチャーを受けた。説明の概要は次の通り。
香港では、2014年に一人当たりの名目GDPが日本を逆転。がむしゃらに稼ぐことから生活をより豊かにすることへ関心の対象が移っている。東京都の半分の面積に740万人の人口が暮らし、年間6000万人が中国を中心とした国々から香港へやって来ているため人口密度が高い。そのため、人気の飲食店では1日あたり10回転する店舗もあり、香港では回転数×客単価といったビジネスの考え方が重要である。
現在のキーワードはチェンジ。高速鉄道が出来て香港から深圳まで15分ほどで行けるようになった。広州も通勤圏内になり、中国大陸から人がたくさん来るようになっている。香港そごうは、現状2店舗が営業中。3店舗目は2020年開業、4店舗目の予定もある。情報を集めて、皆様が納品できるようサポートをしていきたい。
近年、デリバリーの下支えもあり中食ビジネスの伸びが顕著になっている。人口が密集していることや、香港人のせっかちな国民性に対応していることが支持されている要因。焼きそば、チャーハン、ぶっかけご飯のほか、焼物やサラダやおかずの一品となるお惣菜系も豊富で、どこのスーパーもここに力点を置いている。
香港は、ものづくりではなくサービス産業が多くGDPのうちの9割を占める。しかし、食品工場が全く無いわけではなく、中国大陸の人々にとってメイド・イン・香港は一つのブランド。オイスターソース、インスタントラーメン、月餅などの食品工場は右肩上がりで伸びている。また、最近はこうした業者が日本製の原料を仕入れる傾向が出てきている。
2018年と2008年を比べると訪日香港人数は10年で約4倍に増加。1人で年間8~9回行く人もいる。何かをすることで思い出をつくる〝コト消費〟の傾向が強い。訪日香港人の増加により、本物の日本料理が食べたいというニーズが出てきている。
日本料理の店舗数は全体の7・8%で外国籍料理店では一番多い。金額ベースでは中華料理が全体の3分の1を占めるが、日本料理も増えてきている。ウエルカムスーパーでは、2017年から日本の鶏卵が販売されている。チーズや調味料、お茶も日本製が揃う。以前は日本食の品揃えが多い特別なスーパーに行かなければ買えなかったものが、ローカルスーパーで購入できるようになってきている。
香港市場攻略の決め手は、価格・おいしさ・他にはないおもしろさの3つ。少し頑張れば手に入る価格に収めること、香港人向けに佃煮の食べ方を提案するなどこちらの人が美味しいと感じてもらえるように調整すること、他にはない面白さや仕掛けをつくることも大切になっている。香港のキーワードはカスタマイズで、自分だけのオリジナルを求めている。
香港の人はなぜ美味しいのか頭で考える傾向がある。舌触りが滑らか、喉越しが良いなど、その理由が何なのかを知りたがる。そのため、こだわりの製法などをアピールし、その美味しさを裏付けることが必要になっている。
香港はアジアのショーケースと呼ばれ、香港内だけでなく、中国大陸、シンガポール、フィリピン、タイなどアジア市場にも波及効果がある。香港では、ディストリビューターが商品を買い在庫を預からない限り流通しないため、ディストリビューターにどう自社製品の魅力を訴えるかが重要になる。